明 細 書
強誘電性ガラス組成物およびその製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、低温焼成でき、比誘電率の制御が可能な Ba〇_Sr〇一 TiO _Si〇 -Al o系の強誘電性ガラス組成物に関する。
背景技術
[0002] セラミックス多層配線基板は、各種の電気機器、電子機器の電子回路部品として広 く用いられており、近年の携帯電話、携帯可能なパソコンなどの需要増大に伴い、こ れら電子機器の小型化、軽量化、高機能化等が要望され、それに伴う回路の高密度 化や高周波数化が進行している。このような動向に対し、回路基板用セラミックスとし ては、高周波における損失が小さぐ銀 (Ag)、銅 (Cu)等の低融点導電材料による 回路が基板と同時に焼成できる、 1000°C以下の低温焼成が可能なものが開発され てきた。
[0003] 回路構成要素としてのコンデンサ素子や抵抗素子は、従来、個々に回路基板外部 に実装されており、このために小型化には限界があつたが、セラミックス多層基板内 部に比誘電率の高い強誘電性セラミックス層を介装させ、それによりコンデンサ素子 を内蔵させて小型化、高密度化した構造の基板が提案され、実用化されつつある。
[0004] 強誘電性のセラミックス材料には、 BaTiO、 CaTiO、 MgTiOなどをベースにした ものが多く使われる力 これらのセラミックスの焼結温度は通常 1300°C以上の高温 であり、低融点導電材料を同時焼成により焼成させる基板等には適用できなレ、。この ため、融点の低いシリカガラス、アルミノケィ酸ガラス、ホウケィ酸ガラスなどガラスの マトリックスの中に、上記の強誘電性セラミックス粒子が分散した形態のガラスセラミツ タスあるいはガラス組成物が、低温焼成可能な強誘電性セラミックスとして種々開発さ れた。し力 ながら、ガラス相は一般的に比誘電率が低ぐこれらのガラス組成物では 必ずしも十分高レ、比誘電率は得られてレ、なレ、。
[0005] 焼結温度を低くできる強誘電性セラミックスとして、 BaTiOの Baを鉛 (Pb)で置換し
、Tiの 4価のサイトを 3価- 5価や 2価- 6価のイオンの組合せで置換した複合ぺロブス
カイト系化合物があるが、 Pbを含むセラミックスは廃棄物の環境汚染問題があり、使 用できない。
[0006] このような低温焼成可能な強誘電性ガラスセラミックスの中で、現在、実用的に最も 多く活用されているのは、酸化物の形として BaO、 Ti〇、 Si〇および Al〇を含む B aO-TiO— Si〇 -Al〇系のアルミノケィ酸ガラスセラミックスである。これはガラスか らの熱処理により、強誘電性の BaTi〇を主とする相を析出させるもので、他のガラス 組成物に比較して比誘電率が高ぐ高周波における誘電損失が低ぐ組成を選ぶこ とにより 1000°C以下での焼成が可能である。
[0007] この高い比誘電率を有し、し力も低温焼成により基板に組込むことができるガラスセ ラミックスあるいはガラス組成物は、さらに直流電圧印加により誘電率可変とすること が可能になれば、フィルタ、位相制御、整相型アンテナ等へ、その適用範囲を大幅 に拡大できる。
[0008] 一般に強誘電性セラミックスは、温度を上げてレ、くと強誘電性相から常誘電性相に 転移するが、この転移温度はキュリー温度と呼ばれている。キュリー温度を超えた温 度では、常誘電性相でありながら強誘電性相ドメインの残骸が残存してレ、るので高誘 電率であり、誘電損失が小さくヒステリシスがない。このためマイクロ波帯などの高周 波域での誘電率可変用途には、主としてこの領域が利用される。
[0009] BaTiO系セラミックスの場合、ぺロブスカイト結晶構造の各サイトのイオンを Sr、 Ca
、 Sn、あるいは Zrなどに部分的に置き換えることで、キュリー温度の制御が行なわれ ている。 Ba〇一 TiO _Si〇 -Al〇系のガラス組成物においても、その強誘電性は析 出してくる BaTiOを主とする相の誘電特性に基づいており、この相のイオンを置き換 える変性を行なえば、強誘電性ガラス組成物のキュリー温度が低下できると推測され る。
[0010] し力、しながら、これまで上記の系のガラス組成物に対し Srなどの置換によるキュリー 温度の低下が種々試みられてきた力 100°Cを大きく下回るたとえば室温、またはそ れ以下の温度への制御は実現されていない。これは、置換量を増そうとして原料へ の Srなどの配合比率を大きくしても、六方セルシアンなどの相が現れてその相への 置換析出が支配的となり、 BaTiOを主とする析出相に対する置換率は、容易には増
加させることができないからである。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0011] 本発明は Agや Cuなどの低融点良伝導性の内部導電体を採用することのできる、 低温焼成可能な強誘電性のガラス組成物に関するものであり、その中でも特に、印 加電圧により容量を変えることのできる可変容量コンデンサ素子形成に適した、キユリ 一温度を低下させたガラス組成物の提供を目的とする。
課題を解決するための手段
[0012] 本発明者らは、低温焼成が可能な高誘電率のガラス組成物において、高周波域で の損失の少ない比誘電率可変の誘電体を得るため、種々検討を行なった。この場合 、絶縁抵抗や誘電特性の安定性から、 BaO-TiO -SiO -Al O系の強誘電性ガラ ス組成物が好ましいと考えられ、この系のガラス組成物にてキュリー温度を低下させ ることの可能性を調査した。
[0013] ガラス組成物の製造は、通常、原料粉末を混合し、高温で加熱溶融して均一相の 溶融体とした後、急冷してガラスカレットとし、粉碎してガラス焼成用の粉末を作製す る。この粉末にバインダ等を添加し混練して所要形状に成形後、焼成してガラス組成 物とする。上記の系の組成物の場合、焼成の過程で BaTiOを主とする強誘電性相 がガラスの中に析出し、析出相が多くなればその強誘電性相がガラスの網目構造に 囲まれた、いわゆるガラスセラミックスの形態を取る。
[0014] BaO-TiO -SiO 一 Al O系の強誘電性ガラス組成物の場合、キュリー温度は組成 範囲を変えても 150°C前後より低い温度に低下させるのは困難である。このようなガ ラス組成物のキュリー温度を低下させるには、析出する BaTiO等の BaOの一部を Sr
Oに置換すればよいと考えられる。またその場合も、導電率の優れた Agや Cuなどの 低融点材料を内部導体に使用し、同時焼成により基板内部等に組込もうとすれば、 ガラス組成物形成に必要な焼成温度が低くなければならない。
[0015] BaO-TiO -SiO—Al O系の強誘電性ガラス組成物の製造は、通常、 1500°Cま たはそれ以上の温度に加熱して溶融し単相化する。焼成の過程で析出してくる強誘 電性相中の Baの一部を Srにて置換するには、ガラスを溶融製造するときに SrOを原
料に添加する必要がある。ところが Sr〇を添加すると、その量が増すにつれて融液の 粘度が増し、キュリー温度を十分低下できる程度まで添加しょうとすると、 1600°C以 上に加熱しなければ単相化しなくなり、ガラス化が困難になる。
[0016] ガラス化が不十分のまま、粉末にしてガラス組成物を焼成しても、キュリー温度は低 下せず、 目的とするガラス組成物は得られなレ、。これは、 Sr〇の融点が Ba〇に比し高 いため、ガラス化を困難にさせ、その結果としてセルシアンなど第三相を形成させたり 、強誘電性相への固溶を妨げたりしていると推測される。
[0017] そこでまず、 Sr〇を添加したガラスの溶融温度を低下させることを目的に、助剤の 添加やガラス組成の変更等を検討したが、十分な結果は得られなかった。しかし、そ れらの検討の中で、 Al Oを含有させるために通常は原料に Al Oを用いるが、これ に代えて A1Fを原料に用いれば、ガラス作製のための溶融温度を低下できるばかり でなぐ Sr〇を添カ卩するとガラス組成物のキュリー温度が低下して、 100°Cを下回る 温度にまで低下できることが見出された。
[0018] このように、原材料に A1Fを用いると、ガラスの製造時に SrOを多く添カ卩しても 150
0°Cを下回る温度で溶融でき、粘性の低い単相のガラス融液が得られた。これは A1F の融点が Al Oの融点よりもはるかに低いためであろう。そしてこのガラス製造のため の温度を低くできたことが、析出する強誘電性相中への Sr〇の固溶あるいは Ba〇と の置換を容易にし、その結果としてキュリー温度を低下させたものと思われる。
[0019] ガラス形成の温度を低下させることは、他の融点の低い酸化物を添加しても可能で あつたが、これら添加物は最終のガラス組成物中にも残存し、その比誘電率、温度特 性、高調波における誘電損失等に悪影響を及ぼす。これに対し A1Fは、融液を急冷 してガラスカレットとし粉砕して基板等に焼成する製造過程で A1〇に変化していき、 最終のガラス組成物中には殆ど残存しなレ、。
[0020] A1Fを製造の原料に用いることにより、ガラス溶融温度を低下させることができ、上 記のガラス組成物において、特に BaOの SrOによる置換を容易にし、キュリー温度を 低下できることがわかった。この A1Fを用いれば、ガラス溶融温度を低くできる力 他 の CaO、 Sn〇、 Zr〇などによる変性が容易になり、これらの成分を添加することによ つて、ガラス組成物のキュリー温度を低下させることも可能であった。
[0021] 以上のようにして、 BaO-TiO -SiO 一 Al O系の強誘電性ガラスにて、従来実現 できなかった、キュリー温度を大きく低下させることが可能になった。すなわち低温焼 成可能な BaO— TiO -SiO -Al O系の強誘電性ガラスの、高誘電率、低損失、高 絶縁性、安定性等の特徴を維持したまま、キュリー温度を、要すれば室温以下にす るなど大幅に変えることができ、それによつて、直流電圧印加による誘電率変化幅の 大きい強誘電性ガラス組成物が得られるようになった。
[0022] このような結果に基づき、さらに適用限界を明確にして本発明を完成させた。本発 明の要旨は次のとおりである。
[0023] [1] 強誘電性相を分散させたガラス組成物であって、その組成は酸化物の形とし て BaO、 SrO、 TiO、 SiOおよび Al Oを含み、それぞれの含有量は分子濃度比に て BaO + SrO+TiO : 0. 2—0. 8、 TiO : 0. 1—0. 7、 SiO : 0. 1—0. 6、 Al〇 : 0
. 05—0. 25で、 SrOおよび BaOの合計量を 1とするとさ、
xSrO+ (l-x) BaO = l (1)
で示される式にて χ: 0· 1-0. 7であり、キュリー温度力 S-100°C力 80°Cまでの範囲 にあることを特徴とするガラス組成物。
[0024] [2] 上記 TiOの一部が SnOで置換され、 SnOの置換比が、置換前の TiOの含 有量を 1とするとき、 0. 42以下である上記 [1]に記載のガラス組成物。
[0025] [3] ガラス組成物中で AI Oとなる素材原料に A1Fを用い、所定組成の原料粉末 を混合して 1300— 1400°Cにて溶融した後、急冷して得たガラスカレットを粉砕し、こ の粉末を用いて 900— 1200°Cで焼成することを特徴とする上記 [1]または [2]の強 誘電性ガラス組成物の製造方法。
発明の効果
[0026] 本発明によれば、マイクロ波帯等の高周波域で使用される低温焼成可能な強誘電 性のガラス組成物において、キュリー温度を大きく低下させたものとすることができる。 キュリー温度の低下は、印加電圧で容量を変えられる可変容量コンデンサ素子の形 成が可能になり、フィルタ、位相制御、整相型アンテナ等へ、この強誘電性ガラス組 成物の適用範囲を大幅に拡大させることができる。
発明を実施するための最良の形態
[0027] 本発明のガラス組成物において、酸化物の形で表わした成分の含有範囲を請求項
1のように限定するのは、以下の理由による。
[0028] BaO + SrO+TiOの含有量を分子濃度比にて 0. 2— 0. 8の範囲とするのは、 0.
2
2未満では誘電率が低くなり過ぎ、強誘電性のガラス組成物にならないからであり、 0 . 8を超える場合はマトリックスとなるガラスの形成が困難になり、溶融温度が高くなつ てしまうからである。なお、本発明の強誘電性とは、比誘電率が 60 500程度の比 誘電率を有することを意味する。
[0029] 上記の範囲で、 Ti〇は 0. 1—0. 7とする。これは、 0. 1より小さくても、 0. 7より大き
2
くても誘電率の高いガラス組成物が得られなくなるからである。これはガラス組成物中 の強誘電性相における(Ba Sr )TiOの存在量が不十分になるためと思われる。
1-x X 3
[0030] 上記 Ti〇の一部は Sn〇で置換することができる。 SnOの置換比は、置換前の Ti
2 2 2
Oの含有量を 1 (100モル0 /0)とするとき、 0. 42 (42モル0 /0)以下とすることができる。
2
この場合、焼成後のガラス組成物において、(Ba, Sr) (Ti, Sn) Oの強誘電性相が
3
析出し、比誘電率がさらに高くなる。
[0031] Ba〇および SrOは、いずれも Ti〇と共に含有されることにより、ガラス組成物の誘
2
電率を高くする効果があるが、 Ba〇に対して SrOを置換していくとキュリー温度が低 下していくので、 目的とするキュリー温度から SrOの含有量を選定する。その場合、 分子濃度比でガラス組成物中の BaO量と SrO量との合計量を 1とするとき、 Sr〇は 0 . 1—0. 7の範囲とするのがよレ、。すなわち Sr〇および Ba〇の量を
xSrO+ (1-x) BaO = 1 (1)
と表わしたとき χ : 0· 1-0. 7である。
[0032] これは、 Xが 0. 1を下回る場合は、キュリー温度低下の顕著な効果は現れず、 Xが 0 . 7を超える範囲にしょうとすれば、ガラスの溶製が困難になるからである。キュリー温 度低下の効果をより明確に現出させるには、 0. 2以上の含有が望ましい。
[0033] Ba〇、 SrOおよび Ti〇は、ガラス組成物中に析出分散した強誘電性相を形成し、
2
その強誘電性相は、ガラス組成物の誘電特性を支配すると推定される。強誘電性相 はその BaOおよび SrOの合計量と、 ΤΪΟの量との比が 1: 1である(Ba Sr )Ti〇の
2 1-x x 3 形態をとるとき、最も高い比誘電率を示すと考えられる。したがって、比誘電率に関し
て含有元素の効果を最大限に発揮させるためには、 BaOおよび SrOの合計量と、 Ti Oの量との比が 1 : 1になるよう含有量または配合量を制御するのが望ましい。
2
[0034] ガラス組成物中の BaOを SrOに置換することによりキュリー温度を変えることができ る。しかし、置換できる範囲は上述のように(1)式にて Xが 0. 1-0. 7の範囲であり、 この範囲の置換により、ガラス組成物のキュリー温度は最大限- 100°Cから 80°Cまで の範囲で変えることができる。
[0035] SiOの量は 0. 1-0. 6とする。 Si〇はガラスの形成に必要な元素であり、 0. 1未
2 2
満ではガラスマトリックス形成が困難になる。し力、し多すぎる含有は、ガラス組成物の 誘電率が低くなつてしまうので、多くても 0. 6までとする。
[0036] A1〇は SiOと共にガラスの形成に必要な元素であり、その含有量を 0. 05—0. 2
2 3 2
5とする。 0. 05未満ではガラスの形成が困難になり、 0. 25を超える量では、誘電率 が低くなつてしまうば力 でなぐ溶融温度が高くなつてガラスの形成も困難になる。
[0037] 本発明のガラス組成物の製造は、ガラス組成物にて Al Oとなる成分に対しては作
2 3
製用の原料に A1Fを用いる。 A1Fを用いるのは、ガラス形成のための溶融温度を下
3 3
げること力 Sでき、 SrOを添加することにより、ガラス組成物のキュリー温度を十分低下 させることが可能になるからである。 A1Fを用いない場合、たとえば、通常行なわれる
3
A1〇を原料に用いると、 SrO添加によりガラスを溶融する温度が上昇してしまレ、、均
2 3
一なガラスカレットの製造が困難になる。
[0038] A1Fをガラス製造の原料とする際、ガラス組成物中の Al O成分量は、すべて出発
3 2 3
材料が A1Fである必要はなぐ A1Fと他の原料、たとえば Al Oとを混合して用いて
3 3 2 3 もよレ、。その場合、少なくとも 0. 05以上の Al Oを成分、すなわち原料配合比率にて
2 3
0. 1以上の A1Fが用いられておれば、ガラスの溶融温度低下および Sr〇添加による
3
キュリー温度の大幅低下の効果が得られる。
[0039] 他の BaO、 Sr〇、 TiO、 SnOおよび SiOについては、酸化物や炭酸塩などを用
2 2 2
いればよい。これらの原料は、 A1Fを含めいずれも純度 95。/0以上のものを用いれば
3
、所要の性能を得ることができる。
[0040] ガラスの形成のための溶融温度は、 1300 1400°Cとするの力 S好ましレ、。これは 1 300°C未満では原料素材が十分な溶融状態にならず、均一なガラスを得ることがで
きないからであり、 1400°Cを超える温度では A1Fの蒸散が甚だしくなるため、配合 組成と大きく異なってくるおそれがあるからである。
[0041] 原料は粉末を用いて十分混合し、溶融して均一化させた後、急冷してガラス力レツ トとし、粉砕して焼成用粉末とする。ガラス組成物は通常のセラミックス、あるいはガラ スセラミックスと同様、この粉末にバインダ等を添加して混練し、所要形状に成形後、 900— 1200°Cにて焼成する。焼成温度は、 Ag、 Cuあるいは Ni等の低融点導電材 料が適用できる温度範囲とする力 900°C以下ではガラスの焼成が困難になり、 120 0°Cを超える温度では、低融点導電材料が適用できなくなり、ガラス組成物が焼成中 に軟化変形するおそれもあるので、 900 1200°Cとするのがよい。
[0042] (実施例)
表 1および表 2に示す酸化物組成物を原料粉末として、 BaOおよび SrOは炭酸塩 、 Ti〇、 SnOおよび Si〇は酸化物、 A1〇は A1Fまたは Al Oとし、いずれも 99% 以上の純度のものを用いて製造を試みた。これらの原料粉末をボールミルにて湿式 混合し、乾燥後、白金るつぼに入れ溶融後、水冷してガラスカレットとし、これら力レツ トを乾式粉砕後さらにボールミルにて湿式粉碎しガラス粉原料とした。ガラス粉にバイ ンダとして 10質量%の PVA水溶液を加えて造粒し、直径 15mm、厚さ 2mmの円板 に成形後、予備的に温度を変えて焼成して、ガラスセラミックスとなる温度を確認し、 表 1中に示すその温度および時間で電気炉中にて焼成した。この試片にて比誘電率 ( ε )およびキュリー温度 (Tc)を測定した。
[0043] また、低温焼成可能な基板素材上に電極用導電ペースト、厚さ 25 μ mの造粒した 上記ガラス粉、電極用導電ペーストの順に層形成させ、上記円板と同じ温度で焼成 後、ネットワークアナライザを用レ、 5GHzにて容量可変率を測定した。これらの結果を 合わせて表 1および表 2に示す。
[0044] [表 1]
ガラス組成物の酸化物組成 (分子濃度比) 焼成 焼成 キ: 1リ-温 容量
S式 Al203の :曰 比誘電
時間 度 (TG) 可変率 備考 番 原料 BaO SrO Ti02 左合計 X -※ Si02 Al203 率 ε
(。c) (hr) (°c) (%)
1 AIF3 0.05 0.35 0.4 0.8 0.87 * 0.1 0.1 (溶融時ガラス化せず) 比較例
2 AIF3 0.375 0 * 0.375 0.75 0 * 0.125 0.125 1000 2 232 125 * 21
3 AIF3 0.225 0.15 0 375 0.75 0.4 0.16 0.09 1000 2 322 62 25.5 本発明例
4 AiF3 0.3 0.075 0.375 0.75 0.2 0.16 0.09 1000 2 127 -14 12.2
5 AIF3 0.15 0.225 0.375 0.75 0.6 0.16 0.09 950 2 66 -36 4.5
6 一 * 0 266 0.109 0.375 0.75 0.29 0.25 0 * (溶融時ガラス化せず) 比較例
7 AIF3 0.24 0.16 0.375 0.775 0.4 0.125 0.1 1100 2 82 63 8.1 本発明例
8 AtF3 0.04 0.06 0.05 * 0.15 * 0 6 0 45 0 4 1000 3.8 (不測) 比較例
9 AtF3 0.04 0.04 0.72 * 0.8 0 5 0 1 0.1 (溶融時ガラス化せず)
10 AIF3 0.06 0.04 0.1 0.2 0.4 0 65 * 0 15 1100 2 3.3 (不測) 〃
11 AIF3 0 245 0.105 0.4 0.75 0 3 0.21 0 04 * (溶融時ガラス化せず)
12 AIF3 0 14 0.06 0.15 0.35 0.3 0.2 0.45 * 1250 * 2 3.8 (不測)
13 Al203 * 0.225 0.15 0.375 0.75 0.4 0.16 0.09 (溶融時ガラス化せず) //
14 A!203 * 0.15 0.225 0.375 0.75 0 6 0.16 0.09 (溶融時ガラス化せず) /,
*印は本発明にて定める範囲外であることを示す
(1 B a 0+ S r 0= 1としたときの の値
izm [s oo]
Z068請 OOZdf/ェ:) d 01 £0 90/S00Z OAV
ガラス組成物の酸化:吻組成 (分子濃度比) キ 1リ-
Al203 焼成 焼成 比 an
試 可変
の 左 時間 電率 備考 番 BaO SrO Ti02 Sn02 X y Si02 Al203 (Tc) 率
原料 口 πΤ CO (hr) ε
(°c) (%)
15 AIF3 0.2625 0.1125 0.3375 0.0375 0.75 0.3 0.1 0.16 0.09 1000 2 370 -22 23.5 本発明例 16 AIF3 0.2625 0.1125 0.28125 0.09375 0.75 0.3 0.25 0.16 0- 09 1000 2 295 -22 20.1 本発明例
17 AIF3 0.2625 0.1125 0.2175 0.1575 0.75 0.3 0.42 0.16 0.09 1000 2 243 -31 15.8 本発明例
18 AIF3 0.2625 0.1125 0.1875 0.1875 0.75 0.3 0.5 0.16 0.09 1000 2 154 29 10.3 本発明例 ( 1 B 0+ S 0= 1としたときの)(の値
※ =(5^02の分子濃度比) [(丁 i 02の分子濃度比) + (S n02の分子濃度比)]より算出される の値
[0046] これらの試作ガラス組成物のうち、試番 13および 14は Al O成分となる原料に A1
2 3 2
Oの粉末を用いたが、溶融温度を 1550°Cまで上昇させても粘性が高く単相の溶融
3
液にならず、ガラス化が困難であり、その後の処理は行なわな力 た。また、試番 6は A1〇を含有しない組成にしょうとした力 1500°Cで均一な溶融相が得られなかった
2 3
[0047] 他の、試番 6を除く試番 1一 12は、 Al O成分となる原料に A1Fを用いた。これらの
2 3 3
うち、試番 1、 9および 11は、溶融温度を 1400°C以上に上げても均一相にならず、そ れ以上の温度上昇は A1Fの蒸散が甚だしくなり、 目標組成のガラス組成物が得られ
3
なくなるので、試作を中断した。試番 1は Ba〇 + SrO + TiO量が多すぎ、試番 9は Ti
2
O量が多すぎ、試番 11は Al O成分量すなわち A1F量が少なすぎ、いずれも本発
2 2 3 3
明で定める範囲を逸脱しているためである。他の試番のものは、レ、ずれも 1350 14 00°Cにて均一相の溶融相が得られ、急冷してガラスカレットとした。
[0048] し力し、ガラス組成物焼成後では、試番 2は SrOを添加していないので、キュリー温 度が 125°Cと高ぐ本発明の目標キュリー温度範囲に達していなレ、。試番 8は Ti〇量
2 が少なくその上 Ba〇 + SrO +TiO量も低すぎて誘電率が低い。また試番 10は SiO
2 2 が多すぎ、試番 12は Al Oが多すぎていずれも誘電率が低い。さらに試番 12はガラ
2 3
ス組成物の焼成温度が高すぎる。これらの誘電率が低い試料は、それ以上の特性測 定は行なわなかった。
[0049] これらに比較して、本発明にて定める組成および方法にて製造された試番 3、 4、 5 および 7は、比誘電率は 60以上あり、キュリー温度は十分低ぐコンデンサとして容量 可変であることがわかる。また、試番 15— 17のように、 TiOの一部が SnOで置換さ
2 2 れ、 Sn〇の置換比が、置換前の Ti〇の含有量を 1とするとき、 0. 42以下であるもの
2 2
は、比誘電率が特に向上している。なお、 SnOの置換比 Vは、 y=(SnOの分子濃
2 2
度比)/ [(Ti〇の分子濃度比) + (Sn〇の分子濃度比)]の式で表わすことができる。