JPWO2002032905A1 - マラリア治療のための医薬組成物、ドーズおよび方法 - Google Patents
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Abstract
硫酸化多糖の抗マラリア活性を増強して、マラリア治療のための、新たな医薬組成物、ドーズおよび治療方法を提供する。硫酸化多糖とアーテミシニンまたはそのジヒドロ誘導体とを併用投与することにより、硫酸化多糖の抗マラリア活性が著しく増強された。
Description
技術分野
この発明は、マラリアの治療のための医薬組成物、ドーズおよび方法に関する。詳細には、この発明は、硫酸化多糖と、アーテミシニンまたはアーテミシニンジヒドロ誘導体(アーテミシニンおよびアーテミシニンジヒドロ誘導体を総合して「アーテミシニン化合物」と述べる)とが併用されるようにされた医薬組成物およびドーズ、ならびに硫酸化多糖とアーテミシニン化合物とを併用するマラリアの治療方法に関する。
拝啓技術
マラリアは、熱帯および亜熱帯地方を中心に年間約5億人もの患者が発生するように患者数においても、患者の死亡率においても、我々に大きな脅威を与える重大な保健医療問題である。
マラリアの治療は、クロロキン、ピメタリン、キニーネ、プログアニル、プリマキン、アーテミシニン化合物等が投与されている。
しかるに、昨今、これら抗マラリア剤に対する抵抗性を有するマラリア原虫(例えば Plasmodium folciporum)が急激に増加し、従来の抗マラリア剤よっては有効な治療が困難になっている。
硫酸化多糖は、抗レトロウイルス活性(特開昭62−215529)や抗マラリア活性(WO95/08334)を有することが知られている。
アーテミシニン(artemisinin)は、式IIの構造を有するセスキテルペンラクトンである。
この化合物は、中国において古来より用いられている薬草、Artemisia annua L.,Compositaeから単離され、抗マラリア活性を有することが知られている(Chinese Med.J.92,811(1979))。また、式Iの構造を有するアーテミシニンジヒドロ誘導体も、抗マラリア活性を有することが知られている。
(式Iにおいて、RはH(dihydroartemisinin)、CH3(artemether)、CH2CH3(arteether)、CH2C6H4COOM(artelinate)またはCOCH2CH2COOM(artesunate)を表し、MはHまたはカルボキシル基と共に塩を形成するカチオンである。)
マラリアの脅威の大きさに鑑み、マラリア治療のための、特に従来の抗マラリア剤に対して抵抗性を有する原虫に対し有効な、新たな医薬組成物、ドーズおよび治療方法が望まれる。
発明が解決しようとする課題
したがって、この発明は、硫酸化多糖の抗マラリア活性を増強して、マラリア治療のための、新たな医薬組成物、ドーズおよび方法を提供しようとするものである。この新たな医薬組成物、ドーズおよび方法は、好ましくは、従来の抗マラリア剤に耐性を有する原虫によるマラリアの治療に有効なものである。
課題を解決するための手段
我々は、我々が先に見出した、その抗マラリア作用機構が、従来の抗マラリア剤とは異なると考えられる硫酸化多糖に着目し、その抗マラリア作用を増強すべく研究を続けてきた。そして、硫酸化多糖をアーテミシニン化合物と併用すると、その抗マラリア活性が著しく増強されることを見出した。また、硫酸化多糖をアーテミシニン化合物体と併用すると、従来の抗マラリア剤に耐性の原虫によるマラリアに対し、増強された治療効果を有することを見出した。
すなわち、この発明の第1の態様は、アーテミシニン化合物と併用されたときにマラリア治療のために有効な量の硫酸化多糖、硫酸化多糖と併用されたときにマラリア治療のために有効な量のアーテミシニン化合物および医薬上許容される担体を含むマラリアの治療を必要とする患者に投与される医薬組成物、である。ここにおいて、より好ましくは、硫酸化多糖が硫酸化カードランである。
この発明の第2の態様は、アーテミシニン化合物と併用されたときにマラリア治療のために有効な量の硫酸化多糖および医薬上許容される担体とを含む、マラリアの治療を必要とする患者に投与される医薬組成物の分包と、硫酸化多糖と併用されたときに有効な量のアーテミシニン化合物ならびに医薬上許容される担体とを含む、マラリアの治療を必要とする患者に投与される医薬組成物の分包との組み合わせからなるドーズ、である。ここにおいて、より好ましくは、硫酸化多糖が硫酸化カードランである。
この発明のさらなる態様は、アーテミシニン化合物と併用されたときにマラリア治療のために有効な量の硫酸化多糖、および硫酸化多糖と併用されたときにマラリア治療のために有効な量のアーテミシニン化合物を併用して、マラリアの治療を必要とする患者に投与することを含む、マラリアの治療方法、である。
ここにおいて、より好ましくは、硫酸化多糖が硫酸化カードランである。
発明の実施の形態
この発明における「硫酸化多糖」は、多糖分子中に硫酸基部分を有するものである。硫酸基部分は、糖の水酸基とエステル結合しているO−硫酸である場合と、アミノ糖のアミノ基と結合したN−硫酸である場合とがある。
O−硫酸を有する硫酸化多糖は、天然に存在するものと、多糖に人工的にO−硫酸基を導入して得られたものがある。
天然に存在するO−硫酸を有する硫酸化多糖の例としては、コンドロイチン硫酸A、B、C、D、E、HおよびK、ならびにデルマタン硫酸およびケラタン硫酸が挙げられる。
人工的に導入されたO−硫酸基を有する硫酸化多糖は、この発明においてより好ましいものである。人工的に導入されたO−硫酸を有する硫酸化多糖の多糖部分としては、ペントースを主要構成糖とするもの(ペントサン)、ヘキソースを主要構成糖とするものなど、どのようなものでもよい。
ペントサンとしては、アラビナンおよびキシランがよく知られている。
ヘキソースを主要構成糖とする多糖としては、グルコースを主な構成糖とするグルカンが最も好ましい。
グルカンのグルコースユニット間の結合は、α−グリコシド結合であってもよいし、β−グリコシド結合であってもよいし、α−グリコシド結合とβ−グリコシド結合が混合されたものであってもよい。またグリコシド結合の結合位置は、1−3結合、1−4結合、1−6結合など、いずれでも良い。
より具体的には、α−1,6結合を主とするデキストラン(得られた硫酸化多糖はデキストラン硫酸として知られている)、α−1,4結合を主とするデキストリン、α−1,4結合とα−1,6結合が混合されたプルランを挙げることができる。
この発明において最も好ましい硫酸化多糖の多糖部分は、主としてβ−グリコシド結合結合を有するβ−グルカンである。β−グルカンとしては、主としてβ−1,4グリコシド結合を有するもの(セルロース)、主としてβ−1,6グリコシド結合を有するもの、および主としてβ−1,3グリコシド結合を有するものが存在する。この発明において最も好ましいβ−グルカンは、主としてβ−1,3グリコシド結合を有するものである。
α−グルカンについも、β−グルカンについても、上に「主として」とか「主とする」と述べたように、多くの場合、多糖には種々の結合様式(α−結合、β−結合、結合位置)が混在している。また、例えばグルカンであってもグルコース以外の構成糖ユニットが少量混ざっていることがある。
この発明において最も好ましい多糖である、主としてβ−1,3グリコシド結合を有するグルカンの例として、カードラン(curdlan)、スクシノグルカン(succinoglucan)、レンチナン(lentinan)、シゾフィラン(schizophyllan)、スクレロタン(sclerotan)およびルテアン(lutean)が挙げられる。これらβ−1,3グリコシド結合を有するグルカンの内、カードランおよびレンチナンが最も好ましい。
N−硫酸を有する硫酸化多糖についても、天然に存在するもの(例えばヘパリン)と、N−硫酸がアミノ糖のアミノ基に人工的に導入されたもの、例えばキトサンのアミノ基に硫酸基が導入されたものとがある。
この発明の硫酸化多糖として、カルボキシメチル化等の修飾された多糖も含まれる。
多糖にO−硫酸またはN−硫酸を導入するには、よく知られている方法が適用できる。硫酸化多糖の硫黄含量は、5〜25重量%、好ましくは10〜20重量%、特に好ましくは12〜17重量%である。
硫酸化多糖の分子量は、ゲル濾過法により測定したとき、平均分子量5,000〜50万、好ましくは2万〜20万、特に好ましくは5万〜12万である。一般に分子量が大きいほど、高い血中滞留性を有する。
硫酸化多糖は、好ましくは医薬として許容される塩として製剤、投与される。最も好ましい塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩等)、およびアンモニウム塩または非毒性アミン塩(アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、リジン塩、アルギニン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、ピペリジン塩およびピペラジン塩等)である。
式Iのアーテミシニンジヒドロ誘導体について、最も好ましいMは、Naである。アーテミシニンジヒドロ誘導体は、基ORの結合について、α−異性体とβ−異性体が存在しうる。
この発明の医薬組成物は、硫酸化多糖とアーテミシニン化合物の他に、医薬上許容される担体を含む。医薬上許容される担体は、その剤形に依存している。
この医薬組成物が経口投与されるものである場合、医薬上許容される担体として、トラガントガム、アラビアゴム、コーンスターチ、ゼラチン等の結合剤;リン酸二カルシウム等の賦形剤;馬鈴薯澱粉、アルギン酸等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;シュクロース等の甘味剤;色素;およびオレンジフレーバー等の香料;水、エタノール、グリセロール等の溶剤等が適宜使用される。
この発明の医薬用組成物が注射用組成物である場合、医薬上許容される担体として、滅菌水、等張塩水、pH緩衝液等を含んでいてよい。あるいは、この発明の注射用組成物は滅菌水に溶解するだけで使用できる滅菌粉末組成物、または凍結乾燥粉末組成物等であってもよい。この発明の注射用医薬組成物は、糖類(グルコース、マンニトール、およびデキストラン等)、多価アルコール(グリセロール等)、無機塩類(ナトリウム塩、およびマグネシウム塩等)を含んでいてもよい。
本発明の医薬組成物が点滴投与される場合、点滴投与組成物は、例えばグルコース、ビタミン、アミノ酸、および脂質等の栄養素を含んでいてもよい。
他の投与形態、例えば鼻孔投与、吸引投与、経皮投与などの剤形に添加される医薬担体も、当業者によりよく知られている。
この発明の医薬組成物が経口投与されるとき、その剤形は、制御放出または徐放製剤であってもよい。徐放形態としては、ゲル被覆製剤、多重被覆製剤などの通常の徐放または制御放出剤のほか、定位放出剤(幽門部破裂製剤、一二指腸発泡性)等がよく知られている。経口投与組成物は、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、アンプル剤、分包剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤等がある。
上述の剤形や医薬担体は、Reimington’s Pharmaceutical Science,ed.16(1980),Mack Publishing Companyに記載されている。この記載を引用することにより、本明細書の記載としてここに取り込む。
硫酸化多糖とアーテミシニン化合物は、上記のように、この発明の医薬組成物として、マラリア患者に一つの調剤として投与してよいが、硫酸化多糖を含む医薬組成物の分包とアーテミシニン化合物を含む医薬組成物の分包とを、どちらが先または後であっても、一定の間隔をおいて、マラリア患者に投与されてもよい。
すなわち、硫酸化多糖を含む医薬組成物の分包とアーテミシニン化合物を含む医薬組成物の分包の組み合わせからなるドーズ(dose)もまた、この発明の態様の一つに含まれる。
ここにおいて「分包」は、バイアルのように個々に包装された単位ドーズだけでなく、例えばバイアルから注射器に取った部分、点滴容器に納められた点滴組成物などもこの発明における「分包」に含まれる。
この発明の、2つの分包の組み合わせからなる「ドーズ」においては、2つの分包は、組み合わされて1つの包装形態となっている場合もあるが、異なる場所および/または時間における2つの分包の形態であってもよい。例えば、一方の分包は、注射用バイアル(あるいは注射器に納められた注射用組成物)であり、他方は前者の分包が投与された一定時間後に投与される経口投与用の分包であってもよい。
この発明のマラリアの治療方法においては、硫酸化多糖とアーテミシニン化合物とが併用投与される。
硫酸化多糖とアーテミシニン化合物との併用においては、硫酸化多糖とアーテミシニン化合物を、同時に患者に投与してもよいし、先後を問わず、一定の間隔をおいて、別々に投与してもよい。
この発明の医薬組成物またはドーズは、種々の経路、例えば、経粘膜投与(舌下投与、鼻孔内投与、口腔内粘膜投与など)、経口投与、経腸投与、経皮投与、静脈内投与、吸引投与、座薬による投与、または点滴投与等により、投与できる。これら投与方法は、投与すべき硫酸化多糖の量、患者の状態等に依存している。これら投与方法の内、静脈投与、特に注射投与および点滴投与が最も好ましい。
また、硫酸化多糖(または硫酸化多糖を含む医薬組成物の分包)の投与経路とアーテミシニン化合物(またはアーテミシニン化合物を含む医薬組成物の分包)の投与経路は、同じであっても、異なっていてもよい。例えば、硫酸化多糖をボーラス静脈投与し、アーテミシニン化合物を経口投与してもよい。
この発明において、硫酸化多糖の、アーテミシニン化合物において併用されたときにマラリア治療のために有効な量は、患者の年齢、体重、病状、投与方法により異なるが、通常、1から1,000mg/kg体重・日、好ましくは5〜500mg/kg体重・日である。
この発明において、アーテミシニン化合物の、硫酸化多糖と併用されたときにマラリア治療のために有効な量は、やはり患者の年齢、体重、病状、投与方法により異なるが、通常、1から5000mg/kg・日、好ましくは100から3000mg/kg・日である。
実施例
実施例1
この実施例では、重度のマラリア患者における発熱が、硫酸化多糖とアーテミシニン化合物とを併用することにより、より有効に解消されることを示す。
硫酸化多糖としてカードラン硫酸ナトリウム(以下「CRDS」、分子量8万、硫黄含量14.5%)を用い、アーテミシニン化合物として、アーテスネート(artesunate,dihydroartemisinin hemisuccinate,式I参照、J.Med.Chem.30,2147(1987))を用いた。
CRDSは、1バイアル当たり、CRDS100mg、マンニトール50mg、2塩基性リン酸ナトリウム18mg、リン酸緩衝液(pH6.5)を含む溶液として用いた。
CRDSを、4日間、8時間毎に4mg/kg、合計12mg/kg/日、静脈投与(点滴)した。
プラシーボは、生理食塩水を用い、CRDSと同じ投与スケジュールで投与した。
アーテスネート(1バイアル60mg)は、CRDS投与群およびプラシーボ投与群の両方に、IVにて、当初120mg、その後12時間毎に60mg投与して、投与量合計600mgになるまで投与を続けた(Bangkok Hospital for Tropical Diseasesにおける現行標準治療法)。可能な場合には、アーテスネート50mgを含む錠剤にて経口投与した。
患者50名は、ランダムに分けられたCRDS投与群とプラシーボ投与群とした。患者は、12から65歳の男女であり、P.falciparumが観察された。患者は、WHO基準で重度のマラリア症状ものとし(低血糖補正)、脳マラリアの症状を呈するものは含ませなかった。
CRDS投与群およびプラシーボ投与群について、発熱状態を観察した。このプロトコールからはずれた患者を除き、CRDS投与群22名、プラシーボ投与群22名について発熱状態の観察が完了した。
各患者について治療開始後発熱が解消されるまでの時間を記録した。また、治療群間(CRDS投与群およびプラシーボ投与群)で、120時間以前に発熱解消した者の数について、フィッシャー検定を行った。
結果を図1に示す。図1から明らかなように、CRDS投与群(アーテスネートと併用投与された)においては、プラシーボ投与群(アーテスネート単独投与)の全者の発熱が解消されるまでに9日間を要したのに比べ、5日内にすべて発熱が解消された。すなわち、CRDSとアーテスネートを併用投与することにより、アーテスネート単独投与に比べ、著しく短期間に発熱が解消された。フィッシャー検定の結果は、P<0.05であった。
なお、28日までの観察では、マラリア再発は見られなかった。
実施例2
この実施例では、マラリアによる昏睡が、CRDSとアーテスネートを併用投与することにより、アーテスネート単独投与に比べ、短期間に解消されることを示す。
硫酸化多糖としてCRDS(分子量8万、硫黄含量14.5%)を用い、アーテミシニン化合物として、アーテスネートを用いた。
CRDSは、1バイアル当たり、CRDS100mg、マンニトール50mg、2塩基性リン酸ナトリウム18mg、リン酸緩衝液(pH6.5)を含む溶液として用いた。
CRDSを、4日間、8時間毎に4mg/kg、合計12mg/kg/日、静脈投与(点滴)した。
プラシーボは、生理食塩水を用い、CRDSと同じ投与スケジュールで投与した。
アーテスネート(1バイアル60mg)は、CRDS投与群およびプラシーボ投与群の両方に、IVにて、当初120mg、その後12時間毎に60mg投与して、投与量合計600mgになるまで投与を続けた。可能な場合には、アーテスネート50mgを含む錠剤にて経口投与した。
患者は、18から65歳までの男性30名。患者は、WHO基準で重度/脳マラリア症状を呈する(低血糖補正)、昏睡状態。無性マラリア寄生虫が見られ、P−サイトテスト陽性。
昏睡状態は、Glasgow Coma Scoreによりレベルを定めた。
CRDS投与群およびプラシーボ投与群について、各13名がこのプロトコールを完了した。各患者の昏睡から回復するまでの時間を記録した。また、120時間までに昏睡から回復した者の数について、治療群間(CRDS投与群およびプラシーボ投与群)でフィッシャー検定を行った。
結果を図2に示す。図2から明らかなように、CRDS投与群(アーテスネートと併用投与された)では、患者は5日以内にすべて昏睡から回復した。一方、プラシーボ投与群(アーテスネート単独投与)では、全数回復までに9日間を要した。フィッシャー検定は、0.4800であった。
なお、28日までの観察では、マラリア再発は見られなかった。
以上のように、CRDSとアーテスネーテとを併用投与すると、アーテスネート単独投与に比べ、有意差はないものの実施例1と同様に、脳マラリアによ昏睡からの回復が著しく短縮された。
【図面の簡単な説明】
硫酸化カードラン(CRDS)とアーテスネートを併用投与したときの発熱の解消についての試験結果を示す図である。実線はCRDS+アーテスネート、点線はプラシーボ+アーテスネート。
硫酸化カードラン(CRDS)とアーテスネートを併用投与したときの昏睡からの回復についての試験結果を示す図である。実線はCRDS+アーテスネート、点線はプラシーボ+アーテスネート。
この発明は、マラリアの治療のための医薬組成物、ドーズおよび方法に関する。詳細には、この発明は、硫酸化多糖と、アーテミシニンまたはアーテミシニンジヒドロ誘導体(アーテミシニンおよびアーテミシニンジヒドロ誘導体を総合して「アーテミシニン化合物」と述べる)とが併用されるようにされた医薬組成物およびドーズ、ならびに硫酸化多糖とアーテミシニン化合物とを併用するマラリアの治療方法に関する。
拝啓技術
マラリアは、熱帯および亜熱帯地方を中心に年間約5億人もの患者が発生するように患者数においても、患者の死亡率においても、我々に大きな脅威を与える重大な保健医療問題である。
マラリアの治療は、クロロキン、ピメタリン、キニーネ、プログアニル、プリマキン、アーテミシニン化合物等が投与されている。
しかるに、昨今、これら抗マラリア剤に対する抵抗性を有するマラリア原虫(例えば Plasmodium folciporum)が急激に増加し、従来の抗マラリア剤よっては有効な治療が困難になっている。
硫酸化多糖は、抗レトロウイルス活性(特開昭62−215529)や抗マラリア活性(WO95/08334)を有することが知られている。
アーテミシニン(artemisinin)は、式IIの構造を有するセスキテルペンラクトンである。
この化合物は、中国において古来より用いられている薬草、Artemisia annua L.,Compositaeから単離され、抗マラリア活性を有することが知られている(Chinese Med.J.92,811(1979))。また、式Iの構造を有するアーテミシニンジヒドロ誘導体も、抗マラリア活性を有することが知られている。
(式Iにおいて、RはH(dihydroartemisinin)、CH3(artemether)、CH2CH3(arteether)、CH2C6H4COOM(artelinate)またはCOCH2CH2COOM(artesunate)を表し、MはHまたはカルボキシル基と共に塩を形成するカチオンである。)
マラリアの脅威の大きさに鑑み、マラリア治療のための、特に従来の抗マラリア剤に対して抵抗性を有する原虫に対し有効な、新たな医薬組成物、ドーズおよび治療方法が望まれる。
発明が解決しようとする課題
したがって、この発明は、硫酸化多糖の抗マラリア活性を増強して、マラリア治療のための、新たな医薬組成物、ドーズおよび方法を提供しようとするものである。この新たな医薬組成物、ドーズおよび方法は、好ましくは、従来の抗マラリア剤に耐性を有する原虫によるマラリアの治療に有効なものである。
課題を解決するための手段
我々は、我々が先に見出した、その抗マラリア作用機構が、従来の抗マラリア剤とは異なると考えられる硫酸化多糖に着目し、その抗マラリア作用を増強すべく研究を続けてきた。そして、硫酸化多糖をアーテミシニン化合物と併用すると、その抗マラリア活性が著しく増強されることを見出した。また、硫酸化多糖をアーテミシニン化合物体と併用すると、従来の抗マラリア剤に耐性の原虫によるマラリアに対し、増強された治療効果を有することを見出した。
すなわち、この発明の第1の態様は、アーテミシニン化合物と併用されたときにマラリア治療のために有効な量の硫酸化多糖、硫酸化多糖と併用されたときにマラリア治療のために有効な量のアーテミシニン化合物および医薬上許容される担体を含むマラリアの治療を必要とする患者に投与される医薬組成物、である。ここにおいて、より好ましくは、硫酸化多糖が硫酸化カードランである。
この発明の第2の態様は、アーテミシニン化合物と併用されたときにマラリア治療のために有効な量の硫酸化多糖および医薬上許容される担体とを含む、マラリアの治療を必要とする患者に投与される医薬組成物の分包と、硫酸化多糖と併用されたときに有効な量のアーテミシニン化合物ならびに医薬上許容される担体とを含む、マラリアの治療を必要とする患者に投与される医薬組成物の分包との組み合わせからなるドーズ、である。ここにおいて、より好ましくは、硫酸化多糖が硫酸化カードランである。
この発明のさらなる態様は、アーテミシニン化合物と併用されたときにマラリア治療のために有効な量の硫酸化多糖、および硫酸化多糖と併用されたときにマラリア治療のために有効な量のアーテミシニン化合物を併用して、マラリアの治療を必要とする患者に投与することを含む、マラリアの治療方法、である。
ここにおいて、より好ましくは、硫酸化多糖が硫酸化カードランである。
発明の実施の形態
この発明における「硫酸化多糖」は、多糖分子中に硫酸基部分を有するものである。硫酸基部分は、糖の水酸基とエステル結合しているO−硫酸である場合と、アミノ糖のアミノ基と結合したN−硫酸である場合とがある。
O−硫酸を有する硫酸化多糖は、天然に存在するものと、多糖に人工的にO−硫酸基を導入して得られたものがある。
天然に存在するO−硫酸を有する硫酸化多糖の例としては、コンドロイチン硫酸A、B、C、D、E、HおよびK、ならびにデルマタン硫酸およびケラタン硫酸が挙げられる。
人工的に導入されたO−硫酸基を有する硫酸化多糖は、この発明においてより好ましいものである。人工的に導入されたO−硫酸を有する硫酸化多糖の多糖部分としては、ペントースを主要構成糖とするもの(ペントサン)、ヘキソースを主要構成糖とするものなど、どのようなものでもよい。
ペントサンとしては、アラビナンおよびキシランがよく知られている。
ヘキソースを主要構成糖とする多糖としては、グルコースを主な構成糖とするグルカンが最も好ましい。
グルカンのグルコースユニット間の結合は、α−グリコシド結合であってもよいし、β−グリコシド結合であってもよいし、α−グリコシド結合とβ−グリコシド結合が混合されたものであってもよい。またグリコシド結合の結合位置は、1−3結合、1−4結合、1−6結合など、いずれでも良い。
より具体的には、α−1,6結合を主とするデキストラン(得られた硫酸化多糖はデキストラン硫酸として知られている)、α−1,4結合を主とするデキストリン、α−1,4結合とα−1,6結合が混合されたプルランを挙げることができる。
この発明において最も好ましい硫酸化多糖の多糖部分は、主としてβ−グリコシド結合結合を有するβ−グルカンである。β−グルカンとしては、主としてβ−1,4グリコシド結合を有するもの(セルロース)、主としてβ−1,6グリコシド結合を有するもの、および主としてβ−1,3グリコシド結合を有するものが存在する。この発明において最も好ましいβ−グルカンは、主としてβ−1,3グリコシド結合を有するものである。
α−グルカンについも、β−グルカンについても、上に「主として」とか「主とする」と述べたように、多くの場合、多糖には種々の結合様式(α−結合、β−結合、結合位置)が混在している。また、例えばグルカンであってもグルコース以外の構成糖ユニットが少量混ざっていることがある。
この発明において最も好ましい多糖である、主としてβ−1,3グリコシド結合を有するグルカンの例として、カードラン(curdlan)、スクシノグルカン(succinoglucan)、レンチナン(lentinan)、シゾフィラン(schizophyllan)、スクレロタン(sclerotan)およびルテアン(lutean)が挙げられる。これらβ−1,3グリコシド結合を有するグルカンの内、カードランおよびレンチナンが最も好ましい。
N−硫酸を有する硫酸化多糖についても、天然に存在するもの(例えばヘパリン)と、N−硫酸がアミノ糖のアミノ基に人工的に導入されたもの、例えばキトサンのアミノ基に硫酸基が導入されたものとがある。
この発明の硫酸化多糖として、カルボキシメチル化等の修飾された多糖も含まれる。
多糖にO−硫酸またはN−硫酸を導入するには、よく知られている方法が適用できる。硫酸化多糖の硫黄含量は、5〜25重量%、好ましくは10〜20重量%、特に好ましくは12〜17重量%である。
硫酸化多糖の分子量は、ゲル濾過法により測定したとき、平均分子量5,000〜50万、好ましくは2万〜20万、特に好ましくは5万〜12万である。一般に分子量が大きいほど、高い血中滞留性を有する。
硫酸化多糖は、好ましくは医薬として許容される塩として製剤、投与される。最も好ましい塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩等)、およびアンモニウム塩または非毒性アミン塩(アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、リジン塩、アルギニン塩、エチレンジアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、ピペリジン塩およびピペラジン塩等)である。
式Iのアーテミシニンジヒドロ誘導体について、最も好ましいMは、Naである。アーテミシニンジヒドロ誘導体は、基ORの結合について、α−異性体とβ−異性体が存在しうる。
この発明の医薬組成物は、硫酸化多糖とアーテミシニン化合物の他に、医薬上許容される担体を含む。医薬上許容される担体は、その剤形に依存している。
この医薬組成物が経口投与されるものである場合、医薬上許容される担体として、トラガントガム、アラビアゴム、コーンスターチ、ゼラチン等の結合剤;リン酸二カルシウム等の賦形剤;馬鈴薯澱粉、アルギン酸等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;シュクロース等の甘味剤;色素;およびオレンジフレーバー等の香料;水、エタノール、グリセロール等の溶剤等が適宜使用される。
この発明の医薬用組成物が注射用組成物である場合、医薬上許容される担体として、滅菌水、等張塩水、pH緩衝液等を含んでいてよい。あるいは、この発明の注射用組成物は滅菌水に溶解するだけで使用できる滅菌粉末組成物、または凍結乾燥粉末組成物等であってもよい。この発明の注射用医薬組成物は、糖類(グルコース、マンニトール、およびデキストラン等)、多価アルコール(グリセロール等)、無機塩類(ナトリウム塩、およびマグネシウム塩等)を含んでいてもよい。
本発明の医薬組成物が点滴投与される場合、点滴投与組成物は、例えばグルコース、ビタミン、アミノ酸、および脂質等の栄養素を含んでいてもよい。
他の投与形態、例えば鼻孔投与、吸引投与、経皮投与などの剤形に添加される医薬担体も、当業者によりよく知られている。
この発明の医薬組成物が経口投与されるとき、その剤形は、制御放出または徐放製剤であってもよい。徐放形態としては、ゲル被覆製剤、多重被覆製剤などの通常の徐放または制御放出剤のほか、定位放出剤(幽門部破裂製剤、一二指腸発泡性)等がよく知られている。経口投与組成物は、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、アンプル剤、分包剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤等がある。
上述の剤形や医薬担体は、Reimington’s Pharmaceutical Science,ed.16(1980),Mack Publishing Companyに記載されている。この記載を引用することにより、本明細書の記載としてここに取り込む。
硫酸化多糖とアーテミシニン化合物は、上記のように、この発明の医薬組成物として、マラリア患者に一つの調剤として投与してよいが、硫酸化多糖を含む医薬組成物の分包とアーテミシニン化合物を含む医薬組成物の分包とを、どちらが先または後であっても、一定の間隔をおいて、マラリア患者に投与されてもよい。
すなわち、硫酸化多糖を含む医薬組成物の分包とアーテミシニン化合物を含む医薬組成物の分包の組み合わせからなるドーズ(dose)もまた、この発明の態様の一つに含まれる。
ここにおいて「分包」は、バイアルのように個々に包装された単位ドーズだけでなく、例えばバイアルから注射器に取った部分、点滴容器に納められた点滴組成物などもこの発明における「分包」に含まれる。
この発明の、2つの分包の組み合わせからなる「ドーズ」においては、2つの分包は、組み合わされて1つの包装形態となっている場合もあるが、異なる場所および/または時間における2つの分包の形態であってもよい。例えば、一方の分包は、注射用バイアル(あるいは注射器に納められた注射用組成物)であり、他方は前者の分包が投与された一定時間後に投与される経口投与用の分包であってもよい。
この発明のマラリアの治療方法においては、硫酸化多糖とアーテミシニン化合物とが併用投与される。
硫酸化多糖とアーテミシニン化合物との併用においては、硫酸化多糖とアーテミシニン化合物を、同時に患者に投与してもよいし、先後を問わず、一定の間隔をおいて、別々に投与してもよい。
この発明の医薬組成物またはドーズは、種々の経路、例えば、経粘膜投与(舌下投与、鼻孔内投与、口腔内粘膜投与など)、経口投与、経腸投与、経皮投与、静脈内投与、吸引投与、座薬による投与、または点滴投与等により、投与できる。これら投与方法は、投与すべき硫酸化多糖の量、患者の状態等に依存している。これら投与方法の内、静脈投与、特に注射投与および点滴投与が最も好ましい。
また、硫酸化多糖(または硫酸化多糖を含む医薬組成物の分包)の投与経路とアーテミシニン化合物(またはアーテミシニン化合物を含む医薬組成物の分包)の投与経路は、同じであっても、異なっていてもよい。例えば、硫酸化多糖をボーラス静脈投与し、アーテミシニン化合物を経口投与してもよい。
この発明において、硫酸化多糖の、アーテミシニン化合物において併用されたときにマラリア治療のために有効な量は、患者の年齢、体重、病状、投与方法により異なるが、通常、1から1,000mg/kg体重・日、好ましくは5〜500mg/kg体重・日である。
この発明において、アーテミシニン化合物の、硫酸化多糖と併用されたときにマラリア治療のために有効な量は、やはり患者の年齢、体重、病状、投与方法により異なるが、通常、1から5000mg/kg・日、好ましくは100から3000mg/kg・日である。
実施例
実施例1
この実施例では、重度のマラリア患者における発熱が、硫酸化多糖とアーテミシニン化合物とを併用することにより、より有効に解消されることを示す。
硫酸化多糖としてカードラン硫酸ナトリウム(以下「CRDS」、分子量8万、硫黄含量14.5%)を用い、アーテミシニン化合物として、アーテスネート(artesunate,dihydroartemisinin hemisuccinate,式I参照、J.Med.Chem.30,2147(1987))を用いた。
CRDSは、1バイアル当たり、CRDS100mg、マンニトール50mg、2塩基性リン酸ナトリウム18mg、リン酸緩衝液(pH6.5)を含む溶液として用いた。
CRDSを、4日間、8時間毎に4mg/kg、合計12mg/kg/日、静脈投与(点滴)した。
プラシーボは、生理食塩水を用い、CRDSと同じ投与スケジュールで投与した。
アーテスネート(1バイアル60mg)は、CRDS投与群およびプラシーボ投与群の両方に、IVにて、当初120mg、その後12時間毎に60mg投与して、投与量合計600mgになるまで投与を続けた(Bangkok Hospital for Tropical Diseasesにおける現行標準治療法)。可能な場合には、アーテスネート50mgを含む錠剤にて経口投与した。
患者50名は、ランダムに分けられたCRDS投与群とプラシーボ投与群とした。患者は、12から65歳の男女であり、P.falciparumが観察された。患者は、WHO基準で重度のマラリア症状ものとし(低血糖補正)、脳マラリアの症状を呈するものは含ませなかった。
CRDS投与群およびプラシーボ投与群について、発熱状態を観察した。このプロトコールからはずれた患者を除き、CRDS投与群22名、プラシーボ投与群22名について発熱状態の観察が完了した。
各患者について治療開始後発熱が解消されるまでの時間を記録した。また、治療群間(CRDS投与群およびプラシーボ投与群)で、120時間以前に発熱解消した者の数について、フィッシャー検定を行った。
結果を図1に示す。図1から明らかなように、CRDS投与群(アーテスネートと併用投与された)においては、プラシーボ投与群(アーテスネート単独投与)の全者の発熱が解消されるまでに9日間を要したのに比べ、5日内にすべて発熱が解消された。すなわち、CRDSとアーテスネートを併用投与することにより、アーテスネート単独投与に比べ、著しく短期間に発熱が解消された。フィッシャー検定の結果は、P<0.05であった。
なお、28日までの観察では、マラリア再発は見られなかった。
実施例2
この実施例では、マラリアによる昏睡が、CRDSとアーテスネートを併用投与することにより、アーテスネート単独投与に比べ、短期間に解消されることを示す。
硫酸化多糖としてCRDS(分子量8万、硫黄含量14.5%)を用い、アーテミシニン化合物として、アーテスネートを用いた。
CRDSは、1バイアル当たり、CRDS100mg、マンニトール50mg、2塩基性リン酸ナトリウム18mg、リン酸緩衝液(pH6.5)を含む溶液として用いた。
CRDSを、4日間、8時間毎に4mg/kg、合計12mg/kg/日、静脈投与(点滴)した。
プラシーボは、生理食塩水を用い、CRDSと同じ投与スケジュールで投与した。
アーテスネート(1バイアル60mg)は、CRDS投与群およびプラシーボ投与群の両方に、IVにて、当初120mg、その後12時間毎に60mg投与して、投与量合計600mgになるまで投与を続けた。可能な場合には、アーテスネート50mgを含む錠剤にて経口投与した。
患者は、18から65歳までの男性30名。患者は、WHO基準で重度/脳マラリア症状を呈する(低血糖補正)、昏睡状態。無性マラリア寄生虫が見られ、P−サイトテスト陽性。
昏睡状態は、Glasgow Coma Scoreによりレベルを定めた。
CRDS投与群およびプラシーボ投与群について、各13名がこのプロトコールを完了した。各患者の昏睡から回復するまでの時間を記録した。また、120時間までに昏睡から回復した者の数について、治療群間(CRDS投与群およびプラシーボ投与群)でフィッシャー検定を行った。
結果を図2に示す。図2から明らかなように、CRDS投与群(アーテスネートと併用投与された)では、患者は5日以内にすべて昏睡から回復した。一方、プラシーボ投与群(アーテスネート単独投与)では、全数回復までに9日間を要した。フィッシャー検定は、0.4800であった。
なお、28日までの観察では、マラリア再発は見られなかった。
以上のように、CRDSとアーテスネーテとを併用投与すると、アーテスネート単独投与に比べ、有意差はないものの実施例1と同様に、脳マラリアによ昏睡からの回復が著しく短縮された。
【図面の簡単な説明】
硫酸化カードラン(CRDS)とアーテスネートを併用投与したときの発熱の解消についての試験結果を示す図である。実線はCRDS+アーテスネート、点線はプラシーボ+アーテスネート。
硫酸化カードラン(CRDS)とアーテスネートを併用投与したときの昏睡からの回復についての試験結果を示す図である。実線はCRDS+アーテスネート、点線はプラシーボ+アーテスネート。
Claims (5)
- 硫酸化多糖が硫酸化カードランである、請求項1または2に記載の医薬。
- 硫酸化多糖が硫酸化カードランである、請求項4に記載の治療方法。
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