何かを得るためには諦めなくてはならないものがある、世の中では割とそう言われている。欲張りは罪だとでもいうように。フルタイムの就職をせず、演劇を続ける夢に向かっていった友人も私には少し居る。女性には最近まで、家庭か仕事か、なんてテーマがあった
。二足わらじの者は中途半端だとの非難がかなりあった。
その反面、医師であり作家でもあった文豪を高く評価、また、アマチュアリズム第一だったオリンピアンにスポーツを続ける金銭的苦労を強いたり、それって矛盾だと思ってた。
役者で食べていくのは難しい。この話はまさに夢実現に不可欠な、人生一度あるかどうかのラッキーを用意。一度は諦めた夢が、手を伸ばせば道が開けるかもしれないほどヒロインの目の前にぶら下がって来る。一方、ストーリーは、もうひとつ、やはりそうそう何度も無い、ビッグライフイベントの進行。ハーレクインのメインはこちらだけれど、でも子持ち離婚経験者の私にはヒロインに共感部分ある。地に足つけなければ子どもは育てられない。収入安定のために堅実な職に就くのは仕方の無いこと。親の考えも理解出来る。
この話、彼には長年のヒロインへの好意を、一方ヒロイン自身には遅れた異性意識スタートを、同時開示、作家の制作の意図がここに込もる。ヒロインのチャンス到来は周囲を追い詰める。気持ちスイッチのタイミング問題。古くから胸に巣くっていた演劇への思いと、急浮上して重要になり始めた交際相手との将来。ヒロインは結婚はちょっと待って、の気分だ。彼の考え方、環境変化の始まりにより揺れ動く思いも、不自然さは感じない。
悪いことが続く時もあるが、いいことが立て続けに起こることもあるだろう。うまい話は滅多に転がってない。ラストチャンスかもしれない時は舞い上がっても無理はない。味わったことの無い興奮なのだろう。
この夢物語に自分の夢を代理実現することも、逆にシビアな現実を語らない物足りなさもあるかと。
けれど、HQは幸せを手にする女性の話、誰かの諦めや犠牲の上に成立させない。とかくに諦めることを強要されやすい女性が主人公だからこそ、そんな成功物語が胸をすく。
美麗な絵を描かれる宗真先生だから、女優誕生や、岐路に両天秤かと思わせるノーランが素敵であることに説得力がある。こんなにいい人との関係を勿体ない、と思わせる効果抜群だったし、人間臭さも出してた。景色は丁寧さ欲しかった。
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