駅徒歩1分の利便性は一度体験したら止められない
「駅前」は、全国の都市部で行われている大規模複合再開発の多くに共通するワードだ。駅ビル内~駅周囲の商業施設へのアクセスが容易なのもさることながら、何より駅前立地であることから、鉄道はもちろん、バス、タクシー乗り場も至近であり、足まわりが抜群に良い。総合的に生活利便性に優れているため、「駅前タワマン」は、本当に根強い人気を誇っている。
今回取材した、JR市川駅南口徒歩1分の場所に立つ「ザ タワーズ ウエスト プレミアレジデンス」もそんなマンションのひとつだ。地上45階建て、高さは約150m。3階に図書館、最上階の45階に展望施設と市川市の公共施設も入っており、住人はもちろん市民にも親しまれているランドマークといえる。果たしてどんな住み心地なのか。まずは自治会長の中島正喜さんにうかがった。
「私の実家は、マンションが建築される前、この地にあった駅前商店街で商売を営んでいました。屋号は『甘太郎』といいまして、薪で炊いた餡子が評判の市川銘菓だったんですよ。そうした事情から、私は地権者としてこのマンションに住んでいます。高層の南西角住戸で、東京都心、富士山方面の眺望が素晴らしい。暮らし始めて15年ほどですが、眺めに飽きることは全くないですね。また、駅徒歩1分の便利さも、一度体験したらもう止められない(笑)。改札を出たところで『もう家に着いた』という気分になれます」
中島さんは人生初のマンション暮らしとのこと。
「玄関ドアを施錠すれば、一発でわが家のセキュリティーが構築されるのが便利で安心ですね。気密性も高く、冬場もさほど暖房を使う必要がありません。また、多彩な共用施設も魅力です。眺望が楽しめるスカイラウンジ、ゲストルーム、楽器演奏など多目的に使えるマルチスタジオなどいろいろな選択肢がありますから。それと、多くの世帯が集まって暮らすことで人づきあいの輪が広がるのも良い。
私が自治会長を務めることになったのは、マンション内のゴルフサークルに入り、そこで自治会に誘われたのがきっかけです。サークルではひんぱんにコンペをしていて、終了後の、市川駅近辺での反省会と称した飲み会もセットで楽しんでいます。サークルメンバーは皆さん職業がばらばらで異業種交流会のような雰囲気。付き合いを深めていくうちに、いろいろな人の人生の一端に触れられる機会もあって興味深い。さまざまな刺激をもらっています」
管理組合理事長の鹿庭(かにわ)雄介さんにも聞いてみた。
「10年ちょっと前に結婚して以来、市川に住んでいます。当初は市川駅北口近くの、会社が借り上げたマンション暮らし。いつもザ タワーズ ウエストが視界に入り、『いずれはあそこに住みたいな……』と思っていました。その後ほどなくしてここの2階住戸に空きが出て、会社の借り上げ社宅として暮らせることになったんです。
引越して最初に感じたのは、“傘要らず”の強みですね。駅ビルの商業施設・シャポー市川はもちろん、北口のダイエーも、雨の日でも傘を持たずに買い物ができます。かつては通勤でも、オフィスが東京駅にほぼ直結していましたので、外回りがない日は、全く傘を使う必要がありませんでした。そしてもちろん、圧倒的な駅アクセスの良さにも満足しています。マンションと駅が接続しているので、中島さんが言うとおり、改札を出たらもうわが家に着いた感覚です」
その後2021年、近隣の階に中古物件が出た情報をキャッチした鹿庭さんは、購入を即決したそうだ。
「それまでの暮らしで、多様なメリットがある駅前タワマン生活に十二分に満足していたんです。中古が出た時点で築12年経過しており、にもかかわらず新築分譲時より価格は上がっていたのですが、それでも購入する価値があると判断しました。買ってから2年以上経ちますが、中古価格はまだ上がっているようです。 今では中古住戸が出回ることも稀になり、希少性が増していると実感しています」
多彩な年間行事・イベントで“共助”体制を整える
続いて、お二人それぞれのマンションでの“仕事”を聞いてみた。まずは中島自治会長から。
「自治会の最大の目的は、マンションの防災力を高める“共助”の体制を整えること。マンション生活でよくいわれる『お隣にどんな人が住んでいるか知らない』といった状態をつくらず、顔の見える関係を広げていくためにさまざまな行事、イベントを行っています」
行事、イベントは年間を通じてさまざまな種類がある。1月に餅つき、3月にひな祭り、5月には五月人形やこいのぼりの飾り付けを行う。
「節句人形やこいのぼりの多くは住人からの寄付です。特にこいのぼりは屋外にある2階広場を全面的に使って泳がせるので、市川駅のホームからも見えて風物詩的なイベントになっていると思います」
5月・11月には『触れ合いウォーキング』を実施。
「屋外のウォーキングなら密にならず、リスクが低いだろうというわけで、コロナ禍中の2021年にスタートしました。今も継続しています。ゆったりコースと健脚コースの2種類があり、前者はマンションから約3kmの場所にある里見公園まで、後者は江戸川の矢切の渡しで葛飾区に渡り、柴又帝釈天まで行く約6kmのコース。両コース合わせて50名ほど、下は幼児から上は80代まで幅広い世代が参加し、かなりの人気があります。ちなみに、万が一何か事故が起きたときのことを考えて、自治会でイベント傷害保険にも加入しているんですよ。なお、触れ合いウォーキングの“拡大版”として、房総方面で海鮮バーベキュー+花摘みを楽しむ一日バスツアーも計画中です」
7月には七夕飾りを実施。2023年は住人が書いた約470枚もの短冊が飾られた。行事終了後、笹飾りは市内の神社に奉納している。
「7~8月にはほかにもラジオ体操や江戸川区花火大会の鑑賞会を開いています。ラジオ体操は、7月・8月で各10日間ずつ、NHKラジオ体操を使って行います。毎回体操終了後に持ってきてもらった参加カードに判子を押し、最終日は子どもにお菓子、大人に日焼け止め、ウエットティッシュなどをお渡しします。参加者はのべ600~700名。こちらもウォーキング同様、老若男女がそろいます」
江戸川区花火大会の鑑賞会は、普段は住人に限らず誰でも入れる3階広場で行う。
「西・東向き住戸にお住まいの方は方角的に自宅から花火が見えないことに配慮して始まったと聞いています。花火大会の日のみ3階広場を住人専用にして観賞しています。コロナ禍で花火大会が中止になっていたので、4年ぶりに開かれた2023年の観賞会は盛り上がり、約270名の応募がありました。こちらもイベント傷害保険を付けて万が一に備えました」
住まいに愛着をもつ若い世代も増加中
江戸川区花火大会にはトータルで百数十万人規模の観客が訪れるため(編集部注:江戸川区発表では、2023年8月5日に開催された江戸川区花火大会には、江戸川区側90万人・市川市側49万人が訪れた)、どうしてもゴミが出やすい。そこで自治会では「クリーン大作戦」と銘打って住人有志を募り、マンション敷地内やその周辺でゴミ拾いを行った。2023年は4年ぶりの開催とあってゴミが目立ったが、約60名もの住人がゴミ拾いに参加したそうだ。
「想定以上に参加者が多く、ゴミ拾い用のトングが不足したほどです。特にうれしかったのは、まだ若い20~30代のご夫婦が何組も参加してくれたことですね。『自分たちのマンションだし、駅前でいろんな人の目に触れるからきれいにしたい』とおっしゃって。クリーン大作戦やって良かった!と思いました。2024年用にもっとトングを購入するつもりです」
12月にはクリスマスイベントを開催。呼び物は2020年から始めた「抽選会」だ。
「抽選のくじ引きは、2階エントランスを会場にして2日間行います。集まって自然にお互いの顔を覚えてもらうことになり、挨拶を定着させる、ひいては災害発生時の共助にもつながると考えています」
ちなみに賞品の1等はシャポー市川の1万円分の商品券を2枚 2等はみかん1箱、はずれも500~600円相当のお菓子がプレゼントされる。多彩な行事、イベントにかかる諸経費は、220戸超の自治会加入住戸から入る年額1300円の会費のほか、市川市からの補助、さらに、住宅管理組合、低層階の商業施設でつくる施設管理組合、住宅と施設を束ねる全体管理組合、以上3つの管理組合からの支援金が充てられている。
「市川市は自治会支援が手厚いんです。市川市には『ICHICO(イチコ)』というデジタル地域通貨があり、1万円チャージで13000円分のお買い物ができる(加盟店のみ)、なかなかお得な仕組みなのですが、自治会に加入するとさらに1000円分の行政ポイントが付与されるんです。この制度も訴求して、近いうちに300戸の自治会加入を目指したい。それが達成できれば、このマンションの防災力も比例して向上すると思います」
防災力アップについては、管理組合の鹿庭理事長が補足をしてくれた。
「これまで年に1回、管理組合の理事限定で見学していた防災・ライフライン関連の設備を、2023年から住人にも見学していただくようにしました。災害発生時に使う道具・設備類や非常食などを格納した防災倉庫、ライフラインに関わる給排水設備、ポンプ、屋上ホバリングスペースなどの見学ツアーです。先着30名で計4回、総計100名超が参加し、想定以上の関心の高さがうかがえました。災害に対する危機感をもつ良い機会になったと思います」
なお、マンションでは原則年2回、5月と10月に防災訓練を実施。地元消防署の協力で映像上映や水消火器訓練、AED講習、煙体験ハウス、起震車での地震体験などを行っている。ほかにも玄関ドアに「無事です」「要救助」と書かれたマグネットを貼って安否確認の訓練も実施。毎回100世帯ほどが参加し、参加世帯には非常食となるアルファ米を配っているそうだ。
アンケートでニーズを調査、マンションのアップデートも
次にマンションのハード管理や施設運用などを担う管理組合の仕事について、改めて鹿庭理事長にうかがった。
「ザ タワーズ ウエスト プレミアレジデンスは、2024年で築15年目。現在、第1回となる外壁塗装や修繕、防水工事などの大規模修繕工事を行っています。さかのぼって2022年には、工事開始に備えて大規模修繕委員会を結成。理事会以外の住人有志や設計管理会社にも参加してもらい、月1回ミーティングを開いて準備を進めてきました。修繕にあたってどんな困り事があるかを予め設計管理会社を通じてヒアリングを行い、中層階の風切り音対策、エレベーターかご内の美化なども同時に進めています」
また、大規模修繕工事以外でも、さまざまな設備の修繕、見直しを並行している。
「住人の皆さんの要望をいかに取り入れるかをテーマにして、度々住人アンケートを行い、要望をヒアリングしています。2023年には二つのアップデートを実現しました。ひとつめは、2023年12月に導入したハンズフリーキー です。このキーには、カバンやポケットに入れたままリーダーの前を通行するだけで解錠できる機能が備わっており、多くの住人の皆さんから高い評価をいただいています。
ふたつめは、駐車場に2基のEV充電器を導入したこと。行政の助成金を使うことができ、管理組合からの持ち出し0で実現しました。いずれも住人の皆さんの利便性向上に寄与し、マンションの資産性向上にも貢献したという手応えをもっています。570戸超の世帯があり、実にさまざまな考え方の住人がいらっしゃるので、要は適切な“最大公約数”を見つけることが管理組合の使命だと思っています」
大規模修繕工事は2024年8月までの予定。終了後、ザ タワーズ ウエスト プレミアレジデンスはさらに魅力を増した市川のランドマークとなるはずだ。