日経サイエンス  2015年9月号

デング熱ストッパー

S. オニール(豪モナシュ大学)

昨年来,代々木公園周辺など国内での感染事例が発生したデング熱。もちろん日本だけの問題ではなく,世界保健機関によると世界人口の約半数が感染の危険にさらされている。ワクチンも治療法もないこの病気を抑える方法はウイルスを媒介するネッタイシマカの駆除しかないとされてきたが,新たな可能性が開けてきた。ボルバキアという自然界によく見られる細菌を使ってデング熱と闘うプロジェクトが進んでいる。この共生細菌はデングウイルスを媒介する蚊の体内でウイルスの複製を阻止する。実験室でネッタイシマカにボルバキアを感染させて野に放ち,野生の蚊にボルバキアを広めてデング熱を媒介できなくする作戦だ。
 
 

 

 

再録:別冊日経サイエンス221「微生物の脅威」
再録:別冊日経サイエンス214「人類危機 未来への扉を求めて」

著者

Scott O’Neill

オーストラリアにあるモナシュ大学の理学部長で,ボルバキアに関する国際共同研究「デング熱撲滅プログラム」のリーダー。

原題名

The Dengue Stopper(SCIENTIFIC AMERICAN June 2015)

サイト内の関連記事を読む

キーワードをGoogleで検索する

デング熱ボルバキアネッタイシマカデング熱撲滅プログラム