WO2022158063A1 - オスコネクタ - Google Patents

Abstract

オス部材（１１）を外筒（１５）が取り囲む。外筒（１５）の内面に雌ネジ（１６）が形成されている。雌ネジ（１６）のネジ溝は、底部（５３）と一対のフランク（５５ａ，５５ｂ）とで構成されている。雌ネジ（１６）は、外筒（１５）の基端側のネジ溝の終端（５９）の近傍に、終端（５９）に近づくにしたがってネジ溝の底部（５３）がオスコネクタ（１）の軸（１ａ）に近づくように変位している不完全ネジ部（５１）を有する。

Description

オスコネクタ

　本発明は、オスコネクタに関する。特に、オス部材と、オス部材を取り囲む雌ネジとを備えたオスコネクタに関する。

　食事を口から摂れなくなった患者に栄養剤や薬剤等を含む液状物を投与する方法として経腸栄養法が知られている。経腸栄養法では、カテーテルを体外から消化管（例えば胃）内に挿入した状態で患者に留置する。カテーテルとしては、患者の鼻から挿入する経鼻カテーテルや、患者の腹に形成された胃ろうに挿入する胃ろうカテーテル等が知られている。液状物は容器に貯留される。容器からカテーテルに至る液状物の流路を形成するために、オスコネクタとメスコネクタとからなる接続具が用いられる。この接続具は、図１８Ａ及び図１８Ｂに示すオスコネクタ９１０と、図１９Ａ及び図１９Ｂに示すメスコネクタ９２０とで構成される。

　図１８Ａ及び図１８Ｂのオスコネクタ９１０は、筒形状のオス部材９１１と、オス部材９１１を取り囲む外筒９１５とを有する。オス部材９１１の基端と外筒９１５の基端とは、オス部材９１１の基端から鍔状に突出したフランジ９１８を介して連結されている。オス部材９１１の外周面は、オス部材９１１の先端に近づくにしたがって外径が小さくなるオステーパ面９１２を有する。オス部材９１１には、その長手方向に沿ってオス部材９１１を貫通する流路９１９が設けられている。外筒９１５のオス部材９１１に対向する内周面には雌ネジ９１６が設けられている。

　図１９Ａ及び図１９Ｂのメスコネクタ９２０は、中空円筒形状のメス部材９２１を有する。メス部材９２１の内周面は、メス部材９２１の先端に近づくにしたがって内径が大きくなるメステーパ面９２２を有する。メス部材９２１の外周面には螺状突起（雄ネジ）９２６が設けられている。

　オスコネクタ９１０はメスコネクタ９２０に、オス部材９１１をメス部材９２１に挿入し、且つ、雌ネジ９１６を螺状突起９２６に螺合させることにより接続される。オス部材９１１のオステーパ面９１２とメス部材９２１のメステーパ面９２２とは、径及びテーパ角度が一致するから、両者は液密にテーパ嵌合する。

　経腸栄養法では、液状物の流れ方向に関して上流側（容器側）のコネクタとしてメスコネクタ９２０が、下流側（患者側）のコネクタとしてオスコネクタ９１０が、それぞれ使用される。

　オスコネクタ９１０では、外筒９１５がオス部材９１１を取り囲み、外筒９１５の内周面には雌ネジ９１６が設けられている。経腸栄養法を行った後、オス部材９１１と外筒９１５との間の隙間９１４内に液状物が残留しやすい。オスコネクタ９１０が患者に挿入されたカテーテルの上流側端に設けられている場合には、オスコネクタ９１０は当該カテーテルとともに患者に長期にわたって留置される。隙間９１４内に残留した液状物は、オスコネクタ９１０の衛生状態を悪化させうる。

　特許文献１には、オスコネクタ９１０を清掃するための拭き取りチップが記載されている。拭き取りチップは、吸水性を有する発泡体や不織布からなる筒状部を備える。筒状部を、オス部材９１１と外筒９１５との間の隙間９１４に挿入する。隙間９１４（特に雌ネジ９１６のネジ溝）内に残留した液状物は、筒状部に吸収され拭き取られる。

特開２０１７－０９９７３８号公報 特開２０１５－１１９８３７号公報

　オスコネクタ９１０のオス部材９１１と外筒９１５との半径方向の間隔は非常に狭いので、特許文献１の筒状部を隙間９１４に深く挿入することは困難である。また、フランジ９１８の近傍には、幅が狭く且つ深いネジ溝（狭深溝）９５７（図１８Ｂ参照）が存在する。筒状部は変形可能に構成されてはいるものの、筒状部を狭深溝９５７に侵入させて狭深溝９５７内の液状物を拭き取ることは困難である。このため、オスコネクタ９１０は、筒状部のような清掃具を用いたとしても、隙間９１４の深部のネジ溝を綺麗に清掃することは困難である。

　本発明は、従来のオスコネクタとの互換性を確保しながら、清掃が容易なオスコネクタを提供することを目的とする。

　本発明の第１のオスコネクタは、流路が形成された筒状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内面に、前記外筒の先端から前記外筒の基端に向かって螺旋状に形成された雌ネジとを備える。前記雌ネジのネジ溝は、底部と、前記底部を挟んで前記オスコネクタの軸方向に対向する一対のフランクとで構成される。前記雌ネジは、前記外筒の基端側の前記ネジ溝の終端の近傍に、前記終端に近づくにしたがって前記ネジ溝の前記底部が前記オスコネクタの軸に近づくように変位している不完全ネジ部を有する。

　本発明の第２のオスコネクタは、流路が形成された筒状のオス部材と、前記オス部材を取り囲む外筒と、前記外筒の前記オス部材に対向する内面に、前記外筒の先端から前記外筒の基端に向かって螺旋状に形成された雌ネジと、前記オス部材の基端と前記外筒の基端とをつなぐフランジとを備える。前記雌ネジは、ネジ溝の深さが一定である完全ネジ部と、前記完全ネジ部に前記外筒の基端側において連続し、ネジ溝の深さが前記外筒の基端側のネジ溝の終端に近づくにしたがって浅くなっている不完全ネジ部とを備える。前記完全ネジ部での前記ネジ溝は、底部と、前記底部を挟んで前記オスコネクタの軸方向に対向する一対のフランクと、前記底部と前記一対のフランクとをつなぐ円弧状断面の隅部とで構成される。前記不完全ネジでの前記ネジ溝は、前記フランジになめらかに接続された円弧状断面で構成される。前記不完全ネジ部の前記円弧状断面の曲率半径は、前記完全ネジ部の前記隅部の曲率半径より大きい。

　本発明によれば、ネジ溝の終端近傍に、幅が狭く且つ深いネジ溝（狭深溝）が存在しない。このため、本発明のオスコネクタは、清掃が容易である。

　不完全ネジ部は、本発明のオスコネクタのメスコネクタに対する接続に何ら影響を及ぼさない。このため、本発明のオスコネクタは、メスコネクタとの接続に関して、従来のオスコネクタと互換性を有している。

図１Ａは、本発明の実施形態１にかかるオスコネクタの斜視図である。図１Ｂは、当該オスコネクタの断面斜視図である。 図２は、オス部材が省略された本発明の実施形態１にかかるオスコネクタの平面図である。 図３Ａ～図３Ｆは、図２の３Ａ－３Ａ線～３Ｆ－３Ｆ線を含む面での矢視断面図である。 図４は、図３Ｂを拡大した断面図である。 図５は、オス部材が省略された従来のオスコネクタの平面図である。 図６Ａ～図６Ｆは、図５の６Ａ－６Ａ線～６Ｆ－６Ｆ線を含む面での矢視断面図である。 図７は、図６Ｂを拡大した断面図である。 図８は、オス部材が省略された本発明の実施形態２にかかるオスコネクタの平面図である。 図９Ａ～図９Ｆは、図８の９Ａ－９Ａ線～９Ｆ－９Ｆ線を含む面での矢視断面図である。 図１０は、図９Ｂを拡大した断面図である。 図１１は、オス部材が省略された本発明の実施形態３にかかるオスコネクタの平面図である。 図１２Ａ～図１２Ｆは、図１１の１２Ａ－１２Ａ線～１２Ｆ－１２Ｆ線を含む面での矢視断面図である。 図１３は、図１２Ｂを拡大した断面図である。 図１４は、オス部材が省略された本発明の実施形態４にかかるオスコネクタの平面図である。 図１５Ａ～図１５Ｆは、図１４の１５Ａ－１５Ａ線～１５Ｆ－１５Ｆ線を含む面での矢視断面図である。 図１６は、図１５Ｃを拡大した断面図である。 図１７は、本発明の実施形態５にかかるオスコネクタの断面図である。 図１８Ａは、従来のオスコネクタの斜視図である。図１８Ｂは、当該オスコネクタの軸を含む面に沿った断面図である。 図１９Ａは、従来のメスコネクタの斜視図である。図１９Ｂは、当該メスコネクタの軸を含む面に沿った断面図である。

　上記の本発明の第１のオスコネクタは、前記オス部材の基端と前記外筒の基端とをつなぐフランジを更に備えていていもよい。前記不完全ネジ部において、前記一対のフランクのうち前記外筒の先端側のフランクに前記フランジは接続されていなくてもよい。かかる態様によれば、ネジ溝の終端近傍に狭深溝が確実に形成されない。これは、オスコネクタの清掃を容易にするのに有利である。

　上記の本発明の第１のオスコネクタの一態様では、前記雌ネジは、前記不完全ネジ部より前記外筒の先端側に、前記底部の前記軸からの距離が一定である完全ネジ部を、前記不完全ネジ部に連続して更に有していてもよい。前記不完全ネジ部での前記ネジ溝の幅は、前記完全ネジ部での前記底部の幅より広くてもよい。かかる態様によれば、ネジ溝の終端近傍に狭深溝が確実に形成されない。これは、オスコネクタの清掃を容易にするのに有利である。

　上記の本発明の第１のオスコネクタの一態様では、前記不完全ネジ部において、前記底部に連続するように円弧状断面の第１隅部が形成されていてもよい。前記第１隅部の曲率半径は０．６ｍｍ以上であってもよい。かかる態様は、不完全ネジ部の清掃を容易にするのに有利である。第１隅部は、好ましくは、底部に対して外筒の基端側（フランジ側）に形成され、より好ましくは、底部に対して外筒の基端側（フランジ側）及び外筒の先端側の両方に形成される。

　上記の本発明の第１のオスコネクタの一態様では、前記雌ネジは、前記不完全ネジ部より前記外筒の先端側に、前記底部の前記軸からの距離が一定である完全ネジ部を、前記不完全ネジ部に連続して更に有していてもよい。前記完全ネジ部において、前記底部に連続するように円弧状断面の第２隅部が形成されていてもよい。前記第２隅部の曲率半径は０．６ｍｍ以上であってもよい。かかる態様は、完全ネジ部の清掃を容易にするのに有利である。第２隅部は、好ましくは、底部に対して外筒の基端側（フランジ側）及び外筒の先端側のいずれか一方に形成され、より好ましくは、その両方に形成される。

　上記の本発明の第１のオスコネクタの一態様では、前記雌ネジは、前記不完全ネジ部より前記外筒の先端側に、前記底部の前記軸からの距離が一定である完全ネジ部を、前記不完全ネジ部に連続して更に有していてもよい。前記不完全ネジ部において、前記底部に連続するように円弧状断面の第１隅部が形成されていてもよい。前記完全ネジ部において、前記底部に連続するように円弧状断面の第２隅部が形成されていてもよい。前記第１隅部の曲率半径は、前記第２隅部の曲率半径より大きくてもよい。かかる態様は、不完全ネジ部の清掃を容易にすること、及び、メスコネクタとの接続に関して従来のオスコネクタと互換性を確保すること、に有利である。相対的に大きな曲率半径を有する第１隅部は、好ましくは、底部に対して外筒の基端側（フランジ側）に形成され、より好ましくは、底部に対して外筒の基端側（フランジ側）及び外筒の先端側の両方に形成される。

　上記の本発明の第２のオスコネクタの一態様では、前記不完全ネジ部の前記円弧状断面の曲率半径は０．６ｍｍ以上であってもよい。かかる態様は、不完全ネジ部の清掃を容易にするのに有利である。

　上記の本発明の第２のオスコネクタの一態様では、前記不完全ネジ部の前記円弧状断面は、前記フランジと前記雌ネジの頂部とをつないでいてもよい。かかる態様によれば、不完全ネジ部のネジ溝が、当該円弧状断面によって実質的に規定される。これは、不完全ネジ部の清掃を容易にするのに有利である。

　上記の本発明の第２のオスコネクタの一態様では、前記不完全ネジ部の全長にわたって前記不完全ネジ部の前記円弧状断面の曲率半径は一定であってもよい。かかる態様は、不完全ネジ部の構成を簡単化するのに有利である。

　上記の本発明の第１及び第２のオスコネクタの一態様では、前記オスコネクタは、前記オス部材の基端と前記外筒の基端とをつなぐフランジを備えていてもよい。前記オス部材の前記基端と前記フランジとの間に、０．６ｍｍ以上の曲率半径を有する円弧状断面の第３隅部が形成されていてもよい。かかる態様は、オス部材の基端部の清掃を容易にするのに有利である。

　以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部材を変更または省略し得る。各実施形態の説明において引用する図面において、先行する実施形態で引用した図面に示された部材に対応する部材には、当該先行する実施形態の図面で付された符号と同じ符号が付してある。そのような部材については、重複する説明が省略されており、先行する実施形態の説明を適宜参酌すべきである。

　本発明において、部材（例えばオスコネクタ）の「軸」は、当該部材の中心軸を意味する。「軸」は、部材に含まれる円の中心を通り、且つ／又は、部材に含まれる円筒もしくは円錐（テーパ）の中心軸と一致する。軸に直交する直線に沿った方向を「半径方向」という。半径方向において、軸に近い側を「内」側、軸に遠い側を「外」側という。軸の周りを回転する方向を「周方向」という。本発明において「断面」とは、特に断りのない限り、部材の軸を含む面に沿った断面を意味する。

　本発明において「円弧状断面」とは、オスコネクタの軸を含む面に沿った断面での形状が円弧であることを意味する。「円弧状断面の隅部」とは、隅部の表面が、オスコネクタの軸を含む面に沿った断面において隅部が円弧をなすような曲面で構成されていることを意味する。「曲率半径」とは、オスコネクタの軸を含む面に沿った断面での円弧の曲率半径を意味する。

　（実施形態１）
　図１Ａは、本発明の実施形態１にかかるオスコネクタ１の上方から見た斜視図である。図１Ｂは、オスコネクタ１の軸１ａを含む面に沿った断面斜視図である。

　オスコネクタ１は、一端に筒形状のオス部材１１を、他端に接続筒２１を備え、これらは軸１ａと同軸に配置されている。流路１９が、オス部材１１から接続筒２１まで軸１ａに沿ってオスコネクタ１を貫通している。外筒１５がオス部材１１を取り囲んでいる。

　オス部材１１は、細長い棒形状を有する。オス部材１１の外周面には、オス部材１１の先端に近づくにしたがって外径が小さくなるオステーパ面１２が設けられている。オス部材１１は、オステーパ面１２より先端側に、オステーパ面１２より大きなテーパ角度を有する先端テーパ面１３を有する。オス部材１１の先端（先端テーパ面１３の一部または全部）は、外筒１５の先端より、軸１ａ方向に突出している。オス部材１１が外筒１５よりも突出していることは、メスコネクタ９２０（図１９Ａ及び図１９Ｂ参照）に対するオスコネクタ１の接続を容易にするのに有利である。

　フランジ１８が、オス部材１１の基端から、半径方向外向きに突出している。フランジ１８の円形の外周縁から、外筒１５がオス部材１１と同じ側（オスコネクタ１の先端側）に向かって延びている。外筒１５は、略円筒形状を有し、オス部材１１と同軸に配置されている。外筒１５は、隙間１４を隔てて、オス部材１１から半径方向に離間している。外筒１５のオス部材１１に対向する内周面には雌ネジ１６が設けられている。

　接続筒２１は、中空の筒形状を有し、オス部材１１と連通している。グリップ部２３が、接続筒２１を取り囲むように、接続筒２１と一体的に設けられている。グリップ部２３は、軸１ａに垂直な面に沿った断面形状が略長方形である略四角柱形状を有する。グリップ部２３は、作業者がオスコネクタ１に、軸１ａ周りの回転力を加えるのを容易にする。本発明では、グリップ部２３の形状は任意である。グリップ部２３が、軸１ａを含む面に沿った薄板形状を有していてもよい。オスコネクタ１がグリップ部２３を備えていなくてもよい。

　接続筒２１から、柔軟な中空のチューブ２９が導出されている。チューブ２９は、接続筒２１に挿入され、接着剤等により接続筒２１に固定されている。オスコネクタ１の流路１９はチューブ２９の内腔と連通している。チューブ２９は、患者の鼻腔を通って胃又は食道にまで挿入された経鼻カテーテルであってもよい。あるいは、チューブ２９は、経鼻カテーテルに接続されたチューブ（延長チューブ）であってもよい。

　オスコネクタ１は、硬質材料を用いて全体を一部品として一体的に成形されうる。硬質材料は、外力によって実質的に変形しない程度の機械的強度（剛性）を有することが好ましい。具体的には、硬質材料として、例えば、ポリプロピレン、アクリロニトリル－ブタジエン－スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレン、硬質ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を用いることができる。オスコネクタ１が、別個に製造された複数の部品（例えば、外筒１５と、外筒１５を除く部分との２部品）を組み合わせて構成されていてもよい。この場合、複数の部品を構成する材料は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ上記硬質材料から選択することができる。

　オスコネクタ１は、図１８Ａ及び図１８Ｂに示した従来のオスコネクタ９１０と互換性を有する。従って、オスコネクタ１を、図１９Ａ及び図１９Ｂのメスコネクタ９２０に対して繰り返し接続及び分離することができる。即ち、オスコネクタ１は、オス部材１１をメス部材９２１に挿入し、且つ、雌ネジ１６を螺状突起９２６に螺合させることにより、メスコネクタ９２０に接続することができる。オス部材１１のオステーパ面１２とメス部材９２１のメステーパ面９２２とは、径及びテーパ角度が一致するから、両者は液密にテーパ嵌合する。

　本実施形態１のオスコネクタ１は、雌ネジ１６に関して、従来のオスコネクタ９１０（図１８Ａ及び図１８Ｂ参照）と異なる。以下にこれを説明する。

　図２は、本実施形態１のオスコネクタ１の、先端側から見た平面図である。図２では、オス部材１１及び流路１９を省略している。図３Ａ～図３Ｆは、図２の３Ａ－３Ａ～３Ｆ－３Ｆの各断面に沿ったオスコネクタ１の矢視断面図である。断面３Ａ－３Ａ～３Ｆ－３Ｆは、オスコネクタ１の軸１ａを含み、軸１ａ周りに時計回り方向に３０度ずつ回転されている。図３Ａ～図３Ｆでは、オスコネクタ１のうち、フランジ１８より上側の部分のみを示している。また、図３Ａ～図３Ｆでは、雌ネジ１６の形状が分かるように、オス部材１１及び流路１９を省略している。

　外筒１５の内周面に、雌ネジ１６が設けられている。雌ネジ１６は、外筒１５の先端（図３Ａ～図３Ｆにおいて外筒１５の上端）から外筒１５の基端（フランジ１８側端）に向かって螺旋状に連続して延びている。雌ネジ１６は、オスコネクタ１の軸１ａを含む面に沿った断面において、軸１ａ方向に交互に配置されたネジ溝とネジ山とを含む。螺旋状に連続するネジ溝の両端のうち、外筒１５の先端側の端をネジ溝の「始端」、外筒１５の基端側の端をネジ溝の「終端」５９という。本発明において、ネジ溝の終端５９は、ネジ溝が消失した地点を意味する。本実施形態１では、雌ネジ１６は二条ネジである。従って、雌ネジ１６は、螺旋状の２本のネジ溝（または２本のネジ山）を含み、これらが軸１ａ方向に隣り合っている。雌ネジ１６は、軸１ａに対して２回回転対称（即ち、雌ネジ１６を軸１ａ周りに１８０度回転させると回転前の雌ネジ１６と一致する）である。但し、本発明では、雌ネジ１６は、二条ネジに限定されず、一条ネジ又は三条以上の多条ネジであってもよい。

　雌ネジ１６は、外筒１５の先端側に配置された完全ネジ部５２と、外筒１５の基端側に配置された不完全ネジ部５１とを備える。完全ネジ部５２は、雌ネジ１６の大部分を構成し、雌ネジ１６の始端を含む。不完全ネジ部５１は、完全ネジ部５２に外筒１５の基端側において連続し、雌ネジ１６の終端５９を含む。完全ネジ部５２と不完全ネジ部５１とは、雌ネジ１６のネジ溝の断面形状において異なる。図３Ａ～図３Ｆでは、雌ネジ１６を構成する２本のネジ溝のうちの一方のネジ溝について完全ネジ部５２及び不完全ネジ部５１を示してある。図３Ａの断面は、完全ネジ部５２と不完全ネジ部５１との境界を通る。

　図４は、図３Ｂを拡大したオスコネクタ１の断面図である。軸１ａを含む断面において、完全ネジ部５２の雌ネジ１６は、半径方向に最も外側に位置する底部５３と、半径方向に最も内側に位置する頂部５４と、隣り合う底部５３と頂部５４とをつなぐフランク５５ａ，５５ｂとを備える。底部５３及び頂部５４は、軸１ａを含む断面において軸１ａと平行な直線を含む。雌ネジ１６の「谷径」は、底部５３によって規定される。雌ネジ１６の「内径」は、頂部５４によって規定される。フランク（第１フランク）５５ａは、底部５３に対して基端側（フランジ１８側）に配置され、フランク（第２フランク）５５ｂは、底部５３に対して先端側に配置されている。フランク５５ａとフランク５５ｂとは、底部５３を挟んで軸１ａ方向に対向している。底部５３とフランク５５ａとの間に円弧状断面の隅部６９ａが形成され、底部５３とフランク５５ｂとの間に円弧状断面の隅部６９ｂが形成されている。隅部６９ａ，６９ｂは、底部５３とフランク５５ａ，５５ｂとをなめらかにつないでいる。隅部６９ａ及び隅部６９ｂはいずれも曲率半径Ｒ９を有する。曲率半径Ｒ９は、制限されないが、０．３ｍｍ以下、更には０．２ｍｍ以下であることが好ましい。

　雌ネジ１６のネジ溝は、底部５３と、底部５３になめらかに接続された隅部６９ａ，６９ｂと、隅部６９ａ，６９ｂになめらかに接続されたフランク５５ａ，５５ｂとで構成され、全体として略台形の断面形状を有している。このネジ溝が、軸１ａ方向に頂部５４を介して一定のピッチで配置されている。フランク５５ａ及びフランク５５ｂは、ネジ面として機能し、軸１ａを含む断面において同一長さの直線として表される。フランク５５ａ及びフランク５５ｂは、軸１ａに垂直な直線（即ち半径方向）に対して傾斜しており、当該直線に対するフランク５５ａ及びフランク５５ｂの角度（フランク角）の絶対値は同じである。本発明において、「フランクの長さ」とは、軸１ａを含む断面において直線状のフランクの長さを意味する。「ネジ溝の幅」とは、軸１ａに最も近い位置でのネジ溝の軸１ａ方向の寸法を意味する。完全ネジ部５２においては、「ネジ溝の幅」は、ネジ溝を挟んで軸１ａ方向に隣り合う頂部５４の軸１ａ方向の間隔と略一致する。「ネジ溝の深さ」とは、ネジ溝の最深部（軸１ａから最も遠い箇所）と頂部５４との半径方向に沿った距離を意味する。ネジ溝の断面形状や、幅及び深さを含むネジ溝の各部の寸法は、完全ネジ部５２ではネジ溝の全長にわたって一定である。

　ネジ溝は、完全ネジ部５２から不完全ネジ部５１へ連続して延びている。図３Ａと図３Ｂとを比較すれば分かるように、不完全ネジ部５１では、ネジ溝の終端５９に近づくにしたがって、底部５３がオスコネクタ１の軸に近づくように半径方向に変位している。換言すれば、不完全ネジ部５１では、雌ネジ１６のネジ溝が、終端５９に近づくにしたがって徐々に浅くなっている。そして、終端５９では、底部５３が頂部５４と同じ半径方向位置に到達し、ネジ溝が消失する。雌ネジ１６のうち、ネジ溝の底部５３が半径方向に変位している部分（または、ネジ溝の深さが変化している部分）が、不完全ネジ部５１である。

　不完全ネジ部５１では、終端５９に近づくにしたがって底部５３がオスコネクタ１の軸に近づくように半径方向に変位するのにともなって、フランク５５ａ，５５ｂが短くなる。但し、完全ネジ部５２と同様に、不完全ネジ部５１においても、曲率半径Ｒ９を有する円弧状断面の隅部６９ａ，６９ｂが、底部５３とフランク５５ａ，５５ｂとをなめらかにつないでいる。

　不完全ネジ部５１では、フランク５５ａにフランジ１８が接続されている（図３Ａ参照）。ネジ溝に対して基端側に、頂部５４、特に完全ネジ部５２の頂部５４と同じ内径を有する頂部５４は存在しない。終端５９に近づくにしたがって、フランク５５ａが徐々に短くなる。終端５９の直前では、フランク５５ａは実質的に消失していてもよく、フランジ１８が隅部６９ａを介して底部５３に接続されていてもよい（図４参照）。

　比較のために、従来のオスコネクタ９１０（図１８Ａ及び図１８Ｂ参照）に設けられた雌ネジ９１６を説明する。図５は、オスコネクタ９１０の、先端側から見た平面図である。図２と同様に、図５でも、図面を簡単化するために、オス部材９１１及び流路９１９を省略している。図６Ａ～図６Ｆは、図５の６Ａ－６Ａ～６Ｆ－６Ｆの各断面に沿ったオスコネクタ９１０の矢視断面図である。断面６Ａ－６Ａ～６Ｆ－６Ｆは、オスコネクタ９１０の軸９１０ａを含み、軸９１０ａ周りに時計回り方向に３０度ずつ回転されている。図５の断面６Ａ－６Ａ～６Ｆ－６Ｆは、図２の断面３Ａ－３Ａ～３Ｆ－３Ｆに順に対応する。図６Ａ～図６Ｆでは、オスコネクタ９１０のうち、フランジ９１８より上側の部分のみを示している。また、図６Ａ～図６Ｆでは、雌ネジ９１６の形状が分かるように、オス部材９１１及び流路９１９を省略している。

　図７は、図６Ｂを拡大したオスコネクタ９１０の断面図である。実施形態１の雄ネジ１６と同様に、雌ネジ９１６は、完全ネジ部９５２と不完全ネジ部９５１とを備える。完全ネジ部９５２は、実施形態１の完全ネジ部５２と同じである。雌ネジ９１６は、不完全ネジ部９５１に関して実施形態１の雌ネジ１６と異なる。以下にこれを説明する。

　図６Ａの断面は、図３Ａと同様に、二条ネジを構成する２本のネジ溝のうちの一方の、完全ネジ部９５２と不完全ネジ部９５１との境界を通る。図６Ａでは、図３Ａと同様に、フランジ９１８はフランク５５ａに接続されている。図６Ｂでは、フランジ９１８は隅部６９ａに接続されている。図６Ｃでは、フランジ９１８は底部５３に接続されている。図６Ｄでは、フランジ９１８はフランク５５ｂに接続されている。このように、不完全ネジ部９５１では、ネジ溝の終端５９に近づくにしたがって、フランジ９１８は、フランク５５ａ（図６Ａ参照）、隅部６９ａ（図６Ｂ参照）、底部５３（図６Ｃ参照）、隅部６９ｂ、フランク５５ｂ（図６Ｄ参照）に順次接続される。その後、フランク５５ｂが徐々に短くなる。そして、雌ネジ９１６の終端５９では、フランク５５ｂが消失し、フランジ９１８が頂部５４に接続され、ネジ溝が消失する。

　このように、従来のオスコネクタ９１０の不完全ネジ部９５１では、終端５９に近づくにしたがって、雌ネジ９１６の頂部５４がフランジ９１８に接近し、ネジ溝の幅が狭くなっていく。そして、終端５９では、頂部５４がフランジ９１８に接続され、ネジ溝の幅がゼロになり、ネジ溝が消失する。不完全ネジ部９５１において、ネジ溝の底部５３の軸からの距離（またはネジ溝の深さ）は、底部５３が存在する限り不変である（図６Ａ～図６Ｃ参照）。底部５３が消失し、フランジ９１８がフランク５５ｂに接続されている部分では、終端５９に近づくにしたがってネジ溝が徐々に浅くなる（図６Ｄ参照）。このため、不完全ネジ部９５１は、終端５９（またはフランジ９１８）の近傍に、幅が狭く且つ深いネジ溝（以下「狭深溝」という）９５７を有する（図６Ｃ及び図６Ｄ参照）。オスコネクタ９１０を用いて経腸栄養法を行うことによって不完全ネジ部９５１の狭深溝９５７内に液状物が付着してしまうと、単なる水洗いではもちろん、特許文献１の筒状部やブラシのような清掃具を用いたとしても、狭深溝９５７内の液状物を綺麗に除去することは困難である。

　これに対して、本実施形態１のオスコネクタ１の不完全ネジ部５１では、終端５９に近づくにしたがって、底部５３が軸１ａに近づくように変位する。そして、終端５９では、底部５３が頂部５４と同じ半径方向位置に到達し、ネジ溝が消失する。不完全ネジ部５１では、フランジ１８は、底部５３に接続されてもよいが、先端側のフランク５５ｂには接続されない。このため、終端５９（またはフランジ１８）の直近まで、ネジ溝の幅は広い。好ましくは、不完全ネジ部５１の任意の位置でのネジ溝の幅は、完全ネジ部５２での底部５３の幅（軸１ａ方向の寸法）より広い。このように、ネジ溝が所望の幅を確保したままでネジ溝が浅くなり、終端５９に至る。不完全ネジ部５１には、従来のオスコネクタ９１０の不完全ネジ部９５１に形成されていた狭深溝９５７（図６Ｃ及び図６Ｄ参照）のような幅が狭く且つ深いネジ溝は存在しない。このため、オスコネクタ１を用いて経腸栄養法を行うことによって不完全ネジ部５１のネジ溝内に液状物が付着しても、水洗い等で当該液状物を簡単に洗い流すことができる。また、特許文献１の筒状部やブラシのような清掃具を隙間１４に挿入した場合には、清掃具は不完全ネジ部５１の広幅且つ浅いネジ溝に容易に侵入し、ネジ溝を規定する内面に密着するように変形してネジ溝の内面上を摺動する。清掃具を用いて不完全ネジ部５１のネジ溝を綺麗に清掃できる。このため、本実施形態１のオスコネクタ１は、清掃が容易であり、衛生状態を良好に維持するのに有利である。

　不完全ネジ部５１は、従来のオスコネクタ９１０の不完全ネジ部９５１と同様に、メスコネクタ９２０の螺状突起９２６（図１９Ａ及び図１９Ｂ参照）との螺合に関与しない。不完全ネジ部５１において、底部５３の半径方向の位置が完全ネジ部５２より軸１ａに接近していても、このことはオスコネクタ１のメスコネクタ９２０に対する接続に何ら影響はない。このため、オスコネクタ１は、メスコネクタ９２０との接続に関して、従来のオスコネクタ９１０と互換性を有している。

　（実施形態２）
　本実施形態２は、不完全ネジ部５１に関して実施形態１と異なる。実施形態１との相違点を中心に、本実施形態２を説明する。

　本実施形態２にかかるオスコネクタ２の外観形状は、実施形態１のオスコネクタ１（図１Ａ及び図１Ｂ参照）と概略同じであるので、その図示を省略する。図８は、オスコネクタ２の、先端側から見た平面図である。図２と同様に、図８では、オス部材１１及び流路１９を省略している。図９Ａ～図９Ｆは、図８の９Ａ－９Ａ～９Ｆ－９Ｆの各断面に沿ったオスコネクタ２の矢視断面図である。断面９Ａ－９Ａ～９Ｆ－９Ｆは、オスコネクタ２の軸１ａを含み、軸１ａ周りに時計回り方向に３０度ずつ回転されている。図９Ａ～図９Ｆでは、オスコネクタ２のうち、フランジ１８より上側の部分のみを示している。また、図９Ａ～図９Ｆでは、雌ネジ１６の形状が分かるように、オス部材１１及び流路１９を省略している。実施形態１と同様に、本実施形態２でも、不完全ネジ部５１において、底部５３は、終端５９に近づくにしたがってオスコネクタ２の軸１ａに近づくように変位している。

　図１０は、図９Ｂを拡大した断面図である。実施形態１と異なり、本実施形態２では、不完全ネジ部５１において、底部５３とフランジ１８との間に、相対的に大きな曲率半径Ｒ１を有する円弧状断面の隅部６１ａが形成されている。隅部６１ａは、底部５３とフランジ１８とをなめらかにつないでいる。曲率半径Ｒ１は、制限されないが、０．６ｍｍ以上、更には０．８ｍｍ以上であることが好ましい。曲率半径Ｒ１の上限は、制限されないが、雌ネジ１６の完全ネジ部５２でのネジ溝の深さ以下、更には当該深さの１／２以下であることが好ましい。図９Ａ及び図９Ｂに示されているように、曲率半径Ｒ１を有する隅部６１ａは、不完全ネジ部５１の全長にわたって、連続的に形成されている。更に、ネジ溝の終端５９を越えた領域においても、頂部５４とフランジ１８との間に、頂部５４とフランジ１８とをなめらかにつなぐように、相対的に大きな曲率半径を有する円弧状断面の隅部６７が形成されている（図９Ｃ及び図９Ｄ参照）。隅部６７の曲率半径は、制限されないが、０．６ｍｍ以上、更には０．８ｍｍ以上であることが好ましく、例えば曲率半径Ｒ１と同じに設定することができる。

　このように、本実施形態２では、不完全ネジ部５１において、相対的に大きな曲率半径Ｒ１を有する円弧状断面の隅部６１ａが、底部５３に連続するように形成されている。オスコネクタ２を用いて経腸栄養法を行うことによって隅部６１ａに液状物が付着しても、水洗い等で当該液状物を簡単に洗い流すことができる。また、特許文献１の筒状部やブラシのような清掃具を隙間１４に挿入した場合には、清掃具は隅部６１ａの表面に密着するように容易に変形して隅部６１ａの表面上を摺動可能である。清掃具を用いて隅部６１ａを綺麗に清掃できる。このため、本実施形態２のオスコネクタ２は、実施形態１のオスコネクタ１に比べて、清掃が更に容易であり、衛生状態を良好に維持するのに有利である。

　本実施形態２では、不完全ネジ部５１において底部５３とフランク５５ｂとの間には、実施形態１と同様の相対的に小さな曲率半径Ｒ９を有する円弧状断面の隅部６９ｂが設けられている（図１０参照）。但し、本発明はこれに限定されない。不完全ネジ部５１において底部５３とフランク５５ｂ（または頂部５４）との間に、隅部６９ｂに代えて、相対的に大きな曲率半径Ｒ１を有する円弧状断面の隅部が設けられていてもよい。

　本実施形態２の完全ネジ部５２は、実施形態１の完全ネジ部５２と同じである。即ち、完全ネジ部５２では、相対的に小さな曲率半径Ｒ９を有する円弧状断面の隅部６９ａ，６９ｂが底部５３に連続するように設けられている（図１０参照）。これは、オスコネクタ２をメスコネクタ９２０（図１９Ａ及び図１９Ｂ）に接続したときに、メスコネクタ９２０の螺状突起９２６が完全ネジ部５２の隅部６９ａ，６９ｂに衝突する可能性を低減するのに有利である。完全ネジ部５２は不完全ネジ部５１に比べて清掃が比較的容易であるので、完全ネジ部５２に相対的に小さな曲率半径Ｒ９を有する円弧状断面の隅部６９ａ，６９ｂが設けられていても、完全ネジ部５２のネジ溝が不衛生に至る可能性は低い。

　上記の例では、不完全ネジ部５１において、フランク５５ａ（図７参照）が実質的に設けられておらず、隅部６１ａが底部５３とフランジ１８とをなめらかにつないでいたが、本発明はこれに限定されない。例えば、不完全ネジ部５１において、実施形態１と同様にフランジ１８がフランク５５ａに接続され、フランク５５ａと底部５３との間に、フランク５５ａと底部５３とをなめらかにつなぐように、相対的に大きな曲率半径Ｒ１を有する円弧状断面の隅部６１ａが設けられていてもよい。

　本実施形態２は、上記を除いて実施形態１と同じである。実施形態１の説明が、本実施形態２に同様に適用される。

　（実施形態３）
　本実施形態３は、完全ネジ部５２及び不完全ネジ部５１に関して実施形態１と異なる。実施形態１との相違点を中心に、本実施形態３を説明する。

　本実施形態３にかかるオスコネクタ３の外観形状は、実施形態１のオスコネクタ１（図１Ａ及び図１Ｂ参照）と概略同じであるので、その図示を省略する。図１１は、オスコネクタ３の、先端側から見た平面図である。図２及び図８と同様に、図１１では、オス部材１１及び流路１９を省略している。図１２Ａ～図１２Ｆは、図１１の１２Ａ－１２Ａ～１２Ｆ－１２Ｆの各断面に沿ったオスコネクタ３の矢視断面図である。断面１２Ａ－１２Ａ～１２Ｆ－１２Ｆは、オスコネクタ３の軸１ａを含み、軸１ａ周りに時計回り方向に３０度ずつ回転されている。図１２Ａ～図１２Ｆでは、オスコネクタ３のうち、フランジ１８より上側の部分のみを示している。また、図１２Ａ～図１２Ｆでは、雌ネジ１６の形状が分かるように、オス部材１１及び流路１９を省略している。実施形態１と同様に、本実施形態３でも、不完全ネジ部５１において、底部５３は、終端５９に近づくにしたがってオスコネクタ３の軸１ａに近づくように変位している。

　図１３は、図１２Ｂを拡大したオスコネクタ３の断面図である。本実施形態３では、実施形態１の相対的に小さな曲率半径Ｒ９を有する隅部６９ａ，６９ｂ（図４参照）に代えて、相対的に大きな曲率半径Ｒ１を有する隅部６１ａ，６１ｂが雌ネジ１６のネジ溝の全長にわたって設けられている。曲率半径Ｒ１は、制限されないが、０．６ｍｍ以上、更には０．８ｍｍ以上であることが好ましい。曲率半径Ｒ１の上限は、制限されないが、雌ネジ１６の完全ネジ部５２でのネジ溝の深さ以下、更には当該深さの１／２以下であることが好ましい。曲率半径Ｒ１は、オスコネクタ１をメスコネクタ９２０（図１９Ａ及び図１９Ｂ参照）に接続したときに、完全ネジ部５２の隅部６９ａ，６９ｂがメスコネクタ９２０の螺状突起９２６に衝突しないように設定される。

　実施形態２では曲率半径Ｒ１を有する隅部６１ａが、不完全ネジ部５１において、底部５３に対してフランジ１８（基端）側のみに設けられていた（図１０参照）。これに対して、本実施形態３では、曲率半径Ｒ１を有する隅部６１ａ，６１ｂが、不完全ネジ部５１及び完全ネジ部５２において、底部５３に対してフランジ１８（基端）側及び先端側の両方に設けられている。

　より詳細には、相対的に大きな曲率半径Ｒ１を有する円弧状断面の隅部６１ｂが、雌ネジ１６のネジ溝の全長にわたって、底部５３とフランク５５ｂとをなめらかにつないでいる。また、相対的に大きな曲率半径Ｒ１を有する円弧状断面の隅部６１ａが、不完全ネジ部５１では底部５３とフランジ１８（またはフランク５５ａ）とをなめらかにつなぎ、完全ネジ部５２では底部５３とフランク５５ａとをなめらかにつないでいる。

　このように、本実施形態３では、雌ネジ１６のネジ溝の全長にわたって、相対的に大きな曲率半径Ｒ１を有する円弧状断面の隅部６１ａ，６１ｂが、底部５３に連続するように形成されている。オスコネクタ３を用いて経腸栄養法を行うことによって隅部６１ａ，６１ｂに液状物が付着しても、水洗い等で当該液状物を簡単に洗い流すことができる。また、特許文献１の筒状部やブラシのような清掃具を隙間１４に挿入した場合には、清掃具は隅部６１ａ，６１ｂの表面に密着するように容易に変形して隅部６１ａ，６１ｂの表面上を摺動可能である。清掃具を用いて隅部６１ａ，６１ｂを綺麗に清掃できる。このため、本実施形態３のオスコネクタ３は、実施形態１，２のオスコネクタ１，２に比べて、清掃が更に容易であり、衛生状態を良好に維持するのに有利である。

　本実施形態３は、上記を除いて実施形態１，２と同じである。実施形態１，２の説明が、本実施形態３に同様に適用される。

　（実施形態４）
　本実施形態４は、不完全ネジ部５１に関して実施形態１と異なる。実施形態１との相違点を中心に、本実施形態４を説明する。

　本実施形態４にかかるオスコネクタ４の外観形状は、実施形態１のオスコネクタ１（図１Ａ及び図１Ｂ参照）と概略同じであるので、その図示を省略する。図１４は、オスコネクタ４の、先端側から見た平面図である。図２、図８、図１１と同様に、図１４では、オス部材１１及び流路１９を省略している。図１５Ａ～図１５Ｆは、図１４の１５Ａ－１５Ａ～１５Ｆ－１５Ｆの各断面に沿ったオスコネクタ４の矢視断面図である。断面１５Ａ－１５Ａ～１５Ｆ－１５Ｆは、オスコネクタ４の軸１ａを含み、軸１ａ周りに時計回り方向に３０度ずつ回転されている。図１５Ａ～図１５Ｆでは、オスコネクタ４のうち、フランジ１８より上側の部分のみを示している。また、図１５Ａ～図１５Ｆでは、雌ネジ１６の形状が分かるように、オス部材１１及び流路１９を省略している。

　図１６は、図１５Ｃを拡大したオスコネクタ４の断面図である。実施形態１～３と異なり、本実施形態４では、不完全ネジ部５１に、直線状断面を有するフランク５５ａ，５５ｂは実質的に形成されていない。不完全ネジ部５１のネジ溝は、フランジ１８になめらかに接続された円弧状断面６３で構成されている。円弧状断面６３の曲率半径Ｒ３は、完全ネジ部５２の隅部６９ａ，６９ｂの曲率半径Ｒ９より大きい。具体的には、曲率半径Ｒ３は、０．６ｍｍ以上であり、０．８ｍｍ以上であることが好ましい。曲率半径Ｒ３の上限は、制限されないが、雌ネジ１６の完全ネジ部５２でのネジ溝の深さ以下であることが好ましい。円弧状断面６３は、不完全ネジ部５１の全長にわたって連続的に設けられている。曲率半径Ｒ３は、不完全ネジ部５１の全長において変化してもよいが、好ましくは一定である。円弧状断面６３が、不完全ネジ部５１においてネジ溝の最深部を規定する。円弧状断面６３はフランジ１８と頂部５４とをつないでいる。実施形態１と同様に、不完全ネジ部５１において、ネジ溝の深さは、ネジ溝の終端５９に近づくにしたがって浅くなっている。換言すれば、本実施形態４では、雌ネジ１６のうち、ネジ溝の深さが終端５９に近づくにしたがって浅くなるように変化している部分が、不完全ネジ部５１である。

　本実施形態４では、不完全ネジ部５１のネジ溝が、完全ネジ部５２の隅部６９ａ，６９ｂの曲率半径Ｒ９より大きな曲率半径Ｒ３を有する円弧状断面６３で構成されている。円弧状断面６３は、終端５９に近づくにしたがってオスコネクタ４の軸に近づくように変位する。そして、終端５９で、ネジ溝が消失する。不完全ネジ部５１において、終端５９に近づくにしたがってネジ溝の幅は狭くなるが、これと並行してネジ溝は浅くなる。このため、不完全ネジ部５１には、従来のオスコネクタ９１０の不完全ネジ部９５１に形成されていた狭深溝９５７（図６Ｃ及び図６Ｄ参照）のような幅が狭く且つ深いネジ溝は存在しない。オスコネクタ４を用いて経腸栄養法を行うことによって円弧状断面６３に液状物が付着しても、水洗い等で当該液状物を簡単に洗い流すことができる。また、特許文献１の筒状部やブラシのような清掃具を隙間１４に挿入した場合には、清掃具は不完全ネジ部５１の広幅且つ浅いネジ溝に容易に侵入し、ネジ溝を規定する円弧状断面６３の表面に密着するように容易に変形して円弧状断面６３の表面上を摺動する。清掃具を用いて不完全ネジ部５１を綺麗に清掃できる。このため、本実施形態４のオスコネクタ４は、清掃が容易であり、衛生状態を良好に維持するのに有利である。

　不完全ネジ部５１は、従来のオスコネクタ９１０の不完全ネジ部９５１と同様に、メスコネクタ９２０の螺状突起９２６（図１９Ａ及び図１９Ｂ参照）との螺合に関与しない。不完全ネジ部５１のネジ溝が相対的に大きな曲率半径Ｒ３を有する円弧状断面６３で構成され、且つ、終端５９に近づくにしたがってネジ溝が浅くなっていても、このことはオスコネクタ４のメスコネクタ９２０に対する接続に何ら影響はない。このため、オスコネクタ４は、メスコネクタ９２０との接続に関して、従来のオスコネクタ９１０と互換性を有している。

　本実施形態４は、上記を除いて実施形態１と同じである。実施形態１の説明が、本実施形態４に同様に適用される。

　本実施形態４において、完全ネジ部５２のネジ溝が、隅部６９ａ，６９ｂに代えて、実施形態３で説明した、相対的に大きな曲率半径Ｒ１を有する円弧状断面の隅部６１ａ，６１ｂを有していてもよい。この場合、実施形態３と同様の効果を奏する。

　（実施形態５）
　図１７は、本発明の実施形態５にかかるオスコネクタ５の断面図である。オスコネクタ５は、オス部材１１の基端部の形状に関して実施形態３と異なる。実施形態３との相違点を中心に、本実施形態５を説明する。

　本実施形態５では、オス部材１１の基端とフランジ１８との間に、相対的に大きな曲率半径Ｒ５を有する円弧状断面の隅部６５が形成されている。隅部６５は、オス部材１１とフランジ１８とをなめらかにつないでいる。曲率半径Ｒ５は、０．６ｍｍ以上であり、０．８ｍｍ以上であることが好ましい。曲率半径Ｒ５の上限は、制限されないが、雌ネジ１６のピッチ以下、更には雌ネジ１６のピッチの１／２以下、特に１／３以下であることが好ましい。

　本実施形態５では、オス部材１１とフランジ１８とを、相対的に大きな曲率半径Ｒ５を有する隅部６５がなめらかにつないでいる。オスコネクタ５を用いて経腸栄養法を行うことによって隅部６５に液状物が付着しても、水洗い等で当該液状物を簡単に洗い流すことができる。また、特許文献１の筒状部やブラシのような清掃具を隙間１４に挿入した場合には、清掃具は隅部６５の表面に密着するように容易に変形して隅部６５の表面上を摺動可能である。清掃具を用いて隅部６５を綺麗に清掃できる。このため、本実施形態５のオスコネクタ５は、清掃が容易であり、衛生状態を良好に維持するのに有利である。

　本実施形態５は、上記を除いて実施形態３と同じである。実施形態３の説明が、本実施形態５に同様に適用される。

　本実施形態５の隅部６５を、実施形態１，２，４のオスコネクタ１，２，４に適用してもよい。この場合、本実施形態５と同様の効果を奏する。

　上記の実施形態１～５は、例示に過ぎない。本発明は、上記の実施形態に限定されず、適宜変更することができる。

　上記の実施形態１～５では、フランジ１８は、半径方向に沿った平板であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、フランジ１８は、オスコネクタの軸と同軸の円錐面にほぼ沿っていてもよく、より詳細には、オスコネクタの先端側（接続筒２１とは反対側）に向かって拡径する円錐面にほぼ沿っていてもよい。

　フランジ１８及び／又は外筒１５に、隙間１４と外界とを連通させる貫通孔が形成されていてもよい（例えば特許文献２参照）。

　上記の実施形態１～５の隅部６１ａ，６１ｂ，６５，６７，６９ａ，６９ｂは円弧状断面を有していたが、本発明の隅部はこれに限定されない。例えば、隅部６１ａ，６１ｂ，６５，６７，６９ａ，６９ｂのうちの一部または全部が、軸１ａを含む面に沿った断面において傾斜した直線（即ち、直線状断面）を有していてもよい。「傾斜した直線」とは、上記円弧状断面を構成する円弧の両端を結ぶ直線であってもよい。軸１ａを含む面に沿った断面において、直線状断面を有する隅部を構成する直線の長さは、円弧状断面を有する隅部を構成する円弧の曲率半径に応じて異ならせることができる。

　本発明のオスコネクタは、経腸栄養法以外の用途に使用されてもよい。

　本発明は、医療分野、特に経腸栄養法に用いられるオスコネクタとして広範囲に利用することができる。特に、患者に挿入された状態で長期にわたって患者に留置され続けるカテーテルの上流端に設けられるオスコネクタとして好ましく利用することができる。

１，２，３，４，５　オスコネクタ
１ａ　オスコネクタの軸
１１　オス部材
１２　オステーパ面
１４　隙間
１５　外筒
１６　雌ネジ
１８　フランジ
１９　流路
５１　不完全ネジ部
５２　完全ネジ部
５３　ネジ溝の底部
５４　雌ネジの頂部
５５ａ，５５ｂ　ネジ溝のフランク
５９　ネジ溝の終端
６１ａ，６１ｂ　ネジ溝の隅部
６３　ネジ溝の円弧状断面
６５　オス部材の基端とフランジとの間の隅部
６９ａ，６９ｂ　ネジ溝の隅部

Claims (11)

1. 　流路が形成された筒状のオス部材と、
   　前記オス部材を取り囲む外筒と、
   　前記外筒の前記オス部材に対向する内面に、前記外筒の先端から前記外筒の基端に向かって螺旋状に形成された雌ネジとを備えるオスコネクタであって、
   　前記雌ネジのネジ溝は、底部と、前記底部を挟んで前記オスコネクタの軸方向に対向する一対のフランクとで構成され、
   　前記雌ネジは、前記外筒の基端側の前記ネジ溝の終端の近傍に、前記終端に近づくにしたがって前記ネジ溝の前記底部が前記オスコネクタの軸に近づくように変位している不完全ネジ部を有することを特徴とするオスコネクタ。
2. 　前記オスコネクタは、前記オス部材の基端と前記外筒の基端とをつなぐフランジを更に備え、
   　前記不完全ネジ部において、前記一対のフランクのうち前記外筒の先端側のフランクに前記フランジは接続されていない請求項１に記載のオスコネクタ。
3. 　前記雌ネジは、前記不完全ネジ部より前記外筒の先端側に、前記底部の前記軸からの距離が一定である完全ネジ部を、前記不完全ネジ部に連続して更に有し、
   　前記不完全ネジ部での前記ネジ溝の幅は、前記完全ネジ部での前記底部の幅より広い請求項１又は２に記載のオスコネクタ。
4. 　前記不完全ネジ部において、前記底部に連続するように円弧状断面の第１隅部が形成されており、
   　前記第１隅部の曲率半径は０．６ｍｍ以上である請求項１～３のいずれか一項に記載のオスコネクタ。
5. 　前記雌ネジは、前記不完全ネジ部より前記外筒の先端側に、前記底部の前記軸からの距離が一定である完全ネジ部を、前記不完全ネジ部に連続して更に有し、
   　前記完全ネジ部において、前記底部に連続するように円弧状断面の第２隅部が形成されており、
   　前記第２隅部の曲率半径は０．６ｍｍ以上である請求項４に記載のオスコネクタ。
6. 　前記雌ネジは、前記不完全ネジ部より前記外筒の先端側に、前記底部の前記軸からの距離が一定である完全ネジ部を、前記不完全ネジ部に連続して更に有し、
   　前記不完全ネジ部において、前記底部に連続するように円弧状断面の第１隅部が形成されており、
   　前記完全ネジ部において、前記底部に連続するように円弧状断面の第２隅部が形成されており、
   　前記第１隅部の曲率半径は、前記第２隅部の曲率半径より大きい請求項１～４のいずれか一項に記載のオスコネクタ。
7. 　流路が形成された筒状のオス部材と、
   　前記オス部材を取り囲む外筒と、
   　前記外筒の前記オス部材に対向する内面に、前記外筒の先端から前記外筒の基端に向かって螺旋状に形成された雌ネジと、
   　前記オス部材の基端と前記外筒の基端とをつなぐフランジとを備えるオスコネクタであって、
   　前記雌ネジは、ネジ溝の深さが一定である完全ネジ部と、前記完全ネジ部に前記外筒の基端側において連続し、ネジ溝の深さが前記外筒の基端側のネジ溝の終端に近づくにしたがって浅くなっている不完全ネジ部とを備え、
   　前記完全ネジ部での前記ネジ溝は、底部と、前記底部を挟んで前記オスコネクタの軸方向に対向する一対のフランクと、前記底部と前記一対のフランクとをつなぐ円弧状断面の隅部とで構成され、
   　前記不完全ネジでの前記ネジ溝は、前記フランジになめらかに接続された円弧状断面で構成され、
   　前記不完全ネジ部の前記円弧状断面の曲率半径は、前記完全ネジ部の前記隅部の曲率半径より大きいことを特徴とするオスコネクタ。
8. 　前記不完全ネジ部の前記円弧状断面の曲率半径は０．６ｍｍ以上である請求項７に記載のオスコネクタ。
9. 　前記不完全ネジ部の前記円弧状断面は、前記フランジと前記雌ネジの頂部とをつなぐ請求項７又は８に記載のオスコネクタ。
10. 　前記不完全ネジ部の全長にわたって前記不完全ネジ部の前記円弧状断面の曲率半径は一定である請求項７～９のいずれか一項に記載のオスコネクタ。
11. 　前記オスコネクタは、前記オス部材の基端と前記外筒の基端とをつなぐフランジを備え、
    　前記オス部材の前記基端と前記フランジとの間に、０．６ｍｍ以上の曲率半径を有する円弧状断面の第３隅部が形成されている請求項１～１０のいずれか一項に記載のオスコネクタ。

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