Tumblrとカレーでmeetup Vol.1

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ほぼちょうど一月前になりますが「Tumblrとカレーでmeetup Vol.1」に参加してきました。実は明日がTumblr Meetup vol.2なので、その前に滑り込み報告。

日本のTumblrが変わり始めた?

私のTumblrはもっぱら気になった記事のQuote(引用)、いわばクリッピングとかブックマークの使い方です。初期、例えば2007年から2012年ぐらいに、Tumblrが入ってきて最初に日本でに立ち上がったのは、こうしたブックマークやクリッピングに使う人、あるいはリブログすることで拡散したりコレクションする人、そしてそういった人たちのコミュニティやイベントでした。Tumblr内部でも「日本の使われ方とリブログ比率は特異」と言われたことがあるようです。

そうしたユーティリティとしてのTumblr利用に対して、海外では創始者のDavid Karpが言うとおり「自分を表現(Expression)するツール」、ブログなどと同様にパブリッシング・プラットフォームとして広く使われたようです。2011年ごろに調査した時、すでに企業等の公式サイト、公式ページでTumblrを利用している例も見られ、スモールビジネスのほかに官公庁、セレブリティ、そしてファッションブランドでの利用が目立ちました。

Effective Tumblrでは、パブリッシング・プラットフォームとしてのTumblr活用をプレゼンテーションし、以降こうした公式サイト利用事例を紹介していました。しかしある時期からそれは「普通のこと」になってきて、新しいサイトの登場を追いかけなくなっていきました。そして2年余りたった最近、池袋で見つけたカフェ、Coffee Valleyの公式サイトを見ていて、ふとページの右上に「Tumblrでフォロー」のボタンがあるのに気づきました。

公式サイト事例はもう「さがす」ものではなく「自然に見かける」ものにまで普通化してきたようです。先日、もうひとつ見つけました。「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」という映画を観たあと、公式サイトをiPhoneで開きました。最初は気づかなかったのですが、「Tumblrアプリで開きますか?」というダイアログが表示されたのです。Tumblrサイトだったのです。

そしてmeetupの席上で「Apple MusicのプログラムガイドがTumblrだよ」と指摘がありました。Apple Musicの公式サイトです。

Tumblrは以前のような爆発的な話題力を見せなくなっていますが、それでも順当に浸透し続けてきたのだと思います。一方で、Webサイトには「フラットデザイン」「ミニマルデザイン」と呼ばれる、シンプルで端整な、Tumblrサイトと相性のよいデザインを見直す動きが出てきました。この数ヶ月、Tumbrlサイトを「探す」のではなく日常の中で「見かける」経験をしてきました。

Tumblr“パブリッシングプラットフォーム”ユーザー達

そしてカジュアルに呼びかけられた「Tumblrとカレーでmeetup Vol.1」に参加してみると、そこに集まってきていた人の多くはTumblrをCMSとして、パブリッシングプラットフォームとして使いたいと考えている人たち、使っている人たちでした。参加者たちのTumblrを紹介しましょう。

一目でTumblrとわかるサイトもありますし、相当に外観をカスタマイズされたサイトもあります。いずれも共通して、情報発信のプラットフォームとしてTumblrを使っています。

「みんな困っていないのか?」

会場を提供しているTAMの加藤氏と小栗氏から、同社で担当した「A piece of SHAMASION」の事例とオープン後に見舞われたトラブルの紹介がありました。

「A piece of SHAMAISON」は、積水ハウスの賃貸住宅「シャーメゾン(SHAMAISON)」を紹介するサイトです。TAMは積水ハウスさんとソーシャルメディア活用などで以前からお付き合いがあり、Facebookの導入から初めて一年を経て、積水ハウス側にも「ソーシャルメディアは怖いものではない」という実感が浸透してきているそうです。またシャーメゾンという商品が、例えば一人暮らしの始まる大学新入生など若い層をターゲットとしているものの、最近はテレビCMを打っても必ずしも若年層は観ておらず、ソーシャルメディアなどでのリーチの補強をしたいという要望があったそうです。

そうした流れの中で、TAMの加藤氏のノートPCに貼られていた「Tumblr」ステッカーを覚えていた積水ハウス側の担当者から、「君はTumblrも詳しいだろう、やれないか」と持ちかけられたとのことです。デザインは既存テーマなどは使用せず、デザイン案を提出して、承認された後にフルスクラッチで作成。デザインイメージのすり合わせ時は、例としてケイト・スペードのTumblrを挙げたら「そこなら見たよ」と反応があったり、積水ハウス側もTumblrの理解に積極的だったようです。最初の投稿は2014年12月。TAMではコンテンツ作成も行っており、サイトオープン後も運用支援として月に1度ミーティングを持っているそうです。

トラブルの発生は2015年4月。ある日、「A piece of SHAMASION」の記事一覧に記事がまったく表示されなくなったとのこと。確認を進めると、ダッシュボードでも記事が表示されない。ただ、記事の個別URLを直接指定すると記事が出てくるので、アカウントが停止されているとかデータが消えているといったことではなさそう。Tumblrの問合せフォームに問合せを投げつつ、さらに切り分けを続行。

何か表示を壊してしまうコンテンツがあるのか?自作しているテーマに問題が?確認用に新しいTumblrサイトを作成し、同内容の投稿を作成したりテーマを少しずつ再現しながら、加藤氏や国田氏が何よりも強く思ったことがあったそうです。

この問題は、自分たちのところでしか起きていないのか?

自分たちのサイトやコンテンツの問題なのか、サービスとして利用しているTumblrの問題なのか。他のサイトでも発生しているなら後者だから、今の自分たちのサイトやコンテンツの調査を続けても切り分けや解決には至らない。いまも「A piece of SHAMAISON」はコンテンツが表示されず、顧客の逸失利益を生んでいる。他サイトで同じ問題が起きているという話は聞こえないけれど、でも本当に他サイトでは起きていないのか?

連絡をもらって高橋氏も検討に加わり、ようやく実は他サイトでも起きている例があるらしいという話が聞こえてきます。また1月あまりもTumblr側レスポンスが捗々しくない背景としてnihongo.tumblr.comの体制なども見えてきて、英語ベースに切り替えて改めて問合せ。米Tumblrとやり取りを続ける中で、1週間強でTumblr側のバグと判明、その後1日半程度で修正完了したとの連絡。

その後も経緯説明のために原因内容を問い合わせ、サイト名またはサイト説明に特定の日本語文字および特殊文字が入っているケースで発生する問題で、4月に行ったシステム更新で発生するようになった問題という説明が得られたとのことです。

Tumblrのトラブルも変わり始めた

Tumblrは2007~2008年の時点で、高機能で先鋭的でユニークな「マイクロブロギング」ツールとして登場、注目を集めました。同時にここから数年のTumblrは、急激な利用者数とアクセス数の増大もあって、年に数回、連続数日間の停止などということはザラにありました。2011年にはWordpress.comやBloggerの停止時間が年間2時間以内だったのに対し、Tumblrは42.1時間にもなり、「もっとも信頼性の低いブロギングプラットフォーム」とまで評されています。

現在のTumblrに、その印象はまったくないでしょう。事実で言えば、Pingdomのデータではこの2015年4~6月のダウンタイムは6分です。4月に毎分一回のチェックに応答がなかったことが散発的に6回あって、この月のダウンタイムが6分以内。5、6月はダウンタイム0分、稼働率100%。このペースで12ヶ月間経過しても、ダウンタイムの累計は30分にもなりません。Tumblrは圧倒的に「落ちない」サービスになり、無料でフルカスタマイズ、サイトに広告なしの形態も8年間貫いてきて、私の感覚では「もっとも信頼できるブロギングプラットフォーム」だと思います。

一方で、Yahoo!に買収された2013年頃から、Tumblrはダッシュボードやモバイルアプリケーションなど、機能面を大きく強化してきました。言い方を変えれば2013年頃まではプラットフォームの増強に注力しアプリケーションは2008年のまま(言いすぎですが)でしたが、2013年以降はアプリケーションの更新に注力し始めた感があります。プラットフォームのトラブルが激減した一方で、アプリケーションのトラブル可能性はあがっているかも知れません。

事実として、TAMの「A piece of SHAMAISON」は前述のトラブルを経験しています。私も、iPhoneで既存投稿を編集しようとすると文字化けするという問題に悩まされています。そう投稿したところ、結城浩さんから、Mac環境でダッシュボードのメニューや編集画面での記事タイトルなどが文字化けすると情報をもらいました。日本語周りのトラブルが多いですね。

想像すると、アプリケーションレベルでの増強とバグの作りこみが増えた時期、日本で「まあいいか」と言えない“ブロギングプラットフォーム”としてTumblrをプロフェッショナル利用する人が増えてきた時期、そして米国Tumblrの非英語品質保証の薄さという背景が、今重なっているのではないかと思います。

提案、愚痴を前向きに共有しよう

TAMにとってはTumblrは今回始めて実践投入した、いくつもある対応可能ソーシャルメディアの品揃えの一つです。今回のトラブルを経験して「Tumblrを品揃えからはずすようなことはありますか」と聞いてみましたが、答えはNoでした。Tumblrでトラブルがあった、Tumblrに(英語で)問合せたら2週間以内に解決した。海外コンシューマー向けサービスでは珍しいことに、顧客説明に充分な説明も得られた。トータルして、Tumblrは品揃えに入れておける。それがTAMのTumblr評価ということになります。

年間ダウンタイムが推定30分以内、年間稼働率99.995%のサイトを運用するのはかなり大変なことです。これを無償、無広告サービスとして8年間提供し続けてきたTumblrを、手持ちカードからはずすのは惜しい気がします。私もTumblr“ユーティリティー”ユーザーですが、Tumblrを使い続けるつもりです。ただ、増えてきているアプリケーションレベルの問題、それも運営側が気づくまでに時間のかかる日本語周りでの問題発生リスクには、なにかリスク対策を考えておきたいところです。

「A piece of SHAMAISON」で起きた問題では、もっとも大きかった調査のボトルネックは「自分たちだけの問題か分からない」ということでした。高橋氏からは「報告するにあたって1件しか発生してないのか3件発生しているのかではまったく違う」というコメントがありました。1件なら疑わしいのは「自分たちの環境だけの要素=テーマ、コンテンツ」、3件ならば疑わしいのは「共通要素=プラットフォーム」、1件か3件かでは私たちの判断の早さも、報告を受けたTumblr側の初期判断も大きく違ってくると思います。

即効性はありませんが、まずは「こんな状況で困っている」という愚痴を共有しませんか?前向きに、直ればいいなという期待を込めて。Tumblr社を責めるのではなく。もし余裕がある人であれば、Tumblr社と協働して直せたらいいなというスタンスで。

例えば「Tumblrワークショップ」グループは、今回こうした話を交わした「Tumblrとカレーでmeetup Vol.1」の開催グループですから、そうした愚痴にいやな顔をしない投稿先になると思います。あるいは自分のTumblrに投稿するのもいいと思います。Tumblrのタグは、ダッシュボードからはTumblr横断でタグが検索できますから、決まったタグをつけておくとみんなで探せるようになるかもしれません。私は投稿の再編集時の問題を#TumblrTrouble#TumblrTroubleJPをつけて投稿してみました。

Tumblrワークショップグループは、実際に顔を合わせるmeetupを月次でできないかと企画しており、明日、8月4日に「Tumblr Meetup vol.2」が開催されます。こうした席でカジュアルに話し合うのも、とても有用だと思います。

繰り返しますが、Tumblrの不具合かなと思ったら、まず愚痴を前向きに共有しませんか。それは今回の「A piece of SHAMAISON」のように、誰か困っている人の役に立つかもしれません。Tumblr社の調査にも役立つかもしれません。僕も気づいたものは共有したいと思います。