[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

JPWO2011013247A1 - 脂肪性肝炎−肝癌モデル動物 - Google Patents

脂肪性肝炎−肝癌モデル動物 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2011013247A1
JPWO2011013247A1 JP2011524600A JP2011524600A JPWO2011013247A1 JP WO2011013247 A1 JPWO2011013247 A1 JP WO2011013247A1 JP 2011524600 A JP2011524600 A JP 2011524600A JP 2011524600 A JP2011524600 A JP 2011524600A JP WO2011013247 A1 JPWO2011013247 A1 JP WO2011013247A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steatohepatitis
human animal
liver cancer
model
administering
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2011524600A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5337245B2 (ja
Inventor
米山 博之
博之 米山
庄人 藤井
庄人 藤井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Stelic Institute and Co Inc
Original Assignee
Stelic Institute and Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Family has litigation
First worldwide family litigation filed litigation Critical https://patents.darts-ip.com/?family=43528923&utm_source=google_patent&utm_medium=platform_link&utm_campaign=public_patent_search&patent=JPWO2011013247(A1) "Global patent litigation dataset” by Darts-ip is licensed under a Creative Commons Attribution 4.0 International License.
Application filed by Stelic Institute and Co Inc filed Critical Stelic Institute and Co Inc
Publication of JPWO2011013247A1 publication Critical patent/JPWO2011013247A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5337245B2 publication Critical patent/JP5337245B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01KANIMAL HUSBANDRY; AVICULTURE; APICULTURE; PISCICULTURE; FISHING; REARING OR BREEDING ANIMALS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; NEW BREEDS OF ANIMALS
    • A01K67/00Rearing or breeding animals, not otherwise provided for; New or modified breeds of animals
    • A01K67/027New or modified breeds of vertebrates
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01KANIMAL HUSBANDRY; AVICULTURE; APICULTURE; PISCICULTURE; FISHING; REARING OR BREEDING ANIMALS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; NEW BREEDS OF ANIMALS
    • A01K2207/00Modified animals
    • A01K2207/20Animals treated with compounds which are neither proteins nor nucleic acids
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01KANIMAL HUSBANDRY; AVICULTURE; APICULTURE; PISCICULTURE; FISHING; REARING OR BREEDING ANIMALS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; NEW BREEDS OF ANIMALS
    • A01K2207/00Modified animals
    • A01K2207/25Animals on a special diet
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01KANIMAL HUSBANDRY; AVICULTURE; APICULTURE; PISCICULTURE; FISHING; REARING OR BREEDING ANIMALS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; NEW BREEDS OF ANIMALS
    • A01K2227/00Animals characterised by species
    • A01K2227/10Mammal
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01KANIMAL HUSBANDRY; AVICULTURE; APICULTURE; PISCICULTURE; FISHING; REARING OR BREEDING ANIMALS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; NEW BREEDS OF ANIMALS
    • A01K2267/00Animals characterised by purpose
    • A01K2267/03Animal model, e.g. for test or diseases
    • A01K2267/0331Animal model for proliferative diseases

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Environmental Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Animal Husbandry (AREA)
  • Biodiversity & Conservation Biology (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

実験用動物へ臓器炎症誘導剤を投与しインスリン抵抗性を惹起させ、さらに高脂肪食を用いて飼育することにより脂肪肝を誘発させた。その結果、当該動物について、脂肪性肝炎を発症させることに成功した。該動物は、ヒトと類似した病理所見を示す。該モデル動物を使用することにより、疾患の治療もしくは予防用の物質のスクリーニング、および、薬物の薬効評価を効果的に実施することができる。

Description

本発明は、脂肪性肝炎および肝癌モデル動物、並びに、該動物の利用方法に関する。
従来、非アルコール性脂肪性肝疾患は進展することのない良性の疾患であるとされてきたが、非飲酒家であるにも関わらず、アルコール性肝炎に類似した炎症及び肝線維化の組織像を示すことが明らかとなり、予後不良の疾患であることが知られている。特に近年、肥満、糖尿病などを背景とするメタボリック症候群が注目を浴び、非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis: NASH)はその症候群の一つであるとの考えが広がっている。しかしながら、その機序は不明であり、また効果的な治療法・治療薬剤が確立されていない。その一端の原因は、ヒトの生活習慣病を発症の基盤とする為に、適当な実験動物が確立されていない為である。
肝硬変、肝癌など致死性の疾患に進展するNASHの病態の解明は、効果的な治療法並びに治療薬の開発に必須である。しかし現在NASHモデルマウスとして研究に用いられている実験動物では、レプチン受容体欠損マウス(非特許文献1)、肝細胞特異的Pten欠損マウス(非特許文献2)、レチノイン酸受容体αの優性阻害型遺伝子改変マウス(非特許文献3)などの単一遺伝子改変マウスやメチオニン-コリン欠乏食(非特許文献4)などの特殊な餌を与えることによって誘発されるものが用いられているが、ヒトの病因としては、遺伝子改変マウスの様な単一遺伝子変異で病態が発症進行するのではなく、また特殊な栄養成分のみを摂取している為とは考えにくい。またこれらのマウスではインスリン抵抗性並びに肝線維化を同時に観察することはできず、また線維化を誘発するマウスにおいては血清生化学的な解析において指標とされるALTの上昇が軽微であるためその病態を観察する為には多数のマウス組織片が必要であり、また逆にALTの上昇が著しく高値を示す為にヒトの病態とは異なるものであると考えられる。さらに、病態が処置後自然に治癒してしまう為に、薬効判定における試験及び評価が困難であり、NASH治療法並びに治療薬の開発の為には、ヒトの臨床病態に即した実験動物モデルの開発が望まれる。
様々な研究が行われているが、ヒトと類似した病態を示す実験動物が存在せず、詳細な病因及び治療法のスクリーニングが困難な状況である。
Sahai A et al., Am J Physiol Gastroentest Liver Physiol 287:G1035, 2004 Horie Y et al., J Clin Invest 113:1774, 2004 Yanagitani A et al., Hepatology 40:366, 2004 Rinella M et al., Journal of Hepatology 40:47, 2004
本発明は、ヒトと類似した病理所見を示す脂肪性肝炎モデル動物、および、肝癌モデル動物、並びに、該動物の利用方法の提供を課題とする。より具体的には、インスリン抵抗性から脂肪肝、脂肪性肝炎、肝線維化、肝硬変、肝癌となるモデル動物の作製技術の提供を課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。本発明者は、マウスへ臓器炎症誘導剤を投与しインスリン抵抗性を惹起させ、さらに高脂肪食を用いて飼育することにより脂肪肝を誘発させた。その結果、当該マウスについて、脂肪性肝炎を発症させることに成功した。当該マウスを詳細に検討したところ、以下のような病理所見を呈した。
(1)肝細胞において大滴性の脂肪沈着が観察され,肝細胞の風船様膨化が観察された。
(2)炎症性細胞浸潤が認められた。
(3)中心静脈を中心とした線維化が観察された。
上記病理所見はヒトのNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)に特徴的なものである。即ち本発明者は、上記手法によってヒトのNASHと同様の病理所見を示すマウスの作出に初めて成功した。
本発明者によって作製されたNASHモデル動物は、これまでのモデル動物と比べて、以下のような相違点を有する。
(1)肝細胞の脂肪変性、線維化が門脈周囲ではなく、ヒトの病理組織と同様に中心静脈を中心に進行して行く。
(2)病態の進行により、脂肪沈着、炎症細胞の消失が観察されるが肝線維化のみが観察されるヒトの"burned-out NASH"と呼ばれる病理組織像も観察される。
本発明のモデル動物は、遺伝子改変せずに作成される点において特徴的なものと言える。また本発明のモデル動物は、ヒトのNASHへの進行と予後に非常に類似した病態を均一なタイムコースで100%確実に発症する動物であり、ヒトの病態進行と一致する初のモデル動物である。さらに本発明のモデル動物は、インスリン抵抗性から脂肪肝、脂肪性肝炎、肝線維化、肝硬変を同時に観察できる点においても顕著な有利な効果を奏すると言える。
さらに本発明者は、上記NASHモデル動物についてさらに飼育を継続することにより、肝硬変の後に肝癌が発症することを新たに見出した。これは、ヒトにおいて確認されてきた病態変化と同じものであり、当該手法によって作製される動物は、ヒトの肝癌モデル動物として非常に有用である。
ヒトの肝癌では肝表面に隆起を示すが、化学物質を投与し作製される従来の肝癌モデル動物では、肝表面に隆起を形成しない肝癌を呈する。一方、本発明のモデル動物は、遺伝子改変や薬物投与などをせずに、ヒトの肝癌同様、肝表面への隆起が観察されるため、ヒトの肝癌により近いモデルである。さらに、化学物質投与では、肝硬変が観察されないが、本発明のモデル動物では塊状型の索状肝細胞癌を呈し、また炎症性細胞の浸潤、正常肝細胞を圧排するように発育した肝硬変由来の肝臓癌が観察される。さらに、肝癌への発生母地となるのはヒトのNASHに非常に類似した病態を示す大滴性の脂肪肝であり、肝線維化及び肝硬変を経るため、いままでの報告にはない非常に有用なモデル動物である。
上述の如く本発明者は、ヒトと類似した病理所見を示す脂肪性肝炎モデル動物、および肝癌モデル動物の作出に成功し、本発明を完成させた。これらのモデル動物を使用することにより、疾患の治療もしくは予防用の物質のスクリーニング、および、薬物の薬効評価を効果的に実施することができる。
本発明は、インスリン抵抗性から脂肪肝、脂肪性肝炎、肝線維化、肝硬変、肝癌となるモデル動物、並びに、該動物の利用方法に関し、より具体的には、
〔1〕 臓器炎症誘導剤を投与して作製される脂肪性肝炎モデル非ヒト動物、
〔2〕 前記脂肪性肝炎が非アルコール性脂肪性肝炎である、〔1〕に記載の非ヒト動物、
〔3〕 臓器炎症誘導剤を投与して作製される糖尿病モデル非ヒト動物、
〔4〕 前記臓器炎症誘導剤がN-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ阻害剤である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の非ヒト動物、
〔5〕 臓器炎症誘導剤を投与し、高脂肪食を用いて飼育することにより脂肪肝を生じさせる工程を含む、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の非ヒト動物、
〔6〕 前記非ヒト動物がマウスである、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の非ヒト動物、
〔7〕 非ヒト動物の臓器へ炎症を誘導する工程を含む、脂肪性肝炎モデル非ヒト動物の生産方法、
〔8〕 以下の工程(a)および(b)を含む、脂肪性肝炎の治療用もしくは予防用物質のスクリーニング方法、
(a)〔1〕に記載の脂肪性肝炎モデル非ヒト動物へ被検物質を投与する工程
(b)脂肪性肝炎に対する改善効果を評価する工程
〔9〕 以下の工程(a)および(b)を含む、薬物の脂肪性肝炎の改善に対する薬効評価方法、
(a)〔1〕に記載の脂肪性肝炎モデル非ヒト動物へ被検薬物を投与する工程
(b)脂肪性肝炎に対する改善効果を評価する工程
〔10〕 以下の工程(a)および(b)を含む、糖尿病性疾患の治療用もしくは予防用物質のスクリーニング方法、
(a)〔3〕に記載の糖尿病性疾患モデル非ヒト動物へ被検物質を投与する工程
(b)糖尿病性疾患に対する改善効果を評価する工程
〔11〕 以下の工程(a)および(b)を含む、薬物の糖尿病性疾患の治療もしくは予防のための薬剤における副作用のリスク評価方法、
(a)〔3〕に記載の糖尿病性疾患モデル非ヒト動物へ被検薬剤を投与する工程
(b)糖尿病性疾患の治療もしくは予防のための薬剤の副作用を評価する工程
〔12〕 〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の非ヒト動物をさらに飼育して作製される、肝癌モデル非ヒト動物、
〔13〕 以下の病理学的形態によって構造的に特徴付けられる、〔12〕に記載の非ヒト動物、
(a)塊状型の索状肝細胞癌
(b)炎症性細胞の浸潤
(c)正常肝細胞を圧排するように発育した肝硬変由来の肝臓癌
〔14〕 以下の工程(a)および(b)を含む、肝癌の治療用もしくは予防用物質のスクリーニング方法、
(a)〔12〕または〔13〕に記載の肝癌モデル非ヒト動物へ被検物質を投与する工程
(b)肝癌に対する治療効果を評価する工程
〔15〕 以下の工程(a)および(b)を含む、薬物の肝癌治療に対する薬効評価方法、
(a)〔12〕または〔13〕に記載の肝癌モデル非ヒト動物へ被検薬物を投与する工程
(b)肝癌に対する治療効果を評価する工程
を、提供するものである。
ヒトの発症病態に類似した実験動物作製のため、マウスにインスリン抵抗性を惹起し、さらに高脂肪食を用いて飼育することにより脂肪肝を誘発した。
各週齢時のマウスを屠殺して、肝臓を中心に各臓器を病理組織学的に解析し(HE染色、脂肪染色、マクロファージ、線維芽細胞の免疫染色)、NAS (NAFLD Activity Score, 参考文献:Kleiner DE et al. Hepatology. 2005 Jun;41(6):1313-21.)を算出し病理像を詳細に検討した。本発明のモデル動物は、ヒトにおいて使用されるNAFLD Activity Scoreを用いてNASHの判定を行うことが可能であり、NASHモデル動物として非常に有用である。
また、血清生化学検査では富士ドライケムを用いて検討し、遺伝子発現解析はtakara Real-Time RT-PCRを用いて検討した。
上述のように本発明者は、ヒトと同様の病理所見を示す脂肪性肝炎モデル動物(例えば、NASHモデル動物)、および肝癌モデル動物の作製に成功した。
本発明は、マウスなどの実験用動物にインスリン抵抗性を惹起し、高脂肪食負荷を行うことによって脂肪肝、脂肪性肝炎、肝線維化、肝硬変へと進行するヒトNASHに類似した病態を早期より発症し、かつ前述の病態進行に付随する肝癌を自然発症する動物を安定的かつ容易に作製する技術の提供である。
また当該動物においては、糖尿病性疾患(糖尿病性腎炎、網膜症、高脂血症、動脈硬化症)を同時に観察することができるため、メタボリック症候群の病態をも同時に観察することができる実験動物作製の技術提供ともなる。
また、現在NASHモデルとして汎用されているob/ob、db/dbマウスなどはマウス加齢に伴う病態の形成が一定ではない為に、正確な病態の判定の為にマウスの病態のモニターリングなどが必要であり、実験に用いるための煩雑さが生じていた。さらに病変も不可逆的とは言いがたい為、薬効効果の判定などに困難が生じていた(Horie Y et al., J clin Invest 113:1774-1783, 2004、Yanagitani A et al., Hepatology 40:366-375, 2004、Anstee QM et al., Int J Exp Path 87:1-16, 2006)。しかし、本発明のモデル動物は、病態完成への発症期間が一定であり、また不可逆的な病態進行を伴うために、上記の問題点を解消することができる。
本発明のモデル動物は、種々の治療薬の前臨床的な試験に用いることが可能であり、また、薬剤開発や治療標的となるターゲットの探索においても非常に有用である。
本発明のマウスにおける血清の生化学検査の結果を示す図である。 本発明のマウスにおける肝臓の脂肪染色の結果を示す写真である。 本発明のマウスにおける肝臓の免疫組織染色の結果を示す写真である。 本発明のマウスの20週齢時の肝臓における肝臓のHE染色の結果を示す写真である。 C57BL/6J肝臓のHE染色の結果を示す写真、及びNAFLD Activity Scoreを示すグラフである。 C57BL/6J膵臓及び脂肪組織F4/80の免疫染色の結果を示す写真である。 8週齢時のBALB/cマウスおよびC3H/HeNマウスにおける、肝臓F4/80及びER-TR7免疫染色の結果を示す写真である。 20週齢時のC3H/HeNの肝癌の写真である。 他高脂肪食負荷によるNASHモデルマウスの再現結果を示す写真である。 NASHモデルマウスを用いた薬理効果試験の各結果を示す写真およびグラフである。1が組織学的解析の結果を示す写真、2が遺伝子発現解析の結果を示すグラフである。 糖尿病性合併症の発症を示す写真である。1が糖尿病性腎症、2が糖尿病性網膜症(新生血管の免疫染色像, CD31)の写真である。
本発明はインスリン抵抗性を惹起させることによって作製される脂肪性肝炎モデル動物に関する。
本発明の好ましい態様としては、臓器炎症誘導剤を投与して作製される脂肪性肝炎モデル動物(本明細書において「本発明のモデル動物」と記載する場合あり)を提供する。
本発明のモデル動物は、実験用動物へ臓器炎症誘導剤を投与した後、好ましくは高脂肪食を餌として用いて飼育することによって作製される。
本発明において使用する動物は、通常、実験動物として一般的に使用される動物であれば特に制限されず、通常非ヒト動物であり、好ましくは、非ヒト脊椎動物であり、より好ましくは非ヒト哺乳動物であり、さらに好ましくはげっ歯類である。本発明のモデル動物の作製に使用可能な動物としては、具体的には、マウス、ラット、ラビット、イヌ、ニワトリ、サル等を例示することができる(これらの動物を単に「実験動物」と記載する場合あり)。
本発明のモデル動物の作製に使用する動物の遺伝的背景は特に制限されず、任意の遺伝的背景を有する動物を利用することができる。通常は、野生型の動物を好適に使用することができる。
本発明における臓器炎症誘導剤(本明細書において単に「薬剤」と記載する場合あり)は、広く臓器への炎症を直接的もしくは間接的に誘導する作用を有する薬剤であれば、特に制限されない。炎症の誘導の対象となる臓器としては、例えば、膵臓、脂肪組織、筋組織等が挙げられる。また、本発明における臓器炎症誘導剤には末梢組織へ直接的または間接的に炎症を誘導する薬剤などが含まれる。
本発明における臓器炎症誘導剤としては、好ましくは、N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ阻害剤が挙げられる。
本発明のモデル動物の好ましい態様としては、上記実験動物へN-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ阻害剤を投与することによって作製される。該阻害剤としては、例えば、ストレプトゾトシン(streptozotocin)、パグナック(Pugnac)等が挙げられる。
また、N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ阻害活性を有する核酸もまた、本発明の薬剤として使用することができる。具体的には、O-GlcNAcase遺伝子(GenBankアクセッション番号:NM_023799.3)の発現を抑制するsiRNA、該遺伝子のアンチセンス、または該遺伝子を標的とするリボザイム等を例示することができる。
本発明のモデル動物の作製において、臓器炎症誘導剤の投与形態は特に制限されない。例えば、皮下投与(皮下注射など)、静脈投与、経口投与、腹腔投与等が挙げられる。
投与する薬剤の量は、例えば、ストレプトゾトシンの場合には通常50〜500μg、好ましくは100〜300μg、より好ましくは200μgであるが、必ずしもこれらの量に制限されない。
薬剤を投与するタイミングは、通常、出生後1〜5日令(新生仔期、好ましくは1〜5日、より好ましくは2日)であり、好ましくは出生後2日令である。
上述のように薬剤を投与することにより、インスリン抵抗性を惹起することができる。本発明のモデル動物の作製においては、上述のように薬剤を投与した後、飼育を行う。通常、該飼育は、高脂肪食を餌として使用することが好ましい。高脂肪食は、一般的に動物用餌として市販される種々のものを利用することができる。
上記高脂肪食の主要成分としては、例えば、粗脂肪、粗タンパク質、粗繊維、粗灰分、可溶性無窒素物、水分が挙げられる。本発明において使用される高脂肪食としては、特に制限されないが、粗脂肪含量が20%以上、好ましくは30%以上であり、総カロリーに占める脂肪由来カロリーの比率は通常50%以上、好ましくは60%以上である。また、高脂肪食に配合される成分は、例えば、粉末牛脂、ミルクカゼイン、卵白粉末、L-シスチン、紅花油、結晶セルロース、マルトデキストリン、乳糖、ショ糖などが挙げられるが、これらの物質は高脂肪食の成分の一例であり、必ずしもこれらの物質が含有されていなくともよい。
上記高脂肪食は、特に制限されないが、例えば、粗脂肪含量が通常食より高い(例えば、約30%以上高い)ものが挙げられる。一例を示せば、研究用動物飼料として市販されているHigh Fat Diet32(日本クレア社製)、D12492(リサーチダイエット社製)等が挙げられる。
上記高脂肪食は、例えばマウスの場合には、通常、2〜6週齢時、好ましくは3〜5週齢時、より好ましくは4週齢時より投与を開始する。また、1回あたりの高脂肪食の量は、例えばマウスの場合には、3〜6グラム程度である。通常1週間以上、高脂肪食を餌として用いて飼育することが好ましい。当業者であれば、使用する実験動物の種類、大きさ、体重等を考慮して、適宜、高脂肪食の量を調整(加減)することが可能である。高脂肪食を用いて飼育することにより脂肪肝を誘発させることができる。従って、本発明の好ましい態様においては、臓器炎症誘導剤を投与し、高脂肪食を用いて飼育することにより脂肪肝を生じさせる工程を含む、脂肪性肝炎モデル動物を提供する。
上記手法によって作製される動物は、脂肪性肝炎の症状を呈し、脂肪性肝炎モデル動物として有用である。本発明のモデル動物は、本発明の方法によって作製される動物で観察される病態を同時に呈することを特徴とするものである。好ましくは、インスリン抵抗性および/または肝線維化を同時に呈することを特徴とするものであるが、必ずしもこれらの病態のみに限定されない。
本発明のモデル動物の好ましい態様においては、糖尿病性疾患(糖尿病性腎炎、網膜症、高脂血症、動脈硬化症)を同時に観察することができるため、メタボリック症候群の病態をも同時に観察することができるという特徴を有する。
また、本発明のモデル動物は、病態が自然に治癒されないという特徴を有することから、薬効判定における試験や評価に好適に利用することができる。
本発明のモデル動物の好ましい態様としては、上記脂肪性肝炎は非アルコール性肝炎(NASH)である。即ち本発明は、臓器炎症誘導剤を投与して作製される非アルコール性肝炎(NASH)モデル動物を提供する。該動物は、ヒトのNASHへの進行と予後が非常に類似した病態を均一なタイムコースで確実に発症するという特徴を有する。
本発明の好ましい態様における非アルコール性肝炎モデル動物は、以下の少なくとも一つの(好ましくは全ての)病理所見を呈する。
(1) 肝細胞において大滴性の脂肪沈着が観察され、肝細胞の風船様膨化が観察される。
(2) 炎症性細胞浸潤が認められる。
(3) 中心静脈を中心とした線維化が観察される。
従って、本発明のモデル動物の好ましい態様としては、上記の病理学的形態によって構造的に特徴付けられるモデル動物である。
本発明の上記脂肪性肝炎モデル動物は、そのまま飼育を継続することにより肝硬変、さらには肝癌を呈する。従って、本発明の脂肪性肝炎モデル動物は、例えば、肝硬変または肝癌モデル動物の作製用動物(出発材料)としても有用である。即ち、本発明は、本発明の脂肪性肝炎モデル動物を含んで成る、肝硬変もしくは肝癌モデル動物作製用材料を提供する。
上述の方法によって本発明のモデル動物を作製する方法もまた、本発明に含まれる。本発明の好ましい態様としては、非ヒト動物へ臓器炎症誘導剤を投与する工程を含む、脂肪性肝炎モデル動物の生産方法を提供する。
また、本発明のモデル動物を利用することにより、脂肪性肝炎の治療もしくは予防用物質をスクリーニングすることが可能である。即ち本発明は、以下の工程(a)および(b)を含む、脂肪性肝炎の治療用もしくは予防用物質のスクリーニング方法を提供する。
(a)本発明の脂肪性肝炎モデル動物へ被検物質を投与する工程
(b)脂肪性肝炎に対する改善効果を評価する工程
本方法に用いる被検物質としては、特に制限はない。例えば、天然化合物、有機化合物、無機化合物、タンパク質、ペプチドなどの単一化合物、並びに、化合物ライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物、細胞抽出物、細胞培養上清、発酵微生物産生物、海洋生物抽出物、植物抽出物等が挙げられるが、それらに限定されない。
本発明の方法における被検物質もしくは薬物の投与は、特に制限されないが、例えば、経口的に、または注射等により行うことができる。被検物質がタンパク質である場合には、例えば、該タンパク質をコードする遺伝子を有するウイルスベクターを構築し、その感染力を利用して、本発明のモデル動物へ該遺伝子を導入することも可能である。
工程(b)において改善効果の評価は、該モデル動物の呈する病理所見を検討することにより、脂肪性肝炎が改善しているか否かを判定することができる。
脂肪性肝炎の病理所見は、例えば、上述の病理所見(病理学的形態)を例示することができる。本発明における「改善」とは、脂肪性肝炎の症状が正常な状態へ回復している、あるいは、症状が緩和していることを指す。当業者であれば、本明細書に記載された病理所見を指標に、モデル動物について適宜脂肪性肝炎に症状が改善しているか否かを判定することが可能である。
本発明の方法においては、上記工程(b)において改善効果を示す被検物質を、脂肪性肝炎の治療もしくは予防用物質として選択する。
また、本発明のモデル動物を利用することにより、薬物の脂肪性肝炎の改善に対する薬効評価を行うことも可能である。即ち本発明は、以下の工程(a)および(b)を含む、薬物の脂肪性肝炎の改善に対する薬効評価方法を提供する。
(a)本発明の脂肪性肝炎モデル動物へ被検薬物を投与する工程
(b)脂肪性肝炎に対する改善効果を評価する工程
上記方法によって薬効の評価が可能な薬物の種類は特に制限されず、例えば、公知の種々の薬剤(低分子化合物、タンパク質、核酸など)を挙げることができる。
被検薬物について、脂肪性肝炎に対する改善効果が見られた場合に、該薬物は脂肪性肝炎に対して治療効果を有するものと判定される。
また、本発明のモデル動物は、脂肪性肝炎と同時に合併症として生じる糖尿病性疾患(糖尿病性腎炎、網膜症等)を呈する特徴を有する。従って、本発明のモデル動物は、糖尿病モデル動物として有用である。
即ち、本発明は、臓器炎症誘導剤を投与して作製される糖尿病モデル非ヒト動物を提供する。本発明の糖尿病モデル動物を用いて、糖尿病の合併症(糖尿病性腎炎、網膜症等)についての治療もしくは予防薬の開発を行うことが可能である。例えば、本発明の糖尿病モデル動物へ被検物質を投与し、糖尿病性疾患の改善効果を検討することにより、糖尿病性疾患の治療もしくは予防のための候補化合物をスクリーニングすることが可能である。
本発明の好ましい態様としては、以下の工程(a)および(b)を含む、糖尿病性疾患の治療用もしくは予防用物質のスクリーニング方法に関する。
(a)本発明の糖尿病性疾患モデル非ヒト動物へ被検物質を投与する工程
(b)糖尿病性疾患に対する改善効果を評価する工程
NASH患者には糖尿病患者が多く、様々な合併症を有していると考えられる。本発明のモデル動物は糖尿病性合併症を発症することから、臨床治験にて発覚するような副作用などのリスクを早期に判断可能なモデル動物として非常に有用である。
即ち本発明は、本発明の糖尿病モデル動物を用いた、医薬品の副作用のリスク評価方法を提供する。
本発明の方法の好ましい態様としては、以下の工程(a)および(b)を含む、薬物の糖尿病性疾患の治療もしくは予防のための薬剤における副作用のリスク評価方法に関する。
(a)本発明の糖尿病性疾患モデル非ヒト動物へ被検薬剤を投与する工程
(b)糖尿病性疾患の治療もしくは予防のための薬剤の副作用を評価する工程
また本発明の上記脂肪性肝炎モデル動物は、そのまま飼育を継続することにより肝硬変を経た後、さらに肝癌を呈することが本発明者によって初めて見出された。従って、本発明は、上記脂肪性肝炎モデル動物をさらに飼育して作製される、肝硬変または肝癌モデル動物を提供する。
本発明の好ましい態様としては、臓器炎症誘導剤を投与して作製される脂肪性肝炎モデル動物を、さらに飼育して作製される、肝癌モデル動物に関する。
本発明の上記脂肪性肝炎モデル動物は、その後肝硬変を呈するが、そのままさらに飼育を継続することにより肝癌モデル動物を作製することができる。該モデル動物の作製において、肝硬変の後に飼育する期間は、例えば実験動物がマウスの場合を例にとると、通常2-20週間以上、好ましくは10週間以上である。
本発明の肝癌モデル動物は、例えば、以下から選択される少なくとも一つの(好ましくは全ての)病理所見(病理学的形態)によって構造的に特徴付けられる。
(a)塊状型の索状肝細胞癌
(b)炎症性細胞の浸潤
(c)正常肝細胞を圧排するように発育した肝硬変由来の肝臓癌
上記の特徴を有する肝癌モデル動物は、従来の化学物質(発癌物質)を投与して作製された肝癌モデル動物とは上記病理学的形態を示す点において構造的に区別される。
本発明の上記肝癌モデル動物を利用することにより、肝癌の治療用もしくは予防用物質のスクリーニングを実施することができる。
本発明の上記方法の好ましい態様としては、以下の工程(a)および(b)を含む、肝癌の治療用もしくは予防用物質のスクリーニング方法が挙げられる。
(a)本発明の肝癌モデル動物へ被検物質を投与する工程
(b)肝癌に対する治療効果を評価する工程
上記方法において治療効果の評価は、例えば、上記の肝癌の病理所見を指標に適宜実施することができる。例えば、被検物質を投与された本発明のモデル動物において、塊状型の索状肝細胞癌が消失している場合には、被検物質は肝癌治療効果を有するものと判定される。
また本発明は、本発明の肝癌モデル動物を利用することにより、薬物の肝癌治療に対する薬効評価を行うことができる。該方法の好ましい態様としては、例えば、以下の工程(a)および(b)を含む方法が挙げられる。
(a)本発明の肝癌モデル動物へ被検薬物を投与する工程
(b)肝癌に対する治療効果を評価する工程
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが本発明はこれら実施例により制限されるものではない。
〔実施例1〕NASHモデル動物、および肝癌モデル動物の作製
(a)NASHモデルマウスの作製
妊娠C57BL6J/JJcl, C3H/HeNJcl, BALB/cByJJcl(日本クレア社製)、C57BL6J/NCrlCrlj(日本チャールズリバー社製)を飼育、出産させた。出生後2日齢のC57BL6J/JcL, BALB/cByJJcl, C3H/HeNJclマウス雄(日本クレア社製)の各々の膵臓β細胞のN-Acetyl-beta-D-glucosaminidase (O-GlcNAcase)に、特異的に細胞毒性を与え(例えばstreptozotocin 10 mg/mL(SIGMA社製)を20μL/headを皮下注射するなど)、膵臓へ炎症を与えて、末梢組織へ直接的または間接的に炎症を惹起し、インスリン抵抗性を引き起こした。4週齢までCE-2(日本クレア社製)の飼料、滅菌水を与え飼育し、満4週齢で離乳させた後より粗脂肪含量が通常食よりも高い(or 約30%以上の)High Fat Diet食(日本クレア社製)またはD12492(リサーチダイエット社製)、滅菌水を与え、20週齢まで飼育した。
(b)組織学的検討
各週齢にてマウスを24時間の絶食の後、エーテル麻酔下で屠殺、採血を行い、各臓器をOCT compound(sakura fine technical社製)にて凍結後、切片化して病理学的解析を行った。本モデルでは、血清生化学的検査においては、正常個体群に比べ、空腹時血糖、Alanine aminotransferase (ALT)、及び中性脂肪の値は高く、インスリン抵抗性及び高脂血症を発症した(図1)。組織学的には5週齢時に肝細胞の膨化を伴う、顕著な脂肪肝が観察され、8週齢時には肝臓内の脂肪はほぼ消失し、ヒトのburned-out NASHと同様の組織学的病態進行を示した(図2)。6週齢時には肝臓内にマクロファージをはじめとする炎症性細胞の浸潤と集簇が観察され、肝臓の中心静脈を中心に線維化が進行した。さらに経時的な変化を観察すると8週齢時には中心動脈を結ぶように線維化が進行し、10週齢時には再生結節の形成を示し、肝硬変状態となった(図3)。また病理組織像よりNASを算出した結果、NASH期には平均値5となり、この値の変化により、薬理効果判定も可能となった(図5)。
さらに、本マウスにおけるNASH発症機序は、膵臓での炎症を引き金として、末梢組織である肝臓や脂肪組織での慢性的な炎症が誘発され、インスリン抵抗性を示し、全身的な炎症の持続によって脂肪肝に至った(図6)。その後、マウス加齢に伴い再生結節は肥大化し、20週齢時には、炎症性細胞の浸潤、異形肝細胞の増加及び正常肝細胞を圧排するように発育した癌が観察された(図4)。また、他系統マウスにおいても、組織学的にNASH病変-肝癌を発症させることが可能であり(図7、8)、持ちうる高脂肪食を変えてもNASH病変を再現することが可能であった(図9)。
また本モデルを用いて、高血圧治療薬であるアンギオテンシンレセプター拮抗剤(ARB)を2週間経口投与し、NASH治療を試みた。結果、臨床での報告と一致し(Georgescu E. F. et al., 15: 942)、ARB投与群においては未治療群と比較して、肝臓の組織学的な改善及び遺伝子検査における炎症及び線維化の改善効果が観察され、臨床との高い相同性を示した(図10)。
さらに本モデルマウスでは脂肪組織での炎症も同時に惹起される為にインスリン抵抗性がより強くなり、慢性的な高血糖の持続により、細小血管障害等による糖尿病疾患の合併症(糖尿病性腎症、網膜症、神経障害)を呈する。そこで、他臓器での病変について詳細に検討したところ、10週齢時には腎糸球体内及び周囲への炎症性マクロファージ及び線維芽細胞の集積を特徴とする糸球体線維化及び間質性線維化が観察され、糖尿病性腎症を発症していた(図11)。また、20週齢時の眼においてCD31抗体を用いて、新生血管の形成を検討したところ、本モデルマウスでは、網膜においてこれらの過形成が観察され、糖尿病性網膜症を呈していた(図11)。
以上より、本発明によって、脂肪肝から肝癌に至るNASHモデル動物が提供される。これらの動物によって、ヒトのNASHの病因および病態解析、並びにその治療技術、治療薬等の開発が促進される。
肝臓に脂肪が蓄積する原因としてはアルコール、肥満、糖尿病、脂質代謝異常、薬剤、高度の栄養障害などがあげられるが大きくアルコール性と非アルコール性に分類される。このアルコール性脂肪肝は肝炎、肝線維症、肝硬変へと進行するが、非アルコール性は脂肪肝にとどまり病態は進行しないと考えられてきた。しかし、1990年代後半になり、欧米では肥満人口の増加と疾患概念の普及とともに、C型肝炎、アルコール性肝炎に次ぐ頻度の高い疾患であることが明らかとなり、その病態も肝硬変さらには肝癌へと進行することも報告され注目されるに至った。日本においても、遺伝的なインスリン分泌不足を背景とし、食生活の欧米化、運動不足により肥満人口は増加の一途をたどると供にNASHと診断させる患者数も増加傾向にある。その為、NASH治療法並びに治療薬剤を早急に整備・確立する必要がある。
本発明はヒトのNASH病態との進行状態が非常に類似しており、またインスリン抵抗性、脂肪肝、脂肪性肝炎、肝線維、肝硬変フェイズと治療対象に合わせて解析する時期を決定することができる。また各フェイズからの進行に関与する病因の探索により、ヒトNASH及び肝線維化、肝硬変における全く新規の治療法・治療薬剤、バイオマーカーの開発にも貢献することができ、NASH病変における薬物動態の検討に持ちうることも可能となる。またさらに最終的には肝癌まで進行する為に、癌抑制等の薬剤、肝癌発症機構、肝癌成立への標的分子医薬の探索についても検討することが可能となる。
さらに上記に加えて、糖尿病性疾患も同時に解析することが可能であるため、肝臓だけではなく生物個体として全身的な病変の関連性およびその治療法・治療薬剤、バイオマーカーの開発等にも大きく貢献することができると考えられる。

Claims (15)

  1. 臓器炎症誘導剤を投与して作製される脂肪性肝炎モデル非ヒト動物。
  2. 前記脂肪性肝炎が非アルコール性脂肪性肝炎である、請求項1に記載の非ヒト動物。
  3. 臓器炎症誘導剤を投与して作製される糖尿病モデル非ヒト動物。
  4. 前記臓器炎症誘導剤がN-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ阻害剤である、請求項1〜3のいずれかに記載の非ヒト動物。
  5. 臓器炎症誘導剤を投与し、高脂肪食を用いて飼育することにより脂肪肝を生じさせる工程を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の非ヒト動物。
  6. 前記非ヒト動物がマウスである、請求項1〜5のいずれかに記載の非ヒト動物。
  7. 非ヒト動物の臓器へ炎症を誘導する工程を含む、脂肪性肝炎モデル非ヒト動物の生産方法。
  8. 以下の工程(a)および(b)を含む、脂肪性肝炎の治療用もしくは予防用物質のスクリーニング方法。
    (a)請求項1に記載の脂肪性肝炎モデル非ヒト動物へ被検物質を投与する工程
    (b)脂肪性肝炎に対する改善効果を評価する工程
  9. 以下の工程(a)および(b)を含む、薬物の脂肪性肝炎の改善に対する薬効評価方法。
    (a)請求項1に記載の脂肪性肝炎モデル非ヒト動物へ被検薬物を投与する工程
    (b)脂肪性肝炎に対する改善効果を評価する工程
  10. 以下の工程(a)および(b)を含む、糖尿病性疾患の治療用もしくは予防用物質のスクリーニング方法。
    (a)請求項3に記載の糖尿病性疾患モデル非ヒト動物へ被検物質を投与する工程
    (b)糖尿病性疾患に対する改善効果を評価する工程
  11. 以下の工程(a)および(b)を含む、薬物の糖尿病性疾患の治療もしくは予防のための薬剤における副作用のリスク評価方法。
    (a)請求項3に記載の糖尿病性疾患モデル非ヒト動物へ被検薬剤を投与する工程
    (b)糖尿病性疾患の治療もしくは予防のための薬剤の副作用を評価する工程
  12. 請求項1〜6のいずれかに記載の非ヒト動物をさらに飼育して作製される、肝癌モデル非ヒト動物。
  13. 以下の病理学的形態によって構造的に特徴付けられる、請求項12に記載の非ヒト動物。
    (a)塊状型の索状肝細胞癌
    (b)炎症性細胞の浸潤
    (c)正常肝細胞を圧排するように発育した肝硬変由来の肝臓癌
  14. 以下の工程(a)および(b)を含む、肝癌の治療用もしくは予防用物質のスクリーニング方法。
    (a)請求項12または13に記載の肝癌モデル非ヒト動物へ被検物質を投与する工程
    (b)肝癌に対する治療効果を評価する工程
  15. 以下の工程(a)および(b)を含む、薬物の肝癌治療に対する薬効評価方法。
    (a)請求項12または13に記載の肝癌モデル非ヒト動物へ被検薬物を投与する工程
    (b)肝癌に対する治療効果を評価する工程
JP2011524600A 2009-07-31 2009-07-31 脂肪性肝炎−肝癌モデル動物 Active JP5337245B2 (ja)

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/JP2009/063675 WO2011013247A1 (ja) 2009-07-31 2009-07-31 脂肪性肝炎-肝癌モデル動物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2011013247A1 true JPWO2011013247A1 (ja) 2013-01-07
JP5337245B2 JP5337245B2 (ja) 2013-11-06

Family

ID=43528923

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011524600A Active JP5337245B2 (ja) 2009-07-31 2009-07-31 脂肪性肝炎−肝癌モデル動物

Country Status (9)

Country Link
US (2) US20120117671A1 (ja)
EP (1) EP2460403B1 (ja)
JP (1) JP5337245B2 (ja)
KR (2) KR20120039742A (ja)
CN (1) CN102548393B (ja)
DK (1) DK2460403T3 (ja)
ES (1) ES2738101T3 (ja)
PL (1) PL2460403T3 (ja)
WO (1) WO2011013247A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110338150A (zh) * 2019-08-11 2019-10-18 江苏珂玛麒生物科技有限公司 一种儿童及青少年肥胖性肾病的动物模型、制备方法、及应用

Families Citing this family (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015160213A1 (ko) * 2014-04-18 2015-10-22 주식회사 엘지생명과학 지방간 질환의 예방 또는 치료용 조성물
RS61080B1 (sr) 2014-11-24 2020-12-31 Regeneron Pharma Ne-humane životinje koje eksprimiraju humanizovani cd3 kompleks
CN104737985A (zh) * 2015-03-03 2015-07-01 河北工程大学 一种小鼠模拟运输应激模型的建立方法
US10688083B2 (en) * 2015-06-30 2020-06-23 Eiger Group International, Inc. Use of chloroquine and clemizole compounds for treatment of inflammatory and cancerous conditions
WO2017010423A1 (ja) 2015-07-10 2017-01-19 中外製薬株式会社 内因性cd3遺伝子をヒトcd3遺伝子に置換した非ヒト動物
CN105557623A (zh) * 2015-12-02 2016-05-11 南京凯斯艾生物科技有限公司 一种非酒精性脂肪性肝炎转化成肝癌的实验动物模型
CN109152350A (zh) * 2016-03-01 2019-01-04 Smc全球资产株式会社 呈现出由蛋白质凝聚引起的退行性症状的非人动物
US11793180B2 (en) * 2016-08-22 2023-10-24 Chugai Seiyaku Kabushiki Kaisha Gene-modified mouse expressing human GPC3 polypeptide
US20210127647A1 (en) 2017-08-25 2021-05-06 The Nippon Dental University Non-Human Animal Model of Non-Alcoholic Fatty Liver Disease
CN111248149B (zh) * 2018-12-03 2022-01-28 凯斯艾生物科技(苏州)有限公司 一种糖尿病伴随重度非酒精性脂肪性肝炎小鼠模型的构建方法
US20220117206A1 (en) * 2020-10-19 2022-04-21 University Of Florida Research Foundation, Incorporated Mouse Model of Alcohol-induced Liver Cancer
CN112674028B (zh) * 2020-12-30 2022-06-28 汉姆德(宁波)智能医疗科技有限公司 促诱癌剂诱发动物癌症模型建立的方法
KR20220158637A (ko) 2021-05-24 2022-12-01 연세대학교 산학협력단 비알코올성 지방간 인공 조직 모델
KR20220168167A (ko) 2021-06-15 2022-12-22 연세대학교 산학협력단 다중 장기 모델

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000270713A (ja) * 1999-03-23 2000-10-03 Kennetto:Kk 糖尿病態モデル動物及びその製造方法並びに糖尿病態モデル動物の選定方法
KR101009472B1 (ko) * 2001-06-12 2011-01-19 웰스테트 테라퓨틱스 코포레이션 대사 질환의 치료용 화합물
JP4271925B2 (ja) * 2002-10-23 2009-06-03 株式会社クレハ 糖尿病モデル動物及びその作製方法
JP4585611B2 (ja) * 2007-12-27 2010-11-24 株式会社ステリック再生医科学研究所 糖鎖関連遺伝子、およびその利用

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110338150A (zh) * 2019-08-11 2019-10-18 江苏珂玛麒生物科技有限公司 一种儿童及青少年肥胖性肾病的动物模型、制备方法、及应用

Also Published As

Publication number Publication date
US9596834B2 (en) 2017-03-21
EP2460403A1 (en) 2012-06-06
EP2460403B1 (en) 2019-05-22
US20120117671A1 (en) 2012-05-10
JP5337245B2 (ja) 2013-11-06
KR20160048225A (ko) 2016-05-03
PL2460403T3 (pl) 2019-11-29
KR101761078B1 (ko) 2017-07-24
CN102548393B (zh) 2015-06-03
DK2460403T3 (da) 2019-08-19
KR20120039742A (ko) 2012-04-25
US20140178306A1 (en) 2014-06-26
EP2460403A4 (en) 2013-11-20
WO2011013247A1 (ja) 2011-02-03
ES2738101T3 (es) 2020-01-20
CN102548393A (zh) 2012-07-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5337245B2 (ja) 脂肪性肝炎−肝癌モデル動物
Musso et al. Dietary habits and their relations to insulin resistance and postprandial lipemia in nonalcoholic steatohepatitis
Denk et al. Animal models of NAFLD from the pathologist's point of view
McGavock et al. Adiposity of the heart*, revisited
Guan et al. GLP-2 receptor in POMC neurons suppresses feeding behavior and gastric motility
Shintani et al. Hepatitis C virus infection and diabetes: direct involvement of the virus in the development of insulin resistance
Trak‐Smayra et al. Pathology of the liver in obese and diabetic ob/ob and db/db mice fed a standard or high‐calorie diet
Wu et al. The role of hepassocin in the development of non-alcoholic fatty liver disease
Krause et al. Diabetic myopathy differs between Ins2 Akita+/− and streptozotocin-induced type 1 diabetic models
Matsumoto et al. Acetyl-CoA carboxylase 1 and 2 inhibition ameliorates steatosis and hepatic fibrosis in a MC4R knockout murine model of nonalcoholic steatohepatitis
Radhakrishnan et al. Targeted nutrient modifications in purified diets differentially affect nonalcoholic fatty liver disease and metabolic disease development in rodent models
JP2012080830A (ja) ヒト非アルコール性脂肪性肝炎(nash)の非ヒトモデル動物
Chen et al. Tetramethylpyrazine reduces inflammation in the livers of mice fed a high fat diet
JP6670556B2 (ja) 非アルコール性脂肪肝炎モデル動物の製造方法
Zhao et al. Cardiac-specific overexpression of insulin-like growth factor I (IGF-1) rescues lipopolysaccharide-induced cardiac dysfunction and activation of stress signaling in murine cardiomyocytes
WO2008018191A1 (fr) Animal expérimental en tant que modèle pathologique, procédé de production de l'animal expérimental, et procédé d'utilisation dudit animal expérimental
Ji et al. Obstructive sleep apnea, intermittent hypoxia and non-alcoholic fatty liver disease
Guzzardi et al. Leptin resistance before and after obesity: Evidence that tissue glucose uptake underlies adipocyte enlargement and liver steatosis/steatohepatitis in Zucker rats from early-life stages
JP2009178143A (ja) 脂肪性肝炎−肝癌モデル動物
Obydah et al. Effect of vanillic acid and exercise training on fatty liver and insulin resistance in rats: Possible role of fibroblast growth factor 21 and autophagy
Kitade et al. Neovascularization and oxidative stress in the progression of non-alcoholic steatohepatitis
González-Navarro et al. Plasma insulin levels predict the development of atherosclerosis when IRS2 deficiency is combined with severe hypercholesterolemia in apolipoprotein E-null mice
US20110044909A1 (en) Animal model for diabetes
Salmon et al. Altered metabolism and resistance to obesity in long-lived mice producing reduced levels of IGF-I
Hansen et al. Animal models of type 2 diabetes, obesity and nonalcoholic steatohepatitis–clinical translatability and applicability in preclinical drug development

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130311

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20130311

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20130409

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130415

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130417

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130513

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130527

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130528

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130703

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130802

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5337245

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313113

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250