曲面の第1基本形式
次の式は微分幾何の分野で学習する曲面の第1基本形式。
「上のような式で示されるのが第1基本形式だと教わるけど、これが何を意味するのか、どうして大事なのか、さっぱりわからない。」
第1基本形式というのは、曲面の形を説明するための式。
人間は目で見て「曲面Aと曲面Bは同じっぽい」とか「曲面Aと曲面Cは全然違う」とか、すぐにわかる。
「じゃあ、目の見えない人に形を説明するにはどうすればいいの?」
と考えると、基本形式の存在意義がわかる。
第1基本形式によって、曲面の形を簡潔に記述できる。
第1基本形式をよく見ると、曲面がどんな形をしているのかがわかる。
「曲面は最初から数式で表現されているのだから、その数式そのものが形を説明しているでしょう。わざわざ別の表現に置き換える必要はなに?」
次の2つの楕円はまったく同じ形だけど、(位置や向きが違うので)式の形は全然違う。
なので、位置や向きに影響されないで、形の特徴だけを上手に説明するような式が必要。
それが第1基本形式。
「第1基本形式を見ると何がわかるの?」
第1基本形式に出てくる係数 E, F, G が第1基本量と呼ばれるもので、これを観察すると次のようなことがわかる。
E: この値で u 方向の伸び具合がわかる
F: この値で、u方向とv方向の成す角の様子がわかる。ゼロであれば、u方向とv方向は直交していることを意味する。
G: この値で v 方向の伸び具合がわかる
ということで、第1基本形式によって、曲面の形を示すことができる!便利!
でも、残念ながら、パッと見ただけで、だいぶ形が違う曲面が同じ第1基本形式を持つこともある。
第1基本量が同じ2つの曲面は、「局所等長的」と言って、一方の曲面を伸縮させないで他方の曲面に変形することができる。
「可展面と平面」の関係とか「懸垂面と螺旋面」の関係が有名。
これはつまり、人間が外から眺めれば違う曲面だと判断するような2つの曲面を、第1基本形式だけでは区別できないということを意味する。
この違いを区別するためにあるのが「第2基本形式」と第2基本計量。
詳しくは次のページがわかりやすい。
曲面の基本形式と曲率(2) - 第2kame日記
ちなみに、曲面の局所的な曲がり具合を示すガウス曲率は第1基本量だけで導出することができて、この事実は「驚異の定理」と呼ばれている。
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あと、放送大学の「空間とベクトル」の第8回、第9回もおススメ。
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