現代幾何学を何も知らなければ, まず本書か
「数学ガール/ポアンカレ予想」
「多様体の基礎」
を読んでみるとよい. いずれも位相空間論の知識は仮定していない.
本書は厚くはなく厳密性より初等的なわかりやすさを重視している. なので曲線論や曲面論や多様体の知識が必要な方なら数学徒ではなくとも読めると思う. 幾何学のあらゆる考え方や概念((偏)微分方程式との関連・測地線・微分形式・リーマン計量・ベクトル場・共変微分・多様体・幾何学的不変量など)が初等的に書かれている. 厳密なことや高度な内容を理解している人向けの補足も所々に見られる.
多様体の線型接続については本書の共変微分と測地線の節が理解の参考になる. 特に本書の問にあるベクトル場の共変微分の公式と測地線の方程式の変形版を知っておくと定義の動機がわかる.
最初は細部の計算過程や必要最小限以外の具体例や問あるいは証明は適宜飛ばして論理展開をつかむ読み方だと理解しやすい.
私は本書で初めてフルネ-セレの公式や基本形式やリーマン計量の本質がわかった.
本文を読んでいて気づいたが, 曲面p(u, v)上の曲線p(s)の法曲率(κ_n)(s)とリーマン計量ds^2と第二基本形式Ⅱの間に
(κ_n)(s)ds^2=Ldu^2+2Mdudv+Ndv^2=Ⅱ
の関係がある. ゆえに曲面p(u, v)上の曲線p(s)の法曲率(κ_n)(s)を考えるには各点p(u(s), v(s))における単位法ベクトルe=((p_u)×(p_v))/|(p_u)×(p_v)|が必要不可欠なことがわかる(dx^2は(dx)^2の意味である).
第一基本形式Ⅰと第二基本形式Ⅱの他に第三基本形式Ⅲがあり, これらと, ガウス曲率K, 平均曲率Hについて
KⅠ−2HⅡ+Ⅲ=0
が成り立つことを知ったときは感動した.
三角形の内角の和がπであることや四角形の内角の和が2πであることを含むガウス-ボネの定理にも詳しく, 興味深い.
xyz-座標空間において方程式
z=αx^2+βy^2
がαβ>0のとき楕円放物面, αβ<0のとき双曲放物面, αβ=0のとき放物柱面またはxy-座標平面を表すことは知っておくと理解がしやすい. また「改訂新版 ベクトル解析からの幾何学入門」を先に読んでいると全体的に理解が早く深くなる.
予備知識は微分積分(重積分まで)と簡単な線型代数(行列・数ベクトル空間・固有値など)で充分であるが(コーシー-リーマン方程式までの)複素解析も知っていると, さらなる広がりもわかる. ただガウス曲率と平均曲率の二つの定義が一致することの証明では2×2(正則)行列P, Qに対し
det(PQ)=det(QP)
det(P^(−1))=(det(P))^(−1)
tr(PQ)=tr(QP)
が成り立つという地味な命題が使われている. 直線は半径が無限大の円とみなせることも知っておくと曲率の理解が深まる. 常微分方程式の初期値問題の解の存在と一意性(例えばコーシー-リプシッツの定理)について知っているとなお良い.
ちなみに本文に「使って便利で正しい結果が出てくる概念, 記号, 式などは当初曖昧な点があっても, 後できちんと定式化されるということは数学の歴史が示している」とある. 典型的な例が微分形式と超関数である. 超関数はカレントという概念に拡張され複素幾何で用いられている. そして超関数の厳密な定義は
「新訂版 数理解析学概論」
が参考になる.
幾何学が数学徒だけの物ではなくなった現代において本書は幾何学の入門書としてますます価値が高まりそうである. 誤植は殆んどない.
なお, 微分形式の外積の記号∧は「かつ」ではなく「ウエッジ」と読む. ご存知かもしれないが念のため.
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曲線と曲面の微分幾何 単行本 – 1995/9/1
小林 昭七
(著)
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Gauss-Bonnetの定理のように,美しく深みのある幾何を理解してもらうために,微積分の初歩と2次3次の行列を知っていれば容易に読み進めるように解説.
1995年の改訂では,「極小曲面」の章を新設し,第2章にでてくる例を詳しく調べることに重点をおき,図の改良にも工夫をした.
1995年の改訂では,「極小曲面」の章を新設し,第2章にでてくる例を詳しく調べることに重点をおき,図の改良にも工夫をした.
- ISBN-10478531091X
- ISBN-13978-4785310912
- 版改訂
- 出版社裳華房
- 発売日1995/9/1
- 言語日本語
- 本の長さ208ページ
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著者について
カリフォルニア大学名誉教授、Ph.D.。1932年 山梨県出身。東京大学理学部卒業。プリンストン高等研究所研究員、マサチューセッツ工科大学研究員、ブリティッシュ・コロンビア大学助教授、カリフォルニア大学バークレー校助教授・副教授・教授などを歴任。2012年逝去。主な著書に『微分積分読本』『円の数学』『接続の微分幾何とゲージ理論』(以上 裳華房)、『複素幾何』『顔をなくした数学者』(以上 岩波書店)、『ユークリッド幾何から現代幾何へ』(日本評論社)などがある。
登録情報
- 出版社 : 裳華房; 改訂版 (1995/9/1)
- 発売日 : 1995/9/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 208ページ
- ISBN-10 : 478531091X
- ISBN-13 : 978-4785310912
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現代幾何学の入門への入門書として
現代幾何学を何も知らなければ, まず本書か「数学ガール/ポアンカレ予想」「多様体の基礎」を読んでみるとよい. いずれも位相空間論の知識は仮定していない.本書は厚くはなく厳密性より初等的なわかりやすさを重視している. なので曲線論や曲面論や多様体の知識が必要な方なら数学徒ではなくとも読めると思う. 幾何学のあらゆる考え方や概念((偏)微分方程式との関連・測地線・微分形式・リーマン計量・ベクトル場・共変微分・多様体・幾何学的不変量など)が初等的に書かれている. 厳密なことや高度な内容を理解している人向けの補足も所々に見られる.多様体の線型接続については本書の共変微分と測地線の節が理解の参考になる. 特に本書の問にあるベクトル場の共変微分の公式と測地線の方程式の変形版を知っておくと定義の動機がわかる.最初は細部の計算過程や必要最小限以外の具体例や問あるいは証明は適宜飛ばして論理展開をつかむ読み方だと理解しやすい.私は本書で初めてフルネ-セレの公式や基本形式やリーマン計量の本質がわかった.本文を読んでいて気づいたが, 曲面p(u, v)上の曲線p(s)の法曲率(κ_n)(s)とリーマン計量ds^2と第二基本形式Ⅱの間に(κ_n)(s)ds^2=Ldu^2+2Mdudv+Ndv^2=Ⅱの関係がある. ゆえに曲面p(u, v)上の曲線p(s)の法曲率(κ_n)(s)を考えるには各点p(u(s), v(s))における単位法ベクトルe=((p_u)×(p_v))/|(p_u)×(p_v)|が必要不可欠なことがわかる(dx^2は(dx)^2の意味である).第一基本形式Ⅰと第二基本形式Ⅱの他に第三基本形式Ⅲがあり, これらと, ガウス曲率K, 平均曲率HについてKⅠ−2HⅡ+Ⅲ=0が成り立つことを知ったときは感動した.三角形の内角の和がπであることや四角形の内角の和が2πであることを含むガウス-ボネの定理にも詳しく, 興味深い.xyz-座標空間において方程式z=αx^2+βy^2がαβ>0のとき楕円放物面, αβ<0のとき双曲放物面, αβ=0のとき放物柱面またはxy-座標平面を表すことは知っておくと理解がしやすい. また「改訂新版 ベクトル解析からの幾何学入門」を先に読んでいると全体的に理解が早く深くなる.予備知識は微分積分(重積分まで)と簡単な線型代数(行列・数ベクトル空間・固有値など)で充分であるが(コーシー-リーマン方程式までの)複素解析も知っていると, さらなる広がりもわかる. ただガウス曲率と平均曲率の二つの定義が一致することの証明では2×2(正則)行列P, Qに対しdet(PQ)=det(QP)det(P^(−1))=(det(P))^(−1)tr(PQ)=tr(QP)が成り立つという地味な命題が使われている. 直線は半径が無限大の円とみなせることも知っておくと曲率の理解が深まる. 常微分方程式の初期値問題の解の存在と一意性(例えばコーシー-リプシッツの定理)について知っているとなお良い.ちなみに本文に「使って便利で正しい結果が出てくる概念, 記号, 式などは当初曖昧な点があっても, 後できちんと定式化されるということは数学の歴史が示している」とある. 典型的な例が微分形式と超関数である. 超関数はカレントという概念に拡張され複素幾何で用いられている. そして超関数の厳密な定義は「新訂版 数理解析学概論」が参考になる.幾何学が数学徒だけの物ではなくなった現代において本書は幾何学の入門書としてますます価値が高まりそうである. 誤植は殆んどない.なお, 微分形式の外積の記号∧は「かつ」ではなく「ウエッジ」と読む. ご存知かもしれないが念のため.
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- 2019年12月14日に日本でレビュー済みAmazonで購入現代幾何学を何も知らなければ, まず本書か
「数学ガール/ポアンカレ予想」
「多様体の基礎」
を読んでみるとよい. いずれも位相空間論の知識は仮定していない.
本書は厚くはなく厳密性より初等的なわかりやすさを重視している. なので曲線論や曲面論や多様体の知識が必要な方なら数学徒ではなくとも読めると思う. 幾何学のあらゆる考え方や概念((偏)微分方程式との関連・測地線・微分形式・リーマン計量・ベクトル場・共変微分・多様体・幾何学的不変量など)が初等的に書かれている. 厳密なことや高度な内容を理解している人向けの補足も所々に見られる.
多様体の線型接続については本書の共変微分と測地線の節が理解の参考になる. 特に本書の問にあるベクトル場の共変微分の公式と測地線の方程式の変形版を知っておくと定義の動機がわかる.
最初は細部の計算過程や必要最小限以外の具体例や問あるいは証明は適宜飛ばして論理展開をつかむ読み方だと理解しやすい.
私は本書で初めてフルネ-セレの公式や基本形式やリーマン計量の本質がわかった.
本文を読んでいて気づいたが, 曲面p(u, v)上の曲線p(s)の法曲率(κ_n)(s)とリーマン計量ds^2と第二基本形式Ⅱの間に
(κ_n)(s)ds^2=Ldu^2+2Mdudv+Ndv^2=Ⅱ
の関係がある. ゆえに曲面p(u, v)上の曲線p(s)の法曲率(κ_n)(s)を考えるには各点p(u(s), v(s))における単位法ベクトルe=((p_u)×(p_v))/|(p_u)×(p_v)|が必要不可欠なことがわかる(dx^2は(dx)^2の意味である).
第一基本形式Ⅰと第二基本形式Ⅱの他に第三基本形式Ⅲがあり, これらと, ガウス曲率K, 平均曲率Hについて
KⅠ−2HⅡ+Ⅲ=0
が成り立つことを知ったときは感動した.
三角形の内角の和がπであることや四角形の内角の和が2πであることを含むガウス-ボネの定理にも詳しく, 興味深い.
xyz-座標空間において方程式
z=αx^2+βy^2
がαβ>0のとき楕円放物面, αβ<0のとき双曲放物面, αβ=0のとき放物柱面またはxy-座標平面を表すことは知っておくと理解がしやすい. また「改訂新版 ベクトル解析からの幾何学入門」を先に読んでいると全体的に理解が早く深くなる.
予備知識は微分積分(重積分まで)と簡単な線型代数(行列・数ベクトル空間・固有値など)で充分であるが(コーシー-リーマン方程式までの)複素解析も知っていると, さらなる広がりもわかる. ただガウス曲率と平均曲率の二つの定義が一致することの証明では2×2(正則)行列P, Qに対し
det(PQ)=det(QP)
det(P^(−1))=(det(P))^(−1)
tr(PQ)=tr(QP)
が成り立つという地味な命題が使われている. 直線は半径が無限大の円とみなせることも知っておくと曲率の理解が深まる. 常微分方程式の初期値問題の解の存在と一意性(例えばコーシー-リプシッツの定理)について知っているとなお良い.
ちなみに本文に「使って便利で正しい結果が出てくる概念, 記号, 式などは当初曖昧な点があっても, 後できちんと定式化されるということは数学の歴史が示している」とある. 典型的な例が微分形式と超関数である. 超関数はカレントという概念に拡張され複素幾何で用いられている. そして超関数の厳密な定義は
「新訂版 数理解析学概論」
が参考になる.
幾何学が数学徒だけの物ではなくなった現代において本書は幾何学の入門書としてますます価値が高まりそうである. 誤植は殆んどない.
なお, 微分形式の外積の記号∧は「かつ」ではなく「ウエッジ」と読む. ご存知かもしれないが念のため.
このレビューの画像 - 2010年12月2日に日本でレビュー済みAmazonで購入宝石が散りばめられたような微分幾何学の入門書であり、微分幾何学に少しでも興味があるならば、是非読んで欲しい本です。一般の数学書のような形フォーマルな文面ではなく、講義中の語りかけのようにイメージも含めて伝えてくれます。
・予備知識
学部1、2年生程度の微分積分(特に偏微分)と線形代数(特に行列)の知識があれば十分ですが、この本の個人的な(普通ならば、ガウス・ボンネの定理でしょうが)一番の読みどころである第五章『極小曲面』を読むにあたって、学部2、3年生程度の複素解析の知識があると尚、この本の素晴らしさがわかっていただけると思います。
以上にあげた分野の復習にもなるので、時間はかかると思いますが、一行一行を噛み締めて飛ばさずに、かつ、行間を補って読んでいくことを推奨します。埋めるべき行間は結構あります。また、この本を読んでいて、「全体的に難易度が高いな」と思ってしまった場合は早急に微分積分と線形代数の復習をすべきです。しかし、複素解析の知識を要する部分に関しては若干理解しにくい部分もありますので、複素解析の未習、既習に拘らず、そこに関しては少し厳しいと感じても、臆さず読みきってほしいと思います。
さらに、第一章の§5における「Fenchelの定理」の証明についても、他書にはあまり見られない初等的な曲線論で展開されていますが、「適当な〜」などの日本語に隠された様々な問題点や議論すべき点があります。
・読みやすさ、見やすさ
本のページ数的には200ページ程度で厚くなく薄くなく、文字数的にも大きすぎず小さすぎずといった感じですが、内容に関してはページ数と文字数から考えると、非常に満足できるものであり、レイアウトも非常に見やすい本だと思います。例題は扱いやすいものであり、§末の問題も難しくなく、多すぎず少なすぎず適量です。また、日本語の数学書でここまで『極小曲面』について触れている本はないと言っても過言ではないと思います。特に『Weierstrass-Enneperの表現』は読み応え十分です。(証明はやや天下り式ですが、どのようにして導入されていったかは汲み取れます)
ここまで良書と言うのも、1977年に第1版が発行されてから、2009年まで36版(自分が現在持っているもの)もされていることと、1995年に改訂されたことで、図がより立体的に見やすくなり、第五章の『極小曲面』が追加されたことにより、更に読み応えのある本になったからでしょう。特に幾何学において正確で見やすい図というのは理解の大きな助けになることは言うまでもありません。
他の曲面論入門の本も読んでみたいのなら、
・『曲線と曲面―微分幾何的アプローチ』/梅原雅顕、山田光太郎
・『曲面の微分幾何学―局所理論から大域理論へ』/塩濱勝博
・『曲線・曲面と接続の幾何 (数学レクチャーノート入門編)』/小沢哲也
などもお薦めです。
もう少し専門的な本を読みたいのなら、
・『微分幾何学―大域的考察を中心に (1957年)』/佐々木重夫
・『多様体の微分幾何学 (実教理工学全書)』/丹野修吉
・『A Survey of Minimal Surfaces (Dover Books on Mathematics)』/Robert Osserman
・『Differential Geometry of Curves and Surfaces』/Manfredo DoCarmo
・『Geometric Measure Theory, Fourth Edition: A Beginner's Guide』/Frank Morgan
→ 和訳版『幾何学的測度論―石けん膜の数理解析』/監訳:儀我美一
などもおもしろいと思います。
また、微分幾何学を専攻するならリーマン幾何学も学ぶべきでしょう。
・『リーマン幾何学 (数学選書)』/酒井隆
以下は内容と誤植に関してです。
・内容
第一章『平面上の曲線、空間内の曲線』
§1 曲線の概念
§2 平面曲線
§3 平面曲線に関する大域的定理
§4 空間曲線
§5 空間曲線に関する大域的定理
第二章『空間内の曲面の小域的理論』
§1 空間内の曲面の概念
§2 基本形式と曲率
§3 実例について基本形式、曲率の計算
§4 正規直交標構を使う方法
§5 2変数の外微分形式
§6 外微分形式を使う方法
第三章『曲面上の幾何』
§1 曲面上のRiemann幾何
§2 曲面の構造方程式
§3 ベクトル場
§4 共変微分と平行移動
§5 測地線
§6 最短線としての測地線
第四章『Gause-Bonnetの定理』
§1 外微分形式の積分
§2 Gause-Bonnetの定理(領域の場合)
§3 Gause-Bonnetの定理(閉曲面の場合)
第五章『極小曲面』
§1 平均曲率と極小曲面
§2 極小曲面の例
§3 等温座標系
§4 Weierstrass-Enneperの表現
§5 随伴極小曲面
§6 極小曲面の曲率
§7 Gaussの曲面表示
・誤植
P.60 問2.4
H=(1/2)*(EN+GL-2FM)/(EG-F^2)と定義しているので、P.61の3行目の右辺は【-2∬〜dudv】となるはずです。(2倍忘れ?)
しかし平均曲率Hに関しては1/2倍を考えない場合もあるので、そう考えると合っていることになります。
P.169 定理6.1の直前の3行
計算してみると(ds^‾)^2【dsチルダの2乗】=| f g |dwdw^ ̄ になりました。
また、その下の「第2章(2.43)より〜」は「第3章(2.43)より〜」の間違いと思われます。
P.170 ページ下の図
原点を中心とした単位球の間違いでしょう。
・問題点
P.20 9行目
「曲線を適当に回転させることにより、接ベクトル〜」という条件だと、
数字の「8」のような自己交叉をもつ閉曲面にこの議論に問題点が生じます。
接ベクトルの方向を限定させるような具体的な回転を考えることで問題は解消されます。
正誤表のPDFファイルが公式ページにあります。
著者である小林昭七先生が、2012年8月29日にご逝去なされました。
もっと多くの本を著作していただき、いろいろなことを教えていただきたかったです。
心よりお悔やみ申し上げます。
- 2023年7月6日に日本でレビュー済みAmazonで購入一読して、曲線の長さや3次元空間での曲面の面積を求める計算方法を説明している本ということは理解できた。細部はよく理解できていない。Gauss-Bonnetの定理までは演習問題があるので、ここまでは勉強した方がいいということがわかる。演習問題の解答も丁寧に書かれている。ただ、自分の理解が追いついていないので、「中内伸光著『じっくり学ぶ曲線と曲面』(共立出版)」を読んでから再読したい。