夫婦円満の秘訣はあるのか。タレントの堺正章さんは「ふたりの生活をどう送っていくか、小さなすり合わせを重ねていった先に、ふたりにとって居心地のいい『あ、うん』の呼吸が生まれるのではないか。だから、すり合わせのための小さな戦いの間に疲れてしまったり、めんどうくさくなってしまってはいけない」という――。
※本稿は、堺正章『最高の二番手 僕がずっと大切にしてきたこと』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
「よき夫婦」の基準は大きく変わっている
家庭は、もっとも小さな社会の単位だ。結婚は、その家庭を作る、大人としての大切な一歩なのに、なぜ人はなかなか上手に結婚生活を営めないのだろうか。もちろんきちんと継続している方々も多くいらっしゃるが、僕なんかは、振り返れば人生で三回も結婚をしている。困ったことだ。
よき夫婦の基準も、世の中の動きと同じく、今と昔では大きく変わってきた。昔なら、「亭主」は外で頑張って働いて一家の大黒柱となり、「女房」は家庭の内部を守るというのが定石とされていた。
ところが今そんなことを言ったら、「昭和何年の話?」なんて驚かれてしまうだろう。奥さんに「外で働いていいよ」などと言ってみたところで、なんのポイントにもならない。だって、今じゃ夫婦でダブルインカムも当たり前なのだから。
相性がよくても、うまくいかないことはある
僕の実家は父がほぼ不在の家だったから、僕にとっては結婚についての参考資料などないも等しい環境だった。何せ、夫婦和気あいあいの様子など見たこともないのだ。
母は若い頃、松竹歌劇団の女優だったのだが、父と出会って引退した。芸事なんかより、子どもを育てることに情熱を持った母は僕たち兄弟にとても厳しく、母がいなければ家は成り立たなかった。
最初の結婚は、ザ・スパイダースを卒業し、ソロ活動を始めてようやくひと息ついた頃のことだ。僕は28歳で、お相手は一般の方、浅草の鞄かばんメーカーのお嬢さんで、下町人情にあふれた、とても家庭的な人だった。相性はとてもよかったのに、それでもうまくいかなくなるなんて、人生とは番狂わせの連続だ。