※本稿は、山崎雅弘『底が抜けた国 自浄能力を失った日本は再生できるのか?』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
マイナ保険証から見える大企業の利益
さまざまなトラブルが続出し、それが原因で普及も進んでいないにもかかわらず、自民党政権が異様な頑なさで推進を強行する、マイナンバーカードと「マイナ保険証」についても、自民党と大企業の互助関係や大企業の利益追求という角度から光を当てると、今まで見えなかったメカニズムが可視化されて、浮き上がってきます。
マイナンバーカードは、2015年10月に住民票のある国民と外国人全員に付与された個人番号「マイナンバー」に基づき、個人の本人確認手段や行政サービスなどに使用するためのICカードで、2016年1月から交付が開始されました。
その後、2021年3月からマイナンバーカードに保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」の試験運用が始まり、2022年10月13日には自民党政権の河野太郎デジタル大臣が、2024年秋に従来の健康保険証を廃止し、「マイナ保険証」に一本化するとの発表を行いました。
トラブル頻発で医療界から疑問の声
しかし、マイナンバーカードと「マイナ保険証」は、それぞれの運用開始直後からトラブルが頻発し、特に命と健康に関わる「マイナ保険証」の医療機関でのトラブルについては、各地の医療従事者からも「診療に支障を来している」「従来の健康保険証の廃止は拙速ではないか」との声が上がりました。
2024年1月31日、全国保険医団体連合会(保団連)は「マイナ保険証」の利用をめぐるトラブルの実態調査についての結果を公表しました。
同日付の東京新聞記事(ネット版)によれば、調査は2023年11月から24年1月にかけて全国約5万5000の医療機関に調査票を送付する形で実施され、回収された8672件(全体の16パーセント)から集計されました。
しかし、試験運用の開始から2年半以上が経過したこの時期になっても、医療機関の6割(59.8パーセント)で「読み取り不具合」や「名前や住所の表示の不具合」、「資格情報の無効」などのトラブルが発生していました。