JPWO2002033072A1 - 低分子化tpoアゴニスト抗体 - Google Patents
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Abstract
本発明は、TPOレセプターを架橋することにより細胞内にシグナル伝達してTPOアゴニスト作用を奏しうる、モノクローナル抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む改変抗体に関する。この改変抗体は、TPOによるシグナル伝達のアゴニストとして使用することができ、血小板減少が関与する血液疾患、癌や白血病等の化学治療後の血小板減少症などの予防及び/又は治療薬等として有用である
Description
技術分野
本発明は、TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む改変抗体に関する。当該改変抗体は、TPOレセプターを架橋することにより細胞内にシグナルを伝達しうるTPOアゴニスト作用を有しており、種々の医薬として有用である。
背景技術
トロンボポエチン(TPO)は、1994年に発見された血小板産生調節因子であり、主に肝臓で産生される分子量7万〜8万の糖タンパク質からなることが知られている。トロンボポエチンは、骨髄において血小板前駆体細胞の生存、増殖、分化および成熟、即ち巨核球の分化および増殖を促進するサイトカインである。一方、トロンボポエチン(TPO)レセプターは、血小板産生を調節する特異的因子の受容体c−Mp1としてTPOより先に同定されていた(M.Souyri et al.,Cell 63:1137(1990))。c−Mp1は、血小板前駆細胞、巨核球及び血小板に局在し、c−Mp1の発現の抑制が巨核球形成を選択的に阻害することが報告された(M.Methia et al.,Blood 82:1395(1993))。そして、c−Mp1に対するリガンドは、c−Mp1リガンド特異的細胞の増殖アッセイ及び精製手段としてのc−Mp1を用いたそのリガンドの精製からTPOであることが報告され(F.de Sauvage et al.,Nature 369:533(1994);TD.Bartley et al.,Cell 77:1117(1994))、現在、Mp1はTPOレセプターと称されている。このため、TPOおよびTPOレセプターのアゴニストは、種々の血小板減少症の治療薬として、例えば癌患者に対する骨髄抑制及び脊髄切断療法に付随する血小板減少症を緩和する医薬としての応用が期待されている。
一方、改変抗体、特に低分子化抗体、例えば一本鎖Fvは、その低分子化により組織、腫瘍等への移行性を改善し、遺伝子工学的に調製する目的で開発されたものであるが、近年、一本鎖Fvのダイマー、特に、二重特異性[bispecific]のダイマーが細胞同士の架橋を目的として使用されている。このようなダイマーとしては、代表的には癌細胞抗原とNK細胞や好中球など宿主細胞抗原を認識する一本鎖Fvのヘテロダイマー等が知られている(Kipriyanov et al.,Int.J.Cancer,77,9763−9772,1998)。これらは、細胞間架橋を誘導させることにより癌を治療するためのより効率的な改変抗体として、一本鎖Fvの構築技術から作成されたものである。このため、抗体およびその断片(例えばFab断片など)および二重特異性の改変抗体、さらには単一特異性である一本鎖Fvのダイマーでも細胞間の架橋が誘導されると考えられていた。
また、細胞表面分子を架橋してシグナルを伝達しうるモノクローナル抗体として、例えば細胞の分化・増殖に関与するEPO受容体に対する抗体(特開2000−95800号公報)、MuSK受容体に対する抗体(Xie et al.,Nature Biotech.15,768−771,1997)などが知られている。また、TOPレセプターに対するアゴニスト抗体、その断片および一本差Fvなども知られている(WO99/17364)。しかし、アゴニスト作用を有する一本鎖Fvのダイマーおよび一本鎖2価抗体等の改変抗体については報告はない。
そこで、先ず本発明者らは、IAPを有する細胞に対してアポトーシスを誘起するモノクローナル抗体(MABL−1およびMABL−2抗体)を取得し、それをもとに作製した一本鎖Fvのモノマーは細胞にアポトーシスを誘起せず、ダイマーが細胞に対してアポトーシスを誘導することに注目し、これらが細胞表面上のIAP受容体を架橋(2量体化)することにより当該細胞にシグナルが伝達されて、その結果アポトーシスが誘導されたことを突き止めた。即ち、これは、単一特異性の一本鎖Fvダイマーが細胞表面上の分子(例えば受容体)を架橋することにより、リガンドと同様にシグナルを伝達し、これによりアゴニスト作用を示しうること示唆するものである。
次に細胞間の架橋形成に注目したところ、前記モノクローナル抗体は赤血球凝集を引き起こすが、前記一本鎖Fvのダイマーは赤血球凝集を起こさないことを見出した。同様の結果は、一本鎖2価抗体(2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V領域を含む一本鎖ポリペプチド)でも観察された。即ち、これはモノクローナル抗体では細胞間で架橋が形成される可能性があるのに対して、一本鎖Fvダイマーまたは一本鎖2価抗体等の改変抗体では、細胞表面上の分子を架橋するが、細胞間の架橋を形成しないことを示唆するものである。
本発明者は、これらの結果から、一本鎖Fvダイマーや一本鎖2価抗体等の改変抗体が、従来知られていた細胞間の架橋だけでなく、同じ細胞の細胞表面分子あるいは細胞内分子を架橋する、当該分子に対するリガンド(特に天然のリガンドの作用を模倣するようなリガンド)として特に適していることを初めて見出した。
さらに、本発明者は、抗体分子(whole IgG)を一本鎖Fvダイマーまたは一本鎖2価抗体などの改変抗体にすることにより、細胞間の架橋などによる副作用を軽減し、且つ細胞表面上の分子を架橋して、細胞に所望の作用のみを誘起しうる新規な医薬品を提供しうることを見出し、本発明を完成させた。また、本発明の改変抗体は、当該改変抗体と同じV領域を有するwholeの抗体(IgG)と比較して顕著に高い活性を有しており、さらに抗体分子に比べ分子量が小さく、定常領域を有しないという特徴から、組織移行性が向上しているという特徴を有している。
発明の開示
本発明の課題は、TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む低分子化アゴニスト改変抗体を提供することである。
従って、本発明は、TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上、好ましくは各々2〜6、さらに好ましくは各々2〜4、特に好ましくは各々2つ含む改変抗体に関する。
本明細書において「改変抗体」とは、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含み、これら各V領域を直接的あるいはリンカー等を介して共有結合および/または非共有結合により結合した任意の物質を意味する。具体的には、抗体の各V領域をペプチドリンカー、化学架橋剤等のリンカーで結合したポリペプチドまたは化合物等があげられる。なお、本発明の改変抗体において、抗体由来の2つ以上のH鎖V領域及びL鎖V領域は各々、同一または異なる抗体由来のH鎖V領域及びL鎖V領域であってもよい。
本発明の改変抗体は、TPOレセプターを特異的に認識して当該レセプターを架橋し、これにより細胞内にシグナルを伝達しうるものであればいかなるものでもよく、さらには、該改変抗体のV領域のアミノ酸配列の一部を改変した改変抗体も包含される。
本発明の改変抗体は、好ましくは1つのH鎖V領域及び1つのL鎖V領域を含む一本鎖Fvのダイマー、トリマー、テトラマー等のマルチマーであるか、又は2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域を含む一本鎖ポリペプチドである。本発明の改変抗体が1つのH鎖V領域及び1つのL鎖V領域を含む一本鎖Fvのダイマー、トリマー、テトラマー等のマルチマーである場合、同じ鎖上のH鎖V領域及びL鎖V領域は互いに連合して1つの抗原結合部位を形成していないものが好ましい。
特に好ましくは、1つのH鎖V領域及び1つのL鎖V領域を含む一本鎖Fvのダイマー、又は2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V領域を含む一木鎖ポリペプチドである。該改変抗体中において、H鎖V領域及びL鎖V領域は、好ましくはリンカーを介して連結されている。
前記一本鎖Fvのマルチマーは、非共有結合によるマルチマー、架橋基を介した共有結合によるマルチマー、さらに前記一本鎖Fvと結合しうる架橋剤(抗体、抗体断片、又は2価の改変抗体)を介したマルチマーが包含される。マルチマーを形成させる架橋基は、ペプチドの架橋に用いられている公知の架橋基を用いることができるが、例えばシステイン残基によるジスルフィド架橋、他の架橋基、例えばC4〜C10アルキレン(例えば、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレンおよびオクタメチレンなど)またはC4〜C10アルケニレン(cis/trans−3−ブテニレン、cis/trans−2−ペンテニレン、cis/trans−3−ペンテニレンおよびcis/trans−3−ヘキセニレンなど)である。
また、一本鎖Fvと結合しうる架橋剤は、例えばFv中に随意に導入しうるアミノ酸配列、例えばFLAG配列等に対する抗体もしくはその断片、またはその抗体由来の改変抗体、例えば一本鎖Fvである。
本明細書において「TPOアゴニスト作用」とは、TPOレセプターを架橋することにより細胞内にシグナルが伝達されて該細胞に生じる生物学的作用をいい、具体的には、巨核球の増殖、分化または成長の刺激、血小板の産生等の作用をいう。
本発明において、TPOアゴニスト作用のED50値は、公知のTPOアゴニスト作用の測定法より求めることができる。具体的には、BaF/mp1やUT7/TPOなどのTPO反応性細胞株を用いた細胞増殖アッセイ、MPLタンパクのリン酸化測定、骨髄細胞からの分化による巨核球コロニーアッセイ、インビボでのマウス血小板回復合成アッセイ、ヒト白血病巨核芽球細胞株(CMK)を用いた血小板抗原GPIIbIIIa(抗GPIIbIIIa)発現の誘導、巨核芽球細胞株(DAMI)における倍数化の誘導等により測定することができ、その反応容量曲線の最大活性を100%とし、反応率50%となる用量をED50%値とする。
本発明の改変抗体は、当該改変抗体と同一の抗原結合領域を有する抗体、即ち、当該改変抗体の抗原結合領域を形成するH鎖V領域とL鎖V領域の対と同一のH鎖V領域とL鎖V領域の対を有するIgG等のwholeの抗体(以下、親抗体という)と比較して同等以上のTPOアゴニスト作用(ED50値)を示すものが好ましい。さらに、親抗体と比較して2倍以上、好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上のTPOアゴニスト作用(ED50値)を示すものが好ましい。また、TPOレセプターには結合するが、TPOアゴニスト作用を実質的に有さない親抗体と同一の抗原結合領域を形成するH鎖V領域とL鎖V領域の対を有する改変抗体であって、当該改変抗体はアゴニスト作用を有するものも本発明に含まれる。
本発明の抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む化合物とは、トロンボポエチン(TPO)と比較して同等以上のTPOアゴニスト作用(ED50値)を示し、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む化合物であればいかなるものでもよく、TPOと比較して2倍以上、好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上のTPOアゴニスト作用(ED50値)を示す化合物が好ましい。
ここでいう「化合物」とは、本発明の改変抗体に限らず、wholeの抗体、F(ab’)2等、2つ以上、好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4、特に好ましくは2つの抗原結合部位を有するものであればいかなるものも含まれる。
本発明の抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む改変抗体または化合物は、親抗体と比較して、1/10以下の細胞間接着作用(ED50値)を示すものが好ましく、細胞間接着作用を実質的に有さないものが特に好ましい。
ここでいう細胞間接着作用のED50値とは、公知の細胞間接着作用の測定法、例えばTPOレセプターを発現する細胞の凝集を指標にしてより求めることができる。
本発明は上記改変抗体をコードするDNAに関する。
本発明は上記改変抗体を産生する動物細胞または微生物に関する。
本発明は上記改変抗体のTPOアゴニストとしての使用に関する。
本発明は上記改変抗体を用いてTPOレセプターを架橋することにより細胞内にシグナル伝達を起し、巨核球の増殖、分化誘導または成長の刺激、血小板の産生、TPOレセプタータンパク質のリン酸化等のTPOアゴニスト作用を生じさせる方法に関する。
本発明は、上記改変抗体を有効成分として含む血小板減少症治療剤等の医薬に関する。
本発明は、上記改変抗体の医薬としての使用に関する。
本発明は、TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む改変抗体のスクリーニング方法又は測定方法であって、1)TPOレセプターに特異的に結合する、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む改変抗体を作製し、2)TPOレセプターを発現している細胞と該改変抗体とを接触させ、3)TPOレセプターを架橋することにより該細胞に生ずるTPOアゴニスト作用を測定する、工程を含むスクリーニング方法又は測定方法に関する。本発明の測定方法は、本発明の改変抗体を医薬品として製造する場合の品質管理に用いることができる。
本発明の改変抗体は、単一特異性(mono−specific)改変抗体でも、二重特異性(bi−specific)改変抗体等の多重特異性(multi−specific)改変抗体であってもよいが、好ましくは単一特異性(mono−specific)改変抗体である。
本発明はまた、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト抗体由来のH鎖V領域及び/又はヒト抗体由来のL鎖V領域である改変抗体に関する。ヒト抗体由来のH鎖V領域及びL鎖V領域は、例えばWO99/10494号公報に記載された方法のように、ヒトモノクローナル抗体のライブラリーをスクリーニングすることにより得ることができる。また、トランスジェニックマウス等から作製されたヒトモノクローナル抗体由来のH鎖V領域及びL鎖V領域も包含される。
さらに本発明は、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト型化H鎖V領域及び/又はヒト型化L鎖V領域である改変抗体に関する。詳細には、ヒトモノクローナル抗体L鎖V領域のフレームワーク領域(FR)とヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サルなど)のモノクローナル抗体のL鎖V領域の相補性決定領域(complementarity determining region;以下CDRとする)を含むヒト型化L鎖V領域及び/又はヒトモノクローナル抗体H鎖V領域のFRとヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サルなど)モノクローナル抗体のH鎖V領域のCDRを含むヒト型化H鎖V領域から構成される。この場合、CDRおよびFRのアミノ酸配列を一部改変(例えば、欠失、置換又は付加)してもよい。
本発明はまた、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サル、ニワトリなど)のモノクローナル抗体由来のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域も包含される。この場合、CDRおよびFRのアミノ酸配列を一部改変(例えば、欠失、置換又は付加)してもよい。
本発明はまた、前記種々の改変抗体をコードするDNA、該DNAを含んで成る組換えベクターを製造する遺伝子工学的方法に関する。
本発明はまた、該組換えベクターにより形質転換された宿主に関する。宿主は、例えばヒト細胞、マウス細胞などの動物細胞、又は大腸菌、枯草菌、酵母などの微生物である。
本発明はまた、上記の宿主を培養し、培養物から改変抗体を採取することを特徴とする、改変抗体の製造方法に関する。
さらに本発明は、一本鎖Fvを産生する宿主動物細胞を無血清培地で培養して該培地中に一本鎖Fvを分泌させ、該培地中で形成された一本鎖Fvのダイマーを含む該培地上清を精製することを特徴とする一本鎖Fvのダイマーの製造方法に関する。
本発明はまた、改変抗体のTPOアゴニストとしての使用に関する。即ち、前記得られた改変抗体を有効成分として含有するシグナル伝達アゴニストに関する。
故に、本発明のTPOアゴニスト改変抗体を有効成分として含有する医薬製剤は、血小板減少が関与する血液疾患、癌や白血病等の化学治療後の血小板減少症などの治療及び/又は予防に有用である。
本発明の改変抗体は、抗体に由来するH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む。当該改変抗体の構成としては、好ましくは1つのH鎖V領域及び1つのL鎖V領域を含む一本鎖Fvのダイマー又は2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V領域を含むポリペプチドとすることができる。該改変抗体中において、H鎖およびL鎖のV領域は、1個以上のアミノ酸からなるペプチドリンカーを介して連結されているのが好ましい。これらの改変抗体は、モノクローナル抗体の可変領域を含有し、もとのモノクローナル抗体と同一の特異性をもって抗原に結合する。
H鎖V領域
本発明において、抗体に由来するH鎖V領域には、TPOレセプターを認識し、且つ前記分子を架橋してオリゴマー化、例えば2量体化することにより、細胞内にシグナルを伝達しうる、抗体のH鎖V領域であって、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サルなど)に由来するH鎖V領域又は前記H鎖V領域のアミノ酸配列を一部改変したH鎖V領域も本発明におけるH鎖V領域に包含されるが、ヒトモノクローナル抗体H鎖V領域のFRとマウスモノクローナル抗体のH鎖V領域のCDRを含むヒト型化H鎖V領域が好ましい。さらに、組換え技術を使用して作成し得る、ヒト由来のアミノ酸配列を有するH鎖V領域も好ましい。また、本発明のH鎖V領域には、前記H鎖V領域の断片であって、抗原結合性を保持する領域も包含される。
L鎖V領域
本発明におけるL鎖V領域には、TPOレセプターを認識し、且つ前記分子を架橋してオリゴマー化、例えば2量体化することにより、細胞内にシグナルを伝達しうる、抗体のL鎖V領域であって、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サルなど)に由来するL鎖V領域又は前記L鎖V領域のアミノ酸配列を一部改変したL鎖V領域も本発明におけるL鎖V領域に包含されるが、ヒトモノクローナル抗体L鎖V領域のFRとマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域のCDRを含むヒト型化L鎖V領域が好ましい。さらに、組換え技術を使用して作成し得る、ヒト由来のアミノ酸配列を有するL鎖V領域も好ましい。また、本発明のL鎖V領域には、前記L鎖V領域の断片であって、抗原結合性を保持する領域も包含される。
相補性決定領域(CDR)
L鎖及びH鎖の各V領域は抗原結合部位を形成し、L鎖及びH鎖上の可変領域は共通性のある比較的保存された4個のフレームワークと3個の超可変又は相補性決定領域(CDR)により連結されている(Kabat,E.A.ら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」US Dept.Health and Human Services,1983)。
前記4個のフレームワーク領域(FR)の多くの部分はβ−シート構造をとり、その結果3個のCDRはループを形成し、CDRは場合によりβ−シート構造の一部分を形成することもある。3個のCDRはFRによって相互に立体的に非常に近い位置に保持され、そして対をなす領域の3個のCDRと共に抗原結合部位の形成に寄与する。
これらのCDR領域は、得られた抗体のV領域のアミノ酸配列と既知抗体のV領域の既知アミノ酸配列とを照合することによって、Kabat,E.A.ら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」の経験則から見出すことができる。
一本鎖Fv
一本鎖Fvは、抗体に由来する、連結したH鎖V領域及びL鎖V領域を含むポリペプチドのモノマーであり、得られる一本鎖Fvはもとの抗体の可変領域を含有し、相補性決定領域を保存するため、もとの抗体と同一の特異性をもって抗原に結合する(特願平11−63557号)。さらに、本発明の一本鎖Fvにおいて、前記可変領域および/またはCDRの一部またはそのアミノ酸配列の一部を改変(例えば、欠失、置換又は付加)することができる。本発明の一本鎖Fvを構成するH鎖V領域及びL鎖V領域は上述したものであり、H鎖V領域とL鎖V領域を直接又はリンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して連結することができ、その構成としては、[H鎖V領域]−[L鎖V領域]、[L鎖V領域]−[H鎖V領域]のいずれでもよい。本発明においては、これら一本鎖Fvはダイマー、トリマー又はテトラマーを形成させ、本発明の改変抗体とすることができる。
一本鎖改変抗体
本発明の2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域、好ましくは各々2〜4、特に好ましくは各々2つ含む一本鎖改変抗体は、上述のような2つ以上のH鎖V領域とL鎖V領域をそれぞれ含有する。このポリペプチドにおいて各領域は、該一本鎖改変抗体が特定の立体構造、具体的には一本鎖Fvのダイマーが構成する立体構造を模倣し得るよう配置させる必要があり、例えば
[H鎖V領域]−[L鎖V領域]−[H鎖V領域]−[L鎖V領域]
又は
[L鎖V領域]−[H鎖V領域]−[L鎖V領域]−[H鎖V領域]
の順序で各領域が配置され、これらの領域はリンカーを介して連結される。
リンカー
本発明において、H鎖V領域とL鎖V領域とを連結するリンカーとしては、遺伝子工学により導入し得る任意のペプチドリンカー、又は合成化合物リンカー、例えば、Protein Engineering,9(3),299−305,1996に開示されるリンカーを用いることができる。これらのリンカーは同一分子内で同じ又は異なっていてもよい。ペプチドリンカーを所望する場合、各々のリンカーの例としては:
Ser
Gly・Ser
Gly・Gly・Ser
Ser・Gly・Gly
Gly・Gly・Gly・Ser
Ser・Gly・Gly・Gly
Gly・Gly・Gly・Gly・Ser
Ser・Gly・Gly・Gly・Gly
Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Ser
Ser・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly
Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Ser
Ser・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly
(Gly・Gly・Gly・Gly・Ser)n
(Ser・Gly・Gly・Gly・Gly)n
[nは1以上の整数である]を挙げることができる。好ましいリンカーペプチドの長さは抗原となる受容体によって異なるが、一本鎖Fvにおいては通常1〜20アミノ酸であるのが好ましい。2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域を含む一本鎖改変抗体においては、[H鎖V領域]−[L鎖V領域](又は[L鎖V領域]−[H鎖V領域])からなる同一の抗原結合部位を形成するもの同士を連結するためのペプチドリンカーの長さは1〜30アミノ酸、好ましくは1〜20アミノ酸、さらに好ましくは3〜18アミノ酸である。また、[H鎖V領域]−[L鎖V領域](又は[L鎖V領域]−[H鎖V領域])からなる同一の抗原結合部位を形成しないもの同士を連結するためのペプチドリンカーの長さは1〜40アミノ酸、好ましくは3〜30アミノ酸、さらに好ましくは5〜20アミノ酸である。これらのリンカーを導入する方法は本発明の改変抗体をコードするDNAの構築方法の説明において述べる。
本発明における化学合成物リンカー(化学架橋剤)は、ペプチドの架橋に通常用いられている架橋剤、例えばN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS3)、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)、ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)(DTSSP)、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)(スルホ−EGS)、ジスクシンイミジル酒石酸塩(DST)、ジスルホスクシンイミジル酒石酸塩(スルホ−DST)、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(BSOCOES)、ビス[2−(スルホスクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(スルホ−BSOCOES)などであり、これらの架橋剤は市販されている。また、化学合成物リンカーの長さは、上述のペプチドリンカーの長さに相当する長さであるのが好ましい。
特に、一本鎖Fvのダイマーを形成させる場合、宿主細胞で産生された一本鎖モノマーを培地等の溶液中で、20%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上ダイマー化するのに適したリンカーを選択することが好ましく、具体的には2〜12アミノ酸、より好ましくは3〜10アミノ酸、またはこれに相当する他のリンカーが好ましい。
改変抗体の製造
改変抗体は、TPOレセプターに特異的に結合する既知または新規な抗体由来のH鎖V領域とL鎖V領域とを前述のリンカーを介して連結することにより得られる。一本鎖Fvの例として、WO99/10494に記載される12B5抗体、12E10抗体に由来するH鎖V領域とL鎖V領域を有するものが挙げられる。2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V領域を含む本発明の改変抗体の例としては、前記モノクローナル抗体由来のH鎖V領域とL鎖V領域を有するsc12B5(リンカー:15アミノ酸)、sc12E10(リンカー:15アミノ酸)、db12B5ダイマー(リンカー:5アミノ酸)、db12E10ダイマー(リンカー:5アミノ酸)が挙げられる。
本発明の改変抗体を作製するためには、該ポリペプチドが分泌性であることを所望する場合は、そのN−末端にシグナルペプチドを付加することができる。また、該ポリペプチドの効率的精製等のために、ポリペプチド精製において有用である公知の配列、例えばFLAG配列などを挿入することができる。この場合、抗FLAG抗体を用いてダイマー形成させることもできる。
本発明の改変を作製するためには、これをコードするDNA、即ち一本鎖FvをコードするDNA又は再構成一本鎖ポリペプチドをコードするDNAを得る必要がある。これらのDNAは、例えばsc12B5、db12B5、sc12E10及び/又はdb12E10の場合には前記Fv由来のH鎖V領域及びL鎖V領域をコードするDNAを用いて、又はこれらのDNAを鋳型とし、その配列内の所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を、その両端を規定するプライマー対を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により増幅することにより得ることができる。
各V領域について、アミノ酸配列の一部改変を所望する場合には、PCR法を用いる公知の方法によって1又は数個のアミノ酸が改変された、即ち1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するV領域を得ることができる。特定の抗原に対して十分に活性がある改変抗体を作製するために、PCR法を用いる公知の方法によって前記V領域のアミノ酸配列の一部を改変することが望ましい。
PCRに用いるプライマーを決定するにあたり、モノクローナル抗体から出発する場合は、当該技術分野において知られた方法を用いて当該抗体由来のH鎖及びL鎖のタイピングをして両鎖の型を決定する。
次に、PCR法を用いて12B5抗体及び12E10抗体のL鎖V領域を増幅するため、5’−末端オリゴヌクレオチドプライマー及び3’−末端オリゴヌクレオチドプライマーを上述のように決定する。同様にして、12B5抗体及び12E10抗体のH鎖V領域の増幅のため、それぞれ5’−末端プライマー及び3’−末端プライマーを決定する。
その例として本発明においては、5’−末端プライマーはその5’−末端近傍に制限酵素HinfI切断部位を提供する配列GANTCを含有し、そして3’−末端プライマーはその5’−末端近傍に制限酵素XmaI切断部位を提供するヌクレオチド配列CCCGGGを含有するものを使用している。これらの制限酵素切断部位は可変領域をコードする目的のDNA断片をクローニングベクターにサブクローニングするために用いられる限り、他の制限酵素切断部位でもよい。
特に設計されたPCRプライマーを用いて、12B5抗体、12E10抗体の各V領域をコードするcDNAをそれらの5’−及び3’−末端において適当な塩基配列を導入して、それらが発現ベクターに容易に挿入されるように、且つそれらが該発現ベクター中で適切に機能するようにした(例えば、本発明ではKozak配列の導入により翻訳効率を上げるように工夫されている)。次に、これらのプライマーを用いてPCRにより増幅して得た12B5抗体、12E10抗体の各V領域を、所望のヒトC領域をすでに含有するHEF発現ベクター(WO92−19759参照)に挿入した。クローン化されたDNAの配列決定は任意の常法、例えば、自動DNAシークエンサー(Applied Biosystems社製)を用いて行うことができる。
本発明の改変抗体において、リンカー、例えばペプチドリンカーは次のように導入することができる。即ち、上述のH鎖V領域及びL鎖V領域のためのプライマーと一部相補的な配列を有し、且つ該リンカーのN−末端またはC−末端をコードするようにプライマーを設計し、これを用いてPCRを行うことによって所望のアミノ酸配列および長さを有するペプチドリンカーをコードするDNAを作成することができる。そして、該DNAを介してH鎖V領域及びL鎖V領域をコードするDNAを連結すれば、所望のペプチドリンカーを有する本発明の改変抗体をコードするDNAを得ることができる。さらに、1つの改変抗体をコードするDNAを得ることができれば、前記DNAを鋳型にして、そして種々のリンカー用のプライマーを設計し、これを用いてPCRを実施すれば、所望のペプチドリンカーを有する改変抗体又はリンカーを有さない改変抗体をコードするDNAは容易に得ることができる。
また、本発明における改変抗体の各鎖V領域は、従来の技術(例えば、Sato,K.ら、Cancer Res.,53,1−6(1993)を参照のこと)を用いることによって、ヒト型化することが可能であり、また一旦ヒト型化された各鎖V領域をコードするDNAが作製されれば、ヒト型化一本鎖Fv、ヒト型化一本鎖Fv断片、ヒト型化モノクローナル抗体あるいはヒト型化モノクローナル抗体断片は、常法に従って容易に作出する事が可能である。さらに、必要な場合、これらのV領域のアミノ酸配列の一部を改変することも可能である。
さらに、遺伝子工学における慣用技術を用いて上述のマウス由来のH鎖V領域及びL鎖V領域をコードするDNAと同様に、これらに相当する他の哺乳動物由来のDNA、例えばヒト抗体由来の各鎖V領域をコードするDNAを得ることができる。得られたDNAを用いて、他の哺乳動物、特にヒト抗体由来のH鎖V領域及びL鎖V領域、ヒト由来の一本鎖Fv及びその断片、並びにヒト由来のモノクローナル抗体及びその断片を得ることができる。
本発明の改変抗体が、二重特異性(bi−specific)改変抗体である場合、公知の方法(例えば、WO9413804号公報に記載の方法)により作製することができる。
以上のように、目的とする改変抗体の各鎖V領域、ヒト型化改変抗体の各鎖V領域をコードするDNAが作製されれば、それらを含有する発現ベクター、及び該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができる。また、常法に従って宿主を培養し、産生した再構成一本鎖Fv、再構成ヒト型化一本鎖Fv、ヒト型化モノクローナル抗体及びヒト型化モノクローナル抗体断片は、細胞内又は細胞外から分離し均一にまで精製することができる。この場合、通常の蛋白質で用いられる分離・精製方法、例えば各種クロマトグラフィー、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組合せて、本発明の改変抗体を分離・精製することができるが、これらに限定されるものではない。
再構成一本鎖Fvを動物細胞、例えば、COS7細胞、CHO細胞などの動物培養細胞、好ましくはCHO細胞で産生する場合、無血清培地で該再構成一本鎖Fvを産生させると、培地中で形成した該一本鎖Fvのダイマーを安定的に高収率で回収・精製することができる。さらに、このようにして精製された該ダイマーは、長期間、安定してダイマーの状態で保存することができる。この場合に用いることができる無血清培地は、通常組み換えタンパク質の産生に用いられている培地であればいかなるものでもよく、特に限定されるものではない。
本発明の改変抗体の製造のために任意の発現系、例えば真核細胞、例えば動物細胞、例えば樹立された哺乳類細胞系、真糸状菌細胞、及び酵母細胞、並びに原核細胞、例えば細菌細胞、例えば大腸菌細胞等を使用することができる。好ましくは、本発明の改変抗体は哺乳類細胞、例えばCOS7細胞又はCHO細胞中で発現される。
これらの場合、哺乳類細胞での発現のために有用な常用のプロモーターを用いることができる。例えば、ヒト・サイトメガロウイルス(Human cytomegalo−virus:HCMV)前期(immediate early)プロモーターを使用するのが好ましい。HCMVプロモーターを含有する発現ベクターの例には、HCMV−VH−HCY1、HCMV−VL−HCK等であって、PSV2neoに由来するプラスミドベクター(国際公開公報WO92/19759参照)が包含される。
また、その他に、本発明のために用いることのできる哺乳動物細胞における遺伝子発現のプロモーターとしてはレトロウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、シミアンウイルス40(SV40)などのウイルスプロモーターやヒト・ポリペプチドチェーン・エロンゲーション・ファクター1α(HEF−1α)などの哺乳動物細胞由来のプロモーターを用いればよい。例えばSV40のプロモーターを使用する場合は、Mulligan,R.C.らの方法(Nature,277,108−114,(1979))、また、HEF−1αプロモーターを使用する場合は、Mizushima,S.らの方法(Nucleic Acids Research,18,5322,(1990))に従えば容易に実施することができる。
複製起原(ori)としては、SV40、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、牛パピローマウイルス(BPV)等の由来のoriを用いることができ、さらに発現ベクターは選択マーカーとして、ホスホトランスフェラーゼAPH(3’)IIあるいはI(neo)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子等を含むことができる。
上述のように作成した改変抗体の抗原結合活性は、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素標識固相免疫測定法(ELISA)または表面プラズモン共鳴等の既知の方法で測定することができる。また、元のモノクローナル抗体の結合阻害能を指標にして、具体的には該モノクローナル抗体のその抗原への濃度依存的阻害作用の有無を指標にして評価することができる。
詳細には、本発明の改変抗体をコードするDNAを包含する発現ベクターで形質転換した動物細胞、例えばCOS7細胞又はCHO細胞を培養し、前記培養した細胞及び/又はその培養上清、又はこれらから精製した改変抗体を用いて抗原への結合を測定する。対照として発現ベクターのみで形質転換した細胞の培養上清などを用いる。抗原、例えば12B5抗体、12E10抗体の場合にはヒトMPLを強制発現させたBa/F3細胞に、本発明の改変抗体などの試験試料又は対照の培養上清を加え、例えばフローサイトメトリーを実施して抗原結合活性を評価する。
in vitroでのシグナル伝達誘起作用(例えば、巨核球の増殖、分化誘導または成長の刺激、血小板の産生、TPOレセプタータンパク質のリン酸化等)は、抗原を発現する細胞又は該抗原遺伝子を導入した細胞に、前述の改変抗体の試験試料を添加し、当該細胞においてシグナル伝達による変化(例えば、ヒトMPL抗原特異的な増殖、タンパク質のリン酸化の測定、または血小板特異的な抗原の発現等)を既知の測定方法で評価することができる。
In Vivoでの評価試験は例えばマウスにMPLを認識するモノクローナル抗体、本発明の改変抗体、対照としてPBS等を投与する。そして、マウス血清中の血小板量の変化で活性の強さを評価する。
上述のように、TOPレセプターに特異的に結合する、H鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む改変抗体を作製し、例えば上記のIn vitroまたはIn vivoでの評価試験により本発明の改変抗体をスクリーニングすることによって、本発明の改変抗体を取得することができる。
本発明の改変抗体は、2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域、好ましくは各々2〜4、特に好ましくは各々2つ含むものであり、1つのH鎖V領域及び1つのL鎖V領域を含む一本鎖Fvのダイマー、又は2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域を連結した一本鎖ポリペプチドである。このような構成をとることで、もとのモノクローナル抗体の抗原結合部位の立体構造を模倣して、優れた抗原結合性を保持するものと考えられる。
本発明の改変抗体は、親抗体分子(例えばIgG)と比較して顕著な低分子化が達成されているため、組織、腫瘍への移行性に優れており、さらに親抗体分子よりも高い活性を有する。このため、本発明の改変抗体を用いることにより、TPOのシグナルを細胞内に効率よく伝達することができる。故に、これを含有する医薬製剤は、血小板減少が関与する血液疾患、癌や白血病等の化学治療後の血小板減少症などの治療薬としての利用が期待される。また、RI標識による造影剤としての利用も期待され、RI化合物やトキシン等の他の化合物と結合させることにより、効力を増強させることも可能である。
発明を実施するための最良の形態
次に、本発明を下記の実施例により具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
本発明の改変抗体の製造方法を、下記の一本鎖Fvの作製を例にして説明する。本発明の改変抗体の製造方法において用いる、ヒトIAPに対するマウスMABL−1、MABL−2抗体を産生するハイブリドーマ、MABL−1及びMABL−2は、公的微生物寄託機関である通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東一丁目1番3号)に、1997年9月11日に、受託番号それぞれFERM BP−6100、FERM BP−6101として国際寄託されている。
実施例
実施例1 (ヒトIAPに対するマウスモノクローナル抗体のV領域をコードするDNAのクローン化)
ヒトIAPに対するマウスモノクローナル抗体MABL−1及びMABL−2の可変領域をコードするDNAを次のようにしてクローン化した。
1.1 メッセンジャーRNA(mRNA)の調製
ハイブリドーマMABL−1及びMABL−2からのmRNAを、mRNA Purification Kit(Pharmacia Biotech社製)を用いて調製した。
1.2 二本鎖cDNAの合成
約1μgのmRNAよりMarathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH社製)を用いて二本鎖cDNAを合成し、アダプターを連結した。
1.3 抗体可変領域をコードする遺伝子のPCR法による増幅
Thermal Cycler(PERKIN ELMER社製)を用いてPCR法を行った。
(1)MABL−1L鎖V領域をコードする遺伝子の増幅
PCR法に使用するプライマーは、アダプターの部分配列とハイブリダイズする配列番号:1に示すアダプタープライマー1(CLONTECH社製)、及びマウスカッパ型L鎖C領域配列とハイブリダイズする配列番号:2に示すMKC(Mouse Kappa Constant)プライマー(Bio/Technology,9,88−89,1991)を用いた。
PCR溶液50μlは、5μlの10×PCR Buffer II、2mM MgCl2、0.16mM dNTPs(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)、2.5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)、0.2μMの配列番号:1に示すアダプタープライマーと0.2μMの配列番号:2に示すMKCプライマー及びMABL−1由来の二本鎖cDNA0.1μgを含有し、94℃の初期温度にて9分間そして次に94℃にて1分間、60℃にて1分間及び72℃にて1分20秒間、この順序で加熱した。この温度サイクルを35回反復した後、反応混合物を更に72℃で10分間加熱した。
(2)MABL−1H鎖V領域をコードするcDNAの増幅
PCRのためのプライマーとして配列番号:1に示すアダプタープライマー1、及び配列番号:3に示すMHC−Y1(Mouse Heavy Constant)プライマー(Bio/Technology,9,88−89,1991)を用いた。
cDNAの増幅は、0.2μMのMKCプライマーの代わりに0.2μMのMHC−Y1プライマーを用いて増幅した点を除いて、前記1.3(1)においてL鎖V領域遺伝子の増幅について記載したのと同じ方法により行った。
(3)MABL−2L鎖V領域をコードするcDNAの増幅
PCRのためのプライマーとして配列番号:1に示すアダプタープライマー1、及び配列番号:2に示すMKCプライマーを用いた。
cDNAの増幅は、MABL−1由来の二本鎖cDNA0.1μgの代わりにMABL−2由来の二本鎖cDNA0.1μgを用いて増幅した点を除いて、前記1.3(1)においてMABL−1L鎖V領域遺伝子の増幅について記載したのと同じ方法により行った。
(4)MABL−2H鎖V領域をコードするcDNAの増幅
PCRのためのプライマーとして配列番号:1に示すアダプタープライマー1、及び配列番号:4に示すMHC−Y2aプライマー(Bio/Technology,9,88−89,1991)を用いた。
cDNAの増幅は、0.2μMのMKCプライマーの代わりに0.2μMのMHC−Y2aプライマーを用いて増幅した点を除いて、前記1.3(3)においてL鎖V領域遺伝子の増幅について記載したのと同じ方法により行った。
1.4 PCR生成物の精製
前記のようにしてPCR法により増幅したDNA断片をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、1mM EDTAを含有する10mM Tris−HCl(pH8.0)に溶解した。
1.5 連結及び形質転換
上記のようにして調製したMABL−1由来マウスカッパ型L鎖V領域をコードする遺伝子を含んで成るDNA断片約140ngをpGEM−T Easyベクター(Promega社製)50ngと、30mM Tris−HCl(pH7.8)、10mM MgCl2、10mMジチオスレイトール、1mM ATP及び3ユニット T4 DNAリガーゼ(Promega社製)を含有する反応混合液中で、15℃にて3時間反応させ連結した。
次に、1μlの上記連結混合液を大腸菌DH5αのコンピテント細胞(東洋紡社製)50μlに加え、そしてこの細胞を氷上で30分間、42℃にて1分間そして再び氷上で2分間静置した。次いで100μlのSOC培地(GIBCO BRL社製)を加え、100μg/mlのアンピシリン(SIGMA社製)を含有するLB(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)寒天培地上にこの大腸菌を塗布し、37℃にて終夜培養して大腸菌形質転換体を得た。
この形質転換体を、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB培地3ml中で37℃にて終夜培養し、そしてこの培養物からQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社製)を用いてプラスミドDNAを調製した。
こうして得られた、ハイブリドーマMABL−1に由来するマウスカッパ型L鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドをpGEM−M1Lと命名した。
上記の同じ方法に従って、ハイブリドーマMABL−1に由来するマウスH鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドを精製DNA断片から作製し、pGEM−M1Hと命名した。
また、ハイブリドーマMABL−2に由来するマウスカッパ型L鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドを精製DNA断片から作製し、pGEM−M2Lと命名した。
また、ハイブリドーマMABL−2に由来するマウスH鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドを精製DNA断片から作製し、pGEM−M2Hと命名した。
実施例2 (DNAの塩基配列の決定)
前記のプラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列の決定は、自動DNAシーケンサー(Applied Biosystem社製)及びABI PRISM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(Applied Biosystem社製)を用いて、メーカー指定のプロトコールに従って行った。
プラスミドpGEM−M1Lに含まれるマウスMABL−1抗体のL鎖V領域をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号:5に示す。
また、プラスミドpGEM−M1Hに含まれるマウスMABL−1抗体のH鎖V領域をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号:6に示す。
また、プラスミドpGEM−M2Lに含まれるマウスMABL−2抗体のL鎖V領域をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号:7に示す。
また、プラスミドpGEM−M2Hに含まれるマウスMABL−2抗体のH鎖V領域をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号:8に示す。
実施例3 (CDRの決定)
L鎖及びH鎖のV領域の全般的構造は、互いに類似性を有しており、それぞれ4つのフレームワーク部分が3つの超可変領域、即ち相補性決定領域(CDR)により連結されている。フレームワークのアミノ酸配列は、比較的良く保存されているが、一方、CDR領域のアミノ酸配列の変異性は極めて高い(Kabat,E.A.ら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」US Dept.Health and Human Services,1983)。
このような事実に基づき、ヒトIAPに対するマウスモノクローナル抗体の可変領域のアミノ酸配列をKabatらにより作製された抗体のアミノ酸配列のデータベースにあてはめ、相同性を調べることによりCDR領域を表1に示す如く決定した。
実施例4 (クローン化cDNAの発現の確認(キメラMABL−1抗体及びキメラMABL−2抗体の作製))
4.1 キメラMABL−1抗体発現ベクターの作製
キメラMABL−1抗体を発現するベクターを作製するため、それぞれマウスMABL−1L鎖及びH鎖V領域をコードするcDNAクローンpGEM−M1L及びpGEM−M1HをPCR法により修飾した。そしてHEF発現ベクター(国際公開公報WO92/19759参照)に導入した。
L鎖V領域のための前方プライマーMLS(配列番号:9)及びH鎖V領域のための前方プライマーMHS(配列番号:10)は、各々のV領域のリーダー配列の最初をコードするDNAにハイブリダイズし且つKozakコンセンサス配列(J.mol.Biol.,196,947−950,1987)及びHind III制限酵素部位を有するように設計した。L鎖V領域のための後方プライマーMLAS(配列番号:11)及びH鎖V領域のための後方プライマーMHAS(配列番号:12)は、J領域の末端をコードするDNA配列にハイブリダイズし且つスプライスドナー配列及びBamHI制限酵素部位を有するように設計した。
PCR溶液100μlは、10μlの10×PCR Buffer II、2mM MgCl2、0.16mM dNTPs(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold、0.4μMずつの各プライマー、及び8ngの鋳型DNA(pGEM−M1L及びpGEM−M1H)を含有し、94℃の初期温度にて9分間そして次に94℃にて1分間、60℃にて1分間及び72℃にて1分20秒間、この順序で加熱した。この温度サイクルを35回反復した後、反応混合物を更に72℃で10分間加熱した。
PCR生成物をQIAquick PGR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、Hind III及びBamHIで消化し、そしてL鎖V領域については、HEF発現ベクターHEF−Kに、H鎖V領域についてはHEF発現ベクターHEF−Yにそれぞれクローニングした。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをそれぞれHEF−M1L、HEF−M1Hと命名した。
4.2 キメラMABL−2抗体発現ベクターの作製
cDNAの修飾及びクローニングは、pGEM−M1L及びpGEM−M1Hの代わりにpGEM−M2L及びpGEM−M2Hを鋳型DNAに増幅した点を除いて、前記4.1において記載したのと同じ方法により増幅及びクローニングを行い、DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをそれぞれHEF−M2L、HEF−M2Hと命名した。
4.3 COS7細胞への遺伝子導入
キメラMABL−1抗体及びキメラMABL−2抗体の一過性発現を観察するため、前記発現ベクターをCOS7細胞において試験した。
(1)キメラMABL−1抗体の遺伝子導入
HEF−M1LとHEF−M1Hベクターを、Gene Pulser装置(BioRad社製)を用いてエレクトロポレーションによりCOS7細胞に同時形質転換した。各DNA(10μg)と、PBS中1×107細胞/mlの0.8mlをキュベットに加え、1.5kV、25μFの容量にてパルスを与えた。
室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%のY−グロブリンフリーウシ胎児血清を含有するDMEM培養液(GIBCO BRL社製)に加えた。72時間培養の後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去して回収培養上清を得た。
(2)キメラMABL−2抗体の遺伝子導入
キメラMABL−2抗体遺伝子の導入は、HEF−M1LとHEF−M1Hベクターの代わりにHEF−M2LとHEF−M2Hベクターを用いた点を除いて、前記4.3(1)に記載したのと同じ方法によりCOS7細胞に同時形質転換し、回収培養上清を得た。
4.4 フローサイトメトリー
抗原への結合を測定するため、前記COS7細胞培養上清を用いてフローサイトメトリーを行った。ヒトIAPを発現するマウス白血病細胞株L1210細胞4×105個に、キメラMABL−1抗体を発現させたCOS7細胞の培養上清あるいはキメラMABL−2抗体を発現させたCOS7細胞の培養上清あるいはコントロールとしてヒトIgG1抗体(SIGMA社製)を加え、氷上にてインキュベーション及び洗浄の後、FITC標識した抗ヒトIgG抗体(Cappel社製)を加えた。インキュベーション及び洗浄の後、FACScan装置(BECTON DICKINSON社製)にて蛍光強度を測定した。
その結果、キメラMABL−1抗体及びキメラMABL−2抗体は、ヒトIAPを発現するL1210細胞に特異的に結合したことにより、これらのキメラ抗体がマウスモノクローナル抗体MABL−1及びMABL−2のそれぞれのV領域の正しい構造を有することが明らかとなった(図1〜3)。
実施例5 (再構成MABL−1抗体及び再構成MABL−2抗体一本鎖Fv(scFv)領域の作製)
5.1 再構成MABL−1抗体一本鎖Fvの作製
再構成MABL−1抗体一本鎖Fvを次の様にして作製した。再構成MABL−1抗体H鎖V領域、リンカー領域、及び再構成MABL−1抗体L鎖V領域をそれぞれPCR法を用いて増幅し、連結することにより、再構成MABL−1抗体一本鎖Fvを作製した。この方法を図4に模式的に示す。再構成MABL−1抗体一本鎖Fvの作製のために6個のPCRプライマー(A〜F)を使用した。プライマーA、C及びEはセンス配列を有し、プライマーB、D及びFはアンチセンス配列を有する。
H鎖V領域のための前方プライマーVHS(プライマーA、配列番号:13)は、H鎖V領域のN末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つNcoI制限酵素認識部位を有するように設計した。H鎖V領域のための後方プライマーVHAS(プライマーB、配列番号:14)は、H鎖V領域のC末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つリンカーとオーバーラップするように設計した。
リンカーのための前方プライマーLS(プライマーC、配列番号:15)は、リンカーのN末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つH鎖V領域のC末端をコードするDNAとオーバーラップするように設計した。リンカーのための後方プライマーLAS(プライマーD、配列番号:16)は、リンカーのC末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つL鎖V領域のN末端をコードするDNAとオーバーラップするように設計した。
L鎖V領域のための前方プライマーVLS(プライマーE、配列番号:17)は、リンカーのC末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つL鎖V領域のN末端をコードするDNAにオーバーラップするように設計した。L鎖V領域のための後方プライマーVLAS−FLAG(プライマーF、配列番号:18)は、L鎖V領域のC末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つFLAGペプチドをコードする配列(Hopp,T.P.ら、Bio/Technology,6,1204−1210,1988)、2個の転写停止コドン及びEcoRI制限酵素認識部位を有するように設計した。
第一PCR段階において3つの反応A−B、C−D及びE−Fを行い、そして各PCR生成物を精製した。第一PCRから得られた3つのPCR生成物をそれら自体の相補性によりアッセンブルさせた。次に、プライマーA及びFを加えて、再構成MABL−1抗体一本鎖Fvをコードする全長DNAを増幅した(第二PCR)。なお、第一PCRにおいては、再構成MABL−1抗体H鎖V領域をコードするプラスミドpGEM−M1H(実施例2を参照)、Gly Gly GlyGly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly GlyGly Gly Ser(配列番号:19)からなるリンカー領域をコードするDNA配列(Huston,J.S.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,5879−5883,1988)を含んで成るプラスミドpSC−DP1、及び再構成MABL−1抗体L鎖V領域をコードするプラスミドpGEM−M1L(実施例2を参照)をそれぞれ鋳型として用いた。
第一PCR段階の溶液50μlは、5μlの10×PCR Buffer II、2mM MgCl2、0.16mM dNTPs、2.5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)、0.4μMずつの各プライマー及び5ngの各鋳型DNAを含有し、94℃の初期温度にて9分間そして次に94℃にて1分間、65℃にて1分間及び72℃にて1分20秒間、この順序で加熱した。この温度サイクルを35回反復した後、反応混合物を更に72℃で7分間加熱した。
PCR生成物A−B(371bp)、C−D(63bp)、及びE−F(384bp)をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、第二PCRでアッセンブルした。第二PCRにおいて、鋳型として120ngの第一PCR生成物A−B、20ngのPCR生成物C−D及び120ngのPCR生成物E−F、10μlの10×PCR Buffer II、2mM MgCl2、0.16mM dNTPs、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)を含有する98μlのPCR混合液を、94℃の初期温度にて8分間そして次に94℃にて2分間、65℃にて2分間及び72℃にて2分間、この順序で加熱した。この温度サイクルを2回反復した後、それぞれ0.4μMのプライマーA及びFを加えた。そして94℃の初期温度にて1分間そして次に94℃にて1分間、65℃にて1分間及び72℃にて1分20秒間、この順序で加熱し、この温度サイクルを35回反復した後、反応混合物を72℃にて7分間加熱した。
第二PCRにより生じた843bpのDNA断片を精製し、NcoI及びEcoRIで消化し、得られたDNA断片をpSCFVT7ベクターにクローニングした。なお、本発現ベクターpSCFVT7は、大腸菌ペリプラズム分泌発現系に適するpelBシグナル配列(Lei,S.P.ら、J.Bacteriology,169,4379−4383,1987)を含んでいる。DNA配列決定の後、再構成MABL−1抗体一本鎖Fvの正しいアミノ酸配列をコードするDNA断片を含むプラスミドをpscM1と命名した(図5を参照)。本プラスミドpscM1に含まれる再構成MABL−1抗体一本鎖Fvの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:20に示す。
次に、哺乳動物細胞にて再構成MABL−1抗体一本鎖Fvを発現するベクターを作製するため、pscM1ベクターをPCR法により修飾した。そして得られたDNA断片をpCHO1発現ベクターに導入した。なお、本発現ベクターpCHO1は、DHFR−□E−rvH−PM1−f(WO92/19759参照)から、EcoRI及びSmaI消化により抗体遺伝子を削除し、EcoRI−NotI−BamHI Adaptor(宝酒造社製)を連結することにより構築したベクターである。
PCRに使用するプライマーは、前方プライマーとしてH鎖V領域のN末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つSalI制限酵素認識部位を有する配列番号:21に示すSal−VHSプライマー及び後方プライマーとして第一フレームワーク配列の最後をコードするDNAにハイブリダイズする配列番号:22に示すFRH1antiプライマーを用いた。
PCR溶液100μlは、10μlの10×PCR Buffer II、2mM MgCl2、0.16mM dNTPs、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold、0.4μMずつの各プライマー、及び8ngの鋳型DNA(pscM1)を含有し、95℃の初期温度にて9分間そして次に95℃にて1分間、60℃にて1分間及び72℃にて1分20秒間、この順序で加熱した。この温度サイクルを35回反復した後、反応混合物を更に72℃で7分間加熱した。
PCR生成物をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、SalI及びMboIIで消化し、N末端側再構成MABL−1抗体一本鎖FvをコードするDNA断片を得た。また、pscM1ベクターをMboII及びEcoRIで消化し、C末端側再構成MABL−1抗体一本鎖FvをコードするDNA断片を得た。そして、SalI−MboIIDNA断片及びMboII−EcoRI DNA断片をpCHO1−Igsベクターにクローニングした。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをpCHOM1と命名した(図6を参照)。なお、本発現ベクターpCHO1−Igsは、哺乳動物細胞分泌発現糸に適するマウスIgG1シグナル配列(Nature,332,323−327,1988)を含んでいる。本プラスミドpCHOM1に含まれる再構成MABL−1抗体一本鎖Fvの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:23に示す。
5.2 再構成MABL−2抗体一本鎖Fvの作製
再構成MABL−2抗体一本鎖Fvを前記5.1に従って作製した。第一PCRにおいては、pGEM−M1Hの代わりに再構成MABL−2抗体H鎖V領域をコードするプラスミドpGEM−M2H(実施例2を参照)、及びpGEM−M1Lの代わりに再構成MABL−2抗体L鎖V領域をコードするプラスミドpGEM−M2L(実施例2を参照)を使用し、再構成MABL−2抗体一本鎖Fvの正しいアミノ酸配列をコードするDNA断片を含むプラスミドpscM2を得た。本プラスミドpscM2に含まれる再構成MABL−2抗体一本鎖Fvの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:24に示す。
また、pscM2ベクターの修飾により再構成MABL−2抗体一本鎖Fvの正しいアミノ酸配列をコードするDNA断片を含む哺乳動物細胞発現用pCHOM2ベクターを得た。本プラスミドpCHOM2に含まれる再構成MABL−2抗体一本鎖Fvの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:25に示す。
5.3 COS7細胞への遺伝子導入
再構成MABL−2抗体一本鎖Fvの一過性発現を観察するため、pCHOM2ベクターをCOS7細胞において試験した。
pCHOM2ベクターを、Gene Pulser装置(BioRad社製)を用いてエレクトロポレーションによりCOS7細胞に形質転換した。DNA(10μg)と、PBS中1×107細胞/mlの0.8mlをキュベットに加え、1.5kV、25μFの容量にてパルスを与えた。
室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%のウシ胎児血清を含有するIMDM培養液(GIBCO BRL社製)に加えた。72時間培養の後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去して回収培養上清を得た。
5.4 COS7細胞培養上清中の再構成MABL−2抗体一本鎖Fvの検出
pCHOM2ベクターを遺伝子導入したCOS7細胞培養上清中における再構成MABL−2抗体一本鎖Fvをウェスタンブロッティング法により確認した。
pCHOM2ベクターを遺伝子導入したCOS7細胞培養上清及びコントロールとしてpCHO1ベクターを遺伝子導入したCOS7細胞培養上清についてSDS電気泳動を行い、REINFORCED NC膜(Schleicher & Schuell社製)に転写した。5%スキムミルク(森永乳業社製)にてブロッキングを行い、0.05%Tween20−PBSにて洗浄後、抗FLAG抗体(SIGMA社製)を加えた。室温にてインキュベーション及び洗浄の後、アルカリフォスファターゼ結合抗マウスIgG抗体(Zymed社製)を加え、室温にてインキュベーション及び洗浄後、基質溶液(Kirkegaard Perry Laboratories社製)を添加し、発色させた(図7)。
その結果、pCHOM2ベクター導入COS7細胞培養上清中にのみFLAGペプチド特異的なタンパク質が検出され、この培養上清中に再構成MABL−2抗体一本鎖Fvが分泌されていることが明らかとなった。
5.5 フローサイトメトリー
抗原への結合を測定するため、前記COS7細胞培養上清を用いてフローサイトメトリーを行った。ヒトIntegrin Associated Protein(IAP)を発現するマウス白血病細胞株L1210細胞、あるいはコントロールとしてpCOS1ベクターを形質転換したL1210細胞2×105個に、再構成MABL−2抗体一本鎖Fvを発現させたCOS7細胞の培養上清あるいはコントロールとしてpCHO1ベクターを形質転換したCOS7細胞の培養上清を加え、氷上にてインキュベーション及び洗浄の後、マウス抗FLAG抗体(SIGMA社製)を加えた。インキュベーション及び洗浄の後、FITC標識した抗マウスIgG抗体(BECTON DICKINSON社製)を加えた。再度インキュベーション及び洗浄の後、FACScan装置(BECTON DICKINSON社製)にて蛍光強度を測定した。
その結果、再構成MABL−2抗体一本鎖Fvは、ヒトIAPを発現するL1210細胞に特異的に結合したことにより、この再構成MABL−2抗体一本鎖FvがヒトIntegrin Associated Proteinに対するアフィニティーを有することが明らかとなった(図8〜11)。
5.6 Competitive ELISA
マウスモノクローナル抗体の抗原結合に対する阻害活性を指標に、再構成MABL−2抗体一本鎖Fvの抗原結合活性を測定した。
1μg/mlに調整した抗FLAG抗体を96ウェルプレートの各ウェルに加え、37℃にて2時間インキュベートした。洗浄後、1%BSA−PBSにてブロッキングを行った。室温にてインキュベート及び洗浄後、分泌型ヒトIAP抗原遺伝子(配列番号:26)を導入したCOS7細胞培養上清をPBSにて2倍希釈したものを各ウェルに加えた。室温にてインキュベート及び洗浄後、100ng/mlに調整したビオチン化MABL−2抗体50μl及び順次希釈した再構成MABL−2抗体一本鎖Fv発現COS7細胞培養上清50μlを混和したものを各ウェルに加えた。室温にてインキュベート及び洗浄後、アルカリフォスファターゼ結合ストレプトアビジン(Zymed社製)を加えた。室温にてインキュベート及び洗浄後、基質溶液(SIGMA社製)を加え、次に405nmでの吸光度を測定した。
その結果、再構成MABL−2抗体一本鎖Fv(MABL2−scFv)は、コントロールのpCHO1導入COS7細胞培養上清に比較して明らかに濃度依存的にマウスMABL−2抗体のヒトIAP抗原への結合を阻害した(図12)。このことから、再構成MABL−2抗体一本鎖Fvは、マウスモノクローナル抗体MABL−2のそれぞれのV領域の正しい構造を有することが示唆された。
5.7 in vitroでのアポトーシス誘起効果
ヒトIAPを遺伝子導入したL1210細胞、及びコントロールとしてpCOS1ベクターを遺伝子導入したL1210細胞、及びCCRF−CEM細胞を用い、再構成MABL−2抗体一本鎖Fvのアポトーシス誘起作用をAnnexin−V(BOEHRINGER MANNHEIM社製)染色により検討した。
各細胞1×105個に、再構成MABL−2抗体一本鎖Fv発現COS7細胞培養上清あるいはコントロールとしてpCHO1ベクター導入COS7細胞培養上清を終濃度50%で添加し、24時間培養した。その後、Annexin−V染色を行い、FACScan装置(BECTON DICKINSON社製)にて蛍光強度を測定した。
Annexin−V染色による解析の結果を図13〜18にそれぞれ示した。ここで、図の左下の領域にあるドットは生細胞を、右下の領域はアポトーシス初期の細胞を、右上の領域はアポトーシス後期の細胞を示す。その結果、再構成MABL−2抗体一本鎖Fv(MABL2−scFv)はL1210細胞においてヒトIAP抗原特異的に著しい細胞死を誘導した(図13〜16)。また、CCRF−CEM細胞においてもコントロールに比較して著しい細胞死を誘導した(図17〜18)。
5.8 CHO細胞におけるMABL−2抗体由来の一本鎖Fvポリペプチドの発現
MABL−2抗体由来の一本鎖Fv(ポリペプチド)の恒常的発現CHO細胞株を樹立するため、pCHOM2ベクターをCHO細胞に遺伝子導入した。
pCHOM2ベクターを、Gene Pulser装置(BioRad社製)を用いてエレクトロポレーションによりCHO細胞に形質転換した。DNA(10μg)とPBSに懸濁したCHO細胞(1×107細胞/ml)の0.7mlを混合したものをキュベットに加え、1.5kV、25μFの容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%のウシ胎児血清を含有する核酸不含α−MEM培地(GIBCO BRL社製)に加え培養した。得られたクローンについて、SDS−PAGEにて目的とするタンパク質の発現を確認し、発現量の高いクローンをMABL−2抗体由来の一本鎖Fvの産生細胞株として選択した。10nM methotrexate(SIGMA社製)を含む無血清培地CHO−S−SFM II(GIBCO BRL社製)にて培養後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去して回収培養上清を得た。
5.9 CHO細胞産生のMABL−2抗体由来の一本鎖Fvの精製
5.8で得た一本鎖Fv発現CHO産生株の培養上清を人工透析用カートリッジ(PAN130SF、旭メディカル)を用いて約20倍まで濃縮した。濃縮液は−20℃で保存し、精製時解凍して用いた。
CHO細胞培養上清から一本鎖Fvの精製は、Blue−sepharose、ハイドロキシアパタイト及びゲル濾過の三種のクロマトグラフィーにより行った。
(1)Blue−sepharoseカラムクロマトグラフィー
培養上清の濃縮液を20mM酢酸緩衝液(pH6.0)にて10倍希釈し、遠心分離(10000rpm×30分)により不溶物を除去した。上清を同緩衝液で平衡化したBlue−sepharoseカラム(20ml)に添加し、同緩衝液でカラムを洗浄後、同緩衝液中NaCl濃度を0.1、0.2、0.3、0.5及び1.0Mまで段階的に上げ、カラムに吸着した蛋白質を溶出した。SDS−PAGEで素通り及び各溶出画分を分析し、一本鎖Fvが確認された画分(0.1〜0.3M NaCl溶出画分)をプールし、Centriprep−10(アミコン)を用いて約20倍濃縮した。
(2)ハイドロキシアパタイト
(1)の濃縮液を10mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて10倍希釈し、ハイドロキシアパタイトカラム(20ml、BioRad)に添加した。60mlの10mMリン酸緩衝液(pH7.0)でカラムを洗浄後、リン酸緩衝液濃度を200mMまで直線的に上げ、カラムに吸着した蛋白質を溶出した(図19)。SDS−PAGEにより各画分を分析した結果、画分A及び画分Bに一本鎖Fvが確認された。
(3)ゲル濾過
(2)の画分A及びBをそれぞれCentriprep−10を用いて濃縮し、0.15M NaClを含む20mM酢酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したTSKgelG3000SWGカラム(21.5×600mm)に添加した。クロマトグラムを図20に示す。得られた画分をSDS−PAGEで分析した結果、いずれも主要ピーク(AI、BI)が目的の一本鎖Fvであり、ゲル濾過で分析した結果、画分Aでは見かけ上の分子量約36kD、画分Bでは同76kDに溶出された。精製した一本鎖Fv(AI、BI)を15%−SDS−ポリアクリルアミドゲルを用いて分析した。サンプルを還元剤添加、非添加で処理し、Laemmliの方法に準じて電気泳動を行い、泳動後蛋白質をクマシーブリリアントブルー染色した。図21に示すように、AI、BIいずれも還元剤の添加の有無に関わらず、見かけ上の分子量約35kDに単一バンドを与えた。以上の結果から、AIは一本鎖Fvのモノマーで、BIは一本鎖Fvの非共有結合性ダイマーと考えられる。画分AI及びBIをTSKgel G3000SWカラム(7.5×60mm)を用いたゲル濾過により分析した結果、画分AIはモノマーのピークのみ、画分BIはダイマーのピークのみ検出された(図22を参照)。また、ダイマー画分(画分BI)は、全一本鎖Fvの約4%であった。該ダイマー画分中のダイマーは、その90%以上が4℃で1ヶ月以上安定的に維持された。
5.10 大腸菌細胞でのMABL−2抗体由来の一本鎖Fvポリペプチド発現ベクターの構築
MABL−2抗体由来の一本鎖Fvを大腸菌菌体内にて効率的に発現するベクターを作製するため、pscM2ベクターをPCR法により修飾した。得られたDNA断片をpSCFVT7発現ベクターに導入した。
PCRに使用するプライマーは、前方プライマーとしてH鎖V領域のN末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つ開始コドン及びNdeI制限酵素認識部位を有する配列番号:27に示すNde−VHSm02プライマー及び後方プライマーとしてL鎖V領域のC末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つ2個の停止コドン及びEcoRI制限酵素認識部位を有する配列番号:28に示すVLASプライマーを用いた。なお、前方プライマーのNde−VHSm02は大腸菌菌体内にて効率的に発現するため、H鎖V領域のN末端をコードするDNAにハイブリダイズする部分に5カ所の点変異を含んでいる。
PCR溶液100μlは、10μlの10×PCR Buffer #1、1mM MgCl2、0.2mM dNTPs、5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(以上東洋紡社製)、1μMずつの各プライマー、及び100ngの鋳型DNA(pscM2)を含有し、98℃にて15秒間、65℃にて2秒間及び74℃にて30秒間、この順序で加熱した。この温度サイクルを25回反復した。
PCR生成物をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、NdeI及びEcoRIで消化し、得られたDNA断片をpSCFVT7ベクターにクローニングした。なお、本発現ベクターpSCFVT7はNdeI及びEcoRIで消化したことによりpelBシグナル配列が削除されている。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをpscM2DEm02と命名した(図23を参照のこと)。本プラスミドpscM2DEm02に含まれるMABL−2抗体由来の一本鎖Fvの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:29に示す。
5.11 大腸菌細胞におけるMABL−2抗体由来の一本鎖Fvポリペプチドの発現
MABL−2抗体由来の一本鎖Fvポリペプチドを発現する大腸菌株を得るため、pscM2DEm02ベクターを大腸菌BL21(DE3)pLysS(STRATAGENE社製)に形質転換した。得られたクローンについて、SDS−PAGEにて目的とするタンパク質の発現を検討し、発現量の高いクローンをMABL−2抗体由来の一本鎖Fvポリペプチドの産生株として選択した。
5.12 大腸菌細胞産生のMABL−2抗体由来の一本鎖Fvポリペプチドの精製
形質転換して得られた大腸菌のシングルコロニーをLB培地3mlにて28℃で7時間培養し、これを70mlのLB培地に植え継ぎ、28℃にて一夜培養を行った。このpre−cultureを7LのLB培地に植え継ぎ、ジャーファーメンターを用いて28℃、攪拌速度300rpmにて培養した。O.D.=1.5のときに1mM IPTGで誘導をかけ、その後3時間培養を行った。
培養液を遠心分離(10000×g、10分)し、沈殿として回収した菌体に5mM EDTA、0.1M NaCl、1%Triton X−100を含む50mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)を加え、超音波(out put:4、duty cycle:70%、1分×10回)により菌体を破砕した。この懸濁液を遠心分離(12000×g、10分)にかけ、沈殿として回収した封入体に5mM EDTA、0.1M NaCl、4%Triton X−100を含む50mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)を加え、再度超音波処理(out put:4、duty cycle:50%、30秒×2)を行い、遠心分離(12000×g、10分)により目的蛋白質を沈殿として回収し、上清にくる夾雑蛋白質を除去した。
目的蛋白質を含んだ封入体を6M Urea、5mM EDTA、0.1M NaClを含む50mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解し、4M Urea、5mM EDTA、0.1M NaCl、10mM メルカプトエタノールを含む50mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したSephacrylS−300(5×90cm、AMERSHAM PHARMACIA社製)ゲル濾過カラムに、流速5ml/分で添加し、会合している高分子量の一本鎖Fvを除去した。各画分をSDS−PAGEで分析し、純度の高い画分について、O.D280=0.25になるようにゲル濾過で用いた溶媒で希釈後、5mM EDTA、0.1M NaCl、0.5M Arg、2mM 還元型グルタチオン、0.2mM 酸化型グルタチオンを含む50mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)に対して透析を3回行うことにより、巻き戻し操作を行った。さらに0.15M NaClを含む20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に対して3回透析し、溶媒交換を行った。
わずかに含まれる分子間でS−S結合で架橋された高分子を分離除去するため、0.15M NaClを含む20mM 酢酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したSuperdex 200pg(2.6×60cm、AMERSHAM PHARMACIA社製)ゲル濾過カラムに添加した。図24に示すように、高分子量の会合体と考えられるブロードなピークのあと、主要ピークとサブピークの2つのピークが検出された。SDS−PAGEによる分析(図21参照)及びゲル濾過の溶出位置から、主要ピークは一本鎖Fvポリペプチドのモノマーであり、サブピークは非共有結合性のダイマーと考えられる。なお、形成された非共有結合性のダイマーは、全一本鎖Fvポリペプチドの約4%であった。
5.13 MABL−2抗体由来の精製一本鎖Fvポリペプチドのin vitroでのアポトーシス誘起効果
ヒトIAPを遺伝子導入したL1210細胞(hIAP/L1210)を用い、CHO細胞及び大腸菌細胞産生のMABL−2抗体由来の一本鎖Fvポリペプチド(MABL2−scFv)のアポトーシス誘起作用を、次の2つのプロトコールにてAnnexin−V(BOEHRINGER MANNHEIM社製)染色により検討した。
第一のプロトコールは、hIAP/L1210細胞5×104個に、抗体試料を終濃度3μg/mlで添加し、24時間培養した。抗体試料として、実施例5.9で得たCHO細胞由来MABL2一本鎖Fvのモノマー及びダイマー、さらに実施例5.12で得た大腸菌細胞由来の同モノマー及びダイマー、そしてコントロールとしてマウスIgG抗体について検討した。培養後、Annexin−V染色を行い、FACScan装置(BECTON DICKINSON社製)にて蛍光強度を測定した。
また、第二のプロトコールは、hIAP/L1210細胞5×104個に、抗体試料を終濃度3μg/mlで添加し、2時間培養後に抗FLAG抗体(SIGMA社製)を終濃度15μg/mlで添加し、更に22時間培養した。抗体試料として、5.9で得たCHO細胞由来MABL2一本鎖Fvのモノマー及びコントロールとしてマウスIgG抗体について検討した。培養後、Annexin−V染色を行い、FACScan装置にて蛍光強度を測定した。
Annexin−V染色による解析の結果を図25〜31にそれぞれ示した。その結果、CHO細胞及び大腸菌細胞産生のMABL−2抗体由来一本鎖Fvポリペプチドのダイマーはコントロール(図25)と比較して著しい細胞死を誘導した(図26、27)が、CHO細胞及び大腸菌細胞産生の一本鎖Fvポリペプチドのモノマーのアポトーシス誘導作用は認められなかった(図28、29)。また、抗FLAG抗体の添加により、CHO細胞産生のMABL−2抗体由来一本鎖Fvポリペプチドのモノマーはコントロール(図30)と比較して著しい細胞死を誘導した(図31)。
5.14 scFv/CHOポリペプチドのモノマー及びダイマーのヒト骨髄腫マウスモデルに対する抗腫瘍効果
(1)マウス血清ヒトIgG定量法
マウス血清中における、ヒト骨髄腫細胞が産生するヒトIgG(Mタンパク質)の定量は、以下のELISAで行った。0.1%重炭酸緩衝液(pH9.6)で1μg/mlに希釈したヤギ抗ヒトIgG抗体(BIOSOURCE社製、Lot#7902)100μlを96ウェルプレート(Nunc社製)に加え、4℃で一晩インキュベーションし、抗体を固相化した。ブロッキングの後、段階希釈したマウス血清あるいは標品としてヒトIgG(Cappel社製、Lot#00915)100μlを添加し、室温にて2時間インキュベーションした。洗浄後、5000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG抗体(BIOSOURCE社製、Lot#6202)100μlを加え、室温にて1時間インキュベーションした。洗浄後、基質溶液を加え、インキュベーションの後、MICROPLATE READER Model 3550(BioRad社製)を用いて405nmの吸光度を測定し、標品のヒトIgGの吸光度より得られた検量線から、マウス血清中のヒトIgG(Mタンパク質)濃度を算出した。
(2)投与抗体の調製
scFv/CHOポリペプチドのモノマー及びダイマーは、投与当日、濾過滅菌したPBS(−)を用いて、それぞれ0.4mg/ml、0.25mg/mlになるように調製し、投与試料とした。
(3)ヒト骨髄腫マウスモデルの作製
ヒト骨髄腫マウスモデルは以下のように作製した。SCIDマウス(日本クレア)を用いてin vivo継代したKPMM2細胞(特開平7−236475号公報)を10%ウシ胎児血清(GIBCO BRL社製)を含むRPMI1640培地(GIBCO BRL社製)で3×107個/mlになるように調製した。あらかじめ前日抗アシアロGM1抗体(和光純薬社製、1バイアルを5mlで溶解)100μlを皮下投与したSCIDマウス(オス、6週齢)(日本クレア)に上記KPMM2細胞懸濁液200μl(6×106個/マウス)を尾静脈より注入した。
(4)抗体投与
(3)で作製したヒト骨髄腫マウスモデルに対し、KPMM2細胞移植後3日目より、1日2回、3日間、上記(2)で調製した投与試料、モノマーは250μl、ダイマーは400μlを、尾静脈より投与した。対照として、濾過滅菌したPBS(−)を同様に1日2回、3日間、200μl、尾静脈より投与した。両群とも、1群7匹で行った。
(5)scFv/CHOポリペプチドのモノマー及びダイマーのヒト骨髄腫移植マウスモデルに対する抗腫瘍効果の評価
scFv/CHOポリペプチドのモノマー及びダイマーのヒト骨髄腫マウスモデルの抗腫瘍効果については、当該骨髄腫細胞が産生するヒトIgG(Mタンパク質)のマウス血清中の量の変化、及び生存期間で評価した。マウス血清中のヒトIgG量の変化については、KPMM2細胞移植後24日目に血清を採取し、上記(1)で述べたELISAを用いてヒトIgG量を測定した。その結果、PBS(−)投与群では、血清ヒトIgG(Mタンパク質)量が約8500μg/mlまで上昇しているのに対し、scFv/CHOダイマー投与群では対照群の1/10以下と顕著に低値であり、scFv/CHOダイマーがKPMM2細胞の増殖を非常に強く抑制していることが示された(図32)。一方、生存期間についても図33に示すとおり、scFv/CHOダイマー投与群ではPBS(−)投与群と比較して顕著な生存期間の延長が認められた。
以上より、scFv/CHOダイマーがヒト骨髄腫マウスモデルに対して、抗腫瘍効果を有することが示された。本発明の改変抗体であるscFv/CHOダイマーの抗腫瘍効果は、当該改変抗体が有するアポトーシス誘起作用に基づくと考えられる。
5.15 赤血球凝集試験
赤血球凝集試験及び赤血球凝集の判定法は、続生化学実験講座の免疫生化学研究法(日本生化学会編、東京化学同人)に準じて実施した。
健常人の血液をヘパリン処理した注射筒により採血し、PBS(−)により3回洗浄した後、PBS(−)にて最終濃度が2%の赤血球浮遊液を作製した。検査サンプルは、対照としてマウスIgG(Zymed社製)を用い、MABL−2抗体、CHO細胞産生の一本鎖Fvポリペプチドモノマー、ダイマー、大腸菌産生の一本鎖Fvポリペプチドのモノマーとダイマーを使用した。赤血球の凝集作用を検討するために、ファルコン社製のU底の96ウェルプレートを使用し、上記の抗体サンプルを50μl/ウェル添加した中に、2%赤血球浮遊液をさらに50μl添加、混和し、37℃で2時間インキュベーション後、4℃で一昼夜保存し、凝集を判定した。また、対照として、PBS(−)を50μl/ウェル添加し、抗体サンプルと同様にして凝集試験を行った。抗体の最終濃度は、マウスIgG、MABL−2抗体は、0.01、0.1、1、10、100μg/ml、一本鎖Fvは、0.004、0.04、0.4、4、40、80μg/mlで大腸菌産生の一本鎖Fvポリペプチドのダイマーのみさらに160μg/mlの用量を設定した。その結果は、下記の表2に示す通り、MABL−2抗体では、0.1μg/ml以上で赤血球凝集が見られたのに対し、一本鎖Fvポリペプチドではモノマー、ダイマー共に赤血球凝集は認められなかった。
実施例6 2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V領域を含む改変抗体sc(Fv)2及び種々の長さのペプチドリンカーを有するMABL−2抗体scFv
6.1 MABL−2抗体sc(Fv) 2 発現プラスミドの構築
MABL−2抗体由来の2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V領域を含む改変抗体[sc(Fv)2]を発現するプラスミドを作製するため、前述pCHOM2(MABL−2抗体由来のscFvをコードするDNAを含む)を以下に示す通りPCR法により修飾し、得られたDNA断片をpCHOM2に導入した。
PCRに使用するプライマーは、センスプライマーとしてEF1αをコードするDNAにハイブリダイズするEF1プライマー(配列番号:30)を使用し、アンチセンスプライマーとしてL鎖V領域のC末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つリンカー領域をコードするDNA配列(配列番号:19)及びSalI制限酵素認識部位を有するVLLASプライマー(配列番号:31)を使用した。
PCR溶液100μlは、10μlの10×PCR Buffer #1、1mM MgCl2、0.2mM dNTPs(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)、5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(以上東洋紡社製)、1μMの各プライマー、及び100ngの鋳型DNA(pCHOM2)を含有する。PCR溶液を94℃にて30秒間、50℃にて30秒間及び74℃にて1分間、この順序で加熱した。この温度サイクルを30回反復した。
PCR生成物をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、SalIで消化し、得られたDNA断片をpBluescript KS+ベクター(東洋紡社製)にクローニングした。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをSalIで消化し、得られたDNA断片をSalIで消化したpCHOM2にRapid DNA Ligation Kit(BOEHRINGER MANNHEIM社製)を用いて連結した。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをpCHOM2(Fv)2と命名した(図34を参照)。本プラスミドpCHOM2(Fv)2に含まれるMABL−2抗体sc(Fv)2領域の塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:32に示す。
6.2 種々の長さのペプチドリンカーを有するMABL−2抗体scFv発現プラスミドの作製
種々の長さのペプチドリンカーを有し、そして[H鎖]−[L鎖](以下HL)、[L鎖]−[H鎖](以下LH)となるようにV領域を連結したscFvを、MABL−2由来のH鎖及びL鎖cDNAを鋳型として以下の通りに作製した。
HLタイプのscFvを作製するために、まずpCHOM2(Fv)2を鋳型としてCFHL−F1(配列番号:33)及びCFHL−R2(配列番号:34)プライマー、CFHL−F2(配列番号:35)及びCFHL−R1プライマー(配列番号:036)によりKODポリメラーゼにて94℃30秒、60℃30秒、72℃1分間の反応を30回繰り返すPCR反応を行い、5’側にリーダー配列を含むH鎖、及び3’側にFLAG配列を含むL鎖のcDNA遺伝子を作製した。得られたH鎖及びL鎖cDNAを鋳型として混合し、KODポリメラーゼにて94℃30秒、60℃30秒、72℃1分間の反応を5回繰り返すPCR反応を行い、CFHL−F1及びCFHL−R1プライマーを加えてさらに30サイクル反応することによりリンカーを含まないHL−0タイプのcDNAを作製した。
LHタイプのscFvを作製するために、まずMABL−2のL鎖及びH鎖V領域のcDNAを含むプラスミドpGEM−M2L及びpGEM−M2H(特願平11−63557参照)を鋳型として、それぞれT7(配列番号:37)及びCFLH−R2(配列番号:38)プライマー、CFLH−F2(配列番号:39)及びCFLH−R1(配列番号:40)プライマーを用いてKODポリメラーゼ(東洋紡)にて94℃30秒、60℃30秒、72℃1分間の反応を30回繰り返すPCR反応を行い、5’側にリーダー配列を含むL鎖、及び3’側にFLAG配列を含むH鎖のcDNA遺伝子を作製した。得られたL鎖及びH鎖cDNAを鋳型として混合し、KODポリメラーゼにて94℃30秒、60℃30秒、72℃1分間の反応を5回繰り返すPCR反応を行い、T7及びCFLH−R1プライマーを加えてさらに30サイクル反応した。この反応産物を鋳型とし、CFLH−F4(配列番号:41)及びCFLH−R1プライマーを用いて94℃30秒、60℃30秒、72℃1分間の反応を30回繰り返すPCR反応を行うことによりリンカーを含まないLH−0タイプのcDNAを作製した。
こうして作製したLH−0、HL−0タイプのcDNAを制限酵素EcoRI、BamHI(宝酒造)処理し、XhoI制限酵素切断部位を含まない哺乳動物発現プラスミドINPEP4にLigation High(東洋紡)を用いて導入し、Competent E.coli JM109(ニッポンジーン)を形質転換した。形質転換した大腸菌よりQIAGEN Plasmid Maxi Kit(QIAGEN)にてプラスミドを精製した。こうしてプラスミドpCF2LH−0及びpCF2HL−0を作製した。
次に、リンカーサイズの異なる発現プラスミドを作製するためにHLタイプではpCF2HL−0を鋳型としてCFHL−X3(配列番号:42)、CFHL−X4(配列番号:43)、CFHL−X5(配列番号:44)、CFHL−X6(配列番号:45)、又はCFHL−X7(配列番号:46)のセンスプライマー及びアンチセンスプライマーとしてベクター配列に相補的なBGH−1(配列番号:47)プライマーを用いてKODポリメラーゼにて94℃30秒、60℃30秒、72℃1分間の反応を30回繰り返すPCR反応を行い、得られた反応産物を制限酵素XhoI、BamHI(宝酒造)にて処理した。得られた断片をpCF2HL−0のXhoI、BamHIサイトにLigation High(東洋紡)を用いて導入し、Competent E.coli JM109を形質転換した。形質転換した大腸菌よりQIAGEN Plasmid Maxi Kitにてプラスミドを精製した。こうして、発現プラスミドpCF2HL−3、pCF2HL−4、pCF2HL−5、pCF2HL−6及びpCF2HL−7を作製した。更にCOS7細胞での一過的発現に用いる発現プラスミドを作製するために、pCF2HL−0、pCF2HL−3、pCF2HL−4、pCF2HL−5、pCF2HL−6及びpCF2HL−7を制限酵素EcoRI及びBamHI(宝酒造)にて処理し、約800bpの断片をアガロースゲル電気泳動によるゲルからの回収により精製した。得られた断片を哺乳動物細胞発現プラスミドpCOS1のEcoRI及びBamHIサイトにLigation Highを用いて導入し、Competent E.coli DH5α(東洋紡)を形質転換した。形質転換した大腸菌よりQIAGEN Plasmid Maxi Kitにてプラスミドを精製した。こうして、発現プラスミドCF2HL−0/pCOS1、CF2HL−3/pCOS1、CF2HL−4/pCOS1、CF2HL−5/pCOS1、CF2HL−6/pCOS1及びCF2HL−7/pCOS1を作製した。代表的な例として、プラスミドCF2HL−0/pCOS1の構造を図35に示し、これに含まれるMABL2−scFv<HL−0>の塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:48に示す。また各プラスミドのリンカー部分の塩基配列及びアミノ酸配列を図36に示す。
また、リンカーサイズの異なるLHタイプの発現プラスミドを作製するため、pCF2LH−0を鋳型としてCFLH−X3(配列番号:49)、CFLH−X4(配列番号:50)、CFLH−X5(配列番号:51)、CFLH−X6(配列番号:52)又はCFLH−X7(配列番号:53)のセンスプライマー及びアンチセンスプライマーとしてベクター配列に相補的なBGH−1プライマーを用いてKODポリメラーゼにて94℃30秒、60℃30秒、72℃1分間の反応を30回繰り返すPCR反応を行い、得られた反応産物を制限酵素XhoI、BamHIにて処理した。得られた断片をpCF2LH−0のXhoI、BamHIサイトにLigation Highを用いて導入し、Competent E.coli DH5α(東洋紡)を形質転換した。形質転換した大腸菌よりQIAGEN Plasmid Maxi Kitにてプラスミドを精製した。こうして、発現プラスミドpCF2LH−3、pCF2LH−4、pCF2LH−5、pCF2LH−6及びpCF2LH−7を作製した。更にCOS7細胞での一過的発現に用いる発現プラスミドを作製するために、pCF2LH−0、pCF2LH−3、pCF2LH−4、pCF2LH−5、pCF2LH−6及びpCF2LH−7を制限酵素EcoRI及びBamHI(宝酒造)にて処理し、約800bpの断片をアガロースゲル電気泳動によるゲルからの回収により精製した。得られた断片を哺乳動物細胞発現プラスミドpCOS1のEcoRI及びBamHIサイトにLigation Highを用いて導入し、Competent E.coli DH5α(東洋紡)を形質転換した。形質転換した大腸菌よりQIAGEN Plasmid Maxi Kitにてプラスミドを精製した。こうして、発現プラスミドCF2LH−0/pCOS1、CF2LH−3/pCOS1、CF2LH−4/pCOS1、CF2LH−5/pCOS1、CF2LH−6/pCOS1及びCF2LH−7/pCOS1を作製した。代表的な例として、プラスミドCF2LH−0/pCOS1の構造を図37に示し、これに含まれるMABL2−scFv<LH−0>の塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:54に示す。また各プラスミドのリンカー部分の塩基配列及びアミノ酸配列を図38に示す。
6.3 COS7細胞におけるscFv及びsc(Fv) 2 の発現
(1)有血清培地での培養上清の調製
HLタイプ、LHタイプscFv及びsc(Fv)2の発現のために、COS7細胞(JCRB9127、ヒューマンサイエンス振興財団)での一過的発現を行った。COS7細胞は10%牛胎児血清(IIyClone)を含むDMEM培地(GIBCO BRL社製)にて、37℃の炭酸ガス恒温槽中で経代培養した。
6.2で構築したCF2HL−0,3〜7/pCOS1、もしくはCF2LH−0,3〜7/pCOS1又はpCHOM2(Fv)2ベクターを、Gene Pulser装置(BioRad社製)を用いてエレクトロポレーションによりCOS7細胞にトランスフェクションした。
DNA(10μg)とDMEM(10%FBS,5mM BES(SIGMA社))培地中2×107細胞/mlの0.25mlをキュベットに加え、10分間静置の後に0.17kV、950μFの容量にてパルスを与えた。10分間静置の後、エレクトロポレーションされた細胞をDMEM(10%FBS)培地に混合し、75cm3フラスコに加えた。72時間培養後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去し、更に0.22μmボトルトップフィルター(FALCON)にて濾過し、これを培養上清(CM)とした。
(2)無血清培地での培養上清の調製
上記(1)と同様の方法でトランスフェクションした細胞をDMEM(10%FBS)培地に加え75cm3フラスコにて一夜培養した後、培養上清を捨て、PBSにて洗浄後、CHO−S−SFM II培地(GIBCO BRL社製)を添加した。72時間培養後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去し、更に0.22μmボトルトップフィルターにて濾過し、CMを得た。
6.4 COS7 CM中のscFv及びsc(Fv) 2 の検出
前記6.3(2)で調製したCOS7のCM中における種々のMABL2−scFv及びsc(Fv)2のポリペプチドを下記の通りにウェスタンブロッティング法により検出した。
各COS7 CMについてについてSDS−PAGEを行い、REINFORCED NC膜(Schleicher & Schuell社製)に転写した。5%スキムミルク(森永乳業社製)にてブロッキングを行い、TBSにて洗浄後、抗FLAG抗体(SIGMA社製)を加えた。室温にてインキュベーション及び洗浄の後、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(Jackson Immuno Research社製)を加え、室温にてインキュベーション及び洗浄後、基質溶液を添加し、発色させた(図39)。
6.5 フローサイトメトリー
MABL2−scFv及びsc(Fv)2のヒトIntegrin Assosiated Protein(IAP)抗原への結合を測定するため、前記6.3(1)にて調製したCOS7細胞培養上清を用いてフローサイトメトリーを行った。ヒトIAPを発現するマウス白血病細胞株L1210細胞2×105個に、実施例6.3(1)で得られた培養上清あるいは対照としてCOS7細胞の培養上清を加え、氷上にてインキュベーション及び洗浄の後、10μg/mlのマウス抗FLAG抗体(SIGMA社製)を加えた。インキュベーション及び洗浄の後、FITC標識抗マウスIgG抗体(BECTON DICKINSON社製)を加えた。再度インキュベーション及び洗浄の後、FACScan装置(BECTON DICKINSON社製)にて蛍光強度を測定した。その結果、各COS7培養上清中の種々の長さのペプチドリンカーを有するMABL2−scFv及びsc(Fv)2は、ヒトIAPに対して高い親和性を有することが示された(図40a及びb)。
6.6 in vitroでのアポトーシス誘起効果
前記1.3(1)にて調製したCOS7細胞培養上清について、ヒトIAPを遺伝子導入したL1210細胞(hIAP/L1210)に対するアポトーシス誘導作用をAnnexin−V(BOEHRINGER MANNHEIM社製)染色により検討した。
hIAP/L1210細胞5×104個に、各ベクターを形質転換したCOS7細胞培養上清あるいはコントロールとしてCOS7細胞培養上清を終濃度10%で添加し、24時間培養した。その後、Annexin−V/PI染色を行い、FACScan装置(BECTON DICKINSON社製)にて蛍光強度を測定した。その結果、COS7 CM中のscFv<HL3,4,6,7、LH3,4,6,7>及びsc(Fv)2はhIAP/L1210細胞に対して顕著な細胞死を誘導した。得られた結果を図41にそれぞれ示す。
6.7 MABL2−scFv及びsc(Fv) 2 のCHO細胞用発現ベクター の構築
前記MABL2−scFv及びsc(Fv)2を培養上清から精製することを目的として、これらをCHO細胞にて発現させるための発現ベクターを以下のように構築した。
前記1.2にて調製したpCF2HL−0,3〜7及びpCF2LH−0,3〜7のEcoRI−BamHI断片を、CHO細胞用発現ベクターpCHO1のEcoRI及びBamHI部位にLigation Highを用いて導入し、Competent E.coli DH5αを形質転換した。形質転換した大腸菌よりQIAGEN Plasmid Midi Kit(QIAGEN)にてプラスミドを精製した。このようにして発現プラスミドpCHOM2HL−0,3〜7及びpCHOM2LH−0,3〜7を作製した。
6.8 MABL2−scFv<HL−0,3〜7>、MABL2−scFv<LH−0,3〜7>及びsc(Fv) 2 発現CHO細胞の作製並びにその培養上清の調製
前記1.7にて構築した発現プラスミドpCHOM2HL−0,3〜7及びpCHOM2LH−0,3〜7並びにpCHOM2(Fv)2ベクターを以下の通りにCHO細胞に形質転換し、各改変抗体を恒常的に発現するCHO細胞を作製した。その代表的な例としてMABL2−scFv<HL−5>、sc(Fv)2を恒常的に発現するCHO細胞の作製を下記に示す。
発現プラスミドpCHOM2HL−5及びpCHOM2(Fv)2を制限酵素PvuIにて消化して直鎖状にし、これらをGene Pulser装置(BioRad社製)を用いてエレクトロポレーションによりCHO細胞にトランスフェクションした。DNA(10μg)と、PBS中1×107細胞/mlの0.75mlをキュベットに加え、1.5kV、25μFの容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%のウシ胎児血清を含有する核酸含有α−MEM培地(GIBCO BRL社製)に加え培養した。一夜培養後、培養上清を除去し、PBSにてリンスした後、10%のウシ胎児血清を含有する核酸不含α−MEM培地(GIBCO BRL社製)を加え培養した。約2週間培養後、methotrexate(SIGMA社製)を終濃度10nMで含有する培地で更に培養し、その後50nM、そして100nMと濃度を順次上げて培養を続けた。こうして得られた細胞をローラーボトル中で無血清培地CHO−S−SFM II(GIBCO BRL社製)にて培養後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去し、更に0.20μmフィルターにて濾過し、それぞれのCMを得た。
同様にして、MABL2−scFv<HL−0,3,4,6,7>及び<LH−0,3,4,5,6,7>を恒常的に発現するCHO細胞及びそれらのCMを得た。
6.9 MABL2−scFv<HL−5>のダイマー及びsc(Fv) 2 の精製
下記の2種類の精製法により前記6.8で得られたCMからMABL2−scFv<HL−5>及びsc(Fv)2の精製を行った。
<精製法1> HL−5及びsc(Fv)2を、そのポリペプチドのC末端のFlag配列を利用した抗Flag抗体アフィニティカラムクロマトグラフィー及びゲル濾過を用いて精製した。150mM NaClを含む50mM Tris塩酸緩衝液、pH7.5(TBS)で平衡化した抗Flag M2 Affinity gel(SIGMA)で作成したカラム(7.9ml)に前記6.8で得られたCM(1L)を添加し、TBSでカラムを洗浄後、0.1Mグリシン塩酸緩衝液、pH3.5でscFvをカラムから溶出させた。得られた画分をSDS/PAGEで分析し、scFvの溶出を確認した。scFv画分を終濃度が0.01%となるようにTween20を加え、Centricon−10(MILLIPORE)で濃縮した。濃縮液を150mM NaCl及び0.01%Tween20を含む20mM 酢酸緩衝液、pH6.0で平衡化したTSKgelG3000SWカラム(7.5×600mm)にかけた。流速0.4ml/minでscFvは280nmの吸収で検出した。HL−5は主要ピークとしてダイマーの位置に、sc(Fv)2はモノマーの位置にそれぞれ溶出された。
<精製法2> HL−5及びsc(Fv)2をイオン交換クロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイト及びゲル濾過の三工程で精製した。イオン交換クロマトグラフィーでは、HL−5ではQ Sepharose fast flowカラム(ファルマシア)をsc(Fv)2ではSP−sepharose fast flowカラムを用い、第二工程以降はHL−5とsc(Fv)2で同じ条件を用いた。
(第一工程)HL−5
HL−5のCMは、0.02%Tween20を含む20mM Tris塩酸緩衝液、pH9.0で2倍希釈した後に、1M TrisでpHを9.0に調整した。この後、0.02%Tween20を含む20mM Tris塩酸緩衝液、pH8.5で平衡化したQ Sepharose fast flowカラムにかけ、同緩衝液中0.1Mから0.55MまでのNaClの直線濃度勾配でカラムに吸着したポリペプチドを溶出した。得られた画分をSDS/PAGEで分析し、HL−5を含む画分を集め、第二工程のハイドロキシアパタイトにかけた。
(第一工程)sc(Fv)2
sc(Fv)2のCMは、0.02%Tween20を含む20mM 酢酸緩衝液、pH5.5で2倍希釈した後に、1M酢酸でpHを5.5に調整した。0.02%Tween20を含む20mM 酢酸緩衝液、pH5.5で平衡化したSP−Sepahrose fast flowカラムにかけ、同緩衝液中、NaCl濃度を0から0.5Mまで直線的に上げ、カラムに吸着したポリペプチドを溶出した。得られた画分をSDS/PAGEで分析し、sc(Fv)2を含む画分を集め、第二工程のハイドロキシアパタイトにかけた。
(第二工程)HL−5及びsc(Fv)2のハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー
第一工程で得られたHL−5画分及びsc(Fv)2画分をそれぞれ0.02%Tween20を含む10mM リン酸緩衝液、pH7.0で平衡化したハイドロキシアパタイトカラム(BioRad、タイプI)に添加し、同緩衝液でカラムを洗浄後、リン酸緩衝液濃度を0.5Mまで直線的に上げ、カラムに吸着したポリペプチドを溶出した。各画分をSDS/PAGEで分析し、所望のポリペプチドが含まれる画分を集めた。
(第三工程)HL−5及びsc(Fv)2のゲル濾過
第二工程で得られた各画分をそれぞれCentriprep−10(MILLIPORE)で濃縮し、0.02%Tween20及び0.15M NaClを含む20mM 酢酸緩衝液、pH6.0で平衡化したSuperdex200カラム(2.6×60cm、ファルマシア)にかけた。HL−5はダイマーに位置に、sc(Fv)HL−5及びsc(Fv)2はモノマーの位置にそれぞれ主要ピークとして溶出された。
いずれの精製法においても、HL−5モノマーは殆ど検出されなかったことから、一本鎖Fvのリンカーのアミノ酸残基数が5個程度であれば、効率的に一本鎖Fvのダイマーが形成できることが判明した。HL−5ダイマーおよびsc(Fv)2はいずれも精製された後も4℃で1ヶ月間安定的に維持された。
6.10 精製scFv<HL−5>のダイマー及びsc(Fv) 2 の抗原結合活性評価
精製されたMABL2−scFv<HL5>のダイマー及びsc(Fv)2のヒトIntegrin Assosiated Protein(IAP)抗原への結合を測定するため、フローサイトメトリーを行った。ヒトIAPを発現するマウス白血病細胞株L1210細胞(hIAP/L1210)又は対照としてpCOS1ベクターをトランスフェクションしたL1210細胞(pCOS1/L1210)2×105個に、10μg/mlの精製MABL2−scFv<HL5>のダイマー、MABL2−sc(Fv)2、陽性対照としてモノクローナル抗体MABL−2、陰性対照としてマウスIgG(Zymed社製)を加え、氷上にてインキュベーション及び洗浄の後、10μg/mlのマウス抗FLAG抗体(SIGMA社製)を加えた。インキュベーション及び洗浄の後、FITC標識抗マウスIgG抗体(BECTON DICKINSON社製)を加えた。再度インキュベーション及び洗浄の後、FACScan装置(BECTON DICKINSON社製)にて蛍光強度を測定した。
その結果、精製MABL2−scFv<HL5>のダイマー及びMABL2−sc(Fv)2はhIAP/L1210細胞に特異的に結合したことにより、scFv<HL5>のダイマー及びsc(Fv)2がヒトIAPに対して高い親和性を有することが示された(図42)。
6.11 精製scFv<HL−5>のダイマー及びsc(Fv) 2 のin vitroアポトーシス誘起効果
精製したMABL2−scFv<HL5>のダイマー及びsc(Fv)2について、ヒトIAPを遺伝子導入したL1210細胞(hIAP/L1210)及びヒト白血病細胞株CCRF−CEMに対するアポトーシス誘導作用をAnnexin−V(BOEHRINGER MANNHEIM社製)染色により検討した。
hIAP/L1210細胞5×104個あるいはCCRF−CEM細胞1×105個に、精製MABL2−scFv<HL5>のダイマー、MABL2−sc(Fv)2、陽性対照としてモノクローナル抗体MABL−2、陰性対照としてマウスIgGを様々な濃度で添加し、24時間培養した。その後、Annexin−V染色を行い、FACScan装置(BECTON DICKINSON社製)にて蛍光強度を測定した。その結果、MABL2−scFv<HL5>のダイマー及びMABL2−sc(Fv)2はhIAP/L1210、CCRF−CEMの両細胞に対して濃度依存的に細胞死を誘導した(図43)。この結果、MABL2−scFv<HL5>のダイマー及びMABL2−sc(Fv)2は、もとのモノクローナル抗体MABL−2と比較して改善されたアポトーシス誘導作用を有することが示された。
6.12 精製scFv<HL−5>のダイマー及びsc(Fv) 2 の赤血球凝集試験
実施例5.15に従って、種々の濃度の精製したscFv<HL−5>のダイマー及びsc(Fv)2の血液凝集試験を実施した。
モノクローナル抗体MABL−2(陽性対照)では血液凝集が起こるのに対して、一本鎖抗体のMABL2−sc(Fv)2及びMABL2−sc(Fv)<HL5>は凝集しなかった。また、MABL−2抗体を用いた緩衝液の差もほとんどみられなかった。その結果を下記の表3に示す。
6.13 精製scFv<HL−5>のダイマー及びsc(Fv) 2 のヒト骨髄腫マウスモデルに対する抗腫瘍効果
実施例6.8及び6.9にて作製、精製したscFv<HL−5>のダイマー及びsc(Fv)2について、その抗腫瘍効果を試験した。具体的には実施例5.14(3)で作製したヒト骨髄腫マウスモデルを用いて、マウス血清中における、ヒト骨髄腫細胞が産生するMタンパク質をELISAにより定量し、併せてマウスの生存日数を記録した。そして、血清中のMタンパク質量の変化および生存日数により、scFv<HL−5>のダイマー及びsc(Fv)2の抗腫瘍効果を評価した。
なお、本試験においてHL−5及びsc(Fv)2は、vehicle(150mM NaCl,0.02%Tween及び20mM 酢酸緩衝液,pH6.0)中の0.01、0.1又は1mg/mlの溶液として、投与量が0.1、1または10mg/kgになるようにマウスに投与した。また、対照はvehicleのみを投与した。
ヒト骨髄腫細胞移植後26日目に血清を採取し、血清中のMタンパク質量をELISAにより実施例5.14に従って測定した。その結果、HL−5投与群及びダイマー及びsc(Fv)2投与群共に、血清中のMタンパク質量が投与量依存的に減少していた(図44を参照)。また、その生存期間については、HL−5投与群(図45)及びsc(Fv)2投与群(図46)共に対照(vehicle投与群)と比較して有意な生存期間の延長が観察された。これらの結果は、本発明のHL−5及びsc(Fv)2がインビボにおいても優れた抗腫瘍作用を有することを示している。
実施例7 ヒトMPLに対するヒト抗体12B5のH鎖V領域及びL鎖V領域を含む一本鎖Fv
ヒトMPLに対するヒトモノクローナル抗体12B5のV領域をコードするDNAを次のようにして構築した。
7.1 12B5H鎖V領域をコードする遺伝子の構築
ヒトMPLに結合するヒト抗体12B5H鎖V領域をコードする遺伝子は、該遺伝子の塩基配列(配列番号55)を用いて、その5’末端にヒト抗体遺伝子由来のリーダー配列(配列番号56)(Eur.J.Immunol.1996;26:63−69)を連結させることで設計した。設計した塩基配列はそれぞれ15bpのオーバーラップ配列を持つように4本のオリゴヌクレオチド(12B5VH−1、12B5VH−2、12B5VH−3、12B5VH−4)に分割し、12B5VH−1(配列番号57)及び12B5VH−3(配列番号:59)はセンス方向で、12B5VH−2(配列番号:58)及び12B5VH−4(配列番号:60)はアンチセンス方向でそれぞれ合成した。各合成オリゴヌクレオチドはそれぞれの相補性によりアッセンブリさせた後、外側プライマー(12B5VH−S及び12B5VH−A)を加え、全長の遺伝子を増幅した。なお、12B5VH−S(配列番号:61)は前方プライマーでリーダー配列の5’末端にハイブリダイズし、且つHind III制限酵素認識配列ならびにコザック配列を持つように、また12B5VH−A(配列番号:62)は後方プライマーでH鎖V領域のC末端をコードする塩基配列にハイブリダイズし、且つスプライスドナー配列ならびにBamHI制限酵素認識配列を持つようにそれぞれ設計した。
PCR溶液100μlは、10μlの10×PCR Gold Buffer II、1.5mM MgCl2、0.08mM dNTPs(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)、2.5ピコモル[p mole]ずつの合成オリゴヌクレオチド12B5VH−1〜4を含有し、94℃の初期温度にて9分間そして次に94℃にて2分間、55℃にて2分間及び72℃にて2分間のサイクルを2回反復した後、100pmoleずつの外側プライマー12B5VH−S及び12B5VH−Aを加え、さらに94℃にて30秒間、55℃にて30秒間及び72℃にて1分間のサイクルを35回反復した後、反応混合物を更に72℃で5分間加熱した。
PCR生成物は1.5%低融点アガロースゲル(Sigma社製)を用い精製した後、制限酵素BamHI及びHind IIIで消化し、ヒトH鎖発現ベクターHEF−gY1にクローニングした。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをHEF−12B5H−gY1と命名した。
さらに、HEF−12B5H−gY1を制限酵素EcoRIならびにBamHIで消化し、12B5VHをコードする遺伝子を調製した後、ヒトFabH鎖発現ベクターpCOS−Fdに挿入しpFd−12B5Hを得た。なお、ヒトFabH鎖発現ベクターはヒト抗体H鎖V領域と定常領域をコードする遺伝子間に存在するイントロン領域ならびにヒトH鎖定常領域の一部をコードする遺伝子を含むDNA(配列番号63)をPCR法を用い増幅した後、動物細胞発現ベクターpCOS1に挿入することで構築したベクターである。ヒトH鎖定常領域はHEF−gY1を鋳型とし、上記と同様の条件下にて遺伝子の増幅を行い、前方プライマーとしてイントロン1の5’端の配列とハイブリダイズし、且つEcoRI及びBamHI制限酵素認識配列を有するように設計したG1CH1−S(配列番号64)を、後方プライマーとしてヒトH鎖定常領域CH1ドメインの3’端のDNAにハイブリダイズし、且つヒンジ領域の一部をコードする配列、二個の停止コドンおよびBgl II制限酵素認識部位を有するように設計したG1CH1−A(配列番号65)を用いた。
プラスミドHEF−12B5H−gY1及びpFd−12B5Hに含まれる再構成12B5H鎖可変領域の塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:66に示す。
7.2 12B5L鎖V領域をコードする遺伝子の構築
ヒトMPLに結合するヒト抗体12B5L鎖V領域をコードする遺伝子は、該遺伝子の塩基配列(配列番号67)を用い、その5’末端にヒト抗体遺伝子3D6(Nuc.Acid Res.1990:18;4927)由来のリーダー配列(配列番号68)を連結させることで設計した。設計した塩基配列は上記と同様にそれぞれ15bpのオーバーラップ配列を持つように4本のオリゴヌクレオチド(12B5VL−1、12B5VL−2、12B5VL−3、12B5VL−4)に分割し、それぞれ合成した。12B5VL−1(配列番号:69)及び12B5VL−3(配列番号:71)はセンス配列、12B5VL−2(配列番号:70)及び12B5VL−4(配列番号:72)はアンチセンス配列を有し、各合成オリゴヌクレオチドはそれぞれの相補性によりアッセンブリさせた後、外側プライマー(12B5VL−S及び12B5VL−A)を加え、全長の遺伝子を増幅した。なお、12B5VL−S(配列番号:73)は前方プライマーでリーダー配列の5’末端にハイブリダイズし、且つHind III制限酵素認識配列ならびにコザック配列を持つように、また12B5VL−A(配列番号:74)は後方プライマーでL鎖V領域のC末端をコードする塩基配列にハイブリダイズし、且つスプライスドナー配列ならびにBamHI制限酵素認識配列を持つようにそれぞれ設計した。
PCR反応は上記と同様に行い、PCR生成物は1.5%低融点アガロースゲル(Sigma社製)を用い精製した後、制限酵素BamHI及びHind IIIで消化し、ヒトL鎖発現ベクターHEF−gKにクローニングした。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをHEF−12B5L−gKと命名した。本プラスミドHEF−12B5L−gKに含まれる再構成12B5L鎖V領域の塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:75に示す。
7.3 再構成12B5一本鎖Fv(scFv)の作製
再構成12B5抗体一本鎖Fvは12B5VH−リンカー−12B5VLの順とし、そのC末端には検出及び精製を容易にするためにFLAG配列(配列番号:76)を付加することで設計した。さらに、リンカー配列は(Gly4Ser)3の15アミノ酸からなるリンカー配列を用い、再構成12B5一本鎖Fv(sc12B5)を構築した。
(1)15アミノ酸からなるリンカー配列を用いた再構成12B5一本鎖Fvの作製
15アミノ酸からなるリンカーを用いた再構成12B5抗体一本鎖Fvをコードする遺伝子は12B5H鎖V領域、リンカー領域、及び12B5L鎖V領域をそれぞれPCR法を用いて増幅し、連結することにより構築した。この方法を図47に模式的に示す。再構成12B5一本鎖Fvの作製のために6個のPCRプライマー(A〜F)を使用した。プライマーA、C及びEはセンス配列を有し、プライマーB、D及びFはアンチセンス配列を有する。
H鎖V領域のための前方プライマー12B5−S(プライマーA、配列番号:77)は、H鎖リーダー配列の5’末端にハイブリダイズし且つEcoRI制限酵素認識部位を有するように設計した。H鎖V領域のための後方プライマーHuVHJ3(プライマーB、配列番号:78)は、H鎖V領域のC末端をコードするDNAにハイブリダイズするように設計した。
リンカーのための前方プライマーRHuJH3(プライマーC、配列番号:79)は、リンカーのN末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つH鎖V領域のC末端をコードするDNAとオーバーラップするように設計した。リンカーのための後方プライマーRHuVK1(プライマーD、配列番号:80)は、リンカーのC末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つL鎖V領域のN末端をコードするDNAとオーバーラップするように設計した。
L鎖V領域のための前方プライマーHuVK1.2(プライマーE、配列番号:81)はL鎖V領域のN末端をコードするDNAにハイブリダイズするように設計した。L鎖V領域のための後方プライマー12B5F−A(プライマーF、配列番号:82)は、L鎖V領域のC末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つFLAGペプチドをコードする配列(Hopp,T.P.ら、Bio/Technology,6,1204−1210,1988)、2個の転写停止コドン及びNotI制限酵素認識部位を有するように設計した。
第一PCR段階において3つの反応A−B、C−D及びE−Fを行い、そして第一PCRから得られた3つのPCR生成物をそれら自体の相補性によりアッセンブリさせた。次に、プライマーA及びFを加えて、15アミノ酸からなるリンカーを用いた再構成12B5一本鎖Fvをコードする全長DNAを増幅した(第二PCR)。なお、第一PCRにおいては、再構成12B5H鎖V領域をコードするプラスミドHEF−12B5H−gY1(実施例7.1を参照)、Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Serからなるリンカー領域をコードするDNA配列(配列番号:83)(Huston,J.S.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,5879−5883,1988)を含んで成るプラスミドpSCFVT7−hM21(ヒト型化ONS−M21抗体)(Ohtomo,T.ら、Anticancer Res.18(1998),4311−4316)、及び再構成12B5L鎖V領域をコードするプラスミドHEF−12B5L−gK(実施例7.2を参照)をそれぞれ鋳型として用いた。
第一PCR段階の溶液50μlは、5μlの10×PCR Gold Buffer II、1.5mM MgCl2、0.08mM dNTPs、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)、100pmoleずつの各プライマー及び100ngの各鋳型DNAを含有し、94℃の初期温度にて9分間そして次に94℃にて30秒間、55℃にて30秒間及び72℃にて1分間のサイクルを35回反復した後、反応混合物を更に72℃で5分間加熱した。
PCR生成物A−B、C−D、及びE−Fは第二PCRでアッセンブリした。第二PCRにおいて、鋳型として1μlの第一PCR反応物A−B、0.5μlのPCR反応物C−D及び1μlのPCR反応物E−F、10μlの10×PCRGold Buffer II、1.5mM MgCl2、0.08mM dNTPs、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)を含有する98μlのPCR混合液を、94℃の初期温度にて9分間そして次に94℃にて2分間、65℃にて2分間及び72℃にて2分間のサイクルを2回反復した後、それぞれ100pmoleずつのプライマーA及びFを加えた。そして94℃にて30秒間、55℃にて30秒間及び72℃にて1分間のサイクルを35回反復した後、反応混合物を72℃にて5分間加熱した。
第二PCRにより生じたDNA断片を1.5%低融点アガロースゲルを用いて精製し、EcoRI及びNotIで消化し、得られたDNA断片をpCHO1ベクターおよびpCOS1ベクター(特願平8−255196)にクローニングした。なお、本発現ベクターpCHO1は、DHFR−ΔE−rvH−PM1−f(WO92/19759参照)から、EcoRI及びSmaI消化により抗体遺伝子を削除し、EcoRI−NotI−BamHI Adaptor(宝酒造社製)を連結することにより構築したベクターである。DNA配列決定の後、再構成12B5一本鎖Fvの正しいアミノ酸配列をコードするDNA断片を含むプラスミドをpCHO−sc12B5及びpCOS−sc12B5と命名した。本プラスミドpCHO−sc12B5及びpCOS−sc12B5に含まれる再構成12B5一本鎖Fvの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:84に示す。
7.4 動物細胞を用いた各12B5抗体(IgG、Fab)及び一本鎖Fvポリペプチドの発現
12B5抗体(IgG、Fab)及び12B5抗体由来の一本鎖Fv(ポリペプチド)はCOS−7細胞又はCHO細胞を用い発現させた。
COS−7細胞を用いた一過的な発現は次のようにして行った。すなわち、Gene Pulser装置(BioRad社製)を用いたエレクトロポレーション法により遺伝子導入した。12B5抗体(IgG)の発現には前述の発現ベクターHEF−12B5H−gY1及びHEF−12B5L−gK各10μgずつを、12B5Fab断片の発現にはpFd−12B5HとHEF−12B5L−gK各10μgずつを、一本鎖Fvの発現にはpCOS−sc12B5(10μg)をPBSに懸濁したCOS−7細胞(1×107細胞/ml)0.8mlに混合し、キュベットに加え、1.5kV、25μFDの容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%のウシ胎児血清を含有するDMEM培地(GIBCO BRL社製)に加え培養した。終夜培養後、細胞をPBSで一回洗浄し、さらに無血清培地CHO−S−SFM II培地を加え、さらに2日間培養した。培養上清を遠心し細胞破砕物を除去した後、0.22μmのフィルターを通すことで調製した。
また、12B5抗体由来の一本鎖Fv(ポリペプチド)の恒常的発現CHO細胞株を樹立するため、pCHO−sc12B5発現ベクターを下記のようにCHO細胞に遺伝子導入した。
すなわち、Gene Pulser装置(BioRad社製)を用いたエレクトロポレーション法により発現ベクターをCHO細胞に導入した。制限酵素PvuIで消化し直鎖状にしたDNA(100μg)とPBSに懸濁したCHO細胞(1×107細胞/ml)の0.8mlを混合したものをキュベットに加え氷中で10分間静置した後、1.5kV、25μFDの容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%のウシ胎児血清を含有するCHO−S−SFM II(GIBCO BRL社製)に加え培養した。培養2日後に5nM メトトレキサート(SIGMA社製)ならびに10%ウシ胎児血清を含むCHO−S−SFM II(GIBCO BRL社製)にて培養した。得られたクローンについて発現量の高いクローンを12B5一本鎖Fvの産生細胞株として選択した。5nMメトトレキサート(SIGMA社製)を含む無血清培地CHO−S−SFM II(GIBCO BRL社製)にて培養後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去して培養上清を得た。
7.5 CHO細胞産生の12B5由来の一本鎖Fvの精製
7.4で得られた12B5一本鎖Fv発現CHO産生株の培養上清からの精製は、抗FLAG抗体カラム及びゲル濾過カラムにより行った。
(1)抗FLAG抗体カラム
培養上清は、PBSで平衡化した抗FLAG M2アフィニティーゲル(SIGMA社製)に添加した。同緩衝液でカラムを洗浄後、緩衝液を0.1Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.5)でカラムに吸着した蛋白質を溶出した。溶出画分は、溶出後直ちに1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を加えて中和した。SDS−PAGEで溶出画分を分析し、一本鎖Fvが確認された画分をCentricon−10(MILLIPORE社製)を用いて濃縮した。
(2)ゲル濾過
(1)の濃縮液は、0.01%Tween20を含むPBSで平衡化したSuperdex200カラム(10×300mm、AMERSHAM PHARMACIA社製)に添加した。
sc12B5は2つのピーク(A、B)に分かれて溶出した(図48を参照)。画分A、Bを14%−SDS−ポリアクリルアミドゲルを用いて分析した。サンプルを還元剤添加、非添加で処理し、Laemmliの方法に準じて電気泳動を行い、泳動後蛋白質をクマシーブリリアントブルー染色した。図49に示すように、画分A、Bいずれも還元剤の添加の有無に関わらず、見かけ上の分子量約31kDに単一バンドを与えた。画分A及びBをSuperdex200 PC3.2/30(3.2×300mm、AMERSHAM PHARMACIA社製)を用いたゲル濾過により分析した結果、画分Aでは見かけ上の分子量約44kD、画分Bでは同22kDに溶出された(図50a及びbを参照)。以上の結果から、画分Aはsc12B5一本鎖Fvの非共有結合性ダイマーで、Bはモノマーである。
7.6 各種一本鎖FvのTPO様アゴニスト活性の測定
ヒトTPO受容体(MPL)を発現するBa/F3細胞(BaF/mpl)に対する増殖活性を測定することによって、抗MPL一本鎖抗体のTPO様活性を評価した。BaF/Mpl細胞を、1%ウシ胎児血清(GIBCO社製)を含むRPMI1640培地(GIBCO社製)で2回洗浄したのち、5×105細胞/mlの細胞密度になるように培地に懸濁した。抗MPL一本鎖抗体またはヒトTPO(R&D Systems社製)を培地で適当に希釈し、細胞懸濁液50μlに抗体またはヒトTPO希釈液50μlを加えて96穴マイクロウェル平底プレート(Falcon社製)に分注し、CO2インキュベーター(CO2濃度:5%)で24時間培養した。培養後、WST−8試薬(生細胞数測定試薬SF:ナカライテスク社製)を10μl加え、直後に蛍光吸光光度計SPECTRA Fluor(TECAN社製)を用いて測定波長450nm、対照波長620nmの吸光度を測定した。CO2インキュベーター(CO2濃度:5%)で2時間インキュベートした後、SPECTRA Fluorを用いて再度測定波長450nm、対照波長620nmの吸光度を測定した。WST−8試薬は生細胞数に応じて波長450nmの発色反応を呈することから、2時間の吸光度変化を指標にBaF/Mpl増殖活性を次のように算出したED50値により評価した。先ず、縦軸を吸光度、横軸を抗体濃度とし、その増殖反応曲線がプラトーに達した吸光度を反応率100%とした。反応率50%付近の数値に基づく直線近似により近似式を得て、これから反応率50%となる抗体濃度を算出し、これをED50値とした。
各種12B5抗体分子を発現させたCOS−7細胞の培養上清を用い、MPLに対するアゴニスト活性を測定した結果、図51に示すように抗原結合部位が二価である12B5 IgGでは濃度依存的に吸光度の上昇が認められTPO様のアゴニスト活性を示したのに対し(ED50;29nM)、抗原結合部位が一価である12B5Fabのアゴニスト活性は非常に弱いものであった(ED50;34,724nM)。それに対し、Fabと同様に抗原結合部位が一価である一本鎖Fv(sc12B5)においてはED50値が75nMと強いアゴニスト活性が認められた。しかしながら、一本鎖FvではH鎖、L鎖各可変領域は非共有結合で介合しているために、溶液中で各可変領域が解離し他の分子の可変領域と介合し二量体等の多量体を形成することが知られている。そこで、ゲル濾過を用い精製sc12B5の分子量を測定した結果、確かに単量体(モノマー)と二量体(ダイマー)と考えられる分子が認められた(図48を参照)。続いて、モノマーとダイマーのsc12B5をそれぞれ単離し(図50を参照)、それらのMPLに対するアゴニスト活性を測定した結果、図51及び52に示すようにsc12B5モノマーではED50値が4438.7nMとCOS−7細胞の培養上清を用いた結果に比べ、アゴニスト活性の減弱が確認された。それに対し、二価の抗原結合部位を持つ一本鎖Fv(sc12B5ダイマー)では一価のsc12B5に対し約400倍強いアゴニスト活性を示した(ED50;10.1nM)。さらに、二価の一本鎖FvではヒトTPOならびに12B5IgGのアゴニスト活性と同等もしくはそれ以上のアゴニスト活性を示した。
実施例8 (ヒトMPLに対するヒト抗体12E10可変領域をコードする遺伝子の構築)
ヒトMPLに対するヒトモノクローナル抗体12E10の可変領域をコードするDNAを次のようにして構築した。
8.1 12E10H鎖可変領域をコードする遺伝子の構築
ヒトMPLに結合するヒト抗体12E10H鎖可変領域をコードする遺伝子はWO99/10494に記載のアミノ酸配列(配列番号85)を基に配列番号86に示す塩基配列を設計した。さらに、その5’端にヒト抗体遺伝子由来のリーダー配列(配列番号87)(GenBank accession No.AF062252)を連結させることで全長の塩基配列を設計した。設計した塩基配列はそれぞれ15bpのオーバーラップ配列を持つように4本のオリゴヌクレオチド(12E10VH1、12E10VH2、12E10VH3、12E10VH4)に分割し、12E10VH1(配列番号:88)及び12E10VH3(配列番号:90)はセンス方向で、12E10VH2(配列番号:89)及び12E10VH4(配列番号:91)はアンチセンス方向でそれぞれ合成した。各合成オリゴヌクレオチドはそれぞれの相補性によりアッセンブリさせた後、外側プライマー(12E10VHS及び12E10VHA)を加え、全長の遺伝子を増幅した。なお、12E10VHS(配列番号:92)は前方プライマーでリーダー配列の5’端にハイブリダイズし、且つHindIII制限酵素認識配列ならびにコザック配列を持つように、また12E10VHA(配列番号:93)は後方プライマーでH鎖可変領域のC末端をコードする塩基配列にハイブリダイズし、且つスプライスドナー配列ならびにBamHI制限酵素認識配列を持つようにそれぞれ設計した。
PCR溶液100μlは、10μlの10×PCR Gold Buffer II、1.5mM MgCl2、0.08mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)、2.5ピコモルずつの合成オリゴヌクレオチド12B5VH−1〜4を含有し、94℃の初期温度にて9分間そして次に94℃にて2分間、55℃にて2分間及び72℃にて2分間のサイクルを2回反復した後、100pmoleずつの外側プライマー12E10VHS及び12E10VHAを加え、さらに94℃にて30秒間、55℃にて30秒間及び72℃にて1分間のサイクルを35回反復した後、反応混合物を更に72℃で5分間加熱した。
PCR生成物は1.5%低融点アガロースゲル(Sigma社製)を用い精製した後、制限酵素BamHI及びHindIIIで消化し、ヒトH鎖発現ベクターHEF−gY1にクローニングした。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをHEF−12E10H−gY1と命名した。
さらに、HEF−12E10H−gY1を制限酵素EcoRIならびにBamHIで消化し、12E10VHをコードする遺伝子を調製した後、ヒトFabH鎖発現ベクターpCOS−Fdに挿入しpFd−12E10Hを得た。なお、ヒトFabH鎖発現ベクターはヒト抗体H鎖V領域と定常領域をコードする遺伝子間に存在するイントロン領域ならびにヒトH鎖定常領域の一部をコードする遺伝子を含むDNA(配列番号63)についてPCR法を用いて増幅した後、動物細胞発現用ベクターpCOS1に挿入することで構築したベクターである。ヒトH鎖定常領域はHEF−gY1を鋳型とし、上記と同様の条件下にて遺伝子の増幅を行い、前方プライマーとしてイントロン1の5’端の配列とハイブリダイズし、且つEcoRI及びBamHI制限酵素認識配列を有するように設計したG1CH1−S(配列番号64)を、後方プライマーとしてヒトH鎖定常領域CH1ドメインの3’端のDNAにハイブリダイズし、且つヒンジ領域の一部をコードする配列、二個の停止コドンおよびBglII制限酵素認識部位を有するように設計したG1CH1−A(配列番号65)を用いた。
プラスミドHEF−12E10H−gY1及びpFd−12E10Hに含まれる再構成12E10H鎖可変領域の塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:94に示す。
8.2 12E10L鎖可変領域をコードする遺伝子の構築
ヒトMPLに結合するヒト抗体12E10L鎖可変領域をコードする遺伝子はWO99/10494に記載のアミノ酸配列(配列番号95)を基に配列番号96に示す塩基配列を設計した。さらに、その5’端にヒト抗体遺伝子由来のリーダー配列(配列番号97)(Mol.Immunol.1992;29:1515−1518)を連結させることで設計した。設計した塩基配列は上記と同様にそれぞれ15bpのオーバーラップ配列を持つように4本のオリゴヌクレオチド(12E10VL1、12E10VL2、12E10VL3、12E10VL4)に分割し、それぞれ合成した。12E10VL1(配列番号:98)及び12E10VL3(配列番号:100)はセンス配列、12E10VL2(配列番号:99)及び12E10VL4(配列番号:101)はアンチセンス配列を有し、各合成オリゴヌクレオチドはそれぞれの相補性によりアッセンブリさせた後、外側プライマー(12E10VLS及び12E10VLA)を加え、全長の遺伝子を増幅した。なお、12E10VLS(配列番号:102)は前方プライマーでリーダー配列の5’端にハイブリダイズし、且つEcoRI制限酵素認識配列ならびにコザック配列を持つように、また12E10VLA(配列番号:103)は後方プライマーでL鎖可変領域のC末端をコードする塩基配列にハイブリダイズし、且つBlnI制限酵素認識配列を持つようにそれぞれ設計した。
PCR反応は上記と同様に行い、PCR生成物は1.5%低融点アガロースゲル(Sigma社製)を用い精製した後、制限酵素EcoRI及びBlnIで消化し、ヒトラムダ鎖定常領域遺伝子を含有するpUC19ベクターにクローニングした。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドを制限酵素EcoRIで消化し、12E10L鎖可変領域及びヒトラムダ鎖定常領域をコードする遺伝子を調製し、さらに発現ベクターpCOS1に挿入し、12E10L鎖遺伝子(配列番号:104)を持つプラスミドをpCOS−12E10Lと命名した。
8.3 再構成12E10一本鎖Fvの作製
再構成12E10抗体一本鎖Fvは12E10VH−リンカー−12E10VLの順とし、そのC末端には検出及び精製を容易にするためにFLAG配列(配列番号:105)を付加することで設計した。リンカー配列は(Gly4Ser)3の15アミノ酸からなるリンカー配列、またはを(Gly4Ser)1の5アミノ酸からなるリンカー配列用い、再構成12E10鎖Fv(sc12E10およびdb12E10)を構築した。
(1) 5アミノ酸からなるリンカー配列を用いた再構成12E10一本鎖Fvの作製
5アミノ酸からなるリンカー配列を用いた再構成12E10一本鎖Fvをコードする遺伝子は12E10H鎖V領域をコードする遺伝子の3’端、及び12E10L鎖V領域をコードする遺伝子の5’端に(Gly4Ser)1からなるリンカーをコードする塩基配列を付加させた遺伝子についてそれぞれPCR法を用いて増幅し、連結することにより構築した。再構成12E10一本鎖Fvの作製のために4個のPCRプライマー(A〜D)を使用した。プライマーA及びCはセンス配列を有し、プライマーBおよびDはアンチセンス配列を有する。
H鎖V領域のための前方プライマーは12E10S(プライマーA、配列番号:106)を用い、H鎖V領域のための後方プライマーDB2(プライマーB、配列番号:107)は、H鎖V領域のC末端をコードするDNAにハイブリダイズし、且つ(Gly4Ser)1からなるリンカーをコードする塩基配列ならびにL鎖V領域のN末端をコードする塩基配列を有するように設計した。
L鎖V領域のための前方プライマーDB1(プライマーC、配列番号:108)はL鎖V領域のN末端をコードするDNAにハイブリダイズし、且つ(Gly4Ser)1からなるリンカーをコードする塩基配列ならびにH鎖V領域のC末端をコードする塩基配列を有するように設計した。L鎖V領域のための後方プライマーは12E10FA(プライマーD、配列番号:109)はL鎖可変領域C末端をコードするDNAにハイブリダイズし、且つFLAGをコードする塩基配列を有し、さらにNotI制限酵素認識部位を有するように設計した。
第一PCR段階において2つの反応A−B及びC−Dを行い、そして第一PCRから得られた2つのPCR生成物をそれら自体の相補性によりアッセンブリさせた。次に、プライマーA及びDを加えて、5アミノ酸からなるリンカーを用いた再構成12E10一本鎖Fvをコードする全長DNAを増幅した(第二PCR)。なお、第一PCRにおいては、再構成12E10H鎖V領域をコードするプラスミドHEF−12E10H−gY1(実施例8.1を参照)及び再構成12E10L鎖V領域をコードするプラスミドpCOS−12E10L(実施例8.1を参照)をそれぞれ鋳型として用いた。
第一PCR段階の溶液50μlは、5μlの10×PCR Gold Buffer II、1.5mM MgCl2、0.08mM dNTPs、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)、100ピコモルずつの各プライマー及び100ngの各鋳型DNAを含有し、94℃の初期温度にて9分間そして次に94℃にて30秒間、55℃にて30秒間及び72℃にて1分間のサイクルを35回反復した後、反応混合物を更に72℃で5分間加熱した。
PCR生成物A−B(429bp)及びC−D(395bp)は第二PCRでアッセンブリした。第二PCRにおいて、鋳型として1μLずつの第一PCR反応物A−B及びPCR反応物C−D、100ピコモルずつの各プライマー、10μlの10×PCR Gold Buffer II、1.5mM MgCl2、0.08mM dNTPs、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)を含有する98μlのPCR混合液を、上記と同様の条件下で反応させた。
第二PCRにより生じた795bpのDNA断片について1.5%低融点アガロースゲルを用いて精製した後、EcoRI及びNotIで消化し、得られたDNA断片をpCHO1ベクターまたはpCOS1ベクターにクローニングした。なお、本発現ベクターpCHO1は、DHFR−ΔE−RVH−PM1−f(WO92/19759参照)から、EcoRI及びSmaI消化により抗体遺伝子を削除し、EcoRI−NotI−BamHI Adaptor(宝酒造社製)を連結することにより構築したベクターである。DNA配列決定の後、再構成12B5一本鎖Fvの正しいアミノ酸配列をコードするDNA断片を含むプラスミドをpCHO−db12E10、及びpCOS−db12E10と命名した。本プラスミドpCHO−db12E10及びpCOS−db12E10に含まれる再構成12E10一本鎖Fvの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:110に示す。
(2)15アミノ酸からなるリンカー配列を用いた再構成12E10一本鎖Fvの作製
15アミノ酸からなるリンカー配列を用いた再構成12E10一本鎖Fvをコードする遺伝子は12E10H鎖V領域をコードする遺伝子の3’端、及び12E10L鎖V領域をコードする遺伝子の5’端にそれぞれ(Gly4Ser)3からなるリンカーをコードする塩基配列を付加させた遺伝子について、それぞれPCR法を用いて増幅し、連結することにより構築した。再構成12E10一本鎖Fvの作製のために4個のPCRプライマー(A〜D)を使用した。プライマーA及びCはセンス配列を有し、プライマーBおよびDはアンチセンス配列を有する。
H鎖V領域のための前方プライマーは12E10S(プライマーA、配列番号:106)を用い、H鎖V領域のための後方プライマーsc4.3(プライマーB、配列番号:111)は、H鎖V領域のC末端をコードするDNAにハイブリダイズし、且つ(Gly4Ser)3からなるリンカーをコードする塩基配列ならびにL鎖V領域のN末端をコードする塩基配列を有するように設計した。
L鎖V領域のための前方プライマーsc1.3(プライマーC、配列番号:112)はL鎖V領域のN末端をコードするDNAにハイブリダイズし、且つ(Gly4Ser)3からなるリンカーをコードする塩基配列ならびにH鎖V領域のC末端をコードする塩基配列を有するように設計した。L鎖V領域のための後方プライマーは12E10FA(プライマーD、配列番号:109)はL鎖可変領域C末端をコードするDNAにハイブリダイズし、且つFLAGをコードする塩基配列を有し、さらにNotI制限酵素認識部位を有するように設計した。
第一PCR段階において2つの反応A−B及びC−Dを行い、そして第一PCRから得られた2つのPCR生成物をそれら自体の相補性によりアッセンブリさせた。次に、プライマーA及びDを加えて、15アミノ酸からなるリンカーを用いた再構成12E10一本鎖Fvをコードする全長DNAを増幅した(第二PCR)。なお、第一PCRにおいては、再構成12E10一本鎖FvをコードするプラスミドpCOS−db12E10(実施例8.1(1)を参照)を鋳型として用いた。
第一PCR段階の溶液50μlは、5μlの10×ExTaq Buffer、0.4mM dNTPs、2.5ユニットのDNAポリメラーゼTaKaRa ExTaq(以上宝酒造社製)、100ピコモルずつの各プライマー及び10ngの各鋳型DNAを含有し、94℃の初期温度にて30秒間そして次に94℃にて15秒間及び72℃にて2分間のサイクルを5回、94℃にて15秒間及び70℃にて2分間のサイクルを5回、94℃にて15秒間及び68℃にて2分間のサイクルを28回反復した後、反応混合物を更に72℃で5分間加熱した。
PCR生成物A−B(477bp)及びC−D(447bp)は第二PCRでアッセンブリした。第二PCRにおいて、鋳型として1μLずつの第一PCR反応物A−B及びPCR反応物C−D、100ピコモルずつのプライマーA及びD、5μlの10×ExTaq Buffer、0.4mM dNTPs、2.5ユニットのDNAポリメラーゼTaKaRa ExTaq(以上宝酒造社製)を混合し、上記と同様の条件下で反応させた。
第二PCRにより生じた825bpのDNA断片について1.0%低融点アガロースゲルを用いて精製し、EcoRI及びNotIで消化し、得られたDNA断片をpCHO1ベクターまたはpCOS1ベクターにクローニングした。DNA配列決定の後、再構成12E10一本鎖Fvの正しいアミノ酸配列をコードするDNA断片を含むプラスミドをpCHO−sc12E10及びpCOS−sc12E10と命名した。本プラスミドpCHO−sc12E10及びpCOS−sc12E10に含まれる再構成12E10一本鎖Fvの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:113に示す。
8.4 動物細胞を用いた各12E10抗体(IgG、Fab)及び一本鎖Fvポリペプチドの発現
12E10抗体(IgG、Fab)ならびに12E10抗体由来の一本鎖Fv(リンカー配列5アミノ酸、15アミノ酸)はCOS−7細胞もしくはCHO細胞を用い発現させた。
COS−7細胞を用いた一過的な発現は次のようにして行った。すなわち、Gene PulserII装置(BioRad社製)を用いたエレクトロポレーション法により遺伝子導入した。12E10抗体(IgG)の発現には前述の発現ベクターHEF−12E10H−gY1及びpCOS−12E10L各10μgずつを、12E10Fab断片の発現にはpFd−12E10HとpCOS−12E10L各10μgずつを、一本鎖Fvの発現にはpCOS−sc12E10(10μg)またはpCOS−db12E10(10μg)をPBSに懸濁したCOS−7細胞(1×107細胞/ml)0.8mlに混合したものをキュベットに加え、1.5kV、25μFDの容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%のウシ胎児血清を含有するDMEM培地(GIBCO BRL社製)に加え培養した。終夜培養後、細胞をPBSで一回洗浄し、さらに無血清培地CHO−S−SFMII培地(GIBCO BRL社製)を加え、さらに3日間培養した。培養上清を遠心し細胞破砕物を除去した後、0.22μmのフィルターを通すことで調製した。
また、12E10抗体由来の一本鎖Fv(ポリペプチド)の恒常的発現CHO細胞株を樹立するため、pCHO−sc12E10またはpCHO−db12E10発現ベクターをそれぞれCHO細胞に遺伝子導入した。
各発現ベクターを、Gene PulserII装置(BioRad社製)を用いたエレクトロポレーション法によりCHO細胞に遺伝子導入した。PvuI消化により直鎖状にしたDNA(100μg)とPBSに懸濁したCHO細胞(1×107細胞/ml)の0.8mlを混合したものをキュベットに加え、氷中で10分間静置した後、1.5kV、25μFDの容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%の透析ウシ胎児血清ならびに核酸を含有するCHO−S−SFMII培地(GIBCO BRL社製)に加え培養した。培養2日後に10%の透析ウシ胎児血清を含有する核酸不含CHO−S−SFMII培地(GIBCO BRL社製)にて培養した。得られたクローンについて発現量の高いクローンを12E10一本鎖Fvの産生細胞株として選択した。この細胞株を無血清培地CHO−S−SFMII培地(GIBCO BRL社製)にて培養後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去後に、0.22μmのフィルターを通すことで培養上清を調製した。
8.5 CHO細胞産生の12E10由来の一本鎖Fvの精製
実施例8.4で得た一本鎖Fv発現CHO産生株(sc12E10,db12E10)それぞれの培養上清から抗FLAG抗体カラム、及びゲルろ過カラムを用いて一本鎖Fvを精製した
(1)抗FLAG抗体カラムを用いた精製
培養上清(sc12E10,db12E10)を、それぞれ150mM NaClを含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.4)にて平衡化した抗FLAG M2 アフィニティゲル(SIGMA社製)カラムに添加し、同緩衝液でカラムを洗浄後、100mM グリシン緩衝液(pH3.5)でカラムに吸着した蛋白質を溶出した。溶出画分は直ちに1M トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を加えて中和した。SDS−PAGEで各溶出画分を分析し、一本鎖Fvが確認された画分を、それぞれプールし、Centricon−10(アミコン社製)を用いて約20倍濃縮した。
(2)ゲル濾過
(1)の画分を、0.01%Tween20含むPBSで平衡化したSuperdex200HRカラム(10x300mm、Amersham Pharmacia社製)に添加した。クロマトグラムを図53および54に示す。その結果、sc12E10においては2つのピーク(A,B)が検出された(図53)。また、db12E10では、2つのピーク(C,D)が検出された(図54)。それぞれのピーク画分を分取し、還元剤添加、非添加で処理し、Laemmliの方法に準じて電気泳動を行い、泳動後蛋白質をクマシーブリリアントブルー染色した。図55に示すように、画分A、画分B、画分C、画分Dいずれも還元剤の添加の有無に関わらず、見かけ上の分子量約31kDに単一バンドを与えた。これらの画分を、前述のSuperdex200HRカラムを用いたゲルろ過で分析した結果、画分Aは見かけ上の分子量約20kD、画分Bは同42kDに溶出された(図56を参照)。一方、画分Cは見かけ上の分子量約69kD、画分Dは同41kDに溶出された(図57を参照)以上の結果から、sc12E10由来の画分Aは一本鎖Fvの非共有結合性ダイマーで、画分Bは一本鎖Fvのモノマーであり、また、db12E10由来の画分Cは一本鎖Fvの非共有結合性トリマー、画分Dは一本鎖Fvの非共有結合性ダイマーであることが示唆された。
8.6 各種一本鎖FvのTPO様アゴニスト活性の測定
ヒトTPO受容体(MPL)を発現するBa/F3細胞(BaF/mpl)に対する増殖活性を測定することによって、抗mpl一本鎖抗体のTPO様活性の評価を行った。
BaF/mpl細胞を、1%ウシ胎児血清(GIBCO社製)を含むRPMI1640培地(GIBCO社製)で2回洗浄したのち、5×105細胞/mLの細胞密度になるように培地に懸濁した。抗MPL一本鎖抗体またはヒトTPO(R&D Systems社製)を培地で適当に希釈し、細胞懸濁液50μLに抗体またはヒトTPO希釈液50μLを加えて96穴マイクロウェル平底プレート(Corning社製)に分注し、CO2インキュベーター(CO2濃度:5%)で24時間培養した。培養後、WST−8試薬(生細胞数測定試薬SF:ナカライテスク社製)を10μL加え、直後に吸光光度計Benchmark Plus(BioRad社製)を用いて測定波長450nm、対照波長655nmの吸光度を測定した。CO2インキュベーター(CO2濃度:5%)で2時間インキュベートした後、Benchmark Plusを用いて再度測定波長450nm、対照波長655nmの吸光度を測定した。WST−8試薬は生細胞数に応じて波長450nmの発色反応を呈することから、2時間の吸光度変化を指標にBaF/mpl細胞増殖活性を評価した。
各種12E10抗体分子を発現させたCOS−7細胞の培養上清を用い、MPLに対するアゴニスト活性を測定した結果を図58に示す。リンカー配列5アミノ酸(db12E10)および15アミノ酸(sc12E10)の一本鎖Fvでは濃度依存的に吸光度の上昇が認められ、TPO様のアゴニスト活性を示したのに対し(ED50;それぞれ9pMおよび51pM)、12E10IgGおよび12E10Fabでは全く活性が認められなかった。
一本鎖Fvはリンカー配列の長さによっては、H鎖とL鎖が分子内だけでなく、分子間でも介合することによって二量体等の多量体を形成することが知られている。そこで、12E10一本鎖Fvを発現させたCHO細胞の培養上清をゲルろ過分画して、MPLに対するアゴニスト活性を測定した。その結果を図59に示す。sc12E10中にわずかに含まれる二量体(sc12E10ダイマー、ED50;1.9pM)は単量体(sc12E10モノマー、ED50;>10nM)に比べて、5000倍以上強いTPO様アゴニスト活性を示し、その活性はTPO(ED50;27pM)よりも強かった。また、db12E10の二量体(db12E10ダイマー、ED50;2.0pM)はsc12E10ダイマーとほぼ同等の強い活性を示した。ゲルろ過分子量から三量体と推定されたdb12E10トリマー(ED50;7.4pM)もdb12E10ダイマーには劣るが高い活性を示した。以上の結果から、アゴニスト抗体12E10の活性には、抗原結合部位が二価(ダイマー)であることが重要と考えられるが、12E10 IgGには活性が見られなかったことから、単に二価であるだけでなく、抗原結合部位間の距離や角度といった要素も重要と推測される。
産業上の利用可能性
本発明の改変抗体は、細胞表面上の分子を架橋することにより該細胞内にシグナルを伝達しうるアゴニスト作用を有しており、また抗体分子(whole IgG)と比較して低分子化が達成されているため、組織、腫瘍への移行性に優れているという特徴を有している。さらに本発明によれは、TPOや親抗体(whole IgG)より顕著に高いアゴニスト活性を有する改変抗体が提供される。特に、親抗体分子でアゴニスト活性が認められない場合においてもTPOより高いアゴニスト活性を有する改変抗体が提供できる。従って、当該改変抗体はシグナル伝達アゴニストとして使用することができ、そして抗体分子を本発明の改変抗体にすることにより、細胞間の架橋などによる副作用を軽減し、且つ細胞表面上の分子を架橋して所望の作用のみを誘起しうる新規な医薬品が提供される。本発明の改変抗体を有効成分とする医薬製剤は、血小板減少が関与する血液疾患、癌や白血病等の化学治療後の血小板減少症などの予防及び/又は治療薬として有用である。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1. ヒトIgG1抗体が、ヒトIAPを発現するL1210細胞(hIAP/L1210)に結合しないことを示すフローサイトメトリーの結果を示す図である。
図2. キメラMABL−1抗体が、ヒトIAPを発現するL1210細胞(hIAP/L1210)に特異的に結合することを示すフローサイトメトリーの結果を示す図である。
図3. キメラMABL−2抗体が、ヒトIAPを発現するL1210細胞(hIAP/L1210)に特異的に結合することを示すフローサイトメトリーの結果を示す図である。
図4. 本発明にかかる一本鎖Fvの作成方法を模式的に示す図である。
図5. 本発明の一本鎖FvをコードするDNAを、大腸菌にて発現させるために使用可能な発現プラスミドの一例の構造を示す。
図6. 本発明の一本鎖FvをコードするDNAを、哺乳動物細胞にて発現させるために使用する発現プラスミドの一例の構造を示す。
図7. 実施例5.4で得られたウエスタンブロットの結果を示す図である。左側より、分子量マーカー(上から97.4、66、45、31、21.5、14.5kDaを示す)、pCHO1導入COS7細胞培養上清、pCHOM2導入細胞培養上清。pCHOM2導入細胞培養上清に再構成MABL−2抗体一本鎖Fv(矢印)が明らかに含まれていることを示す。
図8. コントロールとしてのpCHO1/COS7細胞培養上清の抗体は、コントロールとしてのpCOS1/L1210細胞には結合しないことを示すフローサイトメトリーの結果を示す図である。
図9. MABL2−scFv/COS7細胞培養上清の抗体は、コントロールとしてのpCOS1/L1210細胞には結合しないことを示すフローサイトメトリーの結果を示す図である。
図10.コントロールとしてのpCOS1/COS7細胞培養上清の抗体は、hIAP/L1210細胞に結合しないことを示すフローサイトメトリーの結果を示す図である。
図11.MABL2−scFv/COS7細胞培養上清の抗体は、hIAP/L1210細胞に特異的に結合することを示すフローサイトメトリーの結果を示す図である。
図12.実施例5.6で示すCompetitive ELISAの結果を示す図であり、本発明の一本鎖Fv(MABL2−scFv)の抗原結合活性を、コントロールとしてのpCHO1/COS7細胞培養上清と比較して、マウスモノクローナル抗体MABL−2の抗原結合に対する阻害を指標として示す図である。
図13.実施例5.7のアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、コントロールとしてのpCOS1/L1210細胞には、コントロールとしてのpCHO1/COS7細胞培養上清抗体はアポトーシスを誘起しないことを示す。
図14.実施例5.7のアポトーシス誘導効果の結果を示す図であり、コントロールとしてのpCOS1/L1210細胞には、MABL2−scFv/COS7細胞培養上清抗体はアポトーシスを誘起しないことを示す。
図15.実施例5.7のアポトーシス誘導効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞には、コントロールとしてのpCHO1/COS7細胞培養上清抗体はアポトーシスを誘起しないことを示す。
図16.実施例5.7のアポトーシス誘導効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞に対し、MABL2−scFv/COS7細胞培養上清抗体が特異的にアポトーシスを誘起することを示す。
図17.実施例5.7のアポトーシス誘導効果の結果を示す図であり、CCRF−CEM細胞には、コントロールとしてのpCHO1/COS7細胞培養上清抗体はアポトーシスを誘起しないことを示す(最終濃度50%)。
図18.実施例5.7のアポトーシス誘導効果の結果を示す図であり、CCRF−CEM細胞に対し、MABL2−scFv/COS7細胞培養上清抗体が特異的にアポトーシスを誘起することを示す(最終濃度50%)。
図19.実施例5.9のCHO細胞産生のMABL−2抗体由来の一本鎖Fvの精製過程において、Blue−sepharoseカラムで得られた画分をハイドロキシアパタイトカラムを用いて精製した際のクロマトグラムを示す図であり、主要なピークとして画分A、画分Bが得られたことを示す。
図20.実施例5.9の(2)で得られた画分A、画分Bについてゲル濾過により精製した結果を示す図であり、画分Aでは見かけ上の分子量約36kD、画分Bでは同76kDの位置に主要ピークが(それぞれAI及びBI)が溶出したことを示す。
図21.実施例5.9のCHO細胞産生のMABL−2抗体由来の一本鎖Fvの精製過程において得られた画分をSDS−PAGEで分析した図であり、何れも分子量約35kDに単一のバンドのみであることを示す。
図22.CHO細胞産生のMABL−2抗体由来の一本鎖Fvの精製において得られた画分AI及びBIをゲル濾過により分析した結果を示す図であり、画分AIはモノマーからなり、画分BIはダイマーからなることを示す。
図23.本発明の一本鎖FvをコードするDNAを、大腸菌の菌体内にて発現させるために使用可能な発現プラスミドの一例の構造を示す。
図24.実施例5.12の大腸菌細胞産生のMABL−2抗体由来の一本鎖Fvポリペプチドの精製において、得られた粗製物をゲル濾過カラムを用いて精製した結果を示す図であり、各ピークはそれぞれ大腸菌細胞産生の一本鎖Fvのモノマー、ダイマーを示す。
図25.実施例5.13のアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞には、コントロールとしてのマウスIgG抗体はアポトーシスを誘起しないことを示す(最終濃度3μg/ml)。
図26.実施例5.13のアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞に対し、CHO細胞産生のMABL2−scFvダイマーが顕著にアポトーシスを誘起することを示す(最終濃度3μg/ml)。
図27.実施例5.13のアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞に対し、大腸菌細胞産生のMABL2−scFvダイマーが顕著にアポトーシスを誘起することを示す(最終濃度3μg/ml)。
図28.実施例5.13のアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞には、CHO細胞産生のMABL2−scFvモノマーのアポトーシス誘起作用がコントロールと同程度であることを示す(最終濃度3μg/ml)。
図29.実施例5.13のアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞には、大腸菌細胞産生のMABL2−scFvモノマーのアポトーシス誘起作用がコントロールと同程度であることを示す(最終濃度3μg/ml)。
図30.実施例5.13のアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞には、コントロールとしてのマウスIgG抗体は抗FLAG抗体の添加によってもアポトーシスを誘起しないことを示す(最終濃度3μg/ml)。
図31.実施例5.13のアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞に対し、CHO細胞産生のMABL2−scFvモノマーが抗FLAG抗体の添加によって顕著にアポトーシスを誘起することを示す(最終濃度3μg/ml)。
図32.ヒト骨髄腫細胞株KPMM2を移植したマウスの血清中のヒトIgG量を定量したものであり、マウスにおけるヒト骨髄腫により産生されるヒトIgGの量を測定した結果を示す図であり、scFv/CHOダイマーがKPMM2細胞の増殖を非常に強く抑制していることを示す。
図33.腫瘍移植後のマウスの生存日数を表しており、scFv/CHOダイマー投与群において生存期間が顕著に延長されていることを示している。
図34.MABL−2抗体由来の2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V領域を含む改変抗体[sc(Fv)2]を発現するプラスミドの一例の構造を示す。
図35.[H鎖]−[L鎖]となるようにV領域を連結し、且つペプチドリンカーを含まないscFv(HLタイプ)を発現するプラスミドの一例の構造を示す。
図36.HLタイプのポリペプチドの構造およびペプチドリンカーのアミノ酸配列を示す。
図37.[L鎖]−[H鎖]となるようにV領域を連結し、且つペプチドリンカーを含まないscFv(LHタイプ)を発現するプラスミドの一例の構造を示す。
図38.LHタイプのポリペプチドの構造およびペプチドリンカーのアミノ酸配列を示す。
図39.実施例6.4におけるウェスタンブロッティングの結果を示す図であり、2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V領域を含む改変抗体sc(Fv)2及び種々の長さのペプチドリンカーを有するMABL−2抗体scFvが発現していることを示す。
図40a及びb.実施例6.3(1)にて調製したCOS7細胞培養上清を用いたフローサイトメトリーの結果を示す図であり、種々の長さのペプチドリンカーを有するMABL2−scFv及びsc(Fv)2は、ヒトIAPに対して高い親和性を有することを示す。
図41.実施例6.6のアポトーシス誘導効果の結果を示す図であり、scFv<HL3,4,6,7、LH3,4,6,7>及びsc(Fv)2はhIAP/L1210細胞に対して顕著な細胞死を誘導することを示す。
図42.実施例6.10の抗原結合評価の結果を示す図であり、scFv<HL5>のダイマー及びsc(Fv)2がヒトIAPに対して高い親和性を有すること示す。
図43.実施例6.11のin vitroアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、MABL2−scFv<HL5>のダイマー及びMABL2−sc(Fv)2はhIAP/L1210、CCRF−CEMの両細胞に対して濃度依存的に細胞死を誘導することを示す。
図44.ヒト骨髄腫細胞株KPMM2を移植したマウスにおけるヒト骨髄腫により産生される血清中のMタンパク質の量を測定した結果を示す図であり、scFv<HL−5>及びsc(Fv)2がKPMM2細胞の増殖を非常に強く抑制していることを示す。
図45.腫瘍移植後のマウスの生存日数を表しており、scFv<HL−5>投与群において生存期間が顕著に延長されていることを示している。
図46.腫瘍移植後のマウスの生存日数を表しており、sc(Fv)2投与群において生存期間が顕著に延長されていることを示している。
図47.15アミノ酸からなるリンカー配列を含む再構成12B5一本鎖FvをコードするDNA断片の構築方法とその構造を概略的に示す。
図48.実施例7.5(1)で得られた各12B5一本鎖Fvを、ゲル濾過により精製した結果を示す図であり、sc12B5では2つのピーク(画分A,B)に分かれた結果を示す。
図49.実施例7.5(2)において、各画分AおよびBをSDS−PAGEにより分析した結果を示す。
図50.実施例7.5(2)において、各画分AおよびBをSuperdex200カラムにより分析した結果を示し、(a)画分Aでは見かけ上の分子量約44kDに、(b)画分Bでは同22kDの位置に主要ピークが溶出されたことを示す。
図51.sc12B5及び12B5抗体(IgG,Fab)のTPO様アゴニスト活性の測定結果を示し、12B5 IgG及び一価一本鎖Fv(sc12B5)は、濃度依存的にTPO様のアゴニスト活性を有することを示す。
図52.sc12B5モノマー及びダイマーのTPO様アゴニスト活性の測定結果を示し、二価の抗原結合部位を持つ一本鎖Fv(sc12B5ダイマー)は一価のsc12B5より約400倍以上強いアゴニスト活性を示し、その強さはヒトTPOと同等もしくはそれ以上であることを示す。
図53.得られたsc12E10一本鎖抗体をSuperdex200HRカラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィーで精製した結果を示す図であり、12E10sc3では、2つのピーク(画分A,B)に分かれた結果を示す。
図54.得られたdb12E10一本鎖抗体をSuperdex200HRカラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィーで精製した結果を示す図であり、12E10sc3では、2つのピーク(画分C,D)に分かれた結果を示す。
図55.画分A,B(sc12E10)および画分C、D(db12E10)を還元、非還元条件下におけるSDS−PAGE分析した結果を示す。
図56.画分A,Bを、Superdex200HRカラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィーで分析した結果を示す。(1)画分Aでは、見かけ上の分子量42kDに(2)画分Bでは、同20kDの位置に、主要ピークが溶出されたことを示す。
図57.画分C,Dを、Superdex200HRカラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィーで分析した結果を示す。(1)画分Cでは、見かけ上の分子量69kDに(2)画分Bでは、同41kDの位置に、主要ピークが溶出されたことを示す。
図58.各種12E10抗体分子のMPLに対するアゴニスト活性を示すグラフであり、一本鎖Fv(sc12E10,db12E10)ではTPO様のアゴニスト活性を示したのに対し、12E10 IgGおよび12E10 Fabでは全く活性が認められなかったことを示す。
図59.sc12E10モノマーおよびダイマー、並びにdb12E10ダイマーおよびトリマーのMPLに対するアゴニスト活性を示すグラフであり、sc12E10ダイマー、db12E10ダイマーおよびトリマーのTPO様アゴニスト活性がTPOよりも強力であることを示す。
本発明は、TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む改変抗体に関する。当該改変抗体は、TPOレセプターを架橋することにより細胞内にシグナルを伝達しうるTPOアゴニスト作用を有しており、種々の医薬として有用である。
背景技術
トロンボポエチン(TPO)は、1994年に発見された血小板産生調節因子であり、主に肝臓で産生される分子量7万〜8万の糖タンパク質からなることが知られている。トロンボポエチンは、骨髄において血小板前駆体細胞の生存、増殖、分化および成熟、即ち巨核球の分化および増殖を促進するサイトカインである。一方、トロンボポエチン(TPO)レセプターは、血小板産生を調節する特異的因子の受容体c−Mp1としてTPOより先に同定されていた(M.Souyri et al.,Cell 63:1137(1990))。c−Mp1は、血小板前駆細胞、巨核球及び血小板に局在し、c−Mp1の発現の抑制が巨核球形成を選択的に阻害することが報告された(M.Methia et al.,Blood 82:1395(1993))。そして、c−Mp1に対するリガンドは、c−Mp1リガンド特異的細胞の増殖アッセイ及び精製手段としてのc−Mp1を用いたそのリガンドの精製からTPOであることが報告され(F.de Sauvage et al.,Nature 369:533(1994);TD.Bartley et al.,Cell 77:1117(1994))、現在、Mp1はTPOレセプターと称されている。このため、TPOおよびTPOレセプターのアゴニストは、種々の血小板減少症の治療薬として、例えば癌患者に対する骨髄抑制及び脊髄切断療法に付随する血小板減少症を緩和する医薬としての応用が期待されている。
一方、改変抗体、特に低分子化抗体、例えば一本鎖Fvは、その低分子化により組織、腫瘍等への移行性を改善し、遺伝子工学的に調製する目的で開発されたものであるが、近年、一本鎖Fvのダイマー、特に、二重特異性[bispecific]のダイマーが細胞同士の架橋を目的として使用されている。このようなダイマーとしては、代表的には癌細胞抗原とNK細胞や好中球など宿主細胞抗原を認識する一本鎖Fvのヘテロダイマー等が知られている(Kipriyanov et al.,Int.J.Cancer,77,9763−9772,1998)。これらは、細胞間架橋を誘導させることにより癌を治療するためのより効率的な改変抗体として、一本鎖Fvの構築技術から作成されたものである。このため、抗体およびその断片(例えばFab断片など)および二重特異性の改変抗体、さらには単一特異性である一本鎖Fvのダイマーでも細胞間の架橋が誘導されると考えられていた。
また、細胞表面分子を架橋してシグナルを伝達しうるモノクローナル抗体として、例えば細胞の分化・増殖に関与するEPO受容体に対する抗体(特開2000−95800号公報)、MuSK受容体に対する抗体(Xie et al.,Nature Biotech.15,768−771,1997)などが知られている。また、TOPレセプターに対するアゴニスト抗体、その断片および一本差Fvなども知られている(WO99/17364)。しかし、アゴニスト作用を有する一本鎖Fvのダイマーおよび一本鎖2価抗体等の改変抗体については報告はない。
そこで、先ず本発明者らは、IAPを有する細胞に対してアポトーシスを誘起するモノクローナル抗体(MABL−1およびMABL−2抗体)を取得し、それをもとに作製した一本鎖Fvのモノマーは細胞にアポトーシスを誘起せず、ダイマーが細胞に対してアポトーシスを誘導することに注目し、これらが細胞表面上のIAP受容体を架橋(2量体化)することにより当該細胞にシグナルが伝達されて、その結果アポトーシスが誘導されたことを突き止めた。即ち、これは、単一特異性の一本鎖Fvダイマーが細胞表面上の分子(例えば受容体)を架橋することにより、リガンドと同様にシグナルを伝達し、これによりアゴニスト作用を示しうること示唆するものである。
次に細胞間の架橋形成に注目したところ、前記モノクローナル抗体は赤血球凝集を引き起こすが、前記一本鎖Fvのダイマーは赤血球凝集を起こさないことを見出した。同様の結果は、一本鎖2価抗体(2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V領域を含む一本鎖ポリペプチド)でも観察された。即ち、これはモノクローナル抗体では細胞間で架橋が形成される可能性があるのに対して、一本鎖Fvダイマーまたは一本鎖2価抗体等の改変抗体では、細胞表面上の分子を架橋するが、細胞間の架橋を形成しないことを示唆するものである。
本発明者は、これらの結果から、一本鎖Fvダイマーや一本鎖2価抗体等の改変抗体が、従来知られていた細胞間の架橋だけでなく、同じ細胞の細胞表面分子あるいは細胞内分子を架橋する、当該分子に対するリガンド(特に天然のリガンドの作用を模倣するようなリガンド)として特に適していることを初めて見出した。
さらに、本発明者は、抗体分子(whole IgG)を一本鎖Fvダイマーまたは一本鎖2価抗体などの改変抗体にすることにより、細胞間の架橋などによる副作用を軽減し、且つ細胞表面上の分子を架橋して、細胞に所望の作用のみを誘起しうる新規な医薬品を提供しうることを見出し、本発明を完成させた。また、本発明の改変抗体は、当該改変抗体と同じV領域を有するwholeの抗体(IgG)と比較して顕著に高い活性を有しており、さらに抗体分子に比べ分子量が小さく、定常領域を有しないという特徴から、組織移行性が向上しているという特徴を有している。
発明の開示
本発明の課題は、TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む低分子化アゴニスト改変抗体を提供することである。
従って、本発明は、TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上、好ましくは各々2〜6、さらに好ましくは各々2〜4、特に好ましくは各々2つ含む改変抗体に関する。
本明細書において「改変抗体」とは、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含み、これら各V領域を直接的あるいはリンカー等を介して共有結合および/または非共有結合により結合した任意の物質を意味する。具体的には、抗体の各V領域をペプチドリンカー、化学架橋剤等のリンカーで結合したポリペプチドまたは化合物等があげられる。なお、本発明の改変抗体において、抗体由来の2つ以上のH鎖V領域及びL鎖V領域は各々、同一または異なる抗体由来のH鎖V領域及びL鎖V領域であってもよい。
本発明の改変抗体は、TPOレセプターを特異的に認識して当該レセプターを架橋し、これにより細胞内にシグナルを伝達しうるものであればいかなるものでもよく、さらには、該改変抗体のV領域のアミノ酸配列の一部を改変した改変抗体も包含される。
本発明の改変抗体は、好ましくは1つのH鎖V領域及び1つのL鎖V領域を含む一本鎖Fvのダイマー、トリマー、テトラマー等のマルチマーであるか、又は2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域を含む一本鎖ポリペプチドである。本発明の改変抗体が1つのH鎖V領域及び1つのL鎖V領域を含む一本鎖Fvのダイマー、トリマー、テトラマー等のマルチマーである場合、同じ鎖上のH鎖V領域及びL鎖V領域は互いに連合して1つの抗原結合部位を形成していないものが好ましい。
特に好ましくは、1つのH鎖V領域及び1つのL鎖V領域を含む一本鎖Fvのダイマー、又は2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V領域を含む一木鎖ポリペプチドである。該改変抗体中において、H鎖V領域及びL鎖V領域は、好ましくはリンカーを介して連結されている。
前記一本鎖Fvのマルチマーは、非共有結合によるマルチマー、架橋基を介した共有結合によるマルチマー、さらに前記一本鎖Fvと結合しうる架橋剤(抗体、抗体断片、又は2価の改変抗体)を介したマルチマーが包含される。マルチマーを形成させる架橋基は、ペプチドの架橋に用いられている公知の架橋基を用いることができるが、例えばシステイン残基によるジスルフィド架橋、他の架橋基、例えばC4〜C10アルキレン(例えば、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレンおよびオクタメチレンなど)またはC4〜C10アルケニレン(cis/trans−3−ブテニレン、cis/trans−2−ペンテニレン、cis/trans−3−ペンテニレンおよびcis/trans−3−ヘキセニレンなど)である。
また、一本鎖Fvと結合しうる架橋剤は、例えばFv中に随意に導入しうるアミノ酸配列、例えばFLAG配列等に対する抗体もしくはその断片、またはその抗体由来の改変抗体、例えば一本鎖Fvである。
本明細書において「TPOアゴニスト作用」とは、TPOレセプターを架橋することにより細胞内にシグナルが伝達されて該細胞に生じる生物学的作用をいい、具体的には、巨核球の増殖、分化または成長の刺激、血小板の産生等の作用をいう。
本発明において、TPOアゴニスト作用のED50値は、公知のTPOアゴニスト作用の測定法より求めることができる。具体的には、BaF/mp1やUT7/TPOなどのTPO反応性細胞株を用いた細胞増殖アッセイ、MPLタンパクのリン酸化測定、骨髄細胞からの分化による巨核球コロニーアッセイ、インビボでのマウス血小板回復合成アッセイ、ヒト白血病巨核芽球細胞株(CMK)を用いた血小板抗原GPIIbIIIa(抗GPIIbIIIa)発現の誘導、巨核芽球細胞株(DAMI)における倍数化の誘導等により測定することができ、その反応容量曲線の最大活性を100%とし、反応率50%となる用量をED50%値とする。
本発明の改変抗体は、当該改変抗体と同一の抗原結合領域を有する抗体、即ち、当該改変抗体の抗原結合領域を形成するH鎖V領域とL鎖V領域の対と同一のH鎖V領域とL鎖V領域の対を有するIgG等のwholeの抗体(以下、親抗体という)と比較して同等以上のTPOアゴニスト作用(ED50値)を示すものが好ましい。さらに、親抗体と比較して2倍以上、好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上のTPOアゴニスト作用(ED50値)を示すものが好ましい。また、TPOレセプターには結合するが、TPOアゴニスト作用を実質的に有さない親抗体と同一の抗原結合領域を形成するH鎖V領域とL鎖V領域の対を有する改変抗体であって、当該改変抗体はアゴニスト作用を有するものも本発明に含まれる。
本発明の抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む化合物とは、トロンボポエチン(TPO)と比較して同等以上のTPOアゴニスト作用(ED50値)を示し、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む化合物であればいかなるものでもよく、TPOと比較して2倍以上、好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上のTPOアゴニスト作用(ED50値)を示す化合物が好ましい。
ここでいう「化合物」とは、本発明の改変抗体に限らず、wholeの抗体、F(ab’)2等、2つ以上、好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4、特に好ましくは2つの抗原結合部位を有するものであればいかなるものも含まれる。
本発明の抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む改変抗体または化合物は、親抗体と比較して、1/10以下の細胞間接着作用(ED50値)を示すものが好ましく、細胞間接着作用を実質的に有さないものが特に好ましい。
ここでいう細胞間接着作用のED50値とは、公知の細胞間接着作用の測定法、例えばTPOレセプターを発現する細胞の凝集を指標にしてより求めることができる。
本発明は上記改変抗体をコードするDNAに関する。
本発明は上記改変抗体を産生する動物細胞または微生物に関する。
本発明は上記改変抗体のTPOアゴニストとしての使用に関する。
本発明は上記改変抗体を用いてTPOレセプターを架橋することにより細胞内にシグナル伝達を起し、巨核球の増殖、分化誘導または成長の刺激、血小板の産生、TPOレセプタータンパク質のリン酸化等のTPOアゴニスト作用を生じさせる方法に関する。
本発明は、上記改変抗体を有効成分として含む血小板減少症治療剤等の医薬に関する。
本発明は、上記改変抗体の医薬としての使用に関する。
本発明は、TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む改変抗体のスクリーニング方法又は測定方法であって、1)TPOレセプターに特異的に結合する、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む改変抗体を作製し、2)TPOレセプターを発現している細胞と該改変抗体とを接触させ、3)TPOレセプターを架橋することにより該細胞に生ずるTPOアゴニスト作用を測定する、工程を含むスクリーニング方法又は測定方法に関する。本発明の測定方法は、本発明の改変抗体を医薬品として製造する場合の品質管理に用いることができる。
本発明の改変抗体は、単一特異性(mono−specific)改変抗体でも、二重特異性(bi−specific)改変抗体等の多重特異性(multi−specific)改変抗体であってもよいが、好ましくは単一特異性(mono−specific)改変抗体である。
本発明はまた、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト抗体由来のH鎖V領域及び/又はヒト抗体由来のL鎖V領域である改変抗体に関する。ヒト抗体由来のH鎖V領域及びL鎖V領域は、例えばWO99/10494号公報に記載された方法のように、ヒトモノクローナル抗体のライブラリーをスクリーニングすることにより得ることができる。また、トランスジェニックマウス等から作製されたヒトモノクローナル抗体由来のH鎖V領域及びL鎖V領域も包含される。
さらに本発明は、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト型化H鎖V領域及び/又はヒト型化L鎖V領域である改変抗体に関する。詳細には、ヒトモノクローナル抗体L鎖V領域のフレームワーク領域(FR)とヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サルなど)のモノクローナル抗体のL鎖V領域の相補性決定領域(complementarity determining region;以下CDRとする)を含むヒト型化L鎖V領域及び/又はヒトモノクローナル抗体H鎖V領域のFRとヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サルなど)モノクローナル抗体のH鎖V領域のCDRを含むヒト型化H鎖V領域から構成される。この場合、CDRおよびFRのアミノ酸配列を一部改変(例えば、欠失、置換又は付加)してもよい。
本発明はまた、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サル、ニワトリなど)のモノクローナル抗体由来のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域も包含される。この場合、CDRおよびFRのアミノ酸配列を一部改変(例えば、欠失、置換又は付加)してもよい。
本発明はまた、前記種々の改変抗体をコードするDNA、該DNAを含んで成る組換えベクターを製造する遺伝子工学的方法に関する。
本発明はまた、該組換えベクターにより形質転換された宿主に関する。宿主は、例えばヒト細胞、マウス細胞などの動物細胞、又は大腸菌、枯草菌、酵母などの微生物である。
本発明はまた、上記の宿主を培養し、培養物から改変抗体を採取することを特徴とする、改変抗体の製造方法に関する。
さらに本発明は、一本鎖Fvを産生する宿主動物細胞を無血清培地で培養して該培地中に一本鎖Fvを分泌させ、該培地中で形成された一本鎖Fvのダイマーを含む該培地上清を精製することを特徴とする一本鎖Fvのダイマーの製造方法に関する。
本発明はまた、改変抗体のTPOアゴニストとしての使用に関する。即ち、前記得られた改変抗体を有効成分として含有するシグナル伝達アゴニストに関する。
故に、本発明のTPOアゴニスト改変抗体を有効成分として含有する医薬製剤は、血小板減少が関与する血液疾患、癌や白血病等の化学治療後の血小板減少症などの治療及び/又は予防に有用である。
本発明の改変抗体は、抗体に由来するH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む。当該改変抗体の構成としては、好ましくは1つのH鎖V領域及び1つのL鎖V領域を含む一本鎖Fvのダイマー又は2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V領域を含むポリペプチドとすることができる。該改変抗体中において、H鎖およびL鎖のV領域は、1個以上のアミノ酸からなるペプチドリンカーを介して連結されているのが好ましい。これらの改変抗体は、モノクローナル抗体の可変領域を含有し、もとのモノクローナル抗体と同一の特異性をもって抗原に結合する。
H鎖V領域
本発明において、抗体に由来するH鎖V領域には、TPOレセプターを認識し、且つ前記分子を架橋してオリゴマー化、例えば2量体化することにより、細胞内にシグナルを伝達しうる、抗体のH鎖V領域であって、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サルなど)に由来するH鎖V領域又は前記H鎖V領域のアミノ酸配列を一部改変したH鎖V領域も本発明におけるH鎖V領域に包含されるが、ヒトモノクローナル抗体H鎖V領域のFRとマウスモノクローナル抗体のH鎖V領域のCDRを含むヒト型化H鎖V領域が好ましい。さらに、組換え技術を使用して作成し得る、ヒト由来のアミノ酸配列を有するH鎖V領域も好ましい。また、本発明のH鎖V領域には、前記H鎖V領域の断片であって、抗原結合性を保持する領域も包含される。
L鎖V領域
本発明におけるL鎖V領域には、TPOレセプターを認識し、且つ前記分子を架橋してオリゴマー化、例えば2量体化することにより、細胞内にシグナルを伝達しうる、抗体のL鎖V領域であって、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サルなど)に由来するL鎖V領域又は前記L鎖V領域のアミノ酸配列を一部改変したL鎖V領域も本発明におけるL鎖V領域に包含されるが、ヒトモノクローナル抗体L鎖V領域のFRとマウスモノクローナル抗体のL鎖V領域のCDRを含むヒト型化L鎖V領域が好ましい。さらに、組換え技術を使用して作成し得る、ヒト由来のアミノ酸配列を有するL鎖V領域も好ましい。また、本発明のL鎖V領域には、前記L鎖V領域の断片であって、抗原結合性を保持する領域も包含される。
相補性決定領域(CDR)
L鎖及びH鎖の各V領域は抗原結合部位を形成し、L鎖及びH鎖上の可変領域は共通性のある比較的保存された4個のフレームワークと3個の超可変又は相補性決定領域(CDR)により連結されている(Kabat,E.A.ら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」US Dept.Health and Human Services,1983)。
前記4個のフレームワーク領域(FR)の多くの部分はβ−シート構造をとり、その結果3個のCDRはループを形成し、CDRは場合によりβ−シート構造の一部分を形成することもある。3個のCDRはFRによって相互に立体的に非常に近い位置に保持され、そして対をなす領域の3個のCDRと共に抗原結合部位の形成に寄与する。
これらのCDR領域は、得られた抗体のV領域のアミノ酸配列と既知抗体のV領域の既知アミノ酸配列とを照合することによって、Kabat,E.A.ら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」の経験則から見出すことができる。
一本鎖Fv
一本鎖Fvは、抗体に由来する、連結したH鎖V領域及びL鎖V領域を含むポリペプチドのモノマーであり、得られる一本鎖Fvはもとの抗体の可変領域を含有し、相補性決定領域を保存するため、もとの抗体と同一の特異性をもって抗原に結合する(特願平11−63557号)。さらに、本発明の一本鎖Fvにおいて、前記可変領域および/またはCDRの一部またはそのアミノ酸配列の一部を改変(例えば、欠失、置換又は付加)することができる。本発明の一本鎖Fvを構成するH鎖V領域及びL鎖V領域は上述したものであり、H鎖V領域とL鎖V領域を直接又はリンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して連結することができ、その構成としては、[H鎖V領域]−[L鎖V領域]、[L鎖V領域]−[H鎖V領域]のいずれでもよい。本発明においては、これら一本鎖Fvはダイマー、トリマー又はテトラマーを形成させ、本発明の改変抗体とすることができる。
一本鎖改変抗体
本発明の2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域、好ましくは各々2〜4、特に好ましくは各々2つ含む一本鎖改変抗体は、上述のような2つ以上のH鎖V領域とL鎖V領域をそれぞれ含有する。このポリペプチドにおいて各領域は、該一本鎖改変抗体が特定の立体構造、具体的には一本鎖Fvのダイマーが構成する立体構造を模倣し得るよう配置させる必要があり、例えば
[H鎖V領域]−[L鎖V領域]−[H鎖V領域]−[L鎖V領域]
又は
[L鎖V領域]−[H鎖V領域]−[L鎖V領域]−[H鎖V領域]
の順序で各領域が配置され、これらの領域はリンカーを介して連結される。
リンカー
本発明において、H鎖V領域とL鎖V領域とを連結するリンカーとしては、遺伝子工学により導入し得る任意のペプチドリンカー、又は合成化合物リンカー、例えば、Protein Engineering,9(3),299−305,1996に開示されるリンカーを用いることができる。これらのリンカーは同一分子内で同じ又は異なっていてもよい。ペプチドリンカーを所望する場合、各々のリンカーの例としては:
Ser
Gly・Ser
Gly・Gly・Ser
Ser・Gly・Gly
Gly・Gly・Gly・Ser
Ser・Gly・Gly・Gly
Gly・Gly・Gly・Gly・Ser
Ser・Gly・Gly・Gly・Gly
Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Ser
Ser・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly
Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Ser
Ser・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly・Gly
(Gly・Gly・Gly・Gly・Ser)n
(Ser・Gly・Gly・Gly・Gly)n
[nは1以上の整数である]を挙げることができる。好ましいリンカーペプチドの長さは抗原となる受容体によって異なるが、一本鎖Fvにおいては通常1〜20アミノ酸であるのが好ましい。2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域を含む一本鎖改変抗体においては、[H鎖V領域]−[L鎖V領域](又は[L鎖V領域]−[H鎖V領域])からなる同一の抗原結合部位を形成するもの同士を連結するためのペプチドリンカーの長さは1〜30アミノ酸、好ましくは1〜20アミノ酸、さらに好ましくは3〜18アミノ酸である。また、[H鎖V領域]−[L鎖V領域](又は[L鎖V領域]−[H鎖V領域])からなる同一の抗原結合部位を形成しないもの同士を連結するためのペプチドリンカーの長さは1〜40アミノ酸、好ましくは3〜30アミノ酸、さらに好ましくは5〜20アミノ酸である。これらのリンカーを導入する方法は本発明の改変抗体をコードするDNAの構築方法の説明において述べる。
本発明における化学合成物リンカー(化学架橋剤)は、ペプチドの架橋に通常用いられている架橋剤、例えばN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)ジスクシンイミジルスベレート(DSS)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベレート(BS3)、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)、ジチオビス(スルホスクシンイミジルプロピオネート)(DTSSP)、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS)、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)(スルホ−EGS)、ジスクシンイミジル酒石酸塩(DST)、ジスルホスクシンイミジル酒石酸塩(スルホ−DST)、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(BSOCOES)、ビス[2−(スルホスクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(スルホ−BSOCOES)などであり、これらの架橋剤は市販されている。また、化学合成物リンカーの長さは、上述のペプチドリンカーの長さに相当する長さであるのが好ましい。
特に、一本鎖Fvのダイマーを形成させる場合、宿主細胞で産生された一本鎖モノマーを培地等の溶液中で、20%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上ダイマー化するのに適したリンカーを選択することが好ましく、具体的には2〜12アミノ酸、より好ましくは3〜10アミノ酸、またはこれに相当する他のリンカーが好ましい。
改変抗体の製造
改変抗体は、TPOレセプターに特異的に結合する既知または新規な抗体由来のH鎖V領域とL鎖V領域とを前述のリンカーを介して連結することにより得られる。一本鎖Fvの例として、WO99/10494に記載される12B5抗体、12E10抗体に由来するH鎖V領域とL鎖V領域を有するものが挙げられる。2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V領域を含む本発明の改変抗体の例としては、前記モノクローナル抗体由来のH鎖V領域とL鎖V領域を有するsc12B5(リンカー:15アミノ酸)、sc12E10(リンカー:15アミノ酸)、db12B5ダイマー(リンカー:5アミノ酸)、db12E10ダイマー(リンカー:5アミノ酸)が挙げられる。
本発明の改変抗体を作製するためには、該ポリペプチドが分泌性であることを所望する場合は、そのN−末端にシグナルペプチドを付加することができる。また、該ポリペプチドの効率的精製等のために、ポリペプチド精製において有用である公知の配列、例えばFLAG配列などを挿入することができる。この場合、抗FLAG抗体を用いてダイマー形成させることもできる。
本発明の改変を作製するためには、これをコードするDNA、即ち一本鎖FvをコードするDNA又は再構成一本鎖ポリペプチドをコードするDNAを得る必要がある。これらのDNAは、例えばsc12B5、db12B5、sc12E10及び/又はdb12E10の場合には前記Fv由来のH鎖V領域及びL鎖V領域をコードするDNAを用いて、又はこれらのDNAを鋳型とし、その配列内の所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を、その両端を規定するプライマー対を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により増幅することにより得ることができる。
各V領域について、アミノ酸配列の一部改変を所望する場合には、PCR法を用いる公知の方法によって1又は数個のアミノ酸が改変された、即ち1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するV領域を得ることができる。特定の抗原に対して十分に活性がある改変抗体を作製するために、PCR法を用いる公知の方法によって前記V領域のアミノ酸配列の一部を改変することが望ましい。
PCRに用いるプライマーを決定するにあたり、モノクローナル抗体から出発する場合は、当該技術分野において知られた方法を用いて当該抗体由来のH鎖及びL鎖のタイピングをして両鎖の型を決定する。
次に、PCR法を用いて12B5抗体及び12E10抗体のL鎖V領域を増幅するため、5’−末端オリゴヌクレオチドプライマー及び3’−末端オリゴヌクレオチドプライマーを上述のように決定する。同様にして、12B5抗体及び12E10抗体のH鎖V領域の増幅のため、それぞれ5’−末端プライマー及び3’−末端プライマーを決定する。
その例として本発明においては、5’−末端プライマーはその5’−末端近傍に制限酵素HinfI切断部位を提供する配列GANTCを含有し、そして3’−末端プライマーはその5’−末端近傍に制限酵素XmaI切断部位を提供するヌクレオチド配列CCCGGGを含有するものを使用している。これらの制限酵素切断部位は可変領域をコードする目的のDNA断片をクローニングベクターにサブクローニングするために用いられる限り、他の制限酵素切断部位でもよい。
特に設計されたPCRプライマーを用いて、12B5抗体、12E10抗体の各V領域をコードするcDNAをそれらの5’−及び3’−末端において適当な塩基配列を導入して、それらが発現ベクターに容易に挿入されるように、且つそれらが該発現ベクター中で適切に機能するようにした(例えば、本発明ではKozak配列の導入により翻訳効率を上げるように工夫されている)。次に、これらのプライマーを用いてPCRにより増幅して得た12B5抗体、12E10抗体の各V領域を、所望のヒトC領域をすでに含有するHEF発現ベクター(WO92−19759参照)に挿入した。クローン化されたDNAの配列決定は任意の常法、例えば、自動DNAシークエンサー(Applied Biosystems社製)を用いて行うことができる。
本発明の改変抗体において、リンカー、例えばペプチドリンカーは次のように導入することができる。即ち、上述のH鎖V領域及びL鎖V領域のためのプライマーと一部相補的な配列を有し、且つ該リンカーのN−末端またはC−末端をコードするようにプライマーを設計し、これを用いてPCRを行うことによって所望のアミノ酸配列および長さを有するペプチドリンカーをコードするDNAを作成することができる。そして、該DNAを介してH鎖V領域及びL鎖V領域をコードするDNAを連結すれば、所望のペプチドリンカーを有する本発明の改変抗体をコードするDNAを得ることができる。さらに、1つの改変抗体をコードするDNAを得ることができれば、前記DNAを鋳型にして、そして種々のリンカー用のプライマーを設計し、これを用いてPCRを実施すれば、所望のペプチドリンカーを有する改変抗体又はリンカーを有さない改変抗体をコードするDNAは容易に得ることができる。
また、本発明における改変抗体の各鎖V領域は、従来の技術(例えば、Sato,K.ら、Cancer Res.,53,1−6(1993)を参照のこと)を用いることによって、ヒト型化することが可能であり、また一旦ヒト型化された各鎖V領域をコードするDNAが作製されれば、ヒト型化一本鎖Fv、ヒト型化一本鎖Fv断片、ヒト型化モノクローナル抗体あるいはヒト型化モノクローナル抗体断片は、常法に従って容易に作出する事が可能である。さらに、必要な場合、これらのV領域のアミノ酸配列の一部を改変することも可能である。
さらに、遺伝子工学における慣用技術を用いて上述のマウス由来のH鎖V領域及びL鎖V領域をコードするDNAと同様に、これらに相当する他の哺乳動物由来のDNA、例えばヒト抗体由来の各鎖V領域をコードするDNAを得ることができる。得られたDNAを用いて、他の哺乳動物、特にヒト抗体由来のH鎖V領域及びL鎖V領域、ヒト由来の一本鎖Fv及びその断片、並びにヒト由来のモノクローナル抗体及びその断片を得ることができる。
本発明の改変抗体が、二重特異性(bi−specific)改変抗体である場合、公知の方法(例えば、WO9413804号公報に記載の方法)により作製することができる。
以上のように、目的とする改変抗体の各鎖V領域、ヒト型化改変抗体の各鎖V領域をコードするDNAが作製されれば、それらを含有する発現ベクター、及び該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができる。また、常法に従って宿主を培養し、産生した再構成一本鎖Fv、再構成ヒト型化一本鎖Fv、ヒト型化モノクローナル抗体及びヒト型化モノクローナル抗体断片は、細胞内又は細胞外から分離し均一にまで精製することができる。この場合、通常の蛋白質で用いられる分離・精製方法、例えば各種クロマトグラフィー、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組合せて、本発明の改変抗体を分離・精製することができるが、これらに限定されるものではない。
再構成一本鎖Fvを動物細胞、例えば、COS7細胞、CHO細胞などの動物培養細胞、好ましくはCHO細胞で産生する場合、無血清培地で該再構成一本鎖Fvを産生させると、培地中で形成した該一本鎖Fvのダイマーを安定的に高収率で回収・精製することができる。さらに、このようにして精製された該ダイマーは、長期間、安定してダイマーの状態で保存することができる。この場合に用いることができる無血清培地は、通常組み換えタンパク質の産生に用いられている培地であればいかなるものでもよく、特に限定されるものではない。
本発明の改変抗体の製造のために任意の発現系、例えば真核細胞、例えば動物細胞、例えば樹立された哺乳類細胞系、真糸状菌細胞、及び酵母細胞、並びに原核細胞、例えば細菌細胞、例えば大腸菌細胞等を使用することができる。好ましくは、本発明の改変抗体は哺乳類細胞、例えばCOS7細胞又はCHO細胞中で発現される。
これらの場合、哺乳類細胞での発現のために有用な常用のプロモーターを用いることができる。例えば、ヒト・サイトメガロウイルス(Human cytomegalo−virus:HCMV)前期(immediate early)プロモーターを使用するのが好ましい。HCMVプロモーターを含有する発現ベクターの例には、HCMV−VH−HCY1、HCMV−VL−HCK等であって、PSV2neoに由来するプラスミドベクター(国際公開公報WO92/19759参照)が包含される。
また、その他に、本発明のために用いることのできる哺乳動物細胞における遺伝子発現のプロモーターとしてはレトロウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、シミアンウイルス40(SV40)などのウイルスプロモーターやヒト・ポリペプチドチェーン・エロンゲーション・ファクター1α(HEF−1α)などの哺乳動物細胞由来のプロモーターを用いればよい。例えばSV40のプロモーターを使用する場合は、Mulligan,R.C.らの方法(Nature,277,108−114,(1979))、また、HEF−1αプロモーターを使用する場合は、Mizushima,S.らの方法(Nucleic Acids Research,18,5322,(1990))に従えば容易に実施することができる。
複製起原(ori)としては、SV40、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、牛パピローマウイルス(BPV)等の由来のoriを用いることができ、さらに発現ベクターは選択マーカーとして、ホスホトランスフェラーゼAPH(3’)IIあるいはI(neo)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子等を含むことができる。
上述のように作成した改変抗体の抗原結合活性は、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素標識固相免疫測定法(ELISA)または表面プラズモン共鳴等の既知の方法で測定することができる。また、元のモノクローナル抗体の結合阻害能を指標にして、具体的には該モノクローナル抗体のその抗原への濃度依存的阻害作用の有無を指標にして評価することができる。
詳細には、本発明の改変抗体をコードするDNAを包含する発現ベクターで形質転換した動物細胞、例えばCOS7細胞又はCHO細胞を培養し、前記培養した細胞及び/又はその培養上清、又はこれらから精製した改変抗体を用いて抗原への結合を測定する。対照として発現ベクターのみで形質転換した細胞の培養上清などを用いる。抗原、例えば12B5抗体、12E10抗体の場合にはヒトMPLを強制発現させたBa/F3細胞に、本発明の改変抗体などの試験試料又は対照の培養上清を加え、例えばフローサイトメトリーを実施して抗原結合活性を評価する。
in vitroでのシグナル伝達誘起作用(例えば、巨核球の増殖、分化誘導または成長の刺激、血小板の産生、TPOレセプタータンパク質のリン酸化等)は、抗原を発現する細胞又は該抗原遺伝子を導入した細胞に、前述の改変抗体の試験試料を添加し、当該細胞においてシグナル伝達による変化(例えば、ヒトMPL抗原特異的な増殖、タンパク質のリン酸化の測定、または血小板特異的な抗原の発現等)を既知の測定方法で評価することができる。
In Vivoでの評価試験は例えばマウスにMPLを認識するモノクローナル抗体、本発明の改変抗体、対照としてPBS等を投与する。そして、マウス血清中の血小板量の変化で活性の強さを評価する。
上述のように、TOPレセプターに特異的に結合する、H鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む改変抗体を作製し、例えば上記のIn vitroまたはIn vivoでの評価試験により本発明の改変抗体をスクリーニングすることによって、本発明の改変抗体を取得することができる。
本発明の改変抗体は、2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域、好ましくは各々2〜4、特に好ましくは各々2つ含むものであり、1つのH鎖V領域及び1つのL鎖V領域を含む一本鎖Fvのダイマー、又は2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域を連結した一本鎖ポリペプチドである。このような構成をとることで、もとのモノクローナル抗体の抗原結合部位の立体構造を模倣して、優れた抗原結合性を保持するものと考えられる。
本発明の改変抗体は、親抗体分子(例えばIgG)と比較して顕著な低分子化が達成されているため、組織、腫瘍への移行性に優れており、さらに親抗体分子よりも高い活性を有する。このため、本発明の改変抗体を用いることにより、TPOのシグナルを細胞内に効率よく伝達することができる。故に、これを含有する医薬製剤は、血小板減少が関与する血液疾患、癌や白血病等の化学治療後の血小板減少症などの治療薬としての利用が期待される。また、RI標識による造影剤としての利用も期待され、RI化合物やトキシン等の他の化合物と結合させることにより、効力を増強させることも可能である。
発明を実施するための最良の形態
次に、本発明を下記の実施例により具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
本発明の改変抗体の製造方法を、下記の一本鎖Fvの作製を例にして説明する。本発明の改変抗体の製造方法において用いる、ヒトIAPに対するマウスMABL−1、MABL−2抗体を産生するハイブリドーマ、MABL−1及びMABL−2は、公的微生物寄託機関である通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東一丁目1番3号)に、1997年9月11日に、受託番号それぞれFERM BP−6100、FERM BP−6101として国際寄託されている。
実施例
実施例1 (ヒトIAPに対するマウスモノクローナル抗体のV領域をコードするDNAのクローン化)
ヒトIAPに対するマウスモノクローナル抗体MABL−1及びMABL−2の可変領域をコードするDNAを次のようにしてクローン化した。
1.1 メッセンジャーRNA(mRNA)の調製
ハイブリドーマMABL−1及びMABL−2からのmRNAを、mRNA Purification Kit(Pharmacia Biotech社製)を用いて調製した。
1.2 二本鎖cDNAの合成
約1μgのmRNAよりMarathon cDNA Amplification Kit(CLONTECH社製)を用いて二本鎖cDNAを合成し、アダプターを連結した。
1.3 抗体可変領域をコードする遺伝子のPCR法による増幅
Thermal Cycler(PERKIN ELMER社製)を用いてPCR法を行った。
(1)MABL−1L鎖V領域をコードする遺伝子の増幅
PCR法に使用するプライマーは、アダプターの部分配列とハイブリダイズする配列番号:1に示すアダプタープライマー1(CLONTECH社製)、及びマウスカッパ型L鎖C領域配列とハイブリダイズする配列番号:2に示すMKC(Mouse Kappa Constant)プライマー(Bio/Technology,9,88−89,1991)を用いた。
PCR溶液50μlは、5μlの10×PCR Buffer II、2mM MgCl2、0.16mM dNTPs(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)、2.5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)、0.2μMの配列番号:1に示すアダプタープライマーと0.2μMの配列番号:2に示すMKCプライマー及びMABL−1由来の二本鎖cDNA0.1μgを含有し、94℃の初期温度にて9分間そして次に94℃にて1分間、60℃にて1分間及び72℃にて1分20秒間、この順序で加熱した。この温度サイクルを35回反復した後、反応混合物を更に72℃で10分間加熱した。
(2)MABL−1H鎖V領域をコードするcDNAの増幅
PCRのためのプライマーとして配列番号:1に示すアダプタープライマー1、及び配列番号:3に示すMHC−Y1(Mouse Heavy Constant)プライマー(Bio/Technology,9,88−89,1991)を用いた。
cDNAの増幅は、0.2μMのMKCプライマーの代わりに0.2μMのMHC−Y1プライマーを用いて増幅した点を除いて、前記1.3(1)においてL鎖V領域遺伝子の増幅について記載したのと同じ方法により行った。
(3)MABL−2L鎖V領域をコードするcDNAの増幅
PCRのためのプライマーとして配列番号:1に示すアダプタープライマー1、及び配列番号:2に示すMKCプライマーを用いた。
cDNAの増幅は、MABL−1由来の二本鎖cDNA0.1μgの代わりにMABL−2由来の二本鎖cDNA0.1μgを用いて増幅した点を除いて、前記1.3(1)においてMABL−1L鎖V領域遺伝子の増幅について記載したのと同じ方法により行った。
(4)MABL−2H鎖V領域をコードするcDNAの増幅
PCRのためのプライマーとして配列番号:1に示すアダプタープライマー1、及び配列番号:4に示すMHC−Y2aプライマー(Bio/Technology,9,88−89,1991)を用いた。
cDNAの増幅は、0.2μMのMKCプライマーの代わりに0.2μMのMHC−Y2aプライマーを用いて増幅した点を除いて、前記1.3(3)においてL鎖V領域遺伝子の増幅について記載したのと同じ方法により行った。
1.4 PCR生成物の精製
前記のようにしてPCR法により増幅したDNA断片をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、1mM EDTAを含有する10mM Tris−HCl(pH8.0)に溶解した。
1.5 連結及び形質転換
上記のようにして調製したMABL−1由来マウスカッパ型L鎖V領域をコードする遺伝子を含んで成るDNA断片約140ngをpGEM−T Easyベクター(Promega社製)50ngと、30mM Tris−HCl(pH7.8)、10mM MgCl2、10mMジチオスレイトール、1mM ATP及び3ユニット T4 DNAリガーゼ(Promega社製)を含有する反応混合液中で、15℃にて3時間反応させ連結した。
次に、1μlの上記連結混合液を大腸菌DH5αのコンピテント細胞(東洋紡社製)50μlに加え、そしてこの細胞を氷上で30分間、42℃にて1分間そして再び氷上で2分間静置した。次いで100μlのSOC培地(GIBCO BRL社製)を加え、100μg/mlのアンピシリン(SIGMA社製)を含有するLB(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)寒天培地上にこの大腸菌を塗布し、37℃にて終夜培養して大腸菌形質転換体を得た。
この形質転換体を、50μg/mlのアンピシリンを含有するLB培地3ml中で37℃にて終夜培養し、そしてこの培養物からQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社製)を用いてプラスミドDNAを調製した。
こうして得られた、ハイブリドーマMABL−1に由来するマウスカッパ型L鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドをpGEM−M1Lと命名した。
上記の同じ方法に従って、ハイブリドーマMABL−1に由来するマウスH鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドを精製DNA断片から作製し、pGEM−M1Hと命名した。
また、ハイブリドーマMABL−2に由来するマウスカッパ型L鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドを精製DNA断片から作製し、pGEM−M2Lと命名した。
また、ハイブリドーマMABL−2に由来するマウスH鎖V領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドを精製DNA断片から作製し、pGEM−M2Hと命名した。
実施例2 (DNAの塩基配列の決定)
前記のプラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列の決定は、自動DNAシーケンサー(Applied Biosystem社製)及びABI PRISM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(Applied Biosystem社製)を用いて、メーカー指定のプロトコールに従って行った。
プラスミドpGEM−M1Lに含まれるマウスMABL−1抗体のL鎖V領域をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号:5に示す。
また、プラスミドpGEM−M1Hに含まれるマウスMABL−1抗体のH鎖V領域をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号:6に示す。
また、プラスミドpGEM−M2Lに含まれるマウスMABL−2抗体のL鎖V領域をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号:7に示す。
また、プラスミドpGEM−M2Hに含まれるマウスMABL−2抗体のH鎖V領域をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号:8に示す。
実施例3 (CDRの決定)
L鎖及びH鎖のV領域の全般的構造は、互いに類似性を有しており、それぞれ4つのフレームワーク部分が3つの超可変領域、即ち相補性決定領域(CDR)により連結されている。フレームワークのアミノ酸配列は、比較的良く保存されているが、一方、CDR領域のアミノ酸配列の変異性は極めて高い(Kabat,E.A.ら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」US Dept.Health and Human Services,1983)。
このような事実に基づき、ヒトIAPに対するマウスモノクローナル抗体の可変領域のアミノ酸配列をKabatらにより作製された抗体のアミノ酸配列のデータベースにあてはめ、相同性を調べることによりCDR領域を表1に示す如く決定した。
実施例4 (クローン化cDNAの発現の確認(キメラMABL−1抗体及びキメラMABL−2抗体の作製))
4.1 キメラMABL−1抗体発現ベクターの作製
キメラMABL−1抗体を発現するベクターを作製するため、それぞれマウスMABL−1L鎖及びH鎖V領域をコードするcDNAクローンpGEM−M1L及びpGEM−M1HをPCR法により修飾した。そしてHEF発現ベクター(国際公開公報WO92/19759参照)に導入した。
L鎖V領域のための前方プライマーMLS(配列番号:9)及びH鎖V領域のための前方プライマーMHS(配列番号:10)は、各々のV領域のリーダー配列の最初をコードするDNAにハイブリダイズし且つKozakコンセンサス配列(J.mol.Biol.,196,947−950,1987)及びHind III制限酵素部位を有するように設計した。L鎖V領域のための後方プライマーMLAS(配列番号:11)及びH鎖V領域のための後方プライマーMHAS(配列番号:12)は、J領域の末端をコードするDNA配列にハイブリダイズし且つスプライスドナー配列及びBamHI制限酵素部位を有するように設計した。
PCR溶液100μlは、10μlの10×PCR Buffer II、2mM MgCl2、0.16mM dNTPs(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold、0.4μMずつの各プライマー、及び8ngの鋳型DNA(pGEM−M1L及びpGEM−M1H)を含有し、94℃の初期温度にて9分間そして次に94℃にて1分間、60℃にて1分間及び72℃にて1分20秒間、この順序で加熱した。この温度サイクルを35回反復した後、反応混合物を更に72℃で10分間加熱した。
PCR生成物をQIAquick PGR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、Hind III及びBamHIで消化し、そしてL鎖V領域については、HEF発現ベクターHEF−Kに、H鎖V領域についてはHEF発現ベクターHEF−Yにそれぞれクローニングした。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをそれぞれHEF−M1L、HEF−M1Hと命名した。
4.2 キメラMABL−2抗体発現ベクターの作製
cDNAの修飾及びクローニングは、pGEM−M1L及びpGEM−M1Hの代わりにpGEM−M2L及びpGEM−M2Hを鋳型DNAに増幅した点を除いて、前記4.1において記載したのと同じ方法により増幅及びクローニングを行い、DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをそれぞれHEF−M2L、HEF−M2Hと命名した。
4.3 COS7細胞への遺伝子導入
キメラMABL−1抗体及びキメラMABL−2抗体の一過性発現を観察するため、前記発現ベクターをCOS7細胞において試験した。
(1)キメラMABL−1抗体の遺伝子導入
HEF−M1LとHEF−M1Hベクターを、Gene Pulser装置(BioRad社製)を用いてエレクトロポレーションによりCOS7細胞に同時形質転換した。各DNA(10μg)と、PBS中1×107細胞/mlの0.8mlをキュベットに加え、1.5kV、25μFの容量にてパルスを与えた。
室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%のY−グロブリンフリーウシ胎児血清を含有するDMEM培養液(GIBCO BRL社製)に加えた。72時間培養の後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去して回収培養上清を得た。
(2)キメラMABL−2抗体の遺伝子導入
キメラMABL−2抗体遺伝子の導入は、HEF−M1LとHEF−M1Hベクターの代わりにHEF−M2LとHEF−M2Hベクターを用いた点を除いて、前記4.3(1)に記載したのと同じ方法によりCOS7細胞に同時形質転換し、回収培養上清を得た。
4.4 フローサイトメトリー
抗原への結合を測定するため、前記COS7細胞培養上清を用いてフローサイトメトリーを行った。ヒトIAPを発現するマウス白血病細胞株L1210細胞4×105個に、キメラMABL−1抗体を発現させたCOS7細胞の培養上清あるいはキメラMABL−2抗体を発現させたCOS7細胞の培養上清あるいはコントロールとしてヒトIgG1抗体(SIGMA社製)を加え、氷上にてインキュベーション及び洗浄の後、FITC標識した抗ヒトIgG抗体(Cappel社製)を加えた。インキュベーション及び洗浄の後、FACScan装置(BECTON DICKINSON社製)にて蛍光強度を測定した。
その結果、キメラMABL−1抗体及びキメラMABL−2抗体は、ヒトIAPを発現するL1210細胞に特異的に結合したことにより、これらのキメラ抗体がマウスモノクローナル抗体MABL−1及びMABL−2のそれぞれのV領域の正しい構造を有することが明らかとなった(図1〜3)。
実施例5 (再構成MABL−1抗体及び再構成MABL−2抗体一本鎖Fv(scFv)領域の作製)
5.1 再構成MABL−1抗体一本鎖Fvの作製
再構成MABL−1抗体一本鎖Fvを次の様にして作製した。再構成MABL−1抗体H鎖V領域、リンカー領域、及び再構成MABL−1抗体L鎖V領域をそれぞれPCR法を用いて増幅し、連結することにより、再構成MABL−1抗体一本鎖Fvを作製した。この方法を図4に模式的に示す。再構成MABL−1抗体一本鎖Fvの作製のために6個のPCRプライマー(A〜F)を使用した。プライマーA、C及びEはセンス配列を有し、プライマーB、D及びFはアンチセンス配列を有する。
H鎖V領域のための前方プライマーVHS(プライマーA、配列番号:13)は、H鎖V領域のN末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つNcoI制限酵素認識部位を有するように設計した。H鎖V領域のための後方プライマーVHAS(プライマーB、配列番号:14)は、H鎖V領域のC末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つリンカーとオーバーラップするように設計した。
リンカーのための前方プライマーLS(プライマーC、配列番号:15)は、リンカーのN末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つH鎖V領域のC末端をコードするDNAとオーバーラップするように設計した。リンカーのための後方プライマーLAS(プライマーD、配列番号:16)は、リンカーのC末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つL鎖V領域のN末端をコードするDNAとオーバーラップするように設計した。
L鎖V領域のための前方プライマーVLS(プライマーE、配列番号:17)は、リンカーのC末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つL鎖V領域のN末端をコードするDNAにオーバーラップするように設計した。L鎖V領域のための後方プライマーVLAS−FLAG(プライマーF、配列番号:18)は、L鎖V領域のC末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つFLAGペプチドをコードする配列(Hopp,T.P.ら、Bio/Technology,6,1204−1210,1988)、2個の転写停止コドン及びEcoRI制限酵素認識部位を有するように設計した。
第一PCR段階において3つの反応A−B、C−D及びE−Fを行い、そして各PCR生成物を精製した。第一PCRから得られた3つのPCR生成物をそれら自体の相補性によりアッセンブルさせた。次に、プライマーA及びFを加えて、再構成MABL−1抗体一本鎖Fvをコードする全長DNAを増幅した(第二PCR)。なお、第一PCRにおいては、再構成MABL−1抗体H鎖V領域をコードするプラスミドpGEM−M1H(実施例2を参照)、Gly Gly GlyGly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly GlyGly Gly Ser(配列番号:19)からなるリンカー領域をコードするDNA配列(Huston,J.S.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,5879−5883,1988)を含んで成るプラスミドpSC−DP1、及び再構成MABL−1抗体L鎖V領域をコードするプラスミドpGEM−M1L(実施例2を参照)をそれぞれ鋳型として用いた。
第一PCR段階の溶液50μlは、5μlの10×PCR Buffer II、2mM MgCl2、0.16mM dNTPs、2.5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)、0.4μMずつの各プライマー及び5ngの各鋳型DNAを含有し、94℃の初期温度にて9分間そして次に94℃にて1分間、65℃にて1分間及び72℃にて1分20秒間、この順序で加熱した。この温度サイクルを35回反復した後、反応混合物を更に72℃で7分間加熱した。
PCR生成物A−B(371bp)、C−D(63bp)、及びE−F(384bp)をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、第二PCRでアッセンブルした。第二PCRにおいて、鋳型として120ngの第一PCR生成物A−B、20ngのPCR生成物C−D及び120ngのPCR生成物E−F、10μlの10×PCR Buffer II、2mM MgCl2、0.16mM dNTPs、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)を含有する98μlのPCR混合液を、94℃の初期温度にて8分間そして次に94℃にて2分間、65℃にて2分間及び72℃にて2分間、この順序で加熱した。この温度サイクルを2回反復した後、それぞれ0.4μMのプライマーA及びFを加えた。そして94℃の初期温度にて1分間そして次に94℃にて1分間、65℃にて1分間及び72℃にて1分20秒間、この順序で加熱し、この温度サイクルを35回反復した後、反応混合物を72℃にて7分間加熱した。
第二PCRにより生じた843bpのDNA断片を精製し、NcoI及びEcoRIで消化し、得られたDNA断片をpSCFVT7ベクターにクローニングした。なお、本発現ベクターpSCFVT7は、大腸菌ペリプラズム分泌発現系に適するpelBシグナル配列(Lei,S.P.ら、J.Bacteriology,169,4379−4383,1987)を含んでいる。DNA配列決定の後、再構成MABL−1抗体一本鎖Fvの正しいアミノ酸配列をコードするDNA断片を含むプラスミドをpscM1と命名した(図5を参照)。本プラスミドpscM1に含まれる再構成MABL−1抗体一本鎖Fvの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:20に示す。
次に、哺乳動物細胞にて再構成MABL−1抗体一本鎖Fvを発現するベクターを作製するため、pscM1ベクターをPCR法により修飾した。そして得られたDNA断片をpCHO1発現ベクターに導入した。なお、本発現ベクターpCHO1は、DHFR−□E−rvH−PM1−f(WO92/19759参照)から、EcoRI及びSmaI消化により抗体遺伝子を削除し、EcoRI−NotI−BamHI Adaptor(宝酒造社製)を連結することにより構築したベクターである。
PCRに使用するプライマーは、前方プライマーとしてH鎖V領域のN末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つSalI制限酵素認識部位を有する配列番号:21に示すSal−VHSプライマー及び後方プライマーとして第一フレームワーク配列の最後をコードするDNAにハイブリダイズする配列番号:22に示すFRH1antiプライマーを用いた。
PCR溶液100μlは、10μlの10×PCR Buffer II、2mM MgCl2、0.16mM dNTPs、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold、0.4μMずつの各プライマー、及び8ngの鋳型DNA(pscM1)を含有し、95℃の初期温度にて9分間そして次に95℃にて1分間、60℃にて1分間及び72℃にて1分20秒間、この順序で加熱した。この温度サイクルを35回反復した後、反応混合物を更に72℃で7分間加熱した。
PCR生成物をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、SalI及びMboIIで消化し、N末端側再構成MABL−1抗体一本鎖FvをコードするDNA断片を得た。また、pscM1ベクターをMboII及びEcoRIで消化し、C末端側再構成MABL−1抗体一本鎖FvをコードするDNA断片を得た。そして、SalI−MboIIDNA断片及びMboII−EcoRI DNA断片をpCHO1−Igsベクターにクローニングした。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをpCHOM1と命名した(図6を参照)。なお、本発現ベクターpCHO1−Igsは、哺乳動物細胞分泌発現糸に適するマウスIgG1シグナル配列(Nature,332,323−327,1988)を含んでいる。本プラスミドpCHOM1に含まれる再構成MABL−1抗体一本鎖Fvの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:23に示す。
5.2 再構成MABL−2抗体一本鎖Fvの作製
再構成MABL−2抗体一本鎖Fvを前記5.1に従って作製した。第一PCRにおいては、pGEM−M1Hの代わりに再構成MABL−2抗体H鎖V領域をコードするプラスミドpGEM−M2H(実施例2を参照)、及びpGEM−M1Lの代わりに再構成MABL−2抗体L鎖V領域をコードするプラスミドpGEM−M2L(実施例2を参照)を使用し、再構成MABL−2抗体一本鎖Fvの正しいアミノ酸配列をコードするDNA断片を含むプラスミドpscM2を得た。本プラスミドpscM2に含まれる再構成MABL−2抗体一本鎖Fvの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:24に示す。
また、pscM2ベクターの修飾により再構成MABL−2抗体一本鎖Fvの正しいアミノ酸配列をコードするDNA断片を含む哺乳動物細胞発現用pCHOM2ベクターを得た。本プラスミドpCHOM2に含まれる再構成MABL−2抗体一本鎖Fvの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:25に示す。
5.3 COS7細胞への遺伝子導入
再構成MABL−2抗体一本鎖Fvの一過性発現を観察するため、pCHOM2ベクターをCOS7細胞において試験した。
pCHOM2ベクターを、Gene Pulser装置(BioRad社製)を用いてエレクトロポレーションによりCOS7細胞に形質転換した。DNA(10μg)と、PBS中1×107細胞/mlの0.8mlをキュベットに加え、1.5kV、25μFの容量にてパルスを与えた。
室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%のウシ胎児血清を含有するIMDM培養液(GIBCO BRL社製)に加えた。72時間培養の後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去して回収培養上清を得た。
5.4 COS7細胞培養上清中の再構成MABL−2抗体一本鎖Fvの検出
pCHOM2ベクターを遺伝子導入したCOS7細胞培養上清中における再構成MABL−2抗体一本鎖Fvをウェスタンブロッティング法により確認した。
pCHOM2ベクターを遺伝子導入したCOS7細胞培養上清及びコントロールとしてpCHO1ベクターを遺伝子導入したCOS7細胞培養上清についてSDS電気泳動を行い、REINFORCED NC膜(Schleicher & Schuell社製)に転写した。5%スキムミルク(森永乳業社製)にてブロッキングを行い、0.05%Tween20−PBSにて洗浄後、抗FLAG抗体(SIGMA社製)を加えた。室温にてインキュベーション及び洗浄の後、アルカリフォスファターゼ結合抗マウスIgG抗体(Zymed社製)を加え、室温にてインキュベーション及び洗浄後、基質溶液(Kirkegaard Perry Laboratories社製)を添加し、発色させた(図7)。
その結果、pCHOM2ベクター導入COS7細胞培養上清中にのみFLAGペプチド特異的なタンパク質が検出され、この培養上清中に再構成MABL−2抗体一本鎖Fvが分泌されていることが明らかとなった。
5.5 フローサイトメトリー
抗原への結合を測定するため、前記COS7細胞培養上清を用いてフローサイトメトリーを行った。ヒトIntegrin Associated Protein(IAP)を発現するマウス白血病細胞株L1210細胞、あるいはコントロールとしてpCOS1ベクターを形質転換したL1210細胞2×105個に、再構成MABL−2抗体一本鎖Fvを発現させたCOS7細胞の培養上清あるいはコントロールとしてpCHO1ベクターを形質転換したCOS7細胞の培養上清を加え、氷上にてインキュベーション及び洗浄の後、マウス抗FLAG抗体(SIGMA社製)を加えた。インキュベーション及び洗浄の後、FITC標識した抗マウスIgG抗体(BECTON DICKINSON社製)を加えた。再度インキュベーション及び洗浄の後、FACScan装置(BECTON DICKINSON社製)にて蛍光強度を測定した。
その結果、再構成MABL−2抗体一本鎖Fvは、ヒトIAPを発現するL1210細胞に特異的に結合したことにより、この再構成MABL−2抗体一本鎖FvがヒトIntegrin Associated Proteinに対するアフィニティーを有することが明らかとなった(図8〜11)。
5.6 Competitive ELISA
マウスモノクローナル抗体の抗原結合に対する阻害活性を指標に、再構成MABL−2抗体一本鎖Fvの抗原結合活性を測定した。
1μg/mlに調整した抗FLAG抗体を96ウェルプレートの各ウェルに加え、37℃にて2時間インキュベートした。洗浄後、1%BSA−PBSにてブロッキングを行った。室温にてインキュベート及び洗浄後、分泌型ヒトIAP抗原遺伝子(配列番号:26)を導入したCOS7細胞培養上清をPBSにて2倍希釈したものを各ウェルに加えた。室温にてインキュベート及び洗浄後、100ng/mlに調整したビオチン化MABL−2抗体50μl及び順次希釈した再構成MABL−2抗体一本鎖Fv発現COS7細胞培養上清50μlを混和したものを各ウェルに加えた。室温にてインキュベート及び洗浄後、アルカリフォスファターゼ結合ストレプトアビジン(Zymed社製)を加えた。室温にてインキュベート及び洗浄後、基質溶液(SIGMA社製)を加え、次に405nmでの吸光度を測定した。
その結果、再構成MABL−2抗体一本鎖Fv(MABL2−scFv)は、コントロールのpCHO1導入COS7細胞培養上清に比較して明らかに濃度依存的にマウスMABL−2抗体のヒトIAP抗原への結合を阻害した(図12)。このことから、再構成MABL−2抗体一本鎖Fvは、マウスモノクローナル抗体MABL−2のそれぞれのV領域の正しい構造を有することが示唆された。
5.7 in vitroでのアポトーシス誘起効果
ヒトIAPを遺伝子導入したL1210細胞、及びコントロールとしてpCOS1ベクターを遺伝子導入したL1210細胞、及びCCRF−CEM細胞を用い、再構成MABL−2抗体一本鎖Fvのアポトーシス誘起作用をAnnexin−V(BOEHRINGER MANNHEIM社製)染色により検討した。
各細胞1×105個に、再構成MABL−2抗体一本鎖Fv発現COS7細胞培養上清あるいはコントロールとしてpCHO1ベクター導入COS7細胞培養上清を終濃度50%で添加し、24時間培養した。その後、Annexin−V染色を行い、FACScan装置(BECTON DICKINSON社製)にて蛍光強度を測定した。
Annexin−V染色による解析の結果を図13〜18にそれぞれ示した。ここで、図の左下の領域にあるドットは生細胞を、右下の領域はアポトーシス初期の細胞を、右上の領域はアポトーシス後期の細胞を示す。その結果、再構成MABL−2抗体一本鎖Fv(MABL2−scFv)はL1210細胞においてヒトIAP抗原特異的に著しい細胞死を誘導した(図13〜16)。また、CCRF−CEM細胞においてもコントロールに比較して著しい細胞死を誘導した(図17〜18)。
5.8 CHO細胞におけるMABL−2抗体由来の一本鎖Fvポリペプチドの発現
MABL−2抗体由来の一本鎖Fv(ポリペプチド)の恒常的発現CHO細胞株を樹立するため、pCHOM2ベクターをCHO細胞に遺伝子導入した。
pCHOM2ベクターを、Gene Pulser装置(BioRad社製)を用いてエレクトロポレーションによりCHO細胞に形質転換した。DNA(10μg)とPBSに懸濁したCHO細胞(1×107細胞/ml)の0.7mlを混合したものをキュベットに加え、1.5kV、25μFの容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%のウシ胎児血清を含有する核酸不含α−MEM培地(GIBCO BRL社製)に加え培養した。得られたクローンについて、SDS−PAGEにて目的とするタンパク質の発現を確認し、発現量の高いクローンをMABL−2抗体由来の一本鎖Fvの産生細胞株として選択した。10nM methotrexate(SIGMA社製)を含む無血清培地CHO−S−SFM II(GIBCO BRL社製)にて培養後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去して回収培養上清を得た。
5.9 CHO細胞産生のMABL−2抗体由来の一本鎖Fvの精製
5.8で得た一本鎖Fv発現CHO産生株の培養上清を人工透析用カートリッジ(PAN130SF、旭メディカル)を用いて約20倍まで濃縮した。濃縮液は−20℃で保存し、精製時解凍して用いた。
CHO細胞培養上清から一本鎖Fvの精製は、Blue−sepharose、ハイドロキシアパタイト及びゲル濾過の三種のクロマトグラフィーにより行った。
(1)Blue−sepharoseカラムクロマトグラフィー
培養上清の濃縮液を20mM酢酸緩衝液(pH6.0)にて10倍希釈し、遠心分離(10000rpm×30分)により不溶物を除去した。上清を同緩衝液で平衡化したBlue−sepharoseカラム(20ml)に添加し、同緩衝液でカラムを洗浄後、同緩衝液中NaCl濃度を0.1、0.2、0.3、0.5及び1.0Mまで段階的に上げ、カラムに吸着した蛋白質を溶出した。SDS−PAGEで素通り及び各溶出画分を分析し、一本鎖Fvが確認された画分(0.1〜0.3M NaCl溶出画分)をプールし、Centriprep−10(アミコン)を用いて約20倍濃縮した。
(2)ハイドロキシアパタイト
(1)の濃縮液を10mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて10倍希釈し、ハイドロキシアパタイトカラム(20ml、BioRad)に添加した。60mlの10mMリン酸緩衝液(pH7.0)でカラムを洗浄後、リン酸緩衝液濃度を200mMまで直線的に上げ、カラムに吸着した蛋白質を溶出した(図19)。SDS−PAGEにより各画分を分析した結果、画分A及び画分Bに一本鎖Fvが確認された。
(3)ゲル濾過
(2)の画分A及びBをそれぞれCentriprep−10を用いて濃縮し、0.15M NaClを含む20mM酢酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したTSKgelG3000SWGカラム(21.5×600mm)に添加した。クロマトグラムを図20に示す。得られた画分をSDS−PAGEで分析した結果、いずれも主要ピーク(AI、BI)が目的の一本鎖Fvであり、ゲル濾過で分析した結果、画分Aでは見かけ上の分子量約36kD、画分Bでは同76kDに溶出された。精製した一本鎖Fv(AI、BI)を15%−SDS−ポリアクリルアミドゲルを用いて分析した。サンプルを還元剤添加、非添加で処理し、Laemmliの方法に準じて電気泳動を行い、泳動後蛋白質をクマシーブリリアントブルー染色した。図21に示すように、AI、BIいずれも還元剤の添加の有無に関わらず、見かけ上の分子量約35kDに単一バンドを与えた。以上の結果から、AIは一本鎖Fvのモノマーで、BIは一本鎖Fvの非共有結合性ダイマーと考えられる。画分AI及びBIをTSKgel G3000SWカラム(7.5×60mm)を用いたゲル濾過により分析した結果、画分AIはモノマーのピークのみ、画分BIはダイマーのピークのみ検出された(図22を参照)。また、ダイマー画分(画分BI)は、全一本鎖Fvの約4%であった。該ダイマー画分中のダイマーは、その90%以上が4℃で1ヶ月以上安定的に維持された。
5.10 大腸菌細胞でのMABL−2抗体由来の一本鎖Fvポリペプチド発現ベクターの構築
MABL−2抗体由来の一本鎖Fvを大腸菌菌体内にて効率的に発現するベクターを作製するため、pscM2ベクターをPCR法により修飾した。得られたDNA断片をpSCFVT7発現ベクターに導入した。
PCRに使用するプライマーは、前方プライマーとしてH鎖V領域のN末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つ開始コドン及びNdeI制限酵素認識部位を有する配列番号:27に示すNde−VHSm02プライマー及び後方プライマーとしてL鎖V領域のC末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つ2個の停止コドン及びEcoRI制限酵素認識部位を有する配列番号:28に示すVLASプライマーを用いた。なお、前方プライマーのNde−VHSm02は大腸菌菌体内にて効率的に発現するため、H鎖V領域のN末端をコードするDNAにハイブリダイズする部分に5カ所の点変異を含んでいる。
PCR溶液100μlは、10μlの10×PCR Buffer #1、1mM MgCl2、0.2mM dNTPs、5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(以上東洋紡社製)、1μMずつの各プライマー、及び100ngの鋳型DNA(pscM2)を含有し、98℃にて15秒間、65℃にて2秒間及び74℃にて30秒間、この順序で加熱した。この温度サイクルを25回反復した。
PCR生成物をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、NdeI及びEcoRIで消化し、得られたDNA断片をpSCFVT7ベクターにクローニングした。なお、本発現ベクターpSCFVT7はNdeI及びEcoRIで消化したことによりpelBシグナル配列が削除されている。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをpscM2DEm02と命名した(図23を参照のこと)。本プラスミドpscM2DEm02に含まれるMABL−2抗体由来の一本鎖Fvの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:29に示す。
5.11 大腸菌細胞におけるMABL−2抗体由来の一本鎖Fvポリペプチドの発現
MABL−2抗体由来の一本鎖Fvポリペプチドを発現する大腸菌株を得るため、pscM2DEm02ベクターを大腸菌BL21(DE3)pLysS(STRATAGENE社製)に形質転換した。得られたクローンについて、SDS−PAGEにて目的とするタンパク質の発現を検討し、発現量の高いクローンをMABL−2抗体由来の一本鎖Fvポリペプチドの産生株として選択した。
5.12 大腸菌細胞産生のMABL−2抗体由来の一本鎖Fvポリペプチドの精製
形質転換して得られた大腸菌のシングルコロニーをLB培地3mlにて28℃で7時間培養し、これを70mlのLB培地に植え継ぎ、28℃にて一夜培養を行った。このpre−cultureを7LのLB培地に植え継ぎ、ジャーファーメンターを用いて28℃、攪拌速度300rpmにて培養した。O.D.=1.5のときに1mM IPTGで誘導をかけ、その後3時間培養を行った。
培養液を遠心分離(10000×g、10分)し、沈殿として回収した菌体に5mM EDTA、0.1M NaCl、1%Triton X−100を含む50mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)を加え、超音波(out put:4、duty cycle:70%、1分×10回)により菌体を破砕した。この懸濁液を遠心分離(12000×g、10分)にかけ、沈殿として回収した封入体に5mM EDTA、0.1M NaCl、4%Triton X−100を含む50mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)を加え、再度超音波処理(out put:4、duty cycle:50%、30秒×2)を行い、遠心分離(12000×g、10分)により目的蛋白質を沈殿として回収し、上清にくる夾雑蛋白質を除去した。
目的蛋白質を含んだ封入体を6M Urea、5mM EDTA、0.1M NaClを含む50mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解し、4M Urea、5mM EDTA、0.1M NaCl、10mM メルカプトエタノールを含む50mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したSephacrylS−300(5×90cm、AMERSHAM PHARMACIA社製)ゲル濾過カラムに、流速5ml/分で添加し、会合している高分子量の一本鎖Fvを除去した。各画分をSDS−PAGEで分析し、純度の高い画分について、O.D280=0.25になるようにゲル濾過で用いた溶媒で希釈後、5mM EDTA、0.1M NaCl、0.5M Arg、2mM 還元型グルタチオン、0.2mM 酸化型グルタチオンを含む50mM トリス塩酸緩衝液(pH8.0)に対して透析を3回行うことにより、巻き戻し操作を行った。さらに0.15M NaClを含む20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に対して3回透析し、溶媒交換を行った。
わずかに含まれる分子間でS−S結合で架橋された高分子を分離除去するため、0.15M NaClを含む20mM 酢酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したSuperdex 200pg(2.6×60cm、AMERSHAM PHARMACIA社製)ゲル濾過カラムに添加した。図24に示すように、高分子量の会合体と考えられるブロードなピークのあと、主要ピークとサブピークの2つのピークが検出された。SDS−PAGEによる分析(図21参照)及びゲル濾過の溶出位置から、主要ピークは一本鎖Fvポリペプチドのモノマーであり、サブピークは非共有結合性のダイマーと考えられる。なお、形成された非共有結合性のダイマーは、全一本鎖Fvポリペプチドの約4%であった。
5.13 MABL−2抗体由来の精製一本鎖Fvポリペプチドのin vitroでのアポトーシス誘起効果
ヒトIAPを遺伝子導入したL1210細胞(hIAP/L1210)を用い、CHO細胞及び大腸菌細胞産生のMABL−2抗体由来の一本鎖Fvポリペプチド(MABL2−scFv)のアポトーシス誘起作用を、次の2つのプロトコールにてAnnexin−V(BOEHRINGER MANNHEIM社製)染色により検討した。
第一のプロトコールは、hIAP/L1210細胞5×104個に、抗体試料を終濃度3μg/mlで添加し、24時間培養した。抗体試料として、実施例5.9で得たCHO細胞由来MABL2一本鎖Fvのモノマー及びダイマー、さらに実施例5.12で得た大腸菌細胞由来の同モノマー及びダイマー、そしてコントロールとしてマウスIgG抗体について検討した。培養後、Annexin−V染色を行い、FACScan装置(BECTON DICKINSON社製)にて蛍光強度を測定した。
また、第二のプロトコールは、hIAP/L1210細胞5×104個に、抗体試料を終濃度3μg/mlで添加し、2時間培養後に抗FLAG抗体(SIGMA社製)を終濃度15μg/mlで添加し、更に22時間培養した。抗体試料として、5.9で得たCHO細胞由来MABL2一本鎖Fvのモノマー及びコントロールとしてマウスIgG抗体について検討した。培養後、Annexin−V染色を行い、FACScan装置にて蛍光強度を測定した。
Annexin−V染色による解析の結果を図25〜31にそれぞれ示した。その結果、CHO細胞及び大腸菌細胞産生のMABL−2抗体由来一本鎖Fvポリペプチドのダイマーはコントロール(図25)と比較して著しい細胞死を誘導した(図26、27)が、CHO細胞及び大腸菌細胞産生の一本鎖Fvポリペプチドのモノマーのアポトーシス誘導作用は認められなかった(図28、29)。また、抗FLAG抗体の添加により、CHO細胞産生のMABL−2抗体由来一本鎖Fvポリペプチドのモノマーはコントロール(図30)と比較して著しい細胞死を誘導した(図31)。
5.14 scFv/CHOポリペプチドのモノマー及びダイマーのヒト骨髄腫マウスモデルに対する抗腫瘍効果
(1)マウス血清ヒトIgG定量法
マウス血清中における、ヒト骨髄腫細胞が産生するヒトIgG(Mタンパク質)の定量は、以下のELISAで行った。0.1%重炭酸緩衝液(pH9.6)で1μg/mlに希釈したヤギ抗ヒトIgG抗体(BIOSOURCE社製、Lot#7902)100μlを96ウェルプレート(Nunc社製)に加え、4℃で一晩インキュベーションし、抗体を固相化した。ブロッキングの後、段階希釈したマウス血清あるいは標品としてヒトIgG(Cappel社製、Lot#00915)100μlを添加し、室温にて2時間インキュベーションした。洗浄後、5000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG抗体(BIOSOURCE社製、Lot#6202)100μlを加え、室温にて1時間インキュベーションした。洗浄後、基質溶液を加え、インキュベーションの後、MICROPLATE READER Model 3550(BioRad社製)を用いて405nmの吸光度を測定し、標品のヒトIgGの吸光度より得られた検量線から、マウス血清中のヒトIgG(Mタンパク質)濃度を算出した。
(2)投与抗体の調製
scFv/CHOポリペプチドのモノマー及びダイマーは、投与当日、濾過滅菌したPBS(−)を用いて、それぞれ0.4mg/ml、0.25mg/mlになるように調製し、投与試料とした。
(3)ヒト骨髄腫マウスモデルの作製
ヒト骨髄腫マウスモデルは以下のように作製した。SCIDマウス(日本クレア)を用いてin vivo継代したKPMM2細胞(特開平7−236475号公報)を10%ウシ胎児血清(GIBCO BRL社製)を含むRPMI1640培地(GIBCO BRL社製)で3×107個/mlになるように調製した。あらかじめ前日抗アシアロGM1抗体(和光純薬社製、1バイアルを5mlで溶解)100μlを皮下投与したSCIDマウス(オス、6週齢)(日本クレア)に上記KPMM2細胞懸濁液200μl(6×106個/マウス)を尾静脈より注入した。
(4)抗体投与
(3)で作製したヒト骨髄腫マウスモデルに対し、KPMM2細胞移植後3日目より、1日2回、3日間、上記(2)で調製した投与試料、モノマーは250μl、ダイマーは400μlを、尾静脈より投与した。対照として、濾過滅菌したPBS(−)を同様に1日2回、3日間、200μl、尾静脈より投与した。両群とも、1群7匹で行った。
(5)scFv/CHOポリペプチドのモノマー及びダイマーのヒト骨髄腫移植マウスモデルに対する抗腫瘍効果の評価
scFv/CHOポリペプチドのモノマー及びダイマーのヒト骨髄腫マウスモデルの抗腫瘍効果については、当該骨髄腫細胞が産生するヒトIgG(Mタンパク質)のマウス血清中の量の変化、及び生存期間で評価した。マウス血清中のヒトIgG量の変化については、KPMM2細胞移植後24日目に血清を採取し、上記(1)で述べたELISAを用いてヒトIgG量を測定した。その結果、PBS(−)投与群では、血清ヒトIgG(Mタンパク質)量が約8500μg/mlまで上昇しているのに対し、scFv/CHOダイマー投与群では対照群の1/10以下と顕著に低値であり、scFv/CHOダイマーがKPMM2細胞の増殖を非常に強く抑制していることが示された(図32)。一方、生存期間についても図33に示すとおり、scFv/CHOダイマー投与群ではPBS(−)投与群と比較して顕著な生存期間の延長が認められた。
以上より、scFv/CHOダイマーがヒト骨髄腫マウスモデルに対して、抗腫瘍効果を有することが示された。本発明の改変抗体であるscFv/CHOダイマーの抗腫瘍効果は、当該改変抗体が有するアポトーシス誘起作用に基づくと考えられる。
5.15 赤血球凝集試験
赤血球凝集試験及び赤血球凝集の判定法は、続生化学実験講座の免疫生化学研究法(日本生化学会編、東京化学同人)に準じて実施した。
健常人の血液をヘパリン処理した注射筒により採血し、PBS(−)により3回洗浄した後、PBS(−)にて最終濃度が2%の赤血球浮遊液を作製した。検査サンプルは、対照としてマウスIgG(Zymed社製)を用い、MABL−2抗体、CHO細胞産生の一本鎖Fvポリペプチドモノマー、ダイマー、大腸菌産生の一本鎖Fvポリペプチドのモノマーとダイマーを使用した。赤血球の凝集作用を検討するために、ファルコン社製のU底の96ウェルプレートを使用し、上記の抗体サンプルを50μl/ウェル添加した中に、2%赤血球浮遊液をさらに50μl添加、混和し、37℃で2時間インキュベーション後、4℃で一昼夜保存し、凝集を判定した。また、対照として、PBS(−)を50μl/ウェル添加し、抗体サンプルと同様にして凝集試験を行った。抗体の最終濃度は、マウスIgG、MABL−2抗体は、0.01、0.1、1、10、100μg/ml、一本鎖Fvは、0.004、0.04、0.4、4、40、80μg/mlで大腸菌産生の一本鎖Fvポリペプチドのダイマーのみさらに160μg/mlの用量を設定した。その結果は、下記の表2に示す通り、MABL−2抗体では、0.1μg/ml以上で赤血球凝集が見られたのに対し、一本鎖Fvポリペプチドではモノマー、ダイマー共に赤血球凝集は認められなかった。
実施例6 2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V領域を含む改変抗体sc(Fv)2及び種々の長さのペプチドリンカーを有するMABL−2抗体scFv
6.1 MABL−2抗体sc(Fv) 2 発現プラスミドの構築
MABL−2抗体由来の2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V領域を含む改変抗体[sc(Fv)2]を発現するプラスミドを作製するため、前述pCHOM2(MABL−2抗体由来のscFvをコードするDNAを含む)を以下に示す通りPCR法により修飾し、得られたDNA断片をpCHOM2に導入した。
PCRに使用するプライマーは、センスプライマーとしてEF1αをコードするDNAにハイブリダイズするEF1プライマー(配列番号:30)を使用し、アンチセンスプライマーとしてL鎖V領域のC末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つリンカー領域をコードするDNA配列(配列番号:19)及びSalI制限酵素認識部位を有するVLLASプライマー(配列番号:31)を使用した。
PCR溶液100μlは、10μlの10×PCR Buffer #1、1mM MgCl2、0.2mM dNTPs(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)、5ユニットのKOD DNAポリメラーゼ(以上東洋紡社製)、1μMの各プライマー、及び100ngの鋳型DNA(pCHOM2)を含有する。PCR溶液を94℃にて30秒間、50℃にて30秒間及び74℃にて1分間、この順序で加熱した。この温度サイクルを30回反復した。
PCR生成物をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)を用いて精製し、SalIで消化し、得られたDNA断片をpBluescript KS+ベクター(東洋紡社製)にクローニングした。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをSalIで消化し、得られたDNA断片をSalIで消化したpCHOM2にRapid DNA Ligation Kit(BOEHRINGER MANNHEIM社製)を用いて連結した。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをpCHOM2(Fv)2と命名した(図34を参照)。本プラスミドpCHOM2(Fv)2に含まれるMABL−2抗体sc(Fv)2領域の塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:32に示す。
6.2 種々の長さのペプチドリンカーを有するMABL−2抗体scFv発現プラスミドの作製
種々の長さのペプチドリンカーを有し、そして[H鎖]−[L鎖](以下HL)、[L鎖]−[H鎖](以下LH)となるようにV領域を連結したscFvを、MABL−2由来のH鎖及びL鎖cDNAを鋳型として以下の通りに作製した。
HLタイプのscFvを作製するために、まずpCHOM2(Fv)2を鋳型としてCFHL−F1(配列番号:33)及びCFHL−R2(配列番号:34)プライマー、CFHL−F2(配列番号:35)及びCFHL−R1プライマー(配列番号:036)によりKODポリメラーゼにて94℃30秒、60℃30秒、72℃1分間の反応を30回繰り返すPCR反応を行い、5’側にリーダー配列を含むH鎖、及び3’側にFLAG配列を含むL鎖のcDNA遺伝子を作製した。得られたH鎖及びL鎖cDNAを鋳型として混合し、KODポリメラーゼにて94℃30秒、60℃30秒、72℃1分間の反応を5回繰り返すPCR反応を行い、CFHL−F1及びCFHL−R1プライマーを加えてさらに30サイクル反応することによりリンカーを含まないHL−0タイプのcDNAを作製した。
LHタイプのscFvを作製するために、まずMABL−2のL鎖及びH鎖V領域のcDNAを含むプラスミドpGEM−M2L及びpGEM−M2H(特願平11−63557参照)を鋳型として、それぞれT7(配列番号:37)及びCFLH−R2(配列番号:38)プライマー、CFLH−F2(配列番号:39)及びCFLH−R1(配列番号:40)プライマーを用いてKODポリメラーゼ(東洋紡)にて94℃30秒、60℃30秒、72℃1分間の反応を30回繰り返すPCR反応を行い、5’側にリーダー配列を含むL鎖、及び3’側にFLAG配列を含むH鎖のcDNA遺伝子を作製した。得られたL鎖及びH鎖cDNAを鋳型として混合し、KODポリメラーゼにて94℃30秒、60℃30秒、72℃1分間の反応を5回繰り返すPCR反応を行い、T7及びCFLH−R1プライマーを加えてさらに30サイクル反応した。この反応産物を鋳型とし、CFLH−F4(配列番号:41)及びCFLH−R1プライマーを用いて94℃30秒、60℃30秒、72℃1分間の反応を30回繰り返すPCR反応を行うことによりリンカーを含まないLH−0タイプのcDNAを作製した。
こうして作製したLH−0、HL−0タイプのcDNAを制限酵素EcoRI、BamHI(宝酒造)処理し、XhoI制限酵素切断部位を含まない哺乳動物発現プラスミドINPEP4にLigation High(東洋紡)を用いて導入し、Competent E.coli JM109(ニッポンジーン)を形質転換した。形質転換した大腸菌よりQIAGEN Plasmid Maxi Kit(QIAGEN)にてプラスミドを精製した。こうしてプラスミドpCF2LH−0及びpCF2HL−0を作製した。
次に、リンカーサイズの異なる発現プラスミドを作製するためにHLタイプではpCF2HL−0を鋳型としてCFHL−X3(配列番号:42)、CFHL−X4(配列番号:43)、CFHL−X5(配列番号:44)、CFHL−X6(配列番号:45)、又はCFHL−X7(配列番号:46)のセンスプライマー及びアンチセンスプライマーとしてベクター配列に相補的なBGH−1(配列番号:47)プライマーを用いてKODポリメラーゼにて94℃30秒、60℃30秒、72℃1分間の反応を30回繰り返すPCR反応を行い、得られた反応産物を制限酵素XhoI、BamHI(宝酒造)にて処理した。得られた断片をpCF2HL−0のXhoI、BamHIサイトにLigation High(東洋紡)を用いて導入し、Competent E.coli JM109を形質転換した。形質転換した大腸菌よりQIAGEN Plasmid Maxi Kitにてプラスミドを精製した。こうして、発現プラスミドpCF2HL−3、pCF2HL−4、pCF2HL−5、pCF2HL−6及びpCF2HL−7を作製した。更にCOS7細胞での一過的発現に用いる発現プラスミドを作製するために、pCF2HL−0、pCF2HL−3、pCF2HL−4、pCF2HL−5、pCF2HL−6及びpCF2HL−7を制限酵素EcoRI及びBamHI(宝酒造)にて処理し、約800bpの断片をアガロースゲル電気泳動によるゲルからの回収により精製した。得られた断片を哺乳動物細胞発現プラスミドpCOS1のEcoRI及びBamHIサイトにLigation Highを用いて導入し、Competent E.coli DH5α(東洋紡)を形質転換した。形質転換した大腸菌よりQIAGEN Plasmid Maxi Kitにてプラスミドを精製した。こうして、発現プラスミドCF2HL−0/pCOS1、CF2HL−3/pCOS1、CF2HL−4/pCOS1、CF2HL−5/pCOS1、CF2HL−6/pCOS1及びCF2HL−7/pCOS1を作製した。代表的な例として、プラスミドCF2HL−0/pCOS1の構造を図35に示し、これに含まれるMABL2−scFv<HL−0>の塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:48に示す。また各プラスミドのリンカー部分の塩基配列及びアミノ酸配列を図36に示す。
また、リンカーサイズの異なるLHタイプの発現プラスミドを作製するため、pCF2LH−0を鋳型としてCFLH−X3(配列番号:49)、CFLH−X4(配列番号:50)、CFLH−X5(配列番号:51)、CFLH−X6(配列番号:52)又はCFLH−X7(配列番号:53)のセンスプライマー及びアンチセンスプライマーとしてベクター配列に相補的なBGH−1プライマーを用いてKODポリメラーゼにて94℃30秒、60℃30秒、72℃1分間の反応を30回繰り返すPCR反応を行い、得られた反応産物を制限酵素XhoI、BamHIにて処理した。得られた断片をpCF2LH−0のXhoI、BamHIサイトにLigation Highを用いて導入し、Competent E.coli DH5α(東洋紡)を形質転換した。形質転換した大腸菌よりQIAGEN Plasmid Maxi Kitにてプラスミドを精製した。こうして、発現プラスミドpCF2LH−3、pCF2LH−4、pCF2LH−5、pCF2LH−6及びpCF2LH−7を作製した。更にCOS7細胞での一過的発現に用いる発現プラスミドを作製するために、pCF2LH−0、pCF2LH−3、pCF2LH−4、pCF2LH−5、pCF2LH−6及びpCF2LH−7を制限酵素EcoRI及びBamHI(宝酒造)にて処理し、約800bpの断片をアガロースゲル電気泳動によるゲルからの回収により精製した。得られた断片を哺乳動物細胞発現プラスミドpCOS1のEcoRI及びBamHIサイトにLigation Highを用いて導入し、Competent E.coli DH5α(東洋紡)を形質転換した。形質転換した大腸菌よりQIAGEN Plasmid Maxi Kitにてプラスミドを精製した。こうして、発現プラスミドCF2LH−0/pCOS1、CF2LH−3/pCOS1、CF2LH−4/pCOS1、CF2LH−5/pCOS1、CF2LH−6/pCOS1及びCF2LH−7/pCOS1を作製した。代表的な例として、プラスミドCF2LH−0/pCOS1の構造を図37に示し、これに含まれるMABL2−scFv<LH−0>の塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:54に示す。また各プラスミドのリンカー部分の塩基配列及びアミノ酸配列を図38に示す。
6.3 COS7細胞におけるscFv及びsc(Fv) 2 の発現
(1)有血清培地での培養上清の調製
HLタイプ、LHタイプscFv及びsc(Fv)2の発現のために、COS7細胞(JCRB9127、ヒューマンサイエンス振興財団)での一過的発現を行った。COS7細胞は10%牛胎児血清(IIyClone)を含むDMEM培地(GIBCO BRL社製)にて、37℃の炭酸ガス恒温槽中で経代培養した。
6.2で構築したCF2HL−0,3〜7/pCOS1、もしくはCF2LH−0,3〜7/pCOS1又はpCHOM2(Fv)2ベクターを、Gene Pulser装置(BioRad社製)を用いてエレクトロポレーションによりCOS7細胞にトランスフェクションした。
DNA(10μg)とDMEM(10%FBS,5mM BES(SIGMA社))培地中2×107細胞/mlの0.25mlをキュベットに加え、10分間静置の後に0.17kV、950μFの容量にてパルスを与えた。10分間静置の後、エレクトロポレーションされた細胞をDMEM(10%FBS)培地に混合し、75cm3フラスコに加えた。72時間培養後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去し、更に0.22μmボトルトップフィルター(FALCON)にて濾過し、これを培養上清(CM)とした。
(2)無血清培地での培養上清の調製
上記(1)と同様の方法でトランスフェクションした細胞をDMEM(10%FBS)培地に加え75cm3フラスコにて一夜培養した後、培養上清を捨て、PBSにて洗浄後、CHO−S−SFM II培地(GIBCO BRL社製)を添加した。72時間培養後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去し、更に0.22μmボトルトップフィルターにて濾過し、CMを得た。
6.4 COS7 CM中のscFv及びsc(Fv) 2 の検出
前記6.3(2)で調製したCOS7のCM中における種々のMABL2−scFv及びsc(Fv)2のポリペプチドを下記の通りにウェスタンブロッティング法により検出した。
各COS7 CMについてについてSDS−PAGEを行い、REINFORCED NC膜(Schleicher & Schuell社製)に転写した。5%スキムミルク(森永乳業社製)にてブロッキングを行い、TBSにて洗浄後、抗FLAG抗体(SIGMA社製)を加えた。室温にてインキュベーション及び洗浄の後、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(Jackson Immuno Research社製)を加え、室温にてインキュベーション及び洗浄後、基質溶液を添加し、発色させた(図39)。
6.5 フローサイトメトリー
MABL2−scFv及びsc(Fv)2のヒトIntegrin Assosiated Protein(IAP)抗原への結合を測定するため、前記6.3(1)にて調製したCOS7細胞培養上清を用いてフローサイトメトリーを行った。ヒトIAPを発現するマウス白血病細胞株L1210細胞2×105個に、実施例6.3(1)で得られた培養上清あるいは対照としてCOS7細胞の培養上清を加え、氷上にてインキュベーション及び洗浄の後、10μg/mlのマウス抗FLAG抗体(SIGMA社製)を加えた。インキュベーション及び洗浄の後、FITC標識抗マウスIgG抗体(BECTON DICKINSON社製)を加えた。再度インキュベーション及び洗浄の後、FACScan装置(BECTON DICKINSON社製)にて蛍光強度を測定した。その結果、各COS7培養上清中の種々の長さのペプチドリンカーを有するMABL2−scFv及びsc(Fv)2は、ヒトIAPに対して高い親和性を有することが示された(図40a及びb)。
6.6 in vitroでのアポトーシス誘起効果
前記1.3(1)にて調製したCOS7細胞培養上清について、ヒトIAPを遺伝子導入したL1210細胞(hIAP/L1210)に対するアポトーシス誘導作用をAnnexin−V(BOEHRINGER MANNHEIM社製)染色により検討した。
hIAP/L1210細胞5×104個に、各ベクターを形質転換したCOS7細胞培養上清あるいはコントロールとしてCOS7細胞培養上清を終濃度10%で添加し、24時間培養した。その後、Annexin−V/PI染色を行い、FACScan装置(BECTON DICKINSON社製)にて蛍光強度を測定した。その結果、COS7 CM中のscFv<HL3,4,6,7、LH3,4,6,7>及びsc(Fv)2はhIAP/L1210細胞に対して顕著な細胞死を誘導した。得られた結果を図41にそれぞれ示す。
6.7 MABL2−scFv及びsc(Fv) 2 のCHO細胞用発現ベクター の構築
前記MABL2−scFv及びsc(Fv)2を培養上清から精製することを目的として、これらをCHO細胞にて発現させるための発現ベクターを以下のように構築した。
前記1.2にて調製したpCF2HL−0,3〜7及びpCF2LH−0,3〜7のEcoRI−BamHI断片を、CHO細胞用発現ベクターpCHO1のEcoRI及びBamHI部位にLigation Highを用いて導入し、Competent E.coli DH5αを形質転換した。形質転換した大腸菌よりQIAGEN Plasmid Midi Kit(QIAGEN)にてプラスミドを精製した。このようにして発現プラスミドpCHOM2HL−0,3〜7及びpCHOM2LH−0,3〜7を作製した。
6.8 MABL2−scFv<HL−0,3〜7>、MABL2−scFv<LH−0,3〜7>及びsc(Fv) 2 発現CHO細胞の作製並びにその培養上清の調製
前記1.7にて構築した発現プラスミドpCHOM2HL−0,3〜7及びpCHOM2LH−0,3〜7並びにpCHOM2(Fv)2ベクターを以下の通りにCHO細胞に形質転換し、各改変抗体を恒常的に発現するCHO細胞を作製した。その代表的な例としてMABL2−scFv<HL−5>、sc(Fv)2を恒常的に発現するCHO細胞の作製を下記に示す。
発現プラスミドpCHOM2HL−5及びpCHOM2(Fv)2を制限酵素PvuIにて消化して直鎖状にし、これらをGene Pulser装置(BioRad社製)を用いてエレクトロポレーションによりCHO細胞にトランスフェクションした。DNA(10μg)と、PBS中1×107細胞/mlの0.75mlをキュベットに加え、1.5kV、25μFの容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%のウシ胎児血清を含有する核酸含有α−MEM培地(GIBCO BRL社製)に加え培養した。一夜培養後、培養上清を除去し、PBSにてリンスした後、10%のウシ胎児血清を含有する核酸不含α−MEM培地(GIBCO BRL社製)を加え培養した。約2週間培養後、methotrexate(SIGMA社製)を終濃度10nMで含有する培地で更に培養し、その後50nM、そして100nMと濃度を順次上げて培養を続けた。こうして得られた細胞をローラーボトル中で無血清培地CHO−S−SFM II(GIBCO BRL社製)にて培養後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去し、更に0.20μmフィルターにて濾過し、それぞれのCMを得た。
同様にして、MABL2−scFv<HL−0,3,4,6,7>及び<LH−0,3,4,5,6,7>を恒常的に発現するCHO細胞及びそれらのCMを得た。
6.9 MABL2−scFv<HL−5>のダイマー及びsc(Fv) 2 の精製
下記の2種類の精製法により前記6.8で得られたCMからMABL2−scFv<HL−5>及びsc(Fv)2の精製を行った。
<精製法1> HL−5及びsc(Fv)2を、そのポリペプチドのC末端のFlag配列を利用した抗Flag抗体アフィニティカラムクロマトグラフィー及びゲル濾過を用いて精製した。150mM NaClを含む50mM Tris塩酸緩衝液、pH7.5(TBS)で平衡化した抗Flag M2 Affinity gel(SIGMA)で作成したカラム(7.9ml)に前記6.8で得られたCM(1L)を添加し、TBSでカラムを洗浄後、0.1Mグリシン塩酸緩衝液、pH3.5でscFvをカラムから溶出させた。得られた画分をSDS/PAGEで分析し、scFvの溶出を確認した。scFv画分を終濃度が0.01%となるようにTween20を加え、Centricon−10(MILLIPORE)で濃縮した。濃縮液を150mM NaCl及び0.01%Tween20を含む20mM 酢酸緩衝液、pH6.0で平衡化したTSKgelG3000SWカラム(7.5×600mm)にかけた。流速0.4ml/minでscFvは280nmの吸収で検出した。HL−5は主要ピークとしてダイマーの位置に、sc(Fv)2はモノマーの位置にそれぞれ溶出された。
<精製法2> HL−5及びsc(Fv)2をイオン交換クロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイト及びゲル濾過の三工程で精製した。イオン交換クロマトグラフィーでは、HL−5ではQ Sepharose fast flowカラム(ファルマシア)をsc(Fv)2ではSP−sepharose fast flowカラムを用い、第二工程以降はHL−5とsc(Fv)2で同じ条件を用いた。
(第一工程)HL−5
HL−5のCMは、0.02%Tween20を含む20mM Tris塩酸緩衝液、pH9.0で2倍希釈した後に、1M TrisでpHを9.0に調整した。この後、0.02%Tween20を含む20mM Tris塩酸緩衝液、pH8.5で平衡化したQ Sepharose fast flowカラムにかけ、同緩衝液中0.1Mから0.55MまでのNaClの直線濃度勾配でカラムに吸着したポリペプチドを溶出した。得られた画分をSDS/PAGEで分析し、HL−5を含む画分を集め、第二工程のハイドロキシアパタイトにかけた。
(第一工程)sc(Fv)2
sc(Fv)2のCMは、0.02%Tween20を含む20mM 酢酸緩衝液、pH5.5で2倍希釈した後に、1M酢酸でpHを5.5に調整した。0.02%Tween20を含む20mM 酢酸緩衝液、pH5.5で平衡化したSP−Sepahrose fast flowカラムにかけ、同緩衝液中、NaCl濃度を0から0.5Mまで直線的に上げ、カラムに吸着したポリペプチドを溶出した。得られた画分をSDS/PAGEで分析し、sc(Fv)2を含む画分を集め、第二工程のハイドロキシアパタイトにかけた。
(第二工程)HL−5及びsc(Fv)2のハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー
第一工程で得られたHL−5画分及びsc(Fv)2画分をそれぞれ0.02%Tween20を含む10mM リン酸緩衝液、pH7.0で平衡化したハイドロキシアパタイトカラム(BioRad、タイプI)に添加し、同緩衝液でカラムを洗浄後、リン酸緩衝液濃度を0.5Mまで直線的に上げ、カラムに吸着したポリペプチドを溶出した。各画分をSDS/PAGEで分析し、所望のポリペプチドが含まれる画分を集めた。
(第三工程)HL−5及びsc(Fv)2のゲル濾過
第二工程で得られた各画分をそれぞれCentriprep−10(MILLIPORE)で濃縮し、0.02%Tween20及び0.15M NaClを含む20mM 酢酸緩衝液、pH6.0で平衡化したSuperdex200カラム(2.6×60cm、ファルマシア)にかけた。HL−5はダイマーに位置に、sc(Fv)HL−5及びsc(Fv)2はモノマーの位置にそれぞれ主要ピークとして溶出された。
いずれの精製法においても、HL−5モノマーは殆ど検出されなかったことから、一本鎖Fvのリンカーのアミノ酸残基数が5個程度であれば、効率的に一本鎖Fvのダイマーが形成できることが判明した。HL−5ダイマーおよびsc(Fv)2はいずれも精製された後も4℃で1ヶ月間安定的に維持された。
6.10 精製scFv<HL−5>のダイマー及びsc(Fv) 2 の抗原結合活性評価
精製されたMABL2−scFv<HL5>のダイマー及びsc(Fv)2のヒトIntegrin Assosiated Protein(IAP)抗原への結合を測定するため、フローサイトメトリーを行った。ヒトIAPを発現するマウス白血病細胞株L1210細胞(hIAP/L1210)又は対照としてpCOS1ベクターをトランスフェクションしたL1210細胞(pCOS1/L1210)2×105個に、10μg/mlの精製MABL2−scFv<HL5>のダイマー、MABL2−sc(Fv)2、陽性対照としてモノクローナル抗体MABL−2、陰性対照としてマウスIgG(Zymed社製)を加え、氷上にてインキュベーション及び洗浄の後、10μg/mlのマウス抗FLAG抗体(SIGMA社製)を加えた。インキュベーション及び洗浄の後、FITC標識抗マウスIgG抗体(BECTON DICKINSON社製)を加えた。再度インキュベーション及び洗浄の後、FACScan装置(BECTON DICKINSON社製)にて蛍光強度を測定した。
その結果、精製MABL2−scFv<HL5>のダイマー及びMABL2−sc(Fv)2はhIAP/L1210細胞に特異的に結合したことにより、scFv<HL5>のダイマー及びsc(Fv)2がヒトIAPに対して高い親和性を有することが示された(図42)。
6.11 精製scFv<HL−5>のダイマー及びsc(Fv) 2 のin vitroアポトーシス誘起効果
精製したMABL2−scFv<HL5>のダイマー及びsc(Fv)2について、ヒトIAPを遺伝子導入したL1210細胞(hIAP/L1210)及びヒト白血病細胞株CCRF−CEMに対するアポトーシス誘導作用をAnnexin−V(BOEHRINGER MANNHEIM社製)染色により検討した。
hIAP/L1210細胞5×104個あるいはCCRF−CEM細胞1×105個に、精製MABL2−scFv<HL5>のダイマー、MABL2−sc(Fv)2、陽性対照としてモノクローナル抗体MABL−2、陰性対照としてマウスIgGを様々な濃度で添加し、24時間培養した。その後、Annexin−V染色を行い、FACScan装置(BECTON DICKINSON社製)にて蛍光強度を測定した。その結果、MABL2−scFv<HL5>のダイマー及びMABL2−sc(Fv)2はhIAP/L1210、CCRF−CEMの両細胞に対して濃度依存的に細胞死を誘導した(図43)。この結果、MABL2−scFv<HL5>のダイマー及びMABL2−sc(Fv)2は、もとのモノクローナル抗体MABL−2と比較して改善されたアポトーシス誘導作用を有することが示された。
6.12 精製scFv<HL−5>のダイマー及びsc(Fv) 2 の赤血球凝集試験
実施例5.15に従って、種々の濃度の精製したscFv<HL−5>のダイマー及びsc(Fv)2の血液凝集試験を実施した。
モノクローナル抗体MABL−2(陽性対照)では血液凝集が起こるのに対して、一本鎖抗体のMABL2−sc(Fv)2及びMABL2−sc(Fv)<HL5>は凝集しなかった。また、MABL−2抗体を用いた緩衝液の差もほとんどみられなかった。その結果を下記の表3に示す。
6.13 精製scFv<HL−5>のダイマー及びsc(Fv) 2 のヒト骨髄腫マウスモデルに対する抗腫瘍効果
実施例6.8及び6.9にて作製、精製したscFv<HL−5>のダイマー及びsc(Fv)2について、その抗腫瘍効果を試験した。具体的には実施例5.14(3)で作製したヒト骨髄腫マウスモデルを用いて、マウス血清中における、ヒト骨髄腫細胞が産生するMタンパク質をELISAにより定量し、併せてマウスの生存日数を記録した。そして、血清中のMタンパク質量の変化および生存日数により、scFv<HL−5>のダイマー及びsc(Fv)2の抗腫瘍効果を評価した。
なお、本試験においてHL−5及びsc(Fv)2は、vehicle(150mM NaCl,0.02%Tween及び20mM 酢酸緩衝液,pH6.0)中の0.01、0.1又は1mg/mlの溶液として、投与量が0.1、1または10mg/kgになるようにマウスに投与した。また、対照はvehicleのみを投与した。
ヒト骨髄腫細胞移植後26日目に血清を採取し、血清中のMタンパク質量をELISAにより実施例5.14に従って測定した。その結果、HL−5投与群及びダイマー及びsc(Fv)2投与群共に、血清中のMタンパク質量が投与量依存的に減少していた(図44を参照)。また、その生存期間については、HL−5投与群(図45)及びsc(Fv)2投与群(図46)共に対照(vehicle投与群)と比較して有意な生存期間の延長が観察された。これらの結果は、本発明のHL−5及びsc(Fv)2がインビボにおいても優れた抗腫瘍作用を有することを示している。
実施例7 ヒトMPLに対するヒト抗体12B5のH鎖V領域及びL鎖V領域を含む一本鎖Fv
ヒトMPLに対するヒトモノクローナル抗体12B5のV領域をコードするDNAを次のようにして構築した。
7.1 12B5H鎖V領域をコードする遺伝子の構築
ヒトMPLに結合するヒト抗体12B5H鎖V領域をコードする遺伝子は、該遺伝子の塩基配列(配列番号55)を用いて、その5’末端にヒト抗体遺伝子由来のリーダー配列(配列番号56)(Eur.J.Immunol.1996;26:63−69)を連結させることで設計した。設計した塩基配列はそれぞれ15bpのオーバーラップ配列を持つように4本のオリゴヌクレオチド(12B5VH−1、12B5VH−2、12B5VH−3、12B5VH−4)に分割し、12B5VH−1(配列番号57)及び12B5VH−3(配列番号:59)はセンス方向で、12B5VH−2(配列番号:58)及び12B5VH−4(配列番号:60)はアンチセンス方向でそれぞれ合成した。各合成オリゴヌクレオチドはそれぞれの相補性によりアッセンブリさせた後、外側プライマー(12B5VH−S及び12B5VH−A)を加え、全長の遺伝子を増幅した。なお、12B5VH−S(配列番号:61)は前方プライマーでリーダー配列の5’末端にハイブリダイズし、且つHind III制限酵素認識配列ならびにコザック配列を持つように、また12B5VH−A(配列番号:62)は後方プライマーでH鎖V領域のC末端をコードする塩基配列にハイブリダイズし、且つスプライスドナー配列ならびにBamHI制限酵素認識配列を持つようにそれぞれ設計した。
PCR溶液100μlは、10μlの10×PCR Gold Buffer II、1.5mM MgCl2、0.08mM dNTPs(dATP、dGTP、dCTP、dTTP)、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)、2.5ピコモル[p mole]ずつの合成オリゴヌクレオチド12B5VH−1〜4を含有し、94℃の初期温度にて9分間そして次に94℃にて2分間、55℃にて2分間及び72℃にて2分間のサイクルを2回反復した後、100pmoleずつの外側プライマー12B5VH−S及び12B5VH−Aを加え、さらに94℃にて30秒間、55℃にて30秒間及び72℃にて1分間のサイクルを35回反復した後、反応混合物を更に72℃で5分間加熱した。
PCR生成物は1.5%低融点アガロースゲル(Sigma社製)を用い精製した後、制限酵素BamHI及びHind IIIで消化し、ヒトH鎖発現ベクターHEF−gY1にクローニングした。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをHEF−12B5H−gY1と命名した。
さらに、HEF−12B5H−gY1を制限酵素EcoRIならびにBamHIで消化し、12B5VHをコードする遺伝子を調製した後、ヒトFabH鎖発現ベクターpCOS−Fdに挿入しpFd−12B5Hを得た。なお、ヒトFabH鎖発現ベクターはヒト抗体H鎖V領域と定常領域をコードする遺伝子間に存在するイントロン領域ならびにヒトH鎖定常領域の一部をコードする遺伝子を含むDNA(配列番号63)をPCR法を用い増幅した後、動物細胞発現ベクターpCOS1に挿入することで構築したベクターである。ヒトH鎖定常領域はHEF−gY1を鋳型とし、上記と同様の条件下にて遺伝子の増幅を行い、前方プライマーとしてイントロン1の5’端の配列とハイブリダイズし、且つEcoRI及びBamHI制限酵素認識配列を有するように設計したG1CH1−S(配列番号64)を、後方プライマーとしてヒトH鎖定常領域CH1ドメインの3’端のDNAにハイブリダイズし、且つヒンジ領域の一部をコードする配列、二個の停止コドンおよびBgl II制限酵素認識部位を有するように設計したG1CH1−A(配列番号65)を用いた。
プラスミドHEF−12B5H−gY1及びpFd−12B5Hに含まれる再構成12B5H鎖可変領域の塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:66に示す。
7.2 12B5L鎖V領域をコードする遺伝子の構築
ヒトMPLに結合するヒト抗体12B5L鎖V領域をコードする遺伝子は、該遺伝子の塩基配列(配列番号67)を用い、その5’末端にヒト抗体遺伝子3D6(Nuc.Acid Res.1990:18;4927)由来のリーダー配列(配列番号68)を連結させることで設計した。設計した塩基配列は上記と同様にそれぞれ15bpのオーバーラップ配列を持つように4本のオリゴヌクレオチド(12B5VL−1、12B5VL−2、12B5VL−3、12B5VL−4)に分割し、それぞれ合成した。12B5VL−1(配列番号:69)及び12B5VL−3(配列番号:71)はセンス配列、12B5VL−2(配列番号:70)及び12B5VL−4(配列番号:72)はアンチセンス配列を有し、各合成オリゴヌクレオチドはそれぞれの相補性によりアッセンブリさせた後、外側プライマー(12B5VL−S及び12B5VL−A)を加え、全長の遺伝子を増幅した。なお、12B5VL−S(配列番号:73)は前方プライマーでリーダー配列の5’末端にハイブリダイズし、且つHind III制限酵素認識配列ならびにコザック配列を持つように、また12B5VL−A(配列番号:74)は後方プライマーでL鎖V領域のC末端をコードする塩基配列にハイブリダイズし、且つスプライスドナー配列ならびにBamHI制限酵素認識配列を持つようにそれぞれ設計した。
PCR反応は上記と同様に行い、PCR生成物は1.5%低融点アガロースゲル(Sigma社製)を用い精製した後、制限酵素BamHI及びHind IIIで消化し、ヒトL鎖発現ベクターHEF−gKにクローニングした。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをHEF−12B5L−gKと命名した。本プラスミドHEF−12B5L−gKに含まれる再構成12B5L鎖V領域の塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:75に示す。
7.3 再構成12B5一本鎖Fv(scFv)の作製
再構成12B5抗体一本鎖Fvは12B5VH−リンカー−12B5VLの順とし、そのC末端には検出及び精製を容易にするためにFLAG配列(配列番号:76)を付加することで設計した。さらに、リンカー配列は(Gly4Ser)3の15アミノ酸からなるリンカー配列を用い、再構成12B5一本鎖Fv(sc12B5)を構築した。
(1)15アミノ酸からなるリンカー配列を用いた再構成12B5一本鎖Fvの作製
15アミノ酸からなるリンカーを用いた再構成12B5抗体一本鎖Fvをコードする遺伝子は12B5H鎖V領域、リンカー領域、及び12B5L鎖V領域をそれぞれPCR法を用いて増幅し、連結することにより構築した。この方法を図47に模式的に示す。再構成12B5一本鎖Fvの作製のために6個のPCRプライマー(A〜F)を使用した。プライマーA、C及びEはセンス配列を有し、プライマーB、D及びFはアンチセンス配列を有する。
H鎖V領域のための前方プライマー12B5−S(プライマーA、配列番号:77)は、H鎖リーダー配列の5’末端にハイブリダイズし且つEcoRI制限酵素認識部位を有するように設計した。H鎖V領域のための後方プライマーHuVHJ3(プライマーB、配列番号:78)は、H鎖V領域のC末端をコードするDNAにハイブリダイズするように設計した。
リンカーのための前方プライマーRHuJH3(プライマーC、配列番号:79)は、リンカーのN末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つH鎖V領域のC末端をコードするDNAとオーバーラップするように設計した。リンカーのための後方プライマーRHuVK1(プライマーD、配列番号:80)は、リンカーのC末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つL鎖V領域のN末端をコードするDNAとオーバーラップするように設計した。
L鎖V領域のための前方プライマーHuVK1.2(プライマーE、配列番号:81)はL鎖V領域のN末端をコードするDNAにハイブリダイズするように設計した。L鎖V領域のための後方プライマー12B5F−A(プライマーF、配列番号:82)は、L鎖V領域のC末端をコードするDNAにハイブリダイズし且つFLAGペプチドをコードする配列(Hopp,T.P.ら、Bio/Technology,6,1204−1210,1988)、2個の転写停止コドン及びNotI制限酵素認識部位を有するように設計した。
第一PCR段階において3つの反応A−B、C−D及びE−Fを行い、そして第一PCRから得られた3つのPCR生成物をそれら自体の相補性によりアッセンブリさせた。次に、プライマーA及びFを加えて、15アミノ酸からなるリンカーを用いた再構成12B5一本鎖Fvをコードする全長DNAを増幅した(第二PCR)。なお、第一PCRにおいては、再構成12B5H鎖V領域をコードするプラスミドHEF−12B5H−gY1(実施例7.1を参照)、Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Serからなるリンカー領域をコードするDNA配列(配列番号:83)(Huston,J.S.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,5879−5883,1988)を含んで成るプラスミドpSCFVT7−hM21(ヒト型化ONS−M21抗体)(Ohtomo,T.ら、Anticancer Res.18(1998),4311−4316)、及び再構成12B5L鎖V領域をコードするプラスミドHEF−12B5L−gK(実施例7.2を参照)をそれぞれ鋳型として用いた。
第一PCR段階の溶液50μlは、5μlの10×PCR Gold Buffer II、1.5mM MgCl2、0.08mM dNTPs、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)、100pmoleずつの各プライマー及び100ngの各鋳型DNAを含有し、94℃の初期温度にて9分間そして次に94℃にて30秒間、55℃にて30秒間及び72℃にて1分間のサイクルを35回反復した後、反応混合物を更に72℃で5分間加熱した。
PCR生成物A−B、C−D、及びE−Fは第二PCRでアッセンブリした。第二PCRにおいて、鋳型として1μlの第一PCR反応物A−B、0.5μlのPCR反応物C−D及び1μlのPCR反応物E−F、10μlの10×PCRGold Buffer II、1.5mM MgCl2、0.08mM dNTPs、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)を含有する98μlのPCR混合液を、94℃の初期温度にて9分間そして次に94℃にて2分間、65℃にて2分間及び72℃にて2分間のサイクルを2回反復した後、それぞれ100pmoleずつのプライマーA及びFを加えた。そして94℃にて30秒間、55℃にて30秒間及び72℃にて1分間のサイクルを35回反復した後、反応混合物を72℃にて5分間加熱した。
第二PCRにより生じたDNA断片を1.5%低融点アガロースゲルを用いて精製し、EcoRI及びNotIで消化し、得られたDNA断片をpCHO1ベクターおよびpCOS1ベクター(特願平8−255196)にクローニングした。なお、本発現ベクターpCHO1は、DHFR−ΔE−rvH−PM1−f(WO92/19759参照)から、EcoRI及びSmaI消化により抗体遺伝子を削除し、EcoRI−NotI−BamHI Adaptor(宝酒造社製)を連結することにより構築したベクターである。DNA配列決定の後、再構成12B5一本鎖Fvの正しいアミノ酸配列をコードするDNA断片を含むプラスミドをpCHO−sc12B5及びpCOS−sc12B5と命名した。本プラスミドpCHO−sc12B5及びpCOS−sc12B5に含まれる再構成12B5一本鎖Fvの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:84に示す。
7.4 動物細胞を用いた各12B5抗体(IgG、Fab)及び一本鎖Fvポリペプチドの発現
12B5抗体(IgG、Fab)及び12B5抗体由来の一本鎖Fv(ポリペプチド)はCOS−7細胞又はCHO細胞を用い発現させた。
COS−7細胞を用いた一過的な発現は次のようにして行った。すなわち、Gene Pulser装置(BioRad社製)を用いたエレクトロポレーション法により遺伝子導入した。12B5抗体(IgG)の発現には前述の発現ベクターHEF−12B5H−gY1及びHEF−12B5L−gK各10μgずつを、12B5Fab断片の発現にはpFd−12B5HとHEF−12B5L−gK各10μgずつを、一本鎖Fvの発現にはpCOS−sc12B5(10μg)をPBSに懸濁したCOS−7細胞(1×107細胞/ml)0.8mlに混合し、キュベットに加え、1.5kV、25μFDの容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%のウシ胎児血清を含有するDMEM培地(GIBCO BRL社製)に加え培養した。終夜培養後、細胞をPBSで一回洗浄し、さらに無血清培地CHO−S−SFM II培地を加え、さらに2日間培養した。培養上清を遠心し細胞破砕物を除去した後、0.22μmのフィルターを通すことで調製した。
また、12B5抗体由来の一本鎖Fv(ポリペプチド)の恒常的発現CHO細胞株を樹立するため、pCHO−sc12B5発現ベクターを下記のようにCHO細胞に遺伝子導入した。
すなわち、Gene Pulser装置(BioRad社製)を用いたエレクトロポレーション法により発現ベクターをCHO細胞に導入した。制限酵素PvuIで消化し直鎖状にしたDNA(100μg)とPBSに懸濁したCHO細胞(1×107細胞/ml)の0.8mlを混合したものをキュベットに加え氷中で10分間静置した後、1.5kV、25μFDの容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%のウシ胎児血清を含有するCHO−S−SFM II(GIBCO BRL社製)に加え培養した。培養2日後に5nM メトトレキサート(SIGMA社製)ならびに10%ウシ胎児血清を含むCHO−S−SFM II(GIBCO BRL社製)にて培養した。得られたクローンについて発現量の高いクローンを12B5一本鎖Fvの産生細胞株として選択した。5nMメトトレキサート(SIGMA社製)を含む無血清培地CHO−S−SFM II(GIBCO BRL社製)にて培養後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去して培養上清を得た。
7.5 CHO細胞産生の12B5由来の一本鎖Fvの精製
7.4で得られた12B5一本鎖Fv発現CHO産生株の培養上清からの精製は、抗FLAG抗体カラム及びゲル濾過カラムにより行った。
(1)抗FLAG抗体カラム
培養上清は、PBSで平衡化した抗FLAG M2アフィニティーゲル(SIGMA社製)に添加した。同緩衝液でカラムを洗浄後、緩衝液を0.1Mグリシン塩酸緩衝液(pH3.5)でカラムに吸着した蛋白質を溶出した。溶出画分は、溶出後直ちに1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)を加えて中和した。SDS−PAGEで溶出画分を分析し、一本鎖Fvが確認された画分をCentricon−10(MILLIPORE社製)を用いて濃縮した。
(2)ゲル濾過
(1)の濃縮液は、0.01%Tween20を含むPBSで平衡化したSuperdex200カラム(10×300mm、AMERSHAM PHARMACIA社製)に添加した。
sc12B5は2つのピーク(A、B)に分かれて溶出した(図48を参照)。画分A、Bを14%−SDS−ポリアクリルアミドゲルを用いて分析した。サンプルを還元剤添加、非添加で処理し、Laemmliの方法に準じて電気泳動を行い、泳動後蛋白質をクマシーブリリアントブルー染色した。図49に示すように、画分A、Bいずれも還元剤の添加の有無に関わらず、見かけ上の分子量約31kDに単一バンドを与えた。画分A及びBをSuperdex200 PC3.2/30(3.2×300mm、AMERSHAM PHARMACIA社製)を用いたゲル濾過により分析した結果、画分Aでは見かけ上の分子量約44kD、画分Bでは同22kDに溶出された(図50a及びbを参照)。以上の結果から、画分Aはsc12B5一本鎖Fvの非共有結合性ダイマーで、Bはモノマーである。
7.6 各種一本鎖FvのTPO様アゴニスト活性の測定
ヒトTPO受容体(MPL)を発現するBa/F3細胞(BaF/mpl)に対する増殖活性を測定することによって、抗MPL一本鎖抗体のTPO様活性を評価した。BaF/Mpl細胞を、1%ウシ胎児血清(GIBCO社製)を含むRPMI1640培地(GIBCO社製)で2回洗浄したのち、5×105細胞/mlの細胞密度になるように培地に懸濁した。抗MPL一本鎖抗体またはヒトTPO(R&D Systems社製)を培地で適当に希釈し、細胞懸濁液50μlに抗体またはヒトTPO希釈液50μlを加えて96穴マイクロウェル平底プレート(Falcon社製)に分注し、CO2インキュベーター(CO2濃度:5%)で24時間培養した。培養後、WST−8試薬(生細胞数測定試薬SF:ナカライテスク社製)を10μl加え、直後に蛍光吸光光度計SPECTRA Fluor(TECAN社製)を用いて測定波長450nm、対照波長620nmの吸光度を測定した。CO2インキュベーター(CO2濃度:5%)で2時間インキュベートした後、SPECTRA Fluorを用いて再度測定波長450nm、対照波長620nmの吸光度を測定した。WST−8試薬は生細胞数に応じて波長450nmの発色反応を呈することから、2時間の吸光度変化を指標にBaF/Mpl増殖活性を次のように算出したED50値により評価した。先ず、縦軸を吸光度、横軸を抗体濃度とし、その増殖反応曲線がプラトーに達した吸光度を反応率100%とした。反応率50%付近の数値に基づく直線近似により近似式を得て、これから反応率50%となる抗体濃度を算出し、これをED50値とした。
各種12B5抗体分子を発現させたCOS−7細胞の培養上清を用い、MPLに対するアゴニスト活性を測定した結果、図51に示すように抗原結合部位が二価である12B5 IgGでは濃度依存的に吸光度の上昇が認められTPO様のアゴニスト活性を示したのに対し(ED50;29nM)、抗原結合部位が一価である12B5Fabのアゴニスト活性は非常に弱いものであった(ED50;34,724nM)。それに対し、Fabと同様に抗原結合部位が一価である一本鎖Fv(sc12B5)においてはED50値が75nMと強いアゴニスト活性が認められた。しかしながら、一本鎖FvではH鎖、L鎖各可変領域は非共有結合で介合しているために、溶液中で各可変領域が解離し他の分子の可変領域と介合し二量体等の多量体を形成することが知られている。そこで、ゲル濾過を用い精製sc12B5の分子量を測定した結果、確かに単量体(モノマー)と二量体(ダイマー)と考えられる分子が認められた(図48を参照)。続いて、モノマーとダイマーのsc12B5をそれぞれ単離し(図50を参照)、それらのMPLに対するアゴニスト活性を測定した結果、図51及び52に示すようにsc12B5モノマーではED50値が4438.7nMとCOS−7細胞の培養上清を用いた結果に比べ、アゴニスト活性の減弱が確認された。それに対し、二価の抗原結合部位を持つ一本鎖Fv(sc12B5ダイマー)では一価のsc12B5に対し約400倍強いアゴニスト活性を示した(ED50;10.1nM)。さらに、二価の一本鎖FvではヒトTPOならびに12B5IgGのアゴニスト活性と同等もしくはそれ以上のアゴニスト活性を示した。
実施例8 (ヒトMPLに対するヒト抗体12E10可変領域をコードする遺伝子の構築)
ヒトMPLに対するヒトモノクローナル抗体12E10の可変領域をコードするDNAを次のようにして構築した。
8.1 12E10H鎖可変領域をコードする遺伝子の構築
ヒトMPLに結合するヒト抗体12E10H鎖可変領域をコードする遺伝子はWO99/10494に記載のアミノ酸配列(配列番号85)を基に配列番号86に示す塩基配列を設計した。さらに、その5’端にヒト抗体遺伝子由来のリーダー配列(配列番号87)(GenBank accession No.AF062252)を連結させることで全長の塩基配列を設計した。設計した塩基配列はそれぞれ15bpのオーバーラップ配列を持つように4本のオリゴヌクレオチド(12E10VH1、12E10VH2、12E10VH3、12E10VH4)に分割し、12E10VH1(配列番号:88)及び12E10VH3(配列番号:90)はセンス方向で、12E10VH2(配列番号:89)及び12E10VH4(配列番号:91)はアンチセンス方向でそれぞれ合成した。各合成オリゴヌクレオチドはそれぞれの相補性によりアッセンブリさせた後、外側プライマー(12E10VHS及び12E10VHA)を加え、全長の遺伝子を増幅した。なお、12E10VHS(配列番号:92)は前方プライマーでリーダー配列の5’端にハイブリダイズし、且つHindIII制限酵素認識配列ならびにコザック配列を持つように、また12E10VHA(配列番号:93)は後方プライマーでH鎖可変領域のC末端をコードする塩基配列にハイブリダイズし、且つスプライスドナー配列ならびにBamHI制限酵素認識配列を持つようにそれぞれ設計した。
PCR溶液100μlは、10μlの10×PCR Gold Buffer II、1.5mM MgCl2、0.08mM dNTPs(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)、2.5ピコモルずつの合成オリゴヌクレオチド12B5VH−1〜4を含有し、94℃の初期温度にて9分間そして次に94℃にて2分間、55℃にて2分間及び72℃にて2分間のサイクルを2回反復した後、100pmoleずつの外側プライマー12E10VHS及び12E10VHAを加え、さらに94℃にて30秒間、55℃にて30秒間及び72℃にて1分間のサイクルを35回反復した後、反応混合物を更に72℃で5分間加熱した。
PCR生成物は1.5%低融点アガロースゲル(Sigma社製)を用い精製した後、制限酵素BamHI及びHindIIIで消化し、ヒトH鎖発現ベクターHEF−gY1にクローニングした。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドをHEF−12E10H−gY1と命名した。
さらに、HEF−12E10H−gY1を制限酵素EcoRIならびにBamHIで消化し、12E10VHをコードする遺伝子を調製した後、ヒトFabH鎖発現ベクターpCOS−Fdに挿入しpFd−12E10Hを得た。なお、ヒトFabH鎖発現ベクターはヒト抗体H鎖V領域と定常領域をコードする遺伝子間に存在するイントロン領域ならびにヒトH鎖定常領域の一部をコードする遺伝子を含むDNA(配列番号63)についてPCR法を用いて増幅した後、動物細胞発現用ベクターpCOS1に挿入することで構築したベクターである。ヒトH鎖定常領域はHEF−gY1を鋳型とし、上記と同様の条件下にて遺伝子の増幅を行い、前方プライマーとしてイントロン1の5’端の配列とハイブリダイズし、且つEcoRI及びBamHI制限酵素認識配列を有するように設計したG1CH1−S(配列番号64)を、後方プライマーとしてヒトH鎖定常領域CH1ドメインの3’端のDNAにハイブリダイズし、且つヒンジ領域の一部をコードする配列、二個の停止コドンおよびBglII制限酵素認識部位を有するように設計したG1CH1−A(配列番号65)を用いた。
プラスミドHEF−12E10H−gY1及びpFd−12E10Hに含まれる再構成12E10H鎖可変領域の塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:94に示す。
8.2 12E10L鎖可変領域をコードする遺伝子の構築
ヒトMPLに結合するヒト抗体12E10L鎖可変領域をコードする遺伝子はWO99/10494に記載のアミノ酸配列(配列番号95)を基に配列番号96に示す塩基配列を設計した。さらに、その5’端にヒト抗体遺伝子由来のリーダー配列(配列番号97)(Mol.Immunol.1992;29:1515−1518)を連結させることで設計した。設計した塩基配列は上記と同様にそれぞれ15bpのオーバーラップ配列を持つように4本のオリゴヌクレオチド(12E10VL1、12E10VL2、12E10VL3、12E10VL4)に分割し、それぞれ合成した。12E10VL1(配列番号:98)及び12E10VL3(配列番号:100)はセンス配列、12E10VL2(配列番号:99)及び12E10VL4(配列番号:101)はアンチセンス配列を有し、各合成オリゴヌクレオチドはそれぞれの相補性によりアッセンブリさせた後、外側プライマー(12E10VLS及び12E10VLA)を加え、全長の遺伝子を増幅した。なお、12E10VLS(配列番号:102)は前方プライマーでリーダー配列の5’端にハイブリダイズし、且つEcoRI制限酵素認識配列ならびにコザック配列を持つように、また12E10VLA(配列番号:103)は後方プライマーでL鎖可変領域のC末端をコードする塩基配列にハイブリダイズし、且つBlnI制限酵素認識配列を持つようにそれぞれ設計した。
PCR反応は上記と同様に行い、PCR生成物は1.5%低融点アガロースゲル(Sigma社製)を用い精製した後、制限酵素EcoRI及びBlnIで消化し、ヒトラムダ鎖定常領域遺伝子を含有するpUC19ベクターにクローニングした。DNA配列決定の後、正しいDNA配列を有するDNA断片を含むプラスミドを制限酵素EcoRIで消化し、12E10L鎖可変領域及びヒトラムダ鎖定常領域をコードする遺伝子を調製し、さらに発現ベクターpCOS1に挿入し、12E10L鎖遺伝子(配列番号:104)を持つプラスミドをpCOS−12E10Lと命名した。
8.3 再構成12E10一本鎖Fvの作製
再構成12E10抗体一本鎖Fvは12E10VH−リンカー−12E10VLの順とし、そのC末端には検出及び精製を容易にするためにFLAG配列(配列番号:105)を付加することで設計した。リンカー配列は(Gly4Ser)3の15アミノ酸からなるリンカー配列、またはを(Gly4Ser)1の5アミノ酸からなるリンカー配列用い、再構成12E10鎖Fv(sc12E10およびdb12E10)を構築した。
(1) 5アミノ酸からなるリンカー配列を用いた再構成12E10一本鎖Fvの作製
5アミノ酸からなるリンカー配列を用いた再構成12E10一本鎖Fvをコードする遺伝子は12E10H鎖V領域をコードする遺伝子の3’端、及び12E10L鎖V領域をコードする遺伝子の5’端に(Gly4Ser)1からなるリンカーをコードする塩基配列を付加させた遺伝子についてそれぞれPCR法を用いて増幅し、連結することにより構築した。再構成12E10一本鎖Fvの作製のために4個のPCRプライマー(A〜D)を使用した。プライマーA及びCはセンス配列を有し、プライマーBおよびDはアンチセンス配列を有する。
H鎖V領域のための前方プライマーは12E10S(プライマーA、配列番号:106)を用い、H鎖V領域のための後方プライマーDB2(プライマーB、配列番号:107)は、H鎖V領域のC末端をコードするDNAにハイブリダイズし、且つ(Gly4Ser)1からなるリンカーをコードする塩基配列ならびにL鎖V領域のN末端をコードする塩基配列を有するように設計した。
L鎖V領域のための前方プライマーDB1(プライマーC、配列番号:108)はL鎖V領域のN末端をコードするDNAにハイブリダイズし、且つ(Gly4Ser)1からなるリンカーをコードする塩基配列ならびにH鎖V領域のC末端をコードする塩基配列を有するように設計した。L鎖V領域のための後方プライマーは12E10FA(プライマーD、配列番号:109)はL鎖可変領域C末端をコードするDNAにハイブリダイズし、且つFLAGをコードする塩基配列を有し、さらにNotI制限酵素認識部位を有するように設計した。
第一PCR段階において2つの反応A−B及びC−Dを行い、そして第一PCRから得られた2つのPCR生成物をそれら自体の相補性によりアッセンブリさせた。次に、プライマーA及びDを加えて、5アミノ酸からなるリンカーを用いた再構成12E10一本鎖Fvをコードする全長DNAを増幅した(第二PCR)。なお、第一PCRにおいては、再構成12E10H鎖V領域をコードするプラスミドHEF−12E10H−gY1(実施例8.1を参照)及び再構成12E10L鎖V領域をコードするプラスミドpCOS−12E10L(実施例8.1を参照)をそれぞれ鋳型として用いた。
第一PCR段階の溶液50μlは、5μlの10×PCR Gold Buffer II、1.5mM MgCl2、0.08mM dNTPs、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)、100ピコモルずつの各プライマー及び100ngの各鋳型DNAを含有し、94℃の初期温度にて9分間そして次に94℃にて30秒間、55℃にて30秒間及び72℃にて1分間のサイクルを35回反復した後、反応混合物を更に72℃で5分間加熱した。
PCR生成物A−B(429bp)及びC−D(395bp)は第二PCRでアッセンブリした。第二PCRにおいて、鋳型として1μLずつの第一PCR反応物A−B及びPCR反応物C−D、100ピコモルずつの各プライマー、10μlの10×PCR Gold Buffer II、1.5mM MgCl2、0.08mM dNTPs、5ユニットのDNAポリメラーゼAmpliTaq Gold(以上PERKIN ELMER社製)を含有する98μlのPCR混合液を、上記と同様の条件下で反応させた。
第二PCRにより生じた795bpのDNA断片について1.5%低融点アガロースゲルを用いて精製した後、EcoRI及びNotIで消化し、得られたDNA断片をpCHO1ベクターまたはpCOS1ベクターにクローニングした。なお、本発現ベクターpCHO1は、DHFR−ΔE−RVH−PM1−f(WO92/19759参照)から、EcoRI及びSmaI消化により抗体遺伝子を削除し、EcoRI−NotI−BamHI Adaptor(宝酒造社製)を連結することにより構築したベクターである。DNA配列決定の後、再構成12B5一本鎖Fvの正しいアミノ酸配列をコードするDNA断片を含むプラスミドをpCHO−db12E10、及びpCOS−db12E10と命名した。本プラスミドpCHO−db12E10及びpCOS−db12E10に含まれる再構成12E10一本鎖Fvの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:110に示す。
(2)15アミノ酸からなるリンカー配列を用いた再構成12E10一本鎖Fvの作製
15アミノ酸からなるリンカー配列を用いた再構成12E10一本鎖Fvをコードする遺伝子は12E10H鎖V領域をコードする遺伝子の3’端、及び12E10L鎖V領域をコードする遺伝子の5’端にそれぞれ(Gly4Ser)3からなるリンカーをコードする塩基配列を付加させた遺伝子について、それぞれPCR法を用いて増幅し、連結することにより構築した。再構成12E10一本鎖Fvの作製のために4個のPCRプライマー(A〜D)を使用した。プライマーA及びCはセンス配列を有し、プライマーBおよびDはアンチセンス配列を有する。
H鎖V領域のための前方プライマーは12E10S(プライマーA、配列番号:106)を用い、H鎖V領域のための後方プライマーsc4.3(プライマーB、配列番号:111)は、H鎖V領域のC末端をコードするDNAにハイブリダイズし、且つ(Gly4Ser)3からなるリンカーをコードする塩基配列ならびにL鎖V領域のN末端をコードする塩基配列を有するように設計した。
L鎖V領域のための前方プライマーsc1.3(プライマーC、配列番号:112)はL鎖V領域のN末端をコードするDNAにハイブリダイズし、且つ(Gly4Ser)3からなるリンカーをコードする塩基配列ならびにH鎖V領域のC末端をコードする塩基配列を有するように設計した。L鎖V領域のための後方プライマーは12E10FA(プライマーD、配列番号:109)はL鎖可変領域C末端をコードするDNAにハイブリダイズし、且つFLAGをコードする塩基配列を有し、さらにNotI制限酵素認識部位を有するように設計した。
第一PCR段階において2つの反応A−B及びC−Dを行い、そして第一PCRから得られた2つのPCR生成物をそれら自体の相補性によりアッセンブリさせた。次に、プライマーA及びDを加えて、15アミノ酸からなるリンカーを用いた再構成12E10一本鎖Fvをコードする全長DNAを増幅した(第二PCR)。なお、第一PCRにおいては、再構成12E10一本鎖FvをコードするプラスミドpCOS−db12E10(実施例8.1(1)を参照)を鋳型として用いた。
第一PCR段階の溶液50μlは、5μlの10×ExTaq Buffer、0.4mM dNTPs、2.5ユニットのDNAポリメラーゼTaKaRa ExTaq(以上宝酒造社製)、100ピコモルずつの各プライマー及び10ngの各鋳型DNAを含有し、94℃の初期温度にて30秒間そして次に94℃にて15秒間及び72℃にて2分間のサイクルを5回、94℃にて15秒間及び70℃にて2分間のサイクルを5回、94℃にて15秒間及び68℃にて2分間のサイクルを28回反復した後、反応混合物を更に72℃で5分間加熱した。
PCR生成物A−B(477bp)及びC−D(447bp)は第二PCRでアッセンブリした。第二PCRにおいて、鋳型として1μLずつの第一PCR反応物A−B及びPCR反応物C−D、100ピコモルずつのプライマーA及びD、5μlの10×ExTaq Buffer、0.4mM dNTPs、2.5ユニットのDNAポリメラーゼTaKaRa ExTaq(以上宝酒造社製)を混合し、上記と同様の条件下で反応させた。
第二PCRにより生じた825bpのDNA断片について1.0%低融点アガロースゲルを用いて精製し、EcoRI及びNotIで消化し、得られたDNA断片をpCHO1ベクターまたはpCOS1ベクターにクローニングした。DNA配列決定の後、再構成12E10一本鎖Fvの正しいアミノ酸配列をコードするDNA断片を含むプラスミドをpCHO−sc12E10及びpCOS−sc12E10と命名した。本プラスミドpCHO−sc12E10及びpCOS−sc12E10に含まれる再構成12E10一本鎖Fvの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号:113に示す。
8.4 動物細胞を用いた各12E10抗体(IgG、Fab)及び一本鎖Fvポリペプチドの発現
12E10抗体(IgG、Fab)ならびに12E10抗体由来の一本鎖Fv(リンカー配列5アミノ酸、15アミノ酸)はCOS−7細胞もしくはCHO細胞を用い発現させた。
COS−7細胞を用いた一過的な発現は次のようにして行った。すなわち、Gene PulserII装置(BioRad社製)を用いたエレクトロポレーション法により遺伝子導入した。12E10抗体(IgG)の発現には前述の発現ベクターHEF−12E10H−gY1及びpCOS−12E10L各10μgずつを、12E10Fab断片の発現にはpFd−12E10HとpCOS−12E10L各10μgずつを、一本鎖Fvの発現にはpCOS−sc12E10(10μg)またはpCOS−db12E10(10μg)をPBSに懸濁したCOS−7細胞(1×107細胞/ml)0.8mlに混合したものをキュベットに加え、1.5kV、25μFDの容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%のウシ胎児血清を含有するDMEM培地(GIBCO BRL社製)に加え培養した。終夜培養後、細胞をPBSで一回洗浄し、さらに無血清培地CHO−S−SFMII培地(GIBCO BRL社製)を加え、さらに3日間培養した。培養上清を遠心し細胞破砕物を除去した後、0.22μmのフィルターを通すことで調製した。
また、12E10抗体由来の一本鎖Fv(ポリペプチド)の恒常的発現CHO細胞株を樹立するため、pCHO−sc12E10またはpCHO−db12E10発現ベクターをそれぞれCHO細胞に遺伝子導入した。
各発現ベクターを、Gene PulserII装置(BioRad社製)を用いたエレクトロポレーション法によりCHO細胞に遺伝子導入した。PvuI消化により直鎖状にしたDNA(100μg)とPBSに懸濁したCHO細胞(1×107細胞/ml)の0.8mlを混合したものをキュベットに加え、氷中で10分間静置した後、1.5kV、25μFDの容量にてパルスを与えた。室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%の透析ウシ胎児血清ならびに核酸を含有するCHO−S−SFMII培地(GIBCO BRL社製)に加え培養した。培養2日後に10%の透析ウシ胎児血清を含有する核酸不含CHO−S−SFMII培地(GIBCO BRL社製)にて培養した。得られたクローンについて発現量の高いクローンを12E10一本鎖Fvの産生細胞株として選択した。この細胞株を無血清培地CHO−S−SFMII培地(GIBCO BRL社製)にて培養後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去後に、0.22μmのフィルターを通すことで培養上清を調製した。
8.5 CHO細胞産生の12E10由来の一本鎖Fvの精製
実施例8.4で得た一本鎖Fv発現CHO産生株(sc12E10,db12E10)それぞれの培養上清から抗FLAG抗体カラム、及びゲルろ過カラムを用いて一本鎖Fvを精製した
(1)抗FLAG抗体カラムを用いた精製
培養上清(sc12E10,db12E10)を、それぞれ150mM NaClを含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.4)にて平衡化した抗FLAG M2 アフィニティゲル(SIGMA社製)カラムに添加し、同緩衝液でカラムを洗浄後、100mM グリシン緩衝液(pH3.5)でカラムに吸着した蛋白質を溶出した。溶出画分は直ちに1M トリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を加えて中和した。SDS−PAGEで各溶出画分を分析し、一本鎖Fvが確認された画分を、それぞれプールし、Centricon−10(アミコン社製)を用いて約20倍濃縮した。
(2)ゲル濾過
(1)の画分を、0.01%Tween20含むPBSで平衡化したSuperdex200HRカラム(10x300mm、Amersham Pharmacia社製)に添加した。クロマトグラムを図53および54に示す。その結果、sc12E10においては2つのピーク(A,B)が検出された(図53)。また、db12E10では、2つのピーク(C,D)が検出された(図54)。それぞれのピーク画分を分取し、還元剤添加、非添加で処理し、Laemmliの方法に準じて電気泳動を行い、泳動後蛋白質をクマシーブリリアントブルー染色した。図55に示すように、画分A、画分B、画分C、画分Dいずれも還元剤の添加の有無に関わらず、見かけ上の分子量約31kDに単一バンドを与えた。これらの画分を、前述のSuperdex200HRカラムを用いたゲルろ過で分析した結果、画分Aは見かけ上の分子量約20kD、画分Bは同42kDに溶出された(図56を参照)。一方、画分Cは見かけ上の分子量約69kD、画分Dは同41kDに溶出された(図57を参照)以上の結果から、sc12E10由来の画分Aは一本鎖Fvの非共有結合性ダイマーで、画分Bは一本鎖Fvのモノマーであり、また、db12E10由来の画分Cは一本鎖Fvの非共有結合性トリマー、画分Dは一本鎖Fvの非共有結合性ダイマーであることが示唆された。
8.6 各種一本鎖FvのTPO様アゴニスト活性の測定
ヒトTPO受容体(MPL)を発現するBa/F3細胞(BaF/mpl)に対する増殖活性を測定することによって、抗mpl一本鎖抗体のTPO様活性の評価を行った。
BaF/mpl細胞を、1%ウシ胎児血清(GIBCO社製)を含むRPMI1640培地(GIBCO社製)で2回洗浄したのち、5×105細胞/mLの細胞密度になるように培地に懸濁した。抗MPL一本鎖抗体またはヒトTPO(R&D Systems社製)を培地で適当に希釈し、細胞懸濁液50μLに抗体またはヒトTPO希釈液50μLを加えて96穴マイクロウェル平底プレート(Corning社製)に分注し、CO2インキュベーター(CO2濃度:5%)で24時間培養した。培養後、WST−8試薬(生細胞数測定試薬SF:ナカライテスク社製)を10μL加え、直後に吸光光度計Benchmark Plus(BioRad社製)を用いて測定波長450nm、対照波長655nmの吸光度を測定した。CO2インキュベーター(CO2濃度:5%)で2時間インキュベートした後、Benchmark Plusを用いて再度測定波長450nm、対照波長655nmの吸光度を測定した。WST−8試薬は生細胞数に応じて波長450nmの発色反応を呈することから、2時間の吸光度変化を指標にBaF/mpl細胞増殖活性を評価した。
各種12E10抗体分子を発現させたCOS−7細胞の培養上清を用い、MPLに対するアゴニスト活性を測定した結果を図58に示す。リンカー配列5アミノ酸(db12E10)および15アミノ酸(sc12E10)の一本鎖Fvでは濃度依存的に吸光度の上昇が認められ、TPO様のアゴニスト活性を示したのに対し(ED50;それぞれ9pMおよび51pM)、12E10IgGおよび12E10Fabでは全く活性が認められなかった。
一本鎖Fvはリンカー配列の長さによっては、H鎖とL鎖が分子内だけでなく、分子間でも介合することによって二量体等の多量体を形成することが知られている。そこで、12E10一本鎖Fvを発現させたCHO細胞の培養上清をゲルろ過分画して、MPLに対するアゴニスト活性を測定した。その結果を図59に示す。sc12E10中にわずかに含まれる二量体(sc12E10ダイマー、ED50;1.9pM)は単量体(sc12E10モノマー、ED50;>10nM)に比べて、5000倍以上強いTPO様アゴニスト活性を示し、その活性はTPO(ED50;27pM)よりも強かった。また、db12E10の二量体(db12E10ダイマー、ED50;2.0pM)はsc12E10ダイマーとほぼ同等の強い活性を示した。ゲルろ過分子量から三量体と推定されたdb12E10トリマー(ED50;7.4pM)もdb12E10ダイマーには劣るが高い活性を示した。以上の結果から、アゴニスト抗体12E10の活性には、抗原結合部位が二価(ダイマー)であることが重要と考えられるが、12E10 IgGには活性が見られなかったことから、単に二価であるだけでなく、抗原結合部位間の距離や角度といった要素も重要と推測される。
産業上の利用可能性
本発明の改変抗体は、細胞表面上の分子を架橋することにより該細胞内にシグナルを伝達しうるアゴニスト作用を有しており、また抗体分子(whole IgG)と比較して低分子化が達成されているため、組織、腫瘍への移行性に優れているという特徴を有している。さらに本発明によれは、TPOや親抗体(whole IgG)より顕著に高いアゴニスト活性を有する改変抗体が提供される。特に、親抗体分子でアゴニスト活性が認められない場合においてもTPOより高いアゴニスト活性を有する改変抗体が提供できる。従って、当該改変抗体はシグナル伝達アゴニストとして使用することができ、そして抗体分子を本発明の改変抗体にすることにより、細胞間の架橋などによる副作用を軽減し、且つ細胞表面上の分子を架橋して所望の作用のみを誘起しうる新規な医薬品が提供される。本発明の改変抗体を有効成分とする医薬製剤は、血小板減少が関与する血液疾患、癌や白血病等の化学治療後の血小板減少症などの予防及び/又は治療薬として有用である。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1. ヒトIgG1抗体が、ヒトIAPを発現するL1210細胞(hIAP/L1210)に結合しないことを示すフローサイトメトリーの結果を示す図である。
図2. キメラMABL−1抗体が、ヒトIAPを発現するL1210細胞(hIAP/L1210)に特異的に結合することを示すフローサイトメトリーの結果を示す図である。
図3. キメラMABL−2抗体が、ヒトIAPを発現するL1210細胞(hIAP/L1210)に特異的に結合することを示すフローサイトメトリーの結果を示す図である。
図4. 本発明にかかる一本鎖Fvの作成方法を模式的に示す図である。
図5. 本発明の一本鎖FvをコードするDNAを、大腸菌にて発現させるために使用可能な発現プラスミドの一例の構造を示す。
図6. 本発明の一本鎖FvをコードするDNAを、哺乳動物細胞にて発現させるために使用する発現プラスミドの一例の構造を示す。
図7. 実施例5.4で得られたウエスタンブロットの結果を示す図である。左側より、分子量マーカー(上から97.4、66、45、31、21.5、14.5kDaを示す)、pCHO1導入COS7細胞培養上清、pCHOM2導入細胞培養上清。pCHOM2導入細胞培養上清に再構成MABL−2抗体一本鎖Fv(矢印)が明らかに含まれていることを示す。
図8. コントロールとしてのpCHO1/COS7細胞培養上清の抗体は、コントロールとしてのpCOS1/L1210細胞には結合しないことを示すフローサイトメトリーの結果を示す図である。
図9. MABL2−scFv/COS7細胞培養上清の抗体は、コントロールとしてのpCOS1/L1210細胞には結合しないことを示すフローサイトメトリーの結果を示す図である。
図10.コントロールとしてのpCOS1/COS7細胞培養上清の抗体は、hIAP/L1210細胞に結合しないことを示すフローサイトメトリーの結果を示す図である。
図11.MABL2−scFv/COS7細胞培養上清の抗体は、hIAP/L1210細胞に特異的に結合することを示すフローサイトメトリーの結果を示す図である。
図12.実施例5.6で示すCompetitive ELISAの結果を示す図であり、本発明の一本鎖Fv(MABL2−scFv)の抗原結合活性を、コントロールとしてのpCHO1/COS7細胞培養上清と比較して、マウスモノクローナル抗体MABL−2の抗原結合に対する阻害を指標として示す図である。
図13.実施例5.7のアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、コントロールとしてのpCOS1/L1210細胞には、コントロールとしてのpCHO1/COS7細胞培養上清抗体はアポトーシスを誘起しないことを示す。
図14.実施例5.7のアポトーシス誘導効果の結果を示す図であり、コントロールとしてのpCOS1/L1210細胞には、MABL2−scFv/COS7細胞培養上清抗体はアポトーシスを誘起しないことを示す。
図15.実施例5.7のアポトーシス誘導効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞には、コントロールとしてのpCHO1/COS7細胞培養上清抗体はアポトーシスを誘起しないことを示す。
図16.実施例5.7のアポトーシス誘導効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞に対し、MABL2−scFv/COS7細胞培養上清抗体が特異的にアポトーシスを誘起することを示す。
図17.実施例5.7のアポトーシス誘導効果の結果を示す図であり、CCRF−CEM細胞には、コントロールとしてのpCHO1/COS7細胞培養上清抗体はアポトーシスを誘起しないことを示す(最終濃度50%)。
図18.実施例5.7のアポトーシス誘導効果の結果を示す図であり、CCRF−CEM細胞に対し、MABL2−scFv/COS7細胞培養上清抗体が特異的にアポトーシスを誘起することを示す(最終濃度50%)。
図19.実施例5.9のCHO細胞産生のMABL−2抗体由来の一本鎖Fvの精製過程において、Blue−sepharoseカラムで得られた画分をハイドロキシアパタイトカラムを用いて精製した際のクロマトグラムを示す図であり、主要なピークとして画分A、画分Bが得られたことを示す。
図20.実施例5.9の(2)で得られた画分A、画分Bについてゲル濾過により精製した結果を示す図であり、画分Aでは見かけ上の分子量約36kD、画分Bでは同76kDの位置に主要ピークが(それぞれAI及びBI)が溶出したことを示す。
図21.実施例5.9のCHO細胞産生のMABL−2抗体由来の一本鎖Fvの精製過程において得られた画分をSDS−PAGEで分析した図であり、何れも分子量約35kDに単一のバンドのみであることを示す。
図22.CHO細胞産生のMABL−2抗体由来の一本鎖Fvの精製において得られた画分AI及びBIをゲル濾過により分析した結果を示す図であり、画分AIはモノマーからなり、画分BIはダイマーからなることを示す。
図23.本発明の一本鎖FvをコードするDNAを、大腸菌の菌体内にて発現させるために使用可能な発現プラスミドの一例の構造を示す。
図24.実施例5.12の大腸菌細胞産生のMABL−2抗体由来の一本鎖Fvポリペプチドの精製において、得られた粗製物をゲル濾過カラムを用いて精製した結果を示す図であり、各ピークはそれぞれ大腸菌細胞産生の一本鎖Fvのモノマー、ダイマーを示す。
図25.実施例5.13のアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞には、コントロールとしてのマウスIgG抗体はアポトーシスを誘起しないことを示す(最終濃度3μg/ml)。
図26.実施例5.13のアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞に対し、CHO細胞産生のMABL2−scFvダイマーが顕著にアポトーシスを誘起することを示す(最終濃度3μg/ml)。
図27.実施例5.13のアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞に対し、大腸菌細胞産生のMABL2−scFvダイマーが顕著にアポトーシスを誘起することを示す(最終濃度3μg/ml)。
図28.実施例5.13のアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞には、CHO細胞産生のMABL2−scFvモノマーのアポトーシス誘起作用がコントロールと同程度であることを示す(最終濃度3μg/ml)。
図29.実施例5.13のアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞には、大腸菌細胞産生のMABL2−scFvモノマーのアポトーシス誘起作用がコントロールと同程度であることを示す(最終濃度3μg/ml)。
図30.実施例5.13のアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞には、コントロールとしてのマウスIgG抗体は抗FLAG抗体の添加によってもアポトーシスを誘起しないことを示す(最終濃度3μg/ml)。
図31.実施例5.13のアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、hIAP/L1210細胞に対し、CHO細胞産生のMABL2−scFvモノマーが抗FLAG抗体の添加によって顕著にアポトーシスを誘起することを示す(最終濃度3μg/ml)。
図32.ヒト骨髄腫細胞株KPMM2を移植したマウスの血清中のヒトIgG量を定量したものであり、マウスにおけるヒト骨髄腫により産生されるヒトIgGの量を測定した結果を示す図であり、scFv/CHOダイマーがKPMM2細胞の増殖を非常に強く抑制していることを示す。
図33.腫瘍移植後のマウスの生存日数を表しており、scFv/CHOダイマー投与群において生存期間が顕著に延長されていることを示している。
図34.MABL−2抗体由来の2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V領域を含む改変抗体[sc(Fv)2]を発現するプラスミドの一例の構造を示す。
図35.[H鎖]−[L鎖]となるようにV領域を連結し、且つペプチドリンカーを含まないscFv(HLタイプ)を発現するプラスミドの一例の構造を示す。
図36.HLタイプのポリペプチドの構造およびペプチドリンカーのアミノ酸配列を示す。
図37.[L鎖]−[H鎖]となるようにV領域を連結し、且つペプチドリンカーを含まないscFv(LHタイプ)を発現するプラスミドの一例の構造を示す。
図38.LHタイプのポリペプチドの構造およびペプチドリンカーのアミノ酸配列を示す。
図39.実施例6.4におけるウェスタンブロッティングの結果を示す図であり、2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V領域を含む改変抗体sc(Fv)2及び種々の長さのペプチドリンカーを有するMABL−2抗体scFvが発現していることを示す。
図40a及びb.実施例6.3(1)にて調製したCOS7細胞培養上清を用いたフローサイトメトリーの結果を示す図であり、種々の長さのペプチドリンカーを有するMABL2−scFv及びsc(Fv)2は、ヒトIAPに対して高い親和性を有することを示す。
図41.実施例6.6のアポトーシス誘導効果の結果を示す図であり、scFv<HL3,4,6,7、LH3,4,6,7>及びsc(Fv)2はhIAP/L1210細胞に対して顕著な細胞死を誘導することを示す。
図42.実施例6.10の抗原結合評価の結果を示す図であり、scFv<HL5>のダイマー及びsc(Fv)2がヒトIAPに対して高い親和性を有すること示す。
図43.実施例6.11のin vitroアポトーシス誘起効果の結果を示す図であり、MABL2−scFv<HL5>のダイマー及びMABL2−sc(Fv)2はhIAP/L1210、CCRF−CEMの両細胞に対して濃度依存的に細胞死を誘導することを示す。
図44.ヒト骨髄腫細胞株KPMM2を移植したマウスにおけるヒト骨髄腫により産生される血清中のMタンパク質の量を測定した結果を示す図であり、scFv<HL−5>及びsc(Fv)2がKPMM2細胞の増殖を非常に強く抑制していることを示す。
図45.腫瘍移植後のマウスの生存日数を表しており、scFv<HL−5>投与群において生存期間が顕著に延長されていることを示している。
図46.腫瘍移植後のマウスの生存日数を表しており、sc(Fv)2投与群において生存期間が顕著に延長されていることを示している。
図47.15アミノ酸からなるリンカー配列を含む再構成12B5一本鎖FvをコードするDNA断片の構築方法とその構造を概略的に示す。
図48.実施例7.5(1)で得られた各12B5一本鎖Fvを、ゲル濾過により精製した結果を示す図であり、sc12B5では2つのピーク(画分A,B)に分かれた結果を示す。
図49.実施例7.5(2)において、各画分AおよびBをSDS−PAGEにより分析した結果を示す。
図50.実施例7.5(2)において、各画分AおよびBをSuperdex200カラムにより分析した結果を示し、(a)画分Aでは見かけ上の分子量約44kDに、(b)画分Bでは同22kDの位置に主要ピークが溶出されたことを示す。
図51.sc12B5及び12B5抗体(IgG,Fab)のTPO様アゴニスト活性の測定結果を示し、12B5 IgG及び一価一本鎖Fv(sc12B5)は、濃度依存的にTPO様のアゴニスト活性を有することを示す。
図52.sc12B5モノマー及びダイマーのTPO様アゴニスト活性の測定結果を示し、二価の抗原結合部位を持つ一本鎖Fv(sc12B5ダイマー)は一価のsc12B5より約400倍以上強いアゴニスト活性を示し、その強さはヒトTPOと同等もしくはそれ以上であることを示す。
図53.得られたsc12E10一本鎖抗体をSuperdex200HRカラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィーで精製した結果を示す図であり、12E10sc3では、2つのピーク(画分A,B)に分かれた結果を示す。
図54.得られたdb12E10一本鎖抗体をSuperdex200HRカラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィーで精製した結果を示す図であり、12E10sc3では、2つのピーク(画分C,D)に分かれた結果を示す。
図55.画分A,B(sc12E10)および画分C、D(db12E10)を還元、非還元条件下におけるSDS−PAGE分析した結果を示す。
図56.画分A,Bを、Superdex200HRカラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィーで分析した結果を示す。(1)画分Aでは、見かけ上の分子量42kDに(2)画分Bでは、同20kDの位置に、主要ピークが溶出されたことを示す。
図57.画分C,Dを、Superdex200HRカラムを用いたゲルろ過クロマトグラフィーで分析した結果を示す。(1)画分Cでは、見かけ上の分子量69kDに(2)画分Bでは、同41kDの位置に、主要ピークが溶出されたことを示す。
図58.各種12E10抗体分子のMPLに対するアゴニスト活性を示すグラフであり、一本鎖Fv(sc12E10,db12E10)ではTPO様のアゴニスト活性を示したのに対し、12E10 IgGおよび12E10 Fabでは全く活性が認められなかったことを示す。
図59.sc12E10モノマーおよびダイマー、並びにdb12E10ダイマーおよびトリマーのMPLに対するアゴニスト活性を示すグラフであり、sc12E10ダイマー、db12E10ダイマーおよびトリマーのTPO様アゴニスト活性がTPOよりも強力であることを示す。
【0002】
ものであるが、近年、一本鎖Fvのダイマー、特に、二重特異性[bispecific]のダイマーが細胞同士の架橋を目的として使用されている。このようなダイマーとしては、代表的には癌細胞抗原とNK細胞や好中球など宿主細胞抗原を認識する一本鎖Fvのヘテロダイマー等が知られている(Kipriyanov et al.,Int.J.Cancer,77,9763−9772,1998)。これらは、細胞間架橋を誘導させることにより癌を治療するためのより効率的な改変抗体として、一本鎖Fvの構築技術から作成されたものである。このため、抗体およびその断片(例えばFab断片など)および二重特異性の改変抗体、さらには単一特異性である一本鎖Fvのダイマーでも細胞間の架橋が誘導されると考えられていた。
また、細胞表面分子を架橋してシグナルを伝達しうるモノクローナル抗体として、例えば細胞の分化・増殖に関与するEPO受容体に対する抗体(特開2000−95800号公報)、MuSK受容体に対する抗体(Xie et al.,Nature Biotech.15,768−771,1997)などが知られている。また、TPOレセプターに対するアゴニスト抗体、その断片および一本差Fvなども知られている(WO99/17364)。しかし、アゴニスト作用を有する一本鎖Fvのダイマーおよび一本鎖2価抗体等の改変抗体については報告はない。
そこで、先ず本発明者らは、IAPを有する細胞に対してアポトーシスを誘起するモノクローナル抗体(MABL−1およびMABL−2抗体)を取得し、それをもとに作製した一本鎖Fvのモノマーは細胞にアポトーシスを誘起せず、ダイマーが細胞に対してアポトーシスを誘導することに注目し、これらが細胞表面上のIAP受容体を架橋(2量体化)することにより当該細胞にシグナルが伝達されて、その結果アポトーシスが誘導されたことを突き止めた。即ち、これは、単一特異性の一本鎖Fvダイマーが細胞表面上の分子(例えば受容体)を架橋することにより、リガンドと同様にシグナルを伝達し、これによりアゴニスト作用を示しうること示唆するものである。
次に細胞間の架橋形成に注目したところ、前記モノクローナル抗体は赤血球凝集を引き起こすが、前記一本鎖Fvのダイマーは赤血球凝集を起こさないことを見出した。同様の結果は、一本鎖2価抗体(2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V
ものであるが、近年、一本鎖Fvのダイマー、特に、二重特異性[bispecific]のダイマーが細胞同士の架橋を目的として使用されている。このようなダイマーとしては、代表的には癌細胞抗原とNK細胞や好中球など宿主細胞抗原を認識する一本鎖Fvのヘテロダイマー等が知られている(Kipriyanov et al.,Int.J.Cancer,77,9763−9772,1998)。これらは、細胞間架橋を誘導させることにより癌を治療するためのより効率的な改変抗体として、一本鎖Fvの構築技術から作成されたものである。このため、抗体およびその断片(例えばFab断片など)および二重特異性の改変抗体、さらには単一特異性である一本鎖Fvのダイマーでも細胞間の架橋が誘導されると考えられていた。
また、細胞表面分子を架橋してシグナルを伝達しうるモノクローナル抗体として、例えば細胞の分化・増殖に関与するEPO受容体に対する抗体(特開2000−95800号公報)、MuSK受容体に対する抗体(Xie et al.,Nature Biotech.15,768−771,1997)などが知られている。また、TPOレセプターに対するアゴニスト抗体、その断片および一本差Fvなども知られている(WO99/17364)。しかし、アゴニスト作用を有する一本鎖Fvのダイマーおよび一本鎖2価抗体等の改変抗体については報告はない。
そこで、先ず本発明者らは、IAPを有する細胞に対してアポトーシスを誘起するモノクローナル抗体(MABL−1およびMABL−2抗体)を取得し、それをもとに作製した一本鎖Fvのモノマーは細胞にアポトーシスを誘起せず、ダイマーが細胞に対してアポトーシスを誘導することに注目し、これらが細胞表面上のIAP受容体を架橋(2量体化)することにより当該細胞にシグナルが伝達されて、その結果アポトーシスが誘導されたことを突き止めた。即ち、これは、単一特異性の一本鎖Fvダイマーが細胞表面上の分子(例えば受容体)を架橋することにより、リガンドと同様にシグナルを伝達し、これによりアゴニスト作用を示しうること示唆するものである。
次に細胞間の架橋形成に注目したところ、前記モノクローナル抗体は赤血球凝集を引き起こすが、前記一本鎖Fvのダイマーは赤血球凝集を起こさないことを見出した。同様の結果は、一本鎖2価抗体(2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V
【0003】
領域を含む一本鎖ポリペプチド)でも観察された。即ち、これはモノクローナル抗体では細胞間で架橋が形成される可能性があるのに対して、一本鎖Fvダイマーまたは一本鎖2価抗体等の改変抗体では、細胞表面上の分子を架橋するが、細胞間の架橋を形成しないことを示唆するものである。
本発明者は、これらの結果から、一本鎖Fvダイマーや一本鎖2価抗体等の改変抗体が、従来知られていた細胞間の架橋への使用に限らず、同じ細胞の細胞表面分子あるいは細胞内分子を架橋する、当該分子に対するリガンド(特に天然のリガンドの作用を模倣するようなリガンド)として特に適していることを初めて見出した。
さらに、本発明者は、抗体分子(whole IgG)を一本鎖Fvダイマーまたは一本鎖2価抗体などの改変抗体にすることにより、細胞間の架橋などによる副作用を軽減し、且つ細胞表面上の分子を架橋して、細胞に所望の作用のみを誘起しうる新規な医薬品を提供しうることを見出し、本発明を完成させた。また、本発明の改変抗体は、当該改変抗体と同じV領域を有するwholeの抗体(IgG)と比較して顕著に高い活性を有しており、さらに抗体分子に比べ分子量が小さく、定常領域を有しないという特徴から、組織移行性が向上しているという特徴を有している。
発明の開示
本発明の課題は、TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む低分子化アゴニスト改変抗体を提供することである。
従って、本発明は、TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上、好ましくは各々2〜6、さらに好ましくは各々2〜4、特に好ましくは各々2つ含む改変抗体に関する。
本明細書において「改変抗体」とは、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含み、これら各V領域を直接的あるいはリンカー等を介して共有
領域を含む一本鎖ポリペプチド)でも観察された。即ち、これはモノクローナル抗体では細胞間で架橋が形成される可能性があるのに対して、一本鎖Fvダイマーまたは一本鎖2価抗体等の改変抗体では、細胞表面上の分子を架橋するが、細胞間の架橋を形成しないことを示唆するものである。
本発明者は、これらの結果から、一本鎖Fvダイマーや一本鎖2価抗体等の改変抗体が、従来知られていた細胞間の架橋への使用に限らず、同じ細胞の細胞表面分子あるいは細胞内分子を架橋する、当該分子に対するリガンド(特に天然のリガンドの作用を模倣するようなリガンド)として特に適していることを初めて見出した。
さらに、本発明者は、抗体分子(whole IgG)を一本鎖Fvダイマーまたは一本鎖2価抗体などの改変抗体にすることにより、細胞間の架橋などによる副作用を軽減し、且つ細胞表面上の分子を架橋して、細胞に所望の作用のみを誘起しうる新規な医薬品を提供しうることを見出し、本発明を完成させた。また、本発明の改変抗体は、当該改変抗体と同じV領域を有するwholeの抗体(IgG)と比較して顕著に高い活性を有しており、さらに抗体分子に比べ分子量が小さく、定常領域を有しないという特徴から、組織移行性が向上しているという特徴を有している。
発明の開示
本発明の課題は、TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む低分子化アゴニスト改変抗体を提供することである。
従って、本発明は、TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上、好ましくは各々2〜6、さらに好ましくは各々2〜4、特に好ましくは各々2つ含む改変抗体に関する。
本明細書において「改変抗体」とは、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含み、これら各V領域を直接的あるいはリンカー等を介して共有
【0007】
測定する、工程を含むスクリーニング方法又は測定方法に関する。本発明の測定方法は、本発明の改変抗体を医薬品として製造する場合の品質管理等に用いることができる。
本発明の改変抗体は、単一特異性(mono−specific)改変抗体でも、二重特異性(bi−specific)改変抗体等の多重特異性(multi−specific)改変抗体であってもよいが、好ましくは単一特異性(mono−specific)改変抗体である。
本発明はまた、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト抗体由来のH鎖V領域及び/又はヒト抗体由来のL鎖V領域である改変抗体に関する。ヒト抗体由来のH鎖V領域及びL鎖V領域は、例えばWO99/10494号公報に記載された方法のように、ヒトモノクローナル抗体のライブラリーをスクリーニングすることにより得ることができる。また、トランスジェニックマウス等から作製されたヒトモノクローナル抗体由来のH鎖V領域及びL鎖V領域も包含される。
さらに本発明は、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト型化H鎖V領域及び/又はヒト型化L鎖V領域である改変抗体に関する。詳細には、ヒトモノクローナル抗体L鎖V領域のフレームワーク領域(FR)とヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サルなど)のモノクローナル抗体のL鎖V領域の相補性決定領域(complementarity determining region;以下CDRとする)を含むヒト型化L鎖V領域及び/又はヒトモノクローナル抗体H鎖V領域のFRとヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サルなど)モノクローナル抗体のH鎖V領域のCDRを含むヒト型化H鎖V領域から構成される。この場合、CDRおよびFRのアミノ酸配列を一部改変(例えば、欠失、置換又は付加)してもよい。
本発明はまた、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サル、ニワトリなど)のモノクローナル抗体由来のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域も包含される。この場合、CDRおよびFRのアミノ酸配列を一部改変(例えば、欠失、置換又は付加)してもよい。
測定する、工程を含むスクリーニング方法又は測定方法に関する。本発明の測定方法は、本発明の改変抗体を医薬品として製造する場合の品質管理等に用いることができる。
本発明の改変抗体は、単一特異性(mono−specific)改変抗体でも、二重特異性(bi−specific)改変抗体等の多重特異性(multi−specific)改変抗体であってもよいが、好ましくは単一特異性(mono−specific)改変抗体である。
本発明はまた、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト抗体由来のH鎖V領域及び/又はヒト抗体由来のL鎖V領域である改変抗体に関する。ヒト抗体由来のH鎖V領域及びL鎖V領域は、例えばWO99/10494号公報に記載された方法のように、ヒトモノクローナル抗体のライブラリーをスクリーニングすることにより得ることができる。また、トランスジェニックマウス等から作製されたヒトモノクローナル抗体由来のH鎖V領域及びL鎖V領域も包含される。
さらに本発明は、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト型化H鎖V領域及び/又はヒト型化L鎖V領域である改変抗体に関する。詳細には、ヒトモノクローナル抗体L鎖V領域のフレームワーク領域(FR)とヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サルなど)のモノクローナル抗体のL鎖V領域の相補性決定領域(complementarity determining region;以下CDRとする)を含むヒト型化L鎖V領域及び/又はヒトモノクローナル抗体H鎖V領域のFRとヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サルなど)モノクローナル抗体のH鎖V領域のCDRを含むヒト型化H鎖V領域から構成される。この場合、CDRおよびFRのアミノ酸配列を一部改変(例えば、欠失、置換又は付加)してもよい。
本発明はまた、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サル、ニワトリなど)のモノクローナル抗体由来のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域も包含される。この場合、CDRおよびFRのアミノ酸配列を一部改変(例えば、欠失、置換又は付加)してもよい。
【0013】
前記モノクローナル抗体由来のH鎖V領域とL鎖V領域を有するsc12B5ダイマー(リンカー:15アミノ酸)、sc12E10ダイマー(リンカー:15アミノ酸)、db12B5ダイマー(リンカー:5アミノ酸)、db12E10ダイマー(リンカー:5アミノ酸)、sc12B5sc(FV)2及びsc12E10sc(FV)2が挙げられる。
本発明の改変抗体を作製するためには、該ポリペプチドが分泌性であることを所望する場合は、そのN−末端にシグナルペプチドを付加することができる。また、該ポリペプチドの効率的精製等のために、ポリペプチド精製において有用である公知の配列、例えばFLAG配列などを挿入することができる。この場合、抗FLAG抗体を用いてダイマー形成させることもできる。
本発明の改変抗体を作製するためには、これをコードするDNA、即ち一本鎖FvをコードするDNA又は再構成一本鎖ポリペプチドをコードするDNAを得る必要がある。これらのDNAは、例えばsc12B5、db12B5、sc12E10及び/又はdb12E10の場合には前記Fv由来のH鎖V領域及びL鎖V領域をコードするDNAを用いて、又はこれらのDNAを鋳型とし、その配列内の所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を、その両端を規定するプライマー対を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により増幅することにより得ることができる。
各V領域について、アミノ酸配列の一部改変を所望する場合には、PCR法を用いる公知の方法によって1又は数個のアミノ酸が改変された、即ち1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するV領域を得ることができる。特定の抗原に対して十分に活性がある改変抗体を作製するために、PCR法を用いる公知の方法によって前記V領域のアミノ酸配列の一部を改変することが望ましい。
PCRに用いるプライマーを決定するにあたり、モノクローナル抗体から出発する場合は、当該技術分野において知られた方法を用いて当該抗体由来のH鎖及びL鎖のタイピングをして両鎖の型を決定する。
次に、PCR法を用いて12B5抗体及び12E10抗体のL鎖V領域を増幅するため、5’−末端オリゴヌクレオチドプライマー及び3’−末端オリゴヌクレ
前記モノクローナル抗体由来のH鎖V領域とL鎖V領域を有するsc12B5ダイマー(リンカー:15アミノ酸)、sc12E10ダイマー(リンカー:15アミノ酸)、db12B5ダイマー(リンカー:5アミノ酸)、db12E10ダイマー(リンカー:5アミノ酸)、sc12B5sc(FV)2及びsc12E10sc(FV)2が挙げられる。
本発明の改変抗体を作製するためには、該ポリペプチドが分泌性であることを所望する場合は、そのN−末端にシグナルペプチドを付加することができる。また、該ポリペプチドの効率的精製等のために、ポリペプチド精製において有用である公知の配列、例えばFLAG配列などを挿入することができる。この場合、抗FLAG抗体を用いてダイマー形成させることもできる。
本発明の改変抗体を作製するためには、これをコードするDNA、即ち一本鎖FvをコードするDNA又は再構成一本鎖ポリペプチドをコードするDNAを得る必要がある。これらのDNAは、例えばsc12B5、db12B5、sc12E10及び/又はdb12E10の場合には前記Fv由来のH鎖V領域及びL鎖V領域をコードするDNAを用いて、又はこれらのDNAを鋳型とし、その配列内の所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を、その両端を規定するプライマー対を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により増幅することにより得ることができる。
各V領域について、アミノ酸配列の一部改変を所望する場合には、PCR法を用いる公知の方法によって1又は数個のアミノ酸が改変された、即ち1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するV領域を得ることができる。特定の抗原に対して十分に活性がある改変抗体を作製するために、PCR法を用いる公知の方法によって前記V領域のアミノ酸配列の一部を改変することが望ましい。
PCRに用いるプライマーを決定するにあたり、モノクローナル抗体から出発する場合は、当該技術分野において知られた方法を用いて当該抗体由来のH鎖及びL鎖のタイピングをして両鎖の型を決定する。
次に、PCR法を用いて12B5抗体及び12E10抗体のL鎖V領域を増幅するため、5’−末端オリゴヌクレオチドプライマー及び3’−末端オリゴヌクレ
【0018】
In vivoでの評価試験により本発明の改変抗体をスクリーニングすることによって、本発明の改変抗体を取得することができる。
本発明の改変抗体は、2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域、好ましくは各々2〜4、特に好ましくは各々2つ含むものであり、1つのH鎖V領域及び1つのL鎖V領域を含む一本鎖Fvのダイマー、又は2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域を連結した一本鎖ポリペプチドである。このような構成をとることでTPOの立体構造を模倣して、優れた抗原結合性及びTPOアゴニスト活性を有するものと考えられる。
本発明の改変抗体は、親抗体分子(例えばIgG)と比較して顕著な低分子化が達成されているため、組織、腫瘍への移行性に優れており、さらに親抗体分子よりも高い活性を有する。このため、本発明の改変抗体を用いることにより、TPOのシグナルを細胞内に効率よく伝達することができる。故に、これを含有する医薬製剤は、血小板減少が関与する血液疾患、癌や白血病等の化学治療後の血小板減少症などの治療薬としての利用が期待される。また、RI標識による造影剤としての利用も期待され、RI化合物やトキシン等の他の化合物と結合させることにより、効力を増強させることも可能である。
発明を実施するための最良の形態
次に、本発明を下記の実施例により具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
本発明の改変抗体の製造方法を、下記の一本鎖Fvの作製を例にして説明する。本発明の改変抗体の製造方法において用いる、ヒトIAPに対するマウスMABL−1、MABL−2抗体を産生するハイブリドーマ、MABL−1及びMABL−2は、公的微生物寄託機関である通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東一丁目1番3号)に、1997年9月11日に、受託番号それぞれFERM BP−6100、FERM BP−6101として国際寄託されている。
実施例
In vivoでの評価試験により本発明の改変抗体をスクリーニングすることによって、本発明の改変抗体を取得することができる。
本発明の改変抗体は、2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域、好ましくは各々2〜4、特に好ましくは各々2つ含むものであり、1つのH鎖V領域及び1つのL鎖V領域を含む一本鎖Fvのダイマー、又は2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域を連結した一本鎖ポリペプチドである。このような構成をとることでTPOの立体構造を模倣して、優れた抗原結合性及びTPOアゴニスト活性を有するものと考えられる。
本発明の改変抗体は、親抗体分子(例えばIgG)と比較して顕著な低分子化が達成されているため、組織、腫瘍への移行性に優れており、さらに親抗体分子よりも高い活性を有する。このため、本発明の改変抗体を用いることにより、TPOのシグナルを細胞内に効率よく伝達することができる。故に、これを含有する医薬製剤は、血小板減少が関与する血液疾患、癌や白血病等の化学治療後の血小板減少症などの治療薬としての利用が期待される。また、RI標識による造影剤としての利用も期待され、RI化合物やトキシン等の他の化合物と結合させることにより、効力を増強させることも可能である。
発明を実施するための最良の形態
次に、本発明を下記の実施例により具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
本発明の改変抗体の製造方法を、下記の一本鎖Fvの作製を例にして説明する。本発明の改変抗体の製造方法において用いる、ヒトIAPに対するマウスMABL−1、MABL−2抗体を産生するハイブリドーマ、MABL−1及びMABL−2は、公的微生物寄託機関である通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東一丁目1番3号)に、1997年9月11日に、受託番号それぞれFERM BP−6100、FERM BP−6101として国際寄託されている。
実施例
【0002】
ものであるが、近年、一本鎖Fvのダイマー、特に、二重特異性[bispecific]のダイマーが細胞同士の架橋を目的として使用されている。このようなダイマーとしては、代表的には癌細胞抗原とNK細胞や好中球など宿主細胞抗原を認識する一本鎖Fvのヘテロダイマー等が知られている(Kipriyanov et al.,Int.J.Cancer,77,9763−9772,1998)。これらは、細胞間架橋を誘導させることにより癌を治療するためのより効率的な改変抗体として、一本鎖Fvの構築技術から作成されたものである。このため、抗体およびその断片(例えばFab断片など)および二重特異性の改変抗体、さらには単一特異性である一本鎖Fvのダイマーでも細胞間の架橋が誘導されると考えられていた。
また、細胞表面分子を架橋してシグナルを伝達しうるモノクローナル抗体として、例えば細胞の分化・増殖に関与するEPO受容体に対する抗体(特開2000−95800号公報)、MuSK受容体に対する抗体(Xie et al.,Nature Biotech.15,768−771,1997)などが知られている。また、TPOレセプターに対するアゴニスト抗体、その断片および一本差Fvなども知られている(WO99/17364)。しかし、アゴニスト作用を有する一本鎖Fvのダイマーおよび一本鎖2価抗体等の改変抗体については報告はない。
そこで、先ず本発明者らは、IAPを有する細胞に対してアポトーシスを誘起するモノクローナル抗体(MABL−1およびMABL−2抗体)を取得し、それをもとに作製した一本鎖Fvのモノマーは細胞にアポトーシスを誘起せず、ダイマーが細胞に対してアポトーシスを誘導することに注目し、これらが細胞表面上のIAP受容体を架橋(2量体化)することにより当該細胞にシグナルが伝達されて、その結果アポトーシスが誘導されたことを突き止めた。即ち、これは、単一特異性の一本鎖Fvダイマーが細胞表面上の分子(例えば受容体)を架橋することにより、リガンドと同様にシグナルを伝達し、これによりアゴニスト作用を示しうること示唆するものである。
次に細胞間の架橋形成に注目したところ、前記モノクローナル抗体は赤血球凝集を引き起こすが、前記一本鎖Fvのダイマーは赤血球凝集を起こさないことを見出した。同様の結果は、一本鎖2価抗体(2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V
ものであるが、近年、一本鎖Fvのダイマー、特に、二重特異性[bispecific]のダイマーが細胞同士の架橋を目的として使用されている。このようなダイマーとしては、代表的には癌細胞抗原とNK細胞や好中球など宿主細胞抗原を認識する一本鎖Fvのヘテロダイマー等が知られている(Kipriyanov et al.,Int.J.Cancer,77,9763−9772,1998)。これらは、細胞間架橋を誘導させることにより癌を治療するためのより効率的な改変抗体として、一本鎖Fvの構築技術から作成されたものである。このため、抗体およびその断片(例えばFab断片など)および二重特異性の改変抗体、さらには単一特異性である一本鎖Fvのダイマーでも細胞間の架橋が誘導されると考えられていた。
また、細胞表面分子を架橋してシグナルを伝達しうるモノクローナル抗体として、例えば細胞の分化・増殖に関与するEPO受容体に対する抗体(特開2000−95800号公報)、MuSK受容体に対する抗体(Xie et al.,Nature Biotech.15,768−771,1997)などが知られている。また、TPOレセプターに対するアゴニスト抗体、その断片および一本差Fvなども知られている(WO99/17364)。しかし、アゴニスト作用を有する一本鎖Fvのダイマーおよび一本鎖2価抗体等の改変抗体については報告はない。
そこで、先ず本発明者らは、IAPを有する細胞に対してアポトーシスを誘起するモノクローナル抗体(MABL−1およびMABL−2抗体)を取得し、それをもとに作製した一本鎖Fvのモノマーは細胞にアポトーシスを誘起せず、ダイマーが細胞に対してアポトーシスを誘導することに注目し、これらが細胞表面上のIAP受容体を架橋(2量体化)することにより当該細胞にシグナルが伝達されて、その結果アポトーシスが誘導されたことを突き止めた。即ち、これは、単一特異性の一本鎖Fvダイマーが細胞表面上の分子(例えば受容体)を架橋することにより、リガンドと同様にシグナルを伝達し、これによりアゴニスト作用を示しうること示唆するものである。
次に細胞間の架橋形成に注目したところ、前記モノクローナル抗体は赤血球凝集を引き起こすが、前記一本鎖Fvのダイマーは赤血球凝集を起こさないことを見出した。同様の結果は、一本鎖2価抗体(2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V
【0003】
領域を含む一本鎖ポリペプチド)でも観察された。即ち、これはモノクローナル抗体では細胞間で架橋が形成される可能性があるのに対して、一本鎖Fvダイマーまたは一本鎖2価抗体等の改変抗体では、細胞表面上の分子を架橋するが、細胞間の架橋を形成しないことを示唆するものである。
本発明者は、これらの結果から、一本鎖Fvダイマーや一本鎖2価抗体等の改変抗体が、従来知られていた細胞間の架橋への使用に限らず、同じ細胞の細胞表面分子あるいは細胞内分子を架橋する、当該分子に対するリガンド(特に天然のリガンドの作用を模倣するようなリガンド)として特に適していることを初めて見出した。
さらに、本発明者は、抗体分子(whole IgG)を一本鎖Fvダイマーまたは一本鎖2価抗体などの改変抗体にすることにより、細胞間の架橋などによる副作用を軽減し、且つ細胞表面上の分子を架橋して、細胞に所望の作用のみを誘起しうる新規な医薬品を提供しうることを見出し、本発明を完成させた。また、本発明の改変抗体は、当該改変抗体と同じV領域を有するwholeの抗体(IgG)と比較して顕著に高い活性を有しており、さらに抗体分子に比べ分子量が小さく、定常領域を有しないという特徴から、組織移行性が向上しているという特徴を有している。
発明の開示
本発明の課題は、TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む低分子化アゴニスト改変抗体を提供することである。
従って、本発明は、TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上、好ましくは各々2〜6、さらに好ましくは各々2〜4、特に好ましくは各々2つ含む改変抗体に関する。
本明細書において「改変抗体」とは、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含み、これら各V領域を直接的あるいはリンカー等を介して共有
領域を含む一本鎖ポリペプチド)でも観察された。即ち、これはモノクローナル抗体では細胞間で架橋が形成される可能性があるのに対して、一本鎖Fvダイマーまたは一本鎖2価抗体等の改変抗体では、細胞表面上の分子を架橋するが、細胞間の架橋を形成しないことを示唆するものである。
本発明者は、これらの結果から、一本鎖Fvダイマーや一本鎖2価抗体等の改変抗体が、従来知られていた細胞間の架橋への使用に限らず、同じ細胞の細胞表面分子あるいは細胞内分子を架橋する、当該分子に対するリガンド(特に天然のリガンドの作用を模倣するようなリガンド)として特に適していることを初めて見出した。
さらに、本発明者は、抗体分子(whole IgG)を一本鎖Fvダイマーまたは一本鎖2価抗体などの改変抗体にすることにより、細胞間の架橋などによる副作用を軽減し、且つ細胞表面上の分子を架橋して、細胞に所望の作用のみを誘起しうる新規な医薬品を提供しうることを見出し、本発明を完成させた。また、本発明の改変抗体は、当該改変抗体と同じV領域を有するwholeの抗体(IgG)と比較して顕著に高い活性を有しており、さらに抗体分子に比べ分子量が小さく、定常領域を有しないという特徴から、組織移行性が向上しているという特徴を有している。
発明の開示
本発明の課題は、TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む低分子化アゴニスト改変抗体を提供することである。
従って、本発明は、TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上、好ましくは各々2〜6、さらに好ましくは各々2〜4、特に好ましくは各々2つ含む改変抗体に関する。
本明細書において「改変抗体」とは、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含み、これら各V領域を直接的あるいはリンカー等を介して共有
【0007】
測定する、工程を含むスクリーニング方法又は測定方法に関する。本発明の測定方法は、本発明の改変抗体を医薬品として製造する場合の品質管理等に用いることができる。
本発明の改変抗体は、単一特異性(mono−specific)改変抗体でも、二重特異性(bi−specific)改変抗体等の多重特異性(multi−specific)改変抗体であってもよいが、好ましくは単一特異性(mono−specific)改変抗体である。
本発明はまた、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト抗体由来のH鎖V領域及び/又はヒト抗体由来のL鎖V領域である改変抗体に関する。ヒト抗体由来のH鎖V領域及びL鎖V領域は、例えばWO99/10494号公報に記載された方法のように、ヒトモノクローナル抗体のライブラリーをスクリーニングすることにより得ることができる。また、トランスジェニックマウス等から作製されたヒトモノクローナル抗体由来のH鎖V領域及びL鎖V領域も包含される。
さらに本発明は、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト型化H鎖V領域及び/又はヒト型化L鎖V領域である改変抗体に関する。詳細には、ヒトモノクローナル抗体L鎖V領域のフレームワーク領域(FR)とヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サルなど)のモノクローナル抗体のL鎖V領域の相補性決定領域(complementarity determining region;以下CDRとする)を含むヒト型化L鎖V領域及び/又はヒトモノクローナル抗体H鎖V領域のFRとヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サルなど)モノクローナル抗体のH鎖V領域のCDRを含むヒト型化H鎖V領域から構成される。この場合、CDRおよびFRのアミノ酸配列を一部改変(例えば、欠失、置換又は付加)してもよい。
本発明はまた、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サル、ニワトリなど)のモノクローナル抗体由来のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域も包含される。この場合、CDRおよびFRのアミノ酸配列を一部改変(例えば、欠失、置換又は付加)してもよい。
測定する、工程を含むスクリーニング方法又は測定方法に関する。本発明の測定方法は、本発明の改変抗体を医薬品として製造する場合の品質管理等に用いることができる。
本発明の改変抗体は、単一特異性(mono−specific)改変抗体でも、二重特異性(bi−specific)改変抗体等の多重特異性(multi−specific)改変抗体であってもよいが、好ましくは単一特異性(mono−specific)改変抗体である。
本発明はまた、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト抗体由来のH鎖V領域及び/又はヒト抗体由来のL鎖V領域である改変抗体に関する。ヒト抗体由来のH鎖V領域及びL鎖V領域は、例えばWO99/10494号公報に記載された方法のように、ヒトモノクローナル抗体のライブラリーをスクリーニングすることにより得ることができる。また、トランスジェニックマウス等から作製されたヒトモノクローナル抗体由来のH鎖V領域及びL鎖V領域も包含される。
さらに本発明は、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト型化H鎖V領域及び/又はヒト型化L鎖V領域である改変抗体に関する。詳細には、ヒトモノクローナル抗体L鎖V領域のフレームワーク領域(FR)とヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サルなど)のモノクローナル抗体のL鎖V領域の相補性決定領域(complementarity determining region;以下CDRとする)を含むヒト型化L鎖V領域及び/又はヒトモノクローナル抗体H鎖V領域のFRとヒト以外の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サルなど)モノクローナル抗体のH鎖V領域のCDRを含むヒト型化H鎖V領域から構成される。この場合、CDRおよびFRのアミノ酸配列を一部改変(例えば、欠失、置換又は付加)してもよい。
本発明はまた、改変抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、サル、ニワトリなど)のモノクローナル抗体由来のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域も包含される。この場合、CDRおよびFRのアミノ酸配列を一部改変(例えば、欠失、置換又は付加)してもよい。
【0013】
前記モノクローナル抗体由来のH鎖V領域とL鎖V領域を有するsc12B5ダイマー(リンカー:15アミノ酸)、sc12E10ダイマー(リンカー:15アミノ酸)、db12B5ダイマー(リンカー:5アミノ酸)、db12E10ダイマー(リンカー:5アミノ酸)、sc12B5sc(FV)2及びsc12E10sc(FV)2が挙げられる。
本発明の改変抗体を作製するためには、該ポリペプチドが分泌性であることを所望する場合は、そのN−末端にシグナルペプチドを付加することができる。また、該ポリペプチドの効率的精製等のために、ポリペプチド精製において有用である公知の配列、例えばFLAG配列などを挿入することができる。この場合、抗FLAG抗体を用いてダイマー形成させることもできる。
本発明の改変抗体を作製するためには、これをコードするDNA、即ち一本鎖FvをコードするDNA又は再構成一本鎖ポリペプチドをコードするDNAを得る必要がある。これらのDNAは、例えばsc12B5、db12B5、sc12E10及び/又はdb12E10の場合には前記Fv由来のH鎖V領域及びL鎖V領域をコードするDNAを用いて、又はこれらのDNAを鋳型とし、その配列内の所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を、その両端を規定するプライマー対を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により増幅することにより得ることができる。
各V領域について、アミノ酸配列の一部改変を所望する場合には、PCR法を用いる公知の方法によって1又は数個のアミノ酸が改変された、即ち1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するV領域を得ることができる。特定の抗原に対して十分に活性がある改変抗体を作製するために、PCR法を用いる公知の方法によって前記V領域のアミノ酸配列の一部を改変することが望ましい。
PCRに用いるプライマーを決定するにあたり、モノクローナル抗体から出発する場合は、当該技術分野において知られた方法を用いて当該抗体由来のH鎖及びL鎖のタイピングをして両鎖の型を決定する。
次に、PCR法を用いて12B5抗体及び12E10抗体のL鎖V領域を増幅するため、5’−末端オリゴヌクレオチドプライマー及び3’−末端オリゴヌクレ
前記モノクローナル抗体由来のH鎖V領域とL鎖V領域を有するsc12B5ダイマー(リンカー:15アミノ酸)、sc12E10ダイマー(リンカー:15アミノ酸)、db12B5ダイマー(リンカー:5アミノ酸)、db12E10ダイマー(リンカー:5アミノ酸)、sc12B5sc(FV)2及びsc12E10sc(FV)2が挙げられる。
本発明の改変抗体を作製するためには、該ポリペプチドが分泌性であることを所望する場合は、そのN−末端にシグナルペプチドを付加することができる。また、該ポリペプチドの効率的精製等のために、ポリペプチド精製において有用である公知の配列、例えばFLAG配列などを挿入することができる。この場合、抗FLAG抗体を用いてダイマー形成させることもできる。
本発明の改変抗体を作製するためには、これをコードするDNA、即ち一本鎖FvをコードするDNA又は再構成一本鎖ポリペプチドをコードするDNAを得る必要がある。これらのDNAは、例えばsc12B5、db12B5、sc12E10及び/又はdb12E10の場合には前記Fv由来のH鎖V領域及びL鎖V領域をコードするDNAを用いて、又はこれらのDNAを鋳型とし、その配列内の所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を、その両端を規定するプライマー対を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により増幅することにより得ることができる。
各V領域について、アミノ酸配列の一部改変を所望する場合には、PCR法を用いる公知の方法によって1又は数個のアミノ酸が改変された、即ち1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するV領域を得ることができる。特定の抗原に対して十分に活性がある改変抗体を作製するために、PCR法を用いる公知の方法によって前記V領域のアミノ酸配列の一部を改変することが望ましい。
PCRに用いるプライマーを決定するにあたり、モノクローナル抗体から出発する場合は、当該技術分野において知られた方法を用いて当該抗体由来のH鎖及びL鎖のタイピングをして両鎖の型を決定する。
次に、PCR法を用いて12B5抗体及び12E10抗体のL鎖V領域を増幅するため、5’−末端オリゴヌクレオチドプライマー及び3’−末端オリゴヌクレ
【0018】
In vivoでの評価試験により本発明の改変抗体をスクリーニングすることによって、本発明の改変抗体を取得することができる。
本発明の改変抗体は、2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域、好ましくは各々2〜4、特に好ましくは各々2つ含むものであり、1つのH鎖V領域及び1つのL鎖V領域を含む一本鎖Fvのダイマー、又は2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域を連結した一本鎖ポリペプチドである。このような構成をとることでTPOの立体構造を模倣して、優れた抗原結合性及びTPOアゴニスト活性を有するものと考えられる。
本発明の改変抗体は、親抗体分子(例えばIgG)と比較して顕著な低分子化が達成されているため、組織、腫瘍への移行性に優れており、さらに親抗体分子よりも高い活性を有する。このため、本発明の改変抗体を用いることにより、TPOのシグナルを細胞内に効率よく伝達することができる。故に、これを含有する医薬製剤は、血小板減少が関与する血液疾患、癌や白血病等の化学治療後の血小板減少症などの治療薬としての利用が期待される。また、RI標識による造影剤としての利用も期待され、RI化合物やトキシン等の他の化合物と結合させることにより、効力を増強させることも可能である。
発明を実施するための最良の形態
次に、本発明を下記の実施例により具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
本発明の改変抗体の製造方法を、下記の一本鎖Fvの作製を例にして説明する。本発明の改変抗体の製造方法において用いる、ヒトIAPに対するマウスMABL−1、MABL−2抗体を産生するハイブリドーマ、MABL−1及びMABL−2は、公的微生物寄託機関である通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東一丁目1番3号)に、1997年9月11日に、受託番号それぞれFERM BP−6100、FERM BP−6101として国際寄託されている。
実施例
In vivoでの評価試験により本発明の改変抗体をスクリーニングすることによって、本発明の改変抗体を取得することができる。
本発明の改変抗体は、2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域、好ましくは各々2〜4、特に好ましくは各々2つ含むものであり、1つのH鎖V領域及び1つのL鎖V領域を含む一本鎖Fvのダイマー、又は2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域を連結した一本鎖ポリペプチドである。このような構成をとることでTPOの立体構造を模倣して、優れた抗原結合性及びTPOアゴニスト活性を有するものと考えられる。
本発明の改変抗体は、親抗体分子(例えばIgG)と比較して顕著な低分子化が達成されているため、組織、腫瘍への移行性に優れており、さらに親抗体分子よりも高い活性を有する。このため、本発明の改変抗体を用いることにより、TPOのシグナルを細胞内に効率よく伝達することができる。故に、これを含有する医薬製剤は、血小板減少が関与する血液疾患、癌や白血病等の化学治療後の血小板減少症などの治療薬としての利用が期待される。また、RI標識による造影剤としての利用も期待され、RI化合物やトキシン等の他の化合物と結合させることにより、効力を増強させることも可能である。
発明を実施するための最良の形態
次に、本発明を下記の実施例により具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
本発明の改変抗体の製造方法を、下記の一本鎖Fvの作製を例にして説明する。本発明の改変抗体の製造方法において用いる、ヒトIAPに対するマウスMABL−1、MABL−2抗体を産生するハイブリドーマ、MABL−1及びMABL−2は、公的微生物寄託機関である通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東一丁目1番3号)に、1997年9月11日に、受託番号それぞれFERM BP−6100、FERM BP−6101として国際寄託されている。
実施例
Claims (40)
- TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む改変抗体。
- H鎖V領域及びL鎖V領域がリンカーを介して連結されている、請求項1記載の改変抗体。
- リンカーが、少なくとも1個以上のアミノ酸からなるペプチドリンカーである、請求項2または3記載の改変抗体。
- 改変抗体が、1つのH鎖V領域及び1つのL鎖V領域を含む一本鎖Fvのマルチマーから構成される請求項1〜3のいずれか1項に記載の改変抗体。
- 改変抗体が、一本鎖Fvのテトラマー、トリマーまたはダイマーから構成される請求項4に記載の改変抗体。
- 改変抗体が、一本鎖Fvのダイマーから構成される請求項5に記載の改変抗体。
- 同じ鎖上のH鎖V領域及びL鎖V領域は互いに連合して1つの抗原結合部位を形成していない、請求項4〜6のいずれかに記載の改変抗体。
- 改変抗体が、2つ以上のH鎖V領域及び2つ以上のL鎖V領域を含む一本鎖ポリペプチドである請求項1〜3のいずれか1項に記載の改変抗体。
- 改変抗体が、2つのH鎖V領域及び2つのL鎖V領域を含む一本鎖ポリペプチドである請求項8に記載の改変抗体。
- 改変抗体が、さらにポリペプチド精製のためのアミノ酸配列を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の改変抗体。
- 改変抗体が精製されたものである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の改変抗体。
- H鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト抗体のH鎖V領域及び/又はL鎖V領域である請求項1〜11のいずれか1項に記載の改変抗体。
- H鎖V領域及び/又はL鎖V領域が、ヒト型化されたH鎖V領域及び/又はL鎖V領域である請求項1〜11のいずれか1項に記載の改変抗体。
- 改変抗体が、単一特異性(mono−specific)の改変抗体である請求項1〜13のいずれか1項に記載の改変抗体。
- 改変抗体が、多価特異性(multi−specific)の改変抗体である請求項1〜13のいずれか1項に記載の改変抗体。
- 改変抗体が、二重特異性(bi−specific)の改変抗体である請求項15に記載の改変抗体。
- L鎖V領域及びH鎖V領域が、同一のモノクローナル抗体由来である、請求項14に記載の改変抗体。
- 親抗体と比較して同等以上のアゴニスト作用(ED50値)を示す、請求項1〜17のいずれか1項に記載の改変抗体。
- 親抗体と比較して2倍以上のアゴニスト作用(ED50値)を示す、請求項18に記載の改変抗体。
- 親抗体と比較して10倍以上のアゴニスト作用(ED50値)を示す、請求項19に記載の改変抗体。
- 親抗体がアゴニスト作用を実質的に有さない、請求項1〜17のいずれか1項に記載の改変抗体。
- トロンボポエチン(TPO)と比較して同等以上のTPOアゴニスト作用(ED50値)を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む化合物。
- TPOと比較して2倍以上のTPOアゴニスト作用(ED50値)を示す、請求項22に記載の化合物。
- TPOと比較して10倍以上のTPOアゴニスト作用(ED50値)を示す、請求項23に記載の化合物。
- TPOアゴニスト作用のED50値が20pM以下である請求項1〜24のいずれか1項に記載の改変抗体または化合物。
- TPOアゴニスト作用のED50値が約10pM以下である請求項25に記載の改変抗体または化合物。
- TPOアゴニスト作用のED50値が約2pM以下である請求項26に記載の改変抗体または化合物。
- 親抗体と比較して、1/10以下の細胞間接着作用(ED50値)を示す請求項1〜27のいずれか1項に記載の改変抗体または化合物。
- 細胞間接着作用を実質的に有さない請求項1〜27のいずれか1項に記載の改変抗体または化合物。
- 請求項1〜29のいずれか1項に記載の改変抗体または化合物をコードするDNA。
- 請求項1〜29のいずれか1項に記載の改変抗体または化合物を産生する動物細胞。
- 請求項1〜29のいずれか1項に記載の改変抗体または化合物を産生する微生物。
- 請求項1〜29のいずれか1項に記載の改変抗体または化合物のTPOアゴニストとしての使用。
- 請求項1〜29のいずれか1項に記載の改変抗体または化合物を用いてTPOレセプターを架橋することにより細胞内にシグナル伝達を起し、該細胞にアゴニスト作用を生じさせる方法。
- TPOアゴニスト作用が、巨核球の増殖、分化誘導または成長の刺激、血小板の産生またはTPOレセプタータンパク質のリン酸化である請求項34記載の方法。
- 請求項1〜29のいずれか1項に記載の改変抗体または化合物を有効成分として含む医薬。
- 医薬が、血小板減少症の治療剤である請求項36記載の医薬。
- 請求項1〜29のいずれか1項に記載の改変抗体または化合物の医薬としての使用。
- TPOレセプターを架橋することによりアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む改変抗体のスクリーニング方法であって、
(1)TPOレセプターに特異的に結合する抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む改変抗体を作製し、
(2)TPOレセプターを発現している細胞と該改変抗体とを接触させ、
(3)TPOレセプターを架橋することにより該細胞に生ずるTPOアゴニスト作用を測定する、
工程を含むスクリーニング方法。 - TPOレセプターを架橋することによりTPOアゴニスト作用を示す、抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む改変抗体のTPOアゴニスト活性の測定方法であって、
(1)TPOレセプターに特異的に結合する抗体のH鎖V領域を2つ以上及びL鎖V領域を2つ以上含む改変抗体を作製し、
(2)TPOレセプターを発現している細胞と該改変抗体とを接触させ、
(3)TPOレセプターを架橋することにより該細胞に生ずるTPOアゴニスト作用を測定する、
工程を含むTPOアゴニスト活性の測定方法。
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