ネガティブな気持ちになった時、それを乗り越える方法はあるのか。禅僧の南直哉さんは「そもそも人生とはネガティブなもの。無理な前向き思考は自分を追い詰めることになる。無理して前向きに生きようとしてはいけない」という。南さんの著書『新版 禅僧が教える心がラクになる生き方』から紹介する――。
人生はネガティブで当たり前
「私はネガティブなんです」「もっと前向きに生きたいのに、自信がなくてどうしてもポジティブになれないんです」とおっしゃる方が最近増えました。
率直なところ、そもそも人生とはネガティブなものなのに、今さら何を言っているのかなと思います。ところが、話を聞いてみると、どの方もそれなりに安定した生活を送っていて、大変な問題が起きているようには見えません。
それで、何がどうネガティブで、何に対して自信がないのかを具体的に聞いていくと、当の本人もよくわからないのです。
「楽しくない人生はネガティブだ」と考えて、漠然と悩んでいるだけのことも多いように見受けます。また、「最近うまくいってなくて」とぼやく人もいます。
何がうまくいってないのかを聞いてみると「いや、いろいろ考えてしまって……」と口ごもり、「いろいろ」の内容が言えません。ただなんとなく、このままではいけないと思っているにすぎないのです。
私には、悩んでいる人たちが、「ネガティブ」「うまくいかない」などの言葉を自分に貼りつけた時点で安心して、考えることをやめてしまっているように見えます。
しかし、生きることへの違和感があるのなら、その「ネガティブ」や「いろいろ」の中身をきちんと考えなければ先へ進めません。
自分が何に困っていて、何が欲しいのか。
自分がどんな状況にいて、どう変えたいのか。
それを見極めるためには、置かれた状況を冷静に見て、具体的に考えていく根気が必要です。