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JPWO2006118176A1 - 光学部品用ポリイミド、光学部品および光導波路 - Google Patents

光学部品用ポリイミド、光学部品および光導波路 Download PDF

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JPWO2006118176A1
JPWO2006118176A1 JP2007514796A JP2007514796A JPWO2006118176A1 JP WO2006118176 A1 JPWO2006118176 A1 JP WO2006118176A1 JP 2007514796 A JP2007514796 A JP 2007514796A JP 2007514796 A JP2007514796 A JP 2007514796A JP WO2006118176 A1 JPWO2006118176 A1 JP WO2006118176A1
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文康 瀬崎
野尻 仁志
仁志 野尻
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充啓 堀
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Abstract

本発明は、伝送損失の極めて低いポリイミド、光学部品および光導波路を提供することを目的とする。少なくともフッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンを含むジアミン類とテトラカルボン酸二無水物類とを用いてなるポリイミドであって、波長830nmにおける伝送損失がTEモード、TMモードともに1dB/cm以下であることを特徴とする、光学部品用ポリイミドにより、伝送損失の極めて低いポリイミド、光学部品および光導波路により上記課題を解決しうる。

Description

本発明は、光通信分野や光情報処理分野で用いられる光学部品を作製するためのポリイミド、および該樹脂を用いて作製される光学部品および光導波路に関する。
マルチメディア時代を迎え、光通信システムやコンピュータにおける情報処理の大容量化および高速化の要求から、光を伝送媒体とする伝送システムが、FTTH(Fiber To The Home)、LAN(ローカルエリアネットワーク)、FA(ファクトリーオートメーション)、コンピュータボード内のインターコネクト、コンピュータ間のインターコネクト、家庭内配線等に使用されつつある。この伝送システムを構成する要素のうち、光導波路は、例えば、映画や動画等の大容量の情報伝達や光コンピュータ等を実現するための光デバイス(ONU(Optical Network Unit)など)、光電集積回路(OEIC)、光集積回路(光IC)等における基本構成要素である。特に、光導波路は、大量の需要があることから鋭意研究される一方で、高性能で低コストの製品が求められている。光導波路としては、従来、石英系光導波路やポリマー系光導波路が知られている。
このうち、石英系光導波路は、伝送損失が低いという利点を有する反面、製造工程における加工温度が高いこと、および、大面積のものを作製し難いこと等のプロセス上の問題があった。また、ポリマー系光導波路は、加工のし易さや材料設計の幅広さ等の利点を有することから、ポリメチルメタクリレートやポリカーボネート等のポリマー材料を用いたものが検討されてきた。しかし、前記ポリマー系光導波路は、耐熱性が劣るという問題があった。また、ポリメチルメタクリレートやポリカーボネートは、近年光通信用光源として数多く検討され始めた波長830nm付近での伝送損失が大きいことが問題であった。そのため、最近では耐熱性といった信頼性に優れることや伝送損失に優れるといった特性を有することから、フッ素化ポリイミドを光導波路用ポリマーに用いた検討が盛んに行なわれている。
例えば特許文献1には、TEモードとTMモードの屈折率差、ガラス転移温度、ある波長域における伝送損失およびフッ素含有率を規定したフッ素化ポリイミドが提案されている。しかし、フルオレン骨格を有するポリイミドについては一切の記載がない。
特開2003−41003号公報
上述のように、従来のポリマー系光導波路の材料は、光通信等で用いられる600〜1600nmの領域(特に近年検討されている830nm付近)において導波路の伝送損失が比較的大きく充分小さいわけではないという問題があり、光導波路に求められる諸特性を満足するものではなかった。また、伝送損失を満足するものであっても、材料選択という観点では比較的、限られていた。そこで、本発明は、伝送損失の極めて低いポリイミド、光学部品および光導波路を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、フッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンを用いたポリイミドは、波長830nmにおける伝送損失が特異的に低いことを見出し、本発明を完成した。
本発明の第1は、少なくともフッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンを含むジアミン類とテトラカルボン酸二無水物類とを用いてなるポリイミドであって、波長830nmにおける伝送損失がTEモード、TMモードともに1dB/cm以下であることを特徴とする、光学部品用ポリイミドである。
本発明の第2は、さらに波長633nmにおける伝送損失がTEモード、TMモードともに1dB/cm以下であることを特徴とする、前記第1の発明に記載の光学部品用ポリイミドである。
本発明の第3は、前記フッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンのアミノ基は、芳香族環に結合しており、前記フッ素置換基が、前記アミノ基のオルト位に位置することを特徴とする、前記第1または第2の発明に記載の光学部品用ポリイミドである。
本発明の第4は、前記フッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンが、下記式(1)で表されるジアミンであることを特徴とする、前記第1または第2の発明に記載の光学部品用ポリイミドである。
Figure 2006118176
(式中のR1〜R8は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素またはフッ素のいずれかであり、少なくとも一つはフッ素である。)
本発明の第5は、前記フッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンが、9、9−ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオレンであることを特徴とする、前記第1または第2の発明に記載の光学部品用ポリイミドである。
本発明の第6は、前記ジアミン類は、前記フッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミン及び1種類以上の共重合用ジアミンを含み、前記共重合用ジアミンが下記式(2)で表されるジアミンであることを特徴とする、前記第1〜5の発明のいずれかに記載の光学部品用ポリイミドである。
Figure 2006118176
(式中のX1〜X10のうち任意の2つはNH2であり、残りの8つは、H,CH3及びCF3からなる群から選ばれるいずれか1つの基である。また、R11は−O−,−S−,−SO2−,−CH2−,−CO−,−C(CH32−,−C(CF32−,−O−R12−O−,−フルオレニル基−及び直接結合からなる群から選ばれるいずれか1つである。ただし、R12は炭素数1以上5以下のアルキル基及び下記式群(3)で表される基からなる群から選ばれるいずれか1つの基である。
Figure 2006118176
本発明の第7は、前記共重合用ジアミンが4,4’‐ジアミノジフェニルエーテル、3,4’‐ジアミノジフェニルエーテル、2,2’‐ビス(トリフルオロメチル)‐4,4’‐ジアミノビフェニル、4,4’‐ジアミノジフェニルスルホン、1,5‐(4‐アミノフェノキシ)ペンタン、1,3‐ビス(4‐アミノフェノキシ)‐2,2‐ジメチルプロパン、2,2‐ビス(4‐アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2‐ビス[4‐(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル]スルホン及びビス[4‐(3‐アミノフェノキシ)フェニル]スルホンからなる群から選ばれる少なくとも1つのジアミンであることを特徴とする前記第6の発明に記載の光学部品用ポリイミドである。
本発明の第8は、前記テトラカルボン酸二無水物類がフッ素置換基を有するテトラカルボン酸二無水物を含むことを特徴とする、前記第1〜7の発明のいずれかに記載の光学部品用ポリイミドである。
本発明の第9は、前記テトラカルボン酸二無水物類が、2,2−ビス―((3,4−ジカルボキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン二無水物)を含むことを特徴とする、前記第1〜7の発明のいずれかに記載の光学部品用ポリイミドである。
本発明の第10は、前記テトラカルボン酸二無水物類は、2,2−ビス―((3,4−ジカルボキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン二無水物)及び1種類以上の共重合用テトラカルボン酸二無水物を含み、前記共重合用テトラカルボン酸二無水物が下記式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物であることを特徴とする、前記第1〜7の発明のいずれかに記載の光学部品用ポリイミドである。
Figure 2006118176
(式中、R13は−O−,−CO−,−SO2−及び直接結合からなる群から選ばれるいずれか1つである。)
本発明の第11は、前記波長830nmにおける伝送損失がTEモード、TMモードともに0.1dB/cm以下であることを特徴とする、前記第1〜10の発明のいずれかに記載の光学部品用ポリイミドである。
本発明の第12は、前記波長633nmにおける伝送損失がTEモード、TMモードともに0.1dB/cm以下であることを特徴とする、前記第2〜10の発明のいずれかに記載の光学部品用ポリイミドである。
本発明の第13は、波長830nmにおける屈折率がTEモード、TMモードともに1.55以上であり、前記TEモード、TMモードの屈折率差が0.01以下であることを特徴とする、前記第1〜12の発明のいずれかに記載の光学部品用ポリイミドである。
本発明の第14は、波長633nmにおける屈折率がTEモード、TMモードともに1.55以上であり、前記TEモード、TMモードの屈折率差が0.01以下であることを特徴とする、前記第1〜12の発明のいずれかに記載の光学部品用ポリイミドである。
本発明の第15は、厚さ50μmのフィルム状にした場合の屈曲半径0.38mm、屈曲角度135°、荷重100gでのMIT屈曲試験において300回以上の屈曲が可能であることを特徴とする、前記第1〜14の発明のいずれかに記載の光学部品用ポリイミドである。
本発明の第16は、ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド及びメチルエチルケトンからなる群から選ばれる少なくとも1つの単独溶媒または2つ以上の混合溶媒への25℃での溶解度が、20重量%以上であることを特徴とする、前記第1〜15の発明のいずれかに記載の光学部品用ポリイミドである。
本発明の第17は、前記第1〜16の発明のいずれかに記載の光学部品用ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸である。
本発明の第18は、前記第1〜16の発明のいずれかに記載のポリイミド及び/または、前記第17の発明に記載のポリアミド酸を含む、光学部品である。
本発明の第19は、前記第1〜16の発明のいずれかに記載のポリイミド及び/または、前記第17の発明に記載のポリアミド酸を含む、光導波路である。
本発明の第20はコアとクラッドを有する光導波路において、少なくともフッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンを含むジアミン類とテトラカルボン酸二無水物類とを用いてなるポリイミドをコアとして用いることを特徴とする、光導波路である。
本発明の第21は波長830nmにおける前記光導波路の伝送損失がTEモード、TMモードともに1dB/cm以下であることを特徴とする、前記第20の発明に記載の光導波路である。
本発明の第22は波長633nmにおける前記光導波路の伝送損失がTEモード、TMモードともに1dB/cm以下であることを特徴とする、前記第20または21の発明に記載の光導波路である。
本発明のポリイミドは、830nmにおける伝送損失が極めて低く、光学部品および光導波路を形成した場合に優れた伝送特性(低い導波路の伝送損失)等の物性を有するため、光学部品および光導波路形成用材料として好適に用いることができる。さらに、633nmにおける伝送損失も極めて低い。
以下、本発明を詳細に説明する。
<光学部品・光導波路>
本発明の光学部品とは、光分岐結合器(光カプラ)、光合分波器、光アイソレータ、リングカプラ、グレーティング(回折格子)、レンズアレイ、フルネルレンズ、マイクロミラー、モードコンバーターまたはフォトニック結晶、光導波路、等である。例えば、グレーティングの場合、光通信において波長フィルター等に使用され、またCD光学系におけるピックアップ等にも使用されている。またレンズアレイも液晶プロジェクター用途など種々の用途で使用されている。
<光学部品の製造方法・光導波路の製造方法>
光学部品の製造方法は、従来のポリマーを用いた光学部品の製造方法に従えば良い。例えば、光導波路の製造方法の一例について説明する。本発明の光学部品用ポリイミドを光導波路コアに用いる場合は、まず、本発明の光学部品用ポリイミドよりも屈折率の小さいポリイミドを選択し、クラッド材料として用いる。クラッド層はシリコン基板などの上にスピンコート法や真空蒸着法等により薄膜を形成する。光導波路コアの形成は、コア材料である本発明の光学部品用ポリイミドを前記クラッド層の上にスピンコートして薄膜を作製し、その後、レジスト塗布、パターニング、エッチングなどを行い、光導波路コア部のみを形成させる。次いで、上部クラッドをスピンコートすることにより作製する。
その他の光導波路の作製方法としては、ポリイミドからなるフィルムの内部に、超短パルスレーザー(10フェムト秒以上500ピコ秒以下のオーダーのパルスレーザー)を集光照射し、ポリイミドフィルムを走査することによって、または、超短パルスレーザーを走査することによって、光導波路を形成する方法がある。
その他、電子線(EB)照射による光導波路形成方法、感光性ポリイミドを用いてコアまたはクラッドを露光によりパターニングする方法などもある。更に、ポリイミド製の転写型上に酸化シリコン膜を蒸着した転写型または石英ガラス転写型の上から成形材料であるフッ素化ポリアミド酸溶液スピンコートし加熱イミド化し、その後、転写型ごとフッ酸水溶液(ポリイミド製転写型の場合)または水(石英転写型の場合)に浸漬して転写型から剥離させたのち、光導波路コアとなるポリアミド酸溶液をスピンコートして形成した溝を埋め、加熱イミド化させて、さらにその上部に転写型により形成されたクラッドと同じ成形材料で上部クラッドを形成して光導波路とする方法がある。
さらには、コア材料を有機溶剤に溶解させ、該溶液をインクジェットにより塗布し、コア部を形成した後、上部クラッド層を形成して光導波路を形成する方法、紫外線硬化してポリマーとなるモノマー溶液へ光ファイバーから紫外線を誘導・照射し、照射部が徐々に伸びてコア部を形成する自己形成法、などがある。
<ポリイミドの伝送損失>
本発明における光学部品用ポリイミドの、波長830nmおよび波長633nmにおける伝送損失はTEモード、TMモードともに1dB/cm以下であり、好ましくは0.5dB/cm以下であり、より好ましくは0.1dB/cm以下である。伝送損失が1dB/cmより大きくなると、光学部品に入力する光源の消費電力が増大してしまう。
本発明における光学部品用ポリイミドの伝送損失は、波長830nmや波長633nmのみならず、波長600nm以上1000nm未満および/または1000nm以上の領域での伝送損失が1dB/cm以下であることが好ましい。波長830nm、波長633nm以外の波長域においても伝送損失が1dB/cm以下であると、何種類もの波長を用いた双方向通信が可能となるためである。
本発明におけるポリイミドの伝送損失は、プリズムカプラ法を実現できる装置であるプリズムカプラモデル2010(メトリコン社製)を用いて測定した。測定モードに関しては、伝送させる光の偏波は、TEモード、TMモードと分けて行うのが通例であるため、本発明の実施例においてもこの両者での伝送損失を測定した。
プリズムカプラ法により測定される伝送損失は、酸化膜付シリコン基板上にスピンコート法により作製された厚み1μmから15μm程度の薄膜中を導波した波長830nmおよび633nmの光の漏洩光強度の変化と伝送長をプロットしたときに得られる直線の傾きから算出される。この方法は厚み1μm以上、15μm以下の薄膜中で適用できる方法である。この厚み範囲において、伝送損失は、厚みには依存しないが、厚みが厚くなると伝送モードが数多く存在することになり測定が困難となるので、10μm前後が好適である。また、15μmより厚くなると、薄膜の平滑性が損なわれるので、好ましくない。1μm未満になると、伝送モードが存在しなくなるので、測定できなくなる。
なお、本発明のTEモード、TMモード、TEモードとTMモードの屈折率差などは、当業者にとって公知の概念であるものと同じ意味で用いる(例えば、(特許文献1)特開2003−41003号公報などに記載されている)。
<光導波路の伝送損失>
本発明のポリイミドにより作られる光導波路の波長830nmおよび波長633nmにおける伝送損失はTEモード、TMモードともに1dB/cm以下であり、好ましくは0.5dB/cm以下であり、より好ましくは0.1dB/cm以下である。
一般に、光学部品用ポリイミドを実際に光導波路などの光学部品に適用した場合、該光学部品の伝送損失は原料となる光学部品用ポリイミド自体の伝送損失よりも大きくなる。それはポリイミドを上記記載の方法で所望の状態に加工するときに少なからず界面に傷やうねりが生じ、そこからの散乱が原因で損失が生じるためである。従って、光学部品(例えば、光導波路)での伝送損失が1dB/cm以下であるとき、該光学部品を製造するのに用いられた光学部品用ポリイミドの伝送損失は1dB/cm未満になるのは当然のことである。
<屈折率>
本発明における屈折率は、プリズムカプラ法により測定され、得られた値である。測定には、プリズムカプラモデル2010(メトリコン社製)を使用した。
本発明において、波長830nmおよび波長633nmでの屈折率はTEモード、TMモードともに1.55以上が好ましい。屈折率が1.55より小さいと、光学部品に用いた場合、屈折率差を利用する場合に、他樹脂との組み合せが制限されてしまうためである。特に、光導波路のコアに本発明のポリイミドを用いる場合、クラッド材料には、コアよりも屈折率の小さい材料を選択する必要がある。屈折率が1.55よりも小さいと、クラッド材料の選択の余地が制限されてしまう。
本発明における屈折率差とは、面方向の屈折率から厚さ方向の屈折率を引いた値である。面方向の屈折率とは、TEモードの光を用いて測定したときに得られる屈折率を表し、厚さ方向の屈折率とは、TMモードの光を用いて測定したときに得られる屈折率を表す。光導波路材料として用いる場合、屈折率差は小さければ小さいほど好ましい。屈折率差が大きいと、導波路内に入射された光の偏波方向によって屈折率が異なるので伝搬モードや伝搬速度に差異が現れ、信号伝達の精度が悪くなる可能性があるためである。
本発明における屈折率差の測定は、プリズムカプラ法により測定された。具体的には、プリズムカプラモデル2010(メトリコン社製)を使用した。
<少なくともフッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンを含むジアミン類とテトラカルボン酸二無水物類とを用いてなるポリイミド>
本発明のポリイミドは、原料に少なくともフッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンを含むジアミン類とテトラカルボン酸二無水物類とを用いてなるポリイミドである。
<ジアミン類>
フッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンの一例としては、下記式(1)で表される構造を有するフルオレンジアミンが挙げられる。
Figure 2006118176
(式中のR1〜R8は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素またはフッ素のいずれかであり、少なくとも一つはフッ素である。)
具体的には、9、9−ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオレン、9、9−ビス(3,3’−ジフルオロ−4−アミノフェニル)フルオレン、9、9−ビス(2,3−ジフルオロ−4−アミノフェニル)フルオレン、9、9−ビス(2,2’,3−トリフルオロ−4−アミノフェニル)フルオレン等のフッ素置換基を1個以上含有するフルオレンジアミンが例示される。
これらの中でも、前記フッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンのアミノ基が、芳香族環に結合しており、前記フッ素置換基が、前記アミノ基のオルト位に位置することが望ましい。フルオレンジアミンユニットとテトラカルボン酸二無水物ユニットに空間的な捻れが生じ、電荷移動吸収による着色が制限され、伝送損失低減に寄与するからである。
より好ましくは、前記ジアミンが9、9−ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオレンであることが望ましい。より伝送損失が小さくなるからである。
<ポリイミドの共重合>
ポリマーを光学材料に用いる大きなメリットの一つに耐屈曲性が挙げられる。例えば光導波路を携帯電話などのフレキシブル基板に搭載するといった場合、光導波路材料に求められる特性として、伝送損失に加え材料の耐屈曲性も重要となる。本発明者らは、その耐屈曲性を支配する因子は主にモノマーの構造、及び分子鎖の配列順序と考え、これらを制御することで耐屈曲性が従来のポリマーよりも向上すると考えた。そこで、フッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンに、柔軟な分子構造を有するジアミンを含むポリイミド共重合させた結果、伝送損失が比較的低い値を維持したまま、耐屈曲性が大きく向上することを独自に見出した。
式(1)に共重合するポリイミドとしては、屈曲性を強化する観点から、下記式(2)で表される構造を有するジアミンを含むポリイミドが好ましい。
Figure 2006118176
(式中のX1〜X10のうち任意の2つはNH2であり、残りの8つは、H,CH3及びCF3からなる群から選ばれるいずれか1つの基である。また、R11は−O−,−S−,−SO2−,−CH2−,−CO−,−C(CH32−,−C(CF32−,−O−R12−O−,−フルオレニル基−及び直接結合からなる群から選ばれるいずれか1つである。ただし、R12は炭素数1以上5以下のアルキル基及び下記式群(3)で表される基からなる群から選ばれるいずれか1つの基である。
Figure 2006118176
さらにその中でも、4,4’‐ジアミノジフェニルエーテル、3,4’‐ジアミノジフェニルエーテル、2,2’‐ビス(トリフルオロメチル)‐4,4’‐ジアミノビフェニル、4,4’‐ジアミノジフェニルスルホン、1,5‐(4‐アミノフェノキシ)ペンタン、1,3‐ビス(4‐アミノフェノキシ)‐2,2‐ジメチルプロパン、2,2‐ビス(4‐アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2‐ビス[4‐(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル]スルホン及びビス[4‐(3‐アミノフェノキシ)フェニル]スルホンからなる群から選ばれる少なくとも1つのジアミンを含むポリイミドを共重合することが好ましい。
したがって、フレキシブル基板などといった耐屈曲性が求められる用途においては前述のようなポリイミド共重合体が最も好ましい形態となる。もちろんジアミンの種類はフッ素置換基及びフルオレニル基を含んでいれば3種類以上となっても構わない。また、ジアミン類に限らず、テトラカルボン酸二無水物類を複数用いた共重合体を作ってもよい。
共重合のモノマー比率については少なくともフッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンが全ジアミン比率の30mol%以上を満たしていれば、その他のジアミン、テトラカルボン酸二無水物の比率については制限しない。
さらに、透明性が要求される光学部品に用いるポリイミドの構造としては、特に限定されないが、本発明に使用されるジアミン類として、例えば下記のものを用いて共重合しても良いし、ここに記載された以外のジアミンも用いることができる。特に、ジアミン骨格に−SO2−、−C(CF32−、−CO−等の電子吸引基が含まれるもの、またはジアミンの芳香環に直接CF3、F、Cl、Br等の電子吸引基が導入されているものが好ましい。例えば、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノ−6−フルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジブロモ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジブロモ−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
<テトラカルボン酸二無水物類>
本発明に使用されるテトラカルボン酸二無水物成分としては公知のテトラカルボン酸二無水物類を使用することができる。また、2種類以上の酸二無水物を共重合してもよい。例えばフッ素を含まないテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、p−フェニレンジフタル酸二無水物、2,2−ビス―((3,4−ジカルボキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、9,9‘−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4′−スルホニルジフタル酸二無水物、パラ−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、メタ−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、1−(2,3−ジカルボキシフェニル)−3−(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物などが挙げられる。上記酸二無水物のベンゼン環には、アルキル基置換および/またはハロゲン置換された部位を有していても良い。
さらに本発明のようにポリイミドを光学材料用途に用いる場合、テトラカルボン酸二無水物にフッ素が含まれていることが好ましい。ポリイミドにフッ素を含有させることで近赤外波長での高い透明性、低吸湿性、化学的および熱的な安定性など様々な特性の向上が期待できるためである。
フッ素を含むテトラカルボン酸二無水物としては、2,2−ビス―((3,4−ジカルボキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン二無水物)、(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(ヘプタフルオロプロピル)ピロメリット酸二無水物、ペンタフルオロエチルピロメリット酸二無水物、ビス{3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ}ピロメリット酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−テトラカルボキシビフェニル二無水物、2,2’,5,5’−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−テトラカルボキシビフェニル二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、5,5’−ビス(トリフルオロメチル)−3,3’,4,4’−テトラカルボキシベンゾフェノン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ベンゼン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、2,2−ビス{(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ジフェニルエーテル二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物などが挙げられる。
上記酸二無水物のベンゼン環には、更にアルキル基置換された部位を有していても良い。
そして、伝送損失をより低減させるために、フッ素置換基を含有することが好ましい。さらには、該テトラカルボン酸二無水物は、伝送損失が極めて小さくなるため、2,2−ビス―((3,4−ジカルボキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン二無水物であることが好ましい。
また、屈曲性を付与するという観点から、2,2−ビス―((3,4−ジカルボキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン二無水物からなるポリイミドに下記式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物からなるポリイミドを共重合させたポリイミドを使用することも可能である。
Figure 2006118176
(式中、R13は−O−,−CO−,−SO2−及び直接結合からなる群から選ばれるいずれか1つである。)
ここに記載したフッ素置換基含有フルオレンジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分の組み合わせは、本発明の光学部品用ポリイミドを得るための一具体例を示すものである。これらの組み合わせに限らず用いるテトラカルボン酸二無水物成分、及びフッ素置換基含有フルオレンジアミン成分の組み合わせおよび使用比率を変えて、本発明の光学部品用ポリイミドを調整することが可能である。上記のテトラカルボン酸二無水物およびジアミンはそれぞれ2種以上を併用してもよい。ポリアミド酸溶液の製造反応に用いられる酸二無水物類とジアミン類の使用モル比率=(酸二無水物類の総モル数)/(ジアミン類の総モル数)は、0.9以上1.5以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.95以上1.3以下であることが好ましく、特に好ましくは、0.98以上1.2以下であることがポリアミド酸溶液から得られるポリイミド樹脂中の未反応の酸二無水物やジアミンを減少させる上で好ましい。
ポリイミドの製造に用いられるジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物は、合成反応の前に、精製されていることが好ましい。精製の方法は公知の方法から選択すれば良いが、例えば、ジアミンまたはテトラカルボン酸二無水物を加熱しながら溶解度の小さい貧溶媒に溶解させ、急冷することにより再析出させる再結晶法などが挙げられる。
また、ポリイミドを合成する前に、ジアミンやテトラカルボン酸二無水物溶液を溶媒に溶かしフィルターにより濾過してから、必要な場合溶媒を除去してからポリイミドの製造に用いても良い。
<ポリイミドの製造方法>
本発明の光学部品用ポリイミドは公知の製造方法により製造可能である。すなわち、原料である1種または2種以上のテトラカルボン酸二無水物成分、及び1種または2種以上のジアミン成分を実質的に等モル量使用し、有機極性溶媒中で重合してポリアミド酸重合体溶液を得る。ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、アミド系溶媒すなわちN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルフォルムアミドが特に好ましく用いられる。反応装置には、反応温度を制御するための温度調製装置を備えていることが好ましく、反応溶液温度として60℃以下が好ましく、さらに、40℃以下であることが反応を効率良くしかも、ポリアミド酸の粘度が上昇しやすいことから好ましい。
ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸の重量%は、有機溶媒中にポリアミド酸が5〜50wt%、好ましくは10〜40wt%、更に好ましくは、15〜30wt%溶解されているのが取り扱い面から好ましい。尚、ポリアミド酸の平均分子量は、GPCのPEG(ポリエチレングリコール)換算で測定した際に重量平均分子量が1万以上、好ましくは5万以上、更に好ましくは10万以上であることがポリイミド樹脂を光学部品に使用する際に好ましい。20万以上になると溶解性が低くなる為好ましくない。
このポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を必要によりイミド化する。このイミド化には、熱キュア法及びケミカルキュア法のいずれかを用いる。
熱キュア法は、脱水閉環剤等を作用させずに加熱だけでイミド化反応を進行させる方法である。具体的には、ガラス板やステンレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上に流延塗布し、自己支持性を持つ程度に反応を進行させた後に支持体より引き剥がし、端部をピン、クリップ、把持冶具などの方法で固定してさらに加熱して完全にイミド化することで得られる。
熱キュア法の中には、ポリアミド酸溶液を製造した後に、真空乾燥器内で加熱しながら脱溶媒、脱水することによりイミド化する方法もある。
また、ケミカルキュア法は、ポリアミド酸有機溶媒溶液に、無水酢酸等の酸無水物に代表される化学的転化剤(脱水剤)と、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジン等の第三級アミン類等に代表される触媒と、を作用させる方法である。脱水剤としてジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物を用いることも可能である。
イミド化に際して、脱水剤を併用することはイミド化時間を短縮できる観点で好ましい。このような脱水剤としては、無水酢酸などの脂肪族酸無水物や芳香族酸無水物などが挙げられる。無水酢酸を用いることがポリイミド樹脂の洗浄に適しているという点から好ましい。ポリアミド酸に対する脱水剤及びイミド化促進剤の添加量は、ポリアミド酸の化学構造に依存するが、脱水剤の量は、(脱水剤のモル比/ポリアミド酸中のアミド基のモル比)で3〜1.2となるよう用いることができる。脱水剤の量が少ないとイミド化が進行するのに時間が要する場合があり、逆に多すぎると分子量の低下を引き起こす場合がある。
無論、ケミカルキュア法と熱キュア法を併用してもよく、イミド化の反応条件は、ポリアミド酸の種類、得られる樹脂の形態、熱キュア法、および/またはケミカルキュア法の選択等により変動し得る。
イミド化する際の温度は50℃〜120℃で、加熱時間は1〜10時間であることが好ましい。
本発明のイミド樹脂粉体の抽出方法について記載する。上述のようにして得られたポリイミド樹脂を含む溶液から、ポリイミド樹脂粉体を抽出する方法として、ポリイミド樹脂、イミド化促進剤を含有するポリイミド樹脂の溶液をポリイミド樹脂の貧溶媒中に投入することで、ポリイミド樹脂を固形状態に抽出する方法を用いることができる。本発明のポリイミド樹脂粉体とは、粉末状、フレーク状、種々の形態を含む固形物状態のものであり、その平均粒径は、好ましくは5mm以下であり、さらには3mm以下、特には1mm以下が好ましい。
本発明で用いられるポリイミド樹脂の貧溶媒としては、ポリイミド樹脂の貧溶媒であって、ポリアミド酸及びポリイミド樹脂を溶解している溶媒として使用した有機溶剤と混和するものを用いることができる。例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、トリエチレングリコール、2−ブタノール、2−ペンタノール、2−ヘキサノール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フェノール、t−ブチルアルコールなどが挙げられる。上記アルコールの中でもイソプロピルアルコール、2−ブタノール、2−ペンタノール、フェノール、シクロペンチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコールが、抽出後のポリイミド樹脂の安定性が高くなる、イミド化率が高くなるという観点から好ましい。さらにはイソプロピルアルコールが好ましい。
投入方法:ポリイミド樹脂の溶液を貧溶媒中に投入する際には、ポリアミド酸溶液の固形分濃度が15%以下、好ましくは10%以下の状態になるように希釈を行った後に、貧溶媒溶液中にポリイミド溶液を投入することが好ましい。ポリイミド樹脂溶液の投入直前の直径は1mm以下が好ましく、更に好ましくは直径が0.5mmになるように投入することが乾燥工程で完全に溶媒を除去する上で好ましい。貧溶媒量はポリイミド樹脂溶液の3倍以上の量で抽出することが好ましい。
例えば、樹脂の投入直後は樹脂が糸状になる場合があるので、できるだけ細かいフレーク状のポリイミド樹脂の粉体を得るためには、貧溶媒中で攪拌することが好ましい。また、完全にポリイミド樹脂溶液を投入後、貧溶媒中のポリイミド溶解用に用いている溶媒量が多量になると、ポリイミド樹脂が溶解するので、投入後に貧溶媒を最初に加えた溶媒量と同量の溶媒を加えることが好ましく、更に好ましくは2倍量の溶媒を添加することが好ましい。大量の溶媒を添加することで貧溶媒中に溶解したイミド樹脂が再度沈殿すると共に、粉末状の樹脂となる。
洗浄方法:固形のポリイミド樹脂を取り出して、アルコール等の貧溶媒中で洗浄する。
乾燥方法:本発明で凝固させフレーク状にした樹脂固形物の乾燥方法は、真空乾燥によってもよいし熱風乾燥によってもよい。乾燥温度は酸素存在下では120℃以上では着色が起こる場合がある。したがって乾燥は120℃以下で行うことが望ましい。真空中や不活性ガス雰囲気でも、120℃以下で行うことが望ましい。
上記方法で作製したポリイミド樹脂の分子量は、GPCのPEG(ポリエチレングリコール)換算で測定した際に重量平均分子量が1万以上50万以下であることが好ましく、さらに好ましくは、5万以上40万以下であることが好ましく、特に好ましくは8万以上30万以下であることがポリイミド樹脂を例えばフィルム体に表面に塗布する際に塗布斑が少なく、取扱が容易であることから好ましい。
このようにして得られるポリイミド樹脂の粉体は、有機溶剤に対する溶解性が高く、実用上十分なイミド化率、分子量を有している。ここで実用上十分なイミド化率、分子量とは適用用途により当業者が決定するものであるが、一般的にイミド化率95%以上、好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上であり、重量平均分子量は5万以上、好ましくは8万以上、さらに好ましくは10万以上である。20万以上であると溶解性が低下する傾向にある。
上記のようにして得られたポリイミドを通常は溶媒に溶解して使用する。
ポリイミドを溶解させる溶媒としては、アミド系溶媒すなわちN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルフォルムアミドや、ジオキソラン、メチルエチルケトン、などが挙げられる。
ポリイミド溶液の調整方法としては、粉末化または粉砕化後に溶媒を加える方法や、溶媒中へ粉末化または粉砕化ポリイミドを投入して溶解させる方法がある。大量の溶媒にポリイミドを溶解させた後に、溶媒を自然揮発させるなどしてポリイミド溶液の濃度を上昇させても良い。また、必要に応じて溶解中に加熱しても良い。
ポリイミド樹脂を有機溶媒中へ添加した後に、遠心機にかけて遠心混合したり、振動を与えるなどしても良い。
ポリイミド溶液の濃度は、10重量%以上60重量%以下の濃度であることが好ましい。さらには、ポリイミド薄膜やポリイミドフィルムの厚み制御を精度良くできるという点から20重量%以上の濃度であることが好ましい。
10重量%未満の場合、例えば、シリコン基板上にポリイミド薄膜を形成するためにスピンコート等をする場合に、平滑で厚み均一な薄膜を形成することができない場合がある。
ポリイミド溶液の濃度が60重量%より大きくなると、ポリイミド溶液の流れ性が極端に悪くなる傾向にあり、ひどい場合には、流れなくなってしまう。
さらに、ポリイミドフィルムまたはポリイミド薄膜を形成した場合、平滑性が悪く、厚みの均一性が失われるほか、ポリイミド薄膜やポリイミドフィルム中に微小な気泡が含有されるなどの欠陥が生じる場合がある。
前記ポリイミド溶液は、パーティクル含有量が少ないほど好ましい。
ここでパーティクルとは、空気中の塵、埃、溶媒に未溶解成分などを言う。パーティクルが多いと、光散乱等が生じてしまい、入力光パワーをロスすることになる。
具体的には、0.3μm以上のパーティクル含有量は50000個/g以下であることが好ましい。パーティクルの含有量は少ないほど好ましい。
0.3μmのパーティクルの除去方法としては、メンブレンフィルターなどを用いてポリイミド溶液を濾過する方法が挙げられる。効率良く濾過するためには、ポリイミド合成前の、ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物を溶液の状態で0.2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過した後にポリイミド樹脂の合成をはじめても良い。
本発明の光学部品用ポリイミドは、ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド及びメチルエチルケトンより選ばれる単独溶媒または混合溶媒への25℃での溶解度が、20重量%以上であることが好ましい。20重量%未満であると、ポリイミド溶液の体積が大きくなり、保管に必要な容積が増えてしまうということの他に、該溶液を用いて薄膜形成させる場合に、溶液粘度が小さいため、また溶質の濃度が低いため所望の厚みを有する薄膜を得ることができないといった傾向が有るからである。
ポリイミド溶液の濃度が60重量%より大きくなると、ポリイミドフィルムまたはポリイミド薄膜を形成した場合、平滑性が悪く、厚みの均一性が失われるほか、ポリイミド薄膜やポリイミドフィルム中に微小な気泡が含有されるなどの欠陥が生じるといった問題がある。
本発明の光学部品は、ポリイミド及び/または、ポリアミド酸を含んでいる。ポリアミド酸は、前記のポリイミドの前駆体である。ポリアミド酸の製造方法は、前記の<ポリイミドの製造方法>の欄に記載したものと同じである。
本発明におけるポリイミド樹脂のガラス転移温度(以下、Tg)は、150℃以上であることが望ましい。150℃未満になると、長期信頼性試験やハンダリフロー工程などに耐えることができず、不具合を生じる場合がある。
Tgの測定方法としては、公知の方法を使用すれば良い。JIS K 7121:1987に準拠すれば良い。
例えば、TMA法、DSC法、DMA法などがある。TMA法は、試験片を室温から例えば10℃/分の割合で昇温させ、熱分析装置にて厚さ方向の熱膨張量を測定し、横軸に温度、縦軸に熱膨張率をプロットしたグラフを作成する。ガラス転移点の前後の曲線に接線を引き、この接線の交点からTgを求める方法である。DSC法は、試験片を室温から例えば20℃/分の割合で昇温させ、示差走査熱量計にて発熱量を測定し、横軸に温度、縦軸に発熱量をとったグラフを作成する。作成グラフ中、吸熱曲線および発熱曲線に2本の延長線を引き、延長線間の1/2直線と吸熱曲線の交点からTgを求める方法である。DMA法は、引張り法とも呼ばれ、試験片を室温から例えば、2℃/分の割合で昇温させ、粘弾性測定装置にて試験片の動的粘弾性および損失正接を測定し、横軸温度、第一縦軸に弾性率、第二縦軸に損失正接をプロットしたグラフを作成し、損失正接のピーク温度からTgを求める方法である。採用する方法が異なると、得られるデータも若干異なる傾向にあるため、本発明においては、DMA法により得られた値をTgとして採用することとした。
本発明における光学部品用ポリイミドの耐熱性は、JIS c 0021:1995に準拠して測定される。同様に、耐湿性(JIS c 0032:1996)、耐寒性(JIS c 0020:1995)、耐屈曲性(JIS K 6272:2003)は各JIS規格に準拠して測定する。
本発明における光学部品用ポリイミドの耐熱性は、150℃以上、好ましくは180℃以上、更には200℃以上であることが望ましい。耐熱性が高い程、半田耐熱性に優れることになり、また、電気配線と混載してもリフロー工程などの加熱工程に耐えることができ、アプリケーションの幅が広がるからである。
本発明における光学部品用ポリイミドを用いて光導波路を作製した場合、特に、光導波路コアに用いた場合の該光導波路の機械および物理的物性として、次のようなものがある。即ち、曲げ試験、高温放置試験、低温放置試験、高温高湿放置試験、温湿度サイクル試験、温度サイクル試験がある。各試験の評価は、光導波路への挿入損失変化[dB]で表される。なお、前記試験の詳細は、高分子(ポリマー)光導波路の試験方法として、JPCA規格(JPCA−PE02−05−01S−2004)に記載されている。
各試験においていずれも、試験前後の挿入損失変化が3dB以下であり、更には2dB以下であり、更には、1dB以下であることが好ましい。光信号の伝送ロスが小さいため、実装パッケージの大きさを小さくでき、光信号光源の出力を小さくできるといった利点がある。
挿入損失が3dBを超える場合は、携帯機器や情報家電などに搭載した場合の実用耐性に劣り製品寿命を低下させることになる場合がある。
光学部品が光導波路の場合、その断面形状は、作製プロセスにより異なる。例えば、フォトリソグラフィーとRIEを用いた方法では、矩形(正方形、長方形、台形)になり、自己形成光導波路作製プロセスでは、樹脂を硬化させるレーザーのビームプロファイルの影響を大きく受ける。レーザーが光ファイバーより出射されている場合には、作製される光導波路の断面形状は、円または楕円になる傾向にある。
どのような断面形状が良いか、ということについては、用途により様々であり、適した形状を選択すれば良い。
光導波路の形としては、単に光を伝送させる光配線として用いる場合には、直線状になることが多い。該光配線に、合分岐機能を付与する場合には、例えばY分岐構造やリング形状にすることがある。また、光配線と電気配線を混載するような光電気混載基板では、光を必要なところへ伝送させるために、光配線を3次元化する場合がある。このため、3次元構造の光導波路という形態もある。
光電気混載基板とは、光信号と電気信号の両方が積層も含めて一繋がりの基板上に形成されているものを言い、ベースに薄い絶縁材料が用いられ、その上に電気配線が形成され、更に、積層または連結する形で光配線が繋がり、光信号と電気信号を相互に変換する変換器(フォトディテクターやレーザーダイオードなど)が搭載された形態をとっている。
電気配線材料には、銅やアルミニウム、ニッケル、金、ステンレススチールなどの金属や合金、その他には導電性の炭素や銀粉末を含んだペーストなどが電気配線材料として用いられる。
光電気混載基板の電気配線部は、絶縁材料基板の片面または両面、多層などの形態をもって、配線される。他に、リジッド・フレックス、両面露出構造、フライイングリードなどの形態もある。
光学部品の中でも、特に光導波路の適用範囲は広い。光信号と電気信号を併用する光電気混載基板に光学部品が、特には光導波路や合分波器が一般に用いられる。
該光電気混載基板とは、その構成が、光伝送層と電気伝送層が別々に構成され、更に積層されている場合や、電気伝送層と同一層内に、光導波路による光配線が形成されている場合があり、用途に応じて種々の形態がある。
光電気混載基板は、基板自体が板状で固いもの(簡単に曲げられないもの)とある曲率半径をもって自由に曲げることができるものがあり、前者をリジッド基板と呼び、後者をフレキシブル基板と呼ぶ。
例えば、フレキシブルな光電気混載基板について記載すると、電気配線部と光配線部があり、電気配線部は既知の方法により形成された後、光配線部を既に形成したフィルム等を、既作製の電気配線部に積層する場合や、電気配線部を形成した後に、同一面内に光配線部を形成することもある。
また、絶縁材料基板の上下別に電気配線部と光配線部を形成することもある。
光電気混載基板は、高速な信号のやり取りが必要で、電気ノイズによる電気信号伝送損失が大きくなってしまう機器内に適用される。例えば、携帯電話のディスプレイと操作部を繋ぐ配線(ディスプレイモジュール)、DVD、HDDVDやBlue−Rayディスクを用いたといった小型ハードディスクの内部、CDのピックアップ部、インクジェットプリンターのプリントヘッド部の信号配線部、ノートPCでは、液晶ディスプレイとハードディスク部を繋ぐ配線部などがある。
また、こうした小型機器ではなく、光通信機器であるバックプレーンボード、大容量サーバー、ルーター等のボード間配線にも使用され、高速LSIチップ間なども対象となる。さらに、複写機内のボード、車載制御機器の配線基板などがある。また、近年インターネットとの融合が進むテレビ(双方向通信など)や、DVD機器、家庭用ゲーム機などに光電気混載基板が使用され得る。
光信号を電気信号に変換するためには、光信号を受光器に入射する必要がある。光信号を伝送する場合、例えば、光導波路を基板上に直線部や曲線部を繋げて、最終的に受光器に接続すれば良いように思われるが、曲率の大きな光導波路内を伝送される光は、光導波路コア部に閉じこめられずにクラッドに漏洩し、伝送効率が極端に低下してしまう。従って、大きな曲率を有する光導波路を使用することは、むしろ好ましくない。そこで、光導波路のその延長線上に受光器が無い場合には、45度ミラー等を使用して、光信号を反射させて受光器に入射する場合がある。光発振器から光導波路コア部に光を入射させる場合も同様に、ミラーを使用することがある。さらには、光ファイバー端部をV溝型に切削したものを光信号の取り出しとして用いる場合もある。
本発明における光学部品用ポリイミドの耐屈曲性を評価する指標を導体抵抗値が80%以上上昇する屈曲回数とした。該光学部品用ポリイミド樹脂を用いて作製したフレキシブルプリント基板(該構成は以下の通り:ベースフィルムの上に接着層を有し、該接着層の上に導体回路が形成され、該導体回路全体をカバーするように更なる接着剤層を有し、この接着層の上にカバーレイが積層される構成)を幅7mm、長さ150mmの矩形状に切り出し、下記の条件で耐屈曲性を評価した場合の導体抵抗値が80%以上上昇する屈曲回数を求める。即ち、雰囲気温度80℃、ストローク25mm、屈曲速度25Hz、曲率半径2mmである。
本発明における光学部品用ポリイミドを上記形態のフレキシブルプリント基板に形成されたときの、屈曲回数は、1万回以上であり、好ましくは10万回以上であることが望ましい。実用耐性が延び、製品寿命を長くすることができるからである。
光電気混載板は、上述のように携帯電話のディスプレイモジュールとしても用いられることを考えるに、耐屈曲性が求められる。該耐屈曲性の評価は、既述の耐屈曲性試験に準拠すれば良い。光電気混載板としては、屈曲耐性は、屈曲回数で1万回以上であり、好ましくは10万回以上であることが望ましい。実用耐性が延び、製品寿命を長くすることができるからである。
本発明の実施例における屈曲耐性評価(MIT試験)では50μmのフィルムを幅15mm、長さ110mmの矩形状に切り出し、雰囲気温度25℃、曲率半径0.38mm、屈曲角度135°、屈曲速度3Hz、荷重100gの条件で屈曲試験を実施し、300回以上の屈曲回数を望ましい特性であるとした。
光学部品の中では、特に光導波路の形態が頻度高く利用される。FTTHの構築にためには、各家庭に引き込んだ光ファイバーをPCに繋ぐための装置であるONUを作製する。該ONUは、光ファイバーからの光信号を、光導波路にいったん入射し、フォトダイオードへ入射、電気信号へ変換させる機能を有している。
光導波路と光ファイバーを接続する必要があるが、光軸アライメントを精度良く行う必要がある。その際、基板にPOFを固定するためのV溝が形成してあっても良い。該V溝に光ファイバーをセットした場合に光ファイバーコアが来る高さに、光導波路をはじめとした光学部品の光軸(例えば、光導波路の場合は光導波路コアの光軸)が来るように光学部品を設計しておけば良い。該V溝を利用することによって、光ファイバーと光導波路をはじめとした光学部品との光接続を改善することができる。
本発明における光学部品用ポリイミドは、光信号を必要に応じて取り出したり加えたりするアドドロップ、異なる波長の光信号を1本のファイバーに合波または分波するための波長フィルター、光信号をON/OFFさせるマッハツェンダー型光スイッチ、熱光学型光スイッチなども光学部品として挙げられる。
本発明における光学部品用ポリイミドは、その耐熱性および長期信頼性の高さから、車載光学部品としても好適に使用することができる。即ち、車内LAN用に使用される光学部品であれば何でも良く、例えば、カーナビゲーションシステムにおけるディスプレイモジュール内に使用される光学部品、例えば、光導波路、合分波器などがそれである。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではなく、種々の実施形態の変更が可能である。
(実施例1)
攪拌翼がついた容器に、モレキュラーシーブにて十分に脱水したジメチルホルムアミド(DMF)を1000g入れ、9,9−ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオレン77gを加え、完全に溶解するまで攪拌した。この系を0℃に冷却し、2,2−ビス―((3,4−ジカルボキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン二無水物89gを徐々に加え、3時間攪拌し、ポリアミド酸(ポリアミド酸)溶液Iを得た。
次に、上記溶液に、触媒であるイソキノリンを17g、脱水剤である無水酢酸を120gを添加し、100℃、1時間攪拌してポリイミド溶液を得た。
得られたポリイミド溶液を大量のイソプロピルアルコール中に滴下し、ポリイミドを沈殿析出させ、80℃、減圧下にて充分に乾燥し、ポリイミドIを得た。
得られたポリイミド2gをジメチルホルムアミド(DMF)4ccに溶解し、0.5μmの目を持つメンブレンフィルターを用いて濾過した。濾過溶液1ccを酸化膜付シリコン基板(4インチ径)上に滴下し、1000rpm.で20秒スピンコートした後に、80℃で10分乾燥させることにより厚み6μmの薄膜を得た。スピンコートして作製した薄膜の厚みは、酸化膜付シリコン基板を割断して薄膜を剥がしてから、別途機械的に厚み測定を実施した。
プリズムカプラモデル2010(メトリコン社製)を使用して波長830nmおよび波長633nmにおける屈折率測定を実施した。波長830nmにおける測定結果を表1に示す。波長633nmにおける屈折率はTEモードで1.59557、TMモードで1.59466であり、屈折率差は0.00091と非常に低い値となった。
伝送損失測定には、プリズムカプラモデル2010(メトリコン社製)を用いた。酸化膜付シリコン基板上に形成させたポリイミド薄膜に、プリズムカプラ法により波長830nmおよび波長633nmのレーザー光を導入、伝搬させて伝送損失を測定した。レーザー光の偏波は、TEモードとTMモードとに分けて測定した。測定結果を表1に示す。表1からわかるように、ポリイミドIは極めて小さな伝送損失値を有することがわかる。また、MIT試験屈曲回数の測定結果を表1に示す。
Figure 2006118176
シリコン基板上に、スピンコート法により2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルと2,2−ビス―((3,4−ジカルボキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン二無水物からなるポリイミド(以下、ポリイミドVIとする)薄膜(厚み10μm)を形成した後に、更にスピンコート法で厚み8μmのポリイミド樹脂I薄膜を形成した。この後、フォトマスク塗布、フォトリソグラフィーおよびRIEを行い、更に、ポリイミドVIを厚み10μmの厚みで上部クラッドとして薄膜形成させてコア幅8μm、長さ40mmの光導波路を得た。
該光導波路の両端面をダイシングにより切り出し、石英シングルモードファイバーにて、波長830nmの光を該光導波路に入射し、出射光強度を光パワーメーターにより測定した。光導波路の長さを30mm、20mm、10mm、と徐々に短くダイシングするたびに同様の測定を行い、横軸に光導波路長さを、縦軸に該光導波路内を伝送した光パワーをとってグラフ化し、直線近似を行い、直線の傾きから算出される光導波路としての伝送損失は0.2dB/cmである。
したがって、本発明における光学部品用ポリイミドを用いることで、低損失な光導波路を形成することができ、光導波路コアに使用して光電気混載板の光配線部を形成することによって、光導波路に入射させる光源の消費電力を低減させることが可能となり、光電気混載板として用いる場合には、電気配線板に比べて高速データ伝送、低消費電力化が達成される。
(実施例2)
ジアミン成分を、9,9−ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオレン39gおよび2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル32gに変えた以外は実施例1と同様にしてポリイミドIIを得た。ポリイミドIIについても実施例1と同様にして、屈曲試験、伝送損失および屈折率測定を実施した。薄膜厚みは7μmであった。結果を表1に示す。この結果から、少なくともフッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンに加え、共重合用ジアミンを使用することにより、十分に低い伝送損失を有する上に、高い屈曲性を有することがわかる。従って、光学部品、特に、光導波路コア用に適していることがわかる。
(実施例3)
ジアミン成分を、9,9−ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオレン39gおよびビス[4‐(3‐アミノフェノキシ)フェニル]スルホン44gに変えた以外は実施例1と同様にしてポリイミドIIIを得た。ポリイミドIIIについても実施例1と同様にして、屈曲試験、伝送損失および屈折率測定を実施した。薄膜厚みは10μmであった。結果を表1に示す。この結果から、少なくともフッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンに加え、共重合用ジアミンを使用することにより、十分に低い伝送損失を有する上に、高い屈曲性を有することがわかる。従って、光学部品、特に、光導波路コア用に適していることがわかる。
(比較例1)
ジアミン成分を、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン70gに変えた以外は実施例1と同様にしてポリイミドIVを得た。ポリイミドIVについて実施例1と同様にして、屈曲試験、伝送損失および屈折率測定を実施した。薄膜厚みは8μmであった。結果を表1に示す。この結果から、実施例と比較して、ジアミンにフッ素置換基が存在しない場合には、波長633nmにおける伝送損失が明らかに高く、この波長における光学部品には不向きであることがわかる。
(比較例2)
ジアミン成分を、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル64gに変えた以外は実施例1と同様にしてポリイミドVを得た。ポリイミドVについて実施例1と同様にして、屈曲試験、伝送損失および屈折率測定を実施した。薄膜厚みは8μmであった。結果を表1に示す。結果を見ると、波長830nm、波長633nmにおける伝送損失は偏波方向に関わらずともに1dB/cmを超える結果となった。よってポリイミドVはこれらの波長における光学部品としては不向きであることがわかる。

Claims (22)

  1. 少なくともフッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンを含むジアミン類とテトラカルボン酸二無水物類とを用いてなるポリイミドであって、波長830nmにおける伝送損失がTEモード、TMモードともに1dB/cm以下であることを特徴とする、光学部品用ポリイミド。
  2. さらに波長633nmにおける伝送損失がTEモード、TMモードともに1dB/cm以下であることを特徴とする、請求項1記載の光学部品用ポリイミド。
  3. 前記フッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンのアミノ基は、芳香族環に結合しており、
    前記フッ素置換基が、前記アミノ基のオルト位に位置することを特徴とする、請求項1または2記載の光学部品用ポリイミド。
  4. 前記フッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンが、下記式(1)で表されるジアミンであることを特徴とする、請求項1または2記載の光学部品用ポリイミド。
    Figure 2006118176
    (式中のR1〜R8は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素またはフッ素のいずれかであり、少なくとも一つはフッ素である。)
  5. 前記フッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンが、9、9−ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオレンであることを特徴とする、請求項1または2記載の光学部品用ポリイミド。
  6. 前記ジアミン類は、前記フッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミン及び1種類以上の共重合用ジアミンを含み、
    前記共重合用ジアミンが下記式(2)で表されるジアミンであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の光学部品用ポリイミド。
    Figure 2006118176
    (式中のX1〜X10のうち任意の2つはNH2であり、残りの8つは、H,CH3及びCF3からなる群から選ばれるいずれか1つの基である。また、R11は−O−,−S−,−SO2−,−CH2−,−CO−,−C(CH32−,−C(CF32−,−O−R12−O−,−フルオレニル基−及び直接結合からなる群から選ばれるいずれか1つである。ただし、R12は炭素数1以上5以下のアルキル基及び下記式群(3)で表される基からなる群から選ばれるいずれか1つの基である。
    Figure 2006118176
  7. 前記共重合用ジアミンが4,4’‐ジアミノジフェニルエーテル、3,4’‐ジアミノジフェニルエーテル、2,2’‐ビス(トリフルオロメチル)‐4,4’‐ジアミノビフェニル、4,4’‐ジアミノジフェニルスルホン、1,5‐(4‐アミノフェノキシ)ペンタン、1,3‐ビス(4‐アミノフェノキシ)‐2,2‐ジメチルプロパン、2,2‐ビス(4‐アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2‐ビス[4‐(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4‐(4‐アミノフェノキシ)フェニル]スルホン及びビス[4‐(3‐アミノフェノキシ)フェニル]スルホンからなる群から選ばれる少なくとも1つのジアミンであることを特徴とする請求項6記載の光学部品用ポリイミド。
  8. 前記テトラカルボン酸二無水物類がフッ素置換基を有するテトラカルボン酸二無水物を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の光学部品用ポリイミド。
  9. 前記テトラカルボン酸二無水物類が、2,2−ビス―((3,4−ジカルボキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン二無水物)を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の光学部品用ポリイミド。
  10. 前記テトラカルボン酸二無水物類は、2,2−ビス―((3,4−ジカルボキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン二無水物)及び1種類以上の共重合用テトラカルボン酸二無水物を含み、
    前記共重合用テトラカルボン酸二無水物が下記式(4)で表されるテトラカルボン酸二無水物であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の光学部品用ポリイミド。
    Figure 2006118176
    (式中、R13は−O−,−CO−,−SO2−及び直接結合からなる群から選ばれるいずれか1つである。)
  11. 前記波長830nmにおける伝送損失がTEモード、TMモードともに0.1dB/cm以下であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の光学部品用ポリイミド。
  12. 前記波長633nmにおける伝送損失がTEモード、TMモードともに0.1dB/cm以下であることを特徴とする、請求項2〜10のいずれかに記載の光学部品用ポリイミド。
  13. 波長830nmにおける屈折率がTEモード、TMモードともに1.55以上であり、前記TEモードとTMモードの屈折率差が0.01以下であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の光学部品用ポリイミド。
  14. 波長633nmにおける屈折率がTEモード、TMモードともに1.55以上であり、前記TEモードとTMモードの屈折率差が0.01以下であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の光学部品用ポリイミド。
  15. 厚さ50μmのフィルム状にした場合の屈曲半径0.38mm、屈曲角度135°、荷重100gでのMIT屈曲試験において300回以上の屈曲が可能であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の光学部品用ポリイミド。
  16. ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド及びメチルエチルケトンからなる群から選ばれる少なくとも1つの単独溶媒または2つ以上の混合溶媒への25℃での溶解度が、20重量%以上であることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の光学部品用ポリイミド。
  17. 請求項1〜16のいずれかに記載の光学部品用ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸。
  18. 請求項1〜16のいずれかに記載のポリイミド及び/または、請求項17に記載のポリアミド酸を含む、光学部品。
  19. 請求項1〜16のいずれかに記載のポリイミド及び/または、請求項17に記載のポリアミド酸を含む、光導波路。
  20. コアとクラッドを有する光導波路において、少なくともフッ素置換基及びフルオレニル基を有するジアミンを含むジアミン類とテトラカルボン酸二無水物類とを用いてなるポリイミドをコアとして用いることを特徴とする、光導波路。
  21. 波長830nmにおける前記光導波路の伝送損失がTEモード、TMモードともに1dB/cm以下であることを特徴とする、請求項20に記載の光導波路。
  22. 波長633nmにおける前記光導波路の伝送損失がTEモード、TMモードともに1dB/cm以下であることを特徴とする、請求項20または21に記載の光導波路。
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