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情報処理学会 創立50周年記念全国大会に行ってきた

生みの親が東大で語った「ニコニコ動画」と「初音ミク」の全て

2010年03月11日 20時00分更新

文● 榎本 統太(@t2enonu)

情報処理学会創立50周年記念全国大会で開かれたシンポジウム「CGMの現在と未来」の開演を待つ教室で。スクリーンを右から左に同人ゲームからの派生キャラクター「ゆっくり」が横切っていく

 「♪シージーエムの 現在と未来〜♪」

 10日、東京大学の本郷キャンパス。700人を収容する大教室はすでに満席だ。室内の様子はニコニコ生放送とUstreamで世界に「生配信」されている。CGのシロクマがイベントの案内を演歌調で歌う動画が映し出され、緊張した場の雰囲気が一気に和らいだ。

司会を務めた産業技術総合研究所 情報技術処理部門 後藤真孝氏

 ネットとリアル、両方の聴衆が待っているのは、情報処理学会創立50周年記念全国大会のイベントとして開催されるシンポジウム「CGMの現在と未来」。

 歌声合成ソフト「初音ミク」を発売するクリプトン・フューチャー・メディア社の伊藤博之氏や、「ニコニコ動画」を開発した戀塚昭彦氏など豪華メンバーを集め、CGM文化の現在を整理してその未来像を考えるというもので、ネット上では早くから注目を集めていた。

 シロクマの動画は、シンポジウムに先立ってあらかじめ主催者がニコニコ動画に投稿していた告知動画「『CGMの現在と未来』に来ませんか?」の歌詞を使った二次創作作品。続けて同じ曲をニコニコ動画でおなじみのキャラクター「ゆっくり」が歌う動画、元動画の初音ミクの歌に手描きアニメを加えた動画などが披露された。

 開会に先立ち、司会を務める産業技術総合研究所の後藤真孝氏は、消費者生成メディア、CGMの定義そのものについて解説。「その意味は幅広いが、今回はメディアコンテンツ、特に音楽関連を中心に現在と未来を議論したい」と狙いを語り、今回のテーマである「ニコニコ動画」「初音ミク」「ピアプロ」の歴史を紹介した。

2006年からわずか4年間で爆発的にコンテンツを増やした「ニコニコ動画」「初音ミク」そして「ピアプロ」の歴史

 後藤氏は、ニコニコ動画の会員数1600万人が日本の総人口の約12.5%にあたるという数字を挙げて、「ここにいらっしゃる方々の周辺はニコニコ動画のユーザーで埋め尽くされているのではないでしょうか」と語る。その言葉に笑いが漏れる中、4名のパネリストによる講演が始まった。


VOCALOID生みの親が語る
「歌声合成の過去・現在・未来」

 最初の講演者は、「初音ミク」にも使われている歌声合成エンジン「VOCALOID」(ボーカロイド)の開発リーダーである剣持秀紀氏(ヤマハ サウンドテクノロジー開発センター)だ。

 「VOCALOIDの開発は2000年の3月頃から始まった。昨日(3月9日)お台場で『ミクの日感謝祭』のライブを観たが、開発を始めてからちょうど10周年。感慨深い」と語りはじめた剣持氏は、1960年代にアメリカ・ベル研究所で始まった歌声合成の歴史を概説した後、「なぜ歌声合成を使うのか?」という問いを提示した。

ヤマハ サウンドテクノロジー開発センターでVOCALOIDエンジンの開発に携わる、剣持秀紀氏

 人の声と合成音声を「メトロノームと電子メトロノームのような関係」とたとえ、「電子メトロノームが独自の魅力を持ち、メトロノームの代用ではなくなったように、歌声合成も人間の歌手の単なる代用以上のものでなければならない」と強調した。

歌声合成の歴史は1960年代にまでさかのぼる。原点はアメリカ・ベル研究所で開発されたもの

 剣持氏は、「未来の歌声合成」に必要なものとして「声のバリエーション」「利用場面」「ユーザー層」という3つの軸を挙げた。現在開発中という「スペイン語版」ボーカロイドの音声などの実例を挙げ、これから技術を発展させていく方向性を示した。

「声のバリエーション」「利用場面」「ユーザー層」という3つの「軸」を元にボーカロイド技術を拡大していきたいとした

 その他にも、オーケストラの歌の部分にボーカロイドを使ったもの、さらには「歌声に近い話し声」の実例として自分の子供の声を紹介するなど、初公開の音源を含めさまざまなサンプルを聴かせてくれる、楽しいプレゼンテーションだった。

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