蹴球放浪家・後藤健生は、世界でさまざまなものを目にしてきた。中には、想像を超えるものもあった。2003年にバロンドールを受賞した元ユベントス副会長、パベル・ネドベドが育った祖国のチーム、スパルタ・プラハには、25万人を収容できる「巨大サッ…
蹴球放浪家・後藤健生は、世界でさまざまなものを目にしてきた。中には、想像を超えるものもあった。2003年にバロンドールを受賞した元ユベントス副会長、パベル・ネドベドが育った祖国のチーム、スパルタ・プラハには、25万人を収容できる「巨大サッカー場」があった!
■使い道がなくなった「巨大スタジアム」
第2次世界大戦末期、チェコなど中部ヨーロッパはソ連軍の占領下に置かれ、戦争が終わると共産主義政権が樹立されます。ソ連の傀儡政権です。
そして、共産党政権の下では「スパルタキアード」と呼ばれるスポーツの祭典が行われました。日本の国民体育大会(現、国民スポーツ大会)のようなものですが、共産主義政権の威信を示すためのマスゲームも盛大に行われました。共産政権時代、「ストラホフ・スタジアム」は、そのための恰好な場所を提供してくれたのです。
しかし、共産党政権も倒れると、次第にこの巨大なスタジアムは使い道がなくなってしまいました。1990年にローリングストーンズのコンサートが行われて、10万人が集まったそうですが、その後は取り壊しも検討された。しかし、2003年にスパルタ・プラハの練習施設になったそうです。
■「驚くべき施設」にして「無駄な空間」?
全面をスタンドが取り囲んでいるので、非公開にするときには便利でしょうし、練習試合をスタンドから観戦することもできるので、練習場としての使い勝手は悪くないのかもしれません。
25万人収容といっても大半は立見席でしたから、スタンドは高くそびえているわけではありませんが、なにしろ300メートル×200メートルという大きさです。他に見たこともないような、驚くべき施設でした。
それにしても「無駄な空間」でもあります。
世界にはリオデジャネイロのマラカナン(現在の収容力は7万8000人、1950年ワールドカップでは20万人以上が入場した)とか、バルセロナのカンプノウ(9万9000人)とか、メルボルンのメルボルン・クリケットグラウンド(MCG、10万人)のような巨大スタジアムがたくさんあります。
しかし、これらのスタジアムではしょっちゅう満員に近い観客が入るイベントがあります。十分に活用さえされていれば、たとえ経営的に赤字であったとしても、それは無駄ではなく「社会的コスト」と呼べるでしょう。
しかし、「ストラホフ・スタジアム」の場合は、おそらく1920年代にも満員になることはほとんどなかったはずです。おそろしく無駄な建築物を造ったものですね。
■サッカー関連のイベントは「年10数回」
ところで、東京に新しく建設された国立競技場。総工費1500億円を投じて造られたのですが、はたして十分に活用されていると言えるでしょうか?
Jリーグは昨年から「THE国立DAY」と称して試合を開催し、毎回、満員に近い観客が入場。その他、天皇杯やルヴァンカップ、全国高校選手権大会の決勝でも国立は満員になります。
しかし、そんなサッカー観連のイベントは年に10数回。ラグビーなどを含めても、「満員」は20回ほどです。陸上競技の大会で満員になることはありません。今年の9月には陸上の世界選手権が行われ、おそらく連日満員となるでしょうが、世界陸上は数十年に1回のイベントです。
やはり、東京オリンピック後の「後利用」のことを考えずに建設されたため、約1500億円は無駄になってしまったのだと思います。
そういえば、大阪市の夢洲(ゆめしま)という所にも巨大な木造の「リング」なるものが造られていますが、僕はあれを見るたびに「ストラホフ・スタジアム」のことを思い出すのです。