JPWO2003102636A1 - 可変焦点レンズおよびレンズ制御装置 - Google Patents
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Abstract
高速視覚システムのフレームレートで応答する可変焦点レンズ、および、その制御装置を提供する。可変焦点レンズ10は、内部に液体が充填された収容体11を有する。収容体11は、アクチュエータ14と接触して、その振動を伝達する圧力伝達部15と、光の入射面および射出面に、二つの光透過部12、12とを有する。入射面および射出面の少なくとも一方に、圧力伝達部15から液体を介して与えられる変位に応答して、光軸方向に凹凸に変位可能な表面部分が設けられ、表面部分は、その面積sと、圧力伝達部15の面積Sとの比(s/S)が、所定の値以下であり、アクチュエータ14の変位に応答して、表面部分が変位することにより、焦点距離を変化させる。
Description
発明の属する技術分野
本発明は、高速に焦点を変更可能な可変焦点レンズおよびその制御装置に関する。
背景技術
近年、1kHzのフレームレートで高速に画像を取得・処理することができる高速視覚として、S3PEに代表される超並列・超高速ビジョンチップが注目されている。このような高速視覚においては、結像に写真レンズや望遠鏡などのレンズで構成される光学系を用いることが多い。もし光学系をレンズの焦点距離を制御できる可変焦点レンズと組み合わせて構成すれば、合焦機構やズーム機構などが実現でき、このような動的な光学系を積極的に利用することで、高速視覚システムの新たな応用用途を開拓できることが予想される。
このような高速視覚システムのフレーム毎に異なる光学特性で対象を撮像するためには、可変焦点レンズも1kHz以上の応答を持つことが必要である。
ところが、従来の可変焦点レンズは高速視覚のフレームレートである1kHzに比べて、非常に遅く、高速視覚の高速性を損なうものである。たとえば、“A new,compact and quick−response dynamic focu sing lens(Takashi Kaneko et.Al.,TRANSDUCERS’97,Vol.1,pp.63−66,1997)”には、応答速度が最高で、約150Hzであるような可変焦点レンズが提案されている。しかしながら、このような可変焦点レンズの応答は、高速視覚のフレームレートと比べて一桁小さく、光学系を利用した応用には速度の点で大きな制限が存在している。
本発明は、高速視覚システムのフレームレートで応答する可変焦点レンズ、および、その制御装置を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明者らは、以下に述べるような、1kHzのレートで焦点距離を制御できる可変焦点レンズの構造を考案した。概略的にいうと、この可変焦点レンズは十分に堅い容器の内部に、透明な液体を密封する構造をとり、容器の表面に弾性をもつ円形の薄く透明な板を取り付けて、これをレンズ表面とする。また、レンズ表面とは別に内部の液体に圧力を加えるための弾性をもつ隔壁を取り付ける。本明細書において、この部分をシリンダ部ないし圧力伝達部と称する。
焦点距離は、外部からシリンダ部を通して内部の液体に圧力を加え、レンズ表面を変形させることで制御する。内部の液体は光を屈折させる媒質と、力の伝達の2つの役割をもつ。この可変焦点レンズが焦点距離を変化させる原理を図1に示す。図1に示すように、アクチュエータ14を、液体を押圧する方向(矢印A方向)に駆動することにより、弾性変形可能な薄く透明な板(レンズ表面部分)12、12が凸状となり、これにより凸レンズが形成される。その一方、アクチュエータ14を、液体を引き込む方向(矢印B方向)に駆動することにより、薄く透明な板12、12が凹状となり、これにより、凹レンズが形成される。
現時点で、本発明にかかる可変焦点レンズの特徴である高速性を満たすアクチュエータとして利用可能なものに、数十kHz程度の共振周波数をもち、n(ナノ)mオーダの位置決めが可能な積層型ピエゾアクチュエータがある。この種類のアクチュエータで数十kHz程度の共振周波数を持つものは、可動範囲が10μm程度しかない。そこで、本発明においては、アクチュエータが液体に圧力を加える部分の面積を、レンズ表面の面積より十分に大きく(たとえば数十倍程度に)設計する。このような構造を採用することにより、アクチュエータの変位を増幅してレンズ表面を変形させることができる。
また、シリンダ部とレンズ表面は高速に振動する必要があるので、目的とする応答速度に比べて十分高い固有振動数を持つように設計した。
より詳細には、本発明の目的は、内部に液体が充填された収容体であって、アクチュエータと接触して、当該アクチュエータの振動を伝達する圧力伝達部と、光の入射面および射出面に、二つの光透過部とを備えた収容体を備え、前記入射面および射出面の少なくとも一方に、前記圧力伝達部から液体を介して与えられる変位に応答して、光軸方向に凹凸に変位可能な一以上の表面部分であって、その面積sと、前記圧力伝達部の面積Sとの比(s/S)が、所定の値以下であるような表面部分を設け、前記アクチュエータの変位に応答して、前記表面部分が変位することにより、焦点距離を変化させることを特徴とする可変焦点レンズより達成される。
本発明によれば、圧力伝達部に与えられるアクチュエータからの変位を、S/s倍したものが、表面部分の変位としてあらわれる。したがって、ピエゾ積層型アクチュエータ(PZT)のように、高速な応答性を有するが、その可動範囲が小さいものを利用しても、十分に表面部分が光軸方向に、変位することができ、1kHzのオーダにて焦点距離を変化させることが可能となる。可撓性ないし弾性を有する表面部分を、入射面および射出面の双方に形成しても良いし、一方にだけ形成し、他方を剛性面としても良い。
好ましい実施態様においては、前記収容体において、一方の端に向けて、その径が拡張し、拡張した端部に圧力伝達部が配置されるとともに、他方の端部付近が単一の径を有し、対向する入射面および射出面が形成される。このような構成により、十分な応答性能を有するコンパクトな可変焦点レンズを形成することができる。
より好ましい実施態様においては、圧力伝達部において、アクチュエータと接触する側の面に、突起が形成されている。当該突起は、十字状である。圧力伝達部をこのように構成することにより、共振周波数が高くなり、かつ、アクチュエータの変位に対して効率よく、収容体中の液体を押し出し、或いは、引き戻すことが可能となる。
別の好ましい実施態様においては、収容体が、第1のアクチュエータと接触する第1の圧力伝達部および前記入射面を含む第1の部分と、第2のアクチュエータと接触する第2の圧力伝達部および前記射出面を含む第2の部分と、少なくとも入射面および射出面に対向する位置で第1の部分と第2の部分が密着した連結面とを有し、前記第1の部分の入射面および連結面、第1の部分の入射面および第2の部分の射出面、並びに、連結面および第2の部分の射出面の何れかの組み合わせで、変位可能な表面部分が形成される。このような2層構造をとることにより、自由度は「2」となり、各アクチュエータの駆動により、焦点距離だけでなく、収差を補正することも可能となる。
たとえば、前記連結面と射出面とが、それぞれ、異なる屈折率の材料で形成されても良いし、また、前記連結面と液体とが、それぞれ、異なる屈折率の材料で形成されても良い。
さらに、前記第1の部分および第2の部分に、それぞれ、屈折率の異なる液体が充填されても良い。これにより、たとえば、色収差を補正することもできる。
さらに別の好ましい実施態様においては、前記収容体が、第1のアクチュエータと接触する第1の圧力伝達部および前記入射面を含む第1の部分と、第nのアクチュエータと接触する第nの圧力伝達部および前記射出面を含む第nの部分と、前記第1の部分と第nの部分との間に介在する、(n−2)個の中間部分であって、第i(i=2,3,・・・,(n−2)))のアクチュエータと接触する第iの圧力伝達部を含む中間部分とを有し、隣接する中間部分において、前記入射面および射出面に対向する部分に密着する連結面が形成され、かつ、それぞれの部分において、入射面、連結面および/または射出面において、変位可能な表面部分が形成される。このような多層構造をとることにより、場合によって、その自由度をさらに増大させることができ、よりいっそう、レンズの撮像能力を向上させることが可能となる。上述した例において、前記第1の部分、(n−2)個の中間部分および第nの部分に、それぞれ、屈折率の異なる液体が充填されても良い。また、先の実施態様と同様に、連結面と射出面とが、それぞれ、異なる屈折率の材料で形成されても良いし、連結面と液体とが、それぞれ、異なる屈折率の材料で形成されていても良い。
なお、2層以上の多層構造においても、アクチュエータが接触する圧力伝達部に向かって、収容体を構成するそれぞれの部分(第1の部分、中間部分など)が、その径が拡大する構造を採用していても良い。これにより、レンズのサイズをそれほど大きくすることなく、種々の制御が可能なレンズを提供することが可能となる。
別の好ましい実施態様においては、前記入射面および少なくとも一方に、複数の表面部分が、所定の幾何学的配置にて並べられている。前記表面部分は、それぞれ、数十μmないし数百μmの径を有し、入射面および射出面の一方に形成された表面部分、或いは、双方に形成された対向する対の表面部分によりマイクロレンズが形成されていても良い。或いは、前記表面部分は、それぞれ、数十μmないし数百μmの幅を有する長手方向に細長い長方形状であり、入射面および射出面の一方に形成された表面部分、或いは、双方に形成された対向する対の表面部分によりマイクロレンズが形成されていても良い。長方形状のマイクロレンズの例では、表面部分が、長手方向の辺がほぼ接するように並べられているのが望ましい。
また、本発明の目的は、上記可変焦点レンズと、各アクチュエータを駆動するための信号を与える制御部と、前記各信号を増幅する増幅器とを備えたことを特徴とするレンズ制御装置によっても達成される。
前記制御部は、アクチュエータの変位をフィードバックとして受理しても良い。このフィードバックを利用して、アクチュエータの駆動信号のレベルが制御され得る。また、さらに、前記表面部分における変位を測定するレンズ変位測定部を備え、当該表面部分の変位が、前記制御部にフィードバックされても良い。レンズ変位は、上記アクチュエータの駆動信号のレベルを制御するために利用しても良い。また、これらフィードバック信号によりレンズの歪みをフィードバックし、より適切な制御を実現することもできる。レンズ表面の歪みは、アクチュエータの変位を用いて推定することで間接的に計測・フィードバックすることもができ、また、表面部分の変位から直接計測することによっても実現できる。
発明を実施するための望ましい形態
[レンズの概略]
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態につき説明を加える。図2は、本発明の実施の形態にかかる可変焦点レンズを概略的に示す斜視図である。図1および図2に示すように、本実施の形態にかかる可変焦点レンズ10は、剛性の収容体11を備えている。収容体11は、たとえば、一方の端に向かって径が拡張し、その端部にアクチュエータ14と密着する密着面を有している。密着面は、その面積を大きく確保するように開口しており、薄い材料からなる膜15が形成され、アクチュエータの振動を収容体内部に伝達できるようになっている。この部分を、シリンダ部とも称する。また、アクチュエータ14の他端には、少なくとも1つ(本実施の形態においては2つ)のレンズ表面部分のための開口が形成されている。この開口はたとえば円形であり、そこに、弾性変形可能な薄く透明な板からなるレンズ表面部分12が配置される。密着面13の面積は、レンズ表面部分12の面積より十分大きく、密着面に伝えられるアクチュエータの変位を、十分に増幅してレンズ表面部分を変形させることができるのが望ましい。つまり、密着面は、レンズの焦点を変えるための変位を与える圧力伝達部として機能し、その一方、レンズ表面部分は、圧力伝達部からの変位を受ける受容部として機能する。以下、上記密着面に形成された膜を、圧力伝達部と称する。
また、収容体11の内部には、アクチュエータの変位を伝達するための液体が充填される。この液体の屈折率は、レンズ表面部分12の屈折率と同様であるのが望ましい。たとえば、充填される液体として、エマルジョンオイルを利用することができる。
本実施の形態において、アクチュエータ14として、積層型ピエゾアクチュエータを利用している。積層型ピエゾアクチュエータは、1kHz以上の周波数で精度良く駆動することができるが、その一方、可動範囲が数μmと小さい。そこで、上述したように、圧力伝達部の面積を、受容部の面積より十分大きくし、積層型ピアゾアクチュエータの変位を、面積比に対応する増幅率で増幅して、受容部に伝達している。
図3は、密着面に形成される圧力伝達部の構造をより詳細に示す図である。図3に示すように、本実施の形態にかかる圧力伝達部(膜)15は、金属材料(たとえば、SUS304)で作られ、半径20mm、厚み0.5mmのサイズとなっている。また、膜15のアクチュエータの対向面の中央部には、十字状の突起16が形成され、レンズの変位の拡大率をより大きくするように構成している。この突起は、長さ20mm、幅2mm、高さ0.8mmのサイズである。この突起にアクチュエータが接触することで、効率よく、収容体11の液体を押し出し、或いは、引き込むことができる。また、このような構造を採用することにより共振周波数を高くするという効果をも奏する。
以下、本発明にかかる可変焦点レンズの原理につき説明を加える。
[本発明の原理・レンズ表面部分]
レンズの表面には、高速な応答を可能とする高い固有振動数と、ピエゾアクチュエータが発生する圧力で十分に変形する可撓性、さらにレンズとしての光学的性能が要求される。以下ではこれらについて述べる。固有振動数と可撓性を説明するにあたり、レンズ表面部分の形状は円盤状とし、その周囲が固定されているとする。
以下、円盤の半径をa[m]、厚みをd[m]、円盤の材質の密度をρ[kg/m3]、ヤング率をE[GPa]、ポアソン比をνとする。
これを元にして、円盤の固有振動数と、可撓性の関係を明らかにする。まず、周囲を固定された円盤の固有振動について述べる。
ここまで、「固有振動数」と記述してきたが、厳密には1次の固有振動数についてである。これは、円盤がレンズとして機能するためには、点対象な形状で振動する必要があることと、さらに一つの振動モードだけが励起されることが必要だからである。以下、単に固有振動数は1次の固有振動数のことを指す。
この円盤周囲を完全に固定した場合の1次の固有振動数ωは、
ωm,n=k2 m,n√(D/μ) (m,n=0,1,2,・・・)
・・・(1)
である。(なお、本明細書において、√(a)は、(a)1/2であることを示す。(「a」は、数値ないし数式を意味する。))ただし、
μ=ρd D=Ed3/(12(1−ν2)とする。
km,nは、
Im(ka)Jm−1(ka)−Jm(ka)Im−1(ka)=0 ・・・(2)
(ただし、Im:m次の変形された第1種ベッセル関数 Jm:m次の第一種ベッセル関数)
の解を小さい順に、n=0,1,2,・・・と番号を振ったものに対応する。
本発明においては、1次の固有振動数のみに注目しているので、m=0,n=0の時のみを考えることとし、以後簡単に、k(=k0,0)と記述する。
次にこの円盤の一方から圧力P[Pa]が加わった場合に、円盤中心がなす曲率と、その曲率に対応する焦点距離について述べる。
圧力P[Pa]が一様に加わった場合の中央の曲率半径rcは、
rc=(16D)/(a2P) ・・・(3)
で表される。
この時、レンズ内部の屈折率をn、外部を空気(屈折率1)とすると、中心部分の焦点距離fは、以下の関係を満たす。
1/f=((a2(n−1))/(16D))・P ・・・(4)
レンズ表面が平坦な場合は、焦点距離が∞になるので、1/fは0(ゼロ)である。レンズ表面が少し歪むと焦点距離は有限の大きな値になり、1/fは微小な数となる。つまり、1/fは大きい程レンズ表面が変形していることを表す。
単位圧力に対する変形しやすさの指標Sを、
S=(1/f)・(1/P)=(a2(n−1))/(16D)
・・・(5)
と定義する。Sは大きいほど圧力に対して簡単に変形することになり、可撓性を表すと考えられる。
この固有振動数ωと可撓性の指標Sの二つから、円盤のパラメータがそれぞれどの程度1次の固有振動数ωと可撓性の指標Sに寄与しているのかがわかる。
これらから、どのように設計すると1次の固有振動数を高く、かつ可撓性を大きくできるかにつき説明する。
円盤のパラメータのうち設計で選べるのは、半径(a)、厚み(d)および材料(E,ρ,ν)の3つであると考えられる。まず、半径(a)について考える。半径(a)は式(2)により決定されるので、以下の関係を満たす。
k∝1/a ・・・(6)
そこで、ここでは1次の固有振動数ωは半径の2乗に反比例し、可撓性の指標Sは半径の2乗に比例するとして説明を進める。
ω∝1/a2 ・・・(7)
S∝a2 ・・・(8)
同様に、厚みdに関して考えると、1次の固有振動数ωは厚みに比例し、可撓性の指標Sは厚みの3乗に反比例する。
ω∝d ・・・(9)
S∝1/d3 ・・・(10)
最後に、材料について考える。まず、これからの説明のために、1次の固有振動数ωを材料に関するパラメータで記述すると、
ω=k2d√((1/(12(1−ν2)))・(E/ρ))・・・(11)
となる。材料に関係するパラメータのみを抜き出すと、
ω∝√(E/(ρ(1−ν2))) ・・・(12)
である。
効率がよい、つまり固有振動数の高くしたときに可撓性を失う度合いの少ないパラメータは半径であり、半径を1/2にすると、固有振動数は4倍、可撓性の指標は1/4倍になる。
材料は、そのパラメータE、ρおよびνを自由に選べないという意味で特殊な設計要素である。
一般にポアソン比νは材料による値のばらつきが比較的小さいので、定数とみなせると仮定をすれば、感度(指標)Sはヤング率Eの逆数で減っていき、固有振動数ωはE/ρの平方根で増えてゆく。したがって、E/ρが大きな物質を選択することが重要である。
効率が悪いパラメータは厚みであり、厚みを2倍にすると、固有振動数は2倍、可撓性の指標は1/8倍も小さくなってしまう。
まとめると、半径、材料、厚みの順に最適化をしていけば、可撓性を保ちつつ固有振動数を高くしやすいということになる。
これらの結果をもとに、実際に設計をする場合のことについて述べる。半径はレンズ径を決定してしまうので、光学系の要請でその下限が決まる。ゆえに実際の応用が決まらないと議論が難しい。
材料も光学系の要請でいろいろ制限が加わるが、ここでは制限のないものと仮定して考察をする。以前の説明から、E/(ρ(1−ν2))が大きく、かつ、ヤング率Eが小さいほど固有振動数を上げやすいことがわかっている。この固有振動数の係数E/(ρ(1−ν2))を横軸に、可撓性の係数1/Eを縦軸にとって様々物質をプロットしたものを、図4に示す。但し、数値は定数を乗じてプロットした。図4に示すように、グラフ中で右や上のほうに分布している材料が、レンズ面を構成した場合に、固有振動数をあげやすく可撓性もあるので、適した材料であると考えられる。図4において、「Grass#1(符号401参照)」、「Grass#2(符号402参照)」、「Grass#3(符号403参照)」、「Grass#4(符号404参照)」、「Grass#5(符号405参照)」、および、「Grass#6(符号406参照)」は、それぞれ、アルカリ亜鉛硼珪酸、鉛カリソーダ、アルミノ珪酸、硼珪酸、高鉛および石英ガラスを示している。これらは、ほぼ同じような可撓性の係数をもっている。これらのうち、硼珪酸(符号404)、アルカリ亜鉛硼珪酸(符号401)、石英ガラス(符号406)およびアルミノ珪酸(符号403)が、比較的高い固有振動数の係数を持つ。
ガラスは固有振動数が高く、かつ比較的大きな可撓性を持ち、高分子化合物のポリエチレン・ポリスチレンは大きな可撓性をもつが、固有振動数は低くなる。これらの材料がレンズ面の材料として有力な候補であるだろう。これら材料の選択は、レンズ表面部分12を変位の幅(範囲)と、求められる応答速度とを考慮して定めるのが望ましい。
厚みは、ここで議論している範囲内では厚ければ厚いほどよいが、厚くなるほど可撓性がなくなるので、アクチュエータで発生できる圧力の範囲内で厚くすればよい。提案している可変焦点レンズで使用する積層型ピエゾアクチュエータは非常に大きな力を発生できる(10〜1000[N])ので、自由度は大きい。
[本発明の原理・シリンダ部(圧力伝達部)]
シリンダ部はレンズ表面部分と同じ構造を持つので、基本的にはレンズ表面部分と同じ考察が成り立つ。この部分も1kHzで振動する必要があるので、固有振動数を高く設計することが必要である。
シリンダ部の半径は、アクチュエータの可動範囲と、レンズ表面を十分変形させるのに必要な増幅率とに依存して決まる。厚み、材質に関しては、基本的にはレンズ表面と同様に考察できる。
ただし、レンズとして機能する必要がないので、その形状に突起や複雑な構造をもたせることでより堅く軽くすることが可能であり、種々の構造を採用することができる。たとえば、航空機などに用いられるハニカム構造をもたせれば、高い固有振動数かつ大きな弾性をもつ圧力伝達部を作ることも可能である。
アクチュエータの変位を大きく増幅してレンズ表面に伝えることが必要な場合は、圧力伝達部(シリンダ部)は大きな半径をもつことが必要になるため、それだけ材質や厚みを大きくする必要がでてくる。この場合、堅く軽い構造を設計することがより重要になる。
[本発明の原理:圧力伝達油]
アクチュエータによって発生した圧力をレンズ表面に伝達する機構には、kHzオーダで変化する圧力を伝えるための高速な応答性と、レンズ表面の歪みを正確に計測できることが必要である。レンズ表面の歪みを知ることができないと、焦点距離などの光学的特性がわからないので可変焦点レンズとして用いることができないからである。
提案するレンズでは、レンズ内部を満たしている屈折率の高い油に圧力をかけることでレンズ表面を歪める機構を用いている。この構造が高速な応答をもち、かつレンズ表面の歪みを正確に計測できることを以下に説明する。
一般に液体は圧縮率が低いため、油圧機構に代表されるように圧力を効率的に伝える媒体として適している。とくに油は温度などに対して安定で扱いがよく、圧縮率も低いので圧力伝達に適している。可変焦点レンズを歪めるのに必要な圧力は30[N/m2]程度と見積もられており、この圧力で油の圧縮は無視できる程小さい。そのため、アクチュエータの変位によってシリンダ部が変形して押し出した体積とレンズが歪んで膨らんだ体積は等しいと仮定できる。アクチュエータの変位は正確に測定できるので、レンズの歪みの程度もアクチュエータの変位から見積もることができ、レンズの光学的特性を知ることができる。
[システム構成および動作]
図5は、本実施の形態にかかる可変焦点レンズおよびその制御装置の概略を示すブロックダイヤグラムである。図5に示すように、制御コンピュータ20と、制御コンピュータから出力された駆動電圧を受理して、これを増幅してピエゾアクチュエータ14に与える増幅器22と、可変焦点レンズ10とを備えている。なお、試作品においては、レンズ表面部分12の変位を検出するセンサヘッド24およびセンサ制御部26とを有している。センサ制御部26から制御コンピュータ20に対して、レンズ表面部分の変位信号が返される。また、増幅器22からピエゾアクチュエータ14の変位が制御コンピュータ20に返される。なお、図5において、破線で示す信号線および破線にて囲んだ構成部分は、試験結果のデータを得るためのものである。したがって、実際にレンズとして使用する場合には、これら構成部分は省略され得る。
このように構成されたシステムにおいて、制御コンピュータ20において、所定の周波数で、所定の変位をさせるためのデータが、D/A変換されて、アナログ信号として増幅器に与えられる。増幅器22は、与えられたアナログ信号を、ピエゾアクチュエータ14を駆動するだけのレベルに増幅する。これによりピエゾアクチュエータ14が変位し、これがレンズ10の圧力伝達部15に加えられる。この変位は、レンズ収容体11中に充填された液体を介してレンズ表面部分12に伝えられ、これによりレンズ表面部分12が凸状或いは凹状に変位して、レンズの焦点が変化する。
[実施例]
以下、図5に示すシステムにおいて使用した可変焦点レンズの試作品につき説明を加える。図6A、Bに示すように、本実施の形態にかかる可変焦点レンズの試作品100においては、高さ50mm、内径27mm、外径35mmの二重のガラス管をもって、内径を構成するガラス管と外径を構成するガラス管との間にオイルを充填するように構成し、これを収容体111とした。収容体111の外径を構成するガラス管120において、そのほぼ中央側面に、正対する2つの穴(7.5mm径)を形成し、そこに、厚さ20μmのガラス薄膜を配置し、これを変形するレンズ表面部分112とした。さらに、その上から、厚さ1mmで、5mm径の穴を有するガラス板122を配置し、これにより、レンズ表面部分112を固定した(図6B参照)。なお、アクチュエータの変位(図5の符号501参照)やレンズ表面部分の変位(符号502参照)をフィードバックすることにより、レンズ表面部分の歪みを検出し、これに基づくより適切な制御を実現することも可能である。
たとえば、レンズ表面の歪みは、アクチュエータ14の変位を用いて推定することで、間接的に計測・フィードバックすることも可能であり、また、レンズ表面を直接計測することによっても実現することができる。内部の液体の圧力が無視できるほど小さく、レンズ表面およびシリンダ部分の固有振動数が十分に高ければ、アクチュエータの入力とレンズ表面の歪みとの間には、1対1の対応関係が仮定できる。このため、アクチュエータ14の変位を計測するだけで、レンズの歪みを推定することができる。つまり、図5のシステムにおいて、アクチュエータ14の変位からレンズ表面の歪みを推定してフィードバックすることもできる。
収容体111の下部には、たとえば、SUS304から作られた圧力伝達体115を配置し、その下部に密着されたピエゾアクチュエータ(図6A、Bにおいては図示せず)の振動を伝達するようにした。圧力伝達部115は、図3に示すように、共振周波数が高くなり、かつ、アクチュエータの変位に対して効率よく、収容体111中の液体を押し出すことができるように中央部を補強した設計となっている。また、収容体111の上部には、厚み5mmの収容体カバーを配置し、二つのガラス管の間に収容された液体を密封している。
試作においては、1次の共振周波数が、8.0kHz程度になることを目標として設計した。設計した構造の1次の共振周波数を有限要素法によって見積もると、レンズ表面は8.2kHz、シリンダ部は7.7kHzであった。
[レンズの応答]
上記試作された可変焦点レンズが、kHzオーダの応答性能をもつことを確認するために、図5に示すピエゾアクチュエータの変位(符号501参照)を入力とし、レンズ表面部分12の中心の変位(符号502参照)を出力として周波数応答を計測した。
レンズ表面部分の中心の変位を測定するため、センサヘッド24およびコントローラ26として、レーザ測距計LC−2430(キーエンス製、応答周波数20kHz)を用いて測定した。ピエゾアクチュエータ14として、P−841.10(PI−Polytec製、1次の共振周波数18kHz、可動範囲15μm、歪みセンサ内臓)を利用した。制御コンピュータ20においては、制御周期0.1msにて計測を行った。
図7は、計測した周波数応答のボード線図である。図7から、1kHzまで応答特性がほぼ変化しないことがわかり、試作された可変焦点レンズの構造が、kHzオーダで応答可能であることが確認できた。
[応用例]
次に、本発明にかかる可変焦点レンズの他の構成例につき説明を加える。第1の実施の形態においては、収容体内に単一の液体を充填しているが、収容体を複数の部分に区切ることにより、異なる屈折率を有する複数の液体を、収容体の部分に、それぞれ充填することも可能である。
レンズの焦点距離を変化させると,それに伴い光学的なパラメータが変化し、収差補正のための条件などが変化してしまう。従来このような場合は複数のレンズを動かすことで複数のパラメータの変化を吸収させていたが、1kHzのオーダに達する高速さをもってレンズを動かすことによって、パラメータ変化を吸収するのは難しい。そこで本発明においては、この問題を解決するために,可変焦点機構を多層化した構造を発明した。多層化により光学的なパラメータの自由度はその層の数だけ増える.
図8A〜Dは、それぞれ、多層化された可変焦点レンズの例を示す断面図である。たとえば、図8Aに示す可変焦点レンズにおいては、収容体211が、第1の部分221と第2の部分222とに分割され、第1の部分および第2の部分のそれぞれの端部に、ピエゾアクチュエータ214、215が配置されている。また、第1の部分221と第2の部分222とは、剛性をもって、たとえば、ガラス223により連結されている。また、第1の部分221および第2の部分222の外面には、可撓性ないし弾性をもつ表面部分212、213が形成されている。
このような構成により、ピエゾアクチュエータ214を駆動することにより、表面部分212を変位させ、その一方、ピエゾアクチュエータ215を駆動することにより、表面部分213を変位させることができる。これにより、自由度が「2」となり、2つの光学パラメータ、たとえば、焦点距離および球面収差を調整することができる。
図8Bに示す可変焦点レンズにおいては、第1の部分321と第2の部分322との間も、可撓性ないし弾性をもつ連結部(連結面)313が形成され、その一方、第2の部分322の外面に配置された表面部分316は剛性をもっている。この例でも、2つの光学パラメータが調整され得る。なお、光学パラメータには、焦点距離、球面収差のほか、コマ収差などが含まれる。
さらに、図8Cに示すように、収容体411を、第1の部分421、第2の部分422および第3の部分423に分割し、第1の部分421の外面に設けられた表面部分412、第1の部分421と第3の部分423との連結部424、および、第2の部分422の外面に設けられた表面部分413が可撓性ないし弾性をもち、対応するアクチュエータの駆動により、変位することができる。また、第2の部分と第3の部分との連結部425は剛性を持っている。この例では、自由度が「3」とすることもでき、この場合には、3つの光学パラメータ、たとえば、焦点距離、球面収差およびコマ収差を調整することが可能となる。図8Dは、自由度「3」となる可変焦点レンズのさらに他の例を示している。ここでは、第2の部分522の外面は剛性を持ち(符号516参照)、その一方、第2の部分522と第3の部分533との間の連結部(符号513参照)が可撓性ないし弾性を有している。第1の部分521の外面の表面部分512、および、第1の部分521と第3の部分523との間の連結部524が可撓性ないし弾性を有することは、図8Cの例と同様である。
また、収容体を構成する各部分に、それぞれ、屈折率の異なる液体を充填しても良い。これにより、光学パラメータの自由度を増やすことができ、また、色収差を調整可能とすることができる。図9Aおよび図9Bにこのような例を示す。図9Aに示す可変焦点レンズの構造は、図8Bのものと同様である。この可変焦点レンズ311の第1の部分321には、屈折率n1(≠空気の屈折率n0)の液体が充填され、第2の部分433には、屈折率n2(≠n1かつ≠n0)の液体が充填される。
図9Bに示す可変焦点レンズの構造は、図8Dのものと同様である。ここでも、第1の部分521には、屈折率n1(≠n0)の液体、第2の部分には、屈折率n2(≠n1かつ≠n0)の液体、第3の部分には、屈折率n3(≠n1,≠n2かつ≠n0)の液体が、それぞれ充填される。
このように、可変焦点レンズを多層化し、また、各層を構成する部分に異なる屈折率の液体を充填することで、高い応答速度を維持しつつ、高い撮像精度を実現することが可能となる。
[上記実施例および応用例の適用]
次に、上記実施例や応用例にかかる可変焦点レンズを、顕微鏡に適用した例について説明する。図11は、可変焦点レンズを用いた顕微鏡の例を概略的に示す図である。この例においては、対物レンズ1100と撮像素子1102との間に、可変焦点レンズ1110を配置している。この可変焦点レンズは、図1、図2に示すような構成であっても良いし、図8A〜D或いは図9A、Bに示すような構成であっても良い。この顕微鏡は、撮像素子1102と接続された画像形成部1104およびレンズ制御部1106を備えている。この画像形成部1104およびレンズ制御部1106により演算部1108が構成される。画像形成部1104は、撮像素子1102からの信号を受理して、顕微鏡にて撮影された画像データを作成する。また、レンズ制御部1106は、たとえばラプラシアンフィルタを含み、信号中の空間周波数が比較的高い成分を取り出して、レンズ焦点が合っているかどうかを判定している。
レンズ制御部1106からは、可変焦点レンズ1110のアクチュエータ(図示せず)を制御する制御電圧が出力される。また、可変焦点レンズ1110からその変位を示す信号がレンズ制御部1106に返されてもよい。このように構成された顕微鏡においては、対象物が移動することにより焦点面1112が、顕微鏡の光軸方向に変化すると(一点鎖線および二点鎖線参照)、レンズ制御部1106が、焦点が合っていないことを判定し、焦点面を光軸方向に前後に動かすようにアクチュエータを制御する。この前後の移動の際に撮像素子1102により撮影された画像に基づいて、レンズ制御部1106は焦点が合っている位置を判定する。本実施の形態においては、焦点距離の制御を1kHzのレートで実現できるため、焦点面の移動を、対象物の移動と比較して十分速くすることができ。適切な焦点合わせをすることが可能となる。
[他の実施例]
次に、本発明にかかる可変焦点レンズの他の実施例について説明する。図12および図13に示すように、この実施例にかかる可変焦点レンズ1210において、収容体11、アクチュエータ14、膜15などの構成は、図1ないし図3に示すものとほぼ同様である。また、収容体11の内部には、アクチュエータの変位を伝達するための液体、たとえばエマルジョンオイルが充填される。
可変焦点レンズ1210のアクチュエータ14が配置されていない側は、ほぼ平行な二つの面が形成され、それぞれの面に、複数の円形の開口が、対向するように形成され、かつ、その開口には、弾性変形可能な薄く透明な板からなるレンズ表面部分12が配置される。この複数のレンズ表面部分12は、一定の幾何学的配置にしたがって並べられる。たとえば、図13に示すように、一つおきの行および列が整列されるような配置であっても良いし、隣接する行および列が整列されるような配置であっても良い。また、レンズ表面部分12の屈折率と、収容体11の内部に充填される液体の屈折率とは同一であるのが望ましい。
レンズ表面部分12の径は微小(たとえば、数十μmないし数百μm)であり、可変焦点レンズ1210は、対向するレンズ表面部分12がマイクロレンズとして機能するため、マイクロ可変焦点レンズアレイとして機能する。この例では、それぞれのレンズ表面部分12は、同じ液体に接し、アクチュエータ14が駆動されることにより同じ圧力が印加される。したがって、焦点距離が一様に制御される。無論、収容体の一方の面にのみ、レンズ表面部分12を形成しても良い。
図14Aおよび図14Bは、このようなマイクロ可変焦点レンズアレイの適用例を示す図である。図14Aの例では、マイクロ可変焦点レンズアレイのレンズ表面部分12(単一のレンズ表面部分、または、対向するレンズ表面部分の組)と撮像素子1401とが一対一に対応している。これに対して、図14Bの例では、複数(9個)のレンズ表面部分(または9組のレンズ表面部分)1420−1、1420−2と、撮像素子1411−1、1411−2とが対応している。
また、マイクロ可変焦点レンズアレイの収容体に、対向するレンズ表面部分のそれぞれに別の液体(屈折率が同一でも良いし、異なっても良い)が接するように、剛性のある透明な仕切りを配置しても良い。このような配置は、対抗するレンズ表面部分のみに着目すると、図8Aに示す構造に対応する。さらに、図8Bに示すように、仕切りにおいて、収容体の一方の表面および仕切りに対向するレンズ表面部分を形成しても良い。さらに、図8C或いは図8Dに示すような三層構造を採用しても良い。
図15は、非点対称形状のレンズを採用した例を示す。この例では、レンズ表面部分1512が長方形になっている。レンズ形状を非点対称形状とした場合にも、図12および図13に示した例と同様に、それぞれの辺の長さが微小(たとえば、数十μmないし数百μメートル)のレンズ表面部分を、一定の幾何学的配置にしたがって並べたようなマイクロ可変焦点レンズアレイを形成しても良い。
さらに、このようなマイクロ可変焦点レンズにおいて、対向するレンズ表面部分のそれぞれに別の液体が接するように、透明な仕切りを配置しても良い(図8A〜図D参照)。この例でも、収容体の一方の面のみにレンズ表面部分1512を形成しても良いし、双方の面に対向するようにレンズ表面部分を形成しても良い。
図16は、それぞれが細長い長方形の形状をもつレンズ表面部分を、一方向に整列配置したマイクロ可変焦点レンズアレイの例を示す図である。レンズ表面部分1612は、剛性のある境界部1613を介して、隣接して並べられる。それぞれのレンズ表面部分12においては、長手方向中央部(符号1610)が、収容体の内部の圧力変化によっても、それぞれの位置における段面形状が同一となる。したがって、中央部1610をレンズとして利用することができる。この例でも、収容体1611の一方の面のみにレンズ表面部分1612を形成しても良いし、双方の面に、対向するようにレンズ表面部分1612を形成しても良い。
図16に示すマイクロ可変焦点レンズアレイを、たとえば、LCD(液晶表示装置)の前面側に配置し、レンズ焦点を変えることにより、いわゆる三次元画像の表示を可能にするために利用することができる。
さらに、このマイクロ可変焦点レンズアレイにおいて、対向するレンズ表面部分のそれぞれについて、図8A〜図8Dに示すような多層構造を採用しても良い。また、各層において、同一の液体を充填しても良いし、屈折率の異なる液体を充填しても良い。
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
たとえば、本実施の形態において、可変焦点レンズの構造について、漏斗状の拡張した一方の側に圧力伝達部を配置し、細く延びる側に対向するように、可撓性ないし弾性のある表面部分を配置し、表面部分の面積と比較して十分に大きな面積を有する圧力伝達体の駆動により、ピエゾアクチュエータの微小な動きを、表面部分の十分な変位に増幅できるように構成している。
しかしながら、上記形状や、試作品の形状に限定されるものではない。本発明においては、図10に示すように、アクチュエータ14が取り付けられた側(圧力伝達部15)の面積Sが、レンズとして機能する可撓性ないし弾性のある表面部分の面積sに比較して十分大きく(S>>s)、かつ、圧力伝達部と表面部分とがオイルなどの液体で連結され、圧力伝達部15の振動が表面部分12に伝えられるような構造であれば良い。このような構造をとることにより、表面部分の変位は、圧力伝達部の変位のS/s倍とすることができる。圧力伝達部の面積Sと表面部分の面積sとの比を調整することにより、表面部分の変位を所望の範囲に調整することも可能である。
また、前記実施の形態において、圧力伝達部のアクチュエータと接触する側に、十字形状の突起を形成したが、突起の形状は、これに限定されるものではなく、たとえば、120度の角度間隔をもって配置された三叉状であっても良い。
さらに、前記実施の形態において、収容体を2層構造、3層構造とした例を示したが、4層以上の層構造を採用しても良いことは言うまでもない。ここでも、各層に圧力伝達部を配置し、アクチュエータの変位を連結部やレンズ表面部分に伝達できるような構成を採用すれば良い。
さらに、自由度が犠牲されるが、多層構造において、すべての層にアクチュエータを配置せず、一部の層の表面部分や連結面を変位可能に構成しても良い。
また、マイクロレンズアレイの例において、収容体の面に平行に透明な仕切りを配置する変わりに、或いは、これに加えて、収容体の面にほぼ垂直な仕切りを配置し、仕切られた領域のそれぞれに異なる液体を充填しても良い。
本発明によれば、高速視覚システムのフレームレートで応答する可変焦点レンズ、および、その制御装置を提供することが可能となる。
産業上の利用分野
本発明は、特に、1kHz以上の高速な応答を有するレンズと協働するのが望ましい、ビジョンチップを利用した高速視覚システムに適用することができる。この高速視覚システムでは、高速度で移動する物体の画像を、焦点があった状態で追従することができ、当該物体の画像を生成し、或いは、高速度で移動する物体を捕捉する他の機器(アーム)などを制御することも可能となる。
さらに、本発明において、微小なレンズを幾何学的配置で並べたマイクロ可変焦点レンズアレイを構成し、単一のマイクロレンズ或いは所定数のマイクロレンズと撮像素子とを対応させて、複数の画像を生成し、それらに基づいて新たな画像を生成することにより、より精密な画像を取得することも可能となる。また、LCDなどと組み合わせることにより、三次元画像を生成することもできる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明にかかる可変焦点レンズの原理を説明する図である。
図2は、本発明の実施の形態にかかる可変焦点レンズを概略的に示す斜視図である。
図3は、本実施の形態にかかる圧力伝達部の構造をより詳細に示す図である。
図4は、本実施の形態にかかる可変焦点レンズにて用いる材料の特性を示すグラフである。
図5は、本実施の形態にかかる可変焦点レンズおよびその制御装置の概略を示すブロックダイヤグラムである。
図6A、Bは、本実施の形態にかかる可変焦点レンズの試作品の構造を示す図である。
図7は、試作品にて計測した周波数応答のボード線図である。
図8A〜Dは、それぞれ、本実施の形態において、多層化された可変焦点レンズの例を示す図である。
図9A、Bは、それぞれ、本実施の形態において、多層化された可変焦点レンズの例を示す図である。
図10は、本発明にかかる圧力伝達体と表面部分との関係を説明するための図である。
図11は、本発明にかかる可変焦点レンズを用いた顕微鏡の例を概略的に示す図である。
図12は、本発明の他の実施例にかかる可変焦点レンズの斜視図である。
図13は、本発明の他の実施例にかかる可変焦点レンズのレンズ表面部分を説明するための図である。
図14Aおよび図14Bは、このようなマイクロ可変焦点レンズアレイの適用例を示す図である。
図15は、本発明のさらに他の実施例にかかる可変焦点レンズを示す図であり、非点対称形状のレンズを採用した例を示す。
図16は、それぞれが細長い長方形の形状をもつレンズ表面部分を、一方向に整列配置したマイクロ可変焦点レンズアレイの例を示す図である。
本発明は、高速に焦点を変更可能な可変焦点レンズおよびその制御装置に関する。
背景技術
近年、1kHzのフレームレートで高速に画像を取得・処理することができる高速視覚として、S3PEに代表される超並列・超高速ビジョンチップが注目されている。このような高速視覚においては、結像に写真レンズや望遠鏡などのレンズで構成される光学系を用いることが多い。もし光学系をレンズの焦点距離を制御できる可変焦点レンズと組み合わせて構成すれば、合焦機構やズーム機構などが実現でき、このような動的な光学系を積極的に利用することで、高速視覚システムの新たな応用用途を開拓できることが予想される。
このような高速視覚システムのフレーム毎に異なる光学特性で対象を撮像するためには、可変焦点レンズも1kHz以上の応答を持つことが必要である。
ところが、従来の可変焦点レンズは高速視覚のフレームレートである1kHzに比べて、非常に遅く、高速視覚の高速性を損なうものである。たとえば、“A new,compact and quick−response dynamic focu sing lens(Takashi Kaneko et.Al.,TRANSDUCERS’97,Vol.1,pp.63−66,1997)”には、応答速度が最高で、約150Hzであるような可変焦点レンズが提案されている。しかしながら、このような可変焦点レンズの応答は、高速視覚のフレームレートと比べて一桁小さく、光学系を利用した応用には速度の点で大きな制限が存在している。
本発明は、高速視覚システムのフレームレートで応答する可変焦点レンズ、および、その制御装置を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明者らは、以下に述べるような、1kHzのレートで焦点距離を制御できる可変焦点レンズの構造を考案した。概略的にいうと、この可変焦点レンズは十分に堅い容器の内部に、透明な液体を密封する構造をとり、容器の表面に弾性をもつ円形の薄く透明な板を取り付けて、これをレンズ表面とする。また、レンズ表面とは別に内部の液体に圧力を加えるための弾性をもつ隔壁を取り付ける。本明細書において、この部分をシリンダ部ないし圧力伝達部と称する。
焦点距離は、外部からシリンダ部を通して内部の液体に圧力を加え、レンズ表面を変形させることで制御する。内部の液体は光を屈折させる媒質と、力の伝達の2つの役割をもつ。この可変焦点レンズが焦点距離を変化させる原理を図1に示す。図1に示すように、アクチュエータ14を、液体を押圧する方向(矢印A方向)に駆動することにより、弾性変形可能な薄く透明な板(レンズ表面部分)12、12が凸状となり、これにより凸レンズが形成される。その一方、アクチュエータ14を、液体を引き込む方向(矢印B方向)に駆動することにより、薄く透明な板12、12が凹状となり、これにより、凹レンズが形成される。
現時点で、本発明にかかる可変焦点レンズの特徴である高速性を満たすアクチュエータとして利用可能なものに、数十kHz程度の共振周波数をもち、n(ナノ)mオーダの位置決めが可能な積層型ピエゾアクチュエータがある。この種類のアクチュエータで数十kHz程度の共振周波数を持つものは、可動範囲が10μm程度しかない。そこで、本発明においては、アクチュエータが液体に圧力を加える部分の面積を、レンズ表面の面積より十分に大きく(たとえば数十倍程度に)設計する。このような構造を採用することにより、アクチュエータの変位を増幅してレンズ表面を変形させることができる。
また、シリンダ部とレンズ表面は高速に振動する必要があるので、目的とする応答速度に比べて十分高い固有振動数を持つように設計した。
より詳細には、本発明の目的は、内部に液体が充填された収容体であって、アクチュエータと接触して、当該アクチュエータの振動を伝達する圧力伝達部と、光の入射面および射出面に、二つの光透過部とを備えた収容体を備え、前記入射面および射出面の少なくとも一方に、前記圧力伝達部から液体を介して与えられる変位に応答して、光軸方向に凹凸に変位可能な一以上の表面部分であって、その面積sと、前記圧力伝達部の面積Sとの比(s/S)が、所定の値以下であるような表面部分を設け、前記アクチュエータの変位に応答して、前記表面部分が変位することにより、焦点距離を変化させることを特徴とする可変焦点レンズより達成される。
本発明によれば、圧力伝達部に与えられるアクチュエータからの変位を、S/s倍したものが、表面部分の変位としてあらわれる。したがって、ピエゾ積層型アクチュエータ(PZT)のように、高速な応答性を有するが、その可動範囲が小さいものを利用しても、十分に表面部分が光軸方向に、変位することができ、1kHzのオーダにて焦点距離を変化させることが可能となる。可撓性ないし弾性を有する表面部分を、入射面および射出面の双方に形成しても良いし、一方にだけ形成し、他方を剛性面としても良い。
好ましい実施態様においては、前記収容体において、一方の端に向けて、その径が拡張し、拡張した端部に圧力伝達部が配置されるとともに、他方の端部付近が単一の径を有し、対向する入射面および射出面が形成される。このような構成により、十分な応答性能を有するコンパクトな可変焦点レンズを形成することができる。
より好ましい実施態様においては、圧力伝達部において、アクチュエータと接触する側の面に、突起が形成されている。当該突起は、十字状である。圧力伝達部をこのように構成することにより、共振周波数が高くなり、かつ、アクチュエータの変位に対して効率よく、収容体中の液体を押し出し、或いは、引き戻すことが可能となる。
別の好ましい実施態様においては、収容体が、第1のアクチュエータと接触する第1の圧力伝達部および前記入射面を含む第1の部分と、第2のアクチュエータと接触する第2の圧力伝達部および前記射出面を含む第2の部分と、少なくとも入射面および射出面に対向する位置で第1の部分と第2の部分が密着した連結面とを有し、前記第1の部分の入射面および連結面、第1の部分の入射面および第2の部分の射出面、並びに、連結面および第2の部分の射出面の何れかの組み合わせで、変位可能な表面部分が形成される。このような2層構造をとることにより、自由度は「2」となり、各アクチュエータの駆動により、焦点距離だけでなく、収差を補正することも可能となる。
たとえば、前記連結面と射出面とが、それぞれ、異なる屈折率の材料で形成されても良いし、また、前記連結面と液体とが、それぞれ、異なる屈折率の材料で形成されても良い。
さらに、前記第1の部分および第2の部分に、それぞれ、屈折率の異なる液体が充填されても良い。これにより、たとえば、色収差を補正することもできる。
さらに別の好ましい実施態様においては、前記収容体が、第1のアクチュエータと接触する第1の圧力伝達部および前記入射面を含む第1の部分と、第nのアクチュエータと接触する第nの圧力伝達部および前記射出面を含む第nの部分と、前記第1の部分と第nの部分との間に介在する、(n−2)個の中間部分であって、第i(i=2,3,・・・,(n−2)))のアクチュエータと接触する第iの圧力伝達部を含む中間部分とを有し、隣接する中間部分において、前記入射面および射出面に対向する部分に密着する連結面が形成され、かつ、それぞれの部分において、入射面、連結面および/または射出面において、変位可能な表面部分が形成される。このような多層構造をとることにより、場合によって、その自由度をさらに増大させることができ、よりいっそう、レンズの撮像能力を向上させることが可能となる。上述した例において、前記第1の部分、(n−2)個の中間部分および第nの部分に、それぞれ、屈折率の異なる液体が充填されても良い。また、先の実施態様と同様に、連結面と射出面とが、それぞれ、異なる屈折率の材料で形成されても良いし、連結面と液体とが、それぞれ、異なる屈折率の材料で形成されていても良い。
なお、2層以上の多層構造においても、アクチュエータが接触する圧力伝達部に向かって、収容体を構成するそれぞれの部分(第1の部分、中間部分など)が、その径が拡大する構造を採用していても良い。これにより、レンズのサイズをそれほど大きくすることなく、種々の制御が可能なレンズを提供することが可能となる。
別の好ましい実施態様においては、前記入射面および少なくとも一方に、複数の表面部分が、所定の幾何学的配置にて並べられている。前記表面部分は、それぞれ、数十μmないし数百μmの径を有し、入射面および射出面の一方に形成された表面部分、或いは、双方に形成された対向する対の表面部分によりマイクロレンズが形成されていても良い。或いは、前記表面部分は、それぞれ、数十μmないし数百μmの幅を有する長手方向に細長い長方形状であり、入射面および射出面の一方に形成された表面部分、或いは、双方に形成された対向する対の表面部分によりマイクロレンズが形成されていても良い。長方形状のマイクロレンズの例では、表面部分が、長手方向の辺がほぼ接するように並べられているのが望ましい。
また、本発明の目的は、上記可変焦点レンズと、各アクチュエータを駆動するための信号を与える制御部と、前記各信号を増幅する増幅器とを備えたことを特徴とするレンズ制御装置によっても達成される。
前記制御部は、アクチュエータの変位をフィードバックとして受理しても良い。このフィードバックを利用して、アクチュエータの駆動信号のレベルが制御され得る。また、さらに、前記表面部分における変位を測定するレンズ変位測定部を備え、当該表面部分の変位が、前記制御部にフィードバックされても良い。レンズ変位は、上記アクチュエータの駆動信号のレベルを制御するために利用しても良い。また、これらフィードバック信号によりレンズの歪みをフィードバックし、より適切な制御を実現することもできる。レンズ表面の歪みは、アクチュエータの変位を用いて推定することで間接的に計測・フィードバックすることもができ、また、表面部分の変位から直接計測することによっても実現できる。
発明を実施するための望ましい形態
[レンズの概略]
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態につき説明を加える。図2は、本発明の実施の形態にかかる可変焦点レンズを概略的に示す斜視図である。図1および図2に示すように、本実施の形態にかかる可変焦点レンズ10は、剛性の収容体11を備えている。収容体11は、たとえば、一方の端に向かって径が拡張し、その端部にアクチュエータ14と密着する密着面を有している。密着面は、その面積を大きく確保するように開口しており、薄い材料からなる膜15が形成され、アクチュエータの振動を収容体内部に伝達できるようになっている。この部分を、シリンダ部とも称する。また、アクチュエータ14の他端には、少なくとも1つ(本実施の形態においては2つ)のレンズ表面部分のための開口が形成されている。この開口はたとえば円形であり、そこに、弾性変形可能な薄く透明な板からなるレンズ表面部分12が配置される。密着面13の面積は、レンズ表面部分12の面積より十分大きく、密着面に伝えられるアクチュエータの変位を、十分に増幅してレンズ表面部分を変形させることができるのが望ましい。つまり、密着面は、レンズの焦点を変えるための変位を与える圧力伝達部として機能し、その一方、レンズ表面部分は、圧力伝達部からの変位を受ける受容部として機能する。以下、上記密着面に形成された膜を、圧力伝達部と称する。
また、収容体11の内部には、アクチュエータの変位を伝達するための液体が充填される。この液体の屈折率は、レンズ表面部分12の屈折率と同様であるのが望ましい。たとえば、充填される液体として、エマルジョンオイルを利用することができる。
本実施の形態において、アクチュエータ14として、積層型ピエゾアクチュエータを利用している。積層型ピエゾアクチュエータは、1kHz以上の周波数で精度良く駆動することができるが、その一方、可動範囲が数μmと小さい。そこで、上述したように、圧力伝達部の面積を、受容部の面積より十分大きくし、積層型ピアゾアクチュエータの変位を、面積比に対応する増幅率で増幅して、受容部に伝達している。
図3は、密着面に形成される圧力伝達部の構造をより詳細に示す図である。図3に示すように、本実施の形態にかかる圧力伝達部(膜)15は、金属材料(たとえば、SUS304)で作られ、半径20mm、厚み0.5mmのサイズとなっている。また、膜15のアクチュエータの対向面の中央部には、十字状の突起16が形成され、レンズの変位の拡大率をより大きくするように構成している。この突起は、長さ20mm、幅2mm、高さ0.8mmのサイズである。この突起にアクチュエータが接触することで、効率よく、収容体11の液体を押し出し、或いは、引き込むことができる。また、このような構造を採用することにより共振周波数を高くするという効果をも奏する。
以下、本発明にかかる可変焦点レンズの原理につき説明を加える。
[本発明の原理・レンズ表面部分]
レンズの表面には、高速な応答を可能とする高い固有振動数と、ピエゾアクチュエータが発生する圧力で十分に変形する可撓性、さらにレンズとしての光学的性能が要求される。以下ではこれらについて述べる。固有振動数と可撓性を説明するにあたり、レンズ表面部分の形状は円盤状とし、その周囲が固定されているとする。
以下、円盤の半径をa[m]、厚みをd[m]、円盤の材質の密度をρ[kg/m3]、ヤング率をE[GPa]、ポアソン比をνとする。
これを元にして、円盤の固有振動数と、可撓性の関係を明らかにする。まず、周囲を固定された円盤の固有振動について述べる。
ここまで、「固有振動数」と記述してきたが、厳密には1次の固有振動数についてである。これは、円盤がレンズとして機能するためには、点対象な形状で振動する必要があることと、さらに一つの振動モードだけが励起されることが必要だからである。以下、単に固有振動数は1次の固有振動数のことを指す。
この円盤周囲を完全に固定した場合の1次の固有振動数ωは、
ωm,n=k2 m,n√(D/μ) (m,n=0,1,2,・・・)
・・・(1)
である。(なお、本明細書において、√(a)は、(a)1/2であることを示す。(「a」は、数値ないし数式を意味する。))ただし、
μ=ρd D=Ed3/(12(1−ν2)とする。
km,nは、
Im(ka)Jm−1(ka)−Jm(ka)Im−1(ka)=0 ・・・(2)
(ただし、Im:m次の変形された第1種ベッセル関数 Jm:m次の第一種ベッセル関数)
の解を小さい順に、n=0,1,2,・・・と番号を振ったものに対応する。
本発明においては、1次の固有振動数のみに注目しているので、m=0,n=0の時のみを考えることとし、以後簡単に、k(=k0,0)と記述する。
次にこの円盤の一方から圧力P[Pa]が加わった場合に、円盤中心がなす曲率と、その曲率に対応する焦点距離について述べる。
圧力P[Pa]が一様に加わった場合の中央の曲率半径rcは、
rc=(16D)/(a2P) ・・・(3)
で表される。
この時、レンズ内部の屈折率をn、外部を空気(屈折率1)とすると、中心部分の焦点距離fは、以下の関係を満たす。
1/f=((a2(n−1))/(16D))・P ・・・(4)
レンズ表面が平坦な場合は、焦点距離が∞になるので、1/fは0(ゼロ)である。レンズ表面が少し歪むと焦点距離は有限の大きな値になり、1/fは微小な数となる。つまり、1/fは大きい程レンズ表面が変形していることを表す。
単位圧力に対する変形しやすさの指標Sを、
S=(1/f)・(1/P)=(a2(n−1))/(16D)
・・・(5)
と定義する。Sは大きいほど圧力に対して簡単に変形することになり、可撓性を表すと考えられる。
この固有振動数ωと可撓性の指標Sの二つから、円盤のパラメータがそれぞれどの程度1次の固有振動数ωと可撓性の指標Sに寄与しているのかがわかる。
これらから、どのように設計すると1次の固有振動数を高く、かつ可撓性を大きくできるかにつき説明する。
円盤のパラメータのうち設計で選べるのは、半径(a)、厚み(d)および材料(E,ρ,ν)の3つであると考えられる。まず、半径(a)について考える。半径(a)は式(2)により決定されるので、以下の関係を満たす。
k∝1/a ・・・(6)
そこで、ここでは1次の固有振動数ωは半径の2乗に反比例し、可撓性の指標Sは半径の2乗に比例するとして説明を進める。
ω∝1/a2 ・・・(7)
S∝a2 ・・・(8)
同様に、厚みdに関して考えると、1次の固有振動数ωは厚みに比例し、可撓性の指標Sは厚みの3乗に反比例する。
ω∝d ・・・(9)
S∝1/d3 ・・・(10)
最後に、材料について考える。まず、これからの説明のために、1次の固有振動数ωを材料に関するパラメータで記述すると、
ω=k2d√((1/(12(1−ν2)))・(E/ρ))・・・(11)
となる。材料に関係するパラメータのみを抜き出すと、
ω∝√(E/(ρ(1−ν2))) ・・・(12)
である。
効率がよい、つまり固有振動数の高くしたときに可撓性を失う度合いの少ないパラメータは半径であり、半径を1/2にすると、固有振動数は4倍、可撓性の指標は1/4倍になる。
材料は、そのパラメータE、ρおよびνを自由に選べないという意味で特殊な設計要素である。
一般にポアソン比νは材料による値のばらつきが比較的小さいので、定数とみなせると仮定をすれば、感度(指標)Sはヤング率Eの逆数で減っていき、固有振動数ωはE/ρの平方根で増えてゆく。したがって、E/ρが大きな物質を選択することが重要である。
効率が悪いパラメータは厚みであり、厚みを2倍にすると、固有振動数は2倍、可撓性の指標は1/8倍も小さくなってしまう。
まとめると、半径、材料、厚みの順に最適化をしていけば、可撓性を保ちつつ固有振動数を高くしやすいということになる。
これらの結果をもとに、実際に設計をする場合のことについて述べる。半径はレンズ径を決定してしまうので、光学系の要請でその下限が決まる。ゆえに実際の応用が決まらないと議論が難しい。
材料も光学系の要請でいろいろ制限が加わるが、ここでは制限のないものと仮定して考察をする。以前の説明から、E/(ρ(1−ν2))が大きく、かつ、ヤング率Eが小さいほど固有振動数を上げやすいことがわかっている。この固有振動数の係数E/(ρ(1−ν2))を横軸に、可撓性の係数1/Eを縦軸にとって様々物質をプロットしたものを、図4に示す。但し、数値は定数を乗じてプロットした。図4に示すように、グラフ中で右や上のほうに分布している材料が、レンズ面を構成した場合に、固有振動数をあげやすく可撓性もあるので、適した材料であると考えられる。図4において、「Grass#1(符号401参照)」、「Grass#2(符号402参照)」、「Grass#3(符号403参照)」、「Grass#4(符号404参照)」、「Grass#5(符号405参照)」、および、「Grass#6(符号406参照)」は、それぞれ、アルカリ亜鉛硼珪酸、鉛カリソーダ、アルミノ珪酸、硼珪酸、高鉛および石英ガラスを示している。これらは、ほぼ同じような可撓性の係数をもっている。これらのうち、硼珪酸(符号404)、アルカリ亜鉛硼珪酸(符号401)、石英ガラス(符号406)およびアルミノ珪酸(符号403)が、比較的高い固有振動数の係数を持つ。
ガラスは固有振動数が高く、かつ比較的大きな可撓性を持ち、高分子化合物のポリエチレン・ポリスチレンは大きな可撓性をもつが、固有振動数は低くなる。これらの材料がレンズ面の材料として有力な候補であるだろう。これら材料の選択は、レンズ表面部分12を変位の幅(範囲)と、求められる応答速度とを考慮して定めるのが望ましい。
厚みは、ここで議論している範囲内では厚ければ厚いほどよいが、厚くなるほど可撓性がなくなるので、アクチュエータで発生できる圧力の範囲内で厚くすればよい。提案している可変焦点レンズで使用する積層型ピエゾアクチュエータは非常に大きな力を発生できる(10〜1000[N])ので、自由度は大きい。
[本発明の原理・シリンダ部(圧力伝達部)]
シリンダ部はレンズ表面部分と同じ構造を持つので、基本的にはレンズ表面部分と同じ考察が成り立つ。この部分も1kHzで振動する必要があるので、固有振動数を高く設計することが必要である。
シリンダ部の半径は、アクチュエータの可動範囲と、レンズ表面を十分変形させるのに必要な増幅率とに依存して決まる。厚み、材質に関しては、基本的にはレンズ表面と同様に考察できる。
ただし、レンズとして機能する必要がないので、その形状に突起や複雑な構造をもたせることでより堅く軽くすることが可能であり、種々の構造を採用することができる。たとえば、航空機などに用いられるハニカム構造をもたせれば、高い固有振動数かつ大きな弾性をもつ圧力伝達部を作ることも可能である。
アクチュエータの変位を大きく増幅してレンズ表面に伝えることが必要な場合は、圧力伝達部(シリンダ部)は大きな半径をもつことが必要になるため、それだけ材質や厚みを大きくする必要がでてくる。この場合、堅く軽い構造を設計することがより重要になる。
[本発明の原理:圧力伝達油]
アクチュエータによって発生した圧力をレンズ表面に伝達する機構には、kHzオーダで変化する圧力を伝えるための高速な応答性と、レンズ表面の歪みを正確に計測できることが必要である。レンズ表面の歪みを知ることができないと、焦点距離などの光学的特性がわからないので可変焦点レンズとして用いることができないからである。
提案するレンズでは、レンズ内部を満たしている屈折率の高い油に圧力をかけることでレンズ表面を歪める機構を用いている。この構造が高速な応答をもち、かつレンズ表面の歪みを正確に計測できることを以下に説明する。
一般に液体は圧縮率が低いため、油圧機構に代表されるように圧力を効率的に伝える媒体として適している。とくに油は温度などに対して安定で扱いがよく、圧縮率も低いので圧力伝達に適している。可変焦点レンズを歪めるのに必要な圧力は30[N/m2]程度と見積もられており、この圧力で油の圧縮は無視できる程小さい。そのため、アクチュエータの変位によってシリンダ部が変形して押し出した体積とレンズが歪んで膨らんだ体積は等しいと仮定できる。アクチュエータの変位は正確に測定できるので、レンズの歪みの程度もアクチュエータの変位から見積もることができ、レンズの光学的特性を知ることができる。
[システム構成および動作]
図5は、本実施の形態にかかる可変焦点レンズおよびその制御装置の概略を示すブロックダイヤグラムである。図5に示すように、制御コンピュータ20と、制御コンピュータから出力された駆動電圧を受理して、これを増幅してピエゾアクチュエータ14に与える増幅器22と、可変焦点レンズ10とを備えている。なお、試作品においては、レンズ表面部分12の変位を検出するセンサヘッド24およびセンサ制御部26とを有している。センサ制御部26から制御コンピュータ20に対して、レンズ表面部分の変位信号が返される。また、増幅器22からピエゾアクチュエータ14の変位が制御コンピュータ20に返される。なお、図5において、破線で示す信号線および破線にて囲んだ構成部分は、試験結果のデータを得るためのものである。したがって、実際にレンズとして使用する場合には、これら構成部分は省略され得る。
このように構成されたシステムにおいて、制御コンピュータ20において、所定の周波数で、所定の変位をさせるためのデータが、D/A変換されて、アナログ信号として増幅器に与えられる。増幅器22は、与えられたアナログ信号を、ピエゾアクチュエータ14を駆動するだけのレベルに増幅する。これによりピエゾアクチュエータ14が変位し、これがレンズ10の圧力伝達部15に加えられる。この変位は、レンズ収容体11中に充填された液体を介してレンズ表面部分12に伝えられ、これによりレンズ表面部分12が凸状或いは凹状に変位して、レンズの焦点が変化する。
[実施例]
以下、図5に示すシステムにおいて使用した可変焦点レンズの試作品につき説明を加える。図6A、Bに示すように、本実施の形態にかかる可変焦点レンズの試作品100においては、高さ50mm、内径27mm、外径35mmの二重のガラス管をもって、内径を構成するガラス管と外径を構成するガラス管との間にオイルを充填するように構成し、これを収容体111とした。収容体111の外径を構成するガラス管120において、そのほぼ中央側面に、正対する2つの穴(7.5mm径)を形成し、そこに、厚さ20μmのガラス薄膜を配置し、これを変形するレンズ表面部分112とした。さらに、その上から、厚さ1mmで、5mm径の穴を有するガラス板122を配置し、これにより、レンズ表面部分112を固定した(図6B参照)。なお、アクチュエータの変位(図5の符号501参照)やレンズ表面部分の変位(符号502参照)をフィードバックすることにより、レンズ表面部分の歪みを検出し、これに基づくより適切な制御を実現することも可能である。
たとえば、レンズ表面の歪みは、アクチュエータ14の変位を用いて推定することで、間接的に計測・フィードバックすることも可能であり、また、レンズ表面を直接計測することによっても実現することができる。内部の液体の圧力が無視できるほど小さく、レンズ表面およびシリンダ部分の固有振動数が十分に高ければ、アクチュエータの入力とレンズ表面の歪みとの間には、1対1の対応関係が仮定できる。このため、アクチュエータ14の変位を計測するだけで、レンズの歪みを推定することができる。つまり、図5のシステムにおいて、アクチュエータ14の変位からレンズ表面の歪みを推定してフィードバックすることもできる。
収容体111の下部には、たとえば、SUS304から作られた圧力伝達体115を配置し、その下部に密着されたピエゾアクチュエータ(図6A、Bにおいては図示せず)の振動を伝達するようにした。圧力伝達部115は、図3に示すように、共振周波数が高くなり、かつ、アクチュエータの変位に対して効率よく、収容体111中の液体を押し出すことができるように中央部を補強した設計となっている。また、収容体111の上部には、厚み5mmの収容体カバーを配置し、二つのガラス管の間に収容された液体を密封している。
試作においては、1次の共振周波数が、8.0kHz程度になることを目標として設計した。設計した構造の1次の共振周波数を有限要素法によって見積もると、レンズ表面は8.2kHz、シリンダ部は7.7kHzであった。
[レンズの応答]
上記試作された可変焦点レンズが、kHzオーダの応答性能をもつことを確認するために、図5に示すピエゾアクチュエータの変位(符号501参照)を入力とし、レンズ表面部分12の中心の変位(符号502参照)を出力として周波数応答を計測した。
レンズ表面部分の中心の変位を測定するため、センサヘッド24およびコントローラ26として、レーザ測距計LC−2430(キーエンス製、応答周波数20kHz)を用いて測定した。ピエゾアクチュエータ14として、P−841.10(PI−Polytec製、1次の共振周波数18kHz、可動範囲15μm、歪みセンサ内臓)を利用した。制御コンピュータ20においては、制御周期0.1msにて計測を行った。
図7は、計測した周波数応答のボード線図である。図7から、1kHzまで応答特性がほぼ変化しないことがわかり、試作された可変焦点レンズの構造が、kHzオーダで応答可能であることが確認できた。
[応用例]
次に、本発明にかかる可変焦点レンズの他の構成例につき説明を加える。第1の実施の形態においては、収容体内に単一の液体を充填しているが、収容体を複数の部分に区切ることにより、異なる屈折率を有する複数の液体を、収容体の部分に、それぞれ充填することも可能である。
レンズの焦点距離を変化させると,それに伴い光学的なパラメータが変化し、収差補正のための条件などが変化してしまう。従来このような場合は複数のレンズを動かすことで複数のパラメータの変化を吸収させていたが、1kHzのオーダに達する高速さをもってレンズを動かすことによって、パラメータ変化を吸収するのは難しい。そこで本発明においては、この問題を解決するために,可変焦点機構を多層化した構造を発明した。多層化により光学的なパラメータの自由度はその層の数だけ増える.
図8A〜Dは、それぞれ、多層化された可変焦点レンズの例を示す断面図である。たとえば、図8Aに示す可変焦点レンズにおいては、収容体211が、第1の部分221と第2の部分222とに分割され、第1の部分および第2の部分のそれぞれの端部に、ピエゾアクチュエータ214、215が配置されている。また、第1の部分221と第2の部分222とは、剛性をもって、たとえば、ガラス223により連結されている。また、第1の部分221および第2の部分222の外面には、可撓性ないし弾性をもつ表面部分212、213が形成されている。
このような構成により、ピエゾアクチュエータ214を駆動することにより、表面部分212を変位させ、その一方、ピエゾアクチュエータ215を駆動することにより、表面部分213を変位させることができる。これにより、自由度が「2」となり、2つの光学パラメータ、たとえば、焦点距離および球面収差を調整することができる。
図8Bに示す可変焦点レンズにおいては、第1の部分321と第2の部分322との間も、可撓性ないし弾性をもつ連結部(連結面)313が形成され、その一方、第2の部分322の外面に配置された表面部分316は剛性をもっている。この例でも、2つの光学パラメータが調整され得る。なお、光学パラメータには、焦点距離、球面収差のほか、コマ収差などが含まれる。
さらに、図8Cに示すように、収容体411を、第1の部分421、第2の部分422および第3の部分423に分割し、第1の部分421の外面に設けられた表面部分412、第1の部分421と第3の部分423との連結部424、および、第2の部分422の外面に設けられた表面部分413が可撓性ないし弾性をもち、対応するアクチュエータの駆動により、変位することができる。また、第2の部分と第3の部分との連結部425は剛性を持っている。この例では、自由度が「3」とすることもでき、この場合には、3つの光学パラメータ、たとえば、焦点距離、球面収差およびコマ収差を調整することが可能となる。図8Dは、自由度「3」となる可変焦点レンズのさらに他の例を示している。ここでは、第2の部分522の外面は剛性を持ち(符号516参照)、その一方、第2の部分522と第3の部分533との間の連結部(符号513参照)が可撓性ないし弾性を有している。第1の部分521の外面の表面部分512、および、第1の部分521と第3の部分523との間の連結部524が可撓性ないし弾性を有することは、図8Cの例と同様である。
また、収容体を構成する各部分に、それぞれ、屈折率の異なる液体を充填しても良い。これにより、光学パラメータの自由度を増やすことができ、また、色収差を調整可能とすることができる。図9Aおよび図9Bにこのような例を示す。図9Aに示す可変焦点レンズの構造は、図8Bのものと同様である。この可変焦点レンズ311の第1の部分321には、屈折率n1(≠空気の屈折率n0)の液体が充填され、第2の部分433には、屈折率n2(≠n1かつ≠n0)の液体が充填される。
図9Bに示す可変焦点レンズの構造は、図8Dのものと同様である。ここでも、第1の部分521には、屈折率n1(≠n0)の液体、第2の部分には、屈折率n2(≠n1かつ≠n0)の液体、第3の部分には、屈折率n3(≠n1,≠n2かつ≠n0)の液体が、それぞれ充填される。
このように、可変焦点レンズを多層化し、また、各層を構成する部分に異なる屈折率の液体を充填することで、高い応答速度を維持しつつ、高い撮像精度を実現することが可能となる。
[上記実施例および応用例の適用]
次に、上記実施例や応用例にかかる可変焦点レンズを、顕微鏡に適用した例について説明する。図11は、可変焦点レンズを用いた顕微鏡の例を概略的に示す図である。この例においては、対物レンズ1100と撮像素子1102との間に、可変焦点レンズ1110を配置している。この可変焦点レンズは、図1、図2に示すような構成であっても良いし、図8A〜D或いは図9A、Bに示すような構成であっても良い。この顕微鏡は、撮像素子1102と接続された画像形成部1104およびレンズ制御部1106を備えている。この画像形成部1104およびレンズ制御部1106により演算部1108が構成される。画像形成部1104は、撮像素子1102からの信号を受理して、顕微鏡にて撮影された画像データを作成する。また、レンズ制御部1106は、たとえばラプラシアンフィルタを含み、信号中の空間周波数が比較的高い成分を取り出して、レンズ焦点が合っているかどうかを判定している。
レンズ制御部1106からは、可変焦点レンズ1110のアクチュエータ(図示せず)を制御する制御電圧が出力される。また、可変焦点レンズ1110からその変位を示す信号がレンズ制御部1106に返されてもよい。このように構成された顕微鏡においては、対象物が移動することにより焦点面1112が、顕微鏡の光軸方向に変化すると(一点鎖線および二点鎖線参照)、レンズ制御部1106が、焦点が合っていないことを判定し、焦点面を光軸方向に前後に動かすようにアクチュエータを制御する。この前後の移動の際に撮像素子1102により撮影された画像に基づいて、レンズ制御部1106は焦点が合っている位置を判定する。本実施の形態においては、焦点距離の制御を1kHzのレートで実現できるため、焦点面の移動を、対象物の移動と比較して十分速くすることができ。適切な焦点合わせをすることが可能となる。
[他の実施例]
次に、本発明にかかる可変焦点レンズの他の実施例について説明する。図12および図13に示すように、この実施例にかかる可変焦点レンズ1210において、収容体11、アクチュエータ14、膜15などの構成は、図1ないし図3に示すものとほぼ同様である。また、収容体11の内部には、アクチュエータの変位を伝達するための液体、たとえばエマルジョンオイルが充填される。
可変焦点レンズ1210のアクチュエータ14が配置されていない側は、ほぼ平行な二つの面が形成され、それぞれの面に、複数の円形の開口が、対向するように形成され、かつ、その開口には、弾性変形可能な薄く透明な板からなるレンズ表面部分12が配置される。この複数のレンズ表面部分12は、一定の幾何学的配置にしたがって並べられる。たとえば、図13に示すように、一つおきの行および列が整列されるような配置であっても良いし、隣接する行および列が整列されるような配置であっても良い。また、レンズ表面部分12の屈折率と、収容体11の内部に充填される液体の屈折率とは同一であるのが望ましい。
レンズ表面部分12の径は微小(たとえば、数十μmないし数百μm)であり、可変焦点レンズ1210は、対向するレンズ表面部分12がマイクロレンズとして機能するため、マイクロ可変焦点レンズアレイとして機能する。この例では、それぞれのレンズ表面部分12は、同じ液体に接し、アクチュエータ14が駆動されることにより同じ圧力が印加される。したがって、焦点距離が一様に制御される。無論、収容体の一方の面にのみ、レンズ表面部分12を形成しても良い。
図14Aおよび図14Bは、このようなマイクロ可変焦点レンズアレイの適用例を示す図である。図14Aの例では、マイクロ可変焦点レンズアレイのレンズ表面部分12(単一のレンズ表面部分、または、対向するレンズ表面部分の組)と撮像素子1401とが一対一に対応している。これに対して、図14Bの例では、複数(9個)のレンズ表面部分(または9組のレンズ表面部分)1420−1、1420−2と、撮像素子1411−1、1411−2とが対応している。
また、マイクロ可変焦点レンズアレイの収容体に、対向するレンズ表面部分のそれぞれに別の液体(屈折率が同一でも良いし、異なっても良い)が接するように、剛性のある透明な仕切りを配置しても良い。このような配置は、対抗するレンズ表面部分のみに着目すると、図8Aに示す構造に対応する。さらに、図8Bに示すように、仕切りにおいて、収容体の一方の表面および仕切りに対向するレンズ表面部分を形成しても良い。さらに、図8C或いは図8Dに示すような三層構造を採用しても良い。
図15は、非点対称形状のレンズを採用した例を示す。この例では、レンズ表面部分1512が長方形になっている。レンズ形状を非点対称形状とした場合にも、図12および図13に示した例と同様に、それぞれの辺の長さが微小(たとえば、数十μmないし数百μメートル)のレンズ表面部分を、一定の幾何学的配置にしたがって並べたようなマイクロ可変焦点レンズアレイを形成しても良い。
さらに、このようなマイクロ可変焦点レンズにおいて、対向するレンズ表面部分のそれぞれに別の液体が接するように、透明な仕切りを配置しても良い(図8A〜図D参照)。この例でも、収容体の一方の面のみにレンズ表面部分1512を形成しても良いし、双方の面に対向するようにレンズ表面部分を形成しても良い。
図16は、それぞれが細長い長方形の形状をもつレンズ表面部分を、一方向に整列配置したマイクロ可変焦点レンズアレイの例を示す図である。レンズ表面部分1612は、剛性のある境界部1613を介して、隣接して並べられる。それぞれのレンズ表面部分12においては、長手方向中央部(符号1610)が、収容体の内部の圧力変化によっても、それぞれの位置における段面形状が同一となる。したがって、中央部1610をレンズとして利用することができる。この例でも、収容体1611の一方の面のみにレンズ表面部分1612を形成しても良いし、双方の面に、対向するようにレンズ表面部分1612を形成しても良い。
図16に示すマイクロ可変焦点レンズアレイを、たとえば、LCD(液晶表示装置)の前面側に配置し、レンズ焦点を変えることにより、いわゆる三次元画像の表示を可能にするために利用することができる。
さらに、このマイクロ可変焦点レンズアレイにおいて、対向するレンズ表面部分のそれぞれについて、図8A〜図8Dに示すような多層構造を採用しても良い。また、各層において、同一の液体を充填しても良いし、屈折率の異なる液体を充填しても良い。
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
たとえば、本実施の形態において、可変焦点レンズの構造について、漏斗状の拡張した一方の側に圧力伝達部を配置し、細く延びる側に対向するように、可撓性ないし弾性のある表面部分を配置し、表面部分の面積と比較して十分に大きな面積を有する圧力伝達体の駆動により、ピエゾアクチュエータの微小な動きを、表面部分の十分な変位に増幅できるように構成している。
しかしながら、上記形状や、試作品の形状に限定されるものではない。本発明においては、図10に示すように、アクチュエータ14が取り付けられた側(圧力伝達部15)の面積Sが、レンズとして機能する可撓性ないし弾性のある表面部分の面積sに比較して十分大きく(S>>s)、かつ、圧力伝達部と表面部分とがオイルなどの液体で連結され、圧力伝達部15の振動が表面部分12に伝えられるような構造であれば良い。このような構造をとることにより、表面部分の変位は、圧力伝達部の変位のS/s倍とすることができる。圧力伝達部の面積Sと表面部分の面積sとの比を調整することにより、表面部分の変位を所望の範囲に調整することも可能である。
また、前記実施の形態において、圧力伝達部のアクチュエータと接触する側に、十字形状の突起を形成したが、突起の形状は、これに限定されるものではなく、たとえば、120度の角度間隔をもって配置された三叉状であっても良い。
さらに、前記実施の形態において、収容体を2層構造、3層構造とした例を示したが、4層以上の層構造を採用しても良いことは言うまでもない。ここでも、各層に圧力伝達部を配置し、アクチュエータの変位を連結部やレンズ表面部分に伝達できるような構成を採用すれば良い。
さらに、自由度が犠牲されるが、多層構造において、すべての層にアクチュエータを配置せず、一部の層の表面部分や連結面を変位可能に構成しても良い。
また、マイクロレンズアレイの例において、収容体の面に平行に透明な仕切りを配置する変わりに、或いは、これに加えて、収容体の面にほぼ垂直な仕切りを配置し、仕切られた領域のそれぞれに異なる液体を充填しても良い。
本発明によれば、高速視覚システムのフレームレートで応答する可変焦点レンズ、および、その制御装置を提供することが可能となる。
産業上の利用分野
本発明は、特に、1kHz以上の高速な応答を有するレンズと協働するのが望ましい、ビジョンチップを利用した高速視覚システムに適用することができる。この高速視覚システムでは、高速度で移動する物体の画像を、焦点があった状態で追従することができ、当該物体の画像を生成し、或いは、高速度で移動する物体を捕捉する他の機器(アーム)などを制御することも可能となる。
さらに、本発明において、微小なレンズを幾何学的配置で並べたマイクロ可変焦点レンズアレイを構成し、単一のマイクロレンズ或いは所定数のマイクロレンズと撮像素子とを対応させて、複数の画像を生成し、それらに基づいて新たな画像を生成することにより、より精密な画像を取得することも可能となる。また、LCDなどと組み合わせることにより、三次元画像を生成することもできる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明にかかる可変焦点レンズの原理を説明する図である。
図2は、本発明の実施の形態にかかる可変焦点レンズを概略的に示す斜視図である。
図3は、本実施の形態にかかる圧力伝達部の構造をより詳細に示す図である。
図4は、本実施の形態にかかる可変焦点レンズにて用いる材料の特性を示すグラフである。
図5は、本実施の形態にかかる可変焦点レンズおよびその制御装置の概略を示すブロックダイヤグラムである。
図6A、Bは、本実施の形態にかかる可変焦点レンズの試作品の構造を示す図である。
図7は、試作品にて計測した周波数応答のボード線図である。
図8A〜Dは、それぞれ、本実施の形態において、多層化された可変焦点レンズの例を示す図である。
図9A、Bは、それぞれ、本実施の形態において、多層化された可変焦点レンズの例を示す図である。
図10は、本発明にかかる圧力伝達体と表面部分との関係を説明するための図である。
図11は、本発明にかかる可変焦点レンズを用いた顕微鏡の例を概略的に示す図である。
図12は、本発明の他の実施例にかかる可変焦点レンズの斜視図である。
図13は、本発明の他の実施例にかかる可変焦点レンズのレンズ表面部分を説明するための図である。
図14Aおよび図14Bは、このようなマイクロ可変焦点レンズアレイの適用例を示す図である。
図15は、本発明のさらに他の実施例にかかる可変焦点レンズを示す図であり、非点対称形状のレンズを採用した例を示す。
図16は、それぞれが細長い長方形の形状をもつレンズ表面部分を、一方向に整列配置したマイクロ可変焦点レンズアレイの例を示す図である。
Claims (19)
- 内部に液体が充填された収容体であって、
アクチュエータと接触して、当該アクチュエータの振動を伝達する圧力伝達部と、光の入射面および射出面に、二つの光透過部とを備えた収容体を備え、
前記入射面および射出面の少なくとも一方に、前記圧力伝達部から液体を介して与えられる変位に応答して、光軸方向に凹凸に変位可能な一以上の表面部分であって、その面積sと、前記圧力伝達部の面積Sとの比(s/S)が、所定の値以下であるような表面部分を設け、前記アクチュエータの変位に応答して、前記表面部分が変位することにより、焦点距離を変化させることを特徴とする可変焦点レンズ。 - 前記収容体において、一方の端に向けて、その径が拡張し、拡張した端部に圧力伝達部が配置されるとともに、他方の端部付近が単一の径を有し、対向する入射面および射出面が形成されることを特徴とする請求項1に記載の可変焦点レンズ。
- 前記圧力伝達部において、アクチュエータと接触する側の面に、突起が形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の可変焦点レンズ。
- 前記突起が、十字状であることを特徴とする請求項3に記載の可変焦点レンズ。
- 前記収容体が、第1のアクチュエータと接触する第1の圧力伝達部および前記入射面を含む第1の部分と、第2のアクチュエータと接触する第2の圧力伝達部および前記射出面を含む第2の部分と、少なくとも入射面および射出面に対向する位置で第1の部分と第2の部分が密着した連結面とを有し、
前記第1の部分の入射面および連結面、第1の部分の入射面および第2の部分の射出面、並びに、連結面および第2の部分の射出面の何れかの組み合わせで、変位可能な表面部分が形成されることを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載の可変焦点レンズ。 - 前記連結面と射出面とが、それぞれ、異なる屈折率の材料で形成されることを特徴とする請求項5に記載の可変焦点レンズ。
- 前記連結面と液体とが、それぞれ、異なる屈折率の材料で形成されることを特徴とする請求項5または6に記載の可変焦点レンズ。
- 前記第1の部分および第2の部分に、それぞれ、屈折率の異なる液体が充填されたことを特徴とする請求項5ないし7の何れか一項に記載の可変焦点レンズ。
- 前記収容体が、第1のアクチュエータと接触する第1の圧力伝達部および前記入射面を含む第1の部分と、第nのアクチュエータと接触する第nの圧力伝達部および前記射出面を含む第nの部分と、前記第1の部分と第nの部分との間に介在する、(n−2)個の中間部分であって、第i(i=2,3,・・・,(n−2)))のアクチュエータと接触する第1の圧力伝達部を含む中間部分とを有し、
隣接する中間部分において、前記入射面および射出面に対向する部分に密着する連結面が形成され、かつ、それぞれの部分において、入射面、連結面および/または射出面において、変位可能な表面部分が形成されたことを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載の可変焦点レンズ。 - 前記連結面と射出面とが、それぞれ、異なる屈折率の材料で形成されることを特徴とする請求項9に記載の可変焦点レンズ。
- 前記連結面と液体とが、それぞれ、異なる屈折率の材料で形成されることを特徴とする請求項9または10に記載の可変焦点レンズ。
- 前記第1の部分、(n−2)個の中間部分および第nの部分に、それぞれ、屈折率の異なる液体が充填されたことを特徴とする請求項9ないし11の何れか一項に記載の可変焦点レンズ。
- 前記入射面および少なくとも一方に、複数の表面部分が、所定の幾何学的配置にて並べられたことを特徴とする請求項1ないし12の何れか一項に記載の可変焦点レンズ。
- 前記表面部分が、それぞれ、数十μmないし数百μmの径を有し、入射面および射出面の一方に形成された表面部分、或いは、双方に形成された対向する対の表面部分によりマイクロレンズが形成されることを特徴とする請求項13に記載の可変焦点レンズ。
- 前記表面部分が、それぞれ、数十μmないし数百μmの幅を有する長手方向に細長い長方形状であり、入射面および射出面の一方に形成された表面部分、或いは、双方に形成された対向する対の表面部分によりマイクロレンズが形成されることを特徴とする請求項13に記載の可変焦点レンズ。
- 前記表面部分が、長手方向の辺がほぼ接するように並べられたことを特徴とする請求項15に記載の可変焦点レンズ。
- 請求項1ないし16の何れか一項に記載の可変焦点レンズと、各アクチュエータを駆動するための信号を与える制御部と、前記各信号を増幅する増幅器とを備えたことを特徴とするレンズ制御装置。
- 前記制御部が、アクチュエータの変位をフィードバックとして受理することを特徴とする請求項17に記載のレンズ制御装置。
- さらに、前記表面部分における変位を測定するレンズ変位測定部を備え、当該表面部分の変位が、前記制御部にフィードバックされることを特徴とする請求項17または18に記載のレンズ制御装置。
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