2024年は、愛子さまが大学を卒業して日本赤十字社に就職され、初めての単独地方公務を経験された年となった。神道学者で皇室研究家の高森明勅さんは「今年、敬宮(愛子内親王)殿下は、皇室の祭祀に参列されるなどしながら過去の天皇のご事蹟を天皇陛下とご一緒に学ばれている。これは、敬宮殿下ご自身が、皇室の将来を背負おうとされる前向きなお気持ちがあるためではないか」という――。
海外留学でなく「ご公務と仕事の両立」を選択された
令和6年(2024年)は、天皇、皇后両陛下のご長女、敬宮(愛子内親王)殿下ご自身の人生にとって大きな節目となった。これまで学んでこられた学習院大学を卒業され、皇族としてのご公務を本格化される一方で、日本赤十字社の嘱託職員としてご就職になられた。
学生時代の日本文学へのご熱心な打ち込みぶりが伝わる中で、大学院へのご進学や海外留学という進路を予想する声が、少なくなかった。
しかし敬宮殿下はまったく違う決断をされた。
学習院大学のご卒業に際しての「文書回答」は以下のおことばで締めくくられていた。
「皇族としての務めを果たしながら、社会人としての自覚と責任を持って、少しでも社会のお役に立てるよう、公務と仕事の両立に努めていきたいと思っております」
敬宮殿下は、皇族にとって少しでも青春を謳歌できる貴重な大学時代の多くを、コロナ禍によって奪われる不運な巡り合わせだった。にもかかわらず、ご卒業後ただちに「公務と仕事の両立に努め」られるという献身的な選択をされた。
「困難な道を歩く人たちに心を寄せる」
敬宮殿下は日本赤十字社へのご就職に際しても「文書回答」を公表されている。そこには、殿下ご自身の明確な“皇室像”が語られていた。
「皇室の役目の基本は『国民と苦楽を共にしながら務めを果たす』ことであり、それはすなわち『困難な道を歩まれている方々に心を寄せる』ことでもあると認識するに至りました」と。
ここでは、直系の皇女として平成から令和に受け継がれた「皇室の役目の基本」をしっかりと踏まえられながら、さらに“困難な道を歩む国民に心を寄せる”という、皇室の役目の核心についてのご自身なりの「認識」も、率直に述べておられる。
その認識に立って、いわば皇室の役目をそのまま延長する形で、「公務以外でも、様々な困難を抱えている方の力になれる仕事ができればと考えるようになり」日本赤十字社へのご就職を希望されたことを、同じ「回答」の中で吐露された。