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JPWO2016104278A1 - 高収縮性ポリアミド繊維およびそれを一部に用いた混繊糸および織編物 - Google Patents

高収縮性ポリアミド繊維およびそれを一部に用いた混繊糸および織編物 Download PDF

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JPWO2016104278A1
JPWO2016104278A1 JP2016512722A JP2016512722A JPWO2016104278A1 JP WO2016104278 A1 JPWO2016104278 A1 JP WO2016104278A1 JP 2016512722 A JP2016512722 A JP 2016512722A JP 2016512722 A JP2016512722 A JP 2016512722A JP WO2016104278 A1 JPWO2016104278 A1 JP WO2016104278A1
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Abstract

熱収縮応力(H)、沸騰水収縮率(B)が高い収縮特性を有するポリアミド繊維によって、少なくとも一部に高収縮性ポリアミド繊維を用いた混繊糸は嵩高性を有し、少なくとも一部に高収縮性を有するポリアミド繊維および/又は混繊糸を用いた織編物は、ふくらみ感、ソフト感のある高密度な織編物とすることができる高収縮ポリアミド繊維を提供する。高収縮性ポリアミド繊維は、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドが相溶し、それぞれの重量比率が結晶性ポリアミド:非晶性ポリアミド=90:10〜50:50、沸騰水収縮率(B)が20〜50%、熱収縮応力(H)が0.15cN/dtex以上であることを特徴とする。

Description

本発明は高収縮性を有するポリアミド繊維およびそれを一部に用いた混繊糸および織編物に関するものである。
近年、これまでの繊維には見られなかった特殊繊維を用いた織物などの縫製品の開発が活発である。その中で高収縮性を付与した繊維を利用した例は多く、例えば熱収縮性の異なる2種の繊維を混合した混繊糸や、熱収縮性の高い原糸を製織した後に沸騰水やスチーム等で熱処理して嵩高性やふくらみ感を持たせ、風合いや表面特性を改良した織物の開発が数多くなされている。
高収縮性を付与した繊維の代表例として、高収縮性ポリエステル繊維あるが、ポリエステル繊維はポリアミド繊維と比較してヤング率が高い特性があるために、熱処理して収縮させた後の風合いが硬く、衣料用途としての快適性に問題があった。一方、ポリアミド繊維はヤング率が低く柔らかな風合いが得られ、耐摩耗性などの優れた特性を有することから衣料用途に好適に用いられるが、更なる、機能付与のために高収縮性ポリアミド繊維について、多数の開発が行なわれている。
例えば特許文献1には、沸騰水収縮率が15%以上である高収縮性ポリアミド繊維が開示されている。また、特許文献2には、収縮応力が220〜400mg/dの高収縮性ポリアミド繊維が開示されている。また、特許文献3には、収縮応力が0.15cN/dtex以上である高収縮性ポリアミド繊維が開示されている。
日本国特開平3−64516号公報 日本国特開2000−73231号公報 日本国特開2007−100270号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている高収縮性ポリアミド繊維は、他の繊維と混繊して異収縮混繊糸とするためのものであるが、沸騰水収縮率(B)が高くても熱収縮応力(H)が低い場合、十分に収縮されず、嵩高性やふくらみ感のある混繊糸を得ることができなかった。また、沸騰水収縮率(B)が高くて熱収縮応力(H)が低い高収縮性ポリアミド繊維を用いた織物に熱処理を施しても、熱収縮応力(H)が小さいため十分に収縮されず、嵩高性やふくらみ感のある高密度の織物を得ることはできなかった。
特許文献2、3に開示されている高収縮性ポリアミド繊維は、繊維中のポリマー同士の相溶性が悪いために曳糸性に乏しく、衣料用途において、やわらかい風合いが主流であり、かつ高速製糸による高効率生産が主流であるため、単糸細繊度化や高速紡糸に対応することができないという問題があった。単糸細繊度化できないことからふくらみ感、ソフト感のある高密度な織物は得られなかった。また、この繊維を製造するために用いられるポリマーは共重合によって製造されるため、共重合ポリマーを製造するのに手間がかかり、製造コストも高くなるという問題があった。
そこで、本発明では上記問題点を解決するものであり、熱収縮応力(H)、沸騰水収縮率(B)が高い収縮特性を有する高収縮性を有するポリアミド繊維を提供すること、およびこれによって、少なくとも一部に高収縮性ポリアミド繊維を用いた混繊糸が嵩高性を有し、少なくとも一部に高収縮性を有するポリアミド繊維および/又は混繊糸を用いた織編物が、ふくらみ感、ソフト感のある高密度な織編物とすることを提供することを課題とする。
上記目的を達成するために、本発明の高収縮性ポリアミド繊維は、主として、次の構成を有する。すなわち、
(1)結晶性ポリアミドと、非晶性ポリアミドからなる繊維であって、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドが相溶し、それぞれの重量比率が結晶性ポリアミド/非晶性ポリアミド=90/10〜50/50、沸騰水収縮率(B)が20〜50%、熱収縮応力(H)が0.15cN/dtex以上であることを特徴とする高収縮性ポリアミド繊維。
(2)総繊度が5〜80dtexであり単糸繊度が0.9〜3.0dtexであることを特徴とする(1)記載の高収縮性ポリアミド繊維。
(3)剛直非晶量が20〜45%であることを特徴とする(1)または(2)記載の高収縮性ポリアミド繊維。
(4)混繊糸の一部に(1)〜(3)いずれかに記載の高収縮性ポリアミド繊維を用いることを特徴とする混繊糸。
(5)織編物の一部に(1)〜(3)いずれかに記載の高収縮性ポリアミド繊維および/または(4)記載の混繊糸を用いることを特徴とする織編物。
である。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維は、熱収縮応力(H)、沸騰水収縮率(B)が高く収縮特性に優れると共に、構成成分である結晶性ポリアミドおよび非晶性ポリアミドが相溶しているので、単糸細繊度化や高速紡糸することができる。熱収縮応力(H)、沸騰水収縮率(B)が高い収縮特性を有する高収縮性ポリアミド繊維によって、少なくとも一部に高収縮性ポリアミド繊維を用いた混繊糸は嵩高性を有し、少なくとも一部に高収縮性を有するポリアミド繊維および/又は混繊糸を用いた織編物は、ふくらみ感、ソフト感のある高密度な織編物とすることができる。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維は、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドからなる繊維である。結晶性ポリアミドは、結晶を形成し融点を有するポリアミドであり、いわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結されたポリマーであり、ポリカプラミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリテトラメチレンアジパミド、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)と線状脂肪族ジカルボン酸との縮合重合型ポリアミドなど、及び、これらの共重合体もしくはこれらの混合物が挙げられる。ただし、均一な系を再現しやすく、安定した機能発現の点からホモのポリアミドを用いることが好ましい。
結晶性ポリアミドは、ジアミン類、二塩基酸類からなる高分子量体であり、具体的なジアミン類としてはテトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス−(4,4’−アミノシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミンなどがあげられる。二塩基酸類としてはグルタル酸、ピメリン酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカジオン酸、ヘキサデカジオン酸、ヘキサデセンジオン酸、エイコサンジオン酸、ジグリコール酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、キシリレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。本発明の高収縮性ポリアミド繊維に用いる結晶性ポリアミドはいかなるものでもよいが、製造コスト、繊維の強度保持の両面からポリカプラミド、ポリヘキサメチレンアジパミドが好ましい。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維における非結晶性ポリアミドは、結晶を形成せず融点をもたないポリアミドであり、例えば、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミン/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンの重縮合体、イソフタル酸/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体、テレフタル酸/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/テレフタル酸/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合体、イソフタル酸/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/ω−ラウロラクタムの重縮合体、テレフタル酸/ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン/ω−ラウロラクタムの重縮合体等がある。また、これらの重縮合体を構成するテレフタル酸成分及び/又はイソフタル酸成分のベンゼン環が、アルキル基やハロゲン原子で置換されたものも含まれる。さらに、これらの非晶性ポリアミドは2種類以上併用してもよい。本発明の高収縮性ポリアミド繊維に用いる非晶性ポリアミドはいかなるものでもよいが、製造コスト、繊維の収縮特性の両面からイソフタル酸/テレフタル酸/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体が好ましい。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維における、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの重量比率は、結晶性ポリアミド/非晶性ポリアミド=90/10〜50/50である。非晶性ポリアミドの重量比率が10重量%未満の場合、熱収縮応力(H)および沸騰水収縮率(B)の収縮特性が小さくなり、混繊糸を作製した際には、熱処理を施しても糸長差が発現しにくく十分な嵩高性を得ることができず、また、織物を作製した際には、熱処理を施しても十分に収縮されずふくらみ感、ソフト性のある高密度な織物を得ることができない。また、非晶性ポリアミドの重量比率が50重量%を超えると、熱収縮応力(H)および沸騰水収縮率(B)の収縮特性が高くなり過ぎ、熱処理後の織物の密度が過密になり、風合いが硬くなり、ふくらみ感、ソフト性に劣る。そのため、製造コスト、繊維の収縮特性の両面から結晶性ポリアミド/非晶性ポリアミド=80/20〜60/40であることが好ましく、70/30〜60/40であることがより好ましい。
ここでいう重量比率とは、高収縮性ポリアミド繊維のプロトンNMRを測定し、アミド結合を形成するカルボキシル基のα位の水素に由来するシグナル(通常3ppm付近)のピーク面積(A)と、芳香族炭化水素に由来するシグナル(通常7ppm付近)のピーク面積(B)から結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの繰り返し比を求める(A=結晶性ポリアミドの繰り返し数×2+非晶性ポリアミドの繰り返し数×2、B=非晶性ポリアミドの繰り返し数×4)。同じ高収縮性ポリアミド繊維について、質量分析を行うことで、ポリアミドの繰り返し単位の質量数を測定する。求めた繰り返し比とそれぞれのポリアミドの繰り返し単位の質量数の積から重量比率を算出されるものである。
また高収縮性ポリアミド繊維には、必要に応じて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤、発泡剤、帯電防止剤、成形性改良剤、強化剤等を添加してもよい。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維は、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドが互いに相溶している相溶系である。相溶系と非相溶系の判断は、3000倍のTEM観察結果において、直径10nm以上の分散相を有する海島の相分離構造が観察されたときは非相溶系、直径10nm以上の分散相を有する海島の相分離構造が観察されなかったときは相溶系と判定した。相溶系においては、繊維製造の際、紡糸口金吐出孔から溶融ポリマーを吐出した際の糸条の膨らみ(バラス効果)が小さく曳糸性に極めて優れ、これまでにない単糸細繊度化糸条の紡糸が可能となるばかりでなく、高速紡糸が可能となる。一方、非相溶系においては、バラス効果が大きく曳糸性に乏しく安定製糸できないため、単糸細繊度糸化や高速紡糸は実現できない。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維は、沸騰水収縮率(B)が20〜50%である。かかる範囲とすることにより、混繊糸を作製した際には、沸騰水やスチーム等で熱処理した際に収縮特性の異なる繊維との収縮差により糸長差が発現し、嵩高い混繊糸が得られる。また、織物を作製した際には、沸騰水やスチーム等で熱処理した際に十分に収縮しふくらみ感、ソフト感のある高密度な織物を得ることができる。沸騰水収縮率(B)が20%未満の場合、混繊糸を作製した際には、熱処理を施しても糸長差が発現しにくく十分な嵩高性を得ることができず、また、織物を作製した際には、熱処理を施しても十分に収縮されずふくらみ感、ソフト性のある高密度な織物を得ることができない。沸騰水収縮率(B)が50%を超えると、織物を作製した際には、熱処理を施した際に寸法変化が大きくなり過ぎ、織物の密度が過密になり、風合いが硬くなり、ふくらみ感、ソフト感が劣ることに加えて、織物の交錯点での目の詰まりかたに斑が生じ、収縮斑が生じるため、得られる織物の品位が劣る。高収縮性ポリアミド繊維の沸騰水収縮率(B)は好ましくは、25〜45%である。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維は、熱収縮応力(H)が0.15cN/dtex以上である。ここでいう熱収縮応力(H)とは、カネボウエンジニアリング社製KE−2型熱収縮応力測定機を用い、測定する繊維糸条を結び周長16cmのループとし、糸条の繊度(デシテックス)の1/30gの初荷重を掛け、昇温速度100℃/分で測定して、得られた熱応力曲線のピーク値を最大熱応力(cN/dtex)として測定されるものである。熱収縮応力(H)をかかる範囲とすることにより、混繊糸を作製した際には、沸騰水やスチーム等で熱処理した際に収縮特性の異なる繊維をひきつれて収縮することによって、より嵩高い混繊糸が得られる。また、織物を作製した際には、沸騰水やスチーム等で熱処理した際に収縮特性の異なる繊維を糸ひきつれて十分に収縮し、よりふくらみ感、ソフト性のある高密度な織物を得ることができる。0.15cN/dtex未満の場合、混繊糸を作製した際には、熱処理を施しても熱収縮応力(H)が足りず、糸長差が発現しにくく十分な嵩高性を得ることができず、また、織物を作製した際には、熱処理を施しても均一に収縮されず収縮斑を生じ、ふくらみ感、ソフト性のある高密度な織物を得ることができない。高収縮性ポリアミド繊維の熱収縮応力(H)は好ましくは0.20cN/dtex以上、より好ましくは0.25cN/dtex以上である。また、熱収縮応力が高くなりすぎると、織物を作製した際には、収縮するパワーが高くなり過ぎ、織物の交錯点での目が詰まりすぎるため、摩擦に弱くなり、毛羽や毛玉等が発生しやすくなるため、得られる織物の品位が低下する傾向がある。このため高収縮性ポリアミド繊維の熱収縮応力(H)の上限は好ましくは0.50cN/dtexである。
本発明の高収縮性ポリアミドは、沸騰水収縮率(B)と熱収縮応力(H)が前記範囲で収縮特性を発現することが重要である。つまり、沸騰水やスチーム等で熱処理した際の寸法変化を表す沸騰収縮率(B)と収縮するパワー(力)を表す熱収縮応力(H)を同時に満たすことが重要である。かかる範囲とすることにより、混繊糸を作製した際には、沸騰水やスチーム等で熱処理した際に収縮特性の異なる繊維との糸長差が発現し、さらに収縮特性の異なる繊維をひきつれて収縮することによって、より嵩高い混繊糸が得られる。また、織物を作製した際には、沸騰水やスチーム等で熱処理した際に収縮特性の異なる繊維を糸ひきつれて十分に収縮し、よりふくらみ感、ソフト性のある高密度な織物を得ることができる。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維は、総繊度が5〜80dtexであることが好ましい。特に、スポーツウエア、ダウンジャケット、アウターおよびインナー用基布として用いる際の布帛の強度と軽量性の観点から、8〜50dtexがより好ましく、さらに好ましくは8〜40dtexである。また、高収縮性ポリアミド繊維の単糸繊度は、0.9〜3.0dtexであることが好ましい。特に、スポーツウエア、ダウンジャケット、アウターおよびインナー用基布として用いる際の布帛の強度とソフト性の観点から、0.9〜2.0dtexがより好ましく、さらに好ましくは0.9〜1.3dtexである。単糸繊度が3.0dtex以上である場合、布帛が硬くごわついた着心地となってしまうが、単糸繊度が、前記範囲であるとき、沸騰水やスチーム等で熱処理した混繊糸を用いた縫製品あるいは高密度の織編物においても、着用した際に良好なソフト性が得られ快適な着心地が実現できる。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維の強伸度は、衣料用途の場合、通常使用される強伸度であればよく、高次加工の観点から伸度25〜50%、強度2.5cN/dtex以上がより好ましい。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維の長手方向の繊度ムラ(U%)は、衣料用途の織物として使用する場合、布帛のヨコムラ品位の観点から1.2%以下が好ましく、1.0%以下がより好ましい。さらに好ましくは0.8%以下である。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維は、剛直非晶量が20〜45%であることが好ましい。剛直非晶量は、以下のとおり算出される値である。通常のDSC測定から得られた融解熱量と冷結晶化熱量の差(ΔHm−ΔHc)、温度変調DSC測定から得られた比熱差(ΔCp)を用いて、結晶性ポリアミド含有率を100%と仮定し、式(1)、(2)に基づいて、結晶化度(Xc)および可動非晶量(Xma)を求めた。さらに、式(3)より剛直非晶量(Xra)を算出した。なお、剛直非晶量は、温度変調DSCおよびDSCの2回測定の平均値より算出した。
Xc(%)=(ΔHm−ΔHc)/ΔHm0×100 (1)
Xma(%)=ΔCp/ΔCp0×100 (2)
Xra(%)=100−(Xc+Xma) (3)
ここで、ΔHm0およびΔCp0はそれぞれ、高収縮性ポリアミド繊維を構成する結晶性ポリアミドの融解熱量および非晶性ポリアミドのTg前後での比熱差である。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維の剛直非晶量は、繊維構造を形成した際の結晶部の拘束力と、熱処理を施した際に可動性をもつ非晶部の収縮性に依存する。剛直非晶量をかかる範囲とすることにより、所望の沸騰水収縮率(B)と熱収縮応力(H)を発現させることができる。剛直非晶量を20%以上とすることで、結晶部の拘束力が発現し、可動性をもつ非晶部の収縮性を損なうことなく、所望の熱収縮応力(H)を得ることができる。また、45%以下とすることで、結晶部の拘束力が発現し非晶部の収縮するパワー(力)を保持することができ、所望の熱収縮応力(H)を得ることができる。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維の溶融紡糸による製造方法について説明する。
溶融紡糸の溶融部について説明する。結晶性ポリアミドおよび非晶性ポリアミドを溶融するに際し、プレッシャーメルター法あるいはエクストルーダー法が挙げられる。紡糸パックへ流入した結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミド混合ポリマーは、公知の紡糸口金より吐出される。また、溶融温度、紡糸温度(いわゆるポリマー配管や紡糸パックまわりの保温温度)は、ポリアミドの融点+20℃〜融点+60℃が好ましい。
結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドを混合する方法は、結晶性ポリアミドチップと非晶性ポリアミドチップ同士を混合するチップブレンド法、予め溶融混練により結晶性ポリアミドポリマーと非晶性ポリアミドポリマーを混合するマスターチップ法、溶融時にエクストルーダーにより結晶性ポリアミドポリマーと非晶性ポリアミドを混練する溶融混練法が挙げられる。相溶系を形成するためには、より強固に混練できるマスターチップ法、溶融混練法が好ましい。溶融混練では、短軸あるいは複軸のエクストルーダーにより強固に混練することがより好ましい。より具体的には、本発明で使用しうるスクリューエレメントの形状及びその組合せは、混練作用及び剪断作用の強いニーディングエレメント(ニーディングディスク、パドル)を一組以上使用することが好ましく、ポリマー吐出量Q(kg/h)とエクストルーダーの回転数N(rpm)の比であるQ/Nが0.01〜0.03の範囲であることが好ましい。かかる範囲とすることでポリマー同士を強く混練することで相溶系を実現することが可能となる。
結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドを混合するとき、相溶化剤を配合することにより、結晶性ポリアミドおよび非晶性ポリアミドの相溶系をより安定化することができる。相溶化剤の具体的な例としては、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランなどの有機シラン化合物および多官能エポキシ化合物などが挙げられ、これらは2種以上同時に使用することもできる。相溶化剤の配合割合は結晶性ポリアミド100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜5重量部である。0.01重量部以上の添加量においては相溶性向上効果が得られ、10重量部以下は結晶性ポリアミドの溶融粘度の著しい増加がなく流動性を損なわないことから、かかる範囲とすることが好ましい。
本発明の高収縮性ポリアミド繊維の製造方法プロセスについて、紡糸−延伸工程を連続して行う方法(直接紡糸延伸法)、未延伸糸を一旦巻き取った後に延伸する方法(2工程法)、あるいは紡糸速度を3000m/min以上のように高速として実質的に延伸工程を省略する方法(高速紡糸法)等、いずれの方法においても製造可能であるが、高効率生産、製造コストの面から直接紡糸延伸法、高速紡糸法の一工程法が好ましい。
溶融紡糸の直接紡糸延伸法での製造について例示する。
紡糸口金から吐出されたポリアミド糸条は、通常の溶融紡糸と同様、冷却、固化され、給油した後に第一ゴデットローラーにて1500〜4000m/minで引き取り、第一ゴデットローラーと第二ゴデットローラー間にて1.0〜3.0倍で延伸を行った後で、3000m/min以上、好ましくは3500〜4500m/minでパッケージに巻き取る。
この際、第一ゴデットローラーと第二ゴデットローラー間の周速度の比率(延伸倍率)や、巻き取り速度(ワインダー速度)を適切に設計することにより、狙いとするポリアミド糸条の強伸度を得ることが可能となる。
また、第一ゴデットローラーを加熱ローラーとして熱延伸を施すことで、ポリマーの流動性を高くした延伸を実施してもよい。流動性を高めることで剛直非晶量を増加させ、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドを適正な重量比率とすることで熱収縮応力(H)が向上する。
また、第二ゴデットローラーを加熱ローラーとして熱セットを施すことで、糸条の熱収縮応力(H)を適切に設計することができる。延伸後に熱セットを施すことで、可動非結晶量を減少させることで沸騰収縮率(B)を低減させることがでる。熱セット温度は110〜180℃であることが好ましい。
また、巻き取りまでの工程で公知の交絡装置を用い、交絡を施すことも可能である。必要であれば複数回交絡を付与することで交絡数を上げることも可能である。さらには、巻き取り直前に、追加で油剤を付与するのも可能である。
本発明の混繊糸は、本発明の高収縮ポリアミド繊維を少なくとも一部に用いる。高収縮性ポリアミド繊維と収縮特性の異なる繊維と混繊することにより、沸騰水やスチーム等で熱処理した際の収縮特性差により糸長差が発現し、嵩高い混繊糸が得られる。ここでいう異収縮性を示す繊維とは、沸騰水やスチーム等で熱処理した際の沸騰水収縮率(B)の異なる繊維のことである。化学繊維、天然繊維に限定されるものではないが、化学繊維の例としては、ポリカプラミド、ポリヘキサメチレンアジパミドに代表されるポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系繊維やポリプロピレンに代表されるポリオレフィン系繊維などである。衣料用途では、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維が好ましい。スポーツウエア、ダウンジャケット、アウターおよびインナー用途では、ポリアミド系繊維がより好ましい。
また、本発明の高収縮性ポリアミド繊維と収縮特性の異なる繊維との沸騰水収縮率差は、10〜30%であることが、ソフト感とふくらみ感の点で好ましい。さらに好ましくは、沸騰水収縮率差が15〜30%であるとよい。
また、本発明の高収縮性ポリアミド繊維と収縮特性の異なる繊維との熱収縮応力差は、0.10〜0.40cN/dtexであることが、ソフト感とふくらみ感の点で好ましい。さらに好ましくは、熱収縮応力差が0.15〜0.30cN/dtexであるとよい。
本発明の混繊糸は、公知の方法に従い糸加工可能である。混繊法としては、エア混繊、合撚、複合仮撚等が適用可能であるが、エア混繊が混繊の制御をし易くまた製造コストも低く好ましい。エア混繊方法としてはインターレース加工、タスラン加工、旋回気流を利用した加工を挙げることができる。
本発明の織編物は、本発明の高収縮ポリアミド繊維および/又は混繊糸を少なくとも一部に用いる。高収縮性ポリアミド繊維と収縮特性の異なる繊維と製織、製編することにより、沸騰水やスチーム等で熱処理した際に、高収縮ポリアミド繊維が十分に収縮し、収縮特性の異なる繊維をひきつれて収縮し、ふくらみ感、ソフト性のある高密度な織編物が得られる。
本発明の織編物は、公知の方法に従い製織、製編可能である。また、織編物の組織は限定されるものではない。織物の場合、その組織は、使用される用途によって平組織、綾組織、朱子組織やそれらの変化組織、混合組織のいずれであっても構わないが、織物の地合いがしっかりしたふくらみ感のある織物とするには、拘束点の多い平組織、平組識と石目、ナナコ組識を組み合わせたリップストップ組識が好ましい。編物の場合、その組織は、使用される用途によって丸編地の天竺組織、インターロック組織、経編地のハーフ組織、サテン組織、ジャカード組織やそれらの変化組織、混合組織のいずれであっても構わないが、編地が薄くて安定性が有り、かつ、伸長率にも優れる点からシングルトリコット編地のハーフ組織地などが好ましい。
本発明の織編物を一部に用いる縫製品は、その用途を限定されるものでないが、衣料用が好ましく、より好ましくは、ダウンジャケット、ウインドブレイカー、ゴルフウエアー、レインウエアなどに代表されるスポーツ、カジュアルウェアや婦人紳士衣料である。特にスポーツウエア、ダウンジャケットに好適に用いることができる。
次に実施例によって本発明を具体的に説明する。
A.融点
示差走査熱量計(DSC)にTA Instrument社製Q1000を用いUniversal Analysis2000にてデータ処理を実施した。測定は窒素流下(50mL/min)で、温度範囲−50〜300℃、昇温速度10℃/min、試料重量約5g(熱量データは測定後重量で規格化)にて測定を実施した。融解ピークから融点を測定した。
B.相対粘度
試料0.25gを、濃度98質量%の硫酸25mlに対して1g/100mlになるように溶解し、オストワルド型粘度計を用いて25℃での流下時間(T1)を測定した。引き続き、濃度98質量%の硫酸のみの流下時間(T2)を測定した。T2に対するT1の比、すなわちT1/T2を硫酸相対粘度とした。
C.総繊度、単糸繊度
JIS L1013に準じ総繊度および単糸繊度を測定した。繊維試料を、1/30(g)の張力で枠周1.125mの検尺機にて200回巻かせを作成する。105℃で60分乾燥しデシケーターに移し、20℃55RH環境下で30分放冷し、かせの重量を測定して得られた値から10000m当たりの重量を算出し、公定水分率を4.5%として繊維の総繊度を算出した。測定は4回行い、平均値を総繊度とした。また、総繊度をフィラメント数で除した値を単糸繊度とした。
D.沸騰水収縮率(B)
繊維試料を50cmのループにし、繊度の1/30(g)の初荷重を掛けて長さAを求め、次いでフリーにして沸騰水中に30分間浸漬した後、自然乾燥し、再び繊度の1/30(g)の初荷重を掛けて長さBを求め、次の式で沸騰水収縮率(B)を算出した。
沸騰水収縮率(B)(%)=〔(A−B)/A〕×100
E.熱収縮応力(H)
カネボウエンジニアリング社製KE−2型熱収縮応力測定機を用い、測定する繊維糸条を結び周長16cmのループとし、糸条の繊度の1/30gの初荷重を掛け、室温から210℃まで昇温速度100℃/分で測定して、得られた熱応力曲線のピーク値を最大熱応力とした。
F.剛直非晶量
剛直非晶量の測定方法は、通常のDSC測定から得られた融解熱量と冷結晶化熱量の差(ΔHm−ΔHc)、温度変調DSC測定から得られた比熱差(ΔCp)を用いて、結晶性ポリアミド含有率を100%と仮定し、式(1)、(2)に基づいて、結晶化度(Xc)および可動非晶量(Xma)を求めた。さらに、式(3)より剛直非晶量(Xra)を算出した。なお、剛直非晶量は、温度変調DSCおよびDSCの2回測定の平均値より算出した。
Xc(%)=(ΔHm−ΔHc)/ΔHm0×100 (1)
Xma(%)=ΔCp/ΔCp0×100 (2)
Xra(%)=100−(Xc+Xma) (3)
ここで、ΔHm0およびΔCp0はそれぞれ、結晶性ポリアミドの融解熱量および非晶性ポリアミドのTg前後での比熱差である。
また、通常DSCおよび温度変調DSCの測定条件は以下の条件で実施した。
(a)通常DSC
示差走査熱量計(DSC)にTA Instrument社製Q1000を用いUniversal Analysis2000にてデータ処理を実施した。測定は窒素流下(50mL/min)で、温度範囲−50〜300℃、昇温速度10℃/min、試料重量約5g(熱量データは測定後重量で規格化)にて測定を実施した。
(b)温度変調DSC
示差走査熱量計(DSC)にTA Instrument社製Q1000を用いUniversal Analysis2000にてデータ処理を実施した。測定は窒素流下(50mL/min)で、温度範囲−50〜270℃、昇温速度2℃/min、温度変調周期60秒、温度変調振幅±1℃、試料重量約5g(熱量データは測定後重量で規格化)にて測定を実施した。
該手法は、加熱と冷却を一定の周期および振幅で繰り返しながら平均的に昇温して測定する方法であり、全体のDSC シグナル(Total Heat Flow:全熱流)を、ガラス転移などの可逆的な成分(Reversing Heat Flow)と、エンタルピー緩和、硬化反応、脱溶媒などの不可逆的な成分(Nonreversing Heat Flow)とに分離できる。ただし結晶の融解ピークは、可逆成分と、不可逆成分のどちらにも現れる。
G.結晶性ポリアミド、非晶性ポリアミドの重量比率
(a)NMR測定
核磁気共鳴分光法(1H−NMR)を用いテトラメチルシラン(TMS)を内部標準物質(0ppm)として測定した。アミド結合を形成するカルボキシル基のα位の水素に由来するシグナル(通常3ppm付近)のピーク面積(A)と、芳香族炭化水素に由来するシグナル(通常7ppm付近)のピーク面積(B)から結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの繰り返し比を求める(A=結晶性ポリアミドの繰り返し数×2+非晶性ポリアミドの繰り返し数×2、B=非晶性ポリアミドの繰り返し数×4)。
(b)質量分析
マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)、飛行時間型質量分析法(TOF−MS)、飛行時間型マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−TOF−MS)を用い繰り返し単位の質量数を決定した。
(c)重量比率
結晶性ポリアミドの重量比率(%)=(A/2)×(結晶性ポリアミドの質量数)
非晶性ポリアミドの重量比率(%)=(A/2−B/4)×(非晶性ポリアミドの質量数)
H.相溶性
糸条をRuO4蒸気に曝し、糸と包埋樹脂との境界を明確にするためのコートをする。その後樹脂に包埋し、薄切片を製作、リンタングステン酸(PTA)水溶液で15min染色する。以上のようにして得られた観察対象物を、透過型電子顕微鏡(日立製作所製H−7100)を用い、加圧電圧100kVで観察した。観察倍率は3000倍で繊維横断面を観察した。TEM観察結果において、直径10nm以上の分散相を有する海島の相分離構造が観察されたときは非相溶系(×)、直径10nm以上の分散相を有する海島の相分離構造が観察されなかったときは相溶系(○)と判定した。
I.紡糸性
ポリアミド糸条の紡糸性は、8時間の連続紡糸を行い、紡糸時の断糸が3回以上発生した場合は紡糸性不良(×)であると判定し、紡糸時の断糸が2回以下の場合は紡糸性良好(○)と判定した。
J.繊度ムラ(U%)
繊維試料を、Zellweger Uster社製 USTER TESTER IIIで、試料長:250m、測定糸速度:50m/min、測定レンジ(12.5%HI)で1/2Inにて4回測定し、その平均値をU%値とした。
K.混繊糸の評価
(a)鞘糸の製造
相対粘度2.70のポリカプロラクタム(N6)を使用し、口金吐出孔を60個有する紡糸口金から紡糸温度275℃で溶融吐出させた。溶融吐出させた後、糸条を冷却、給油、交絡した後に2560m/minのゴデローラーで引き取り、続いて1.7倍に延伸した後に155℃で熱固定し、巻取速度4000m/minで80dtex60フィラメントのナイロン6糸条を得た。なお、得られたナイロン6糸条は、繊度78.8dtex、強度4.0cN/dtex、伸度59%、沸騰水収縮率10%、熱収縮応力0.09cN/dtexであった。
(b)混繊糸の製造
上記(a)で得られたナイロン6糸条と実施例1〜6および比較例1、5で得られたポリアミド糸条を、インターレース加工機を用いて、交絡圧2.0kg/cm2の交絡処理を施して混繊加工を行い、113dtexの混繊糸を得た。
(c)筒編地作製
混繊糸試料を、筒編機にて度目50となるように調整して筒編地を作製した。
得られた筒編地を80℃で20分精練を行い、続いてKayanol Yellow N5G 1%owf、酢酸を用いてpH4に調整し、100℃で30分間染色を行い、その後、80℃で20分間Fix処理を行い、最後に風合いの改良のため170℃で30秒間熱処理を行った。
(d)筒編地評価
筒編地を熟練技術者(5名)の触感により嵩高感(ふくらみ感)それぞれについて、以下の5段階で実施した。各技術者の評価点の平均値の小数点一桁を四捨五入して、5点を◎、4点を○、3点を△、1〜2点を×とした。
5点:非常に優れる
4点:やや優れる
3点:どちらでもない
2点:やや劣る
1点:劣る 。
L.織物評価
(a)経糸の製造
相対粘度2.70のポリカプロラクタム(N6)を使用し、口金吐出孔を20個有する紡糸口金から紡糸温度275℃で溶融吐出させた。溶融吐出させた後、糸条を冷却、給油、交絡した後に2560m/minのゴデローラーで引き取り、続いて1.7倍に延伸した後に155℃で熱固定し、巻取速度4000m/minで22dtex20フィラメントのナイロン6糸条を得た。
(b)織物の製造
上記(a)で得られたナイロン6糸条を経糸(経糸密度90本/2.54cm)に用い、実施例および比較例で得られたポリアミド糸条を緯糸に用い平織物を製織した(目付け40g/cm2)。
得られた織物を80℃で20分精練を行い、続いてKayanol Yellow N5G 1%owf、酢酸を用いてpH4に調整し、100℃で30分間染色を行い、その後、80℃で20分間Fix処理を行い、最後に風合いの改良のため170℃で30秒間熱処理を行った。
(c)織物評価
織物を熟練技術者(5名)の触感により高密度感、ソフト感およびふくらみ感それぞれについて、以下の5段階で実施した。各技術者の評価点の平均値の小数点一桁を四捨五入して、5点を◎、4点を○、3点を△、1〜2点を×とした。
5点:非常に優れる
4点:やや優れる
3点:どちらでもない
2点:やや劣る
1点:劣る 。
[実施例1]
結晶性ポリアミドとしてポリカプロラクタム(N6)(相対粘度ηr:2.62、融点222℃)と、非結晶性ポリアミドとしてイソフタル酸(6I)/テレフタル酸(6T)/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体でイソフタル酸/テレフタル酸の共重合比率が7/3の共重合体を、結晶性ポリアミド/非結晶性ポリアミドの重量比が90/10で2軸エクストルーダーを用い275℃でQ/N=0.017[Qは吐出量(kg/h)、Nはエクストルーダーの回転数(rpm)]にて溶融混練し、26孔、丸孔の吐出孔を有する紡糸口金を用いて溶融吐出した(紡糸温度275℃)。紡糸口金から吐出された糸条は、冷却固化し、給油、交絡後、非加熱の第一ゴデッドローラー(延伸温度:室温)で引き取り、加熱第二ゴデットローラー(熱セット温度:150℃)間で2.4倍に延伸を行なった後で、巻き取り速度(ワインダー速度)4000m/minでパッケージに巻き取りをおこない、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条を得た。
[実施例2]
結晶性ポリアミド/非結晶性ポリアミドの重量比を80/20とし、80℃の延伸温度にて第一ゴデットローラーで引き取ったこと以外は、実施例1と同様に紡糸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条を得た。
[実施例3]
結晶性ポリアミド/非結晶性ポリアミドの重量比を70/30とし、80℃の延伸温度にて第一ゴデットローラーで引き取ったこと以外は、実施例1と同様に紡糸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条を得た。
[実施例4]
結晶性ポリアミド/非結晶性ポリアミドの重量比を50/50とし、吐出量を変更し、給油、交絡をおこなった後、120℃の延伸温度にて第一ゴデッドローラーで引き取ったこと以外は、実施例1と同様の紡糸条件において紡糸を実施し、44dtex26フィラメントの原糸を得た。
[実施例5]
結晶性ポリアミドとして、ポリヘキサメチレンアジパミド(N66)(相対粘度ηr:2.82、融点263℃)を用い、非結晶性ポリアミドとして、イソフタル酸(6I)/テレフタル酸(6T)/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体でイソフタル酸/テレフタル酸の重量比が7/3の共重合体を用い、結晶性ポリアミド/非結晶性ポリアミドの重量比を70/30とし、紡糸温度295℃、吐出量を変更し、給油、交絡をおこなった後、80℃の延伸温度にて第一ゴデッドローラーと加熱第二ゴデッドローラー(熱セット温度:150℃)との間で2.8倍に延伸して引き取ったこと以外は、実施例1と同様の紡糸条件において紡糸を実施し、44dtex26フィラメントの原糸を得た。
[実施例6]
結晶性ポリアミドとして、ポリヘキサメチレンセバシミド(N610)(相対粘度ηr:2.82、融点219℃)を用い、紡糸温度を275℃に変更したこと以外は、実施例5と同様の紡糸条件において紡糸を実施し、44dtex26フィラメントのポリアミド糸条を得た。
[実施例7]
結晶性ポリアミドとしてポリカプロラクタム(相対粘度ηr:2.62、融点222℃)を用い、非結晶性ポリアミドとしてイソフタル酸(6I)/テレフタル酸(6T)/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体でイソフタル酸/テレフタル酸の共重合比率が7/3の共重合体を用い、結晶性ポリアミド/非結晶性ポリアミドの重量比が60/40、相溶化剤(多官能エポキシ化合物:ビスフェノールF型エポキシ樹脂)を2重量%添加して、2軸エクストルーダーを用い275℃でQ/N=0.017[Qは吐出量(kg/h)、Nはエクストルーダーの回転数(rpm)]にて溶融混練しマスターチップを作製した。得られたマスターチップを、26孔、丸孔の吐出孔を有する紡糸口金を用いて溶融吐出した(紡糸温度275℃)。紡糸口金から吐出された糸条は、冷却固化し、給油の後、800m/minの引き取り速度で一旦巻き取り未延伸糸を得た。続いて、3.6倍で延伸し、熱板熱固定(熱セット温度:170℃)の後、600m/minでパッケージに巻き取りを行い、66dtex26フィラメントのポリアミド糸条を2工程法で得た。
[実施例8]
吐出量を変更し、10孔、丸孔の吐出孔を有する紡糸口金、延伸倍率を3.8倍に変更した以外は実施例7と同様の紡糸条件において紡糸、延伸を実施し、33dtex10フィラメントのポリアミド糸条を得た。
[実施例9]
吐出量を変更し、延伸倍率を3.8倍に変更した以外は実施例7と同様の紡糸条件において紡糸、延伸を実施し、88dtex26フィラメントのポリアミド糸条を得た。
[実施例10]
結晶性ポリアミドとして、ポリカプロラクタム(相対粘度ηr:2.62)を用い、非結晶性ポリアミドとしてテレフタル酸(6T)/2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン重縮合体を用い、結晶性ポリアミド/非結晶性ポリアミドの重量比が60/40とした以外は実施例7と同様の紡糸条件において紡糸、延伸を実施し、66dtex26フィラメントのポリアミド糸条を得た。
[実施例11]
140℃の延伸温度にて第一ゴデッドローラーで引き取ったこと、加熱第二ゴデットローラー(熱セット温度:150℃)間で1.3倍に延伸を行なった後で、巻き取り速度(ワインダー速度)4400m/minでパッケージに巻き取りをおこなったこと以外は、実施例4と同様の紡糸条件において紡糸を実施し、44dtex26フィラメントの原糸を得た。
[比較例1]
結晶性ポリアミド/非結晶性ポリアミドの重量比を95/5とした以外は、実施例1と同様の紡糸条件において紡糸を実施し、33dtex26フィラメントのポリアミド糸条を得た。
[比較例2]
結晶性ポリアミドとして、ポリカプロラクタムとヘキサメチレンアジパミドの共重合体でポリカプロラクタムとヘキサメチレンアジパミドの共重合比率が85/15の共重合体(相対粘度ηr:2.69、融点198℃)を用い、非結晶ポリアミドとしてイソフタル酸(6I)/テレフタル酸(6T)/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体でイソフタル酸/テレフタル酸の共重合比率が7/3の共重合体を用い、結晶性ポリアミド/非結晶性ポリアミドの重量比が70/30、2軸エクストルーダーを用い275℃でQ/N=0.017[Qは吐出量(kg/h)、Nはエクストルーダーの回転数(rpm)]にて溶融混練し、マスターチップを作製した。得られたマスターチップを吐出量を変更して紡糸した以外は、実施例7と同様の紡糸条件において紡糸、延伸を実施し、44dtex26フィラメントのポリアミド糸条を得た。
[比較例3]
結晶性ポリアミドとして、ポリカプロラクタムとヘキサメチレンアジパミドの共重合体でポリカプロラクタムとヘキサメチレンアジパミドの共重合比率が85/15の共重合体(相対粘度ηr:2.69、融点:198℃)を用い、非結晶性ポリアミドとして、イソフタル酸(6I)/テレフタル酸(6T)/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体でイソフタル酸/テレフタル酸の共重合比率が7/3の共重合体を用い、結晶性ポリアミド/非結晶性ポリアミドの重量比が70/30、相溶化剤(多官能エポキシ化合物:ビスフェノールF型エポキシ樹脂)を2重量%添加、吐出量を変更した以外は、実施例5と同様の紡糸条件において紡糸を実施し、88dtex26フィラメントのポリアミド糸条を得た。
[比較例4]
結晶性ポリアミドとして、ポリカプロラクタムとヘキサメチレンアジパミドの共重合体でポリカプロラクタムとヘキサメチレンアジパミドの共重合比率が85/15の共重合体(相対粘度ηr:2.69、融点:198℃)を用い、非晶性ポリアミドとして、イソフタル酸(6I)/テレフタル酸(6T)/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体でイソフタル酸/テレフタル酸の共重合比率が7/3の共重合体を用い、結晶性ポリアミド/非結晶性ポリアミドの重量比が70/30とした以外は、実施例5と同様の紡糸条件において紡糸を実施し、44dtex26フィラメントのポリアミド糸条を得ようとした。
[比較例5]
結晶性ポリアミドとして、ポリカプロラクタム(相対粘度ηr:2.62、融点:222℃)を用い、非結晶性ポリアミドとして、イソフタル酸(6I)/テレフタル酸(6T)/ヘキサメチレンジアミンの重縮合体でイソフタル酸/テレフタル酸の共重合比率が7/3の共重合体を用い、結晶性ポリアミド/非結晶性ポリアミドの重量比が30/70とした以外は、実施例4と同様の紡糸条件において紡糸を実施し、44dtex26フィラメントのポリアミド糸条を得た。
[比較例6]
結晶性ポリアミドとして、ポリカプロラクタム(相対粘度ηr:2.62、融点:222℃)と、ナイロンMXD6(三菱ガス化学製、相対粘度ηr:2.70、融点:237℃)を、ポリカプロラクタム/ナイロンMXD6重量比が50/50とした以外は、実施例4と同様の紡糸条件において紡糸を実施し、44dtex26フィラメントのポリアミド糸条を得た。
表1に実施例1〜11、比較例1〜6のポリマー組成と製糸条件、表2に原糸特性と織物評価結果、表3に原糸特性と混繊糸評価結果を示した。
Figure 2016104278
Figure 2016104278
Figure 2016104278
表2の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜11のポリアミド糸条を一部(緯糸)に用いた織物は、熱処理工程を経ることで、経糸と緯糸の収縮差によって緯糸が収縮する作用と、緯糸が経糸をひきつれて収縮する作用の相乗効果により優れた収縮を発現し、衣料用に好適なふくらみ感、ソフト感のある高密度な織物が得られた。
表3の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜6のポリアミド糸条を一部に用いた混繊糸は、熱処理工程を経ることで、芯糸と鞘糸の収縮差によって芯糸が収縮する作用と、芯糸が鞘糸をひきつれて収縮する作用の相乗効果により優れた収縮を発現し、嵩高い混繊糸が得られた。
実施例1〜4では、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの重量比を適切に調整し相溶させることによって、適切な沸騰水収縮率(B)と熱収縮応力(H)とすることにより、優れた嵩高性のある混繊糸が得られた。また、衣料用に好適なふくらみ感、ソフト感のある高密度な織物が得られることがわかる。
実施例7〜9では、適切な総繊度および単糸繊度とすることによって、衣料用に好適なふくらみ感、ソフト感のある高密度な織物が得られることがわかる。
また、本発明の実施例1〜11のポリアミド糸条は、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの重量比を適切に調整したり、さらに相溶化剤を用いるなど相溶系とすることによって、単糸細繊度化と高速製糸を実現した。また、得られたポリアミド糸条は、U%が小さく繊度ムラが小さいことがわかる。
比較例1では、非晶性ポリアミド重量比が少ないために、熱収縮応力(H)と沸騰水収縮率(B)いずれも低く、嵩高性に劣った混繊糸であった。また、十分な密度も得られず、ふくらみ感に劣った織物であった。
比較例2、3では、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの固化速度に大きな差異があるため、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの相溶性が乏しく、熱収縮応力(H)が低く、十分な密度も得られず、ふくらみ感に劣った織物であった。特に、総繊度の太い比較例3の織物はソフト感にも劣っていた。また、得られたポリアミド糸条は、U%が高く繊度ムラが認められた。
比較例4では、単糸繊度の細いポリアミド糸条の高速製糸を試みたが、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドの相溶性が乏しいために、紡糸口金より吐出した際の糸条の膨らみ(バラス効果)が大きく、曳糸性に非常に乏しく安定製糸できず、ポリアミド糸条を採取することができなかった。
比較例5では、非晶性ポリアミド重量比が多いために、沸騰水収縮率(B)が高く、熱処理工程で芯糸が収縮しすぎて衣料用に不適な嵩高性の混繊糸であった。また、熱処理工程で緯糸が収縮しすぎて密度が過密になり、ふくらみ感、ソフト感に劣っていた。
比較例6では、ポリアミド糸条が、2種類の結晶性ポリアミドから構成されるため、熱収縮応力(H)が低く、十分な密度も得られず、ふくらみ感に劣った織物であった。

Claims (5)

  1. 結晶性ポリアミドと、非晶性ポリアミドからなる繊維であって、結晶性ポリアミドと非晶性ポリアミドが相溶し、それぞれの重量比率が結晶性ポリアミド/非晶性ポリアミド=90/10〜50/50、沸騰水収縮率(B)が20〜50%、熱収縮応力(H)が0.15cN/dtex以上であることを特徴とする高収縮性ポリアミド繊維。
  2. 総繊度が5〜80dtexであり単糸繊度が0.9〜3.0dtexであることを特徴とする請求項1記載の高収縮性ポリアミド繊維。
  3. 剛直非晶量が20〜45%であることを特徴とする請求項1または2記載の高収縮性ポリアミド繊維。
  4. 混繊糸の一部に請求項1〜3いずれかに記載の高収縮性ポリアミド繊維を用いることを特徴とする混繊糸。
  5. 織編物の一部に請求項1〜3いずれかに記載の高収縮性ポリアミド繊維および/または請求項4記載の混繊糸を用いることを特徴とする織編物。
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