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JPWO2015008708A1 - 電子デバイス - Google Patents

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JPWO2015008708A1
JPWO2015008708A1 JP2015527281A JP2015527281A JPWO2015008708A1 JP WO2015008708 A1 JPWO2015008708 A1 JP WO2015008708A1 JP 2015527281 A JP2015527281 A JP 2015527281A JP 2015527281 A JP2015527281 A JP 2015527281A JP WO2015008708 A1 JPWO2015008708 A1 JP WO2015008708A1
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昌二 西尾
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Abstract

高温高湿条件下であってもガスバリア性フィルムの密着性が維持され、高いバリア性が維持される電子デバイスを提供すること。基材と、ガスバリア性能を有する第1の層と、ポリシラザン化合物を含む塗布液を塗布して得られた塗膜を改質処理して得られる第2の層と、をこの順に含むガスバリア性フィルムを有し、前記第2の層の基材と相対する最表面〜35nmの領域のケイ素、酸素および窒素の合計に対する平均酸素含有比率が最表面から35nm以上の領域のケイ素、酸素および窒素の合計に対する平均酸素含有比率より大きい、電子デバイス。

Description

本発明は電子デバイスに関する。
水蒸気ガスや酸素ガスの透過を遮断する性質を有するいわゆるガスバリア性フィルムが従来から検討されている。
近年、軽量化、大型化という要求に加え、長期信頼性や形状の自由度が高いこと、曲面表示が可能であること等の要求が加わり、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって透明プラスチック等のフィルム基材が採用され始めてきている。
しかしながら、透明プラスチック等のフィルム基材は一般的なガラス基材に対しガスバリア性が劣るという問題がある。このため、水蒸気や空気が浸透し、例えば電子デバイス内の機能を劣化させてしまうという課題がある。
プラスチックフィルムを基材としたフィルムのガスバリア機能を高めるために、スパッタリングやプラズマCVD法等の気相成膜方法によって基材上に無機膜を成膜することが行われている(例えば、特開平8−165368号公報参照)。
かような無機膜としては、酸化ケイ素膜や酸化アルミニウム膜が知られているが、それらの技術ではせいぜい1g/m/day程度の水蒸気バリア性を有するに過ぎない。近年では、液晶ディスプレイの大型化、高精細ディスプレイ等の開発によりフィルム基板へのガスバリア性能について水蒸気バリアで0.1g/m/day程度、更に有機エレクトロルミネッセンスにおいてはさらなる水蒸気バリア性能が要望されていることが現状である。
ガスバリア性能の向上を目的として、米国特許第5,260,095号明細書には、ポリマー多層(Polymer Multilayer、PML)技法が開示されている。この技法では、ポリマーの層と酸化アルミニウムの層とから成るコーティングをフレキシブル基板に施してその基板をシールする。ポリマーの層および酸化アルミニウムの層の双方とも堆積工程においては、ウエブ処理装置を使って極めて高速で操作することができる。水及び酸素の浸透性に対する耐性は、未コートのPET膜に比して3ないし4桁まで改善されることが開示されている。かかるポリマー多層技法では、ポリマー層が、隣接するセラミック層内のあらゆる欠陥を覆い隠して、バリア層内のこれらの欠陥によって作られ得るチャンネルを通る酸素及び/又は水蒸気の拡散速度を低下させるように働くことが示唆されている。
しかしながら、ポリマーの層と酸化アルミニウムの層との境界面は隣接する材料の不相溶性のために一般に弱く、従ってこれらの層は剥離し易く長期保存でガスバリア性が劣化してしまうという問題があった。
一方、基材上の無機膜の形成に上記気相法ではなく、ポリシラザンを含む塗布液を用いたウェット法によりガスバリア層を形成する技術がある(例えば、特開2007−237588号公報、国際公開第2011/007543号(米国特許出願第2012/107607号明細書))。特開2007−237588号公報では、基材上にポリシラザン含有液を塗布した塗膜に酸素ガス存在下、プラズマ照射処理を施して二酸化ケイ素に転化している。国際公開第2011/007543号では、かようなポリシラザンのシリカ転化によって得られた二酸化ケイ素膜では、ガスバリア性能が不十分であるとして、ポリシラザン膜に酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下でエネルギー線照射を行い、窒素高濃度領域を有する二酸化ケイ素膜を形成している。
しかしながら、上記記載のガスバリア性フィルムを電子デバイスに適用した場合、高温高湿条件下でガスバリア性フィルムの剥離が起きる、すなわち、ガスバリア性フィルムと下層との密着性の低下という問題があった。
そこで本発明は、高温高湿条件下であってもガスバリア性フィルムの密着性が維持され、高いバリア性が維持される電子デバイスを提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、長期間使用後であってもデバイス性能が維持される電子デバイスを提供することを目的とする。
本発明は、基材と、ガスバリア性能を有する第1の層と、ポリシラザン化合物を含む塗布液を塗布して得られた塗膜を改質処理して得られる第2の層と、をこの順に含むガスバリア性フィルムを有し、前記第2の層の基材と相対する最表面〜35nmの領域の平均酸素含有比率が最表面から35nm以上の領域(最表面〜35nmの領域を除いた領域)の平均酸素含有比率より大きい、電子デバイスである。
本発明に係る第1の層の形成に用いられる製造装置の一例を示す模式図である。1はガスバリア性フィルム、2は基材、3は第1の層、31は製造装置、32は送り出しローラー、33、34、35、および36は搬送ローラー、39、および40は成膜ローラー、41はガス供給管、42はプラズマ発生用電源、43、および44は磁場発生装置、45は巻取りローラー、AおよびBは炭素分布曲線の極大値が形成される地点、C1、C2、C3およびC4は、炭素分布曲線の極小値が形成される地点を示す。 本発明に係るガスバリア性フィルムを封止フィルムとして用いた電子デバイスである有機ELパネルの一例である。4は透明電極、5は有機EL素子、6は接着剤層、7は対向フィルム、9は有機ELパネル、10はガスバリア性フィルムを示す。 実施例であるガスバリア性フィルムNo.4における第2の層の膜厚組成を示す図である。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
本発明は、基材と、ガスバリア性能を有する第1の層と、ポリシラザン化合物を含む塗布液を塗布して得られた塗膜を改質処理して得られる第2の層と、をこの順に含むガスバリア性フィルムを有し、前記第2の層の基材と相対する最表面〜35nmの領域のケイ素、酸素および窒素の合計に対する平均酸素含有比率が最表面から35nm以上の領域のケイ素、酸素および窒素の合計に対する平均酸素含有比率より大きい、電子デバイスである。
上述したように、国際公開第2011/007543号には、基材上に形成されたポリシラザン膜に酸素または水蒸気を実質的に含まない雰囲気下でエネルギー線照射を行い、このポリシラザン膜の少なくとも一部を変性して、窒素高濃度領域を形成することが記載されている。同時に基材側からの水分持ち込みと推定される酸化挙動が起き、バリア層下の内部は酸化膜(酸化ケイ素層)に変化し、シリコン含有膜が窒素高濃度領域と酸化ケイ素領域とから構成されることが記載されている(国際公開第2011/007543号、段落「0075」)。
また、国際公開第2011/007543号の実施例10には、アルミナ蒸着PETフィルム上に窒素高濃度領域を含むシリコン含有膜を形成させる形態が記載されている。そして、基材とシリコン含有膜との間に蒸着膜を形成させた場合、シリコン含有膜が蒸着膜のピンホールなどの欠陥部位を補填することができ、シリコン含有膜若しくは蒸着膜担体よりもさらに高いガスバリア性を発現することができるとも記載されている(国際公開第2011/007543号、段落「0146」)。
しかしながら、上記国際公開第2011/007543号に記載のガスバリア性フィルムを用いた電子デバイスでは、特に高温高湿条件下での保存によって、水蒸気等の侵入に起因する劣化が起こることを本発明者は見出した。
国際公開第2011/007543号に記載のガスバリア性フィルムでは、表面側の窒素高濃度領域の酸素元素含有量が少なく、深部になるにつれ酸素元素の含有量が多くなる(国際公開第2011/007543号、図4等参照)。高温高湿条件下での電子デバイスの劣化の原因は、このような膜組成によって、下層との密着性が劣化することが起因していると推定される。
本発明の構成によれば、高温高湿条件下であってもガスバリア性フィルムのガスバリア性能が維持され、電子デバイスの水蒸気等に起因する劣化を抑制することができる。また、長期間使用後であっても高いガスバリア性能が維持されることから、デバイス性能が維持される。
本発明がかような効果を奏するメカニズムは以下のように推定される。
本発明の電子デバイスに用いられるガスバリア性フィルムは、基材と第2の層との間にガスバリア性能を有する第1の層を有する。該第1の層の水蒸気透過率は、好適には0.1g/m・day以下である。このように水蒸気透過率の低い第1の層を第2の層の下層に設けることで、基材側から透過してきた水蒸気が第2の層に到達しないようにしている。これは、国際公開第2011/007543号段落「0075」に記載のように基材側からの水蒸気透過を許容する国際公開第2011/007543号とは相異なる技術的手段である。かような技術的手段は、本発明者が、上述のように基材側の領域の酸素含有量が増加するにつれ、高温高湿条件下での電子デバイスの劣化が増加するという課題を見出したことによる。
第2の層に水蒸気が到達しにくいことで、基材側の領域においてポリシラザンに酸素が結合して形成されるシラノールの形成が抑制され、第2の層と第1の層との密着性が向上すると推定される。このため、ガスバリア性フィルムの剥がれに起因する電子デバイスの劣化が抑制されると考えられる。
以下、本発明の電子デバイスを構成するガスバリア性フィルムについて説明する。
本発明の電子デバイスに用いられるガスバリア性フィルムにおいては、基材と、第1の層と、第2の層と、をこの順に有する形態であるが、好適な一実施形態は、基材と、第1の層と、第1の層上に(直接)形成されてなる第2の層と、をこの順に有する形態である。
また、第1の層、および第2の層を有するガスバリア性ユニットは、基材の一方の表面上に形成されていてもよく、基材の両方の表面上に形成されていてもよい。また、該ガスバリア性ユニットは、ガスバリア性を必ずしも有しない層をさらに含んでいてもよい。
また、本発明の電子デバイスに用いられるガスバリア性フィルムは、後述の実施例に記載の方法により測定された透過水分量が1×10−3g/(m・24h)以下であることが好ましく、1×10−4g/(m・24h)以下であることがより好ましい。なお、ガスバリア性フィルムにおける透過水分量は低ければ低いほど好ましいため、その下限は規定されないが、通常は1×10−7g/(m・24h)以上程度となる。
[基材]
ガスバリア性フィルムに用いられる基材としては、例えば、シリコン等の金属基板、ガラス基板、セラミックス基板、プラスチックフィルム等が挙げられるが、好ましくはプラスチックフィルムが用いられる。用いられるプラスチックフィルムは、バリア層、ハードコート層等を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
本発明の電子デバイスに用いるガスバリア性フィルムの基材としては耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、線膨張係数が15体積ppm/K以上100体積ppm/K以下で、かつガラス転移温度(Tg)が100℃以上300℃以下の樹脂基材が使用される。該基材は、電子部品用途、ディスプレイ用積層フィルムとしての必要条件を満たしている。具体例としては、特開2013−226757号公報 段落「0115」〜「0116」に記載があるものが挙げられる。
ガスバリア性フィルムは、有機EL素子等の電子デバイスとして利用されることから、プラスチックフィルムは透明であることが好ましい。好適な範囲および測定方法等は特開2013−226757号公報の段落「0120」および「0121」に記載のとおりである。
ガスバリア性フィルムに用いられるプラスチックフィルムの厚みは、用途によって適宜選択されるため特に制限がないが、典型的には1〜800μmであり、好ましくは10〜200μmである。これらのプラスチックフィルムは、透明導電層、プライマー層等の機能層を有していてもよい。機能層については、上述したもののほか、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に記載されているものを好ましく採用できる。
基材は、表面の平滑性が高いものが好ましい。表面の平滑性としては、平均表面粗さ(Ra)が2nm以下であるものが好ましい。下限は特にないが、実用上、0.01nm以上である。必要に応じて、基材の両面、少なくともバリア層を設ける側を研摩し、平滑性を向上させておいてもよい。
また、上記に挙げた樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明で用いられる基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。具体的な製造方法等は、特開2013−226757号公報 段落「0125」に記載のとおりである。
基材の少なくともバリア層を設ける側には、密着性向上のための公知の種々の処理、例えばコロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、またはプラズマ処理等を行うことが好ましく、必要に応じて上記処理を組み合わせて行うことがより好ましい。
[第1の層]
第1の層はガスバリア性能を有する。ここで、ガスバリア性能は限定されるものではないが、第1の層の水蒸気透過率が0.1g/m・day以下であることが好ましい。第1の層の水蒸気透過率が0.1g/m・day以下であることで、第2の層が、基材と相対する最表面〜35nmの領域の平均酸素含有比率が最表面から35nm以上の領域の平均酸素含有比率より大きいという構成を満たすことができる。また、第2層の欠陥補修の効果という観点からは、より好ましくは、第1の層の水蒸気透過率は、0.01g/m・day以下である。ここで、第1の層の水蒸気透過率は、基材上に第1の層を形成させた積層体で算出した際に、後述の実施例に記載の方法により測定された水蒸気透過率から、後述の実施例に記載の方法により測定された基材の水蒸気透過率を引いたものとする。なお、第1の層の水蒸気透過率は低ければ低いほど本発明の効果が発揮されるので好ましいが、通常0.00001g/m・day以上である。
上記水蒸気透過率を満たす第1の層は、構成する材料、製造方法、製造条件などを適宜選択することによって、得ることができる。
第1の層の1層当たりの厚みは特に限定されないが、ガスバリア性能および欠陥の生じやすさという観点から、通常、30〜500nmの範囲内であり、好ましくは50〜300nmである。第1の層は、複数のサブレイヤーからなる積層構造であってもよい。この場合サブレイヤーの層数は、2〜10層であることが好ましい。また、各サブレイヤーが同じ組成であっても異なる組成であってもよい。なお、上記好適な膜厚の範囲は、複数のサブレイヤーから第1の層が構成される場合、複数のサブレイヤーの合計である。ここで、第1の層の厚みは、製造時には製造膜厚、製造後には下記透過型顕微鏡(TEM)観察による膜厚測定法により測定された値を採用する。
<透過型顕微鏡(TEM)観察による膜厚測定法>
透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により、各層の膜厚を10箇所測定し、平均した値を膜厚とした。
(膜厚方向の断面のTEM画像)
断面TEM観察として、観察試料を以下のFIB加工装置により薄片作成後、TEM観察を行った。
(FIB加工)
装置:SII製SMI2050
加工イオン:(Ga 30kV)
試料厚み:100nm〜200nm(TEM観察)
装置:日本電子製JEM2000FX(加速電圧:200kV)
第1の層は、ガスバリア性能の観点から、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素(SiON)、酸炭化ケイ素(SiOC)、炭化ケイ素、酸窒化炭化ケイ素(SiONC)、およびアルミニウムシリケート(SiAlO)からなる群から含まれる少なくとも1種を含むことが好ましく、酸窒化ケイ素(SiON)、酸炭化ケイ素(SiOC)およびアルミニウムシリケート(SiAlO)からなる群から含まれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。中でも、高温高湿条件下での第2の層との密着性が向上し、ガスバリア性能の低下が抑制されることから、第1の層は酸炭化ケイ素を含むことが好ましい。酸炭化ケイ素は、炭素原子があるため第2層の元素の間で有機結合が形成されるため、第2の層との密着性が向上するものと考えられる。
第1の層の形成方法は特に限定されないが、高いガスバリア性能が得られることから、蒸着法により形成することが好ましい。蒸着法としては、化学蒸着法および物理蒸着法がある。
化学蒸着法(化学気相成長法、Chemical Vapor Deposition)は、基材上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基板表面或いは気相での化学反応により膜を堆積する方法である。また、化学反応を活性化する目的で、プラズマなどを発生させる方法などがあり、熱CVD法、触媒化学気相成長法、光CVD法、真空プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法など公知のCVD方式等が挙げられる。特に限定されるものではないが、製膜速度や処理面積の観点から、プラズマCVD法を適用することが好ましい。
真空プラズマCVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法により得られるガスバリア層は、原材料(原料ともいう)である金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力などの条件を選ぶことで、目的の化合物を製造できるため好ましい。
例えば、ケイ素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いれば、ケイ素酸化物が生成する。これはプラズマ空間内では非常に活性な荷電粒子・活性ラジカルが高密度で存在するため、プラズマ空間内では多段階の化学反応が非常に高速に促進され、プラズマ空間内に存在する元素は熱力学的に安定な化合物へと非常な短時間で変換されるためである。
原料化合物として用いることができるケイ素化合物としては、米国特許出願公開第2013/236710号公報[0056]に記載の化合物など、従来公知の化合物を用いることができる。また、後述の好適な形態である(i)〜(ii)の要件を満たす層の形成の際に用いられる原料化合物であるケイ素化合物が挙げられる。
また、これらの金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスとしては、米国特許出願公開第2013/236710号公報[0063]に記載のガスなどが挙げられる。また、上記分解ガスを、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスと混合してもよい。
原料化合物を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで所望のバリア層を得ることができる。
真空プラズマCVD法に用いられる装置としては、特開2012−131194号公報の図1のような装置が挙げられる。
物理蒸着法(Physical Vapor Deposition)は、気相中で物質の表面に物理的手法により目的とする物質の薄膜を堆積する方法であり、蒸発系およびスパッタ系に大別することができるが、スパッタ系を用いることが好ましい。スパッタ法による成膜は、2極スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、中間的な周波数領域を用いたデュアルマグネトロン(DMS)スパッタリング、イオンビームスパッタリング、ECRスパッタリングなどを用いることができる。また、ターゲットの印加方式はターゲット種に応じて適宜選択され、DC(直流)スパッタリング、およびRF(高周波)スパッタリングのいずれを用いてもよい。Siの酸化膜、窒化膜、窒酸化膜または炭酸化膜等のスパッタリングを行なう際には、そのターゲットにSiを用いることができる。不活性ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe等を用いることができ、Arを用いることが好ましい。さらに、プロセスガス中に酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素を導入することで、Siの酸化物、窒化物、窒酸化物、炭酸化物等の薄膜を作ることができる。RF(高周波)スパッタ法で成膜する場合は、SiOやSiなどのセラミックターゲットを用いることもできる。スパッタ法における成膜条件としては、印加電力、放電電流、放電電圧、時間等が挙げられるが、これらは、スパッタ装置や、膜の材料、膜厚等に応じて適宜選択できる。その他、蒸発系の物理蒸着法である、真空蒸着法(加熱方法:抵抗加熱、電子ビーム、高周波誘導、レーザー等)、分子線蒸着法(MBE)、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法などを用いてもよい。
物理蒸着法としては反応性スパッタ法を用いることが好ましい。反応性スパッタ法は、スパッタする際に酸素や窒素などの反応ガスを、チャンバー内に流すことでターゲット構成物質に含まれる成分とガスとの生成物質を薄膜として堆積させる技術である。反応性スパッタ法によれば、膜組成が均一となるため、ガスバリア性が高くなるため好ましい。不活性ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe等を用いることができ、Arを用いることが好ましい。さらに、反応ガスとしては、酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、アンモニア、HO、アセチレンを用いることができる。
第1の層は、ロールツーロール方式の成膜装置を用いて形成してもよい。第1の層をロールツーロール方式で生産する場合、継続してロールツーロール方式でフィルムを製造できるため、第1の層をロールツーロール方式の成膜装置を用いて形成させると生産性が向上し、好ましい。ロールツーロール方式のプラズマCVD装置としては下記で説明する図1に記載の装置が挙げられ、また、ロールツーロール方式のスパッタリング装置は、特開2012−237047号(マグネトロンスパッタリングカソードを備えたロールツーロール方式のスパッタリング装置)、特開2006−334909号図5に記載の装置等、公知の装置を用いることができる。
(第1の層の形成に好適な装置および好適な膜組成)
以下、第1の層の形成に好適な装置である図1に記載の装置について説明する。図1に記載の装置は、少なくとも一対の成膜ローラーと、プラズマ電源とを備え、かつ前記一対の成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置である。なお、図1は、第1の層を製造するために好適に利用することが可能な製造装置の一例を示す模式図である。また、以下の説明および図面中、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1に示す製造装置31は、送り出しローラー32と、搬送ローラー33、34、35、36と、成膜ローラー39、40と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源42と、成膜ローラー39および40の内部に設置された磁場発生装置43、44と、巻取りローラー45とを備えている。また、このような製造装置においては、少なくとも成膜ローラー39、40と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源42と、磁場発生装置43、44とが図示を省略した真空チャンバ内に配置されている。さらに、このような製造装置31において前記真空チャンバは図示を省略した真空ポンプに接続されており、かかる真空ポンプにより真空チャンバ内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
このような製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39と成膜ローラー40)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれプラズマ発生用電源42に接続されている。そのため、このような製造装置31においては、プラズマ発生用電源42により電力を供給することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の空間に放電することが可能であり、これにより成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の空間にプラズマを発生させることができる。なお、このように、成膜ローラー39と成膜ローラー40とを電極としても利用する場合には、電極としても利用可能なようにその材質や設計を適宜変更すればよい。また、このような製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39および40)は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39および40)を配置することにより、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となる。そして、このような製造装置によれば、CVD法により基材2の表面上に第1の層3を形成することが可能であり、成膜ローラー39上において基材2の表面上に第1の層成分を堆積させつつ、さらに成膜ローラー40上においても基材2の表面上に第1の層成分を堆積させることもできるため、基材2の表面上に第1の層を効率よく形成することができる。
成膜ローラー39および成膜ローラー40の内部には、成膜ローラーが回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置43および44がそれぞれ設けられている。
成膜ローラー39および成膜ローラー40にそれぞれ設けられた磁場発生装置43および44は、一方の成膜ローラー39に設けられた磁場発生装置43と他方の成膜ローラー40に設けられた磁場発生装置44との間で磁力線がまたがらず、それぞれの磁場発生装置43、44がほぼ閉じた磁気回路を形成するように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置43、44を設けることにより、各成膜ローラー39、40の対向側表面付近に磁力線が膨らんだ磁場の形成を促進することができ、その膨出部にプラズマが収束され易くなるため、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
また、成膜ローラー39および成膜ローラー40にそれぞれ設けられた磁場発生装置43および44は、それぞれローラー軸方向に長いレーストラック状の磁極を備え、一方の磁場発生装置43と他方の磁場発生装置44とは向かい合う磁極が同一極性となるように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置43、44を設けることにより、それぞれの磁場発生装置43、44について、磁力線が対向するローラー側の磁場発生装置にまたがることなく、ローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場を容易に形成することができ、その磁場にプラズマを収束させることができため、ローラー幅方向に沿って巻き掛けられた幅広の基材2を用いて効率的に蒸着膜である第1の層3を形成することができる点で優れている。
成膜ローラー39および成膜ローラー40としては適宜公知のローラーを用いることができる。このような成膜ローラー39および40としては、より効率よく薄膜を形成せしめるという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このような成膜ローラー39および40の直径としては、放電条件、チャンバのスペース等の観点から、直径が300〜1000mmφの範囲、特に300〜700mmφの範囲が好ましい。成膜ローラーの直径が300mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量が基材2にかかることを回避できることから、基材2へのダメージを軽減でき好ましい。一方、成膜ローラーの直径が1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。
このような製造装置31においては、基材2の表面がそれぞれ対向するように、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39と成膜ローラー40)上に、基材2が配置されている。このようにして基材2を配置することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間に放電を行ってプラズマを発生させる際に、一対の成膜ローラー間に存在する基材2のそれぞれの表面を同時に成膜することが可能となる。すなわち、このような製造装置によれば、プラズマCVD法により、成膜ローラー39上にて基材2の表面上に第1の層成分を堆積させ、さらに成膜ローラー40上にて第1の層成分を堆積させることができるため、基材2の表面上に第1の層を効率よく形成することが可能となる。
このような製造装置に用いる送り出しローラー32および搬送ローラー33、34、35、36としては適宜公知のローラーを用いることができる。また、巻取りローラー45としても、基材2上に第1の層3を形成したガスバリア性フィルム1を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。
ガス供給管41および真空ポンプとしては、原料ガス等を所定の速度で供給または排出することが可能なものを適宜用いることができる。
また、ガス供給手段であるガス供給管41は、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間(放電領域;成膜ゾーン)の一方に設けることが好ましく、真空排気手段である真空ポンプ(図示せず)は、前記対向空間の他方に設けることが好ましい。このようにガス供給手段であるガス供給管41と、真空排気手段である真空ポンプを配置することにより、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間の対向空間に効率良く成膜ガスを供給することができ、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
さらに、プラズマ発生用電源42としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源42は、これに接続された成膜ローラー39と成膜ローラー40とに電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源42としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、前記一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源42としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、印加電力を100W〜10kWとすることができ、かつ交流の周波数を50Hz〜500kHzとすることが好ましい。また、磁場発生装置43、44としては適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。
また、このようなプラズマCVD法において、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間に放電するために、プラズマ発生用電源42に接続された電極ドラム(本実施形態においては、成膜ローラー39および40に設置されている)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバ内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり一概に言えるものでないが、0.1〜10kWの範囲とすることが好ましい。このような印加電力が100W以上であれば、パーティクルが発生を十分に抑制することができ、他方、10kW以下であれば、成膜時に発生する熱量を抑えることができ、成膜時の基材表面の温度が上昇するのを抑制できる。そのため基材が熱負けすることなく、成膜時に皺が発生するのを防止できる点で優れている。
ガス供給管41から対向空間に供給される成膜ガス(原料ガス等)としては、原料化合物を含む原料ガス、反応ガス、キャリアガス、放電ガスが単独または2種以上を混合して用いることができる。第1の層3の形成に用いる前記成膜ガス中の原料ガスとしては、形成する第1の層3の材質に応じて適宜選択して使用することができる。
原料ガスとしては、有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラン(HMDS)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性および得られる第1の層のガスバリア性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。これらの有機ケイ素化合物は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができる。
また、成膜ガスとしては、原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、前記原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、単独でもまたは2種以上を組み合わせても使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
成膜ガスとしては、前記原料ガスを真空チャンバ内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、前記成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガスおよび放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス;水素を用いることができる。
このような成膜ガスが原料ガスと反応ガスを含有する場合には、原料ガスと反応ガスの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことで、形成される第1の層3によって、優れたバリア性や耐屈曲性を得ることができる点で優れている。また、前記成膜ガスが前記有機ケイ素化合物と酸素とを含有するものである場合には、前記成膜ガス中の前記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
このような図1に示す製造装置31を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、真空チャンバ内の圧力、成膜ローラーの直径、ならびにフィルムの搬送速度を適宜調整することにより、CVD法により形成される第1の層を製造することができる。すなわち、図1に示す製造装置31を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバ内に供給しつつ、一対の成膜ローラー(成膜ローラー39および40)間に放電を発生させることにより、前記成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー39上の基材2の表面上および成膜ローラー40上の基材2の表面上に、第1の層3がプラズマCVD法により形成される。
真空チャンバ内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.5Pa〜50Paの範囲とすることが好ましい。
基材2の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバ内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲とすることがより好ましく、0.5〜1.2m/minとすることがさらに好ましい。ライン速度が0.25m/min以上であれば、基材に熱に起因する皺の発生を効果的に抑制することができる。他方、100m/min以下であれば、生産性を損なうことなく、第1の層として十分な厚みを確保することができる点で優れている。
ここで、本発明の好適な一実施形態は、図1に記載の装置のように、少なくとも一対の成膜ローラーと、プラズマ電源とを備え、かつ前記一対の成膜ローラー間においてプラズマ放電することが可能な装置を用いて酸炭化ケイ素を含む第1の層を形成する形態である。
原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、(CHSiO)と、反応ガスとしての酸素(O)と、を含有する成膜ガスをプラズマCVDにより反応させてケイ素−酸素系の薄膜を作製する場合、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である12倍量以下(より好ましくは、10倍以下)の量であることが好ましい。このような比でヘキサメチルジシロキサンおよび酸素を含有させることにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子が第1の層中に取り込まれ、酸炭化ケイ素を含む第1の層を形成することが可能となって、得られるガスバリア性フィルムにおいて優れたガスバリア性および耐屈曲性を発揮させることが可能となる。なお、有機EL素子や太陽電池などのような透明性を必要とするデバイス用のフレキシブル基板への利用の観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。
上記したように、本実施形態のより好ましい態様としては、第1の層を、図1に示す対向ロール電極を有するプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いたプラズマCVD法によって成膜する。これは、対向ロール電極を有するプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いて量産する場合に、可撓性(屈曲性)に優れ、機械的強度、特にロールツーロールでの搬送時の耐久性と、バリア性能とが両立する第1の層を効率よく製造することができるためである。このような製造装置は、電子デバイスに使用される温度変化に対する耐久性が求められるガスバリア性フィルムを、安価でかつ容易に量産することができる点でも優れている。
図1の装置においては、成膜ローラー39,40のローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場が形成して、磁場にプラズマを収束させる。ここで、図1の装置により、第1の層の膜厚方向における第1の層表面からの距離(L)と、前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、極値が存在することとなる。具体的には、基材2が、図1中の成膜ローラー39のA及び成膜ローラー40のB地点を通過する際に、炭素分布曲線の極大値が形成される。これに対して、基材2が、図1中の成膜ローラー39のC1およびC2地点、ならびに成膜ローラー40のC3およびC4地点を通過する際に、第1の層で炭素分布曲線の極小値が形成される。このため、2つの成膜ローラーに対して、理論上、5つの極値が生成する。同様に、対向ロール数(TR数、対極する二つのロールセット数)がn個の場合には(nは1以上の整数)、理論上の極値の数は、約(5+4×(n−1))個となる。しかしながら、実際の極値数は基材の搬送速度などにより、理論上の極値数となるとは限らず、増減する場合がある。
ここで、炭素分布曲線における「極値」とは、第1の層の膜厚方向における第1の層の表面からの距離(L)と、炭素分布曲線における炭素原子の極大値又は極小値のことをいう。また、炭素分布曲線における極大値とは、第1の層の表面からの距離を変化させた場合に、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子比の値が増加から減少に変わる点でのことをいう。さらに、炭素分布曲線における極小値とは、第1の層の表面からの距離を変化させた場合に、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子比の値が減少から増加に変わる点のことをいう。
したがって、第1の層の層のより好適な一実施形態としては、以下の(i)の要件を満たす層である。
(i)第1の層の膜厚方向における第1の層表面からの距離(L)と、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対するケイ素原子の量の比率(ケイ素の原子比)との関係を示すケイ素分布曲線、前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する酸素原子の量の比率(酸素の原子比)との関係を示す酸素分布曲線、ならびに前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有する。
さらに、前記炭素分布曲線が少なくとも3つの極値を有することが好ましく、少なくとも4つの極値を有することがより好ましいが、5つ以上有してもよい。炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有することで、炭素原子比率が濃度勾配を有して連続的に変化し、屈曲時のガスバリア性能が高まる。極値の数は、バリア層の膜厚にも起因するため、一概に規定することはできない。
ここで、少なくとも3つの極値を有する場合においては、前記炭素分布曲線の有する1つの極値および該極値に隣接する極値における前記第1の層の膜厚方向における前記第1の層の表面からの距離(L)の差の絶対値(以下、単に「極値間の距離」とも称する)が、いずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、75nm以下であることが特に好ましい。このような極値間の距離であれば、第1の層中に炭素原子比が多い部位(極大値)が適度な周期で存在するため、第1の層に適度な屈曲性を付与し、ガスバリア性フィルムの屈曲時のクラックの発生をより有効に抑制・防止できる。
バリア層の極値間の距離(炭素分布曲線の有する1つの極値および該極値に隣接する極値におけるバリア層の膜厚方向におけるバリア層の表面からの距離(L)の差の絶対値)は、成膜ローラ39,40の回転速度(基材の搬送速度)によって調節できる。なお、このような成膜に際しては、基材2が送り出しローラー32や成膜ローラー39等により、それぞれ搬送されることにより、ロールツーロール方式の連続的な成膜プロセスにより基材2の表面上に第1の層3が形成される。
また、第1の層は、炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値と最小値との差の絶対値が3at%以上であることが好ましく、5at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることがさらに好ましい。炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が3at%以上であることで、屈曲時のガスバリア性能が高まる。なお、本明細書において、「最大値」とは、各元素の分布曲線において最大となる各元素の原子比であり、極大値の中で最も高い値である。同様にして、本明細書において、「最小値」とは、各元素の分布曲線において最小となる各元素の原子比であり、極小値の中で最も低い値である。
また、第1の層の膜厚の90%以上(上限:100%)の領域で、(酸素の原子比)、(ケイ素の原子比)、(炭素の原子比)の順で多い(原子比がO>Si>C)ことが好ましい。ここで、第1の層の膜厚の少なくとも90%以上とは、バリア層中で連続していなくてもよく、単に90%以上の部分で上記した関係を満たしていればよい。かような条件となることで、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性や屈曲性が十分となる。前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線、および前記炭素分布曲線において、ケイ素の原子比、酸素の原子比、および炭素の原子比が、該第1の層の膜厚の90%以上の領域において、該条件を満たす場合には、前記層中におけるケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対するケイ素原子の含有量の原子比率は、25〜45at%であることが好ましく、30〜40at%であることがより好ましい。また、前記第1の層中におけるケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する酸素原子の含有量の原子比率は、33〜67at%であることが好ましく、45〜67at%であることがより好ましい。さらに、前記層中におけるケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子の含有量の原子比率は、3〜33at%であることが好ましく、3〜25at%であることがより好ましい。
第1の層の前記酸素分布曲線は、少なくとも1つの極値を有することが好ましく、少なくとも2つの極値を有することがより好ましく、少なくとも3つの極値を有することがさらに好ましい。前記酸素分布曲線が極値を少なくとも1つ有する場合、得られるガスバリア性フィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性がより向上する。酸素分布曲線の極値の数においても、バリア層の膜厚に起因する部分があり一概に規定できない。また、少なくとも3つの極値を有する場合においては、前記酸素分布曲線の有する1つの極値および該極値に隣接する極値における前記第1の層の膜厚方向における第1の層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。このような極値間の距離の距離であれば、ガスバリア性フィルムの屈曲時のクラックの発生をより有効に抑制・防止できる。
加えて、第1の層の前記酸素分布曲線における酸素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値(以下、単に「Omax−Omin差」とも称する)が3at%以上であることが好ましく、5at%以上であることがより好ましく、6at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることがさらに好ましい。前記絶対値が3at%以上であれば、得られるガスバリア性フィルムのフィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性がより向上する。
さらに、第1の層の前記ケイ素分布曲線におけるケイ素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値(以下、単に「Simax−Simin差」とも称する)が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることがさらに好ましい。前記絶対値が5at%未満である場合、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性および機械的強度がより向上する。ここで、Simax−Simin差の下限は、Simax−Simin差が小さいほどガスバリア性フィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果が高いため、特に制限されない。
また、第1の層の膜厚方向に対する炭素及び酸素原子の合計量はほぼ一定であることが好ましい。これにより、第1の層は適度な屈曲性を発揮し、ガスバリア性フィルムの屈曲時のクラック発生をより有効に抑制・防止されうる。より具体的には、第1の層の膜厚方向における該第1の層の表面からの距離(L)とケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する、酸素原子および炭素原子の合計量の比率(酸素および炭素の原子比)との関係を示す酸素炭素分布曲線において、前記酸素炭素分布曲線における酸素および炭素の原子比の合計の最大値および最小値の差の絶対値(以下、単に「OCmax−OCmin差」とも称する)が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることがさらに好ましい。前記絶対値が5at%未満であれば、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性がより向上する。
前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線、および前記酸素炭素分布曲線は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は膜厚方向における前記第1の層の膜厚方向における前記第1の層の表面からの距離(L)に概ね相関することから、「第1の層の膜厚方向における第1の層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出される第1の層の表面からの距離を採用することができる。なお、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線および酸素炭素分布曲線は、下記測定条件にて作成した。
(測定条件)
エッチングイオン種:アルゴン(Ar);
エッチング速度(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec;
エッチング間隔(SiO換算値):10nm;
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名"VG Theta Probe";
照射X線:単結晶分光AlKα X線のスポット及びそのサイズ:800×400μmの楕円形。
膜面全体において均一でかつ優れたガスバリア性を有する第1の層を形成するという観点から、第1の層が膜面方向(第1の層の表面に平行な方向)において実質的に一様であることが好ましい。ここで、第1の層が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定により第1の層の膜面の任意の2箇所の測定箇所について前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線および前記酸素炭素分布曲線を作成した場合に、その任意の2箇所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が、互いに同じであるかもしくは5at%以内の差であることをいう。
さらに、前記炭素分布曲線は実質的に連続であることが好ましい。ここで、炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことを意味し、具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出される前記第1の層のうちの少なくとも1層の膜厚方向における該第1の層の表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素の原子比(C、単位:at%)との関係において、下記数式(1)で表される条件を満たすことをいう。
また、炭素分布曲線において、当該第1の層の炭素原子比率が層全体の平均値として8〜20at%の範囲内であることが好ましく、10〜20at%の範囲であることがより好ましい。当該範囲内にすることにより、ガスバリア性と屈曲性を十分に満たすガス第1の層を形成することができる。
[第2の層]
第2の層は、ポリシラザン化合物を含む塗布液を塗布して得られた塗膜を改質処理して得られる。そして、第2の層の基材と相対する最表面〜35nmの領域(以下、表面領域とも称する)の平均酸素含有比率が最表面から35nm以上の領域(以下、基材側領域とも称する)の平均酸素含有比率より大きい(すなわち表面領域の平均酸素含有比率/基材側領域の平均酸素含有比率が1を超える)。下層との密着性向上の観点からは、表面領域の平均酸素含有比率/基材側領域の平均酸素含有比率が1.10以上であることが好ましく、1.35以上であることがより好ましい。なお、表面領域の平均酸素含有比率/基材側の平均酸素含有比率は大きければ大きいほど好ましいが、製造の観点から、通常1.90以下程度である。
なお、ここで酸素含有比率は、ケイ素、酸素および窒素の合計に対する酸素含有比率である。
なお、膜厚方向の酸素含有比率(酸素元素の組成率(at%))は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により測定することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、縦軸を酸素元素の組成率(at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。図3に後述の実施例のガスバリア性フィルムNo.4の分布曲線を示す。
なお、本発明では、下記測定条件にて作成した。
[測定条件]
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチングレート:0.05nm/sec(SiO熱酸化膜換算値)
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800×400μmの楕円形。
XPSデプスプロファイルによる測定では、第1の層と第2の層との界面、または第2の層上に他の層が積層されている場合の第2の層と他の層との界面は、製造時膜厚または透過型顕微鏡(TEM)観察による膜厚測定法により求められた膜厚=SiO換算膜厚とする。すなわち、例えば、後述の図3において、第2の層の製造時膜厚およびTEM観察膜厚は100nmであるから、SiO換算膜厚=0nmの点を最表層とし、SiO換算膜厚=100nmまでを第2の層とする。透過型顕微鏡(TEM)観察による膜厚測定法は第1の層に記載のとおりである。
また、最表面から35nm以内の平均酸素含有比率は膜厚方向の酸素含有比率を測定した後、膜厚方向で積分し、積分値を積分した範囲の膜厚で割った値である。また、35nm以上の領域についても同様である。
最表面〜35nmの領域の平均酸素含有比率は、25〜55at%であることが好ましく、30〜45at%であることがより好ましい。上記範囲内であれば、表層側のポリシラザン化合物の改質がある程度進行し、硬度がある程度確保されており、第2の層の耐傷性を向上させることができる一方、耐屈曲性および高温高湿条件下でのガスバリア性も確保されるため好ましい。そして、上記第2の層の表面領域の平均酸素含有比率の好適な範囲内で、表面領域の平均酸素含有比率/基材側領域の平均酸素含有比率を考慮して、基材側領域の平均酸素含有比率を設定することが好ましい。かような設定とすることで、基材側に表層側よりも硬度の低い軟らかい領域が第2の層内に存在することとなり、発生する応力を基材側の領域で水平方向に分散させることができるため、フィルムの耐屈曲性が向上するため好ましい。ただし、基材側の硬度を維持するためにある程度酸素を含有する必要があるため、最表面から35nm以上の領域の平均酸素含有比率は、10at%以上であることが好ましく、15at%以上であることがより好ましい。さらに、具体的には、最表面から35nm以上の領域の平均酸素含有比率は、10〜40at%であることが好ましく、15〜30at%であることがより好ましい。
本発明において、第2の層の厚さは、35nmを超える。長期的に高いガスバリア性能を維持できることから、第2の層の厚さは40nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることがより好ましい。第2の層の上限は特に限定されるものではないが、層形成時の塗布性や光線透過性の観点からは、500nm以下であることが好ましい。
(ポリシラザン)
ポリシラザンとは、ケイ素−窒素結合を有するポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等の結合を有するSiO、Si、および両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
具体的には、ポリシラザンは、好ましくは下記の構造を有する。
上記一般式(I)において、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R、RおよびRは、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。ここで、アルキル基としては、炭素原子数1〜8の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基が挙げられる。また、アリール基としては、炭素原子数6〜30のアリール基が挙げられる。より具体的には、米国特許出願公開第2013/236710号[0117]、[0120]に記載のアルキル基が挙げられる。(トリアルコキシシリル)アルキル基としては、炭素原子数1〜8のアルコキシ基で置換されたシリル基を有する炭素原子数1〜8のアルキル基が挙げられる。より具体的には、3−(トリエトキシシリル)プロピル基、3−(トリメトキシシリル)プロピル基などが挙げられる。上記R〜Rに場合によって存在する置換基は、特に制限はないが、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、メルカプト基(−SH)、シアノ基(−CN)、スルホ基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)、ニトロ基(−NO)などがある。なお、場合によって存在する置換基は、置換するR〜Rと同じとなることはない。例えば、R〜Rがアルキル基の場合には、さらにアルキル基で置換されることはない。これらのうち、好ましくは、R、RおよびRは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、ビニル基、3−(トリエトキシシリル)プロピル基または3−(トリメトキシシリルプロピル)基である。
上記一般式(I)で表される構造を有する化合物において、好ましい態様の一つは、R、RおよびRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンである。
または、ポリシラザンとしては、下記一般式(II)で表される構造を有する。
上記一般式(II)において、R1’、R2’、R3’、R4’、R5’およびR6’は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1’、R2’、R3’、R4’、R5’およびR6’は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。上記における、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基は、上記一般式(I)の定義と同様であるため、説明を省略する。
上記一般式(II)のポリシラザンのうち、R1’、R3’およびR6’が各々水素原子を表し、R2’、R4’およびR5’が各々メチル基を表す化合物;R1’、R3’およびR6’が各々水素原子を表し、R2’、R4’が各々メチル基を表し、R5’がビニル基を表す化合物;R1’、R3’、R4’およびR6’が各々水素原子を表し、R2’およびR5’が各々メチル基を表す化合物が好ましい。
または、ポリシラザンとしては、下記一般式(III)で表される構造を有する。
上記一般式(III)において、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、R6”、R7”、R8”およびR9”は、それぞれ独立して、水素原子、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、R6”、R7”、R8”およびR9”は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。上記における、置換または非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基または(トリアルコキシシリル)アルキル基は、上記一般式(I)の定義と同様であるため、説明を省略する。
また、上記一般式(I)、(II)または(III)において、n、n’、p、n”、p”およびqは、整数であり、一般式(I)、(II)または(III)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150,000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、n’およびpは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。また、n”、p”およびqは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
上記一般式(III)のポリシラザンのうち、R1”、R3”およびR6”が各々水素原子を表し、R2”、R4”、R5”およびR8”が各々メチル基を表し、R9”が(トリエトキシシリル)プロピル基を表し、R7”がアルキル基または水素原子を表す化合物が好ましい。
一方、そのSiと結合する水素原子部分の一部がアルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下層との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。このため、用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6および8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)で、液体または固体の物質があり、その状態は分子量により異なる。
ポリシラザンは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン層形成用塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、特開2013−226757号 段落「0051」に記載のもの等が挙げられる。
本発明で使用できるポリシラザンの別の例としては、以下に制限されないが、例えば、米国特許出願公開第2013/236710号の[0128]に記載のものが挙げられる。
第2の層中におけるポリシラザンの含有率としては、第2の層の全重量を100重量%としたとき、100重量%でありうる。また、第2の層がポリシラザン以外のものを含む場合には、層中におけるポリシラザンの含有率は、10重量%以上99重量%以下であることが好ましく、40重量%以上95重量%以下であることがより好ましく、特に好ましくは70重量%以上95重量%以下である。
第2の層の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が適用できるが、有機溶剤中にポリシラザンおよび必要に応じて触媒を含む塗布液を公知の湿式塗布方法により塗布し、この溶剤を蒸発させて除去し、次いで、改質処理を行う方法が好ましい。
(ポリシラザンを含む塗布液)
ポリシラザンを含む塗布液を調製するための溶剤としては、ポリシラザンを溶解できるものであれば特に制限されないが、ポリシラザンと容易に反応してしまう水および反応性基(例えば、ヒドロキシル基、あるいはアミン基等)を含まず、ポリシラザンに対して不活性の有機溶剤が好ましく、非プロトン性の有機溶剤がより好ましい。具体的には、米国特許出願公開第2013/236710号の[0129]に記載のものが挙げられる。溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度等の目的にあわせて選択され、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
塗布液におけるポリシラザンの濃度は、特に制限されず、層の膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。
塗布液は、改質を促進するために、触媒を含有することが好ましい。本発明に適用可能な触媒としては、塩基性触媒が好ましく、特に、アミン触媒、Ptアセチルアセトナート等のPt化合物、プロピオン酸Pd等のPd化合物、Rhアセチルアセトナート等のRh化合物等の金属触媒、N−複素環式化合物が挙げられる。アミン触媒の例としては、特開2013−226757号 段落「0057」に記載のものが挙げられる。この際添加する触媒の濃度としては、ポリシラザンを基準としたとき、好ましくは0.1〜10モル%、より好ましくは0.5〜7モル%の範囲である。触媒添加量をこの範囲とすることで、反応の急激な進行よる過剰なシラノール形成、および膜密度の低下、膜欠陥の増大などを避けることができる。
ポリシラザン改質層形成用塗布液には、必要に応じて下記に挙げる添加剤を用いることができる。具体的には、特開2013−226757号 段落「0058」に記載のもの等である。
(ポリシラザンを含む塗布液を塗布する方法)
塗布液を塗布する方法としては、従来公知の適切な湿式塗布方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
塗布厚さは、目的に応じて適切に設定され得る。
塗布液を塗布した後は、塗膜を乾燥させることが好ましい。塗膜を乾燥することによって、塗膜中に含有される有機溶媒を除去することができる。この際、塗膜に含有される有機溶媒は、すべてを乾燥させてもよいが、一部残存させていてもよい。一部の有機溶媒を残存させる場合であっても、好適なガスバリア層が得られうる。なお、残存する溶媒は後に除去されうる。
塗膜の乾燥は、低酸素・低水蒸気濃度雰囲気下で行うことが好ましい。具体的には、酸素濃度が好ましくは20体積%(200,000ppm)以下、より好ましくは2体積%(20,000ppm)、さらに好ましくは0.5体積%(5,000ppm)以下の範囲である。また、水蒸気濃度が好ましくは0.1体積%(1000ppm)以下、より好ましくは0.01体積%(100ppm)以下、さらに好ましくは0.001体積%(10ppm)以下の範囲である。なお、酸素濃度および水蒸気濃度の下限は0ppmである。このような低水蒸気濃度雰囲気下において乾燥処理を行うことにより、二酸化ケイ素の形成よりも酸窒化ケイ素の形成を優位に進行させることができ、第2の層のガスバリア性能を向上させることができる。
塗膜の乾燥温度は、適用する基材によっても異なるが、50〜200℃であることが好ましい。上記温度は、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することによって設定されうる。乾燥時間は短時間に設定することが好ましく、例えば、乾燥温度が150℃である場合には30分以内に設定することが好ましい。また、乾燥雰囲気は、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下などの不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
(改質処理)
第2の層は、ポリシラザン化合物を含む塗布液を塗布して得られた塗膜に1000体積ppm以下の酸素濃度および150体積ppm以下の水蒸気濃度の雰囲気下でエネルギー線を照射して形成されることが好ましい。すなわち、改質処理を、1000体積ppm以下の酸素濃度および150体積ppm以下の水蒸気濃度の雰囲気下でエネルギー線を照射することによって行うことが好ましい。
酸素濃度および/または水蒸気濃度が高い領域(酸素濃度1000体積ppmを超える/水蒸気濃度が150体積ppmを超える領域)で行う改質処理では、改質処理によって主に二酸化ケイ素が形成される。二酸化ケイ素が形成されるメカニズムは、以下のように推定される。雰囲気下に適当量の酸素が存在すると、酸化力の非常に強い一重項酸素が形成される。パーヒドロポリシラザン中のHやNはOと置き換わってSi−O−Si結合を形成して硬化する。ポリマー主鎖の切断により結合の組み換えを生じる場合もあると考えられる。また、真空紫外線のエネルギーはパーヒドロポリシラザン中のSi−Nの結合エネルギーよりも高いため、Si−N結合は切断され、周囲に酸素、オゾン、水等の酸素源が存在すると酸化されてSi−O−Si結合やSi−O−N結合が生じると考えられる。ポリマー主鎖の切断により結合の組み換えを生じる場合もあると考えられる。
一方、酸素および水蒸気濃度が非常に低い雰囲気下(酸素濃度1000体積ppm以下/水蒸気濃度が150体積ppm以下の領域)では、エネルギー照射により、ポリシラザン中のSi−N結合が切断されるが、酸素含有量が微量であるため、二酸化ケイ素の形成よりも酸窒化ケイ素または窒化ケイ素への転化が効率的に進行する。酸窒化ケイ素または窒化ケイ素が主に膜中に存在することにより、第2の層のガスバリア性能が向上するものと考えられる。また、酸素および水蒸気濃度の含有量が高い雰囲気下では、表面領域の酸素濃度のほうが基材側領域の酸素濃度よりも低くなり、第2の層の表面側の平均酸素含有比率が基材側の平均酸素含有比率より大きいという組成とすることが困難である。一方、基材上に第1の層を形成した後、酸素および水蒸気濃度の含有量が非常に低い、または酸素および水蒸気が存在しない雰囲気下でエネルギー線照射の改質処理を行うことによって、第2の層の表面側の平均酸素含有比率が基材側の平均酸素含有比率より大きいという組成とすることが可能となる。
なお、本発明における改質処理とは、ポリシラザンの変性を指し、具体的には、窒化ケイ素または酸窒化ケイ素への転化反応を指し、具体的にはガスバリア性フィルムが全体としてガスバリア性(水蒸気透過率が、1×10−3g/(m・24h)以下)を発現するに貢献できるレベルの無機薄膜を形成する処理をいう。
エネルギー線の照射処理としては、具体的には、プラズマ処理、紫外線照射処理が挙げられ、これらを組み合わせて行ってもよい。エネルギー線の照射処理は、450℃以上の処理が必要な熱処理と比較して、より低温で転化反応が可能であり、高温での処理が困難であるプラスチック基板に適用可能となる。また、これらの処理に加えて、熱処理を行ってもよい。
(熱処理)
ポリシラザンを含有する塗膜を他の改質処理、好適にはエネルギー線照射処理等と組み合わせて、加熱処理することで、改質処理を効率よく行うことが出来る。
加熱処理としては、例えば、ヒートブロック等の発熱体に基板を接触させ熱伝導により塗膜を加熱する方法、抵抗線等による外部ヒーターにより雰囲気を加熱する方法、IRヒーターの様な赤外領域の光を用いた方法等が上げられるが特に限定はされない。また、ケイ素化合物を含有する塗膜の平滑性を維持できる方法を適宜選択してよい。
加熱処理時の塗膜の温度としては、50〜250℃の範囲に適宜調整することが好ましく、更に好ましくは50〜120℃の範囲である。
また、加熱時間としては、1秒〜10時間の範囲が好ましく、更に好ましくは、10秒〜1時間の範囲が好ましい。
(改質処理中の酸素濃度および水蒸気濃度)
上述のとおり、改質処理中の雰囲気中の酸素濃度は1000体積ppm以下であることが好ましいが、より好ましくは500体積ppm以下であり、さらに好ましく100体積ppm以下である。なお、酸素濃度の下限は0体積ppmであるが、全く酸素を含まない雰囲気に制御することは困難であり、現実的には、8体積ppm以上となる。また、改質処理中の雰囲気中の水蒸気濃度150体積ppm以下であることが好ましいが、より好ましくは100体積ppm以下であり、さらに好ましくは75体積ppm以下である。なお、水蒸気濃度の下限は0体積ppmであるが、全く水蒸気を含まない雰囲気に制御することは困難であり、現実的には、10体積ppm以上となる。水蒸気濃度は、室温23℃における水蒸気分圧/大気圧指す。
このような酸素または水蒸気濃度の雰囲気で改質処理を実施する方法として、改質処理を行う際の装置内を減圧にする方法、常圧下で不活性ガスなどでガスフローする方法等が挙げられる。減圧にする方法では、装置内の圧力を、真空ポンプを用いて大気圧から好ましくは100Pa以下、より好ましくは20Pa以下まで減圧した後、所定のガスを導入し、所定の圧力にすることで、雰囲気をつくる。
(プラズマ処理)
改質処理として用いることのできるプラズマ処理は、公知の方法を用いることができ、低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理等をあげることが出来る。
プラズマ処理に用いる放電ガスとしては、窒素ガスまたは周期表の第18属原子が挙げられ、具体的には、米国特許出願公開第2013/236710号[0091]に記載のもの等が用いられる。
低圧プラズマ処理は、100Pa以下の圧力、好ましくは、10Pa以下の圧力条件下で行う処理をいう。装置内の真空状態は、装置内の圧力を、真空ポンプを用いて大気圧(101325Pa)から圧力100Pa以下、好ましくは10Pa以下まで減圧した後、以下に記載のガスを100Pa以下の圧力まで導入することにより得られる。低圧プラズマ処理の圧力は、好ましくは1Pa〜1000Pa、より好ましくは1Pa〜500Paである。
低圧下における酸素濃度および水蒸気濃度は、一般的に、酸素分圧および水蒸気分圧で評価される。低圧プラズマ処理は、上記圧力下、酸素分圧10Pa以下(酸素濃度0.001%(10ppm))以下、好ましくは、酸素分圧2Pa以下(酸素濃度0.0002%(2ppm))以下、水蒸気濃度10ppm以下、好ましくは1ppm以下で行われる。
低圧プラズマには、真空の密閉系内に公知の電極または導波管を配置し、直流、交流、ラジオ波あるいはマイクロ波等の電力を、電極または導波管を介して印加することにより任意のプラズマを発生させることができる。プラズマ処理時に印加する電力(W)は、電極の単位面積(cm)あたり、好ましくは0.0001W/cm〜100W/cm、より好ましくは0.001W/cm〜50W/cmである。
大気圧プラズマ処理としては、二つの電極間にガスを通し、このガスをプラズマ化してから基材に照射する方式や、二つの電極間に照射するポリシラザン膜を配置し、そこへガスを通してプラズマ化する方式などが挙げられる。大気圧プラズマ処理におけるガス流量は、処理雰囲気中の酸素・水蒸気ガス濃度を下げるために、流量が多いほど好ましく、好ましくは0.01〜1000L/min、より好ましくは0.1〜500L/minである。
大気圧プラズマ処理において、印加する電力(W)は、電極の単位面積(cm)あたり、好ましくは0.0001W/cm〜100W/cm、より好ましくは0.001W/cm〜50W/cmである。
(紫外線照射処理)
改質処理の方法の1つとして、紫外線照射による処理も好ましい。紫外線(紫外光と同義)によって生成されるオゾンや活性酸素原子は高い酸化能力を有しており、低温で高い緻密性と絶縁性を有する酸化窒化ケイ素を含む膜を形成することが可能である。
紫外線照射処理においては、常用されているいずれの紫外線発生装置を使用することも可能である。
なお、本発明でいう紫外線とは、一般には、10〜400nmの波長を有する電磁波をいうが、後述する真空紫外線(10〜200nm)処理以外の紫外線照射処理の場合は、好ましくは210〜375nmの紫外線を用いる。
紫外線の照射は、照射される第2の層を担持している基材がダメージを受けない範囲で、照射強度や照射時間を設定することが好ましい。
基材としてプラスチックフィルムを用いた場合を例にとると、例えば、2kW(80W/cm×25cm)のランプを用い、基材表面の強度が20〜300mW/cm、好ましくは50〜200mW/cmになるように基材−紫外線照射ランプ間の距離を設定し、0.1秒〜10分間の照射を行うことができる。
紫外線照射時の基材温度としては、一般的な上限はなく、基材の種類によって当業者が適宜設定することができる。また、紫外線照射雰囲気に特に制限はなく、空気中で実施すればよい。
このような紫外線の発生手段としては、例えば、特開2012−228859号 段落「0054」に記載のもの等が挙げられるが、特に限定されない。
紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、使用する基材の形状によって適宜選定することができる。
(真空紫外線照射処理:エキシマ照射処理)
本発明において、最も好ましい改質処理方法は、真空紫外線照射による処理(エキシマ照射処理)である。真空紫外線照射による処理は、ポリシラザン化合物内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用い、好ましくは100〜180nmの波長の光エネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみの作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温(約200℃以下)で、膜の形成を行う方法である。なお、エキシマ照射処理を行う際は、上述したように熱処理を併用することが好ましく、その際の熱処理条件の詳細は上述したとおりである。
本発明においての放射線源は、100〜180nmの波長の光を発生させるものであれば良いが、好適には約172nmに最大放射を有するエキシマラジエータ(例えば、Xeエキシマランプ)、約185nmに輝線を有する低圧水銀蒸気ランプ、並びに230nm以下の波長成分を有する中圧および高圧水銀蒸気ランプ、および約222nmに最大放射を有するエキシマランプである。
このうち、Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。
また、波長の短い172nmの光のエネルギーは、有機物の結合を解離させる能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン層の改質を実現できる。
エキシマランプは光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で、すなわち短い波長でエネルギーを照射するため、解射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。このため、熱の影響を受けやすいとされるPETなどのフレシキブルフィルム材料に適している。
真空紫外線照射時に用いられる、照射雰囲気を満たすガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
真空紫外線照射工程において、塗膜が受ける塗膜面での該真空紫外線の照度は30〜200mW/cmであることが好ましく、50〜160mW/cmであることがより好ましい。30mW/cm未満では、改質効率が大きく低下する懸念があり、200mW/cmを超えると、塗膜にアブレーションを生じたり、基材にダメージを与えたりする懸念が出てくる。
塗膜面における真空紫外線の照射エネルギー量は、10〜1000J/cmであることが好ましく、50〜500J/cmであることがより好ましく、80〜500J/cmであることがさらに好ましい。10J/cm未満では、改質が進行せず、表面領域の平均酸素含有比率/基材側の平均酸素含有比率が1以下となる可能性があり、密着性および高温高湿保存下の素子の性能の低下をきたす場合がある。また、1000J/cmを超えると過剰改質によるクラック発生や、基材の熱変形の懸念が出てくる。なお、照射エネルギー量は、エキシマ光の照度(mW/cm)×時間(s)で算出される。
また、改質に用いられる真空紫外光は、CO、COおよびCHの少なくとも一種を含むガスで形成されたプラズマにより発生させてもよい。さらに、CO、COおよびCHの少なくとも一種を含むガス(以下、炭素含有ガスとも称する)は、炭素含有ガスを単独で使用してもよいが、希ガスまたはHを主ガスとして、炭素含有ガスを少量添加することが好ましい。プラズマの生成方式としては容量結合プラズマなどが挙げられる。
〔中間層〕
上述の基材、第1の層、および第2の層の層間または表面には、本発明の効果を損なわない範囲で別途中間層を設けてもよい。
[アンカーコート層]
本発明に係る基材の表面には、接着性(密着性)の向上を目的として、アンカーコート層を易接着層として形成してもよい。アンカーコート層の構成材料、形成方法等は、特開2013−52561号公報の段落「0229」〜「0232」に開示される材料、方法等が適宜採用される。
[平滑層]
ガスバリア性フィルムは、基材のバリア層を有する面、好ましくは基材と下地層との間に平滑層を有していてもよい。平滑層は突起等が存在する基材の粗面を平坦化するために、あるいは、樹脂基材に存在する突起により、バリア層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。平滑層の構成材料、形成方法、表面粗さ、膜厚等は、特開2013−52561号公報の段落「0233」〜「0248」に開示される材料、方法等が適宜採用される。
[ブリードアウト防止層]
ガスバリア性フィルムは、ブリードアウト防止層をさらに有することができる。ブリードアウト防止層は、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、樹脂基材中から未反応のオリゴマー等が表面へ移行して、接触する面を汚染する現象を抑制する目的で、平滑層を有する基材の反対面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。ブリードアウト防止層の構成材料、形成方法、膜厚等は、特開2013−52561号公報の段落「0249」〜「0262」に開示される材料、方法等が適宜採用される。
[電子デバイス]
(電子素子本体)
電子素子本体は電子デバイスの本体であり、上記ガスバリア性フィルム側に配置される。電子素子本体としては、ガスバリア性フィルムによる封止が適用されうる公知の電子デバイスの本体が使用できる。例えば、有機EL素子、太陽電池(PV)、液晶表示素子(LCD)、電子ペーパー、薄膜トランジスタ、タッチパネル等が挙げられる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、該電子素子本体は、有機EL素子または太陽電池であることが好ましく、有機EL素子であることがより好ましい。これらの電子素子本体の構成についても、特に制限はなく、従来公知の構成を有しうる。
以下、具体的な電子素子本体の一例として有機EL素子およびこれを用いた有機ELパネルについて説明する。
本発明に係るガスバリア性フィルム10を封止フィルムとして用いた電子機器である有機ELパネル9の一例を図5に示す。有機ELパネル9は、図5に示すように、ガスバリアフィルム10と、ガスバリアフィルム10上に形成されたITOなどの透明電極4と、透明電極4を介してガスバリアフィルム10上に形成された有機EL素子5と、その有機EL素子5を覆うように接着剤層6を介して配設された対向フィルム7等を備えている。なお、透明電極4は、有機EL素子5の一部を成すともいえる。このガスバリア性フィルム10におけるガスバリア層が形成された面に、透明電極4と有機EL素子5が形成されるようになっている。また、対向フィルム7は、アルミ箔などの金属フィルムのほか、本発明に係るガスバリアフィルムを用いてもよい。対向フィルム7にガスバリア性フィルムを用いる場合、ガスバリア層が形成された面を有機EL素子5に向けて、接着剤層6によって貼付するようにすればよい。
(有機EL素子)
有機ELパネル9において、ガスバリアフィルム10で封止される有機EL素子5について説明する。
(有機EL素子)
有機ELパネル9において、ガスバリア性フィルム10で封止される有機EL素子5について説明する。
有機EL素子5の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/陽極バッファー層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層(電子注入層)/陰極
(陽極)
有機EL素子5における陽極(透明電極4)としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極の形成方法および膜厚は、特開2012−106421号の段落「0056」の記載と同様である。
(陰極)
有機EL素子5における陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例および好適な例としては、特開2012−106421号の段落「0058」の記載と同様である。
陰極の形成方法および膜厚は、特開2012−106421号の段落「0058」の記載と同様である。
(注入層:電子注入層、正孔注入層)
注入層には電子注入層と正孔注入層があり、電子注入層と正孔注入層を必要に応じて設け、陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させる。
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、特開平9−260062号公報、特開平8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、特開平9−17574号公報、特開平10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的には、特開2012−106421号の段落「0059」に記載のものが挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
(発光層)
有機EL素子5における発光層は、電極(陰極、陽極)または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
有機EL素子5の発光層には、以下に示すドーパント化合物(発光ドーパント)とホスト化合物(発光ホスト)が含有されることが好ましい。これにより、より一層発光効率を高くすることができる。
(発光ドーパント)
発光ドーパントは、大きく分けて蛍光を発光する蛍光性ドーパントとリン光を発光するリン光性ドーパントの2種類がある。
蛍光性ドーパントの例としては、特開2012−106421号の段落「0060」に記載のものが挙げられる。
リン光性ドーパントの例としては、特開2012−106421号の段落「0060」に記載のものが挙げられる。
(発光ホスト)
発光ホスト(単にホストとも言う)とは、2種以上の化合物で構成される発光層中にて混合比(質量)の最も多い化合物のことを意味し、それ以外の化合物については「ドーパント化合物(単に、ドーパントとも言う)」という。例えば、発光層を化合物A、化合物Bという2種で構成し、その混合比がA:B=10:90であれば化合物Aがドーパント化合物であり、化合物Bがホスト化合物である。更に発光層を化合物A、化合物B、化合物Cの3種から構成し、その混合比がA:B:C=5:10:85であれば、化合物A、化合物Bがドーパント化合物であり、化合物Cがホスト化合物である。
発光ホストとしては構造的には特に制限はないが、特開2012−106421号の段落「0060」に記載のものが挙げられる。
そして、発光層の形成方法および膜厚は、特開2012−106421号の段落「0060」の記載と同様である。
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、特開2012−106421号の段落「0061」に記載のものが挙げられる。
正孔輸送層の形成方法および膜厚は、特開2012−106421号の段落「0061」の記載と同様である。
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する電子輸送材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、特開2012−106421号の段落「0062」に記載のものが挙げられる。
電子輸送層の形成方法および膜厚は、特開2012−106421号の段落「0062」の記載と同様である。
有機EL素子の作製方法としては従来公知の方法を用いることができ、具体的には特開2012−106421号の段落「0063」に記載の方法を用いることができる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「重量部」あるいは「重量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
<ガスバリア性フィルム1〜5の作製>
1.下地層の作製
基材として100μm厚の2軸延伸PENフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名「テオネックスQ65FA」)を用いた。
基材の易接着面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7501を塗布し、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cm硬化を行い、下地層を形成した。
2.第1の層の形成
図1に示す真空プラズマCVD装置を用いて、下記成膜条件にて下地層上に第1の層を300nm形成した。
[プラズマ成膜条件]
〈製膜条件〉
・フィルムの搬送速度;0.5m/min
・原料ガス(HMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
・酸素ガス(O)の供給量:500sccm
・真空チャンバー内の真空度:3Pa
・プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
・プラズマ発生用電源の周波数:80kHz。
3.第2の層の形成
(ポリシラザン塗布液の調製)
20質量%のパラジウム系触媒(プロピオン酸パラジウム)および20質量%のパーヒドロポリシラザンを含むキシレン(脱水)溶液(アクアミカ NL110A:AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)をさらにキシレンで塗布液の固形分が2重量%となるように希釈調製してポリシラザン塗布液を調製した。
(ポリシラザン塗布液の塗布、乾燥)
上記で調製したポリシラザン塗布液を、第1の層上にスピンコート(10s、3000rpm)し、窒素雰囲気下、120℃で10分間乾燥して、厚さ100nmのポリシラザン膜を作製した。乾燥は、水蒸気濃度500ppm程度の雰囲気下で行った。
(改質処理)
上記の膜において、窒素雰囲気下で、エキシマランプを用いて、表1に示した酸素、水蒸気環境条件下で真空紫外線(172nm)の照射時間を表1に記載の露光時間として、改質処理を行って、ガスバリア性フィルム1〜5を得た。
《改質処理装置》
装置 :株式会社 エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200
波長 :172nm
ランプ封入ガス:Xe
《改質処理条件》
エキシマ光強度 :130mW/cm(172nm)
試料と光源の距離 :1mm
ステージ加熱温度 :70℃
フィルムの搬送速度 :0.6m/min
Pass数 :1回
ポリシラザン改質膜の表面から膜厚方向の酸素元素比率をXPSにて測定し、35nm以降の平均酸素含有比率に対する35nmまでの平均酸素含有比率の比を酸素元素比として表1に示した。また、図3にガスバリア性フィルムNo.4の第2の層の酸素分布曲線を示す。
<水蒸気透過率の評価方法>
以下の測定方法に従って、各ガスバリア性フィルムの透過水分量を測定し、下記の基準に従って、水蒸気バリア性を評価した。
(装置)
蒸着装置:日本電子株式会社製、真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
(水蒸気バリア性評価用セルの作製)
試料のバリア層面に、真空蒸着装置(日本電子株式会社製、真空蒸着装置 JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のガスバリア性フィルム試料の蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウム(粒状)を蒸着させた(蒸着膜厚80nm)。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面に水蒸気不透過性の金属である金属アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)をもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
得られた試料を、60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報に記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算した。
なお、ガスバリア性フィルム面以外からの水蒸気の透過がないことを確認するために、比較試料としてガスバリア性フィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板を用いて金属カルシウムを蒸着した試料を、同様な60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウム腐食が発生しないことを確認した。
以上により測定された各ガスバリア性フィルムの透過水分量(g/m・day;表中の「WVTR」)をCa法によって評価し、以下のようにランク付けした。なお、ランク3以上であれば実使用上問題なく、合格品である。
(ランク評価)
5:1×10−4g/m/day未満
4:1×10−4g/m/day以上、5×10−4g/m/day未満
3:5×10−4g/m/day以上、1×10−3g/m/day未満
2:1×10−3g/m/day以上、1×10−2g/m/day未満
1:1×10−2g/m/day以上
<有機発光素子(有機EL素子)1〜5の作製>
作製したガスバリア性フィルム1〜5のガスバリア層上に、以下の方法により透明導電膜を作製した。なお、ガスバリア性フィルムは、酸素プラズマ(2kW出力、基板温度200℃)で10分間アッシングした。この処理により、ガスバリア性フィルムの表面は、さらに清浄化され、かつより平坦な層となる。
ITO透明電極(ホール注入電極)を膜厚85nmで64ドット×7ラインの画素(一画素当たり100×100μm)を構成するよう成膜、パターニングした。そして、パターニングされたホール注入電極が形成された基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄し、煮沸エタノール中から引き上げて乾燥した。その後、UV/O洗浄を行った。
次いで、基板を成膜室に移動し、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定して、槽内を1×10−4Pa以下まで減圧した。そして、ホール注入層としてポリ(チオフェン−2,5−ジイル)を10nmの厚さに、ホール輸送層兼黄色発光層としてTPDにルブレンを1質量%の割合でドープしたものを共蒸着で5nmの膜厚に成膜した。濃度は発光色の色バランスより決定すればよく、この後成膜する青色発光層の光強度と波長スペクトルにより左右される。さらに青色発光層としても4′−ビス[(1,2,2−トリフェニル)エテニル]ビフェニルを50nm、電子輸送層としてAlqを10nm成摸した。
次いで、AlLi(Li:7at%)を1nmの厚さに蒸着し、Al電極層を200nmの厚さに成膜し、有機発光素体を形成した。有機発光素子として封止する前に乾燥剤(CaH)をシリコンゴムに混合して固定化したものを封入し、最後に厚さ100μmのPCTFEフィルムにEVAをコートした封止フィルムにて封止し、有機発光素子を得た。
使用した化合物は以下の通り
シランカップリング剤:(CHO)Si(CHNH
TPD:N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミンルブレン:5,6,11,12−テトラフェニルナフタセン
PCTFE:ポリクロロトリフルオロエチレン
EVA:エチレン−ビニルアセテートコポリマー
<密着性の評価方法>
上記で作製した評価素子について、素子を発光させて目視にて密着性の観察を行った(即評価素子)。また、温度60℃、湿度90%RH環境で100時間保存した後、素子を発光させて目視にて密着性の観察を行った(劣化素子)。ランク3以上が合格品である。結果を表1に示す。
5:即評価素子及び劣化素子にバリアフィルム剥離起因の未発光部位なし
4:即評価素子には未発光部なし。劣化素子に若干バリアフィルム剥離起因の未発光部位あり
3:劣化素子にのみバリアフィルム剥離起因の未発光部位あり
2:即評価素子に若干未発光部あり。劣化素子はバリアフィルム剥離起因の未発光部位あり
1:即評価素子及び劣化素子にバリアフィルム剥離起因の未発光部位あり
<輝度半減時間およびダークスポットの評価方法>
各有機発光素子に直流電圧を印加し、50mA/cmの一定電流密度で連続駆動させ輝度半減時間を評価した。また、同様の条件で1000時間まで連続駆動させ、ダークスポットを評価した。結果を表1に示す。
<ガスバリア性フィルム6〜11および有機発光素子6〜11の作製>
ガスバリア性フィルム5の作製において、第1の層を形成させる際のフィルムの搬送速度を表2に記載のように変化させたこと以外は、ガスバリア性フィルム5と同様にしてガスバリア性フィルム6〜11を作製した。さらに、実施例1と同様にして有機発光素子6〜11を作製した。フィルムの酸素元素比、WVTR、および有機素子の密着性、輝度半減時間、ダークスポットの結果を併せて表2に示す。
<ガスバリア性フィルム12〜25、38、39および有機発光素子12〜25、38、39の作製>
ガスバリア性フィルム5の作製において、改質処理をする際の環境条件を表3に記載の雰囲気下で行ったこと以外は、ガスバリア性フィルム5と同様にしてガスバリア性フィルム12〜25、38、39を作製した。さらに、実施例1と同様にして有機発光素子12〜25、38、39を作製した。フィルムの酸素元素比、WVTR、および有機素子の密着性、輝度半減時間、ダークスポットの結果を併せて表3に示す。
<ガスバリア性フィルム26〜29および有機発光素子26〜29の作製>
(1)ガスバリア性フィルム26の作製
下記のように第1の層を形成したこと以外は、ガスバリア性フィルム5と同様にしてガスバリア性フィルム26を作製した。
特開2012−131194号公報の図1に示す真空プラズマCVD装置を用いて、下地層上へ第1の層の成膜を行った。
この時使用した高周波電源は、27.12MHzの高周波電源で、電極間距離は20mmとした。原料ガスとしては、シランガス流量を7.5sccm、アンモニアガス流量を100sccm、亜酸化窒素ガス流量を50sccmとして真空チャンバー内へ導入した。成膜開始時にフィルム基板温度を100℃、成膜時のガス圧を100Paに設定して窒化ケイ素を主成分とする酸窒化ケイ素層(SiON層)を膜厚300nmの第1の層として形成した。
(2)ガスバリア性フィルム27の作製
下記のように第1の層を形成したこと以外は、ガスバリア性フィルム5と同様にしてガスバリア性フィルム27を作製した。
ロール−トゥ−ロール(roll−to−roll)スパッターコーター中にスプライスロールを装填した。成膜チャンバーの圧力を2×10−6トールまでポンプで低下させた。2kWおよび600V、1ミリトールの圧力で51sccmのアルゴン(不活性ガス)および30sccmの酸素(反応ガス)を含有する気体混合物を使用し、0.43メートル/分の基材搬送速度で、Si−Al(95/5(元素組成比))ターゲット(アカデミー プリシジョン マテリアルズ(Academy Precision Materials)から市販品として入手可能)を反応スパッタリングすることによって、厚さ300nmのSiAlO無機酸化物層を下地層上に堆積させた。
(3)ガスバリア性フィルム28の作製
下記のように第1の層を形成したこと以外は、ガスバリア性フィルム5と同様にしてガスバリア性フィルム28を作製した。
大気圧プラズマCVD装置(積水化学工業株式会社製)を使用して珪素酸化物膜を基材の上に形成した。珪素源としてはヘキサメチルジシラザンを使用し、60℃に加温したヘキサメチルジシラザン中にキャリアガス(窒素)を15mL/minの流速で通過(バブリング)させ、当該キャリアガスと反応ガス(酸素、50mL/min)とをプラズマ中に導入することにより反応させた。プラズマ生成の条件は、パルス電圧95V、パルス周波数20KHzとし、電極、ガス配管、及び基板温度は80℃に加温した。なお、雰囲気ガスとして窒素ガスを流速81mL/minで装置に導入しながら反応を行った。珪素酸化物膜の厚みは、300nmとした。
(4)ガスバリア性フィルム29の作製
国際公開第2011/007543号の実施例10と同様にアルミナ蒸着PETフィルム(商品名:TL−PET H、三井化学東セロ株式会社製、厚さ12μm)を用いて、アルミナ蒸着面上に第2の層を形成させたこと以外は、ガスバリア性フィルム5と同様にしてガスバリア性フィルム29を作製した。
上記ガスバリア性フィルム26〜29を用いたこと以外は、実施例1と同様にして有機発光素子26〜29を作製した。フィルムの酸素元素比、WVTR、および有機素子の密着性、輝度半減時間、ダークスポットの結果を併せて表4に示す。
<ガスバリア性フィルム31〜37および有機発光素子31〜37の作製>
ポリシラザン層の塗膜厚みが表5に記載のようになるように固形分濃度を調整して第2の層を形成したこと以外は、ガスバリア性フィルムNo.5と同様にしてガスバリア性フィルム31〜37を作製した。さらに、実施例1と同様にして有機発光素子31〜37を作製した。フィルムの酸素元素比、WVTR、および有機素子の密着性、輝度半減時間、ダークスポットの結果を併せて表5に示す。
上記結果より、本発明の有機発光素子3〜5、9〜11、14〜18、20〜28、31〜37は、密着性が高く、輝度半減時間が長く、少なくとも350時間までダークスポットの発生がなかった。
また、有機発光素子13〜17と、有機発光素子38および39とを比較すると、最表面〜35nmの領域の平均酸素含有比率が、25〜55at%である有機発光素子13〜17のほうがダークスポットに優れていた。
本出願は、2013年7月17日に出願された日本特許出願番号2013−148566号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。

Claims (6)

  1. 基材と、
    ガスバリア性能を有する第1の層と、
    ポリシラザン化合物を含む塗布液を塗布して得られた塗膜を改質処理して得られる第2の層と、をこの順に含むガスバリア性フィルムを有し、
    前記第2の層の基材と相対する最表面〜35nmの領域のケイ素、酸素および窒素の合計に対する平均酸素含有比率が最表面から35nm以上の領域のケイ素、酸素および窒素の合計に対する平均酸素含有比率より大きい、電子デバイス。
  2. 前記第1の層の水蒸気透過率が0.1g/m・day以下である、請求項1に記載の電子デバイス。
  3. 前記第2の層が、ポリシラザン化合物を含む塗布液を塗布して得られた塗膜に1000体積ppm以下の酸素濃度および150体積ppm以下の水蒸気濃度の雰囲気下でエネルギー線を照射して形成される、請求項1または2に記載の電子デバイス。
  4. 前記第1の層は、酸炭化ケイ素(SiOC)を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子デバイス。
  5. 最表面〜35nmの領域の平均酸素含有比率が、25〜55at%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子デバイス。
  6. 有機EL素子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子デバイス。
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