明 細 書 熱遮蔽板とその製造方法、 およびそれに用いる液組成物
技術分野
本発明は、 特に車両や建築物の窓ガラスとして有用な熱遮蔽板に関す る。 本発明は、 さらに、 この熱遮蔽板の製造方法およびそれに用いる液 組成物に関する。
背景技術
I T O (錫含有酸化インジウム : indium tin oxide) 微粒子を分散さ せた膜は、 可視域の光を透過させながら赤外域の光を遮蔽する。 この膜 を形成したガラス板は、 車両や建築物の窓ガラスとして望ましい特性を 備えている。 このガラス板は、 I T O微粒子に由来する導電性に基づい て、 透明電極、 タツチパネルなどとしても使用される。
I T O微粒子の導電性および熱線遮蔽能 (遮熱性) には、 I T Oの酸 素欠陥が寄与している。 このため、 特開平 7— 2 1 8 3 1号公報が開示 するように、 加圧不活性ガス雰囲気中で熱処理すれば、 I T O微粒子は 低抵抗化する。
特開平 7 - 7 0 3 6 3号公報は、 I T O微粒子を分散させた有機樹脂 膜を開示している。 有機樹脂膜としては、 ポリ塩化ビニル樹脂、 ァクリ ル樹脂などが例示されている。 しかし、 有機樹脂膜は、 耐候性、 耐摩耗 性に劣るため、 膜が露出した形態での使用、 例えば窓ガラスとしての使 用、 には適さない。
特開平 8— 1 9 9 0 9 6号公報は、 有機樹脂のようなバインダーを含 まない液組成物から形成した I T O微粒子含有膜を開示している。 この 液組成物は、 I T O微粒子を分散させるためにカップリング剤を含んで いる。 この膜は、 低いヘイズ率と低い表面抵抗値 ( 1 0,~ 1 0 2 Ω /ス
クエアオーダー) とを有し、 タツチパネルなどとしての使用に適してい る。 しかし、 この膜は不活性または還元性雰囲気中で焼成しなければな らないため、 その形成には特別の装置を必要とする。 このため、 この膜 は、 窓ガラスとして使用しうる程度に大きなガラス板上への形成には適 していない。
特開平 8— 2 5 9 2 7 9号公報は、 I T 0微粒子を分散させた中間膜 を用いた合わせガラスを開示している。 中間膜としては、 ポリビニルブ チラール膜、 エチレン一酢酸ビニル共重合体膜が例示されている。 合わ せガラスとして使用すれば、 有機樹脂からなる中間膜の低い耐候性は実 用上問題とならない。 しかし、 この枝術は、 中間膜を使用しない単板上 の成膜には適用できない。
特開平 9一 1 7 6 5 2 7号公報は、 2液型の液組成物から形成した I T O微粒子含有膜を開示している。 この膜は、 バインダーを含まない第 1液から形成された粉末層 (第 1層) 上に、 第 2液としてシリカゾルを 塗布することにより形成される。 シリカゾルは、 粉末層に含浸して I T 0微粒子のバインダーとなり、 かつ粉末層上にシリカ層 (第 2層) を形 成する。 上記公報によれば、 第 1層はバインダーを含まない液組成物か ら形成されるため、 微粒子の分散密度が高くなリ、 その結果、 高い熱線 遮蔽能が得られる。 しかし、 この技術は、 少なくとも 2回の被膜形成ェ 程を必要とする。
上記のように、 I T O微粒子を分散させるための有機樹脂以外の膜と しては、 バインダーを含まない液組成物から形成した膜が提案されてい る。 しかし、 バインダーを含まない液組成物を用いる場合、 いずれの技 術によっても、 大気中における一回の成膜により実用に供しうる熱遮蔽 膜を形成することはできない。
一方、 I T O微粒子含有膜を形成するための液組成物ではないが、 特
開 2 0 0 2— 2 9 7 8 2号公報は、 珪酸ナトリウム、 珪酸リチウムおよ び着色剤を含むガラス用透明着色液を開示している。 この着色液には、 着色剤として、 無機顔料、 または金もしくは銀のコロイ ド溶液が添加さ れる。 同公報は、 ディップコーティングにより形成した厚さ約 3 0 0 n mの着色膜を開示している。
発明の開示
所望の遮熱性を付与するために必要な I T O微粒子を分散させるため には、 分散媒体となる膜にはある程度の厚さが求められる。 しかし、 例 えば上記特開平 9 _ 1 7 6 5 2 7号公報が開示する非有機分散媒体、 即 ち無機バインダーとしてのゾルゲル法によるシリカ膜は、 一回の成膜ェ 程で厚い膜を形成すると、 膜にクラックが生じやすくなる。 ゾルゲル法 により 2 0 0 n mを超える膜厚に成膜したシリカ膜には微細なクラック が発生しやすい。 このクラックは、 膜中の I T O微粒子への酸素供給路 となり、 それほど高温には至らないゾルゲル法に必須の加熱工程におい てさえ、 I T O微粒子を劣化させる。 これでは、 到底、 窓ガラスにおい て求められることがある曲げ成形などのさらに高温への加熱を伴う処理 に供することはできない。
珪酸ナ卜リウ厶などのアル力リ珪酸塩から形成した膜では、 そのアル 力リ成分が空気中の炭酸ガスと結びつくと膜の透明性が損なわれる。 こ のいわゆる白華現象 (efflorescence) のため、 アルカリ珪酸塩を用いた コーティング技術は、 着色膜の形成など限られた分野においてのみ適用 されてきた。 しかし、 従来着目されていなかったことではあるが、 この コーティグ技術によれば、 優れた酸素遮蔽能を有する膜を提供できる。 従って、 この枝術を適用すれば、 I T O微粒子を含む液組成物を用い、 酸素含有雰囲気中での一回の成膜工程で、 例えば 0 . 3 mを超える程 度、 さらには 0 . 4 以上にまで厚く形成したとしても、 I T O微粒
子の劣化を、 実用上問題とならない程度に抑制できる。 従来から問題と されてきた白華現象も、 膜組成、 製法などを適切に選択すれば、 改善す ることは可能である。
以上に基づき、 本発明は、 基板と、 この基板上に形成された熱遮蔽膜 とを含み、 この熱遮蔽膜が、 珪素酸化物、 少なくとも 2種のアルカリ金 属酸化物、 および I T O微粒子を含む熱遮蔽膜を提供する。
本発明は、 その別の側面から、 基板と、 この基板上に形成された熱遮 蔽膜とを含む熱遮蔽板の製造方法であって、 基板上に、 少なくとも 2種 のアルカリ珪酸塩、 溶媒および I T O微粒子を含有する液組成物を塗布 し、 この液組成物から上記溶媒を除去することによリ熱遮蔽膜を形成す る製造方法を提供する。
本発明は、また別の側面から、少なくとも 2種のアル力リ金属酸化物、 溶媒、 および I T O微粒子を含む熱遮蔽膜形成用液組成物を提供する。 本発明によれば、 既存の量産設備を用い、 I T O微粒子の熱線遮蔽能 により遮熱性が付与された熱遮蔽板を製造できる。 しかも、 本発明によ れぱ、ガラス板の曲げ処理などに際して必要となる高温、例えば 5 0 0 °C 以上、 の大気中で加熱しても、 I T O微粒子による遮熱性が低下しない 熱遮蔽板を提供することも可能である。
図面の簡単な説明
図 1 は、 本発明による熱遮蔽板の一形態を示す断面図である。
図 2は、 本発明による熱遮蔽板の一形態であって、 基板となるガラス 板を曲げ加工した形態を示す断面図である。
図 3は、 本発明による熱遮蔽板を含む曲げ合わせガラスの一例を示す 断面図である。
図 4は、 本発明による熱遮蔽板を含む曲げ合わせガラスの別の例を示 す断面図である。
図 5は、 本発明による熱遮蔽板の波長 1 5 0 0 n mにおける光線透過 率(以下、 「T 1 5 0 0」 と表示する) と熱処理温度との関係を例示する 図である。
図 6は、 I Τ 0微粒子水分散体のみから形成した膜を有するガラス板 の Τ 1 5 0 0と熱処理温度との関係を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
本発明による熱遮蔽膜は、 優れた酸素遮蔽能を発揮しうる。 この酸素 遮蔽能は、 この膜が緻密なガラス質膜であることを示唆している。 この 機能により、 大気などの酸素含有雰囲気中で I T O微粒子を分散させた 熱遮蔽膜を加熱しても、 酸素欠陥の減少による I T O微粒子の劣化を抑 制できる。
実験により確認されたところによると、 I T O微粒子は、 1 0 0 °Cを 超える温度に加熱すると顕著に劣化する。 しかし、 上記酸素遮蔽能によ れば、 例えば基板としてガラス板を含む熱遮蔽板を 2 5 CTCの大気中に 6 0分間放置したときに波長 1 5 0 0 n mにおける光線透過率が、 例え ば 3 %、 好ましくは 1 %を超えて上昇しない程度に、 I T 0微粒子の劣 化を抑制することができる。
I T O微粒子による遮熱の程度は、 T 1 5 0 0または日射透過率 (T g ) により評価できる。 本発明の熱遮蔽板における T 1 5 0 0は、 基板 がガラス板であるときに、 例えば 4 0 %以下、 好ましくは 3 0 %以下、 より好ましくは 2 0 %以下である。 日射透過率は、 例えば 6 0 %以下、 好ましくは 5 0 %以下、 より好ましくは 4 5 %以下である。
本発明の熱遮蔽板は、 上記程度の遮熱性を発揮しながら、 同時に、 可 視域において高い光線透過率を有しうる。 この透過率は、 基板がガラス 板であるときに、 可視光透過率 (Y a ) により表示して、 好ましくは 7 0 %以上である。 この程度に高い可視光透過率は、 自動車用の窓ガラス
の一部に求められる基準を上回る。 法規制がより高い可視光透過率、 例 えば 7 5 %以上、 を要求する場合には、 この基準を満たす可視光透過率 を有する熱遮蔽板を瑋供することも可能である。
本発明による熱遮蔽膜の膜厚は、 0.3 tmを超えることが好ましく、 0. 4 μηι以上がより好ましく、 0. 5 μ m以上が特に好ましい。 膜厚 が薄すぎると、十分な量の I TO微粒子を分散させることが困難となり、 高い熱線遮蔽能が得られない。 無機顔料などを分散させる着色膜とは異 なり、 I TO微粒子を分散させる熱遮蔽膜は、 この程度の厚みに形成す ることが望ましい。 上記程度の厚膜であっても、 適切な塗布方法を採用 すれば、 1 回の液組成物の塗布および乾燥により形成できる。
熱遮蔽膜の膜厚の上限に制限はないが、 厚すぎる膜を急激に加熱する と発泡やクラックが生じることがある。熱遮蔽膜の好ましい膜厚は、 0. 3 μ mを超え 3 μ. m以下である。
上記特開平 8— 1 9 9 0 9 6号公報が開示するように、 バインダーを 含まない液組成物から形成すると、 膜中の I TO微粒子の分散密度が高 くなる。 しかし、 I TO微粒子を密に充填して表面抵抗値を低下させた 熱遮蔽板を窓ガラスとして使用すると、 室内への電波の透過に支障を来 すおそれがある。 これを考慮すると、 熱遮蔽膜の表面抵抗値は 1 06Ω Ζスクェア (Ω ロ) 以上、 特に 2 0 X 1 06 ΩΖスクェア以上、 が好 ましい。 熱遮蔽膜の膜厚を上記程度に適切に調整すれば、 表面抵抗値を 高く維持しながら十分な熱線遮蔽能を得ることが可能となる。
熱遮蔽膜の組成は好ましい特性が得られる限り制限されないが、通常、 質量%で表して、 3 0 ~ 7 0 %の珪素酸化物、 5~3 0 %のアルカリ金 属酸化物、および 1〜50 %の I TO微粒子を含有する膜とするとよい。 珪素酸化物 (S i O2) はガラス骨格を形成する。 珪素酸化物が 3 0 質量%未満では膜強度が不足する。 一方、 珪素酸化物が 70質量%を超
えると成膜性が低下し、 あるいは膜の酸素遮蔽能が低下する。 珪素酸化 物のより好ましい含有量は 3 2〜 6 6質量%である。 珪素酸化物の高い 比率は白華現象の抑制に効果がある。
アル力リ金属酸化物 ( R 2 0 ; Rは好ましくは N a , Kおよび L i か ら選ばれる少なくとも 2種) は珪素酸化物とともに緻密なガラス質膜を 形成する。 アルカリ金属酸化物が 5質量%未満では成膜性が低下し、 あ るいは膜の熱膨張係数が汎用の基板であるソーダライムシリカガラスよ りも小さくなりすぎる。 一方、 アルカリ金属酸化物が 3 0質量%を超え ると、 膜の熱膨張係数がソーダライムシリカガラスのそれよりも大きく なりすぎる。 熱膨張係数の差が大きすぎると膜強度が低下する。 アル力 リ金属酸化物のより好ましい含有量は 8〜 1 6質量%である。
I T O微粒子の分散量は 1 ~ 5 0質量%、 特に 1 0〜 5 0質量%が適 当である。 I T O微粒子が 1 質量%未満では、 膜の遮熱性が低下しすぎ る。 一方、 I T O微粒子が 5 0質量%を超えると、 膜中に微粒子が保持 されにくくなリ、 膜強度も低下する。 I T O微粒子のより好ましい含有 量は 2 0〜4 0質量%である。
I T O微粒子は、 7 0 0 ~ 9 0 0 n mに吸収端を有し、 それ以上の波 長を有する赤外線を反射または吸収する特性を有し、 高い可視光透過率 と高い遮熱性との両立に適した材料である。 好ましい光学特性の実現の ために、 I T 0微粒子の平均一次粒径は 1 0 0 n m以下、 例えば 1 0 n m〜 1 0 0 n mが好適である。 膜中において、 I T O微粒子は単分散状 態にあることが好ましい。 I T O微粒子の粒径が大きすぎたり、 I T O 微粒子が凝集したりすると、 膜に曇りが生じてヘイズ率が高くなる要因 となる。
本発明による熱遮蔽膜では、 2種のアルカリ金属酸化物の存在が、 熱 遮蔽膜に耐湿性および化学的耐久性の改善をもたらす。 このため、 この
熱遮蔽膜は、 1種類のみのアルカリ金属酸化物を含有する膜よりも屋外 での使用に適している。 熱遮蔽膜は、 少なくとも 2種のアルカリ金属酸 化物として、 酸化ナトリウムと、 酸化リチウムおよび酸化カリウムから 選ばれる少なくとも 1 つとを含むことが好ましく、 酸化ナトリウムと酸 ィヒリチウムとを含むことがさらに好ましい。
白華現象の抑制には、 アル力リ金属酸化物における酸化リチウムの比 率を相対的に高めるとよい。 これを考慮すると、 膜中における酸化リチ ゥ厶の質量は、 アルカリ金属酸化物の質量の 3 3〜 9 0 %、 さらに 6 0 〜 9 0 %、 が適切である。 上記特開 2 0 0 2— 2 9 7 8 2号公報では、 珪酸塩によりリチウム比率が開示されているが、 この比率の上限 (珪酸 リチウム/珪酸ナ卜リウ厶 = 8 2 ) は、 最も汎用の珪酸塩を使用した と仮定して酸化物に換算すると、 5 5 %程度の酸化リチウム比率に相当 する。
基板は、 特に制限されないが、 ガラス板が好適である。 ガラス板の表 面に予め下地膜を形成した基板を用いてもよい。 本発明によれば、 基板 がガラス板を含み、 可視光透過率(Y a )が 7 0 %以上、 日射透過率(T g ) が 5 0 %以下、 T 1 5 0 0が 2 0 %以下である熱遮蔽板を提供でき る。 この熱遮蔽板は、 高い遮熱性と高い視認性とを有し、 窓ガラスとし ての使用に適している。 同様に、 本発明によれば、 基板がガラス板を含 み、 ヘイズ率が 5 %以下である熱遮蔽板を提供できる。 自動車用窓ガラ スとして供する場合、 熱遮蔽板のヘイズ率は 2 %以下、 さらには 1 %以 下が好ましい。
自動車に光ビーコンによる通信機能が搭載されている場合、 その通信 は、 自動車の窓ガラス(主としてウィンドシールド)を介して行われる。 この場合、 光ビーコンによる通信波長範囲 ( 8 0 0〜 9 0 0 n m ) を考 慮した波長 8 5 0 n mにおける光線透過率(以下、 Γ Τ 8 5 0」 と表記す
る) は 3 0 %以上が好ましい。 これを実現するには、 基板となるガラス 板の厚み、 光学特性に応じ、 熱遮蔽膜の組成、 厚みを適宜調整するとよ い。
着色膜とは異なり、 熱遮蔽膜では、 分散した微粒子による可視域にお ける光吸収はむしろ望ましくない。 熱遮蔽膜は、 実質的に無色であるこ とが好ましい。 ここで、 実質的に無色であるとは、 熱遮蔽板の透過色の 色度と、 用いた基板の透過色の色度とを、 ハンター (Hunter) 表色系に よる aおよび bにより表示したときに、 少なくとも小数点以下一桁まで 一致することをいう。 本発明による熱遮蔽膜は、 無機顔料および金属着 色料を実質的に含まなくてもよい。 ここで、 無機顔料および金属着色料 とは、 上記特開 200 2— 29 7 8 2号公報に例示されている材料をい い、 実質的に含まないとは、 詳細には含有量が 0. 1質量%未満である ことをいう。
熱遮蔽膜は、 例えば、 基板上に液組成物を塗布し、 液組成物から溶媒 を除去することにより形成できる。 液組成物は、 少なくとも 2種のアル 力リ珪酸塩(アル力リ金属珪酸塩)、 溶媒、 および I TO微粒子を含むこ とが好ましい。 液組成物には、 具体的には、 水ガラス、 即ちアルカリ珪 酸塩の濃厚水溶液を添加するとよい。 代表的な水ガラスは、 N a 20 ' n S i 02 ( n :任意の正の数、 例えば 0. 5 ~4. 0) により示すこ とができる。 水ガラス、 または後述する I TO微粒子水分散体を用いる と、 液組成物には溶媒として水が含まれることになるが、 溶媒はこれに 限らず、 水とともに、 例えばエチルアルコール, イソプロピルアルコー ルなどを含んでいてもよい。
酸化力リウ厶および酸化リチウムについても、 アル力リ珪酸塩の水溶 液から供給するとよい。 これら他のアルカリ金属は、 例えば、 L i 20 ' n S i O 2 ( n :任意の正の数、 例えば 3. 5~ 7. 5)、 K 20 ■ n S
i 02 ( n :任意の正の数、 例えば 2. 9~ 3. 3) により示されるァ ルカリ珪酸塩の水溶液から供給できる。
アル力リ珪酸塩は、 アル力リ金属酸化物および珪素酸化物の双方を供 給する原料であるが、 液組成物には、 適切な組成範囲となるように、 必 要に応じ、 さらにアルカリ珪酸塩、 珪素酸化物を適量加えるとよい。 こ の場合、 珪素酸化物は、 例えば珪素酸化物微粒子として加えることがで きる。 珪素酸化物微粒子は、 例えばコロイダルシリカから供給するとよ い。 珪素酸化物微粒子についても、 粒径が大きすぎると膜の曇りの原因 となるため、 その一次粒径は 200 n m以下とするとよい。 珪素酸化物 微粒子の粒径は、 液組成物に含まれるアルカリ成分により溶解させるこ とによって小さくしてもよい。
なお、 特に熱遮蔽膜を高温にまで加熱する場合には、 コロイダルシリ 力は、 有機分散体を含まないものとするとよい。 分解した有機物の残渣 が膜中に残存すると、 熱遮蔽膜の透明性を損なうおそれがあるからであ る。
I TO微粒子は、 例えば水分散液として液組成物に加えればよい。 こ の水分散液において、 I TO微粒子の固形分質量比率は 5 %以上が好ま しい。 固形分質量比率を 5 %未満とすると十分な量の I TO微粒子の分 散が困難になることがある。 なお、 この水分散液において、 I TO微粒 子の質量に対する分散剤の質量は 40 %以下、 特に 2 0 %以下、 が好ま しい。 この質量比率が 40 %を超えると、 膜の堅牢性が損なわれるおそ れがある。 この質量比率の下限は特に制限されないが、 分散液において I TO微粒子を均一に分散させるのに足りる量とするとよい。
液組成物は、 熱遮蔽膜が上記適切な組成となるようにその成分比を調 整するとよく、具体的には、その固形分が、質量%で表して 30- 7 0 % の換算した珪素酸化物、 5〜30 %の換算したアルカリ金属酸化物、 1
〜5 0 %の I T O微粒子を含有することが好ましい。 液組成物の固形分 濃度は、 塗布方法などに応じて適宜定めるとよいが、 3 0 %以下が好ま しい。 この濃度が 3 0 %を超えると、 均一な塗布が困難となり、 乾燥中 の応力によって膜にクラックが発生しやすくなる。
液組成物の塗布は、 従来から公知の各種方法を用いて行えばよく、 例 えば、バーコ一ティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、 フローコーティング、 ロールコーティング、 ディップコーティング、 刷 毛塗り、スクリーン印刷、インクジエツ卜コーティングを用いればよい。 塗布した後、 液組成物から溶媒を除去するために、 乾燥工程を実施す る。 この工程は、 室温で行っても加熱下で行ってもよいが、 室温で乾燥 させた後、 加熱してさらに乾燥することが好ましい。 溶媒の除去が十分 でないと、 熱遮蔽膜に白華が生じやすくなるからである。
乾燥工程における加熱は、 特に限定されないが、 水ガラスなどのアル 力リ珪酸塩から膜を形成する場合には、 膜の耐久性を考慮すると液組成 物を 1 0 0 °C以上、 さらには 1 2 0 °C以上、 にまで加熱することが好ま しい。 この程度の温度にまで加熱すると膜は緻密化する。 この温度に上 限はないが、 高すぎると昇温速度によっては溶媒が急激に除去されるた め、 発泡が生じたり膜にクラックが発生したりすることがある。 このた め、乾燥工程では、加熱を 3 0 0 °C以下に制限するとよい。加熱時間は、 加熱温度、 塗布した液組成物の量などに応じ、 液組成物から溶媒を十分 に除去しうるに足る時間とするとよく、 例えば少なくとも 1 0分とする とよい。こうして、基板上に熱遮蔽膜が形成され、熱遮蔽板が得られる。 熱遮蔽板は、 乾燥工程における温度を上回る温度にまでさらに加熱し てもよい。 特に基板がガラス板を含む場合には、 ガラス板の加工のため に、 高温への加熱が必要になる場合がある。 例えば、 この加熱工程にお いて、 ガラス板には、 強化処理および曲げ処理から選ばれる少なくとも
一方の処理、 例えば曲げと強化の同時処理、 が施される。 この処理のた めには、 ガラス板を、 ガラス板の温度により表示して、 好ましくは 5 0 0 °C〜 7 3 0 °Cに加熱するとよい。 こうして、 熱遮蔽膜を形成した、 強 化ガラス、 曲げガラスまたは曲げ強化ガラスを得ることができる。
本発明によれば、 上記の一連の工程、 即ち液組成物の塗布、 乾燥、 さ らに高い温度への加熱、 をすベて大気中で行っても、 I T O微粒子の劣 化を抑制できる。 しかも、 一回の塗布により、 膜厚が 0 . 3 t mを超え る程度に、 例えば 0 . 3 At mを超え 3 . 0 μ m以下となるように、 液組 成物を供給しても、 I T O微粒子の劣化が抑制された熱遮蔽膜を形成で きる。 上記各工程は、 雰囲気調整のための特別の装置を必要としないた め、 基本的に、 既存の量産設備を用いて実施できる。
驚くべきことに、 本発明による熱遮蔽膜を加熱すると、 それが大気中 の加熱であっても、 I T O微粒子の熱線遮蔽能が改善する場合があるこ とが確認された。 これは、 緻密なガラス質膜に I T O微粒子を分散させ て熱処理するだけで、還元処理(上記特開平 7 - 2 1 8 3 1号公報参照) と同様の効果が得られることを意味している。 この効果は、 基板がガラ ス板の場合には、 例えば T 1 5 0 0の低下および または日射透過率の 低下として確認できる。 I T O微粒子の特性改善は、 3 5 0 °C以上の雰 囲気中で加熱することにより行うとよい。 例えば、 7 2 0 °Cの大気中で 1 2 0秒間放置すると、 T 1 5 0 0の低下により I T O微粒子の特性改 善効果が認められる。
従って、 膜を形成した後に熱遮蔽板をさらに加熱することにより、 加 熱する前と比較して、 熱遮蔽板の T 1 5 0 0および日射透過率から選ば れる少なくとも一方を低下させることが好ましい。 これによれば、 不活 性ガス雰囲気を必要とせず、 I T Oの特性を改善できる。 加熱温度に上 限はないが、 膜や基板の耐熱温度を考慮すると 7 3 0 °C以下が好適であ
る。 この特性改善のための加熱は、 ガラス板加工のための加熱と同時に 行えば足りる。
以下、図面を参照して、本発明の熱遮蔽板の具体例について説明する。 図 1 に示す熱遮蔽板では、 基板となるガラス板 2上に熱遮蔽膜 1 が形 成されている。この熱遮蔽膜 1 には、 I T O微粒子 3が分散されている。 図 2に示す熱遮蔽板 4は、 ガラス板 2が凸面と凹面を有するように曲げ 加工され、 熱遮蔽膜 3はガラス板 2の凹面上に形成されている。 この熱 遮蔽板 4は、 例えば自動車のサイドウィンドウに適している。 サイ ドウ ィンドウに用いるには、 ガラス板に曲げ処理とともに強化処理を施すと よい。
図 3に示すように、 合わせガラスを構成するガラス板として、 本発明 による熱遮蔽板を用いてもよい。 図 3に示す合わせガラス 5は、 本発明 による熱遮蔽板 5 2を含んでいる。 この合わせガラス 5において、 熱遮 蔽板 5 2は室内側のガラス板として用いられており、 室外側に配置され たもう一枚のガラス板 5 1 と、 ポリビニルプチラール ( P V B ) 膜など の樹脂中間膜 5 3により接合している。 熱遮蔽膜 1 は、 いわゆる第 3面 (室外側から数えて 3番目のガラス表面) に形成されている。 この曲げ 合わせガラスは、 自動車のウィンドシールドに適している。
図示したように、 熱遮蔽膜を合わせガラスの第 2面または第 3面、 即 ち大気に露出しない表面、 に形成すると、 膜が大気中の炭酸ガスに直接 接しないため、 白華現象が生じにくくなる。 このため、 大気に露出しな い面に熱遮蔽膜を配置する場合には、 塗布した液組成物を加熱して合わ せ工程に先だって十分に溶媒を除去する工程の必要性は相対的に小さく なる。 もっとも、 図 4に示すように、 熱遮蔽膜 1 は、 合わせガラス 5の 第 1面または第 4面 (図 4では第 4面) に形成しても構わない。
なお、 ガラス板は、 無色ガラス板であっても着色ガラス板であっても
よい。 着色ガラス板としては、 グリーン色調ガラス板、 ブロンズ色調ガ ラス板、 紫外線吸収機能を有するグリーン色調ガラス板、 紫外線吸収機 能を有するブロンズ色調ガラス板などを例示できる。 これらを適宜組み 合わせた合わせガラスとすれば、 所望の光学特性の実現が容易となる。 曲げガラス上に熱遮蔽膜を形成する場合には、 上記の工程に従い、 ま ず平坦なガラス板に熱遮蔽膜を形成し、 その後、 ガラス板の曲げ成形を 行うとよい。 平坦な表面への液組成物の塗布は、 均一で厚い膜の形成に 有利である。ただし、予め曲げ加工したガラス板に、液組成物を塗布し、 加熱して熱遮蔽膜を形成してもよい。 液組成物を塗布する対象としての 基板 (ガラス板) は、 平坦な表面を有することが好ましいが、 これに限 るわけではない。
実施例
以下、 成分比を示す%はすべて質量%である。 また、 以下の操作はす ベて大気中で行った。 以下の実施例で得た熱遮蔽膜付きガラス板の特性 の主な評価方法を以下に示す。
•透明性
ヘイズメーター (濁度計、 スガ試験機製、 H G M— 2 D P) を用いて ヘイズ率を測定した。
•光線透過率
分光光度計 (島津製作所製、 U V - 3 000 P C) を用い、 波長 85 O n mおよび 1 500 n mにおける透過率 (T 850 n m、 T 1 500 n m) と、 日本工業規格、J I S (Japanese Industrial Standard) R 3 1 06に従って算出した可視光透過率 (Y a) および日射透過率 (T g) とを測定した。
·膜厚
熱遮蔽膜の膜厚を、 表面形状測定装置 (T E N CO R I N S T R U
M E N T S製、 A L P H A— S T E P 2 0 0 ) を用いて測定した。 (実施例 1 )
珪酸ナ卜リウ厶水溶液 (水ガラス 3号、 キシダ化学製)、 珪酸カリウ厶 水溶液(スノーテックス K、 日産化学工業製)、 水分散コロイダルシリカ (Κ Ε - W 1 0、 粒径 1 1 0 n m、 日本触媒製)、 I T O微粒子水分散体 (粒径 5 0 n m、 住友金属鉱山製)、 精製水を各所定量秤量し、 混合して 撹袢することにより、 熱遮蔽膜形成用液組成物を得た。
この液を、 洗浄したフロー卜ガラス板 ( 1 0 0 X 1 0 0 X 3. 4 mm) 上に約 0. 2 m L滴下してバーコ一ターにより展開塗布し、 室温で乾燥 させ、 さらに 2 5 0°Cの乾燥炉中にて 1 0分間乾燥した。
なお、 上記コロイダルシリカは、 S i 02を 1 5質量%含み、 上記 I TO微粒子水分散体は、 I TO微粒子を 2 0質量%含んでいた。 また、 上記ガラス板の光学特性は、 Y a : 8 3 %、 T g : 6 3 %、 T 1 5 0 0 n m : 5 9 %、 T 8 5 0 n m : 4 7 %、 ヘイズ率: 0 %であった。
こうして得た熱遮蔽膜付きガラス板について、 各種特性を測定した。 液組成物に含まれる各成分の量および各成分の固形分質量比率、 液組成 物の塗布方法および条件、 乾燥工程の温度および時間を、 上記により測 定した特性とともに表 1 に示す。以下の実施例および比較例についても、 製造条件および特性を、 表 1 および表 2に示す。
(実施例 2 )
バーコ一ターに代えてスピンコーターを用いた以外は、 実施例 1 と同 様にして熱遮蔽膜付きガラス板を得た。 スピンコーティングは、 1 6. 6回転毎秒 (= 1 0 0 0 r p m) で 5秒間の条件で実施した。
実施例 1 との比較により、 バーコ一ティングよりもスピンコーティン グによる成膜が厚膜の形成には適していること、 膜厚の調整により I T Oの濃度が同一の液組成物を用いても Y aや T gなどの光学特性を調節
できること、 が確認できる。
(実施例 3~ 5 )
珪酸カリウ厶水溶液に代えて珪酸リチウム水溶液 ( L S S 3 5、 日産 化学工業製) を用い、 成分比を適宜変更した以外は、 実施例 1 と同様に して熱遮蔽膜付きガラス板を得た。
I T O微粒子を増量すれば、 遮熱性は向上するが Y aがやや低下し、 ヘイズ率がやや上昇する。
(実施例 6〜 7 )
実施例 3〜4で得た熱遮蔽膜付きガラス板を、 7 2 0 °Cの焼成炉内で 1 2 0秒間加熱した。 この加熱により、 ガラス板の温度は 6 5 0°Cにま で上昇した。 加熱後の熱遮蔽膜付きガラス板の特性を表 1 に示す。 実施例 3と 6、 実施例 4と 7とをそれぞれ比較すると、 大気中で加熱 したにもかかわらず、 T 1 5 0 0および日射遮蔽率が低下したことが確 認できる。
(実施例 8)
この実施例では、 合わせガラスを作製した。 まず、 実施例 3と同様に して熱遮蔽膜付きガラス板を得た。 ただし、 ガラス板の厚みを 2. 1 m mに変更し、 液組成物の塗布方法は実施例 2と同じ条件のスピンコーテ イングとした。 また、 塗布した液組成物は、 室温で乾燥させた後、 加熱 による乾燥を行わず、 そのまま合わせガラス用の単板ガラスとした。 合わせ工程は、 熱遮蔽膜付きガラス板と、 液組成物を塗布するために 用いたものと同じフロー卜ガラスとを、 P V B膜により接合することに より行った。 具体的には、 まず減圧状態で 7 0°Cに加熱して仮接着し、 さらに 1 4 0°C、 1 4 k g / c m 2の条件でォートクレーブを用いて本 接着を行った。 熱遮蔽膜は P V B膜に接するように配置した。 得られた 熱遮蔽膜付き合わせガラスの光学特性を表 1 に示す。
実施例 8で用いたガラス板の大きさは、 1 0 0 X 1 0 0 X 2. 1 mm であリ、 その光学特性は、 Y a : 84 %、 T g : 6 9 %、 T 1 5 5 0 n m : 6 6 %、 T 8 5 0 n m : 6 0 %、 ヘイズ率: 0 %であった。
(実施例 9)
液組成物における成分比を変更して膜中の酸化リチウムの比率を高め、 塗布方法を 5回転毎秒 (= 3 00 r p m) で 1 0秒間の条件のスピンコ 一ティングとし、 乾燥時間を 1時間とした以外は、 実施例 3と同様にし て、 熱遮蔽膜付きガラス板を得た。 乾燥工程におけるガラス温度は 2 5 0°Cに到達していた。
なお、 実施例 9で用いたガラス板の光学特性は、 Y a : 7 3 %、 T g : 4 5 %、 T 1 5 0 0 n m : 3 8 %、 T 8 50 n m : 2 7 %、 ヘイズ率: 0 %であり、 ハンター表色系による透過光の色度は、 a : — 8. 0、 b : 3. 3であった。
(実施例 1 0〜 1 4 )
液組成物に水分散コロイダルシリカを添加せず、 アルカリ金属酸化物 における酸化リチウムの比率が順次低くなるように成分比を調整した以 外は、 実施例 9と同様にして熱遮蔽膜付きガラス板を得た。 これらの実 施例では、 各熱遮蔽膜付きガラス板を、 3 0〜 3 5°Cの室内に 1 ヶ月間 放置した後のヘイズ率も測定した。
アルカリ金属酸化物における酸化リチウムの比率を高くすれば、 製造 後に進行する白華現象をある程度抑制できる。
(実施例 1 5 )
実施例 1 0と同様にして熱遮蔽膜付きガラス板を得た。 ただし、 この 実施例では、 液組成物を室温でのみ乾燥し、 加熱による乾燥は実施しな かった。
実施例 1 0と比較すると、 乾燥のために 2 5 0 °Cで加熱しても、 I T
O微粒子による熱線遮蔽能は実質的に影響を受けないことが確認できる。 なお、 実施例 1 0, 1 5において得た熱遮蔽板の透過色は、 用いたガ ラス板と同一 (a : — 8 . 0、 b : 3 . 3 ) であった。 これにより、 熱 遮蔽膜が実質的に無色であることが確認できた。
さらに、 実施例 6, 1 0による熱遮蔽膜の表面抵抗値を、 四端子方式 の抵抗率計 (三菱化学社製) を用いて測定したところ、 その値はいずれ も 2 0 X 1 0 6 Ω /スクェア以上であって抵抗率計の測定限界を超えて いた。
(比較例 1 )
テ卜ラエ卜キシシランの加水分解によって得られたゾルと実施例 1で 用いた I T O微粒子水分散体を混合することにより、 液組成物を得た。 この液組成物をスピンコーティングによってガラス板上に塗布し、 室温 で乾燥させた後、 さらに 2 5 0 °Cの乾燥炉中にて 1 0分間乾燥させた。 引き続き、 この熱線遮蔽膜付きガラス板を、 7 2 0 °Cの焼成炉内にて 1 2 0秒間加熱した。 T 1 5 0 0の値により I T O微粒子が劣化したこと が確認できる。 ゾルゲル法による膜は、 ガラス質ではあるが孔度が高く 緻密ではない。
(比較例 2 )
市販のェチルシリケ一卜加水分解液 (H A S 1 0、 コルコー卜社製) と実施例 9で用いた I T O微粒子水分散体を混合することにより、 液組 成物を得た。 この液組成物をフローコーティングによって実施例 9で用 いたガラス板上に塗布し、 室温で乾燥させ、 熱遮蔽膜付きガラス板を得 た。
(比較例 3 )
比較例 2と同様にして得た熱遮蔽膜付きガラス板を、 2 5 0 °Cの乾燥 炉中にて 1時間さらに加熱した。比較例 2と 3とを比較すると、 2 5 0 °C
の加熱によって T 1 5 0 0が 6 %上昇したことが確認できる。 膜が緻密 でないと、 この程度の温度でも I TO微粒子は劣化する。
[熱処理温度と I TO微粒子の特性との関係]
(実施例 1 6)
以上より、 本発明の熱遮蔽膜を熱処理すると、 I T O微粒子の熱線遮 蔽能が向上する場合があることが確認された。 そこで、 この改善と温度 との関係を明らかにするために、 表 1 に示した条件で上記実施例と同様 にして作製した熱遮蔽膜付きガラス板を、 5 0 0°Cに設定した炉内に入 れて基板温度が所定温度 (2 5 0 , 3 0 0, 3 5 0, 4 0 0 °C) に到達 するまで放置し、 その後 T 1 5 0 0を測定した。 なお、 2 5 0 °Cまでの 加熱には 7 0秒、 4 0 0°Cには 2 7 7秒を要した。 結果を図 5に示す。
T 1 5 0 0は、 2 5 0 °Cまでの加熱により室温での乾燥による値 ( 1 5 %) をわずかに上回った ( 1 6 %)。 しかし、 3 0 0°Cまでの加熱では 室温と同じ 1 5 %となり、 3 5 0 °Cでは 1 2 %、 4 0 0 °Cでは 1 1 %と、 3 5 0 °C以上の加熱では室温での値よりもむしろ低くなつた。 Y a, T g, ヘイズ率に対する乾燥温度の影響は 1 %以下であった。
(比較例 4 )
比較のため、 I TO微粒子水分散体のみから膜を形成したガラス板に ついて、 乾燥温度による T 1 5 0 0の変化を測定した。 結果を図 6に示 す。 図 6に示したとおり、 1 0 0 °C以上の大気中の加熱で I T 0微粒子 の熱線遮蔽能は低下した。
本発明による熱遮蔽膜でも、 1 0 0〜 2 5 0°C程度で加熱するとおそ らくは膜の最表層に分散した I T O微粒子が劣化する。 しかし、 図 5よ リ明らかなとおり、 本発明による熱遮蔽膜では、 この劣化が 3 5 0 °C以 上の加熱による I TO微粒子の特性向上の効果により十分に打ち消され る程度に抑制されている。
(表 1 )
* B:バーコ一 、 S:ス ンコー ト * r.t.: * i :(.t-400
*実施例 3〜7の Li20/R20は 14.5% (ただし、 R20 = Li20 + Na20 + K20)
(表 2)
*S :スピンコー卜、 F : フローコー卜 * r.t.: 室温 産業上の利用可能性
以上のとおり、 本発明によれば、 I T O微粒子により遮熱性が付与さ れた熱遮蔽板が提供される。 本発明による熱遮蔽膜は、 大気中における 一回の成膜工程で厚く形成しても高い酸素遮蔽能を維持し、 I TO微粒 子による熱線遮蔽能の維持、 増進に極めて適している。 この酸素遮蔽能 を利用すれば、 高温に加熱されても熱遮蔽板の遮熱性を維持できる。 本 発明により提供される熱遮蔽板は、 特に車両、 建築物の窓ガラスとして 大きな利用価値を有する。