JPWO2017130793A1 - マイクロニードルアレイ、マイクロニードルシート - Google Patents
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Abstract
Description
近年、皮膚などの生体表面から目的の成分を体内に投与する方法(経皮投与方法)として、マイクロニードルアレイを用いる試みが行なわれている。経皮投与においては、皮膚の表層にある角質層が送達の障害となっていることが知られているが、マイクロニードルによって角質層を貫通し、該角質層下に目的の成分を送達することが可能である。
そのような用途に適したマイクロニードルアレイの製造方法、設計及び材料、並びに薬剤等を担持させる技術の開発が行われている。
一方、特許文献3には、経皮吸収シートに必要十分な量の薬剤を針状凸部だけに選択的に、かつ定量的に添加する方法として、薬剤を含む第1ポリマー層をモールドの針状凹部に形成し、さらに薬剤を含まない第2ポリマー溶解液を付与して固化することにより第1ポリマー層と第2ポリマー層とが積層された構成を有するポリマーシートを形成し、ポリマーシートをモールドから剥離する方法が開示されている。
また、マイクロニードルは高アスペクト比の構造であるため、複雑な製造工程や特殊な製造装置が要求されるという問題に対し、特許文献5では、基板上に厚み分布をもつ島状のエッチングマスクを形成し、エッチングマスクと基板とのエッチングレートの差を利用して基板を針状に加工する方法が開示されている。
特許文献8では、マイクロニードルの基板から針先端までの長さは100μmから800μmが適当であるとされている。しかしながら、適宜条件を設計しなければ、角層を超える長さである場合は真皮層まで貫通する可能性があり、医療行為を除く用途としては好適とはいえない。また、生分解性樹脂の溶解速度が送達速度の律速となる。
特許文献9では、突起部が皮膚の角質層を貫通しないが、加圧されて薄くなった角質層などを通して、突起部に付着するか突起部に含まれる化合物を投与する技術が開示されている。突起部の高さは10μm〜3mmとされている。
特許文献10では、微小突起が皮膚の角質層を貫通せず、角質層の損傷を抑制しつつ、引き伸ばされて薄くなった角質層を介して、活性成分を痛みなく且つ確実に皮膚へ投与することができる微小突起付きアレイが開示されている。微小突起の高さは50〜300μmであり、特定の形状が規定されている。これにより、マイクロニードルが真皮層まで貫通してしまうおそれを回避することができる。
図1は本発明のマイクロニードルアレイを模式的に示した図であり、(A)は断面図、(B)は斜視図である。
本発明のマイクロニードルアレイは、複数の中空針11と、中空針11と連通し、中空針11の先端孔部から排出される液体組成物を保持する複数の個別液室12とを備え、中空針11の長さが1〜200μmであり、個別液室12は中空針11各々に対応して設けられてなる。
一方、中空針11の長さが200μmを超えると破損しやすくなる。
中空針11の長さとしては、4〜20μmであることがより好ましい。
さらに皮膚への押し付け力を変更することで深さを適宜変更することができる。また外径と内径の広さを変更することでも調節が可能である。
本実施形態のマイクロニードルアレイは、十分な量の液体組成物を保持可能な個別液室12が、所定の寸法の中空針11に個々に対応して設けられているため、液体組成物を長時間にわたり安定して供給することができる。よって、長期間の徐放が求められる用途に幅広く適用することができ、皮膚への適用以外に、農業分野における利用(例えば、農薬徐放装置、植物の葉への投与等)、各種工業材料や建築材料としての利用が可能である。
従来の共通液室のみを備えるマイクロニードルアレイでは、異なる成分を有する複数の液体組成物を同時に適用することができず、同時に適用するには混合する必要があった。混合に際し、均一な混合物を得ることが困難であることが多く、例えば比重差により分離が生じたり、エマルジョン化等の工程が必要となることがある。また、均一な混合が可能であっても、皮膚における吸収速度に差異があれば、適用時の効果が低減してしまうことがある。
これに対し、本実施形態のマイクロニードルアレイは、各個別液室毎に異なる液体組成物を保持させることができ、複数種の液体組成物を混合することなく使用できる。また、個別液室毎に、有効成分の配合比率を細かく設定することも可能である。さらに、マイクロニードルのピッチが小さいため、皮膚から個別に吸収されても体内で均一化されるという効果が期待できる。
また、隣接する中空針の距離(ピッチ幅)や、単位面積あたりの中空針の数は適宜選択することができ、製造に使用する型の設計により変更することができる。
例えば、中空針11のピッチは10〜150μmであることが好ましい。
中空針11の数は、5cm2の面積に10,000個程度とすることができ、1cmの長さに200〜1,000個配列するように設けることができる。
個別液室12を区画する隔壁の厚さは0.1〜5μmであることが好ましい。
また、隣接する個別液室のピッチは中空針11を中心として10〜150μmとすることが好ましい。
個別液室12の形状としては、ハニカム形状などが挙げられるが、これに限定されず、断面形状は四角形や円形であってもよい。
液体組成物の移動量が0.0005mL/mm2未満であると、良好な徐放性を得ることが難しく、また個別液室12に液体組成物を保持させるための供給が困難になる。
本実施形態のマイクロニードルアレイの製造方法は、開口部を有する独立した複数の凹部21を備えた基板20上に、材料を膜状に配置し、減圧により材料を変形させて中空構造を形成した後、固化し、離型する方法である。
材料を基板20上に貼り付ける工程では、開口部となる部分には触れないように加圧力を制御し、形状の転写に必要な部分のみを密着させる。
減圧により空間部分が膨張し、材料内で広がることにより中空構造が形成される。
機能性成分は、本実施形態のマイクロニードルアレイが適用される対象に応じて選択することができ、例えば化粧品であれば化粧品原料、医薬品(栄養薬剤、診断用薬および治療薬等)であれば薬効成分等が挙げられる。
また、これらの成分は、リポソームなどの粒子や高分子ミセルで内包した態様や、多孔質粒子に含浸させた態様で用いることができる。
マイクロニードルアレイを皮膚に適用する場合、中空針11の強度が低いために座屈を起こしてしまう場合がある。これに対し本実施形態のマイクロニードルアレイ10は、図4に示すように、中空針11の少なくとも先端部を含む領域の外壁及び/又は内壁に、コーティング層13を設けている。
また、中実状であってもよいが、製造時に凍結乾燥させてポーラスを形成し、スポンジ状としてもよい。スポンジ状とすることにより、個別液室12内に保持される液体の徐放性を制御することができる。この場合、中空針11の先端に不揮発性の油(例えば、天然油)を浸透させておくことにより液体の流出が防止される。
生体適合性高分子としては、生体への刺激や毒性が低く、生体適合性を有し、投与後分解して代謝される生分解性高分子や、熱で溶解する樹脂であれば特に限定されず、一般に医療用に使用される高分子などから適宜選択することができる。
形成されるコーティング層13は薄膜であるため、生分解性をもつ材料であれば適応可能である。
熱で溶解する樹脂とは、温度変化に伴って相転移する樹脂であって、例えば25℃〜30℃程度の条件下で液状化するものが好ましい。具体的には、ポリ(N−アクリロイルグリシンアミド)−コ−ポリ(N−アセチルアクリルアミド)、ポリ(N−アクリロイルアスパラギンアミド)、ポリ(アリルアミン)−コ−ポリ(アリルウレア)等の温度応答性合成高分子が挙げられる。
これらの中でも、個別液室12内に保持される液体により溶解しない材料からなることが好ましい。
上述のように、コーティング層13は個別液室12内に保持される液体により溶解しない材料からなることが好ましいが、個別液室12内の液体が水を含むものであるときに、水溶性樹脂でコーティングする場合は、固体材料との間に水溶性ではない液体(例えば、油、油脂)や、ワセリンなどを介在させるか、水溶性材料を疎水性の材料で粒子化して包むなどしてコーティング層の溶解を防止することができる。
中空針11の外壁面にコーティング層13が形成された状態における外周の直径としては、上述のコーティングの効果が得られ、かつコーティング層13が溶解可能な範囲で適宜設定することが好ましく、例えば10〜200μmの範囲とすることができるが、これに限定されない。
図3(A)及び図3(B)は、上述のマイクロニードルアレイを備えた本発明のマイクロニードルシートの例を示す断面模式図である。
また、本実施形態のマイクロニードルシートは、マイクロニードルアレイ10と、該マイクロニードルアレイを皮膚に接着させるための粘着剤層40とを備える。
化粧用パック材とは、機能性成分を含有する不織布やフィルム等で皮膚を覆い、有効成分を角質層へ浸透させるためのシート状の材料である。
本実施形態のマイクロニードルアレイを備えた化粧用パック材は、顔等の皮膚に貼り付けるための粘着剤層40を備える。粘着剤層40としては、具体的には、粘着テープが挙げられる。
水蒸気透過性が高く通気性が良好な粘着テープとしては、例えば、不織布、薄い(10μm以下)ポリウレタン及び紙製の基材に通気性粘着剤を塗布したものが挙げられる。また、水蒸気透過性が高いシート状基材の上に、通常の粘着剤をパターン塗工して得た粘着シートであってもよい。
一方、通気性が低い粘着テープとしては、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン及びポリプロピレン製の基材からなるテープが挙げられる。
液体組成物供給材30としては、具体的には、ガーゼ、不織布、テープ及び水性ゲルのパック材などが挙げられる。これらの材料に液体組成物(例えば、化粧水や美容液等)を含有させ、マイクロニードルアレイ10の背面に密着させ、液体組成物を個別液室12へ供給する。
液体組成物供給材30の形状としては、特に限定されず、貼り付ける対象や部位に応じて適宜選択することができる。例えば、円形、楕円形、長方形、三日月形、勾玉形、三角形、星形等のもの、フェイスマスクのような貼付場所に応じた任意の形状としたものが挙げられる。
下記の手段を用いる構成及び工程により、中空針と、該中空針と連通するハニカム形状の個別液室を備えたマイクロニードルアレイを製造した。得られたマイクロニードルアレイについて、浸透性及び徐放性、並びに皮膚刺激性を評価した。
(1)基材
基材は、ハニカム構造を形成するハニカム材料と、保護材からなる。
ハニカム材料は、ハニカム形状への変形過程では流動性と延性(薄膜化で破損しない)を持ち、ハニカム形状に形成された後は固化する材料であり、本実施例では紫外線領域で硬化するエネルギー線硬化樹脂である。
保護材は、ハニカム材料が塗布される材料であり、ハニカム形成工程(減圧)においてガスが抜けないように保護するために、また剥離工程において応力集中を緩和して欠損から保護するために用いられる。ここでは、照射される紫外線を透過する材料であることが好ましく、例えばPETやPE等の可撓性プラスチック材料が挙げられる。
テンプレートは、基板と蓋部からなり、基板と蓋部は接着剤により接合されている。
テンプレートは、上記(1)の基材を膨張させてハニカム形状の個別液室及び中空針を形成するための形状を有する
基板は、表面形状やピッチを規定する構造を有し、開口部の形状は逆テーパ状となっている。本実施例で用いた基板の材料はニッケルであるが、シリコン、ステンレス、銅等の材料の基板も使用することができる。
蓋部は基板と同じ材料とすることができる。本実施例の材料はニッケルであるが、シリコン、ステンレス、銅、鉄、ガラス等の材料を使用することができる。
接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、熱可塑性(ポリウレタン等)の接着剤などを使用することができる。
上記(1)の基材を、上記(2)のテンプレートに密着させるための装置である。
具体的には、ローラ部材によって加圧することにより密着させる。なお、ジグによる加圧力は、次の工程で用いられる加圧装置による加圧力よりも小さく設定される。
上記(1)の基材と、上記(2)のテンプレートに、所望の圧力を均一に発生させるための装置である。加圧装置の加圧によって、基材を変形させ、テンプレートへの形状転写を制御する。加圧は大気圧下で行われ、上記(3)のジグを併用してもよい。
上記(1)の基材と、上記(2)のテンプレートの環境を減圧する(真空状態にする)装置である。減圧によってハニカム材料にはハニカム形状と中空針が形成される。
本実施例の硬化装置は、紫外線を照射する装置である。上記(1)の基材にハニカム形状及び中空針が形成された後、紫外線を照射することにより硬化させる。
上記(2)のテンプレートから、ハニカム形状及び中空針が形成され、マイクロニードルアレイの構造となった基材を剥離するための装置である。本実施例では、ピンセット状のジグを用いて基材を挟み、引き上げることにより剥離する。
i)塗布工程(貼付工程)
予め保護材に塗布されたハニカム材料からなる基材を、貼り合わせ装置によりテンプレートに貼り付ける。テンプレートの開口部に必要以上にハニカム材料が入り込まないように圧力制御を行う。また、その他の部分に気泡が入らないように端部から貼り付けが行われる。
加圧装置により、均一な圧力で基材をテンプレートに押しつけ、所望の箇所にテンプレートの形状を転写させる。
本実施例では、加圧力を60kPaとした。
基材とテンプレートが配置された容器内(環境)を、減圧装置により減圧することで相対的圧力差が発生し、テンプレートの凹部(空間部)のガスが膨張し、基材のハニカム材料内部に入り込む。一方、テンプレートに密着している部分のハニカム材料の流動は起こらないため、独立した空洞部が形成され、ハニカム形状及び中空針となる。
本実施例では、減圧時間を90秒とした。
硬化装置により紫外線を照射し、ハニカム形状及び中空針が形成された材料を硬化させる。
ハニカム形状及び中空針が形成され、マイクロニードルアレイの構造となった基材を剥離装置により剥離する。
マイクロニードルアレイの背面に液体組成物供給材を貼り付けたマイクロニードルシートを作製し、対象への液体組成物の浸透性及び徐放性を評価した。
得られたマイクロニードルシートを、アガロースゲルに貼り付け、20℃の温度条件下で30分放置した。
アガロースゲルの断面を観察し、マイクロニードルアレイ先端からのカルセインの移動距離を測定し、下記の基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
A:移動距離が0.20mm以下である。
B:移動距離が0.15mm以下である。
C:移動距離が0.10mm以下である。
D:移動距離が0.05mm以下である。
E:移動距離が0.20mmを超える。
15人の被験者に対し、マイクロニードルアレイを手の甲の皮膚に貼り付けて評価を行った。30秒経過後の刺激性について、下記の基準に基づき回答を得た。評価した人数を集計し、その割合(%)を算出した。結果を表1に示す。
◎:刺激や違和感を感じなかった。
○:多少の違和感を感じた。
△:多少の痛みを感じた。
×:痛み及び違和感を感じた。
転写工程における加圧力を20kPaとした以外は実施例1と同様にしてマイクロニードルアレイを作製し、浸透性及び徐放性、並びに皮膚刺激性を評価した。
得られたマイクロニードルアレイは、中空針の長さが1μm、先端孔部の内径が5μmであり、個別液室の容積が2mm3であった。
浸透性及び徐放性は化粧品としての適用に好適とされる評価であり、皮膚刺激性は評価した全員が違和感を感じないとの評価であった。
中空針の長さが100μm、先端孔部の内径が20μmであり、個別液室の容積が2mm3のマイクロニードルアレイを転写工程における加圧力及び減圧時間を調整することによって作製し、浸透性及び徐放性、並びに皮膚刺激性を評価した。
浸透性及び徐放性は化粧品としての適用に好適とされる評価であり、皮膚刺激性の評価結果も良好であった。
テンプレートの材料として、ガス透過性が高いシリコーンゴム(PDMS)を用いた。
テンプレートにハニカム材料を軽い圧力で貼り付けた後、均一の圧力でテンプレートに押しつけ、先端部以外の箇所を転写させた。
ハニカム形成工程において、テンプレート内に溶け込んだガスが放出され、ハニカム材料に入り込み、膨張することによりハニカム形状が形成された。
その他の工程や条件は実施例1と同様にしてマイクロニードルアレイを作製した。
浸透性及び徐放性は化粧品としての適用に好適とされる評価であり、皮膚刺激性の評価結果も良好であった。
マイクロニードルアレイの中空針の長さが3μm、先端孔部の内径が4μm、個別液室の容積が0.5mm3となるように加圧時間及び減圧時間を調整した以外は実施例1と同様にしてマイクロニードルアレイを作製し、浸透性及び徐放性、並びに皮膚刺激性を評価した。
浸透性及び徐放性はやや劣るものの化粧品としての適用に好適とされる評価であり、皮膚刺激性の評価結果も良好であった。
マイクロニードルアレイの中空針の長さが20μm、先端孔部の内径が5μm、個別液室の容積が20mm3となるように加圧時間及び減圧時間を調整した以外は実施例1と同様にしてマイクロニードルアレイを作製し、浸透性及び徐放性、並びに皮膚刺激性を評価した。
浸透性及び徐放性は非常に優れており、皮膚刺激性の評価結果も良好であった。
マイクロニードルアレイの中空針の長さが47μm、先端孔部の内径が10μm、個別液室の容積が25mm3となるように加圧時間及び減圧時間を調整した以外は実施例1と同様にしてマイクロニードルアレイを作製し、浸透性及び徐放性、並びに皮膚刺激性を評価した。
浸透性及び徐放性は非常に優れていることがわかった。皮膚刺激性の評価結果は、△の評価が20%みられたが、×の評価は0%であった。
浸透性・徐放性評価において、標識物質としてカルセインをブロックポリマー(ブロックコポリマーとして、methoxypoly(ethylene glycol)-block-poly(lactide-co-glycolide) 200Da-15000Da(Sigma-Aldrich社製)に内包したものを用いた以外は、実施例1と同様にして作製したマイクロニードルアレイを用いて、評価を行った。
異なる液体組成物であっても浸透性及び徐放性に問題はなく、良好であった。
浸透性・徐放性評価において、標識物質としてカルセインをリポソームに内包したものを用いた以外は、実施例1と同様にして作製したマイクロニードルアレイを用いて評価を行った。
異なる液体組成物であっても浸透性及び徐放性に問題はなく、良好であった。
医療用グレードのポリカーボネートを用い、熱サイクル射出成形によって突起を形成した後、中空に加工してマイクロニードルアレイを作製した。
得られたマイクロニードルアレイは、中空針の長さは300μmの先端孔部の内径は10μmであった。個別液室は形成されていない。
個別液室が形成されていないため、浸透性及び徐放性は化粧品に適用可能な基準を満たさないレベルであり、皮膚刺激性の評価結果は、15人中14人(86.7%)が痛み及び違和感を感じたという評価であった。
<コーティング層の形成>
実施例1と同様にして得たマイクロニードルアレイに対し、中空針の先端を含む領域の外壁及び内壁を被覆するコーティング層を、生分解性高分子(トレハロース)で形成した。
中空針の外側に形成されたコーティング層外周の直径(外径)は100μmであった。また、形成されたコーティング層は中実の固体であった。
被験者に対し、マイクロニードルアレイを手の甲の皮膚に貼り付けて評価を行った。1分間経過後の中空針の状態について走査型顕微鏡で観察した。
対象の50本の中空針のうち、変形や折れ曲がっている数(X)を計測し、下記の式に従って座屈率を求めた。結果を表2に示す。
座屈率(%)=(X/50)×100
コーティング層が形成されたマイクロニードルアレイの背面に液体組成物供給材を貼り付けたマイクロニードルシートを作製した。
液体組成物供給材としては、標識物質(カルセイン)を含む液体組成物を十分に含浸させたシート(縦10cm×横10cm)を用いた。
得られたマイクロニードルシートを生理食塩水中に浸漬し、生理食塩水中のカルセインを高速液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS)で検出した。カルセインが検出されたタイミングをコーティング層が溶解したタイミングとし、検出されるまでに要した時間を以下の基準に基づき評価した。結果を表2に示す。
A:0.5分未満
B:1分未満
C:2分未満
D:5分以上
中空針の外側に形成されたコーティング層の外径を表2に示す値とした以外は、実施例10と同様にしてマイクロニードルアレイ及びマイクロニードルシートを作成し、座屈率とコーティング層の溶解性をそれぞれ評価した。結果を表2にあわせて示す。
中空針の外側に形成されたコーティング層の状態をポーラス状とした以外は、実施例10と同様にしてマイクロニードルアレイ及びマイクロニードルシートを作成し、座屈率とコーティング層の溶解性をそれぞれ評価した。結果を表2にあわせて示す。
中空針の外側にコーティング層を形成していない実施例1のマイクロニードルアレイ及びマイクロニードルシートについて、実施例10と同様にして座屈率とコーティング層の溶解性を評価した。結果を表2に示す。
中空針の外側にコーティング層を形成していない比較例1のマイクロニードルアレイ及びマイクロニードルシートについて、実施例10と同様にして座屈率とコーティング層の溶解性を評価した。結果を表2に示す。
11 中空針
12 個別液室
13 コーティング層
20 基板
21 凹部
30 液体組成物供給材
40 粘着剤層
Claims (6)
- 複数の中空針と、前記中空針と連通し、前記中空針の先端孔部から排出される液体組成物を保持する複数の個別液室とを備え、前記中空針の長さが1〜100μmであり、前記個別液室は前記中空針各々に対応して設けられてなることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
- 構成する材料として金属を含有しないことを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードルアレイ。
- 前記中空針の少なくとも先端部を含む領域の外壁及び/又は内壁に、コーティング層を有することを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロニードルアレイ。
- 前記コーティング層は、生体適合性高分子からなることを特徴とする請求項3に記載のマイクロニードルアレイ。
- 請求項1から4のいずれかに記載のマイクロニードルアレイと、前記個別液室に保持された目的の機能性成分を含有する液体組成物とを備え、皮膚に貼付して使用することを特徴とするマイクロニードルシート。
- 請求項1から4のいずれかに記載のマイクロニードルアレイと、前記マイクロニードルアレイを皮膚に接着させるための粘着剤層とを備えることを特徴とするマイクロニードルシート。
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