太陽光パネル底なし不況、国内出荷26%減 4~6月
太陽光パネルの国内業界が底なし不況の様相を呈している。業界団体が1日発表した2016年4~6月期の国内出荷量は前年同期と比べて26%減少。15年度に8年ぶりに前年実績を割り込んでから、復調の兆しが見えない。需要減少で関連企業の業績は悪化、倒産に追い込まれる企業も増えてきた。
太陽光発電協会(東京・港)が発表した太陽光パネルの4~6月の国内出荷量は出力ベースで118万キロワットだった。四半期ベースで前年同期を下回るのは2015年1~3月期以降、6四半期連続だ。
出荷量を押し下げているのは、全体の8割弱を占めるメガソーラー(大規模太陽光発電所)など向けの産業用だ。4~6月期の出荷量は91万キロワットと前年同期から24%落ち込んだ。
メガソーラー、うまみ乏しく
つい数年前まで旺盛なメガソーラー向け需要に支えられ、バブルを謳歌していた太陽光パネル業界。きっかけは12年に政府が導入した再生可能エネルギーの「固定価格買い取り制度」。再生エネで発電した電気を電力会社に一定期間決まった価格で販売できるため、メガソーラーへの投資が相次いだ。当時の買い取り価格は1キロワット時当たり40円。メガソーラーは「つくればもうかる」とさえ言われた。前年の東日本大震災で東京電力福島第1原子力発電所の事故が起き、再生エネの導入機運が高まっていたことも追い風だった。
だが急激に太陽光発電が増えたことで、送電を担う電力会社の能力が限界に達した。九州電力などが一時、再生エネの受け入れを停止する事態に発展。政府の認定を受けたにもかかわらず、稼働していない案件も問題になった。政府は買い取り価格を年々引き下げ、16年度は同24円。メガソーラー事業のうまみは乏しくなった。
需要の大幅な減少で太陽光パネル関連企業は苦境にあえぐ。太陽光パネル材料を製造するトクヤマは16年3月期まで2期連続の最終赤字。今年5月には企業再生ファンドのジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS、東京・千代田)の支援を受けることを決めた。シャープや京セラなどパネルメーカーも収益が悪化している。
倒産件数が増加
リストラに動く企業も増える。パナソニックは太陽光でつくった電気を交流に変換するパワーコンディショナー(電力変換装置)の製造拠点の再編に着手。17年4月をメドに、国内3工場を1工場に集約する。今年2月から稼働停止中の太陽光パネルの主力工場も再開時期を今秋としていたが、先送りすることも決めた。メガソーラーや住宅用太陽光パネルの販売を手掛けるサニックスでは今年5月までに3回にわたって希望退職者を募集。従業員数は14年度末の約半分にまで減った。
持ちこたえられない企業も出てきた。東京商工リサーチによると、メガソーラーの運営会社や施工業者など太陽光発電関連企業の倒産件数は今年1~6月で31件。00年以降の上半期ベースで過去最多だ。
このまま国内の太陽光パネル市場は縮んでしまうのか。
資源が乏しい日本にとって、太陽光は貴重なエネルギー源。環境への配慮からも再生エネの導入は日本にとって欠かせない。政府も太陽光発電の国内導入量を2030年までに15年比で約2.7倍にする見通しを掲げ、住宅メーカーなども住宅用途での展開に力を入れ始めている。
それでも「宴(うたげ)」の後始末に追われる関連企業。業界の苦闘が続きそうだ。
(相模真記)