本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
1.少なくとも第1の保護膜と偏光膜と、シクロオレフィン樹脂を含有する熱可塑性高分子からなる第2の保護膜と、該第2の保護膜の面に実質的に垂直配向した棒状液晶の配向を固定化した位相差層とがこの順序で配置された偏光板であって、該第2の保護膜と該位相差層の23℃、55%RHの環境下で波長590nmにおける式2、3で表されるリターデーションRo、Rtはそれぞれ、
第2の保護膜:Ro:30〜115nm
Rt:100〜250nm
Rt/Ro:1.6〜4.4
位相差層: Ro:0〜10nm
Rt:−100〜−400nmであり、該第2の保護膜と該位相差層との積層物の下記式1で表される波長分散特性が2.0〜6.5nmであることを特徴とする偏光板。
式1:D(R40)=R40(630)−R40(480)(式中、R40は水平面上に置いた試料を、試料面内の遅相軸を回転軸として40°傾けて、垂線方向に測定したリターデーション値を表す。(630)、(480)は各々の測定波長(nm)を表す。)
式2:Ro=(nx−ny)×d
式3:Rt=((nx+ny)/2−nz)×d(式中、第2の保護膜または位相差層、もしくは第2の保護膜と位相差層との積層物の面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸に直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnz、dは各々の厚み(nm)を表す。)
2.前記1に記載の偏光板と、液晶セルを挟持するように配置され、同一方向にラビング軸を有する2枚のガラス基板を有し、黒表示の際に液晶分子の配向方向が該ラビング軸に実質的に平行となる液晶セルと、第3の保護膜と第2の偏光膜と第4の保護膜によって構成された偏光板とをこの順に有し、該請求の範囲1項に記載の偏光板の第2の保護膜の面内遅相軸と、該液晶分子の配向方向が実質的に平行であり、且つ第3の保護膜がRo:0〜5nm,Rt:−10〜10nmであり、さらに該第3の保護膜の膜厚が20〜45μmであることを特徴とする液晶表示装置。
3.前記1に記載の偏光板と、液晶セルを挟持するように配置され、同一方向にラビング軸を有する2枚のガラス基板を有し、黒表示の際に液晶分子の配向方向が該ラビング軸に実質的に平行となる液晶セルと、第3の保護膜と第2の偏光膜と第4の保護膜によって構成された偏光板とをこの順に有し、該請求の範囲1項に記載の偏光板の第2の保護膜の面内遅相軸と、該液晶分子の配向方向が実質的に直交であり、第3の保護膜がRo:0〜5nm,Rt:−10〜10nmであり、さらに該第3の保護膜の膜厚が20〜45μmであることを特徴とする液晶表示装置。
4.前記位相差層が重合性液晶材料を用いて形成されることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の偏光板。
5.前記重合性液晶材料が重合性モノマーであることを特徴とする前記4に記載の偏光板。
本発明により、横電界スイッチングモード型液晶表示装置に適した偏光板であり、視角を変えたときの色味変化を低減した偏光板及びそれを用いた液晶表示装置を提供することができる。
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者らは上記課題について鋭意検討を重ねた結果、横電界スイッチングモード型(IPSモード型ともいう)液晶表示装置において、位相差板の位相差の波長分散特性、特にフィルム厚み方向の位相差の波長分散特性を制御することが、視角を変えたときの色味変化に対して大きく影響することが確認され、更に検討を重ねることで、視角の適点において色味変動を制御できる手段に至ったものである。また位相差フィルムとして機能する前記第2の保護膜は、シクロオレフィン樹脂を含有しているが、シクロオレフィン樹脂は光弾性係数が小さく、特にIPSモード型TVなどの大型パネルの用途において、引っ張り応力や耐久性試験などで発生しやすい、表示装置の四隅が白く見えるコーナームラを抑えることができる。
従って、本発明の横電界スイッチングモード型液晶表示装置用の偏光板は、少なくとも第1の保護膜と偏光膜と、シクロオレフィン樹脂を含有する熱可塑性高分子からなる第2の保護膜と、該第2の保護膜の面に実質的に垂直配向した棒状液晶の配向を固定化した位相差層とがこの順序で配置された偏光板であって、該第2の保護膜と該位相差層の23℃、55%RHの環境下で波長590nmにおける式2、3で表されるリターデーションRo、Rtはそれぞれ、
第2の保護膜:Ro:30〜115nm
Rt:100〜250nm
Rt/Ro:1.6〜4.4
位相差層: Ro:0〜10nm
Rt:−100〜−400nmであり、該第2の保護膜と該位相差層との積層物の下記式1で表される波長分散特性が2.0〜6.5nmであることを特徴とする。
式1:D(R40)=R40(630)−R40(480)(式中、R40は水平面上に置いた試料を、試料面内の遅相軸を回転軸(傾斜軸)として40°傾けて、垂線方向に測定したリターデーション値を表す。(630)、(480)は各々の測定波長(nm)を表す。)
式2:Ro=(nx−ny)×d
式3:Rt=((nx+ny)/2−nz)×d(式中、第2の保護膜または位相差層、もしくは第2の保護膜と位相差層との積層物の面内の遅相軸方向の屈折率をnx、面内で遅相軸に直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnz、dは各々の厚み(nm)を表す。)
第2の保護膜のリターデーションを上記数値範囲とするためには、該第2の保護膜を、フィルムを加熱処理した状態で2軸方向に延伸処理を行うことが好ましい。また、該シクロオレフィン樹脂を含有しているフィルムを加熱処理して延伸する場合には、残留歪を出来るだけ少なくするために、ガラス転移点−20〜+30℃程度の範囲で1.1倍〜10倍程度に、搬送方向および搬送方向と直交する方向に延伸する。該シクロオレフィン樹脂を含有しているフィルムをフィルムの搬送方向と直交する方向に延伸するとRoの値が大きくなり、搬送方向に延伸するとRoの値が減少して、Rtが大きくなるので、これらの延伸倍率を調節することにより、好ましいリターデーション値を得ることができる。あるいは溶液流延にて作製したフィルムを、残留溶媒量が2〜100質量%程度残った状態で、搬送方向と直交する方向に1.2〜8倍程度に延伸することが好ましい。また、前記位相差層のリターデーションを上記範囲とするためには、Roについては、液晶分子を実質的に垂直配向させることで達成できる。そして、液晶材料の実質的な垂直配向を達成するためには、界面活性剤、溶媒乾燥後の熱処理温度(配向処理温度)、熱処理時間(配向処理時間)、配向膜を調整することで達成できる。しかし液晶材料と空気界面のプレチルト角が基盤側まで到達するため、特別な配向膜を必要としない場合もある。Rtについては、位相差層の膜厚制御、液晶材料の選択で調整できる。
また、前記第2の保護膜と前記位相差層とを積層した状態におけるリターデーションD(R40)を前記の数値範囲とするためには、第2の保護膜と位相差層の試料の面内の遅相軸を回転軸として40°傾けて測定したリターデーション値の波長分散を調整する必要がある。しかし、一般的にシクロオレフィンフィルムのリタデーションの波長分散は、液晶材料のリタデーションの波長分散に比べて小さい。そのため、D(R40)を前記の数値範囲とすることは、位相差層のリタデーションの波長分散を調整することにより達成できる。そして、位相差層のリタデーションの波長分散は位相差層の膜厚の調整および液晶材料の選択により達成できる。
また、前記位相差層の斜め方向の位相差の制御は、該位相差層の膜厚か液晶材料の選択で制御することが好ましい。斜め方向の位相差を小さくするには膜厚を薄くするか、液晶材料のΔnを小さくすることで達成できる。
また、前記2、前記3に係る本発明の液晶表示装置は、前記本発明の偏光板と、IPSモード型液晶セルの特徴である黒表示の際に実質的に液晶セルのガラス基板に平行方向に液晶分子が配向し、かつそれぞれの液晶分子の配向方向が互いに実質的に平行である液晶セルと、第3の保護膜と第2の偏光膜と第4の保護膜によって構成された偏光板とを有し、前記1に記載の偏光板の第2の保護膜の面内遅相軸と、液晶セルの配向方向が実質的に平行もしくは直交であり、且つ第3の保護膜がRo:0〜5nm,Rt:−10〜10nmであり、さらに第3の保護膜の膜厚が20〜45μmであることを特徴とする横電界スイッチングモード型液晶表示装置である。
即ち、第2の保護膜及び位相差層のリターデーションを特定範囲に制御し、更に第3の保護膜のリターデーションRo、Rtを低下させ薄膜化することで、横電界スイッチングモード型液晶表意装置の視野角拡大効果に加えて色味の変化を大幅に抑えることができ、従来は黒表示の際の色味変化が著しかったが、それを大幅に低減できたものである。
前記第3の保護膜のリターデーションを前記数値範囲とするためには、第3の保護膜がセルロースエステル系フィルムであれば、溶融製膜にて製造するか、あるいは溶液製膜にて、途中でガラス転移点以上の温度で15秒以上保持するか、あるいはセルロースエステルと反対の複屈折発現性を持つ添加剤を加えることが好ましい。また、シクロオレフィン樹脂系フィルムであれば、溶融もしくは溶液流延に製造したフィルムを延伸処理を行わずにそのまま用いることが好ましい。
以下、本発明を各要素毎に詳細に説明する。
〈リターデーションの測定〉
本発明におけるリターデーションの測定は、一例として、王子計測機器製KOBRA21ADHを用いて23℃、55%RHの環境下で590nm、もしくは所定の波長(480nm、630nm)で行うことができる。また、リターデーションを計算する際には、アッベの屈折計1T(株式会社アタゴ製)を用いて各試料の該当波長の屈折率を測定した値を用いる。また、積層物の場合、各層の屈折率の平均値を用いることとする。膜厚d(nm)は、市販のマイクロメーターを用いて試料の厚さを何点か測定し平均値を用いる。
本発明における第2の保護膜と位相差層との積層物のリターデーション(Ro、Rt、R40)のうち、R40を計算する際は、水平面上に置いた積層物の面内遅相軸を回転軸とし、積層物を40°傾斜させた時のリターデーションを垂線方向に測定して計算に用いる。R40の測定原理を図1に示す。
〈偏光板及び液晶表示装置の構成〉
本発明の偏光板及び液晶表示装置の構成を図を用いて説明する。
図2A.は前記2に係わる偏光板及び液晶表示装置の構成である。
視認側より第1の保護膜1、第1の偏光膜5、第2の保護膜2、棒状液晶の配向を固定化した位相差層7により視認側の偏光板を構成し、該偏光板はガラス基板9、10により挟持された液晶セル8に貼合される。更に該液晶セル8とは反対側の面に、第3の保護膜3、第2の偏光膜6、第4の保護膜4により構成される偏光板が配置される。
第2の保護膜の面内遅相軸bと液晶セルの配向方向cは平行である。偏光膜の偏光透過軸a、ガラス基板のラビング軸dは図で示す方向にある。図中、位相差層7は第1の偏光膜5と第2の保護膜2の間に配置されてもよい。
図2B.は前記3に係わる偏光板及び液晶表示装置の構成である。
視認側より第4の保護膜4、第2の偏光膜6、第3の保護膜3により偏光板を構成し、該偏光板はガラス基板9、10により挟持された液晶セル8に貼合される。更に該液晶セル8とは反対側の面に、棒状液晶の配向を固定化した位相差層7、第2の保護膜2、第1の偏光膜5、第1の保護膜1により構成される偏光板が配置される。
第2の保護膜の面内遅相軸bと液晶セルの配向方向cは直交である。偏光膜の偏光透過軸a、ガラス基板のラビング軸dは図で示す方向にある。図中、位相差層7は第1の偏光膜5と第2の保護膜2の間に配置されてもよい。
《位相差層》
本発明の偏光板は、液晶材料(もしくは液晶の溶液)を基材に塗布し、乾燥と熱処理(配向処理ともいう)を行い紫外線硬化もしくは熱重合などで液晶配向の固定化を行い、実質的に垂直配向した棒状液晶による位相差層を有することが特徴である。該位相差層は、基材として第2の保護膜上に形成されるか、別の基材上に形成され、第2の保護膜に貼合される。本発明では、偏光板の薄膜化や取り扱いの簡便さから、第2の保護膜上に液晶層として形成されることが好ましい。
ここでいう垂直配向とは、得られた液晶配向層の光学位相差を評価するために、偏光顕微鏡を用いて評価した場合、液晶配向層をクロスニコル偏光子の間に挟んだ場合に黒色に見え、クロスニコル偏光子の間で液晶配向層を傾けた場合に白色に見えるものを垂直配向しているものと定義する。
液晶配向層を形成する際には、いわゆる垂直配向膜を用いても良く、垂直配向膜として特に制限はないが、液晶材料自身が空気界面で垂直配向する場合で、その配向規制力が空気界面と反対の界面まで及ぶ場合には該配向膜は特に必要ではなく、構成が簡素化できる観点からもその方が好ましい。垂直配向膜を使用する場合は、特開2005−148473号公報などに記載されている(メタ)アクリル系ブロックポリマーを含有するブロックポリマー組成物の架橋体からなる配向膜等を用いることも好ましい。
本発明に係る位相差層はRoが0〜10nm、Rtが−100〜−400nmの範囲にある実質的に垂直配向した棒状液晶による位相差層である。更にRoは0〜5nmの範囲がより好ましい。該位相差層を上記範囲とするためには、位相差層の膜厚制御、紫外線硬化時の温度、チルト角制御、および支持体と空気界面でのプレチルト角の制御を行うことが好ましい。
前記液晶層は、所定の温度で液晶相となり得る液晶材料が、所定の液晶規則性を有して硬化することにより形成されたものである。液晶相を示す温度の上限は、例えば基材の透明樹脂フィルムがダメージを受けない温度であれば特に限定されるものはない。具体的には、プロセス温度のコントロールの容易性と寸法精度維持の観点から120℃以下が好ましく、より好ましくは100℃以下の温度で液晶相となる液晶材料が好適に用いられる。一方、液晶相を示す温度の下限は、位相差板として用いる際に、液晶材料が配向状態を保持し得る温度であるといえる。
本発明の位相差板として用いられる液晶材料としては、重合性液晶材料を用いることが好ましい。重合性液晶材料は、所定の活性放射線を照射することにより重合させて用いることができ、重合させた状態では配向状態は固定化されているので、重合性液晶材料を用いる場合には、液晶相となる温度の下限は特に限定されるものではない。
重合性液晶材料としては、重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマー、もしくは重合性液晶ポリマーのいずれかを用いることができ、相互に混合して用いることもできる。重合性液晶材料は、配向状態を固定化することが可能であるので、液晶の配向を低温で容易に行うことが可能であり、かつ使用に際しては配向状態が固定化されているので、温度等の使用条件にかかわらず使用することができる。
重合性液晶材料としては、上記のうちでも、特に重合性液晶モノマーが好適に用いられる。重合性液晶モノマーは、重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマーと比較して、より低温で配向が可能であり、かつ配向に際しての感度が高いことから、配向させることが容易だからである。
具体的な重合性液晶モノマーとしては、下記の一般式(1)で表される棒状液晶性化合物(I)、および下記の一般式(2)で表される棒状液晶性化合物(II)を挙げることができる。化合物(I)としては、一般式(1)に包含される化合物の2種以上を混合して使用することもでき、同様に、化合物(II)としては、一般式(2)に包含される化合物の2種以上を混合して使用することもできる。また、化合物(I)を1種以上と化合物(II)を1種以上を混合して使用することもできる。
化合物(I)を表す一般式(1)において、R1およびR2はそれぞれ水素またはメチル基を示すが、液晶相を示す温度範囲の広さからR1およびR2は共に水素であることが好ましい。Xは水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基、もしくはニトロ基のいずれであっても差し支えないが、塩素またはメチル基であることが好ましい。また、化合物(I)の分子鎖両端の(メタ)アクリロイロキシ基と、芳香環とのスペーサであるアルキレン基の鎖長を示すaおよびbは、それぞれ個別に2〜12の範囲で任意の整数を取り得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。a=b=0である一般式(1)の化合物は、安定性に乏しく、加水分解を受けやすい上に、化合物自体の結晶性が高い。また、aおよびbがそれぞれ13以上である一般式(1)の化合物は、アイソトロピック転移温度(TI)が低い。この理由から、これらの化合物はどちらも液晶性を示す温度範囲が狭く好ましくない。
化合物(I)は任意の方法で合成することができる。例えば、Xがメチル基である化合物(I)は、1当量のメチルヒドロキノンと2当量の4−(m−(メタ)アクリロイロキシアルコキシ)安息香酸とのエステル化反応により得ることができる。エステル化反応は、上記安息香酸を酸クロリドやスルホン酸無水物などで活性化し、これとメチルヒドロキノンとを反応させるのが通例である。また、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)等の縮合剤を用いて、カルボン酸単位とメチルヒドロキノンを直接反応させることもできる。これ以外の方法としては、1当量のメチルヒドロキノンと、2当量の4−(m−ベンジルオキシアルコキシ)安息香酸とのエステル化反応をまず行い、次いで得られたエステルを水素添加反応等により脱ベンジル化した後、分子末端をアクリロイル化する方法によっても、化合物(I)を合成することができる。メチルヒドロキノンと4−(m−ベンジルオキシアルコキシ)安息香酸とのエステル化反応を行うに際しては、メチルヒドロキノンをジアセテートに導入した後、上記の安息香酸と溶融状態で反応させ、直接エステル体を得ることも可能である。一般式(1)のXがメチル基でない場合の化合物(I)も、対応する置換基を有するヒドロキノンを、メチルヒドロキノンの代わりに用いて上と同様の反応を行うことにより得ることができる。
化合物(II)を表す一般式(2)において、R3は水素またはメチル基を示すが、液晶相を示す温度範囲の広さからR3は水素であることが好ましい。アルキレン基の鎖長を示すcに関して言えば、この値が2〜12である化合物(II)は液晶性を示さない。しかしながら、液晶性を持つ化合物(I)との相溶性を考慮すると、cは4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがより好ましい。化合物(II)も任意の方法で合成可能であり、例えば、1当量の4−シアノフェノールと1当量の4−(n−(メタ)アクリロイロキシアルコキシ)安息香酸とのエステル化反応により化合物(II)を合成することができる。このエステル化反応は化合物(I)を合成する場合と同様に、上記安息香酸を酸クロリドやスルホン酸無水物などで活性化し、これと4−シアノフェノールとを反応させるのが一般的である。また、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)等の縮合剤を用いて上記安息香酸と4−シアノフェノールを反応させてもよい。
以上の他、本発明においては、重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマー等を用いることが可能である。このような重合性液晶オリゴマーや重合性液晶ポリマーとしては、従来提案されているものを適宜選択して用いることが可能である。
本発明においては、重合性液晶材料に加え、必要に応じて光重合開始剤を用いてもよい。電子線照射により重合性液晶材料を重合させる際には、光重合開始剤が不要な場合があるが、一般的に用いられている例えば紫外線(UV)照射による硬化の場合においては、通常光重合開始剤が重合促進のために用いられるからである。
光重合開始剤としては、ベンジル(ビベンゾイルとも言う)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、もしくは1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等を挙げることができる。光重合開始剤の添加量としては、一般的には0.01%〜20%が好ましく、より好ましくは0.1%〜10%であり、もっと好ましくは0.5%〜5%の範囲で、本発明の重合性液晶材料に添加することができる。尚、光重合開始剤の他に、本発明の目的が損なわれない範囲で増感剤を添加することも可能である。
本発明における液晶層の膜厚は0.1μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、0.2〜10μmの範囲内であることがより好ましい。本発明の液晶層が上記範囲を超えて厚くなると必要以上の光学異方性が生じてしまい、また上記範囲より薄いと所定の光学異方性が得られない場合がある。よって、液晶層の膜厚は、本発明に必要な光学異方性に準じて決定すればよい。
重合性液晶材料は、必要に応じて光重合開始剤、増感剤等を配合して液晶層形成用組成物を調製して用い、基材上に塗工し、液晶層形成用層を形成する。液晶層形成用層を形成する方法としては、例えばドライフィルム等を予め形成してこれを液晶層形成用層としたものを基材上に積層する方法や、液晶層形成用組成物を融解させて基材上に塗工する方法等をとることも可能であるが、本発明においては、液晶層形成用組成物としては溶媒を加えて、その他の成分を溶解した塗工用組成物を用いて基材上に塗工し、溶媒を除去することにより液晶層形成用層を形成することが好ましい。これは、他の方法と比較して工程上簡便である。
溶媒としては、上述した重合性液晶材料等を溶解することが可能な溶媒であり、かつ透明樹脂フィルムの性状を低下させない溶媒であれば特に限定されるものではなく、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類;メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、もしくは2,4−ペンタンジオン等のケトン類;酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、もしくはγ−ブチロラクトン等のエステル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、もしくはジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、もしくはオルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、もしくはブチルセルソルブ等のアルコール類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類等の1種または2種以上が使用可能である。
単一種の溶媒を使用しただけでは、重合性液晶材料等の溶解性が不充分であったり、上述したように基材が侵食される場合がある。しかし2種以上の溶媒を混合使用することにより、この不都合を回避することができる。上記した溶媒のなかにあって、単独溶媒として好ましいものは、炭化水素系溶媒とグリコールモノエーテルアセテート系溶媒であり、混合溶媒として好ましいのは、エーテル類またはケトン類と、グリコール類との混合系である。溶液の濃度は、重合性液晶材料等の溶解性や製造しようとする液晶層の膜厚に依存するため一概には規定できないが、通常は1%〜60%が好ましく、より好ましくは3%〜40%の範囲で調整される。
本発明に用いられる液晶層形成用組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、上記以外の化合物を添加することができる。添加できる化合物としては、例えば、多価アルコールと1塩基酸または多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族もしくは脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物、またはアクリル基もしくはメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物等が挙げられる。本発明の液晶層形成用組成物に対するこれら化合物の添加量は、本発明の目的が損なわれない範囲で選択され、一般的には、本発明の液晶層形成用組成物の40%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下である。これらの化合物の添加により、本発明における液晶材料の硬化性が向上し、得られる液晶層の機械強度が増大し、またその安定性が改善される。
また、溶剤を配合した液晶層形成用組成物には、塗工を容易にするために界面活性剤等を加えることができる。添加可能な界面活性剤を例示すると、イミダゾリン、第四級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体等の陽イオン系界面活性剤;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、第一級あるいは第二級アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコールおよびそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族あるいは芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン系界面活性剤;ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン等の両性系界面活性剤;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン系界面活性剤;パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基・親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル・親油基含有オリゴマーパーフルオロアルキル基含有ウレタン等のフッ素系界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類、液晶材料の種類、溶媒の種類、さらには溶液を塗工する配向膜の種類にもよるが、通常は溶液に含まれる重合性液晶材料の10ppm〜10%が好ましく、より好ましくは100ppm〜5%であり、もっと好ましくは0.1〜1%の範囲である。
液晶層形成用組成物を塗工する方法としては、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、ブレードコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、リバースコート法、もしくは押し出しコート法等が挙げられる。液晶層形成用組成物を塗工した後、溶媒を除去する方法としては、例えば、風乾、加熱除去、もしくは減圧除去、さらにはこれらを組み合わせる方法等により行われる。溶媒が除去されることにより、液晶層形成用層が形成される。
重合性液晶材料を硬化させる工程では、重合性液晶材料を硬化させるためのエネルギーが与えられ、熱エネルギーでもよいが、通常は、重合を起こさせる能力がある電離放射線の照射によって行う。必要であれば重合性液晶材料内に重合開始剤が含まれていてもよい。電離放射線としては、重合性液晶材料を重合せさることが可能な放射線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外光または可視光線が使用され、波長が150〜500nmの光が好ましく、より好ましくは250〜450nmであり、より好ましくは300〜400nmの波長の紫外線である。
本発明においては、紫外線(UV)を活性放射線として照射し、紫外線で重合開始剤からラジカルを発生させ、ラジカル重合を行わせる方法が好ましい。活性放射線としてUVを用いる方法は、既に確立された技術であることから、用いる重合開始剤を含めて、本発明への応用が容易である。
この紫外線を照射するための光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、もしくはショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)等を挙げることができる。なかでもメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ灯等の使用が推奨される。照射強度は、液晶層を形成している重合性液晶材料の組成や光重合開始剤の多寡によって適宜に調整すればよい。
活性放射線の照射による配向固定化工程は、上述した液晶層形成用層を形成する工程における処理温度、すなわち重合性液晶材料が液晶相となる温度条件で行ってもよく、また液晶相となる温度より低い温度で行ってもよい。一旦液晶相となった重合性液晶材料は、その後温度を低下させても、配向状態が急に乱れることはない。
《第1〜第4の保護膜》
前記1〜3に係る第1〜第4の保護膜に用いられる基材としては、製造が容易であること、光学的に透明であること等が好ましく、特に透明樹脂フィルムであることが好ましい。
本発明でいう透明とは、可視光の透過率60%以上であることをさし、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
〈第2の保護膜〉
最初に本発明に係る第2の保護膜について説明する。
第2の保護膜は、シクロオレフィン樹脂を含有する熱可塑性高分子より成ることが特徴であり、その形態に特に制限はないが、安定性、偏光板作成時や表示装置作成時の取り扱いやすさから、樹脂フィルムであることが好ましい。前述のように、シクロオレフィン樹脂は光弾性係数や透湿度が小さく、特にIPSモード型TVなどの大型パネルの用途において、引っ張り応力や耐久性試験などで発生しやすい、表示装置の四隅が白く見えるコーナームラ等を顕著に抑えることができる。
本発明に用いられるシクロオレフィン樹脂は脂環式構造を含有する重合体樹脂からなるものである。
好ましいシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィンを重合または共重合した樹脂である。環状オレフィンとしては、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、エチルテトラシクロドデセン、エチリデンテトラシクロドデセン、テトラシクロ〔7.4.0.110,13.02,7〕トリデカ−2,4,6,11−テトラエンなどの多環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、2−(2−メチルブチル)−1−シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデン、シクロヘプテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの単環構造の不飽和炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。これら環状オレフィンには置換基として極性基を有していてもよい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、特に、エステル基、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基が好適である。
好ましいシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィン以外の単量体を付加共重合したものであってもよい。付加共重合可能な単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどのエチレンまたはα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどのジエン等が挙げられる。
環状オレフィンは、付加重合反応或いはメタセシス開環重合反応によって得られる。重合は触媒の存在下で行われる。付加重合用触媒として、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。開環重合用触媒として、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金などの金属のハロゲン化物、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物と、還元剤とからなる重合触媒;或いは、チタン、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる重合触媒などが挙げられる。重合温度、圧力等は特に限定されないが、通常−50℃〜100℃の重合温度、0〜490N/cm2の重合圧力で重合させる。
本発明に用いるシクロオレフィン樹脂は、環状オレフィンを重合または共重合させた後、水素添加反応させて、分子中の不飽和結合を飽和結合に変えたものであることが好ましい。水素添加反応は、公知の水素化触媒の存在下で、水素を吹き込んで行う。水素化触媒としては、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムの如き遷移金属化合物/アルキル金属化合物の組み合わせからなる均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金などの不均一系金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/けい藻土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/けい藻土、パラジウム/アルミナの如き金属触媒を担体に担持してなる不均一系固体担持触媒などが挙げられる。
或いは、シクロオレフィン樹脂として、下記のノルボルネン系ポリマーも挙げられる。ノルボルネン系ポリマーは、ノルボルネン骨格を繰り返し単位として有していることが好ましく、その具体例としては、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報、特開平2−133413号公報、特開昭63−145324号公報、特開昭63−264626号公報、特開平1−240517号公報、特公昭57−8815号公報、特開平5−39403号公報、特開平5−43663号公報、特開平5−43834号公報、特開平5−70655号公報、特開平5−279554号公報、特開平6−206985号公報、特開平7−62028号公報、特開平8−176411号公報、特開平9−241484号公報等に記載されたものが好ましく利用出来るが、これらに限定されるものではない。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(I)〜(IV)のいずれかで表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
前記構造式(I)〜(IV)中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子または1価の有機基を表す。
また、前記ノルボルネン系ポリマーの中でも、下記構造式(V)または(VI)で表される化合物の少なくとも1種と、これと共重合可能な不飽和環状化合物とをメタセシス重合して得られる重合体を水素添加して得られる水添重合体も好ましい。
前記構造式中、A、B、C及びDは、各々独立して、水素原子または1価の有機基を表す。
ここで、上記A、B、C及びDは特に限定されないが、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、一価の有機基、または、少なくとも2価の連結基を介して有機基が連結されてもよく、これらは同じであっても異なっていてもよい。また、AまたはBとCまたはDは単環または多環構造を形成してもよい。ここで、上記少なくとも2価の連結基とは、酸素原子、イオウ原子、窒素原子に代表されるヘテロ原子を含み、例えばエーテル、エステル、カルボニル、ウレタン、アミド、チオエーテル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記連結基を介し、上記有機基は更に置換されてもよい。
また、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1、4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが用いられる。これらの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
これらの、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを付加共重合する場合は、付加共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、質量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
合成したポリマーの分子鎖中に残留する不飽和結合を水素添加反応により飽和させる場合には、耐光劣化や耐候劣化性などの観点から、水素添加率を90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上とする。
このほか、本発明で用いられるシクロオレフィン樹脂としては、特開平5−2108号公報段落番号[0014]〜[0019]記載の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂、特開2001−277430号公報段落番号[0015]〜[0031]記載の熱可塑性ノルボルネン系ポリマー、特開2003−14901号公報段落番号[0008]〜[0045]記載の熱可塑性ノルボルネン系樹脂、特開2003−139950号公報段落番号[0014]〜[0028]記載のノルボルネン系樹脂組成物、特開2003−161832号公報段落番号[0029]〜[0037]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−195268号公報段落番号[0027]〜[0036]記載のノルボルネン系樹脂、特開2003−211589号公報段落番号[0009]〜[0023]脂環式構造含有重合体樹脂、特開2003−211588号公報段落番号[0008]〜[0024]記載のノルボルネン系重合体樹脂若しくはビニル脂環式炭化水素重合体樹脂などが挙げられる。
具体的には、日本ゼオン(株)製ゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製アートン、三井化学(株)製アペル(APL8008T、APL6509T、APL6013T、APL5014DP、APL6015T)などが好ましく用いられる。
本発明で使用されるシクロオレフィン樹脂の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、5000〜500000、好ましくは8000〜200000、より好ましくは10000〜100000の範囲である時に、成形体の機械的強度、及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
また、シクロオレフィン樹脂100質量部に対して、低揮発性の酸化防止剤を0.01〜5質量部の割合で配合すると、成形加工時のポリマーの分解や着色を効果的に防止することが出来る。
酸化防止剤としては、20℃における蒸気圧が10-5Pa以下、特に好ましくは10-8Pa以下の酸化防止剤が望ましい。蒸気圧が10-5Paより高い酸化防止剤は、押出成形する場合に発泡したり、また、高温にさらされた時に成形品の表面から酸化防止剤が揮散するという問題が起こる。
本発明で使用出来る酸化防止剤としては、例えば、次のようなものを挙げることが出来、これらのうちの一種または数種を組み合わせて用いてもよい。
ヒンタードフェノール系:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−α−メトキシ−p−ジメチル−フェノール、2,4−ジ−t−アミルフェノール、t−ブチル−m−クレゾール、4−t−ブチルフェノール、スチレン化フェノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、4,4′−ビスフェノール、4,4′−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−α−メチルシクロヘキシルフェノール)、4,4′−メチレン−ビス−(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1′−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルナフトール)、4,4′−ブチリデン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチル−メタ−クレゾール)、2,2′−チオ−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ジ−o−クレゾールスルフィド、2,2′−チオ−ビス−(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオ−ビス−(2,3−ジ−sec−アミルフェノール)、1,1′−チオ−ビス−(2−ナフトール)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルエーテル、1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリメチル−2,4,6,−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシジェニル)プロピオネート〕等。
アミノフェノール類:ノルマルブチル−p−アミノフェノール、ノルマルブチロイル−p−アミノフェノール、ノルマルペラゴノイル−p−アミノフェノール、ノルマルラウロイル−p−アミノフェノール、ノルマルステアロイル−p−アミノフェノール、2、6−ジ−t−ブチル−α−ジメチル、アミノ−p−クレゾール等。
ハイドロキノン系:ハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、ハイドロキノンメチルエーテル、ハイドロキノンモノベンジルエーテル等。
ホスファイト系トリホスファイト、トリス(3,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンフォスファナイト、2−エチルヘキシルオクチルフォスファイト等。
その他:2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、ジカテコールボレート−ジ−o−トリルグアニジン塩、ニッケル−ジメチルジチオカーバメイト、ニッケル−ペンタメチレンンジチオカルバネート、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩等。
(ヒンダードアミン系安定剤)
ヒンダードアミン系安定剤を樹脂に添加することで、400nmといった短波長の光を継続的に照射した場合の白濁や、屈折率の変動等の光学特性変動を高度に抑制することができる。ヒンダードアミン系安定剤の含有量は、樹脂100質量部に対し、0.05〜2質量部であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜1質量部である。
また、好ましいヒンダードアミン系安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルデカン)ジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
(帯電防止剤)
本発明のシクロオレフィン樹脂フィルムは帯電防止剤を含有することが好ましく、樹脂100質量部に対し、帯電防止剤を0.001〜2.0質量部含有することが好ましい。
帯電防止剤としては、特に制限はなく、公知の帯電防止剤を用いることができるが、その中でも、アニオン性帯電防止剤、カチオン性帯電防止剤、非イオン性帯電防止剤、両性イオン性帯電防止剤、高分子帯電防止剤及び導電性微粒子から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、更に好ましくは導電性微粒子であり、特に好ましくは酸化セリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化アンチモン及び酸化シリコンから選ばれる少なくとも1種である。
アニオン性帯電防止剤としては、例えば、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪族アミン及び脂肪属アマイドの硫酸塩類、脂肪属アルコールリン酸エステル塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩類、脂肪族アミドスルホン酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタリンスルホン酸塩類等が挙げられ、カチオン性帯電防止剤としては、例えば、脂肪族アミン塩類、第4級アンモニウム塩類、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。非イオン性帯電防止剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類等が挙げられ、両性イオン性帯電防止剤としては、例えば、イミダゾリン誘導体、ベタイン型高級アルキルアミノ誘導体、硫酸エステル誘導体、リン酸エステル誘導体等が挙げられ、具体的な化合物は、丸茂秀雄著「帯電防止剤 高分子の表面改質」幸書房、増補「プラスチック及びゴム用添加剤実用便覧 p333〜p455」化学工業社刊、特開平11−256143号、特公昭52−32572号、特開平10−158484号等に記載されている。
好ましい帯電防止剤としては、アニオン性帯電防止剤やカチオン性帯電防止剤といったイオン性高分子化合物を挙げることができる。イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号、同49−23827号、同47−28937号にみられるようなアニオン性高分子化合物;特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、同57−18175号、同57−18176号、同57−56059号等にみられるような、主鎖中に解離基をもつアイオネン型ポリマー:特公昭53−13223号、同57−15376号、特公昭53−45231号、同55−145783号、同55−65950号、同55−67746号、同57−11342号、同57−19735号、特公昭58−56858号、特開昭61−27853号、同62−9346号にみられるような、側鎖中にカチオン性解離基をもつカチオン性ペンダント型ポリマー、特開平5−230161号にみられるようなグラフト共重合体等を挙げることができる。
また、本発明において特に好ましく用いることのできる導電性微粒子としては、金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、CeO2、Sb2O3、MoO2、V2O5等、或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特に、CeO2、In2O3、SnO2、Sb2O3、及びSiO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えば、ZnOに対してはAl、In等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加、またSnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1〜15mol%の範囲が特に好ましい。
本発明においては、導電性微粒子の平均微粒子径が100nm以下であることが好ましく、より好ましくは5〜100nmである。導電性微粒子の平均微粒子径が100nm以下であれば、樹脂材料に含有した際に、十分な帯電特性を付与できると共に、樹脂材料の透明性を損なうことがないため好ましい。
特に好ましい帯電防止剤は、帯電防止性能と添加量の関係から、表面固有抵抗値が1×1010Ω以下のものが好ましい。表面固有抵抗値は、試料を23℃、50%RHの雰囲気で24時間調湿した後、超絶縁計を用いて、ASTM D257に準拠し測定する。
また、本発明において好ましく用いることのできる帯電防止剤は、特開平9−203810号に記載されているアイオネン導電性ポリマー或いは分子間架橋を有する第4級アンモニウムカチオン導電性ポリマー等である。
架橋型カチオン性導電性ポリマーの特徴は、得られる分散性粒状ポリマーにあり、微粒子内のカチオン成分を高濃度、高密度にもたせることができるため、優れた導電性を有しているばかりでなく、樹脂との相溶性が良く、高い透明性が選られることにある、更に低相対湿度下においても導電性の劣化は見られない。
帯電防止に用いられる架橋型のカチオン性導電性ポリマーである分散性粒状ポリマーは一般に約0.01〜0.3μmの微粒子サイズ範囲にあり、好ましくは0.05〜0.15μmの範囲の微粒子サイズが用いられる。
本発明において、上記で説明した各帯電防止剤は、シクロオレフィン樹脂100質量部に対して、0.001〜2.0質量部の範囲で添加することが好ましく、帯電防止剤の添加量が0.001質量部以上、2.0質量部以下である場合、樹脂材料への埃や塵の付着を効果的に抑制でき、樹脂材料の光透過率を所望の値に維持できる。尚、帯電防止剤の添加量は、脂環式構造を有する重合体100質量部に対して0.005〜1.0質量部であることが好ましく、0.01〜0.5質量部が更に好ましい。
本発明においては、上記帯電防止剤及び一般に防汚のために用いられるフッ素化合物を含有した層を樹脂に設けることによっても同様の効果を得られる。
また、本発明のシクロオレフィン樹脂フィルムの性能を得るために、帯電防止剤の少なくとも1種を含む層(帯電防止層)をフィルム表面に設けるようにしてもよい。
帯電防止層は、前述の帯電防止剤を有する混合物を光学素子表面に塗布することにより設けてもよいし、蒸着のような方法によって設けてもよい。尚、帯電防止層の厚さは、50μm以上、300μm以下であることが好ましい。
(その他の安定剤)
樹脂には、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤の中から選ばれた1種以上の安定剤を追加して添加してもよい。これら安定剤を適宜選択し、樹脂に添加することで、400nmといった短波長の光を継続的に照射した場合の白濁や、屈折率の変動等の光学特性変動をより高度に抑制することができる。
好ましいフェノール系安定剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート等の特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、トリエチレングリコール ビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)等のアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン基含有フェノール系化合物;等が挙げられる。
また、好ましいリン系安定剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物等が挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が特に好ましい。
また、好ましいイオウ系安定剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
これらの安定剤の配合量は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、樹脂100質量部に対して通常0.01〜2質量部、好ましくは0.01〜1質量部である。
(可塑剤)
樹脂としてノルボルネン樹脂を用いる場合には、可塑剤として、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、ジプロピレングリコールジベンゾエート、クエン酸トリ−n−ブチル、クエン酸トリ−n−ブチルアセチル、エポキシ化大豆油、2−エチルヘキシルエポキシ化トール油、塩素化パラフィン、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、リン酸−t−ブチルフェニル、リン酸トリ−2−エチルヘキシルジフェニル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、Santicizer 278、Paraplex G40、Drapex 334F、Plastolein 9720、Mesamoll、DNODP−610、HB−40等の公知のものが適用可能である。可塑剤の選定及び添加量の決定は、樹脂の透過性や環境変化に対する耐性を損なわないことを条件に適宜行なわれる。
本発明においては、上記の樹脂に更に他の樹脂を配合することもできる。他の樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲内で添加される。
ここで、樹脂に添加し得る他の樹脂を以下に例示する。
(1)1個または2個の不飽和結合を有する炭化水素から誘導される重合体で、具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルブタ−1−エン、ポリ4−メチルペンタ−1−エン、ポリブタ−1−エン及びポリスチレン等のポリオレフィンが挙げられる。尚これらのポリオレフィンは架橋構造を有していてもよい。
(2)ハロゲン含有ビニル重合体で、具体的にはポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロプレン、塩素化ゴム等が挙げられる。
(3)α,β−不飽和酸とその誘導体から誘導された重合体で、具体的にはポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、または前記の重合体を構成するモノマーとの共重合体、例えばアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
(4)不飽和アルコール及びアミン、または不飽和アルコールのアシル誘導体またはアセタールから誘導される重合体で、具体的にはポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、ポリ安息香酸ビニル、ポリマレイン酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリアリルフタレート、ポリアリルメラミン、または前記重合体を構成するモノマーとの共重合体、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
(5)エポキシドから誘導される重合体で、具体的にはポリエチレンオキシドまたはビスグリシジルエーテルから誘導された重合体等が挙げられる。
(6)ポリアセタール類で、具体的にはポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、コモノマーとしてエチレンオキシドを含むようなポリオキシメチレン等が挙げられる。
(7)ポリフェニレンオキシド(8)ポリカーボネート(9)Sポリスルフォン(10)ポリウレタン及び尿素樹脂等が挙げられる。
(11)ジアミン及びジカルボン酸及び/またはアミノカルボン酸、または相応するラクタムから誘導されたポリアミド及びコポリアミドで、具体的にはナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられる。
(12)ジカルボン酸及びジアルコール及び/またはオキシカルボン酸、または相応するラクトンから誘導されたポリエステルで、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ1,4−ジメチロール・シクロヘキサンテレフタレート等が挙げられる。
(13)アルデヒドとフェノール、尿素またはメラミンから誘導された架橋構造を有した重合体で、具体的には、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
(14)アルキッド樹脂で、具体的にはグリセリン・フタル酸樹脂等が挙げられる。
(15)飽和及び不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとのコポリエステルから誘導され、架橋剤としてビニル化合物を使用して得られる不飽和ポリエステル樹脂ならびにハロゲン含有改質樹脂等が挙げられる。
(16)天然重合体で、具体的にはセルロース、ゴム、蛋白質、或いはそれらの誘導体例えば酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル等が挙げられる。
(17)軟質重合体、例えば、環状オレフィン成分を含む軟質重合体、α−オレフィン系共重合体、α−オレフィン・ジエン系共重合体、芳香族ビニル系炭化水素・共役ジエン系軟質共重合体、イソブチレンまたはイソブチレン・共役ジエンからなる軟質重合体または共重合体等が挙げられる。
(18)側鎖に脂環式環状構造を有する炭化水素系重合体が挙げられる。
樹脂バインダーと、他の樹脂成分や添加剤等との混合方法としては、それ自体公知の方法が適用できる。例えば各成分を同時に混合する方法等である。
〈溶融流延法〉
シクロオレフィン樹脂フィルムの成形方法は格別な限定はなく、加熱溶融成形法、溶液流延法のいずれも用いることが出来る。加熱溶融成形法は、更に詳細に、押し出し成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類出来るが、これらの方法の中でも、機械強度、表面精度等に優れたフィルムを得るためには、押し出し成形法、インフレーション成形法、及びプレス成形法が好ましく、押し出し成形法が最も好ましい。成形条件は、使用目的や成形方法により適宜選択されるが、加熱溶融成形法による場合は、シリンダー温度が、通常150〜400℃、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃の範囲で適宜設定される。樹脂温度が過度に低いと流動性が悪化し、フィルムにヒケやひずみを生じ、樹脂温度が過度に高いと樹脂の熱分解によるボイドやシルバーストリークが発生したり、フィルムが黄変するなどの成形不良が発生するおそれがある。フィルムの厚みは、通常5〜300μm、好ましくは10〜200μm、より好ましくは20〜100μmの範囲である。厚みが薄過ぎる場合は、積層時の取り扱いが困難となり、厚過ぎる場合は、積層後の乾燥時間が長くなって生産性が低下する。
フィルムの幅は1.4m以上が生産性、加工性の点から好ましい。より好ましくは1.4〜4mの範囲である。
シクロオレフィン樹脂フィルムは、その表面の濡れ張力が、好ましくは40mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上、更に好ましくは55mN/m以上である。表面の濡れ張力が上記範囲にあると、フィルムと偏光膜との接着強度が向上する。表面の濡れ張力を調整するために、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、オゾンの吹き付け、紫外線照射、火炎処理、化学薬品処理、その他公知の表面処理を施すことが出来る。
延伸前のシートは厚さが50〜500μm程度の厚さが必要であり、厚さムラは小さいほど好ましく、全面において±8%以内、好ましくは±6%以内、より好ましくは±4%以内である。
上記シクロオレフィン樹脂フィルムを本発明に係る偏光板の第2の保護膜にするには、シートを少なくとも一軸方向に延伸することにより得られる。尚、実質的な一軸延伸、例えば、分子の配向に影響のない範囲で延伸した後、分子を配向させるべく一軸方向に延伸する二軸延伸であってもよい。好ましくは二軸延伸であり、延伸するには前記テンター装置等を用いることが好ましい。
延伸倍率は1.1〜10倍、好ましくは1.3〜8倍であり、この範囲で所望のリターデーションとなるようにすればよい。延伸倍率が低過ぎるとリターデーションの絶対値が上がらずに所定の値とならず、高過ぎると破断することもある。
延伸は、通常、シートを構成する樹脂のTg−20℃〜Tg+30℃、好ましくはTg〜Tg+30℃の温度範囲で行われる。延伸温度が低過ぎると破断し、高過ぎると分子配向しないため、所望のリターデーションを得ることが困難になる。
本発明ではポリマーの配向を精度よく行う為に、テンターの左右把持手段によってウェブの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できるテンターを用いることも好ましい。
テンター延伸装置でウェブの左右両端を把持している部分の長さを左右独立に制御して、ウエブの把持長を左右で異なるものとする手段としては、具体的には、例えば[図3]に示すようなものがある。[図3]は、本発明で用いられるポリマーフィルムを製造するにあたって、好ましく使用されるテンター延伸装置(15a)の一例を模式的に示したものである。同図において、テンター延伸装置(15a)の左右把持手段(クリップ)(12a)(12b)の把持開始位置を左右で変える、すなわちクリップクローザー(13a)(13b)の設置位置を左右で変えて、把持開始位置を左右で変えることにより、フィルム(F)の左右把持長を変化させ、これによってテンター(15a)内で樹脂フィルム(F)をねじるような力が発生し、テンター(15a)以外の搬送による位置ずれを矯正することができ、剥離からテンターまでの搬送距離を長くしてもウェブの蛇行やツレ、皺の発生を効果的に防止することができる。なお、14a、14bはクリップオープナーを表す。
なお、図示のテンター延伸装置(15a)は模式的に記載されているが、通常は、無端チェンよりなる左右一対の回転駆動装置(輪状のチェーン)(11a)(11b)の1列状態に具備された多数のクリップ(12a)(12b)のうち、フィルム(F)の左右両端部を把持して引っ張るチェーン往路側直線移行部のクリップ(12a)(12b)がフィルム(F)の幅手方向に漸次離れるように、左右のチェーン(11a)(11b)の軌道が設置されており、フィルム(F)の幅手方向の延伸が行なわれるようになされている。
また、本発明では皺、つれ、歪み等をさらに精度よく矯正するために、長尺フィルムの蛇行を防止する装置を付加することが好ましく、特開平6−8663号に記載のエッジポジションコントローラー(EPCと称することもある)や、センターポジションコントローラー(CPCと称することもある)等の蛇行修正装置が使用されることが好ましい。これらの装置は、フィルム耳端をエアーサーボセンサーや光センサーにて検知して、その情報に基づいて搬送方向を制御し、フィルムの耳端や幅方向の中央が一定の搬送位置となるようにするもので、そのアクチュエーターとして、具体的には1〜2本のガイドロールや駆動付きフラットエキスパンダーロールをライン方向に対して、左右(または上下)にふることで蛇行修正したり、フィルムの左右に小型の2本1組のピンチロールを設置(フィルムの表と裏に1本ずつ設置されていて、それがフィルムの両側にある)し、これにてフィルムを挟み引っ張り蛇行修正したりしている(クロスガイダー方式)。これらの装置の蛇行修正の原理は、フィルムが走行中に、例えば左にいこうとする時は前者の方式ではロールをフィルムが右にいくように傾ける方法をとり、後者の方法では右側の1組のピンチロールがニップされて、右に引っ張るというものである。これら蛇行防止装置をフィルム剥離点からテンター延伸装置の間に少なくとも1台設置することが好ましい。
この様にして得たフィルムは、延伸により分子が配向されて所望の大きさのリターデーションを持たせることが出来る。本発明における第2の保護膜において好ましいリターデーション値は、Ro:30〜115nmであり、Rt:100〜250nm、Rt/Ro:1.6〜4.4の範囲であり、更に好ましいRoは30〜70nmの範囲である。
リターデーションは、延伸前のシートのリターデーションと延伸倍率、延伸温度、延伸配向フィルムの厚さにより制御することが出来る。延伸前のシートが一定の厚さの場合、延伸倍率が大きいフィルムほどリターデーションの絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸倍率を変更することによって所望のリターデーションの位相差フィルムを得ることが出来る。
また、同様にして該フィルムと前記位相差層との積層物の式1で表される波長分散特性D(R40)が2.0〜6.5nmの範囲に制御できる。
リターデーションRo(面内)のバラツキは小さいほど好ましく、位相差フィルムとしては、波長590nmのRoのバラツキが通常±10nm以内、好ましくは±5nm以下、より好ましくは±1nm以下の小さなものである。
リターデーションの面内でのバラツキや厚さムラは、それらの小さな延伸前のシートを用いる他、延伸時にシートに応力が均等にかかるようにすることにより、小さくすることが出来る。そのためには、均一な温度分布下、好ましくは±5℃以内、更に好ましくは±2℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内に温度を制御した環境で延伸することが望ましい。
〈第1、第3、第4の保護膜〉
本発明の第1、第3、第4の保護膜は、第2の保護膜と同様にシクロオレフィン樹脂フィルムを用いてもよいが、ケン化処理等の偏光板加工適性の観点から、セルロースエステル系フィルムを用いることが好ましい。セルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレートが好ましく、中でもセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられる。市販のセルロースエステルフィルムとしては、例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC4FR、KC8UY−HA、KC8UX−RHA(コニカミノルタオプト(株)製)等が、製造上、コスト面、透明性、密着性等の観点から好ましく用いられる。これらのフィルムは、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。
(セルロースエステル)
本発明の第1、第3、第4の保護膜に用いられるセルロースエステルは、炭素数2〜22程度の脂肪族カルボン酸エステルまたは芳香族カルボン酸エステル或いは脂肪族カルボン酸エステルと芳香族カルボン酸エステルの混合エステルが好ましく用いられ、特にセルロースの低級脂肪酸エステルであることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。具体的には、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートフタレート等や、特開平10−45804号公報、同8−231761号公報、米国特許第2,319,052号等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルである。上記記載の中でも、特に第3の保護膜に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルローストリアセテートまたは下記セルロースアセテートプロピオネートである。
該セルロースエステルは、炭素原子数2〜22のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基の置換度をYとした時、下記式4及び5を同時に満たすセルロースエステルである。
式4 2.00≦X+Y≦2.60
式5 0.10≦Y≦1.00
中でも2.30≦X+Y≦2.55が好ましく、2.40≦X+Y≦2.55がより好ましい。また、0.50≦Y≦0.90が好ましく、0.70≦Y≦0.90がより好ましい。
アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することができる。また、これらアシル基置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法に準じて測定することができる。
セルロースエステルは綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることができる。特に綿花リンター(以下、単にリンターとすることがある)、木材パルプから合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが好ましい。
また、これらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。これらのセルロースエステルは、セルロース原料をアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて常法により反応させて得ることができる。
アセチルセルロースの場合、酢化率を上げようとすれば、酢化反応の時間を延長する必要がある。但し、反応時間を余り長くとると分解が同時に進行し、ポリマー鎖の切断やアセチル基の分解などが起こり、好ましくない結果をもたらす。従って、酢化度を上げ、分解をある程度抑えるためには反応時間はある範囲に設定することが必要である。反応時間で規定することは反応条件が様々であり、反応装置や設備その他の条件で大きく変わるので適切でない。ポリマーの分解は進むにつれ、分子量分布が広くなってゆくので、セルロースエステルの場合にも、分解の度合いは通常用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値で規定できる。即ちセルローストリアセテートの酢化の過程で、余り長過ぎて分解が進み過ぎることがなく、かつ酢化には十分な時間酢化反応を行わせしめるための反応度合いの一つの指標として用いられる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値を用いることができる。
本発明に用いられるセルロースエステルの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、1.4〜3.0であることが好ましい。尚、本発明においては、セルロースエステルフィルムが、材料として、Mw/Mnの値が1.4〜3.0であるセルロースエステルを含有すればよいが、フィルムに含まれるセルロースエステル(好ましくはセルローストリアセテートまたはセルロースアセテートプロピオネート)全体のMw/Mnの値は1.4〜3.0の範囲であることがより好ましい。セルロースエステルの合成過程で1.4未満とすることは困難であり、ゲル濾過などによって分画することで分子量の揃ったセルロースエステルを得ることはできる。しかしながらこの方法はコストが著しくかかる。また、3.0以下であると平面性が維持されやすく好ましい。尚、より好ましくは1.7〜2.2である。
本発明に用いられるセルロースエステルの分子量は、数平均分子量(Mn)で80000〜200000のものを用いることが好ましい。100000〜200000のものが更に好ましく、150000〜200000が特に好ましい。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することができる。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出し、その比(Mw/Mn)を計算することができる。
測定条件は以下の通りである。溶媒: メチレンクロライドカラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)カラム温度:25℃試料濃度: 0.1質量%検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)流量: 1.0ml/min校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に得ることが好ましい。
セルロースエステルの製造法は、特開平10−45804号公報に記載の方法で得ることができる。
また、セルロースエステルは、セルロースエステル中の微量金属成分によっても影響を受ける。これらは製造工程で使われる水に関係していると考えられるが、不溶性の核となり得るような成分は少ない方が好ましく、鉄、カルシウム、マグネシウム等の金属イオンは、有機の酸性基を含んでいる可能性のあるポリマー分解物等と塩形成する事により不溶物を形成する場合があり、少ないことが好ましい。鉄(Fe)成分については、1ppm以下であることが好ましい。カルシウム(Ca)成分については、地下水や河川の水等に多く含まれ、これが多いと硬水となり、飲料水としても不適当であるが、カルボン酸や、スルホン酸等の酸性成分と、また多くの配位子と配位化合物即ち、錯体を形成し易く、多くの不溶なカルシウムに由来するスカム(不溶性の澱、濁り)を形成する。
カルシウム(Ca)成分は60ppm以下、好ましくは0〜30ppmである。マグネシウム(Mg)成分については、やはり多過ぎると不溶分を生ずるため、0〜70ppmであることが好ましく、特に0〜20ppmであることが好ましい。鉄(Fe)分の含量、カルシウム(Ca)分含量、マグネシウム(Mg)分含量等の金属成分は、絶乾したセルロースエステルをマイクロダイジェスト湿式分解装置(硫硝酸分解)、アルカリ溶融で前処理を行った後、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を用いて分析を行うことによって求めることができる。
本発明で用いられるセルロースエステルフィルムの屈折率は550nmで1.45〜1.60であるものが好ましく用いられる。フィルムの屈折率の測定方法は、アッベ屈折率計を使用し、日本工業規格JIS K 7105に基づき測定する。
(添加剤)
セルロースエステルフィルムには可塑剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤等の添加剤を含有させることができる。
前記2及び前記3において、本発明の第3の保護膜に用いられるセルロースエステルフィルムは、リターデーションがRoは0〜5nm、Rtは−10〜10nmの範囲にあることが好ましい。上記数値範囲とするためには、第3の保護膜がセルロースエステルフィルムであれば、溶融製膜にて製造するか、あるいは溶液製膜にて、途中でガラス転移点以上の温度で15秒以上保持するか、あるいはセルロースエステルが有する複屈折性と反対の複屈折発現性を持つ添加剤を加えることが好ましい。その意味では、リターデーションを上記範囲内に調整する為に、下記アクリルポリマーを含有することが好ましい。
〈アクリルポリマー〉
第3の保護膜に用いられるセルロースエステルフィルムは、延伸方向に対して負の配向複屈折性を示す重量平均分子量が500以上30000以下であるアクリルポリマーを含有することが好ましく、該アクリルポリマーは芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーであることが好ましい。
該ポリマーの重量平均分子量が500以上30000以下のもので該ポリマーの組成を制御することで、セルロースエステルと該ポリマーとの相溶性を良好にすることができる。
特に、アクリルポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーまたはシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーについて、好ましくは重量平均分子量が500以上10000以下のものであれば、上記に加え、製膜後のセルロースエステルフィルムの透明性が優れ、透湿度も極めて低く、偏光板用保護フィルムとして優れた性能を示す。
該ポリマーは重量平均分子量が500以上30000以下であるから、オリゴマーから低分子量ポリマーの間にあると考えられるものである。このようなポリマーを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量を余り大きくしない方法でできるだけ分子量を揃えることのできる方法を用いることが望ましい。
かかる重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、更に特開2000−128911号または同2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、或いは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることができ、何れも本発明において好ましく用いられるが、特に、該公報に記載の方法が好ましい。
本発明に有用なポリマーを構成するモノマー単位としてのモノマーを下記に挙げるがこれに限定されない。
エチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマーを構成するエチレン性不飽和モノマー単位としては:ビニルエステルとして、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等;アクリル酸エステルとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル等;メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたもの;不飽和酸として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることができる。上記モノマーで構成されるポリマーはコポリマーでもホモポリマーでもよく、ビニルエステルのホモポリマー、ビニルエステルのコポリマー、ビニルエステルとアクリル酸またはメタクリル酸エステルとのコポリマーが好ましい。
本発明において、アクリルポリマーという(単にアクリルポリマーという)のは、芳香環或いはシクロヘキシル基を有するモノマー単位を有しないアクリル酸またはメタクリル酸アルキルエステルのホモポリマーまたはコポリマーを指す。芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーというのは、必ず芳香環を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を含有するアクリルポリマーである。
また、シクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーというのは、シクロヘキシル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を含有するアクリルポリマーである。
芳香環及びシクロヘキシル基を有さないアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。
アクリルポリマーは上記モノマーのホモポリマーまたはコポリマーであるが、アクリル酸メチルエステルモノマー単位が30質量%以上を有していることが好ましく、また、メタクリル酸メチルエステルモノマー単位が40質量%以上有することが好ましい。特にアクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルのホモポリマーが好ましい。
芳香環を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸(2または4−クロロフェニル)、メタクリル酸(2または4−クロロフェニル)、アクリル酸(2または3または4−エトキシカルボニルフェニル)、メタクリル酸(2または3または4−エトキシカルボニルフェニル)、アクリル酸(oまたはmまたはp−トリル)、メタクリル酸(oまたはmまたはp−トリル)、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、メタクリル酸フェネチル、アクリル酸(2−ナフチル)等を挙げることができるが、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニチル、メタクリル酸フェネチルを好ましく用いることができる。
芳香環を側鎖に有するアクリルポリマーの中で、芳香環を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位が20〜40質量%を有し、且つアクリル酸またはメタクリル酸メチルエステルモノマー単位を50〜80質量%有することが好ましい。該ポリマー中、水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を2〜20質量%有することが好ましい。
シクロヘキシル基を有するアクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、アクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)等を挙げることができるが、アクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸シクロヘキシルを好ましく用いることができる。
シクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマー中、シクロヘキシル基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を20〜40質量%を有し且つ50〜80質量%有することが好ましい。また、該ポリマー中、水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位を2〜20質量%有することが好ましい。
上述のエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、アクリルポリマー、芳香環を側鎖に有するアクリルポリマー及びシクロヘキシル基を側鎖に有するアクリルポリマーは何れもセルロース樹脂との相溶性に優れる。
これらの水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマーの場合はホモポリマーではなく、コポリマーの構成単位である。この場合、好ましくは、水酸基を有するアクリル酸またはメタクリル酸エステルモノマー単位がアクリルポリマー中2〜20質量%含有することが好ましい。
本発明において、側鎖に水酸基を有するポリマーも好ましく用いることができる。水酸基を有するモノマー単位としては、前記したモノマーと同様であるが、アクリル酸またはメタクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル、またはこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることができ、好ましくは、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル及びメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルである。ポリマー中に水酸基を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルモノマー単位はポリマー中2〜20質量%含有することが好ましく、より好ましくは2〜10質量%である。
前記のようなポリマーが上記の水酸基を有するモノマー単位を2〜20質量%含有したものは、勿論セルロースエステルとの相溶性、保留性、寸法安定性が優れ、透湿度が小さいばかりでなく、偏光板保護フィルムとしての偏光子との接着性に特に優れ、偏光板の耐久性が向上する効果を有している。
アクリルポリマーの主鎖の少なくとも一方の末端に水酸基を有するようにする方法は、特に主鎖の末端に水酸基を有するようにする方法であれば限定ないが、アゾビス(2−ヒドロキシエチルブチレート)のような水酸基を有するラジカル重合開始剤を使用する方法、2−メルカプトエタノールのような水酸基を有する連鎖移動剤を使用する方法、水酸基を有する重合停止剤を使用する方法、リビングイオン重合により水酸基を末端に有するようにする方法、特開2000−128911号または2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、或いは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等により得ることができ、特に該公報に記載の方法が好ましい。
この公報記載に関連する方法で作られたポリマーは、綜研化学社製のアクトフロー・シリーズとして市販されており、好ましく用いることができる。上記の末端に水酸基を有するポリマー及び/または側鎖に水酸基を有するポリマーは、本発明において、ポリマーの相溶性、透明性を著しく向上する効果を有する。
更に、延伸方向に対して負の配向複屈折性を示すエチレン性不飽和モノマーとして、スチレン類を用いたポリマーであることが負の屈折性を発現させるために好ましい。スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなどが挙げられるが、これらに限定される物ではない。
前記不飽和エチレン性モノマーとして挙げた例示モノマーと共重合してもよく、また複屈折性を制御する目的で、2種以上の上記ポリマーをもちいてセルロースエステルに相溶させて用いても良い。
更に、本発明に用いられるセルロースエステルフィルムは、分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーXと、より好ましくは芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーYとを含有することが好ましい。
(ポリマーX、ポリマーY)
本発明に用いられるポリマーXは分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaと分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbとを共重合して得られた重量平均分子量5000以上30000以下のポリマーである。好ましくは、Xaは分子内に芳香環と親水性基を有しないアクリルまたはメタクリルモノマー、Xbは分子内に芳香環を有せず親水性基を有するアクリルまたはメタクリルモノマーである。
本発明に用いられるポリマーXは、下記一般式(X)で表される。
一般式(X)
−(Xa)m−(Xb)n−(Xc)p−
さらに好ましくは、下記一般式(X−1)で表されるポリマーである。
一般式(X−1)
−[CH2−C(−R1)(−CO2R2)]m−[CH2−C(−R3)(−CO2R4−OH)−]n−[Xc]p−
(式中、R1、R3は、HまたはCH3を表す。R2は炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基を表す。R4は−CH2−、−C2H4−または−C3H6−を表す。Xcは、Xa、Xbに重合可能なモノマー単位を表す。m、nおよびpは、モル組成比を表す。ただしm≠0、n≠0、k≠0、m+n+p=100である。)
本発明に用いられるポリマーXを構成するモノマー単位としてのモノマーを下記に挙げるがこれに限定されない。
Xにおいて、親水性基とは、水酸基、エチレンオキシド連鎖を有する基をいう。
分子内に芳香環と親水性基を有しないエチレン性不飽和モノマーXaは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、または上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることができる。中でも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル(i−、n−)であることが好ましい。
分子内に芳香環を有せず、親水性基を有するエチレン性不飽和モノマーXbは、水酸基を有するモノマー単位として、アクリル酸またはメタクリル酸エステルが好ましく、例えば、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、またはこれらアクリル酸をメタクリル酸に置き換えたものを挙げることができ、好ましくは、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)及びメタクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)である。
Xcとしては、Xa、Xb以外のものでかつ共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば、特に制限はないが、芳香環を有していないものが好ましい。
Xa、Xb及びXcのモル組成比m:nは99:1〜65:35の範囲が好ましく、更に好ましくは95:5〜75:25の範囲である。Xcのpは0〜10である。Xcは複数のモノマー単位であってもよい。
Xaのモル組成比が多いとセルロースエステルとの相溶性が良化するがフィルム厚み方向のリターデーション値Rtが大きくなる。Xbのモル組成比が多いと上記相溶性が悪くなるが、Rtを低減させる効果が高い。また、Xbのモル組成比が上記範囲を超えると製膜時にヘイズが出る傾向があり、これらの最適化を図りXa、Xbのモル組成比を決めることが好ましい。
ポリマーXの分子量は重量平均分子量が5000以上30000以下であり、更に好ましくは8000以上25000以下である。
重量平均分子量を5000以上とすることにより、セルロースエステルフィルムの、高温高湿下における寸法変化が少ない、偏光板保護フィルムとしてカールが少ない等の利点が得られ好ましい。重量平均分子量が30000を以内とした場合は、セルロースエステルとの相溶性がより向上し、高温高湿下においてのブリードアウト、さらには製膜直後でのヘイズの発生が抑制される。
本発明に用いられるポリマーXの重量平均分子量は、公知の分子量調節方法で調整することができる。そのような分子量調節方法としては、例えば四塩化炭素、ラウリルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル等の連鎖移動剤を添加する方法等が挙げられる。また、重合温度は通常室温から130℃、好ましくは50℃から100℃で行われるが、この温度または重合反応時間を調整することで可能である。
重量平均分子量の測定方法は下記方法によることができる。
(重量平均分子量測定方法)
重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した。
測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
本発明に用いられるポリマーYは芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーYaを重合して得られた重量平均分子量500以上3000以下のポリマーである。
重量平均分子量500以上ではポリマーの残存モノマーが減少し好ましい。また、3000以下とすることは、リターデーション値Rt低下性能を維持するために好ましい。
Yaは、好ましくは芳香環を有さないアクリルまたはメタクリルモノマーである。
本発明に用いられるポリマーYは、下記一般式(Y)で表される。
一般式(Y)
−(Ya)k−(Yb)q−
さらに好ましくは、下記一般式(Y−1)で表されるポリマーである。
一般式(Y−1)
−[CH2−C(−R5)(−CO2R6)]k−[Yb]q−(式中、R5は、HまたはCH3を表す。R6は炭素数1〜12のアルキル基またはシクロアルキル基を表す。Ybは、Yaと共重合可能なモノマー単位を表す。k及びqは、モル組成比を表す。ただしk≠0、k+q=100である。)
Ybは、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば特に制限はない。Ybは複数であってもよい。k+q=100、qは好ましくは0〜30である。
芳香環を有さないエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマーYを構成するエチレン性不飽和モノマーYaはアクリル酸エステルとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたもの;不飽和酸として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等を挙げることができる。
Ybは、Yaと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーであれば特に制限はないが、ビニルエステルとして、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニル等が好ましい。Ybは複数であってもよい。
ポリマーX、Yを合成するには、通常の重合では分子量のコントロールが難しく、分子量を余り大きくしない方法でできるだけ分子量を揃えることのできる方法を用いることが望ましい。かかる重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、更に特開2000−128911号または同2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、或いは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることができ、何れも本発明において好ましく用いられるが、特に、分子中にチオール基と2級の水酸基とを有する化合物を連鎖移動剤として使用する重合方法が好ましい。
この場合、ポリマーX及びポリマーYの末端には、重合触媒及び連鎖移動剤に起因する水酸基、チオエーテルを有することとなる。この末端残基により、ポリマーX、Yとセルロースエステルとの相溶性を調整することができる。
ポリマーX及びYの水酸基価は30〜150[mgKOH/g]であることが好ましい。
(水酸基価の測定方法)
この測定は、JIS K 0070(1992)に準ずる。この水酸基価は、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数と定義される。具体的には試料Xg(約1g)をフラスコに精秤し、これにアセチル化試薬(無水酢酸20mlにピリジンを加えて400mlにしたもの)20mlを正確に加える。フラスコの口に空気冷却管を装着し、95〜100℃のグリセリン浴にて加熱する。
1時間30分後、冷却し、空気冷却管から精製水1mlを加え、無水酢酸を酢酸に分解する。次に電位差滴定装置を用いて0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定を行い、得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。更に空試験として、試料を入れないで滴定し、滴定曲線の変曲点を求める。
水酸基価は、次の式によって算出する。
水酸基価={(B−C)×f×28.05/X}+D(式中、Bは空試験に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、Cは滴定に用いた0.5mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、fは0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、Dは酸価、また、28.05は水酸化カリウムの1mol量56.11の1/2を表す)
上述のポリマーX、ポリマーYは何れもセルロースエステルとの相溶性に優れ、蒸発や揮発もなく生産性に優れ、偏光板用保護フィルムとしての保留性がよく、透湿度が小さく、寸法安定性に優れている。
ポリマーXとポリマーYのセルロースエステルフィルム中での含有量は、下記式(i)、式(ii)を満足する範囲であることが好ましい。ポリマーXの含有量をXg(質量%=ポリマーXの質量/セルロースエステルの質量×100)、ポリマーYの含有量をYg(質量%)とすると、
式(i) 5≦Xg+Yg≦35(質量%)
式(ii) 0.05≦Yg/(Xg+Yg)≦0.4
式(i)の好ましい範囲は、10〜25質量%である。
ポリマーXとポリマーYは総量として5質量%以上であれば、リターデーション値Rtの低減に十分な作用をする。また、総量として35質量%以下であれば、偏光子PVAとの接着性が良好である。
ポリマーXとポリマーYは後述するドープ液を構成する素材として直接添加、溶解するか、もしくはセルロースエステルを溶解する有機溶媒に予め溶解した後ドープ液に添加することができる。
(その他の添加剤)
第1、第3、第4の保護膜であるセルロースエステルフィルムには、通常のセルロースエステルフィルムに添加することのできる添加剤を含有させることができる。
これらの添加剤としては、可塑剤、紫外線吸収剤、微粒子等を挙げることができる。
本発明には下記のような可塑剤を含有するのが好ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤等を好ましく用いることができる。
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を好ましく用いることができる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。
ポリエステル系可塑剤として脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸等の二塩基酸とグリコールの共重合ポリマーを用いることができる。脂肪族二塩基酸としては特に限定されないが、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等を用いることができる。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール等を用いることができる。これらの二塩基酸及びグリコールはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる。好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2ープロパンジオール、1,3ープロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2ーブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4ーブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5ーペンタンジオール、1,6ーヘキサンジオール、ヘキサントリオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール、等を上げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトール、であることが好ましい。多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては特に制限はなく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸などを用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを上げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。脂肪族モノカルボン酸としては炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。好ましい脂肪族モノカルボン酸としては酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを上げることができる。好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を上げることができる。好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上もつ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を上げることができる。特に安息香酸であることが好ましい。多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、分子量300〜1500の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は一種類でも良いし、2種以上の混合であっても良い。また、多価アルコール中のOH基はカルボン酸で全てエステル化しても良いし、一部をOH基のままで残しても良い。
これらの可塑剤は単独または併用するのが好ましい。
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、3〜13質量%である。
本発明に使用することができる紫外線吸収剤は、400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は特に限定されないが、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。高分子型の紫外線吸収剤としてもよい。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムには微粒子を用いることが好ましい。微粒子は、無機化合物でも有機化合物でもどちらも用いることができる。無機化合物の例としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmが好ましく、更に好ましいのは7〜20nmである。これらは主に粒径0.05〜0.3μmの2次凝集体として含有されることが好ましい。セルロースエステルフィルム中のこれらの微粒子の含有量は0.05〜1質量%であることが好ましく、特に0.1〜0.5質量%が好ましい。共流延法による多層構成のセルロースエステルフィルムの場合は、表面にこの添加量の微粒子を含有することが好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でもでアエロジル200V、アエロジルR972Vがセルロースエステルフィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましく用いられる。
(セルロースエステルフィルムの製造方法)
次に、本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムは、溶液流延法もしくは溶融流延で製造されたセルロースエステルフィルムが好ましい。以下、溶液流延法について説明する。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムの製造は、セルロースエステル並びに添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程により行われる。
ドープを調製する工程について述べる。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましいが、セルロースエステルの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
ドープで用いられる溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方がセルロースエステルの溶解性の点で好ましい。
良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶剤と定義している。
そのため、セルロースエステルの平均酢化度(アセチル基置換度)によっては、良溶剤、貧溶剤が変わり、例えばアセトンを溶剤として用いる時には、セルロースエステルの酢酸エステル(アセチル基置換度2.4)、セルロースアセテートプロピオネートでは良溶剤になり、セルロースの酢酸エステル(アセチル基置換度2.8)では貧溶剤となる。
本発明に用いられる良溶剤は特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。特に好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルが挙げられる。
また、本発明に用いられる貧溶剤は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等が好ましく用いられる。また、ドープ中には水が0.01〜2質量%含有していることが好ましい。また、セルロースエステルの溶解に用いられる溶媒は、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これを再利用して用いられる。
上記記載のドープを調製する時の、セルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると常圧における沸点以上に加熱できる。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。また、セルロースエステルを貧溶剤と混合して湿潤或いは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースエステルの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
もしくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースエステルを溶解させることができる。
次に、このセルロースエステル溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。このため絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料のセルロースエステルに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間にロール状セルロースエステルを置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm2以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm2以下であり、更に好ましくは50個/m2以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm2以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、且つ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
ここで、ドープの流延について説明する。
流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化する場合がある。好ましい支持体温度は0〜40℃であり、5〜30℃が更に好ましい。
或いは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
セルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10〜150質量%が好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離し、更に乾燥し、残留溶媒量を1質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特に好ましくは0〜0.01質量%以下である。
フィルム乾燥工程では一般にロール乾燥方式(上下に配置した多数のロールをウェブを交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採られる。
本発明に係る第3の保護膜に用いられるセルロースエステルフィルムを作製するには、金属支持体より剥離した直後のウェブの残留溶剤量の多いところで搬送方向(=長尺方向)に延伸し、更にウェブの両端をクリップ等で把持するテンター方式で幅方向に延伸を行うことが好ましい。
延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することが好ましい。また、二軸延伸を行う場合にも同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。
好ましい延伸倍率は1.05〜2倍が好ましく、好ましくは1.1〜1.5倍である。同時2軸延伸の際に縦方向に収縮させてもよく、0.8〜0.99、好ましくは0.9〜0.99となるように収縮させてもよい。好ましくは、横方向延伸及び縦方向の延伸若しくは収縮により面積が1.12倍〜1.44倍となっていることが好ましく、1.15倍〜1.32倍となっていることが好ましい。これは縦方向の延伸倍率×横方向の延伸倍率で求めることができる。
また、本発明における「延伸方向」とは、延伸操作を行う場合の直接的に延伸応力を加える方向という意味で使用する場合が通常であるが、多段階に二軸延伸される場合に、最終的に延伸倍率の大きくなった方(即ち、通常遅相軸となる方向)の意味で使用されることもある。
本発明の偏光板に用いられる前記第1の保護膜、第4の保護膜のリターデーションは、格別に限定されるものではなく、面内方向のリターデーションRoとしては30nm〜1000nmの範囲が好ましく、更に好ましくは、30nm〜500nmの範囲であり、特に好ましくは、30nm〜150nmがであり、最も好ましくは、30nm〜75nmの範囲である。また、厚み方向のリターデーションRtとしては、30nm〜1000nmの範囲が好ましく、更に好ましくは、30nm〜500nmの範囲であり、特に好ましくは、30nm〜250nmの範囲である。
本発明に係る第1、第3、第4の保護膜に用いられるセルロースエステルフィルムは、その膜厚が20〜200μmの範囲であることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましく、20〜80μmであることが更に好ましい。第3の保護膜に用いられるセルロースエステルフィルムは、膜厚が20〜45μmであることが視野角拡大効果に加えて、安定的に色味の変化を押さえる上で特に好ましい。
《偏光板》
偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明の第2の保護膜であるシクロオレフィン樹脂フィルムの裏面側を、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、プライマー溶液を介して貼り合わせることが好ましい。プライマー溶液としては、無水マレイン酸変性スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物を、溶媒に溶解させたものなどを好ましく用いることができる。
また、本発明の第1、第3、第4の保護膜にセルロースエステルフィルムが用いられる場合は、フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。市販の偏光板保護フィルムを用いることも好ましく、例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC4FR、以上コニカミノルタオプト(株)製等も好ましく用いられる。
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
《表示装置》
本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、視認性に優れた本発明の液晶表示装置を作製することができる。本発明の偏光板は、IPSモード型のLCDで好ましく用いられるが、中でも前記2または前記3の構成を採用したIPSモード型液晶表示装置に好適に用いられる。特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の液晶表示装置でも、コントラストが高く、特に視角による色味変化を抑制し、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。