フォード、英国生産101年の歴史に幕 工場閉鎖
欧州リストラ計画を公表
【ニューヨーク=杉本貴司】米フォード・モーターは25日、欧州でのリストラ計画の詳細を公表した。24日の発表で2014年末に閉鎖するとしたベルギー工場に加え、英国南部サウサンプトンにある商用車工場も13年内に閉鎖。101年に及ぶ英国での生産から撤退する。商用バンの生産はトルコに移す。英国南部ダッゲンハムの部品工場も閉鎖し、英国ではエンジンの開発・生産に集中する。
3工場合計でフォードの欧州での従業員の13%にあたる6200人を削減。生産能力の削減幅は年35万5千台。今後は利益が出る目安とされる90%以上の稼働率を目指す。欧州販売立て直しに向け今後5年内に、独自開発の小型低燃費エンジンを搭載する主力SUV(多目的スポーツ車)など15車種を投入する。
ムラーリー最高経営責任者(CEO)は「生産能力を(低迷する)需要に合わせ欧州事業を構造改革する」と強調した。
フォードは12年の欧州事業の損失を10億ドル(約800億円)と予測していたが、市場の冷え込みで15億ドル超になる見込みと修正。今回の一連のリストラで年間で4億5千万~5億ドルのコスト削減を見込む。
欧州では「業界全体で10程度の工場が余っている」(ゼネラル・モーターズ=GM=のアカーソンCEO)とされる。既に経営不振の仏プジョーシトロエングループ(PSA)が仏工場閉鎖を発表しているが、仏政府や従業員の反発に直面。GMも独子会社オペルが独工場の閉鎖を検討中だが、労組の反対で16年以降に先送りした。フォードが3工場の閉鎖に踏み切ることで、自動車各社が欧州危機の長期化を見越して欧州でのリストラを加速させそうだ。