中国、反日デモ抑え込みへ 北京市民に一斉メール
監視船は依然尖閣付近に
【北京=島田学】中国政府が、日本政府による沖縄県尖閣諸島の国有化に抗議する反日デモの抑え込みに動き始めた。北京公安局は19日朝、日本大使館前で連日起きていた反日デモを禁止することを市民に通告。中国政府は北京以外の各地でも事態を沈静化させたい考えとみられ、略奪事件の犯人を逮捕し始めた。一方、尖閣周辺海域では中国の海洋監視船が活動を継続。日本の海上保安庁が警戒を続けている。
北京公安局は19日朝、市民の携帯電話に一斉にショートメッセージを送り「愛国への情熱をほかの理性的な方法で表現し、抗議活動のために大使館付近には来ないように」と呼び掛け、デモ活動禁止を通告した。
同日朝には公安局が昨日までデモの現場となっていた大使館前の大通りの封鎖を解除したため、自動車が走行を再開。大使館側の歩道は武装警察が隊列を作って厳重な警備に当たっているため、デモ隊が行進できる場所がなくなった。
山東省青島公安局は19日午前、公式ミニブログで、15日に同市内で起きた日系企業への破壊行為などで計6人を逮捕したと公表した。
中国商務省の沈丹陽報道官は19日の定例記者会見で、反日デモで日系企業の工場や店舗が襲撃を受けたことに関し「一切の違法な破壊、略奪、放火行為には反対だ」と述べたうえで「違法な行為に遭った外資系企業は公安、商務部門を含む関係部門に支援を求めるべきだ」と強調した。
北京市内のセブンイレブンは19日朝から通常営業を再開。ただ一部店舗では日本製品は陳列していない。イオンは中国36店のうち襲撃された青島などを除く大半の店で営業を再開。イトーヨーカドーは午後にも北京で営業を再開する。
18日に総領事館の窓ガラスが約70枚割られた遼寧省瀋陽では19日朝も武装警察による警備が続いた。インターネット上ではデモの呼びかけはなく、18日に臨時休業した伊勢丹やヤマダ電機は通常営業に戻った。
中国の国営中央テレビは19日午前、福建省から出航していた漁船の一部が既に中国沿岸部に引き返していると伝えた。農業省漁業局に属する漁業監視船は尖閣諸島から約55~60カイリ離れた海域で活動を継続中という。
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19日午前10時ごろ、尖閣諸島の久場島北西約35キロの接続水域内で中国の漁業監視船1隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認した。18日午前から航行し続けていた監視船など別の2隻は、19日午前10時までに接続水域外に出た。海保は巡視船の電光掲示板などで領海内に侵入しないよう警告を続けている。接続水域の外には計12隻がとどまっているという。
藤村修官房長官は19日の閣議後の記者会見で、尖閣諸島の接続水域に入った中国の漁業監視船などの動きについて「情報収集と警戒監視に万全を期して取り組んでいる」と述べ、引き続き把握に努める姿勢を強調した。
尖閣に向かったとされる約1千隻の中国漁船に関しては「接続水域内に中国漁船が大量に存在しているとの情報はない」と述べるにとどめた。