登録日:2022/04/09 Sat 13:20:02
更新日:2024/11/26 Tue 17:10:42
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『ドラゴンボールZ 神と神』とは、2013年3月30日に公開された
ドラゴンボールシリーズの劇場版。
監督はテレビアニメ『ドラゴンボールZ』で演出を務めた細田雅弘。
概要
劇場版シリーズとしては第18作目、Zシリーズの劇場版としては15作目となる作品。
映画版DBとしては前作となる『ドラゴンボール 最強への道』から17年ぶり、劇場版DBZとしては『ドラゴンボールZ 龍拳爆発!!悟空がやらねば誰がやる』以来18年ぶりとなった。
監督の細田曰く、公開年の2年前に発生した東日本大震災(
東北地方太平洋沖地震)の影響から
子供に笑顔を取り戻してほしいという趣旨で企画がスタートしたと語っている。
本作の最大の特徴は、アニメ版及び劇場版シリーズとしては初めて鳥山明がストーリーを執筆しているという点にある。
鳥山自身が制作に参加した経緯としては、皮肉にもハリウッドでの実写映画版『
DRAGONBALL EVOLUTION』の存在が影響しており、インタビューでは同作の制作において注意点や変更案を提示しても製作側に殆ど聞き入れてもらえなかった事や、映画の完成度に
不満があった事を認めた上で、
原作者としての意地を見せたかったとも発言している。なんとも皮肉な話である。
企画当初の脚本は渡辺雄介が依頼を受けて担当していたが、鳥山がその初期案を暗いストーリーだとして自ら大幅に修正する結果となった。
渡辺の脚本からは「
破壊神」や「超サイヤ人ゴッド」などのワードが使われるのみで、ほぼ原型が残らなかった。
脚本が別物と化した件については後に鳥山は渡辺へ謝罪の意を示しているが、渡辺は「これがDB」として明るい作風に変更する鳥山の意向を支持する対応を見せた。
デザイン面でも鳥山が関与しており、本作では原作の最終変身形態である超サイヤ人3を上回る新形態・超サイヤ人ゴッドが登場する。
超サイヤ人ゴッドは初期は山室直儀がデザインを担当したが、そのデザイン案も「超サイヤ人3と真逆の方向性」を目指した鳥山によって手直しされたようだ。
物語の時系列は魔人ブウ編と原作最終回の間のストーリーとなっており、『ドラゴンボール オッス!帰ってきた孫悟空と仲間たち!!』で描かれた要素への言及がある。
鳥山の作風や意図が強く入っているためか、歴代の劇場版DBZ作品と比べると明るい雰囲気で、敵キャラクターとの決着も異色的な結末を迎える。
特に敵味方問わず誰一人として登場人物が死亡しないというのも今作が初。
また、鳥山作品としては珍しくラブコメとしての雰囲気も入ってきていることも印象的である。
久々の劇場版DBの新作だったことや原作者が関与というアピールが話題を呼び、興行収入は29.9億円を記録するなど成果を上げた。
本作以降も鳥山が関与することを売りに新作が制作されていくようになり、DBコンテンツは商業面において再ブームの勢いを加速させていくことになる。
劇場版の次回作『
ドラゴンボールZ 復活の「F」』を初めとした本作以降のDB関連作品は、基本的に本作で描かれた要素を強く取り入れている。
2014年にフジテレビ系列で地上波放送が行われた際には、未公開シーンを追加した特別版が放送された。
この特別版は後に『ドラゴンボールZ 神と神 スペシャル・エディション』として発売されている。
後に製作された『
ドラゴンボール超』では、本作を「破壊神ビルス編」としてリメイクしたストーリーが展開された。
「破壊神ビルス編」では少なからず内容に差異が発生しているが、どちらが正史相当に該当する内容なのかという点については不明慮でファンの間でも見解が分かれている。
また、本作の公開当時の公式の言及や資料と『超』シリーズで描かれた描写には少なからず違和感が発生している部分がある。
主題歌はFLOWのカバーによる『CHA-LA HEAD-CHA-LA』。
挿入歌は同じくFLOWの『HERO ~希望の歌~』。
あらすじ
孫悟空が魔人ブウとの激闘を繰り広げてから4年後の世界は、完全に平穏を取り戻していた。
そんなある時、39年の眠りから気まぐれな破壊神「ビルス」が目覚め、かつて予言で聞いた謎の存在「超サイヤ人ゴッド」との対決を望む。
ビルスは宇宙の帝王「フリーザ」を倒したサイヤ人だという悟空に会うために界王の星へ向かい、一瞬で悟空に圧勝してしまった。
次にビルスはベジータのいる地球へと向かうが、その頃の地球ではブルマの誕生日パーティーが開催されていた。
北の界王からビルスの情報を得たベジータは穏便に済ませようと決意し、自身の知り合いとしてビルスをパーティーに参加させる。
ベジータの努力で穏便に済むかと思われたビルスの来訪だったが、結局地球の命運をかけた戦いに発展することになり…?
主な登場キャラクター
孫家
「破壊を楽しんでんじゃねぇぞぉぉぉ!!!」
CV:
野沢雅子
原作では魔人ブウ編終盤から主人公に復帰したが、本作でも継続して主人公。
フリーザを倒したことでビルスに目を付けられ、出会ったビルスに試合を持ち掛けるも超サイヤ人3で完敗する。(しかもたった二発の攻撃で)
その後は
地球でベジータ、悟飯、悟天、トランクス、そしてビーデルのお腹にいる
子供の力を借りて
超サイヤ人ゴッドに覚醒。地球を破壊しようと企むビルスと激戦を繰り広げる。終盤で、挿入歌『HERO ~希望の歌~』をバックに繰り広げられるビルスとの戦闘シーンはDB屈指の名バトル。
CV:野沢雅子
原作では
一応主人公だったこともある悟空の息子。年齢的には大学卒業直後で、ビーデルと結婚している。
酔っぱらって銃弾を弾くという余興を始めた挙句、弾いた流れ弾をビーデルの脚に当てて怪我をさせるというとんでもないやらかしをした。
戦闘力は本作開始時点ではまだ
最強クラスに位置しているのだが、アルティメット形態でビルスに挑むも完敗する。
ちなみに、当初の予告では
超サイヤ人の姿でビルスに挑んでいたのだが、公開版ではアルティメットに修正された模様。
CV:野沢雅子
孫家の次男。悟空に酷似したその容姿を見たピラフ一味に勘違いされるという一幕があった。
ゴテンクスへフュージョンしてビルスに挑むも、
尻を叩かれてKOとなる。
CV:渡辺菜生子
悟空の妻。本作では酔った勢いで妻を傷付ける失態を犯した息子の悟飯に禁酒令を下した。
CV:
皆口裕子
悟飯の妻。魔神ブウと戦った時点では彼のガールフレンドだったが、その4年後である本作では既に結婚している。
酔っぱらった夫のおふざけで怪我を負い、デンデに治療を受ける最中に妊娠していた事実が判明するも、
悟飯を始めとした周囲には時機を見て告白するべく隠していた。
しかし終盤、『超サイヤ人ゴッド』の覚醒に必要な、変身者以外の「正しい心を持つサイヤ人」が一人足りない事態に陥ったため、
自身と悟飯との間に授かった子も条件を満たしているかもしれないと告白。夫や父を喜ばせると同時に、ゴッドの覚醒に貢献した。
カプセルコーポレーション
「よくも、オレのブルマをー!!!」
CV:
堀川りょう
説明不要の王子。ブルマの誕生日パーティーには不参加で修業を行っていたが、界王の報告で幼少期に出会ったビルスの存在を思い出す。
ビルスという危険を前に自身のプライドを捨ててキャラ崩壊の覚悟を決めたベジータは、
ダンスではっちゃける。
努力も虚しくビルスが暴れ出した際にはブルマに手を出されたことに
激怒、一瞬のみではあるが原作ラストでは追い越されていた悟空を超えるレベルの
戦闘力に覚醒した。
CV:
鶴ひろみ
38歳の誕生日を祝うために豪華パーティーを開催、結果的にビルスを招くことになる。
ベジータの戦闘の最中でビルスにビンタをするも逆に返されて気絶してしまい、その姿がベジータの急な覚醒を呼び起こす。
後にビルスに行いを謝罪させ、またパーティに参加することを認めて和解した。
CV:
草尾毅
パーティーに忍び込んでいたマイの若返って幼児化した外見に一目惚れし、悟天に見栄を張ってガールフレンドと
嘘を付いてしまう。
しかし、結果的にデートをするなど良い感じの雰囲気になっていた。
悟空の仲間達
CV:八奈見乗児
シリーズのナレーターとしてもお馴染みの
界王。
ビルスの目覚めを
老界王神から聞き、黙ろうとしていたが悟空に結局漏らしてしまう。
本作では界王星がやけに小さいのは、かつてビルスがかくれんぼに敗れた際の腹いせによる結果という事実が明らかになる。
ビルスに恒例の「オッス!オラ悟空!」で挨拶を仕掛けた悟空に対して「お前ももういい歳じゃろ!」と叱るという場面も。
世界征服を企む小悪党だが、本作では肉体が幼児化してしまい、ピラフは現状に怒って逆にシュウは
犬の寿命を理由に状況を受けいれていた。
貧乏生活から抜け出すため、
ドラゴンボールが存在しているブルマの誕生日パーティーに潜入する。
マイはトランクスに一目惚れされたことにより、実際は年齢差が離れているコンビによる妙なラブコメの雰囲気が展開されることに。
CV:
塩屋浩三
原作におけるラスボス。本作では改心してサタンと良好な関係を続けており、完全に悟空の仲間と化している。
パーティーで出されたプリンを独り占めしており、ビルスの要求を拒否して全部食ったことでビルスが激怒する原因となる。
原作では
ラスボスだったブウもビルスにはあっさり倒されてしまった。
CV:佐藤正治
ブルマのパーティーに参加し、ビンゴ大会の景品に「エッチなDVD」を要求してブルマに叱られる。
後にブルマの一件で激怒したベジータの戦闘力を見て悟空を超えたのではないかと推測した。
CV:
平野綾
悟飯のおふざけで怪我をしたビーデルを治療した際に、彼女が妊娠していることを把握するも口止めを頼まれる。
CV:
石塚運昇
原作ではラストバトルで悟空と共に結果的に世界を救ったチャンピオン。
ビーデルの発言に勘違いしてでしゃばる様子を見せ、スペシャル・エディションでは酔ってビルスに勝負を挑もうと声を掛けた。
CV:
古川登志夫
幼いながらもガールフレンドのいる(と嘘を付いている)トランクスを不純と認定したり、ビンゴ大会を割と楽しんでいたりと地味に面白い様子を多く見せる。
しかも歌が壊滅的に音痴という事実が判明し、悟飯以外はその歌声に拒絶反応を見せていた。
CV:
龍田直樹
スペシャル・エディション(と超)では、ビルスと地球の命運を賭けた一世一代のジャンケン勝負を行うことになる。
ヤムチャのアドバイスで臨んだ作戦も見抜かれて敗れてしまった。
CV:伊藤美紀
ビンゴ大会の高価景品について気にしていた。ビルスに挑むも敗北する。
CV:
緑川光
パーティーに参加していたためにビルスが現れた際に立ち向かうも瞬殺される。
CV:
田中真弓
パーティーに参加。スペシャル・エディションでは悟飯にパーティーの参加者を避難させるように指示を受けていた。
CV:
古谷徹
パーティーに参加しており、スペシャル・エディションでは、ジャンケンに挑むウーロンに「ブタの蹄の見た目で不意を突いてパーを出して勝つ」という作戦を提案する。
CV:
内海賢二
ビンゴ大会の景品であるドラゴンボールから呼び出され、悟空達の願いで超サイヤ人ゴッドに変身する手立てを伝えた。
本作ではビルスに対して恐縮した態度を取り、敬語で話すという一面も見られる。
演者の内海賢二氏は本作公開から約3か月後に逝去されており、これが遺作の一つとなった。
本作オリジナルキャラクター
「創造の前に破壊あり・・・」
CV:
山寺宏一
本作の敵キャラ。創造を司る界王神とは対極に位置する破壊神。我儘で気分屋な性格。これまで悟空達が戦ってきたフリーザやセル、魔人ブウを遥かに凌ぐ圧倒的な力の持ち主。
39年の眠りから覚めた際に予知夢で「超サイヤ人ゴッド」を見たことや予言魚からお告げを受けて地球に降臨する。
ベジータによって知人としてブルマの誕生パーティーへ招かれてそこそこ楽しんでいたが、ブウとのトラブルから怒りを爆発させ、地球を本気で破壊しようと企む。
戦闘能力はシリーズ最強クラスと位置付けられているだけあってZ戦士とは天と地の差がある強さを誇り、映画内で倒されずに終わった珍しい劇場版ボスである。
CV:
森田成一
ビルスの付き人兼保護者役の
天使。独特な髪型と丁寧な口調が特徴の青年。
グルメな人物でもあり、ビルスが暴れている最中でも終始地球の食べ物を楽しんでいた。
ビルスを遥かに上回る戦闘力を持ち、DBの世界観においては上には上がいることを示した。
CV:
中川翔子
予言的中率が100%を誇るらしい魚。小さなガラス鉢の中に入れられている。
39年前にビルスにとっての強敵の出現を予言していたが、言った事実を覚えていないどころかビルスに指摘されると言ったことにするなど、適当なノリを見せる。
おまけ(?)
CV:
若本規夫
お馴染みDB2大ボスキャラ。
TVCMはこの2人による掛け合いとなっており、オールスター映画なのに自分が出てないことを嘆くセルに対しフリーザは(回想シーンだけど)出番があるからと得意げ。
…だったが、最後にセルから「
声の出演はないらしいぞ」と冷静に指摘されたことには愕然としていた。
なお、上述の特別版ではセルの(やはり回想だが)登場シーンも追加されている。
初期案について
渡辺による初期脚本の内容は「18号とクリリンの結婚式が舞台」「破壊神ビルスは破壊の心を植え付ける能力を持つ悪しき存在で、サイヤ人の悪の心のルーツ」といったストーリーだったとされている。
ちょっとシリアスな感じで「善と悪」や「ヒーローとは」みたいなテーマを考えていたとのこと。
上述したように渡辺は鳥山によるテーマの改変を支持しており、修正されたストーリー内容を見て「俺は何やってたんだろうと(笑)」と反省の弁を語っている。
超サイヤ人ゴッドは山室の初期デザイン案は「
マントを付けたゴツい外見」「
超サイヤ人3と超サイヤ人4の中間のようなデザイン」だったと言われている。
ストーリーの時系列的には『
ドラゴンボールGT』よりも前の作品となるため、その辺を意識していたのかもしれない。
余談
- 本作は日本映画としては史上初のIMAXデジタルシアターでの上映が行われた。
- 主要キャラクターは鳥山がデザインしなおしているが、特に髪型とか髪色のデザインに拘りがなかったらしく、設定画ではデザインを間違えているキャラクターが見当たる。
追記・修正は楽しいビンゴを踊ってからお願いします。
- 当時のTVCMだとフリーザとセルが宣伝してたな「お前声の出演はないらしいぞ」「なんですって!?」 -- 名無しさん (2022-04-09 13:54:24)
- 初期案は嫌いじゃないがドラゴンボールらしくは無いからなぁ。劇場版Zっぽさはあるが。 -- 名無しさん (2022-04-09 19:32:16)
- バトル挿入歌がウルトラカッコよくて大好き -- 名無しさん (2022-04-09 19:53:50)
- ブルマの38歳はどう考えてもサバを読んでる(悟空に出会ったのは26年以上前なので) -- 名無しさん (2022-04-09 22:18:08)
- ゴッドの初期デザインも何らかの形でお披露目されないかな? -- 名無しさん (2022-04-09 22:41:58)
- ↑2 悟空より4つ年上のはず(初登場時に悟空が12でブルマ16)だけど、メタ的には鳥山先生がその辺の設定忘れてて悟空と同い年だと勘違いされちゃったんだろうね -- 名無しさん (2022-04-10 06:20:59)
- 今まで項目無かったのかw -- 名無しさん (2022-04-10 12:26:07)
- 胎児でもサイヤ人の流れ汲んでいれば成立するなら、極端な話サイヤ人の子供身籠っている5人の妊婦?でも変身条件は満たせるなら割と緩い条件か?(但し純粋かハーフよりはパワーアップの割合は下がる) -- 名無しさん (2022-04-10 13:53:09)
- 初期の案には①忍び込むのは「 映画オリジナルの泥棒 」だったけど、訳合って懐かしきピラフ一味になった( ...ブルマやピッコロさんが反応しなかったのは気になったけど )②誰も死なない展開と町でのバトルが無いのは「 震災のことを配慮したから 」...だったっけ?それにしてもベジータだったら、自分にトレーニング用の攻撃マシンはきっと破壊するというイメージだったのに「 自分のパワーをコントロールして停止ボタンを押して重力トレーニングする 」...アレには驚いた....。 -- 名無しさん (2022-04-11 21:56:36)
- 映画、アニメ、漫画で三パターンもあるエピソード。漫画はこれ以外の映画エピソードはカットされている -- 名無しさん (2022-04-29 21:06:33)
- 個人的にブロリーより好き 緊張感と緩さのバランス、悟空というキャラクターの見せ方が秀逸だった -- 名無しさん (2024-08-10 21:02:23)
最終更新:2024年11月26日 17:10