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JPWO2003039720A1 - 中空糸膜モジュール - Google Patents

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Abstract

モジュールハウジングと、少なくとも一方の端部が柔軟性ポッティング材を介してハウジングに固定された複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束と、ポッティング部に埋設されたリブ又はリングを有し、リブ又はリングがハウジングの内壁に固定され、かつ中空糸膜と直接接触せずにポッティング部に埋設されている中空糸膜モジュールとそれを用いたろ過方法。本発明は、実用的な耐圧性を保持できる中空糸膜モジュールを提供できる。

Description

技術分野
本発明は、河川水、湖沼水、地下水、伏流水等の上水処理、下水2次処理水、海水、工業用水、工程水等の水処理分野等において用いられる中空糸膜モジュールに関する。より詳しくは、中空糸膜とモジュールハウジングとを液密的に接着固定するポッティング材が柔軟性を有する素材により構成される中空糸膜モジュールに関する。
背景技術
中空糸膜モジュールは、半導体洗浄用超純水やパイロジェンフリー水の製造、電着塗料の回収によるクローズド化、発酵液中の酵素濃縮・除菌等の各種工業製品の製造プロセスにおける膜濾過処理や、浄水および下水等の除濁などに広く使用されている。その中で、上水処理や下水処理などの水処理分野では、近年、処理コストの低減のため、より大型の中空糸膜モジュールが求められている。
従来、この様な中空糸膜モジュールでは、中空糸膜とモジュールハウジングとを接着固定するポッティング材として、エポキシ樹脂が使用されていたが、エポキシ樹脂は、弾性率が高いために中空糸膜との接着界面において中空糸膜が破断し易いという問題があった。そのため、エポキシ樹脂と中空糸膜との接着界面にシリコーンゴム等の柔軟性を有する樹脂を充填することにより、界面付近の中空糸膜の破断を防止する手法が用いられていた。しかしながら、この方法では2回の接着工程が必要となり、経済性に劣る欠点を有していた。これに対して、近年、ポッティング材にウレタン樹脂を採用するとの提案がなされている(特開平7−47239号公報や特開平7−148421号公報など)。例えば、特開平7−47239号公報では、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリオキシテトラメチレングリコール(以下、PTMGと記載)とから得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、PTMGとひまし油、またはひまし油誘導体ポリオールとから構成される硬化剤成分とで硬化させてなるウレタン樹脂のゴム状領域の高温側温度が100℃を超え、10N/m台の貯蔵弾性率を示すことおよび、このウレタン樹脂をポッティング材として用いた中空糸膜モジュールは、90℃の熱水を差圧0.2MPa(200KPa)の条件で6ヶ月間リークの発生無く連続ろ過できることが開示されている。
しかしながら、この構成によるウレタン樹脂では、10N/m以上の貯蔵弾性率が得難いため、大口径の中空糸膜モジュールに採用した場合、差圧によってポッティング部が大きく変形し、リークが発生しやすいという問題があった。
また、特開平7−148421号公報では、流体透過性を有する保護筒に収納された中空糸膜束からなる単位ろ過エレメントとケースハウジング両端のポッティング部にわたる梁長を有する梁を用いることで、ポッティング部の変形を小さくする手法が開示されている。しかしながら、このモジュール構造では、単位ろ過エレメントを製作するための部材や梁部材が必要となり、かつ、これらの組立工程が加わるため、製造工程が煩雑でコスト高になるという問題があった。
ポッティング部の変形を抑制し、耐久性を向上する手段として、国際公開97/10893号パンフレットには、ポッティング部の中に埋設した状態で、ハウジング内壁へと直接固定されたリブが開示されている。同文献には、リブのハウジングへの直接固定手段として、溶接固定、切り欠きの組み合わせによる固定、ねじ込み固定、一体成型が開示されている。また、ポッティング部の破損防止やシール性の向上を図るための技術は、特開昭63−171606号公報、特開平06−296834号公報、特開平11−300173号公報にも開示されている。
発明の開示
本発明は、実用的な耐圧性が保持された中空糸膜モジュールを提供することを目的とする。
また本発明は、ポッティング部の厚みを厚くせずとも、実用的な耐圧性が保持され、ポッティング部界面における中空糸膜の破断を低減できる大型の中空糸膜モジュールを提供することをも目的とする。
さらに本発明は、シリコーン系樹脂等からなるポッティング材を用いた中空糸膜モジュールのように、オゾン耐性を有する中空糸膜モジュールにおけるポッティング部の耐久性を向上することをも目的とする。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、モジュールハウジングと、少なくとも一方の端部が該ハウジングに固定された複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束と、中空糸膜の端部がポッティング材を介して開口状態でハウジングに固定されたポッティング部に少なくとも一部が埋設されたリブ又はリングを有する中空糸膜モジュールであって、ポッティング材が柔軟性ポッティング材であり、リブ又はリングがハウジングの内壁に固定又はハウジングの内壁と一体成型されており、かつリブ又はリングが中空糸膜と直接接触せずにポッティング部に埋設されていることを特徴とする中空糸膜モジュールである。
更に、本発明は上記の中空糸膜モジュールを用いて、中空糸膜束の外表面側から原料水を供給し、内表面側から透過水を採水する外圧式ろ過方法をも包含する。
発明を実施するための最良の形態
図1は、本発明の中空糸膜モジュール(以下、単にモジュールという)の一例を示す模式図である。図1に示すように、本発明の中空糸膜モジュールは、モジュールハウジング1と、複数本の中空糸膜2からなる中空糸膜束と、リブ3及び/又はリング4を有しており、中空糸膜束の一方あるいは両方の中空開口端部がポッティング材5でモジュールハウジング1に固定されている。図1は、中空糸膜が開口しているポッティング部6の端面の外側(上側)に、キャップ7と一体成型した固定具8を、O−リング9を介して挟み込み、袋ナット(図1では図示せず。)をねじ込む事によって固定したものの一例である。
モジュールハウジングとは、ポッティング部と直接接触しているモジュールケースやカートリッジケースを指す。ハウジングの素材は、例えばポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン類、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド及びそれらにガラス繊維、炭素繊維、シリカ微粉末、炭素微粉末等を混錬した高分子化合物類であり、ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン等の金属類も包含する。ハウジングの寸法は特に制限されないが、本発明は大口径(例えば外径80〜400mm)を有するハウジングの場合に特に効果が顕著である。ハウジングの肉厚も限定されず、モジュールの使用水圧によって、適宜選択すれば良い。
本発明は、図1に示すように、ポッティング部6の変形の抑制や耐久性の保持のため、ポッティング部6へ埋設されたリブ3及び/又はリング4を有する。
リブは、ポッティング部を均等に支える事と、中空糸膜の充填本数をなるべく減らさずに均等に配する点から、中空糸膜モジュールの長さ方向に対して垂直な方向の断面形状が、図2〜6に示す様に十字状、格子状、放射状、十字状及び放射状と円との組み合わせ、のいずれかであることが好ましい。
リブ又はリングは、ポッティング部の耐久性の点から、中空糸膜の端部がポッティング材を介して開口状態で固定されているポッティング部に、中空糸膜と直接接触せずに、埋設されている。ここで、埋設とは、リブ又はリングの一部又は全部がポッティング部に埋設している場合を包含する。中空糸膜中空部を開口させる為に端部を切断する際の、リブによる切断具の損傷や、ろ過運転時の中空糸膜の横ゆれによる中空糸膜の破損発生を抑制する点からは、リブ又はリングの全部がポッティング部に埋設していることが好ましい。リブやリングには、使用形態に応じて、適宜付属品をつけても良い。例えばリブの中央に、モジュールをつるすための引掛け部を付けてもよい。
リブ又はリングは、中空糸膜と直接接触せずにポッティング部に埋設されている。ポッティング部には中空糸膜やハウジングと同等の耐薬品性が要求されるが、塊状では十分な耐薬品性を有する素材であっても、薄いフィルム状では極端に耐久性が劣る場合がある。そのため、リブ又はリングは、中空糸膜と直接接触しないことが必要である。なお、本発明は、リブを有するがリングは有さないモジュール、リングを有するがリブは有さないモジュール、リブとリングの両方を有するモジュールを包含する。リングとリブの両方を有するモジュールの場合、ポッティング部において、リブ、リングの両方が中空糸膜と直接接触せずに埋設されている必要はなく、リブ又はリングのいずれかが中空糸膜と直接接触せずに埋設されていればよい。ポッティング部の耐久性の点から、リブ、リングの両方ともが中空糸膜と直接接触せずに埋設されていることが好ましい。
リブ又はリングと中空糸膜の距離は特に制限はないが、その下限は、好ましくは1mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2mm以上である。またリブ又はリングと最も近い距離にある中空糸膜と、リブ又はリングとの距離の上限は、中空糸膜のモジュールへの充填本数を確保する点から、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。リブ又はリングと最も近い距離にある中空糸膜と、リブ又はリングとの距離は、好ましくは1〜10mm、より好ましくは1.5〜10mm、更に好ましくは2〜10mm、最も好ましくは2〜5mmである。
リブ又はリングと中空糸膜との間には両者の距離を一定以上に保つために別の素材のものを介在させることも可能であるが、ポッティング材の耐久性の点から、リブ又はリングと中空糸膜との間には、少なくとも1mmの厚みを有するポッティング材のみからなる充填層が存在することが好ましい。充填層の厚みは、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2mm以上である。充填層の厚みの上限も特に制限はないが、中空糸膜のモジュールへの充填本数を確保する点から、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。充填層の厚みの好適な範囲は1〜10mm、より好ましい範囲は1.5〜10mm、更に好ましい範囲は2〜10mm、最も好ましい範囲は2〜5mmである。
リブ又はリングと中空糸膜との直接接触を防止する手段の一例としては、(a)中空糸膜同士を予めポッティング材と同一の素材により接着固定し、その接着固定された中空糸膜束をリブ及び/又はリングが固定されたハウジングへと収納し、固定する方法、(b)中空糸膜束のハウジングへの収納に先立ち、リブ及び/又はリングに、ポッティング材と同一の素材をあらかじめプレコートしておく方法、(c)ポッティング材と同一の素材で構成されたリング状物で中空糸膜を束ねた後、リブ及び/又はリングが固定されたハウジングに収納して接着固定する方法等がある。
リブのハウジング内壁への固定方法は特に限定されない。例えば、リブは溶接固定、切り欠きの組み合わせ、ねじ込みのいずれかの方法によりハウジング内壁に直接固定されていてもよいし、ハウジング内壁と一体成型されていてもよい。図7に、リブ3とハウジング1の内壁が切り欠きの組み合わせ11により固定された例を示す。また、図1のように、リブ3は、後述のリング4などを介してハウジング1の内壁に固定されていてもよい。その場合、リブがリングの内壁に直接固定又はリングと一体成型されていてもよい。リブは、溶接、切り欠きの組み合わせ、ねじ込みのいずれかの方法によりリングの内周壁に直接固定されていてもよい。更にはリブとリングとハウジング内壁とが一体成型により形成されていてもよい。これらのうち、部品数の削減、リブへのプレコートしやすさ、組み立て易さの点から、特にリングとハウジングを一体成型にて製作し、プレコートしたリブを切り欠きの組合せやねじ込みにより固定することが好ましい。
本発明のモジュールは上記リブに代えて、あるいはリブと共に、リングを有することも可能である。リングは、ろ過時あるいは逆洗時に変形するポッティング部を支えると共に、ポッティング部、具体的にはハウジング内壁とポッティング部との境界面に作用するせん断応力を分散させるという働きを有している。本発明のモジュールはリングを設けることにより、より耐久性の高いポッティング部構造を提供できる。
リングのハウジング内壁への固定方法は特に限定されないが、リングがハウジング内壁へ溶接、切り欠きの組み合わせ、ねじ込み、ピン止め等により直接固定されているか、ハウジング内壁と一体成型されていることが好ましい。
リングは、ポッティング部を液密的に保持する点から、1箇所のポッティング部あたり1又は2個を配置することが好ましい。リングは、ポッティング部の注型の際の空気溜まりの発生を抑制し、ポッティング部を支える機能を保持する点から、そのリング状底面あるいは上面がポッティング部端面と平行になるように設置することが好ましい。
リングは、ポッティング部のリング部位周辺にかかる応力を分散させる観点から、出隅部にR加工(角を丸める加工)が施されていることが好ましい。R加工の施されたリングとハウジング内壁が一体成型されたモジュールの、ハウジング内壁の一例(縦断面模式図)を図23、24に示す。ここで、リングの出隅部へのR加工のR値(角丸め半径)は、応力分散の効果とポッティング部支持の効果を確保する点から、リングの突出幅{(ハウジング内径−リング内径)/2}の20〜80%であることが好ましく、40〜60%であることが特に好ましい。
リングの設置場所は特に限定されないが、ポッティング部の1箇所にのみ配置されている場合には、図23のように、ポッティング厚みの中央部に設置固定されていることが好ましい。ポッティング部の2箇所に配置されている場合には、図24のように、等間隔に配置されていることが好ましい。なお、図24では、2つのリングの厚みが同じものが示されているが、それらは異なっていてもよい。図23では、(a1)=(a3)×2の関係であることが、図24では、(b1)=(b3)×3の関係であることが好ましい。なお、ここで、a3、b3は、ポッティング部外端面からリングの厚み方向の中心までの距離を、a1、b1は、ポッティング部の全厚みを示している。また、応力の分散および中空糸膜充填本数の確保の点から、リングの内径とハウジングの内径との関係は、リングの内径に対するハウジングの内径の比率、すなわち、図23では、d2/d1、図24では、e2/e1の値が、1.05〜1.33の範囲であることが好ましい。さらに、全リング厚み(一箇所にのみリングを配置する場合は、その厚み(図23ではa2)、二箇所にリングを配置する場合には、その厚みの合計(図24ではb2×2)をいう)は、ポッティング部の支持および応力分散の点からポッティング部の厚みに対して、15〜75%であることが好ましい。
本発明の中空糸膜モジュールは、図1に示すように、ポッティング部変形の抑制の点から、中空糸膜2が開口している側のポッティング部6の端面の外側に固定具8が実質的に中空糸膜の開口端部を塞ぐことなく配されていることが好ましい。特に、中空糸膜の外表面から原料水を供給し、内表面側へろ過水が透過する、いわゆる外圧式ろ過に用いられる中空糸モジュールの場合、固定具の設置による効果が顕著である。外圧式ろ過の場合、原料水供給時には、中空糸膜の存在する側からポッティング部外端面へと加圧される。逆洗時には、ポッティング部外端面から中空糸膜の存在する側へ向かってろ過水による加圧がなされるものの、実際のろ過運転では、ろ過の時間に対する逆洗の時間は極めて微小であり、ポッティング部へ加えられる応力は、ほとんど常に、ろ過時の応力、すなわち、中空糸膜の存在する側からポッティング部端面側への応力となる。その為、ポッティング外端面へ向かう方向の変形応力に対する抗力を与える手段(固定具)がポッティング部の変形抑制に有効な手段となる。
固定具は枠部と仕切り部からなり、枠部と仕切り部で、又は仕切り部と仕切り部で形成される空間からろ過水の集水を可能とし、枠部と仕切り部でポッティング部の変形を抑制する。固定具の形状は特に制限はないが、ポッティング部がハウジング内壁から剥離するのを抑制し、ポッティング部にかかる応力を分散する点から、図8〜15に示すように、枠部12の中空糸膜モジュールの長さ方向に対して垂直な方向の断面形状は円形であり、仕切り部13の、中空糸膜モジュールの長さ方向に対して垂直な方向の断面形状は、十字状、格子状、放射状、ハニカム状、十字または放射状と円との組み合わせのいずれかであることが好ましい。
固定具の素材は、ポッティング部の変形を抑制する点から、外力によって変形しにくいことが好ましい。固定具を構成する素材は、例えばポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン類、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ゴム状弾性を有しないエポキシ樹脂等の単独または混合物及び、それらにガラス繊維、炭素繊維、シリカ微粉末、炭素微粉末等を混錬したプラスチック類であり、ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン等の金属類も包含する。
固定具は、中空糸膜の開口端部を実質的に塞ぐことなく設置することが好ましい。ポッティング部の変形時には、ポッティング部外端面が変形し、固定具と接触する場合がある。この場合、固定具の境界面近傍でのポッティング部変形による応力の集中を防止するため、固定具の出隅のうち、ポッティング部外端面と接触の可能性のある部分にはR加工を施しておくことが好ましい。そのような固定具の一例を図16(a)、図16(b)に示す。図16(b)は、図16(a)の固定具のA−A’断面図を示したものであり、断面図の下側が、中空糸膜モジュールのポッティング部外端面に接触する可能性のある部分である。
中空糸膜の開口端部を実質的に塞ぐことなく固定具を設置するための他の方法として、プラスチック製あるいは金属製のネットを介して固定具をポッティング部外端面へと配置させる方法もある。この方法は、ポッティング部外端面と固定具との間にネットを介することにより、ポッティング部の変形領域が更に小さく分割され、ポッティング部の実質的な変形量を小さくできるため、より好ましい。
固定具は、中空糸膜モジュールをろ過水配管へと直接取り付ける場合には、中空糸膜モジュール本体と接続配管を繋ぐキャップに固定することができる。キャップへの固定手段は、キャップや固定具の素材にもよるが、例えば溶接固定や溶着固定などにより両者を一体化する方法、固定具とキャップを一体成型する方法、中空糸膜モジュール本体とキャップとで固定具を挟み込む方法などがある。中空糸膜モジュールとキャップとで挟んで使用される固定具の一例(斜視図)を図17〜18に示す。固定具には、濾水の集水具を設けてもよい。固定具とキャップとを一体化した場合の一例(斜視図)を図19〜21に例示する。図19のように、キャップの集水具に運転装置との接続配管を設けてもよい。図21に示すように、キャップには接続配管への固定手段15を設けることも可能である。
中空糸膜カートリッジを管板のついたタンクに収納する場合には、上記キャップに準じた固定方法も可能であるが、タンク管板への固定機能を付与した固定具とする事も可能である。固定具自体にカートリッジのタンクへの設置固定機能を持たせた例を図22に示す。図22は、ボルト穴17を設けたフランジと固定具を一体成型したものの一例(斜視図)である。図22のようなフランジに代えて、他の接続手段や市販品を用いても構わない。
固定具には、図20に示すように、O−リングシールする為のO−リング溝14を設ける事もできる。この溝は、O−リングに限らず、角リングやその他の特殊な平パッキン等のシール材を用いる為の物であっても構わない。
ハウジング内壁も、先に記載したリブやリングと同様、ポッティング部の極端な耐薬品性低下の抑制の点から、中空糸膜と直接接触しないことが好ましく、中空糸膜との間に1mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2mmの距離を設ける事が好ましい。また、ハウジング内壁の最も近くにある中空糸膜とハウジング内壁との距離は、好ましくは1〜10mm、より好ましくは1.5〜10mm、更に好ましくは1〜5mm、最も好ましくは2〜5mmである。ハウジング内壁と中空糸膜との直接接触を防止する手法は、先に記載したリブやリングに関する場合と同様である。ハウジング内壁と中空糸膜の間には1mm以上の厚さを有するポッティング材のみからなる充填層を配することが好ましい。充填層の厚みの下限は、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2mm以上である。充填層の厚みの上限も特に制限はないが、中空糸膜のモジュールへの充填本数を確保する点から好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。充填層の厚みの好適な範囲は1〜10mm、より好ましい範囲は1.5〜10mm、更に好ましい範囲は2〜10mm、最も好ましい範囲は2〜5mmである。
中空糸膜モジュールのポッティング材は、ポッティング部に形成された薄膜部分における応力の集中を緩和し、ポッティング部境界面における中空糸膜の破断を抑制する点から、硬化後のJIS−A硬度が25〜90であるものが好ましい。ここでJIS−A硬度は、JIS−K6253のタイプAデュロメータによるデュロメータ硬さ試験により測定したものである。また、測定温度によって値が異なる樹脂の場合には、使用温度における硬度をいう。
ポッティング材としては、硬化後に柔軟性を有する1液または2液性の熱硬化性樹脂などが使用できる。ポッティング材としては、例えばウレタン樹脂、シリコーンゴム等のシリコーン樹脂、さらには、ゴム状物質とエポキシ樹脂を混合あるいは共重合し、ゴム状弾性を付与した、ゴム変性エポキシ樹脂が挙げられる。これらのうち、オゾン耐性の点からは、シリコーンゴム等のシリコーン樹脂が好ましい。
本発明の中空糸膜モジュールは、タンク型ろ過装置のろ過タンク内あるいはラック式ろ過装置の外側ケース内に懸垂して支持される中空糸膜カートリッジであっても良い。この時、カートリッジ自体に使用可能な素材としては、先に挙げた、モジュールハウジングと同様の素材が使用可能である。
中空糸膜としては、例えば孔径領域が限外ろ過膜(以降、UF膜と記載)、精密ろ過膜(以降、MF膜と記載)の領域に入るものが使用できる。これらの膜の孔径は、限外ろ過膜では、分画分子量で3,000〜100,000ダルトン、精密ろ過膜では、平均孔径が0.001〜1μmであるものが好ましい。ここで平均孔径は、ASTM:F−316−86によるエアフロー法により測定される値である。さらに中空糸膜の空孔率は30〜90%であることが好ましい。ここで空孔率とは、水湿潤状態の中空糸膜の質量を測定し、その単純体積(内径、外径、長さから算出した体積)と使用するポリマーの密度から算出したものである。
中空糸膜を構成する素材としては、上記UF膜、MF膜として製膜可能な素材であれば限定されないが、例えばUF膜の場合では、エチルセルロース、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース等のセルロース類、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド類、ビニルアルコール系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のハロゲン化樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン等のスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のエーテル系樹脂などが、MF膜の場合では、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン類、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂、ビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。これらのうち、オゾン耐性の点からは、塩素系樹脂、フッ素系樹脂が好ましい。
本発明のモジュールは上記構成により、ポッティング部の厚みを厚くせずとも十分な耐圧性を有する。モジュールの直径にもよるが、例えばポッティング部の厚みが30〜120mmという範囲であっても、十分な耐圧性を有する。
本発明の中空糸膜モジュールは例えば次のような方法により製造できる。温度相分離法或いは濃度相分離法により(温度層分離法については、例えば特開2001−62267の実施例など)製膜した中空糸膜の多数本を束ね、片側にフランジのあるハウジングに収納する。中空部を開口したい側は、端部の中空部をあらかじめ塞いだ後、例えば図25の様なフランジに対応する固定部分を持った接着冶具を取り付け、V−バンドやクランプ、或いはハウジングにネジ加工が施されている場合は、袋ナットにより締め込み、樹脂漏れをせぬように固定する。また、中空部を塞ぐとともに、原料水の供給口を設けたい側には、あらかじめ、図27に示すようなチューブ状物の多数を中空糸膜と平行になるように配置し、図26に示す様な接着冶具をパイプ部に差込み、樹脂漏れのないように固定する。その後、上記両側に接着冶具を取り付けたハウジングを回転させ、遠心力を利用して、両側へと液状のポッティング材を投入する。なお、図25、26で、18は樹脂注入口を示す。使用するポッティング材の種類によっては40〜80℃程度の加温が必要な場合もある。所定時間が経過し、ポッティング材が硬化した後、回転を終了し、両側の接着冶具を取外す。中空部を開口させる側では、中空部を開口させる為に、接着端部を回転丸鋸等により切断し、中空糸中空部を開口させる。また、中空部を塞ぐと共に、原料水の供給口を開口させる側では、図24に示すようなチューブ状物を取り除く事により、本発明の、片側濾水集水型外圧式ろ過膜モジュールを製作できる。
本発明のモジュールは、いわゆる内圧式ろ過方法、外圧式ろ過方法のいずれにも使用できるが、特に、中空糸膜束の外表面側から原料水を供給し、内表面側から透過水を採水する外圧式ろ過方法に好適に使用できる。また、本発明のモジュールは、耐薬品が向上しており、例えばオゾンの存在下で行うろ過方法、更にはオゾンの存在下で行う外圧式ろ過方法で好適に使用できる。
中空糸膜モジュールの外圧ろ過方法では、中空糸膜の外表面側に非透過性の汚染物質が蓄積するので、定期的にエアバブリングや逆洗、フラッシングのいずれか或いは複数の物理洗浄を行う事により、より安定なろ過運転を継続できる。中空糸膜モジュールによる外圧ろ過法の詳しい例として、国際公開00/63122号等がある。
本発明のモジュールは、オゾンを使用するろ過方法においても、より一層効果を発揮する。オゾンを原料水に混入・溶解させる方法としては、散気管やU−チューブによる方法の他、エジェクターを使用して、オゾンの原料水への溶解を促進する方法も適用可能である。さらに、原料水ではなく、ろ過水にオゾンを含有させ、オゾン含有水を逆洗水として使用する手法も中空糸膜モジュールのポッティング部へのオゾン酸化劣化を軽減できると共に、膜面の汚染物質を酸化分解できる優れた手法となりうる。オゾンは連続的に供給してもよいし、間欠的に供給してもよい。本発明のモジュールは、上記構成をとることにより、例えばオゾン濃度0.3〜3mg/リットルという過酷な条件下であっても、長期間にわたり実用的な耐圧性を保持できる。
実施例
以下、実施例により、本発明の一例を説明する。なお、実施例中のポッティング材のJIS−A硬度は、JIS−K6253のタイプAデュロメータ硬度計(高分子計器(株)社製 アスカーA型)で測定した。
参考例1
ウレタン樹脂の主剤として、日本ポリウレタン(株)社製の「C−4403」(商品名)と、硬化剤として、同社製「N−4221」(商品名)を質量比(主/硬):63/37で混合し、フランジ付ABS樹脂製ハウジング(内径/外径:169mm/183mm)に複数回に分けて投入し、雰囲気温度30℃で4時間放置し、硬化させた後、50℃で16時間の後加熱処理を施して、厚み65mmのポッティング部を形成した。なお、ポッティング材であるウレタン樹脂の硬化後のJIS−A硬度は、25℃で95、40℃で90であった。
次に、上記ウレタン樹脂が充填されたハウジングを、ボルト穴を有するフランジの付いたステンレス製円筒状耐圧容器に平パッキンを介して収納した。ハウジングのフランジ部に、ボルト穴を有するフランジと一体成型した、仕切り部が十字状の平断面を有する固定具(O−リング溝を省略した断面図:図28)を、O−リングを挟ませて取りつけ、ボルトで固定した後、耐圧容器の、固定具が取り付けられていない側から水温40±1℃の温水で圧力300KPaにて水圧加圧した。ポッティング部の変形を観察したところ、ポッティング部端面のうち、固定具(枠部、仕切り部)で支持された部分から最も離れた部分が最大変形を示し、加圧前後(変形前後)の厚みの差は2mmであった。上記水圧加圧を240時間継続したが、ポッティング部の亀裂等の破壊は、確認されなかった。
参考例2
サンユレック(株)社製の「SU−1760」(商品名)の主剤と硬化剤を質量比(主/硬):20/80で混合し、図23に示すような、リング(内径160mm、厚み15mm、R加工:2mmR)が一体成型により設けられた、フランジ付きABS樹脂製ハウジング(内径/外径:169mm/183mm)に複数回に分けて投入し、雰囲気温度40℃で4時間放置し、硬化させた後、さらに60℃で20時間の後加熱処理を施して、ウレタン樹脂をポッティング材とする、厚み65mmのポッティング部を形成した。なお、ウレタン樹脂の硬化後のJIS−A硬度は25℃で78、60℃で71であった。
次に、上記ウレタン樹脂が充填されたハウジングを、ボルト穴を有するフランジのついたステンレス製円筒状耐圧容器に平パッキンを介して収納した。ハウジングのフランジ部に、ボルト穴を有するフランジの付いた、仕切り部が円と十字の組み合わせの平断面を有する固定具(O−リング溝を省略した断面図:図29)を、O−リングを挟ませて取りつけ、ボルトで固定した後、耐圧容器の、固定具が取り付けられていない側から水温40±1℃の温水で圧力300KPaにて水圧加圧した。ポッティング部の変形を観察したところ、ポッティング部端面のうち、固定具中央の円形の仕切り部で支持された部分の中心部が最大変形を示し、加圧前後(変形前後)の厚みの差は2mmであった。上記水圧加圧を200時間継続したが、ポッティング部の亀裂等の破壊は確認されなかった。
参考例3
GE東芝シリコーン(株)社製の「TSE−3337」(商品名)のA剤とB剤を質量比(A剤/B剤):1/1で混合し、図23のようなリング(内径137mm、厚み20mm、R加工:3mmR)がハウジング内壁に溶接固定されたSUS−304製フランジ付きハウジング(内径/外径:157mm/165mm)に投入し、雰囲気温度60℃で5時間放置し、硬化させた後、120℃で3時間の後加熱処理を施して、シリコーンゴムをポッティング材とする、厚みが60mmのポッティング部を形成した。なお、シリコーンゴムの硬化後のJIS−A硬度は、25℃、60℃、いずれも、60であった。
次に、上記、シリコーンゴムが充填されたハウジングを、ボルト穴を有するフランジのついたステンレス製円筒状耐圧容器に平パッキンを介して収納した。ハウジングのフランジ部に、ボルト穴を有するフランジの付いた、仕切り部が円と放射状の組み合わせの平断面を有する固定具(O−リング溝を省略した断面図:図30)をO−リングを挟ませて取りつけ、ボルトで固定した後、耐圧容器の、固定具が取り付けられていない側から水温25±2℃の温水で圧力500KPaにて水圧加圧した。ポッティング部の変形を観察したところ、ポッティング部端面のうち、固定具中央の円形の仕切り部で囲まれた部位及びその中央の円形の仕切り部から枠部に延びた仕切り部で分割された6箇所の部位に支持された部分で、中心部が最大変形を示し、いずれも加圧前後(変形前後)の厚みの差は2mmであった。
上記水圧加圧を450時間継続したが、ポッティング部の亀裂等の破壊は、確認されなかった。
参考例4
フランジ付きハウジングにリングを溶接固定して参考例3と同様の構造とした後、リングに、平断面が十字状であるリブを溶接固定した。
次に、GE東芝シリコーン(株)社製の「TSE−3337」(商品名)のA剤とB剤を質量比(A剤/B剤):1/1で混合し、上記ハウジングに投入し、雰囲気温度60℃で5時間放置し、硬化させた後、120℃で3時間の後加熱処理を施して、シリコーンゴムをポッティング材とする、厚み60mmのポッティング部を形成した。シリコーンゴムの硬化後のJIS−A硬度は、室温、60℃、いずれも60であった。
次に、上記シリコーンゴムが充填されたハウジングを、フランジのついたステンレス製円筒状耐圧容器に平パッキンを介して収納し、キャップを取り付けた後、キャップの両側から交互に水温25±2℃の水で圧力500KPaにて繰り返し水圧加圧した。上記水圧加圧の繰り返しを10,000回繰り返したのち、ポッティング部を調べたが、亀裂等の破壊は確認されなかった。
実施例1
特開2001−62267号公報に記載された方法で得られたPVDF中空糸精密ろ過膜(内径/外径:0.70/1.25mm、ASTM 316−86による平均孔径:0.2μm、空孔率70%)を1200本束ね、これを4束用意した。
次に、図23に示すようなリング4(内径130mm、厚み21mm、R加工:3mmR)が一体成型により設けられたSUS−304製のフランジ付きハウジング1(内径/外径:140/150mm、長さ:1000mm)を準備した。このハウジングのリング4には、GE東芝シリコーン(株)社製のシリコーンゴム「TSE−3337」(商品名、A剤/B剤:1/1の質量比にて混合後、使用)が厚さ2mmにプレコートされた、平断面が十字状であるSUS−304製のリブ3が、切り欠きの組み合わせにより固定されている。
上記4束の中空糸膜束を上記ハウジングに収納した後、まとめて「TSE−3337」製の厚み3mmのリング状物により固定した。ハウジングフランジ側は、中空糸膜束の中空部を封止した後、接着冶具を取り付け、フランジのついていない側には、外径10mmのポリプロピレン製チューブ状物を37本配置した後、接着冶具を取り付けた。
雰囲気温度60℃にて遠心注型により、上記接着冶具が取り付けられたハウジングの両側端部と中空糸膜とをポッティング材のGE東芝シリコーン(株)社製の「TSE−3337」(商品名、A剤/B剤:質量比1/1にて混合)により固定した後、雰囲気温度120℃で後加熱処理した。
次に、フランジ側は不要なポッティング部を切断して、中空糸膜2の中空部を開口させ、またその反対側はチューブ状物を取り除き、中空部が封止されており、37個所の原水供給口が開口した、片端集水型の中空糸膜カートリッジを完成させた。得られたカートリッジのポッティング部6の厚みは、フランジ側で100mm、反対側は30mmであった。
なお、ポッティング材5であるシリコーンゴムのJIS−A硬度は、25℃、60℃、いずれの場合も60であった。
次に、図31に示す様に、上記中空糸膜カートリッジを、フランジのついた側を上にして、フランジ付き外側ハウジング(ステンレス製円筒状耐圧容器)19に平パッキン21を介して収納した。なお、図31において、10は中空糸膜モジュールの濃縮液/エア抜き兼用開口部を、20はエア抜きノズルを示す。その後、ハウジング1のフランジに、仕切り部が円と放射状の組み合わせの平断面を有する固定具8(O−リング溝を省略した断面図:図10)とフランジ16とキャップ7を一体成型したものを、O−リング9を挟ませて取りつけた後、ボルト22で固定した。外側ハウジング19の、固定具側とその反対側から、交互に水温43±2℃の温水で圧力300KPaにて繰り返し水圧加圧した。この際、供給される温水には、オゾンガスをエジェクターにより添加し、オゾン水の濃度が10mg/リットルとなるようにオゾンガス添加量を調節した。上記オゾン水の水圧加圧(90秒/サイクル)の繰り返しを15,000回繰り返したのち、ポッティング部を調べたが、亀裂等の破壊や中空糸膜の損傷は確認されなかった。再度繰り返し加圧評価を再開し、延べ50,000回の繰り返し加圧後に再びポッティング部を調べたが、亀裂等の破壊や中空糸膜の損傷は確認されなかった。さらに、繰り返し加圧評価を継続し、延べ70,000回の繰り返し加圧後に再びポッティング部を調べたが、亀裂等の破壊や中空糸膜の損傷は確認されなかった。上記繰り返し加圧試験は、実際にろ過運転を行った場合において30分おきに逆洗を行うサイクル運転と仮定した時の、4年分に相当する。実験後、モジュールを解体したところ、ポッティング部において、中空糸膜とリブとの距離は最短で2mm、中空糸膜とリングとの距離は最短で3mmであった。
実施例2
特開2001−62267号公報に記載された方法で得られたPVDF中空糸精密ろ過膜(内径/外径:0.70/1.25mm、ASTM 316−86による平均孔径:0.2μm、空孔率70%)を1250本束ね、これを4束用意した。
次に、上記4束の中空糸膜束をSUS−304製のハウジング1(内径/外径:155/165mm、長さ:1000mm)へと収納した後、まとめてシリコーンゴム「XE14−B7179」(商品名、GE東芝シリコーン(株)社製)からなる、厚さ3mmのリング状物により固定した。なお、このハウジングは、図23に示すような、リング4(内径:145mm、厚み:21mm、R加工:3mmR)が一体成型により設けられ、そのリングに、平断面が十字状のリブ3が切り欠きの組み合わせにより取り付けられていた。また、リブ3は、GE東芝シリコーン(株)社製の「XE14−B7179」(商品名)のA剤、B剤を質量比(A剤/B剤):1/1にて混合して得たシリコーンゴムが、厚さ2mmでプレコートされていた。
次に、ハウジングフランジ側には、中空糸膜束の中空部を封止後、接着冶具を取り付け、フランジのついていない側には、外径10mmのポリプロピレン製チューブ状物を37本配置した後、接着冶具を取り付けた。
接着冶具が取り付けられたハウジングの両側端部と中空糸膜とを、GE東芝シリコーン(株)社製「XE14−B7179」(商品名)のA剤とB剤を質量比(A剤/B剤):1/1で混合して得たシリコーンゴムのポッティング材を用いて、雰囲気温度60℃にて遠心注型により接着固定した。
上記中空糸膜カートリッジを雰囲気温度120℃で後加熱処理した後、フランジ側は不要なポッティング材を切断し、中空糸膜の中空部を開口させ、その反対側は、チューブ状物を取り除き、37個所の原水供給口が開口しており、中空部が封止された、片端集水型の中空糸膜カートリッジを完成させた。得られたカートリッジのポッティング部の厚みは、フランジ側で100mm、反対側で30mmであった。
なお、ポッティング材であるシリコーンゴムのJIS−A硬度は、25℃、60℃、いずれも58であった。
次に、図31に示す様に、上記、中空糸膜カートリッジ1のフランジのついた側を上にして、フランジ付き外側ハウジング(ステンレス製円筒状耐圧容器)19に平パッキン21を介して収納した。その後、ハウジングのフランジに、仕切り部が円と十字状の組み合わせの平断面を有する固定具(O−リング溝を省略した断面図:図9)とフランジとキャップ7が一体成型されたものを、O−リング9を挟ませて取りつけた後、ボルト22で固定した。外側ハウジング19の、固定具側とその反対側から、交互に水温45±2℃の温水で圧力200KPaにて繰り返し水圧加圧した。この際、供給される温水には、オゾンガスをエジェクターにより添加し、オゾン水の濃度が10mg/リットルとなるようにオゾンガス添加量を調節した。
上記オゾン水の水圧加圧(90秒/サイクル)の繰り返しを20,000回繰り返したのち、ポッティング部を調べたが、亀裂等の破壊や中空糸膜の損傷は確認されなかった。再度繰り返し加圧評価を再開し、延べ60,000回の繰り返し加圧後に再びポッティング部を調べたが、亀裂等の破壊や中空糸膜の損傷は確認されなかった。さらに、繰り返し加圧評価を継続し、延べ80,000回の繰り返し加圧後に再びポッティング部を調べたが、亀裂等の破壊や中空糸膜の損傷は確認されなかった。上記繰り返し加圧試験は、実際にろ過運転を行った場合において30分おきに逆洗を行うサイクル運転と仮定した時の、4.5年分に相当する。実験後、モジュールを解体したところ、ポッティング部において、中空糸膜とリブとの距離は最短で2mm、中空糸膜とリングとの距離は最短で3mmであった。
実施例3
特開2001−62267号公報に記載された方法で得られたPVDF中空糸精密ろ過膜(内径/外径:0.70mm/1.25mm、ASTM 316−86による平均孔径:0.2μm、空孔率:70%)を1260本束ね、これを4束用意した。
上記4束の中空糸膜束を、SUS−304製フランジ付きハウジング(内径/外径:155mm/165mm、長さ:1000mm)へと収納した。このハウジングには、図23に示すようなリング4(内径:145mm、厚み:21mm、R加工:3mmR)が一体成型により設けられ、リング4には、断面形状が十字状であるリブ(O−リング溝を省略した断面図:図2)が切り欠きの組み合わせにより固定されていた。リブ3は、GE東芝シリコーン(株)社製の「XE14−B7179」(商品名)のA剤とB剤を質量比(A剤/B剤):1/1にて混合して得たシリコーンゴムが、厚さ2mmでプレコートされているものを使用した。
次に、カートリッジハウジングのフランジ側には、中空糸膜束の中空部を封止後、接着冶具を取り付け、フランジのついていない側には、外径11mmのポリプロピレン製チューブ状物を37本配置した後、接着冶具を取り付けた。
接着冶具が取り付けられたハウジングの両側端部と中空糸膜とを、GE東芝シリコーン(株)社製の「XE14−B7179」(商品名)のA剤とB剤を質量比(A剤/B剤):1/1で混合したシリコーンゴムのポッティング材を用いて、雰囲気温度60℃にて遠心注型により接着固定した。
上記中空糸膜カートリッジを雰囲気温度120℃で後加熱処理した後、フランジ側は不要なポッティング材を切断し、中空糸膜の中空部を開口させ、その反対側は、チューブ状物を取り除き、37個所の原水供給口が開口しており、中空部が封止された、片端集水型の中空糸膜カートリッジを完成させた。得られたカートリッジのポッティング部6の厚みは、フランジ側で110mm、反対側で30mmであった。
なお、ポッティング材であるシリコーンゴムの硬化後のJIS−A硬度は、25℃、60℃、いずれも58であった。
次に、図32に示す様に、上記、中空糸膜カートリッジ1のフランジのついた側を上にして、ネジ付のステンレス製外側ハウジング19にO−リング9を介して収納した。更に、仕切り部が円と放射状の組み合わせの平断面を有する固定具8(O−リング溝を省略した断面図:図15)とキャップ7を一体成型したものを、O−リング9を挟ませて取りつけた後、外側ハウジング19とキャップ7とを袋ナット23を締めこむ事により固定した。外側ハウジング19の、固定具側とその反対側から、交互に水温43±2℃の温水で圧力200KPaにて繰り返し水圧加圧した。この際、供給される温水には、オゾンガスをエジェクターにより添加し、オゾン水の濃度が10mg/リットルとなるようにオゾンガス添加量を調節した。
上記オゾン水の水圧加圧(90秒/サイクル)の繰り返しを50,000回繰り返したのち、ポッティング部を調べたが、亀裂等の破壊や中空糸膜の損傷は確認されなかった。再度繰り返し加圧評価を再開し、延べ100,000回の繰り返し加圧後に再びポッティング部を調べたが、亀裂等の破壊や中空糸膜の損傷は確認されなかった。さらに、繰り返し加圧評価を継続し、延べ160,000回の繰り返し加圧後に再びポッティング部を調べたが、亀裂等の破壊や中空糸膜の損傷は確認されなかった。上記繰り返し加圧試験は、実際にろ過運転を行った場合において30分おきに逆洗を行うサイクル運転と仮定した時の、9.3年分に相当する。実験後、モジュールを解体したところ、ポッティング部において、中空糸膜とリブとの距離は最短で2mmであった。
参考例5
固定具が取り付けられていない点を除いて、参考例1と同一の条件で評価用サンプルを用意し、参考例1と同一条件で水圧加圧を行った。ポッティング部の変形を観察したところ、ポッティング部の中心部で最大の変形を示し、加圧前後(変形前後)の厚みの差は8mmであった。上記水圧加圧を継続したところ、11時間でポッティング部の外周部にそって凝集破壊が発生し、水が漏れ出したため、評価を中止した。
参考例6
リング、固定具が取り付けられていない点を除いて、参考例2と同一条件で評価用サンプルを用意し、参考例2と同一条件で水圧加圧を行った。ポッティング部の変形を観察したところ、ポッティング部の中心部で最大の変形を示し、加圧前後(変形前後)の厚みの差は14mmであった。
上記水圧加圧評価を継続したところ、7時間でポッティング部の外周部にそって凝集破壊が発生し、水が漏れ出したため、評価を中止した。
参考例7
リング、固定具およびリブが取り付けられていない点を除いて、参考例4と同一の評価サンプルを用意し、参考例3と同一条件で、水圧加圧を行った。ポッティング部の変形を観察したところ、ポッティング部の中心部で最大の変形を示し、加圧前後(変形前後)の厚みの差は14mmであった。
さらにこのサンプルを用いて、参考例4と同一条件で、繰り返し加圧試験を実施したところ、3407回目で加圧ポンプの流量異常により、繰り返し加圧装置が停止した。このサンプルのポッティング部を確認したところ、ポッティング部の外周部から8mm内側に、円弧状に亀裂が発生しており、リークの発生に繋がっていたため、評価を中止した。
比較例1
リング、固定具及びリブが取り付けられていない点を除いて、実施例1と同一条件で中空糸膜カートリッジを用意し、オゾン水による、繰り返し加圧を行った。
10,000回の繰り返し加圧が終わった時点で、ポッティング部を観察したところ、すでにポッティング部に亀裂が発生しており、エアリーク検査でエアリークの発生も確認された。
比較例2
リング、固定具及びリブが取り付けられていない点を除いて、実施例2と同一条件で中空糸膜カートリッジを用意し、オゾン水による、繰り返し加圧を行った。
10,000回の繰り返し加圧が終わった時点で、ポッティング部を確認したところ、すでにポッティング部に亀裂が発生しており、エアリーク検査でエアリークの発生も確認された。
産業上の利用可能性
本発明は、ろ過時のポッティング部の変形が抑制された、柔軟性ポッティング材を使用したモジュールの提供を可能とするものである。特に、ポッティング部の厚みを厚くせずに、実用的な耐圧性を保持し、かつ、ポッティング部界面における中空糸膜破断の発生が抑制された、大型の中空糸膜モジュールの提供を可能にするものである。更に、本発明は、ポッティング部における耐薬品性が向上し、ポッティング界面の膜損傷が抑制されたモジュールの提供をも可能とするものである。本発明は、河川水、湖沼水、伏流水の上水処理や下水2次処理水の除濁等の水処理分野で有用であり、特に、オゾンを用いた外圧ろ過膜モジュールを使用する水処理分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の中空糸膜モジュールの一例を示す縦断面図である。
図2は本発明で用いられるリブの一例を示す断面図である。
図3は本発明で用いられるリブの一例を示す断面図である。
図4は本発明で用いられるリブの一例を示す断面図である。
図5は本発明で用いられるリブの一例を示す断面図である。
図6は本発明で用いられるリブの一例を示す断面図である。
図7は切り欠きの組み合わせによりハウジング内壁に固定されたリブの一例を示す斜視図である。
図8は本発明で用いられる固定具の一例を示す断面図である。
図9は本発明で用いられる固定具の一例を示す断面図である。
図10は本発明で用いられる固定具の一例を示す断面図である。
図11は本発明で用いられる固定具の一例を示す断面図である。
図12は本発明で用いられる固定具の一例を示す断面図である。
図13は本発明で用いられる固定具の一例を示す断面図である。
図14は本発明で用いられる固定具の一例を示す断面図である。
図15は本発明で用いられる固定具の一例を示す断面図である。
図16(a)はR加工を施した固定具の一例を示す断面図である。
図16(b)は図16(a)のA−A’断面図である。
図17は本発明で用いられる固定具の一例を示す斜視図である。
図18は本発明で用いられる固定具の一例を示す斜視図である。
図19は本発明で用いられる、キャップと固定具を一体成型したものの一例を示す斜視図である。
図20は本発明で用いられる、キャップと固定具を一体成型したものの一例を示す斜視図である。
図21は本発明で用いられる、キャップと固定具を一体成型したものの一例を示す斜視図である。
図22は本発明で用いられるボルト穴を有するフランジと固定具を一体成型したものを示す斜視図である。
図23は、1個のリングとハウジング内壁とが一体成型されたモジュールのハウジング内壁の一例を示す断面模式図である。
図24は、2個のリングとハウジング内壁とが一体成型されたモジュールのハウジング内壁の一例を示す断面模式図である。
図25は、中空糸中空部開口側のポッティング部の遠心注型に使用する接着冶具の一例を示す断面模式図である。
図26は、中空糸中空部封止側のポッティング部の遠心注型に使用する接着冶具の一例を示す断面模式図である。
図27は、中空糸中空部封止側の原水を供給する開口を形成する為のチューブ状物の一例を示す断面模式図である。
図28は参考例1で使用したフランジと固定具を一体成型したものの断面図である。
図29は参考例2で使用したフランジと固定具を一体成型したものの断面図である。
図30は参考例3で使用したフランジと固定具を一体成型したものの断面図である。
図31は実施例1、2で使用した装置の断面模式図である。
図32は実施例3で使用した装置の断面模式図である。

Claims (13)

  1. モジュールハウジングと、少なくとも一方の端部が該ハウジングに固定された複数本の中空糸膜からなる中空糸膜束と、中空糸膜の端部がポッティング材を介して開口状態でハウジングに固定されたポッティング部に少なくとも一部が埋設されたリブ又はリングを有する中空糸膜モジュールであって、ポッティング材が柔軟性ポッティング材であり、リブ又はリングがハウジングの内壁に固定又はハウジングの内壁と一体成型されており、かつリブ又はリングが中空糸膜と直接接触せずにポッティング部に埋設されていることを特徴とする中空糸膜モジュール。
  2. リブ又はリングと中空糸膜との間には、少なくとも1mmの厚みを有するポッティング材のみからなる充填層が存在する請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
  3. 充填層の厚みが2mm以上である請求項2に記載の中空糸膜モジュール。
  4. 中空糸膜が開口している側のポッティング部端面の外側に固定具が実質的に中空糸膜の開口端部を塞ぐことなく配されている請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
  5. 固定具が枠部と仕切り部からなり、仕切り部の、中空糸膜モジュールの長さ方向に対して垂直な方向の断面形状が十字状、格子状、放射状、ハニカム状、十字または放射状と円との組み合わせのいずれかである請求項4に記載の中空糸膜モジュール。
  6. 固定具にO−リング溝が設置されている請求項4に記載の中空糸膜モジュール。
  7. リングがポッティング部の端面と平行に配された請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
  8. リングの出隅部にR加工が施されている請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
  9. リブとリングを両方有しており、リブがリングを介してハウジング内壁に固定され、リブがリングの内壁に直接固定又はリングと一体成型されている請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
  10. ポッティング材の、硬化後のJIS−A硬度が25〜90である請求項1〜9のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
  11. ポッティング部において、中空糸膜がハウジング内壁と直接接触せずにハウジングに固定されている請求項1〜9のいずれかに記載の中空糸膜モジュール。
  12. ポッティング部において、ハウジング内壁と中空糸膜との間には厚さ1mm以上のポッティング材のみからなる充填層が存在する請求項11に記載の中空糸膜モジュール。
  13. 請求項1〜9のいずれかに記載の中空糸膜モジュールを用いて、中空糸膜束の外表面側から原料水を供給し、内表面側から透過水を採水する外圧式ろ過方法。
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