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JPWO2019031516A1 - 負極活物質およびその製造方法、電池ならびに電子機器 - Google Patents

負極活物質およびその製造方法、電池ならびに電子機器 Download PDF

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JPWO2019031516A1
JPWO2019031516A1 JP2019535682A JP2019535682A JPWO2019031516A1 JP WO2019031516 A1 JPWO2019031516 A1 JP WO2019031516A1 JP 2019535682 A JP2019535682 A JP 2019535682A JP 2019535682 A JP2019535682 A JP 2019535682A JP WO2019031516 A1 JPWO2019031516 A1 JP WO2019031516A1
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Abstract

負極活物質は、二酸化ケイ素および二酸化ゲルマニウムのうちの少なくとも1種の酸化物と、スズ、亜鉛、鉛、ビスマス、インジウム、金およびカドミウムのうちの少なくとも1種の第1元素と、ケイ素およびゲルマニウムのうちの少なくとも1種の第2元素とを含み、第1元素を含む第1の凝集体が、構成されている。【選択図】図1

Description

本開示は、負極活物質およびその製造方法、電池ならびに電子機器に関する。
近年、リチウムイオン二次電池の高容量化技術開発が急務となっている。炭素系材料を超える高容量化負極材料として、Si系材料の開発が世界中で進められている。Si系材料のうち、最もサイクル特性が良好な材料の1つとしてケイ素酸化物(SiOx)が挙げられる。ケイ素酸化物は、酸素によるSi−O−Si結合の安定性が膨張収縮による構造崩壊を抑制可能であるという利点を有している。一方、ケイ素酸化物は初回充放電効率が低いことが知られている。
特許文献1では、初回充放電効率の低下を抑制するために、ケイ素酸化物にリチウム(Li)をプレドープする技術が提案されている。具体的には、電位規制および電流規制を行いながら、ケイ素系材料にリチウムを挿入する技術が提案されている。
特許文献2では、シリコン酸化物とリチウムイオン等の伝導イオンとの不可逆反応の進行を抑制するために、シリコン酸化物と遷移金属酸化物とを混合し、非酸化性雰囲気下で加熱処理することで、シリコン酸化物とシリケート化合物とを含む負極活物質を製造する技術が提案されている。
特開2015−111547号公報 特開2013−8567号公報
本開示の目的は、初回充放電効率を向上することができる負極活物質およびその製造方法、電池ならびにその電池を備える電子機器を提供することにある。
上述の課題を解決するために、第1の開示は、二酸化ケイ素および二酸化ゲルマニウムのうちの少なくとも1種の酸化物と、スズ、亜鉛、鉛、ビスマス、インジウム、金およびカドミウムのうちの少なくとも1種の第1元素と、ケイ素およびゲルマニウムのうちの少なくとも1種の第2元素とを含み、第1元素を含む第1の凝集体が、構成されている負極活物質である。
第2の開示は、スズ、亜鉛、鉛、ビスマス、インジウム、金、銀およびカドミウムのうちの少なくとも1種の第1元素と、ケイ素およびゲルマニウムのうちの少なくとも1種の第2元素と、少なくとも1種の第2元素の酸化物とを含む材料を加熱、気化することにより、負極活物質を形成し、形成した負極活物質を熱処理することを含む負極活物質の製造方法である。
第3の開示は、第1の開示の負極活物質を含む負極と、正極と、電解質とを備える電池である。
第4の開示は、第3の開示の電池を備え、電池から電力の供給を受ける電子機器である。
本開示によれば、初回充放電効率を向上することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果またはそれらと異質な効果であってもよい。
本開示の第1の実施形態に係る負極活物質の構成の一例を示す断面図である。 本開示の第1の実施形態の変形例に係る負極活物質の構成の一例を示す断面図である。 本開示の第2の実施形態に係る非水電解質二次電池の構成の一例を示す断面図である。 図3に示した巻回型電極体の一部を拡大して表す断面図である。 本開示の第3の実施形態に係る非水電解質二次電池の構成の一例を示す分解斜視図である。 図5のVI−VI線に沿った断面図である。 応用例としての電子機器の構成の一例を示すブロック図である。 応用例としての車両の構成の一例を示す概略図である。 応用例としての蓄電システムの構成の一例を示す概略図である。 図10は、800℃で熱処理することによりSnをドープしたSi粒子の断面SEM像である。 図11Aは、熱処理無しのSn添加SiOx薄膜の表面SEM像である。図11Bは、800℃の熱処理有りのSn添加SiOx薄膜の表面SEM像である。 図12Aは、無添加SiOx薄膜内部のXPSスペクトルを示すグラフである。図12Bは、Fe添加SiOx薄膜内部のXPSスペクトルを示すグラフである。図12Cは、Ni添加SiOx薄膜内部のXPSスペクトルを示すグラフである。図12Dは、Sn添加SiOx薄膜内部のXPSスペクトルを示すグラフである。 図13Aは、熱処理有りの無添加SiOx薄膜内部の構造イメージ図である。図13Bは、熱処理有りのFe添加SiOx薄膜内部の構造イメージ図である。図13Cは、熱処理有りのNi添加SiOx薄膜内部の構造イメージ図である。図13Dは、熱処理有りのSn添加SiOx薄膜内部の構造イメージ図である。 SnおよびSiのエリンガムダイアグラム(酸素に対するギブスの自由エネルギー)である。 図15Aは、熱処理無しのSn添加SiOx薄膜の低倍率TEM像である。図15Bは、熱処理有りのSn添加SiOx薄膜の低倍率TEM像である。 図16Aは、無添加SiOx薄膜(800℃熱処理有り)の高倍率TEM像である。図16Bは、図16Aの高倍率TEM像のFFT像である。 図17Aは、Sn添加SiOx薄膜(800℃熱処理有り)の高倍率TEM像である。図17Bは、図17Aの高倍率TEM像のFFT像である。 Sn添加SiOx薄膜(800℃熱処理有り)のSTEM−EDXマッピングを示す図である。 図19Aは、Sn添加SiOx薄膜(800℃熱処理有り)のSTEM−HAADF像である。図19Bは、Sn添加SiOx薄膜(800℃熱処理有り)のSTEM像とSn元素マップとを重ね書きした図である。
本開示の実施形態および応用例について以下の順序で説明する。
1 第1の実施形態(負極活物質の例)
2 第2の実施形態(円筒型電池の例)
3 第3の実施形態(ラミネートフィルム型電池の例)
4 応用例1(電池パックおよび電子機器の例)
5 応用例2(車両の例)
6 応用例3(蓄電システムの例)
<1 第1の実施形態>
[負極活物質の構成]
本開示の第1の実施形態に係る負極活物質は、負極活物質粒子の粉末を含む。この負極活物質は、例えば、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池用のものである。負極活物質粒子は、図1に示すように、マトリックス111と、マトリックス111に分散された凝集体112とを含む。
マトリックス111は、二酸化ケイ素および二酸化ゲルマニウムのうちの少なくとも1種の酸化物を含む。ここで、二酸化ケイ素には、僅かな酸素欠損のあるものも含まれ、具体的には平均組成SiO2-x(xは0≦x≦0.5である。)で表されるものも含まれるものとする。また、二酸化ゲルマニウムには、僅かな酸素欠損のあるものも含まれ、具体的には平均組成GeO2-y(yは0≦y≦0.5である。)で表されるものも含まれるものとする。上記平均組成は、例えば、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)により測定することができる。マトリックス111は、非晶質であることが好ましい。膨張収縮による負極活物質粒子の構造崩壊を抑制することができるからである。マトリックス111が非晶質であることは、負極活物質粒子の断面TEM(Transmission Electron Microscope)観察により確認することができる。
凝集体112は、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、金(Au)およびカドミウム(Cd)のうちの少なくとも1種の第1元素(金属元素)を含む。第1元素は、金属相を構成していてもよい。第1元素は、ケイ素およびゲルマニウム(第2元素)とは結合を形成することが困難であり、かつケイ素、ゲルマニウム、酸化ケイ素および酸化ゲルマニウム(第2元素およびその酸化物)中を拡散することが困難であるという特性を有している。
凝集体112の平均サイズが、10nm以下であることが好ましい。凝集体112の平均サイズが10nmを超えると、凝集体112の膨張変位量が増大し、サイクル特性が低下する虞がある。凝集体112の平均サイズの下限値は特に限定されるものではないが、例えば2nm以上である。
凝集体112の平均サイズは次のようにして求められる。まず、負極活物質粒子の断面を集束イオンビーム(FIB)により切り出す。次に、TEMを用い、負極活物質粒子の断面TEM像を撮影し、撮影したTEM像から無作為に10個の凝集体112を選び出し、凝集体112の断面の面積を画像処理により測定し、凝集体112の断面が円形状と仮定して各粒子の粒径(直径)のを求める。続いて、求めた10個の粒子の粒径を単純に平均(算術平均)して平均粒径を求め、これを凝集体112の平均サイズとする。
凝集体112は、非晶質状態、または非晶質相と結晶質相との混合状態であることが好ましい。上記混合状態において結晶質相は、微小な結晶粒であってもよい。この場合、結晶粒の平均サイズは、例えば2nm以下である。凝集体112が上記のように非晶質状態または混合状態であると、膨張収縮による負極活物質粒子の構造崩壊を抑制することができる。なお、凝集体112が非晶質状態または混合状態であることは、負極活物質粒子の断面TEM観察により確認することができる。また、結晶粒の平均サイズは、上述の凝集体112の平均サイズと同様の算出方法により求められる。
マトリックス111および凝集体112のうちの少なくとも一方が、ケイ素(Si)およびゲルマニウム(Ge)のうちの少なくとも1種の第2元素(半導体元素)を含む。凝集体112が第2元素を含む場合、第1元素と第2元素とは結合を形成しない。第1元素と第2元素とを含む凝集体112は、(a)第1元素と第2元素とを含む非晶質相、または(b)第1元素を含む結晶質または非晶質の第1の微小粒と、第2元素を含む結晶質または非晶質の第2の微小粒との混合体を含む。第1、第2の微小粒の平均サイズは、例えば2nm以下である。なお、第1、第2の微小粒の平均サイズは、上述の凝集体112の平均サイズと同様の算出方法により求められる。凝集体112が(a)第1元素と第2元素とを含む非晶質相を含む場合、この非晶質相は、第1元素を含む非晶質相と第2元素を含む非晶質相との混合体であってもよい。
マトリックス111が第2元素を含む場合、第2元素は、マトリックス111中に分散されていてもよい。第2元素が平均サイズ2nm以下の微小粒を構成し、この微小粒がマトリックス111中に分散されていてもよい。微小粒は、結晶質であってもよいし、非晶質であってもよいが、非晶質であることが好ましい。膨張収縮による負極活物質粒子の構造崩壊を抑制することができるからである。なお、微小粒の平均サイズは、上述の凝集体112の平均サイズと同様の算出方法により求められる。また、微小粒が非晶質であることは、負極活物質粒子の断面TEM観察により確認することができる。
第1元素、第2元素および酸素の総量に対する第1元素の含有量が、30at%以上70at%以下であることが好ましい。第1元素、第2元素および酸素の総量に対する第2元素の含有量が、1at%以上50at%以下であることが好ましい。第1元素、第2元素および酸素の総量に対する酸素の含有量は、20at%以上70at%以下であることが好ましい。第1、第2元素および酸素の含有量は、XPSにより測定することができる。
負極活物質粒子は、第1元素と第2元素とが結合した第1の化合物、および第1元素と酸素とが結合した第2の化合物を含まない。これは、第1元素は第2元素とは通常、結合を形成することがなく、また第1元素と酸素とは、後述する負極活物質の製造方法において結合を形成することがないためである。なお、第2元素がケイ素である場合、第1の化合物はシリサイド化合物であり、第2の化合物はシリケート化合物である。
第1元素がスズを含む場合、負極活物質は、XPSから得られるSn3d波形において、結合エネルギー484eV以上486eV以下の範囲にピークトップを有する。結合エネルギー484eV以上486eV以下の範囲にピークトップを有するピークは、Sn−Sn結合に起因するピークである。
[負極活物質の製造方法]
以下、第1の実施形態に係る負極活物質の製造方法の一例について説明する。この負極活物質の製造方法は、共蒸着法を用いて負極活物質を合成するものである。
まず、スズ、亜鉛、鉛、ビスマス、インジウム、金、銀およびカドミウムのうちの少なくとも1種の第1元素の粉末と、ケイ素およびゲルマニウムのうちの少なくとも1種の第2元素の粉末と、当該少なくとも1種の第2元素の酸化物とを混合し、混合物を得る。次に、この混合物を水等の溶媒に浸漬し、超音波洗浄機等により均一分散させた後に、溶媒を乾燥させ、固化した混合物を得る。液体に浸漬された粉末が固化する際には、表面張力によって粒子間に発生する毛管吸引力が発生する。この毛管吸引力により、蒸着材料としての粉末が均一な状態で固化する。なお、第1元素の粉末の粒径が小さいほどスプラッシュ(不均一蒸発により噴射される溶融粒)が少なく、均一な膜となる。第1元素のうちのでも特に融点の低いものは、5μm以下の小粒径粉末であることが好ましい。
続いて、固化した混合物を蒸着源として、共蒸着法により基板上に薄膜を堆積させる。具体的には、固化した混合物を真空チャンバ内のるつぼに入れ、電子ビームにより混合物を加熱し蒸発させ、るつぼに対向配置された基板に堆積させる。これにより、薄膜(負極活物質層)が得られる。
その後、得られた薄膜に対して熱処理を施す。薄膜が酸化ケイ素(SiOx)を含む場合には、上記熱処理の際に、第1元素の作用により、酸化ケイ素が二酸化ケイ素に変化する。また、薄膜が酸化ゲルマニウム(GeOx)を含む場合には、上記熱処理の際に、第1元素の作用により、酸化ゲルマニウムが二酸化ゲルマニウムに変化する。また、上記熱処理の際に、第1元素が薄膜内において凝集し、凝集体112が形成される。この凝集によって、第1元素が金属相を形成してもよい。
熱処理の温度は、酸化ケイ素(SiOx)から二酸化ケイ素への変化、および酸化ゲルマニウム(GeOx)から二酸化ゲルマニウムへの変化を促すためには、好ましくは600℃以上、より好ましくは730℃以上、さらにより好ましくは800℃以上、特に好ましくは900℃以上である。最後に、基板から薄膜を剥離し、粉砕する。これにより、粉末状の負極活物質が得られる。
[効果]
第1の実施形態に係る負極活物質粒子は、マトリックス111が二酸化ケイ素および二酸化ゲルマニウムのうちの少なくとも1種を含む。二酸化ケイ素および二酸化ゲルマニウムは安定状態またはほぼ安定状態であるため、リチウムと酸素の反応性が低下し、リチウムロスが低減する。したがって、初回充放電効率を向上することができる。
これに対して、特許文献2の負極活物質は、一般式SiOx(0<x<2)で表わされるシリコン酸化物と、シリケート化合物とを含有するものである。また、特許文献2では、このようにシリコン酸化物SiOxとシリケート化合物とを共存させることによって、Si欠陥への伝導イオンの入り込みを阻止することが可能となり、連鎖的な不可逆反応の進行を効果的に抑制することができ、これにより、SiOxとリチウムイオン等の伝導イオンとの不可逆的な副反応を抑制できる。
したがって、第1の実施形態に係る負極活物質と、特許文献2の負極活物質とは、構成および初回充放電効率の向上のメカニズムが異なっている。
特許文献1の負極活物質では、酸素サイトとリチウムとを結合させているため、リチウムが粒子外部へ溶出し、安全性が低下する虞がある。これに対して、第1の実施形態に係る負極活物質では、酸素サイトとリチウムとを結合させていないので、リチウムが粒子外部へ溶出することがない。したがって、初回充放電効率を向上させることができると共に、負極活物質の安全性を向上させることができる。
また、凝集体112は、スズ、亜鉛、鉛、ビスマス、インジウム、金およびカドミウムのうちの少なくとも1種の第1元素を含むので、活物質として機能する。したがって、第1元素の添加による容量低下を抑制することができる。
第1の実施形態に係る負極活物質の製造方法では、共蒸着法により成膜した薄膜が酸化ケイ素(SiOx)を含む場合には、薄膜に対して熱処理を施すと、第1元素の作用により、酸化ケイ素が二酸化ケイ素に変化する。また、共蒸着法により成膜した薄膜が酸化ゲルマニウム(GeOx)を含む場合には、薄膜に対して熱処理を施すと、第1元素の作用により、酸化ゲルマニウムが二酸化ゲルマニウムに変化する。
また、負極活物質の熱処理の際に、第1元素が薄膜内において凝集し、凝集体112が形成される。更に、第1元素は、薄膜内において第2元素が結晶化すること、または第2元素を含む結晶粒が肥大化することを抑制する。したがって、第2元素を含む結晶粒が形成された場合にも、その結晶粒の膨張変位量の増大を抑制することができる。よって、サイクル特性を向上することができる。
第2元素を含む結晶は電子導電性が低いため、第2元素を含む結晶粒が肥大化すると、負荷特性が低下する虞があるが、第1元素が、上述のように第2元素を含む結晶粒の肥大化を抑制することで、負荷特性の低下を抑制できる。また、第2元素を含む結晶の肥大化を抑制することで、リチウムイオンパスとなる、第2元素を含むナノ粒子の個数の低下を抑制することができる。
第1元素は金属元素であり、第2元素は半導体元素であるため、第1元素は第2元素よりも高い電子導電性を有している。したがって、負極活物質が第1元素を含むことで、負極活物質の電子導電性を向上することができ、良好な集電性を得ることができる。よって、負荷特性を向上することができる。
[変形例]
負極活物質粒子が、図2に示すように、マトリックス111に分散された凝集体113をさらに含んでいてもよい。凝集体113は、ケイ素およびゲルマニウムのうちの少なくとも1種の第2元素を含む。凝集体113は、非晶質状態、または非晶質相と結晶質相との混合状態であることが好ましい。上記混合状態において結晶質相は、微小な結晶粒であってもよい。この場合、結晶粒の平均サイズは、例えば2nm以下である。凝集体113が上記のように非晶質状態または混合状態であると、膨張収縮による負極活物質粒子の構造崩壊を抑制することができる。なお、凝集体113が非晶質状態または混合状態であることは、負極活物質粒子の断面TEM観察により確認することができる。また、結晶粒の平均サイズは、上述の凝集体112の平均サイズと同様の算出方法により求められる。
凝集体113の平均サイズが、10nm以下であることが好ましい。凝集体113の平均サイズが10nmを超えると、凝集体113の膨張変位量が増大し、サイクル特性が低下する虞がある。凝集体113の平均サイズの下限値は特に限定されるものではないが、例えば2nm以上である。なお、凝集体113の平均サイズは、上述の凝集体112の平均サイズと同様の算出方法により求められる。
負極活物質の形状は粉末状に限定されるものではなく、薄膜状またはブロック状等であってもよい。
薄膜(負極活物質層)を堆積する基板として負極集電体を用い、共蒸着法により負極集電体上に薄膜(負極活物質層)を直接成膜することで、薄膜電極(負極)を作製するようにしてもよい。この場合、バインダーや導電助剤を用いずに、負極活物質層を形成することができる。
上述の第1の実施形態では、薄膜を粉砕することにより、粉末状の負極活物質を得る場合について説明したが、共蒸着法により粉末状の負極活物質を合成するようにしてもよい。より具体的には、真空蒸着装置のチャンバを冷却可能な構成とし、蒸着源としての混合物を蒸発させ、冷却凝集させることにより、粉末状の負極活物質を合成するようにしてもよい。
上述の第1の実施形態では、電子ビームにより混合物(蒸着源)を加熱する場合について説明したが、電子ビーム以外の加熱手段で混合物(蒸着源)を加熱するようにしてもよい。但し、混合物(蒸着源)を1700℃まで加熱可能な加熱手段が好ましい。なお、酸素との反応性を示すエリンガムダイアグラム上、例えば炭素や金属等の異元素と混合することで1100℃程度まで低温化が可能であり、加熱温度は1700℃に限定されるものではない。
負極活物質の製造工程において、第1元素の粉末の粒径は10μm以下であることが好ましい。金属ドロップレット(溶融した金属単体の粒子)発生を抑制することができるからである。第1、第2元素および第2元素の酸化物の形態は、上述の第1の実施形態におけるように粉末状であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
上述の第1の実施形態では、第1元素の粉末と、第2元素の粉末と、第2元素の酸化物の粉末とを混合し、蒸着源を作製する場合について説明したが、蒸着源の作製方法はこれに限定されるものではない。例えば、第1元素の粉末に代えて、または第1元素の粉末と共に、第1元素の酸化物、窒化物、塩化物、炭化物、硫化物、臭化物、フッ化物、ヨウ化物、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩および有機金属のうちの少なくとも1種の粉末を用いてもよい。また、第2元素としてケイ素に代えて金属ケイ化物を用いてもよいし、第2元素の酸化物として二酸化ケイ素に代えて金属ケイ酸塩を用いてもよい。
上述の第1の実施形態では、基板上に成膜した薄膜に対して熱処理を行う場合について説明したが、薄膜を粉砕し、粉末状の負極活物質を作製した後に、粉末状の負極活物質に対して熱処理を行うようにしてもよい。
<2 第2の実施形態>
第2の実施形態では、上述の第1の実施形態に係る負極活物質を含む負極を備える二次電池について説明する。
[電池の構成]
以下、図3を参照しながら、本開示の第2の実施形態に係る非水電解質二次電池(以下単に「電池」という。)の構成の一例について説明する。この電池は、例えば、負極の容量が、電極反応物質であるリチウムの吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池である。この電池はいわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、一対の帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を介して積層し巻回された巻回型電極体20を有している。電池缶11は、ニッケルのめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、液状の電解質としての電解液が注入され、正極21、負極22およびセパレータ23に含浸されている。また、巻回型電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12、13がそれぞれ配置されている。
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、封口ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられている。これにより、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱等により電池の内圧が一定以上となった場合に、ディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回型電極体20との電気的接続を切断するようになっている。封口ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回型電極体20の中心には、例えばセンターピン24が挿入されている。巻回型電極体20の正極21にはアルミニウム(Al)等よりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケル(Ni)等よりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
以下、図4を参照しながら、電池を構成する正極21、負極22、セパレータ23、および電解液について順次説明する。
(正極)
正極21は、例えば、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体21Aの片面のみに正極活物質層21Bを設けるようにしてもよい。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔またはステンレス箔等の金属箔により構成されている。正極活物質層21Bは、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質を含んでいる。正極活物質層21Bは、必要に応じて導電剤および結着剤のうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
(正極活物質)
正極活物質としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物等のリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素とを含むリチウム含有化合物が好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、式(A)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、式(B)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩等が挙げられる。リチウム含有化合物としては、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル、マンガン(Mn)および鉄からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、式(C)、式(D)もしくは式(E)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、式(F)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または式(G)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩等が挙げられ、具体的には、LiNi0.50Co0.20Mn0.302、LiaCoO2(a≒1)、LibNiO2(b≒1)、Lic1Nic2Co1-c22(c1≒1,0<c2<1)、LidMn24(d≒1)あるいはLieFePO4(e≒1)等がある。
LipNi(1-q-r)MnqM1r(2-y)z ・・・(A)
(但し、式(A)中、M1は、ニッケル、マンガンを除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。Xは、酸素以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、y、zは、0≦p≦1.5、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.2の範囲内の値である。)
LiaM2bPO4 ・・・(B)
(但し、式(B)中、M2は、2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。a、bは、0≦a≦2.0、0.5≦b≦2.0の範囲内の値である。)
LifMn(1-g-h)NigM3h(2-j)k ・・・(C)
(但し、式(C)中、M3は、コバルト、マグネシウム(Mg)、アルミニウム、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄、銅(Cu)、亜鉛、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
LimNi(1-n)M4n(2-p)q ・・・(D)
(但し、式(D)中、M4は、コバルト、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、−0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
LirCo(1-s)M5s(2-t)u ・・・(E)
(但し、式(E)中、M5は、ニッケル、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
LivMn2-wM6wxy ・・・(F)
(但し、式(F)中、M6は、コバルト、ニッケル、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
LizM7PO4 ・・・(G)
(但し、式(G)中、M7は、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、ニオブ(Nb)、銅、亜鉛、モリブデン、カルシウム、ストロンチウム、タングステンおよびジルコニウムからなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
Niを含むリチウム複合酸化物としては、リチウムとニッケルとコバルトとマンガンと酸素とを含むリチウム複合酸化物(NCM)、リチウムとニッケルとコバルトとアルミニウムと酸素とを含むリチウム複合酸化物(NCA)等を用いてもよい。Niを含むリチウム複合酸化物としては、具体的には、以下の式(H)または式(I)に示したものを用いてもよい。
Liv1Niw1M1’x1z1 ・・・(H)
(式中、0<v1<2、w1+x1≦1、0.2≦w1≦1、0≦x1≦0.7、0<z<3であり、M1’は、コバルト、鉄、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、クロム、バナジウム、チタン、マグネシウムおよびジルコニウム等の遷移金属からなる元素を少なくとも1種類以上である。)
Liv2Niw2M2’x2z2 ・・・(I)
(式中、0<v2<2、w2+x2≦1、0.65≦w2≦1、0≦x2≦0.35、0<z2<3であり、M2’は、コバルト、鉄、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、クロム、バナジウム、チタン、マグネシウムおよびジルコニウム等の遷移金属からなる元素を少なくとも1種類以上である。)
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、これらの他にも、MnO2、V25、V613、NiS、MoS等のリチウムを含まない無機化合物も挙げられる。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料は、上記以外のものであってもよい。また、上記で例示した正極材料は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
(結着剤)
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)等の樹脂材料、ならびにこれらの樹脂材料を主体とする共重合体等から選択される少なくとも1種が用いられる。
(導電剤)
導電剤としては、例えば、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラック、ケッチェンブラックまたはカーボンナノチューブ等の炭素材料が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料または導電性高分子材料等を用いるようにしてもよい。
(負極)
負極22は、例えば、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体22Aの片面のみに負極活物質層22Bを設けるようにしてもよい。負極集電体22Aは、例えば、銅箔、ニッケル箔またはステンレス箔等の金属箔により構成されている。
負極活物質層22Bは、リチウムを吸蔵および放出することが可能な1種または2種以上の負極活物質を含んでいる。負極活物質層22Bは、必要に応じて結着剤および導電剤のうちの少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
なお、この電池では、負極22または負極活物質の電気化学当量が、正極21の電気化学当量よりも大きくなっており、理論上、充電の途中において負極22にリチウム金属が析出しないようになっていることが好ましい。
(負極活物質)
負極活物質としては、第1の実施形態に係る負極活物質が用いられる。第1の実施形態に係る負極活物質を炭素材料と共に用いるようにしてもよい。この場合、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができる。
第1の実施形態に係る負極活物質と共に用いる炭素材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭等の炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークス等がある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れたサイクル特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
(結着剤)
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、スチレンブタジエンゴムおよびカルボキシメチルセルロース等の樹脂材料、ならびにこれら樹脂材料を主体とする共重合体等から選択される少なくとも1種が用いられる。
(導電剤)
導電剤としては、例えば、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラック、ケッチェンブラックまたはカーボンナノチューブ等の炭素材料が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料または導電性高分子材料等を用いるようにしてもよい。
(セパレータ)
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレン等の樹脂製の多孔質膜によって構成されており、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜は短絡防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特にポリエチレンは、100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので、セパレータ23を構成する材料として好ましい。他にも、化学的安定性を備えた樹脂を、ポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合またはブレンド化した材料を用いることができる。あるいは、多孔質膜は、ポリプロピレン層と、ポリエチレン層と、ポリプロピレン層とを順次に積層した3層以上の構造を有していてもよい。
セパレータ23は、基材と、基材の片面または両面に設けられた表面層を備える構成を有していてもよい。表面層は、電気的な絶縁性を有する無機粒子と、無機粒子を基材の表面に結着するとともに、無機粒子同士を結着する樹脂材料とを含んでいる。この樹脂材料は、例えば、フィブリル化し、フィブリルが相互連続的に繋がった三次元的なネットワーク構造を有していてもよい。無機粒子は、この三次元的なネットワーク構造を有する樹脂材料に担持されることにより、互いに連結することなく分散状態を保つことができる。また、樹脂材料はフィブリル化せずに基材の表面や無機粒子同士を結着してもよい。この場合、より高い結着性を得ることができる。上述のように基材の片面または両面に表面層を設けることで、耐酸化性、耐熱性および機械強度を基材に付与することができる。
基材は、多孔性を有する多孔質層である。基材は、より具体的には、イオン透過度が大きく、所定の機械的強度を有する絶縁性の膜から構成される多孔質膜であり、基材の空孔に電解液が保持される。基材は、セパレータの主要部として所定の機械的強度を有する一方で、電解液に対する耐性が高く、反応性が低く、膨張しにくいという特性を要することが好ましい。
基材を構成する樹脂材料は、例えばポリプロピレン若しくはポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂またはナイロン樹脂等を用いることが好ましい。特に、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン等のポリエチレン、若しくはそれらの低分子量ワックス分、またはポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂は溶融温度が適当であり、入手が容易なので好適に用いられる。また、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造、もしくは、2種以上の樹脂材料を溶融混練して形成した多孔質膜としてもよい。ポリオレフィン樹脂からなる多孔質膜を含むものは、正極21と負極22との分離性に優れ、内部短絡の低下をいっそう低減することができる。
基材としては、不織布を用いてもよい。不織布を構成する繊維としては、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、またはナイロン繊維等を用いることができる。また、これら2種以上の繊維を混合して不織布としてもよい。
無機粒子は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物および金属硫化物等の少なくとも1種を含んでいる。金属酸化物としては、酸化アルミニウム(アルミナ、Al23)、ベーマイト(水和アルミニウム酸化物)、酸化マグネシウム(マグネシア、MgO)、酸化チタン(チタニア、TiO2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア、ZrO2)、酸化ケイ素(シリカ、SiO2)または酸化イットリウム(イットリア、Y23)等を好適に用いることができる。金属窒化物としては、窒化ケイ素(Si34)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)または窒化チタン(TiN)等を好適に用いることができる。金属炭化物としては、炭化ケイ素(SiC)または炭化ホウ素(B4C)等を好適に用いることができる。金属硫化物としては、硫酸バリウム(BaSO4)等を好適に用いることができる。また、ゼオライト(M2/nO・Al23・xSiO2・yH2O、Mは金属元素、x≧2、y≧0)等の多孔質アルミノケイ酸塩、層状ケイ酸塩、チタン酸バリウム(BaTiO3)またはチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等の鉱物を用いてもよい。中でも、アルミナ、チタニア(特にルチル型構造を有するもの)、シリカまたはマグネシアを用いることが好ましく、アルミナを用いることがより好ましい。無機粒子は耐酸化性および耐熱性を備えており、無機粒子を含有する正極対向側面の表面層は、充電時の正極近傍における酸化環境に対しても強い耐性を有する。無機粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、板状、繊維状、キュービック状およびランダム形状等のいずれも用いることができる。
表面層を構成する樹脂材料としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体またはその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体またはその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体またはその水素化物、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリエーテル、アクリル酸樹脂またはポリエステル等の融点およびガラス転移温度の少なくとも一方が180℃以上の高い耐熱性を有する樹脂等が挙げられる。これら樹脂材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、耐酸化性および柔軟性の観点からは、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂が好ましく、耐熱性の観点からは、アラミドまたはポリアミドイミドを含むことが好ましい。
無機粒子の粒径は、1nm〜10μmの範囲内であることが好ましい。1nmより小さいと、入手が困難であり、また入手できたとしてもコスト的に見合わない。一方、10μmより大きいと電極間距離が大きくなり、限られたスペースで活物質充填量が十分得られず電池容量が低くなる。
表面層の形成方法としては、例えば、マトリックス樹脂、溶媒および無機物からなるスラリーを基材(多孔質膜)上に塗布し、マトリックス樹脂の貧溶媒且つ上記溶媒の親溶媒浴中を通過させて相分離させ、その後、乾燥させる方法を用いることができる。
なお、上述した無機粒子は、基材としての多孔質膜に含有されていてもよい。また、表面層が無機粒子を含まず、樹脂材料のみにより構成されていてもよい。
(電解液)
セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。電解液が、電池特性を向上するために、公知の添加剤を含んでいてもよい。
溶媒としては、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレン等の環状の炭酸エステルを用いることができ、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンのうちの一方、特に両方を混合して用いることが好ましい。サイクル特性を向上させることができるからである。
溶媒としては、また、これらの環状の炭酸エステルに加えて、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸メチルプロピル等の鎖状の炭酸エステルを混合して用いることが好ましい。高いイオン伝導性を得ることができるからである。
溶媒としては、さらにまた、2,4−ジフルオロアニソールあるいは炭酸ビニレンを含むこと好ましい。2,4−ジフルオロアニソールは放電容量を向上させることができ、また、炭酸ビニレンはサイクル特性を向上させることができるからである。よって、これらを混合して用いれば、放電容量およびサイクル特性を向上させることができるので好ましい。
これらの他にも、溶媒としては、炭酸ブチレン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピロニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシドあるいはリン酸トリメチル等が挙げられる。
なお、これらの非水溶媒の少なくとも一部の水素をフッ素で置換した化合物は、組み合わせる電極の種類によっては、電極反応の可逆性を向上させることができる場合があるので、好ましい場合もある。
電解質塩としては、例えばリチウム塩が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C654、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiC(SO2CF33、LiAlCl4、LiSiF6、LiCl、ジフルオロ[オキソラト−O,O']ホウ酸リチウム、リチウムビスオキサレートボレート、あるいはLiBr等が挙げられる。中でも、LiPF6は高いイオン伝導性を得ることができるとともに、サイクル特性を向上させることができるので好ましい。
[正極電位]
満充電状態における正極電位(vsLi/Li+)は、好ましくは4.20Vを超え、より好ましくは4.25V以上、更により好ましくは4.40Vを超え、特に好ましくは4.45V以上、最も好ましくは4.50V以上である。但し、満充電状態における正極電位(vsLi/Li+)が、4.20V以下であってもよい。満充電状態における正極電位(vsLi/Li+)の上限値は、特に限定されるものではないが、好ましくは6.00V以下、より好ましくは5.00V以下、更により好ましくは4.80V以下、特に好ましくは4.70V以下である。
[電池の動作]
上述の構成を有する電池では、充電を行うと、正極活物質層21Bからリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極活物質層22Bに吸蔵される。また、放電を行うと、負極活物質層22Bからリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。
[電池の製造方法]
次に、本開示の第2の実施形態に係る電池の製造方法の一例について説明する。
まず、例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより正極活物質層21Bを形成し、正極21を形成する。
また、例えば、第1の実施形態に係る負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。なお、第1の実施形態に係る負極活物質および結着剤に加えて炭素材料をさらに添加して混合するようにしてもよい。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。
次に、正極集電体21Aに正極リード25を溶接等により取り付けるとともに、負極集電体22Aに負極リード26を溶接等により取り付ける。次に、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回する。次に、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接するとともに、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12、13で挟み電池缶11の内部に収納する。次に、正極21および負極22を電池缶11の内部に収納したのち、電解液を電池缶11の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。次に、電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16を封口ガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図3に示した電池が得られる。
[効果]
第2の実施形態に係る電池では、正極活物質層21Bが第1の実施形態に係る正極活物質を含んでいるので、初回充放電効率を向上することができる。
[変形例]
第2の実施形態では、負極22が、負極集電体22Aと、負極集電体22Aの両面に設けられ、負極活物質粒子の粉末を含む負極活物質層22Bとを備える例について説明したが、負極22の構成はこれに限定されるものではない。例えば、負極22が、負極集電体と、負極集電体の両面に設けられた薄膜とを備える薄膜電極であってもよい。薄膜は、負極活物質により構成されている。負極活物質は、薄膜状を有する点以外では、第1の実施形態に係る負極活物質と同様である。
<3 第3の実施形態>
[電池の構成]
図5に示すように、本開示の第3の実施形態に係る電池は、いわゆるラミネートフィルム型電池であり、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回型電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものであり、小型化、軽量化および薄型化が可能となっている。
正極リード31および負極リード32は、それぞれ、外装部材40の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケルあるいはステンレス等の金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回型電極体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂により構成されている。
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム、ポリプロピレン等の高分子フィルムまたは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。あるいは、アルミニウム製フィルムを心材として、その片面または両面に高分子フィルムを積層したラミネートフィルムを用いても良い。
図6は、図5に示した巻回型電極体30のV−V線に沿った断面図である。巻回型電極体30は、正極33と負極34とをセパレータ35および電解質層36を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ37により保護されている。
正極33は、正極集電体33Aの片面あるいは両面に正極活物質層33Bが設けられた構造を有している。負極34は、負極集電体34Aの片面あるいは両面に負極活物質層34Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層34Bと正極活物質層33Bとが対向するように配置されている。正極集電体33A、正極活物質層33B、負極集電体34A、負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、それぞれ第2の実施形態における正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22A、負極活物質層22Bおよびセパレータ23と同様である。
電解質層36は、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質層36は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。電解液は、第2の実施形態に係る電解液である。高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンまたはポリカーボネートが挙げられる。特に電気化学的な安定性の点からはポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドが好ましい。
なお、電解質層36が無機粒子を含んでいてもよい。より耐熱性を向上できるからである。無機粒子としては、第2の実施形態のセパレータ23の表面層に含まれる無機粒子と同様のものを用いることができる。また、電解質層36に代えて電解液を用いるようにしてもよい。
[電池の製造方法]
次に、本開示の第3の実施形態に係る電池の製造方法の一例について説明する。
まず、正極33および負極34のそれぞれに、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させて電解質層36を形成する。次に、正極集電体33Aの端部に正極リード31を溶接により取り付けると共に、負極集電体34Aの端部に負極リード32を溶接により取り付ける。次に、電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ37を接着して巻回型電極体30を形成する。最後に、例えば、外装部材40の間に巻回型電極体30を挟み込み、外装部材40の外縁部同士を熱融着等により密着させて封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図5、6に示した電池が得られる。
また、この電池は、次のようにして作製してもよい。まず、上述のようにして正極33および負極34を作製し、正極33および負極34に正極リード31および負極リード32を取り付ける。次に、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ37を接着して、巻回体を形成する。次に、この巻回体を外装部材40に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納する。次に、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤等の他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材40の内部に注入する。
次に、電解質用組成物を外装部材40内に注入したのち、外装部材40の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次に、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層36を形成する。以上により、図5、6に示した電池が得られる。
<4 応用例1>
「応用例としての電池パックおよび電子機器」
応用例1では、第2または第3の実施形態に係る電池を備える電池パックおよび電子機器について説明する。
[電池パックおよび電子機器の構成]
以下、図7を参照して、応用例としての電池パック300および電子機器400の一構成例について説明する。電子機器400は、電子機器本体の電子回路401と、電池パック300とを備える。電池パック300は、正極端子331aおよび負極端子331bを介して電子回路401に対して電気的に接続されている。電子機器400は、例えば、ユーザにより電池パック300を着脱自在な構成を有している。なお、電子機器400の構成はこれに限定されるものではなく、ユーザにより電池パック300を電子機器400から取り外しできないように、電池パック300が電子機器400内に内蔵されている構成を有していてもよい。
電池パック300の充電時には、電池パック300の正極端子331a、負極端子331bがそれぞれ、充電器(図示せず)の正極端子、負極端子に接続される。一方、電池パック300の放電時(電子機器400の使用時)には、電池パック300の正極端子331a、負極端子331bがそれぞれ、電子回路401の正極端子、負極端子に接続される。
電子機器400としては、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、携帯電話(例えばスマートフォン等)、携帯情報端末(Personal Digital Assistants:PDA)、表示装置(LCD、ELディスプレイ、電子ペーパ等)、撮像装置(例えばデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等)、オーディオ機器(例えばポータブルオーディオプレイヤー)、ゲーム機器、コードレスフォン子機、電子書籍、電子辞書、ラジオ、ヘッドホン、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機等が挙げられるが、これに限定されるものでなない。
(電子回路)
電子回路401は、例えば、CPU、周辺ロジック部、インターフェース部および記憶部等を備え、電子機器400の全体を制御する。
(電池パック)
電池パック300は、組電池301と、充放電回路302とを備える。組電池301は、複数の二次電池301aを直列および/または並列に接続して構成されている。複数の二次電池301aは、例えばn並列m直列(n、mは正の整数)に接続される。なお、図7では、6つの二次電池301aが2並列3直列(2P3S)に接続された例が示されている。二次電池301aとしては、第2または第3の実施形態に係る電池が用いられる。
ここでは、電池パック300が、複数の二次電池301aにより構成される組電池301を備える場合について説明するが、電池パック300が、組電池301に代えて1つの二次電池301aを備える構成を採用してもよい。
充放電回路302は、組電池301の充放電を制御する制御部である。具体的には、充電時には、充放電回路302は、組電池301に対する充電を制御する。一方、放電時(すなわち電子機器400の使用時)には、充放電回路302は、電子機器400に対する放電を制御する。
<5 応用例2>
「応用例としての車両における蓄電システム」
本開示を車両用の蓄電システムに適用した例について、図8を参照して説明する。図8に、本開示が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
このハイブリッド車両7200には、エンジン7201、発電機7202、電力駆動力変換装置7203、駆動輪7204a、駆動輪7204b、車輪7205a、車輪7205b、バッテリー7208、車両制御装置7209、各種センサー7210、充電口7211が搭載されている。バッテリー7208に対して、上述した本開示の蓄電装置が適用される。
ハイブリッド車両7200は、電力駆動力変換装置7203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置7203の一例は、モーターである。バッテリー7208の電力によって電力駆動力変換装置7203が作動し、この電力駆動力変換装置7203の回転力が駆動輪7204a、7204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置7203が交流モーターでも直流モーターでも適用可能である。各種センサー7210は、車両制御装置7209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサー7210には、速度センサー、加速度センサー、エンジン回転数センサーなどが含まれる。
エンジン7201の回転力は発電機7202に伝えられ、その回転力によって発電機7202により生成された電力をバッテリー7208に蓄積することが可能である。
図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置7203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置7203により生成された回生電力がバッテリー7208に蓄積される。
バッテリー7208は、ハイブリッド車両の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
図示しないが、二次電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置などがある。
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モーターで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモーターの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モーターのみで走行、エンジンとモーター走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本開示は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モーターのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本開示は有効に適用可能である。
以上、本開示に係る技術が適用され得るハイブリッド車両7200の一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、バッテリー7208に好適に適用され得る。
<6 応用例3>
「応用例としての住宅における蓄電システム」
本開示を住宅用の蓄電システムに適用した例について、図9を参照して説明する。例えば住宅9001用の蓄電システム9100においては、火力発電9002a、原子力発電9002b、水力発電9002c等の集中型電力系統9002から電力網9009、情報網9012、スマートメータ9007、パワーハブ9008等を介し、電力が蓄電装置9003に供給される。これと共に、家庭内発電装置9004等の独立電源から電力が蓄電装置9003に供給される。蓄電装置9003に供給された電力が蓄電される。蓄電装置9003を使用して、住宅9001で使用する電力が給電される。住宅9001に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
住宅9001には、発電装置9004、電力消費装置9005、蓄電装置9003、各装置を制御する制御装置9010、スマートメータ9007、各種情報を取得するセンサー9011が設けられている。各装置は、電力網9009および情報網9012によって接続されている。発電装置9004として、太陽電池、燃料電池等が利用され、発電した電力が電力消費装置9005および/または蓄電装置9003に供給される。電力消費装置9005は、冷蔵庫9005a、空調装置9005b、テレビジョン受信機9005c、風呂9005d等である。さらに、電力消費装置9005には、電動車両9006が含まれる。電動車両9006は、電気自動車9006a、ハイブリッドカー9006b、電気バイク9006cである。
蓄電装置9003に対して、上述した本開示のバッテリユニットが適用される。蓄電装置9003は、二次電池又はキャパシタから構成されている。例えば、リチウムイオン電池によって構成されている。リチウムイオン電池は、定置型であっても、電動車両9006で使用されるものでも良い。スマートメータ9007は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網9009は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせても良い。
各種のセンサー9011は、例えば人感センサー、照度センサー、物体検知センサー、消費電力センサー、振動センサー、接触センサー、温度センサー、赤外線センサー等である。各種センサー9011により取得された情報は、制御装置9010に送信される。センサー9011からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置9005を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置9010は、住宅9001に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
パワーハブ9008によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置9010と接続される情報網9012の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transmitter:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Wi−Fi等の無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth(登録商標)方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBee(登録商標)は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network) またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
制御装置9010は、外部のサーバ9013と接続されている。このサーバ9013は、住宅9001、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていても良い。サーバ9013が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信しても良いが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信しても良い。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等に、表示されても良い。
各部を制御する制御装置9010は、CPU(Central Processing Unit )、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置9003に格納されている。制御装置9010は、蓄電装置9003、家庭内発電装置9004、電力消費装置9005、各種センサー9011、サーバ9013と情報網9012により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていても良い。
以上のように、電力が火力9002a、原子力9002b、水力9002c等の集中型電力系統9002のみならず、家庭内発電装置9004(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置9003に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置9004の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置9003に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置9003に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置9003によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
なお、この例では、制御装置9010が蓄電装置9003内に格納される例を説明したが、スマートメータ9007内に格納されても良いし、単独で構成されていても良い。さらに、蓄電システム9100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
以上、本開示に係る技術が適用され得る蓄電システム9100の一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、蓄電装置9003が有する二次電池に好適に適用され得る。
以下、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1−1]
まず、Si粉末((株)高純度化学研究所製)と、SiO2粉末((株)高純度化学研究所製)と、Sn粉末((株)高純度化学研究所製)とを、質量比でSi粉末:SiO2粉末:Cu粉末=1:1:0.1となるように秤量、混合し、混合物を得た。次に、得られた混合物を溶媒としての水に適量添加し、超音波洗浄機にて均一分散させた後に、溶媒を乾燥させ、固化した混合物を得た。続いて、固化した混合物を蒸着源として真空チャンバ内に設置し、電子ビーム加熱にて蒸発させ、対向させたCu箔(蒸着基板)に薄膜(膜厚:9μm、寸法:10cm×20cm)を堆積させた。これにより、積層体が得られた。なお、Cu箔としては、充放電による膜剥離を抑止するためにCu租化箔を用いた。その後、積層体に赤外線真空炉にて600℃で真空熱処理を施した。以上により、目的とする薄膜電極(負極)が得られた。
[実施例1−2]
積層体に赤外線真空炉にて800℃で真空熱処理を施したこと以外は実施例1−1と同様にして薄膜電極を得た。
[参考例1−1]
積層体に真空熱処理を施さなかったこと以外は実施例1−1と同様にして薄膜電極を得た。
[実施例2−1、2−2、参考例2−1]
Si粉末((株)高純度化学研究所製)と、SiO2粉末((株)高純度化学研究所製)と、Zn粉末((株)高純度化学研究所製)とを、質量比でSi粉末:SiO2粉末:Zn粉末=1:1:0.1となるように秤量、混合したこと以外は実施例1−1、1−2、参考例1−1と同様にして薄膜電極を得た。
[比較例1−1、1−2、1−3]
Sn粉末を混合しなかったこと以外は実施例1−1、1−2、参考例1−1と同様にして薄膜電極を得た。
[比較例2−1、2−2、2−3]
Si粉末((株)高純度化学研究所製)と、SiO2粉末((株)高純度化学研究所製)と、Cu粉末((株)高純度化学研究所製)とを、質量比でSi粉末:SiO2粉末:Cu粉末=1:1:0.1となるように秤量、混合したこと以外は実施例1−1、1−2、参考例1−1と同様にして薄膜電極を得た。
[比較例3−1、3−2、3−3]
Si粉末((株)高純度化学研究所製)と、SiO2粉末((株)高純度化学研究所製)と、Co粉末((株)高純度化学研究所製)とを、質量比でSi粉末:SiO2粉末:Co粉末=1:1:0.1となるように秤量、混合したこと以外は実施例1−1、1−2、参考例1−1と同様にして薄膜電極を得た。
[比較例4−1、4−2、4−3]
Si粉末((株)高純度化学研究所製)と、SiO2粉末((株)高純度化学研究所製)と、Fe粉末((株)高純度化学研究所製)とを、質量比でSi粉末:SiO2粉末:Fe粉末=1:1:0.1となるように秤量、混合したこと以外は実施例1−1、1−2、参考例1−1と同様にして薄膜電極を得た。
[比較例5−1、5−2、5−3]
Si粉末((株)高純度化学研究所製)と、SiO2粉末((株)高純度化学研究所製)と、Ni粉末((株)高純度化学研究所製)とを、質量比でSi粉末:SiO2粉末:Ni粉末=1:1:0.1となるように秤量、混合したこと以外は実施例1−1、1−2、参考例1−1と同様にして薄膜電極を得た。
[評価]
(XPS)
薄膜電極についてXPSにより分析を行った。以下に測定装置および測定条件を示す。
装置:JEOL JPS9010
測定:ワイドスキャン、ナロースキャン(Si2p、C1s、O1s、Cu2p)
すべてのピークは、C1sの248.4eVで補正し、バックグラウンド除去とピークフィッティングを行うことにより結合状態を解析した。
(SEM)
薄膜電極について走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)により分析を行った。以下に測定装置および測定条件を示す。
装置:日立ハイテクS−4800
測定:表面観察(加速電圧5kV)、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)測定(加速電圧15kV)
(TEM)
薄膜電極について透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)により分析を行った。以下に測定装置および測定条件を示す。
装置:JEOL JEM−ARM300F
測定:加速電圧300kV、TEM−明視野像、STEM−HAADF像、STEM−EDXマップ像
試料薄片化にはFIB(Focused Ion Beam)を用いた。また、薄膜電極の平均情報を取得するために、電極表面近傍と表面から深さ200nm付近とでそれぞれ無作為に5視野ずつTEM像を撮像した。また、STEMモードにて局所EDXマップ像を取得した。
(電池特性)
薄膜電極(負極)を作用極とし、リチウム金属箔を対極とする、2016サイズ(直径20mm、高さ1.6mmのサイズ)のコイン型の半電池(以下「コインセル」という。)を以下のようにして作製した。
まず、薄膜電極(負極)を直径15mmの円形状に打ち抜いた。次に、対極として直径15mmの円形状に打ち抜いたリチウム金属箔と、セパレータとしてポリエチレン製の微多孔フィルムとを準備した。続いて、エチレンカーボネート(EC)とフルオロエチレンカーボネート(FEC)とジメチルカーボネート(DMC)とを質量比でEC:FEC:DMC=40:10:50となるように混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6を1mol/kgの濃度になるように溶解して非水電解液を調製した。
次に、正極と負極とを微多孔フィルムを介して積層して積層体とし、この積層体とともに非水電解液を外装カップおよび外装缶の内部に収容させてガスケットを介してかしめた。これにより、目的とするコインセルが得られた。
(初回充電容量、初回充放電効率、初期インピーダンス)
まず、得られたコインセルに対して、以下の条件にて充放電を行い、初回充電容量および初回放電容量を求めた。
Charge 0V CCCV(Constant Current/Constant Voltage) 0.05C (0.04mA cut)
Discharge 1.5V CC(Constant Current) 0.05C
次に、以下の式により初回充放電効率を求めた。
初回充放電効率[%]=(初回放電容量/初回充電容量)×100
また、初回放電後に室温25℃にて交流インピーダンス測定を行い、Cole−Coleプロットを作成することにより、初期インピーダンスを求めた。なお、表1に示す初期インピーダンスは周波数1kHzにおける数値である。
(サイクル特性、放電後OCV)
まず、得られたコインセルに対して、以下の条件にて充放電を行い、1サイクル目および50サイクル目の放電容量を求めた。
1st cycle: Charge 0V CCCV 0.05C (0.04mA cut), Discharge 1.5V CC 0.05C
After 2nd Cycle: Charge 0V CCCV 0.5C (0.04mA cut), Discharge 1.5V CC 0.5C
次に、以下の式によりサイクル特性を求めた。
サイクル特性[%]=(50サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
また、50サイクル放電後にOCV(Open Circuit Voltage)を測定した。
[結果]
表1は、実施例1−1〜2−2、参考例1−1、2−1、比較例1−1〜5−3の薄膜電極の構成および評価結果を示す。
Figure 2019031516
N/A:not applicable(該当せず)
RT:Room Temperature(熱処理なし)
OCV:Open Circuit Voltage
表1に示すように、Cu添加SiOx薄膜では、熱処理無しでも高い初回充放電効率が得られた。これは、Cuと酸素とが結合することで、不定比酸素によるLiトラップ現象(すなわちLiロスの発生)が抑制されるためである。一方、Sn、Zn、Co、FeまたはNi添加SiOx薄膜のうち、800℃熱処理を施したSn添加SiOx薄膜では、74.9%と最も高い初回充放電効率が得られた。但し、XPSによるSn組成比は1at%程度(各元素仕込み量は10質量%であり、重元素のSnは相対的に低い組成比(at%)となる(Sn10質量%はSn2at%にほぼ等しい))であり、6%を超える効率改善(800℃熱処理した無添加SiOx薄膜に対する効率改善)はSnによる酸素補償効果では説明できない。O/Si比も熱処理前後で変化なく、還元による酸素減少効果でもない。また、Si−O結合の強固さと関連があると思われる2.5V放電サイクル特性もSn添加SiOx薄膜は無添加SiOx薄膜と同等であり、Cu添加のような劇的な効果は見られない。以上の結果より、Sn添加SiOx薄膜の初回充放電効率改善は、上述のCu添加薄膜とは全く異なる構造およびメカニズムに起因した効果と考えられる。
また、表1に示したように、SnはSi内ではほぼ拡散できない元素である。さらに、0.001at%のSn添加においても、SnはSiと合金化しない(固溶もしない)ことも知られており、Snシリサイド形成も起こり得ない。
図10に、800℃で熱処理することによりSnをドープしたSi粒子の断面SEM像を示す。上述のように、SnはSi内ではほぼ拡散できないため、Snが表面に析出し、粒子状や繊維状の析出物が形成された。なお、このSi粒子の粉末を用いてコインセルを組み立てたところ、充放電はできなかった。
図11A、11Bに、Sn添加SiOx薄膜の表面SEM像を示す。2〜10μmのグレイン構造が確認され、集電体箔上に柱状堆積していることがわかる。また、熱処理の有無にかかわらず表面にSn析出物は観察されず、局所析出も無いことをEDXマッピングから確認している。Sn金属の融点は232℃と低く、表面析出するならば、800℃熱処理後に確認されるはずである。上述のSn拡散性の低さから考えて、Snが表面まで拡散および析出することは考えにくく、SnはSiOx内部に留まっているものと推測される。
図12A、12B、12C、12Dはそれぞれ、無添加、Fe添加、Ni添加、Sn添加SiOx薄膜内部のXPSスペクトルを示す。図13A、13B、13C、13Dはそれぞれ、熱処理有りの無添加、Fe添加、Ni添加、Sn添加SiOx薄膜内部の構造イメージ図を示す。
無添加SiOx薄膜の場合、熱処理によってSiO2成分が減少し、Si成分が増加していることが分かる。つまり、無添加SiOx薄膜は、熱処理によってSiO2-xのマトリックスにナノSiが生成した構造を有すると予想される。Fe、Ni添加SiOx薄膜の場合、熱処理によってSiO2成分は変化なく、Si成分およびシリサイド成分が増大している。Fe2pおよびNi2pはそれぞれFeシリサイドやNiシリサイドであることを示しており、熱処理でも変化しないことから薄膜形成時点で既にシリサイド化していると考えられる。したがって、Fe、Ni添加SiOx薄膜は、SiO2-xのマトリックスにナノSiおよびナノシリサイドが分散している構造を有すると思われる。FeおよびNi添加はSnと比べ初回充放電効率の改善効果が小さく、ナノシリサイド形成は初回充放電効率と関連性が薄いと思われる。
一方、初回充放電効率が改善したSn添加SiOx薄膜は、無添加SiOx薄膜やFe、Ni添加SiOx薄膜と大きく異なる。熱処理によってSiの結合状態は変化せず、ナノSiが生成していないこと、ならびにSnが金属状態で存在していることが示唆された。つまり、Snは酸素ともSiとも結合しておらず、800℃処理後のSn添加SiOx薄膜は酸素補償プレドープ(Li、Cu等)やシリサイド化(Fe、Co、Ni等)とは全く異なる構造を有すると考えられる。
図14に、SnおよびSiのエリンガムダイアグラムを示す。SnOのラインは最も不安定であり、SnO2のラインもSiOのラインと730℃で逆転することがわかる。また、SiO2は最もエネルギーが低い(最も安定)。つまり、800℃真空熱処理条件下では以下の反応が起こり得る。
2SnO → Sn+SnO2
SnO2+2SiO → Sn+2SiO2
上記反応は、無添加SiOxで発生するナノSi反応(不均化反応;SiO+SiO→Si+SiO2)よりも反応性が高いためSn酸化物やSiOを消費してしまう。したがって、Sn酸化物もナノSiも存在しない「ナノSn+SiO2」形成がSn添加による初回充放電効率改善の要因であると推測される。ここで、SiO2は安定状態なため、Liロスを生じにくいことも付け加えておく。
図15A、15Bにそれぞれ、熱処理無しのSn添加SiOx薄膜、熱処理有りのSn添加SiOx薄膜の低倍率TEM像を示す。熱処理無しの薄膜では全く凝集体が確認できなかったが、800℃熱処理有りの薄膜ではコントラストの高い微小凝集体(〜5nm)が多く観察された。
図16A、16Bは、無添加SiOx蒸着膜(800℃熱処理有り)の高倍率TEM像およびそのFFT像を示す。図17A、17Bは、Sn添加SiOx蒸着膜(800℃熱処理有り)の高倍率TEM像およびそのFFT像を示す。無添加の場合、800℃熱処理によって2〜10nmの結晶Si相が検出される。一方、Sn添加の場合、2〜6nmの凝集体は観測されるが、アモルファス相であった。なお、凝集体の平均サイズは4nmであった。この凝集体に対しSTEM解析を行った(図18、19A、19B)。XPS等の解析通り、凝集体はSnが主成分であることが確認され、ナノSi結晶は観測されていない。つまり、上述のSn酸化物もナノSiも存在しない「ナノSn+SiO2」形成を支持する結果といえる。
以上により、SiOx活物質の初回充放電効率を改善する手法として酸素補償プレドープ(Li、Cu等)と異なるメカニズムのSnプレドープの可能性が示された。Sn添加によって、ナノSi結晶形成および不定比酸素(SiO)の反応を抑制し、初回充放電効率改善が観測された。
なお、上述の実施例では第1元素としてスズ、亜鉛を用いる場合について説明したが、亜鉛、鉛、ビスマス、インジウム、金およびカドミウムは、スズ、亜鉛と同様に、第2元素と結合を形成することは困難であり、かつ第1元素および第1元素の酸化物中に拡散することは困難であるという特性を有している。したがって、第1元素として鉛、ビスマス、インジウム、金またはカドミウムを用いた場合にも、第1元素としてスズ、亜鉛を用いた場合と同様の効果が得られると推測される。また、第1元素としてスズ、亜鉛、鉛、ビスマス、インジウム、金およびカドミウムのうちの2種以上を組み合わせて用いた場合にも、第1元素としてスズ、亜鉛を単独で用いた場合と同様の効果が得られると推測される。
また、上述の実施例では第2元素としてケイ素を用いる場合について説明したが、ゲルマニウムは、ケイ素と同様に14族元素であり、負極活物質としてケイ素と類似の特性を有する。したがって、第2元素としてゲルマニウムを用いた場合にも、第2元素としてケイ素を用いた場合と同様の効果が得られると推測される。また、第2元素としてケイ素およびゲルマニウムを組み合わせて用いた場合にも、第2元素としてケイ素、ゲルマニウムをそれぞれ単独で用いた場合と同様の効果が得られると推測される。
以上、本開示の実施形態およびその変形例、ならびに実施例について具体的に説明したが、本開示は、上述の実施形態およびその変形例、ならびに実施例に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態およびその変形例、ならびに実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値等を用いてもよい。また、化合物等の化学式は代表的なものであって、同じ化合物の一般名称であれば、記載された価数等に限定されない。
また、上述の実施形態およびその変形例、ならびに実施例の構成、方法、工程、形状、材料および数値等は、本開示の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
また、上述の実施形態および実施例では、円筒型およびラミネートフィルム型の二次電池に本開示を適用した例について説明したが、電池の形状は特に限定されるものではない。例えば、角型やコイン型等の二次電池に本開示を適用することも可能であるし、スマートウオッチ、ヘッドマウントディスプレイ、iGlass(登録商標)等のウェアラブル端末に搭載されるフレキシブル電池等に本開示を適用することも可能である。
また、上述の実施形態および実施例では、巻回型の二次電池に対して本開示を適用した例について説明したが、電池の構造はこれに限定されるものではなく、例えば、正極および負極をセパレータを介して積層した積層型の電池(スタック型の電池)、またはセパレータを間に挟んだ正極および負極を折り畳んだ電池等に対しても本開示は適用可能である。
また、上述の実施形態および実施例では、本開示をリチウムイオン二次電池およびリチウムイオンポリマー二次電池に適用した例について説明したが、本開示を適用可能な電池の種類はこれに限定されるものではい。例えば、全固体リチウムイオン二次電池等の全固体電池に本開示を適用してもよい。
また、上述の実施形態および実施例では、電極が集電体と活物質層とを備える構成を例として説明したが、電極の構成はこれに限定されるもではない。例えば、電極が活物質層のみからなる構成としてもよい。
また、本開示は以下の構成を採用することもできる。
(1)
二酸化ケイ素および二酸化ゲルマニウムのうちの少なくとも1種の酸化物と、
スズ、亜鉛、鉛、ビスマス、インジウム、金およびカドミウムのうちの少なくとも1種の第1元素と、
ケイ素およびゲルマニウムのうちの少なくとも1種の第2元素と
を含み、
前記第1元素を含む第1の凝集体が、構成されている負極活物質。
(2)
前記酸化物を含むマトリックス中に、前記第1の凝集体が分散されている(1)に記載の負極活物質。
(3)
前記第1の凝集体が、非晶質である(1)または(2)に記載の負極活物質。
(4)
前記第1の凝集体の平均サイズが、2nm以上10nm以下である(1)から(3)のいずれかに記載の負極活物質。
(5)
前記第1の凝集体は、前記第2元素をさらに含む(1)から(4)のいずれかに記載の負極活物質。
(6)
前記第1の凝集体は、前記第1元素を含む結晶質または非晶質の第1の微小粒と、前記第2元素を含む結晶質または非晶質の第2の微小粒との混合体を含み、
前記第1の微小粒および前記第2の微小粒の平均サイズは、2nm以下である(1)または(2)に記載の負極活物質。
(7)
前記第1元素は、金属相を構成している(1)から(6)のいずれかに記載の負極活物質。
(8)
前記第2元素を含む第2の凝集体が、構成されている(1)から(7)のいずれかに記載の負極活物質。
(9)
前記第2の凝集体が、非晶質である(8)に記載の負極活物質。
(10)
前記第2の凝集体の平均サイズが、2nm以上10nm以下である(8)または(9)に記載の負極活物質。
(11)
前記二酸化ケイ素は、SiO2-x(xは0≦x≦0.5である。)で表され、
前記二酸化ゲルマニウムは、GeO2-y(yは0≦y≦0.5である。)で表される(1)から(10)のいずれかに記載の負極活物質。
(12)
前記第1元素、前記第2元素および酸素の総量に対する前記第1元素の含有量が、30at%以上70at%以下であり、
前記総量に対する前記第2元素の含有量が、1at%以上50at%以下であり、
前記総量に対する前記酸素の含有量は、20at%以上70at%以下である(1)から(11)のいずれかに記載の負極活物質。
(13)
前記第1元素と前記第2元素とが結合した第1の化合物、および前記第1元素と酸素とが結合した第2の化合物を含まない(1)から(12)のいずれかに記載の負極活物質。
(14)
前記第1元素は、スズを含み、
X線光電子分光法から得られるSn3d波形において、結合エネルギー484eV以上486eV以下の範囲にピークトップを有し、
前記ピークトップを有するピークは、Sn−Sn結合に起因するピークである(1)から(13)のいずれかに記載の負極活物質。
(15)
薄膜状または粉末状を有する(1)から(14)のいずれかに記載の負極活物質。
(16)
スズ、亜鉛、鉛、ビスマス、インジウム、金、銀およびカドミウムのうちの少なくとも1種の第1元素と、ケイ素およびゲルマニウムのうちの少なくとも1種の第2元素と、前記少なくとも1種の第2元素の酸化物とを含む材料を加熱、気化することにより、負極活物質を形成し、
形成した前記負極活物質を熱処理する
ことを含む負極活物質の製造方法。
(17)
前記第1元素の粉末、前記第2元素の粉末および前記第2元素の酸化物の粉末を液体に浸漬させた後、前記液体を蒸発させることにより前記材料を作製することをさらに含む(16)に記載の負極活物質の製造方法。
(18)
前記熱処理の温度が600℃以上であり、
前記熱処理により、前記第1元素を含む金属相が形成される(16)または(17)に記載の負極活物質の製造方法。
(19)
(1)から(15)のいずれかに記載の負極活物質を含む負極と、
正極と、
電解質と
を備える電池。
(20)
(19)に記載の電池を備え、
前記電池から電力の供給を受ける電子機器。
(21)
集電体と、集電体上に設けられた薄膜とを備え、
前記薄膜は、(1)から(15)のいずれかに記載の負極活物質を含む薄膜電極。
(22)
(19)に記載の電池と、
前記電池を制御する制御部と
を備える電池パック。
(23)
(19)に記載の電池と、
前記電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
前記電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を備える電動車両。
(24)
(19)に記載の電池を備え、
前記電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
(25)
(19)に記載の電池を備え、
前記電池から電力の供給を受ける電力システム。
11 電池缶
12、13 絶縁板
14 電池蓋
15 安全弁機構
15A ディスク板
16 熱感抵抗素子
17 ガスケット
20 巻回型電極体
21 正極
21A 正極集電体
21B 正極活物質層
22 負極
22A 負極集電体
22B 負極活物質層
23 セパレータ
24 センターピン
25 正極リード
26 負極リード
111 マトリックス
112 凝集体
300 電池パック
400 電子機器
7200 ハイブリッド車両
9100 蓄電システム

Claims (20)

  1. 二酸化ケイ素および二酸化ゲルマニウムのうちの少なくとも1種の酸化物と、
    スズ、亜鉛、鉛、ビスマス、インジウム、金およびカドミウムのうちの少なくとも1種の第1元素と、
    ケイ素およびゲルマニウムのうちの少なくとも1種の第2元素と
    を含み、
    前記第1元素を含む第1の凝集体が、構成されている負極活物質。
  2. 前記酸化物を含むマトリックス中に、前記第1の凝集体が分散されている請求項1に記載の負極活物質。
  3. 前記第1の凝集体が、非晶質である請求項1に記載の負極活物質。
  4. 前記第1の凝集体の平均サイズが、2nm以上10nm以下である請求項1に記載の負極活物質。
  5. 前記第1の凝集体は、前記第2元素をさらに含む請求項1に記載の負極活物質。
  6. 前記第1の凝集体は、前記第1元素を含む結晶質または非晶質の第1の微小粒と、前記第2元素を含む結晶質または非晶質の第2の微小粒との混合体を含み、
    前記第1の微小粒および前記第2の微小粒の平均サイズは、2nm以下である請求項1に記載の負極活物質。
  7. 前記第1元素は、金属相を構成している請求項1に記載の負極活物質。
  8. 前記第2元素を含む第2の凝集体が、構成されている請求項1に記載の負極活物質。
  9. 前記第2の凝集体が、非晶質である請求項8に記載の負極活物質。
  10. 前記第2の凝集体の平均サイズが、2nm以上10nm以下である請求項8に記載の負極活物質。
  11. 前記二酸化ケイ素は、SiO2-x(xは0≦x≦0.5である。)で表され、
    前記二酸化ゲルマニウムは、GeO2-y(yは0≦y≦0.5である。)で表される請求項1に記載の負極活物質。
  12. 前記第1元素、前記第2元素および酸素の総量に対する前記第1元素の含有量が、30at%以上70at%以下であり、
    前記総量に対する前記第2元素の含有量が、1at%以上50at%以下であり、
    前記総量に対する前記酸素の含有量は、20at%以上70at%以下である請求項1に記載の負極活物質。
  13. 前記第1元素と前記第2元素とが結合した第1の化合物、および前記第1元素と酸素とが結合した第2の化合物を含まない請求項1に記載の負極活物質。
  14. 前記第1元素は、スズを含み、
    X線光電子分光法から得られるSn3d波形において、結合エネルギー484eV以上486eV以下の範囲にピークトップを有し、
    前記ピークトップを有するピークは、Sn−Sn結合に起因するピークである請求項1に記載の負極活物質。
  15. 薄膜状または粉末状を有する請求項1に記載の負極活物質。
  16. スズ、亜鉛、鉛、ビスマス、インジウム、金、銀およびカドミウムのうちの少なくとも1種の第1元素と、ケイ素およびゲルマニウムのうちの少なくとも1種の第2元素と、前記少なくとも1種の第2元素の酸化物とを含む材料を加熱、気化することにより、負極活物質を形成し、
    形成した前記負極活物質を熱処理する
    ことを含む負極活物質の製造方法。
  17. 前記第1元素の粉末、前記第2元素の粉末および前記第2元素の酸化物の粉末を液体に浸漬させた後、前記液体を蒸発させることにより前記材料を作製することをさらに含む請求項16に記載の負極活物質の製造方法。
  18. 前記熱処理の温度が600℃以上であり、
    前記熱処理により、前記第1元素を含む金属相が形成される請求項16に記載の負極活物質の製造方法。
  19. 請求項1に記載の負極活物質を含む負極と、
    正極と、
    電解質と
    を備える電池。
  20. 請求項19に記載の電池を備え、
    前記電池から電力の供給を受ける電子機器。
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