1 原料貯留部(原料容器設置スペース);2 配液部(導入部);3 処理部;4 生成流体貯留部(回収容器設置スペース);5 温度調整配管室;6 動作制御手段(動作制御部);7 熱媒体コントローラ(温度調整手段);10A,10B 原料貯留容器;12 洗浄液容器;14 窒素ガス圧力源;16A,16B,16C ポンプ;20 マスフローコントローラ;20a,20b 流量センサ;21A,21B 輸送管;24A,24B 流路内圧力測定センサ;26A,26B 流路選択切換弁;28 逆洗ポンプ;32 流路選択切換弁;40,40a,40b,40c 混合基板;42,42a,42b,42c 反応基板;46 温度調整ケース;48 予備加熱流路;50,51 出口流路;52,52a,52b,52c,52d,52e,52f 混合部;54,54a,54b,54c,54d ヘッダ部;55,55a,55b,55c,55d ヘッダ部;56,56a,56b,56c,56d 分液流路;57,57a,57b,57c,57d 分液流路;58,58a,58b,58c,58d,58e,58f 合流空間;62 反応流路;72 ケース本体;74 蓋部;82 熱交換器;84 熱媒体流入口;88 給液配管;90 連通路;92 熱媒体流路;98 流通路;100 連絡配管;102 流出口;104,104a 回収配管(導出部);106 熱交換器;108,108a 回収容器;110 物質回収口;111a 光学的流体検知センサ;111b 液面検知センサ;112 回転テーブル;114 アクチュエータ;116,118,120,122,120,122a,122b,122c 温度センサ;124 障害物;126 収率評価器;128,128a,128b 分離抽出基板;130 疎水性壁面;132 親水性壁面;134 分離流路;170 流量モニタ;172 温度モニタ;154、156 隔壁;158,160,162 カバー;164 排気ポート;A,B 原料溶液;
2001a,2001b 原料供給部;2002 混合・反応部;2020a,2020b 予熱ブロック;2040,2040A,2040B 混合ブロック;2041a,2041b 原料流入路;2044A,2044B マニホールドエレメント;2046 マニホールド;2047 合流空間;2052a,2052b 平行分液流路;2053 開口端面;2054a,2054b 噴出口;2060 反応ブロック;2065 絞り部;2068 反応流路;2071 インラインセンサ;2072〜2074 混合促進物体;La,Lb 原料溶液;ρ 断面寸法減少比;
3001 流路;3002 温調機構;3003 上流側温度センサ;3004 下流側温度センサ;3005 温度制御部;3006 温度差測定器;3007 温度センサ;3009 時間差測定部;3010 流量測定部;3012 ケース本体;3013 構造体;3013a 貫通孔;3013b 円筒部;3013c 伝熱部;3014 固定プレート;3016 シール部材;3017 温調部材;3019 シール部材;3020 制御弁;3021 ピストン;3022 圧電素子;3023 ピストン室;3024 スプール;3025 磁性体;3026 電磁石;3027 シール部材;3030 制御部;3032 増幅器;3033 比較器;3034 ピストン駆動回路;3035 スプール駆動回路;3041 ポペット;3042 シャフト;3043 シャフトガイド;3044,3046 歯車;3045 サーボモータ;3047 シール部材;3048 ポペット駆動回路;3101 原料貯留部;3102 配液部;3103 処理部;3104 生成物貯留部;3105 配管室;3106 動作制御手段(動作制御部);3107 熱媒体コントローラ(温度調整手段);3110A,3110B 貯留容器;3112 洗浄液容器;3114 圧力源;3116A,3116B,3116C ポンプ;3121A,3121B 輸送管;3124A,3124B 圧力センサ;3126A,3126B 流路切換弁;3130 逆洗ポンプ;3132 流路切換弁;3140,3140a,3140b,3140c 混合部;3142,3142a,3142b,3142c 反応部;3146 温度調整ケース;3148A,3148B 予備加熱流路;3150A,3150B 出口流路;3152,3152a,3152b 合流部;3154,3155 ヘッダ部;3156,3157 分液流路;3158,3158a,3158b 合流空間;3162 反応流路;3172 ケース本体;3174 蓋部;3182 熱交換器;3184 熱媒体流入口;3188 給液配管;3190 連通路;3192 熱媒体流路;3198 流通路;3200 連絡通路;3202 流出口;3204,3204a 回収配管(導出部);3206 熱交換器;3208,3208a 回収容器;3210 回収口;3211a 光学的流体検知センサ;3211b 液面検知センサ;3212 回転テーブル;3214 アクチュエータ;3216,3218,3220,3222,3222a,3222b,3222c 温度センサ;3224 障害物;3226 収率評価器;3228,3228a,3228b 分離抽出部;3230 疎水性壁面;3232 親水性壁面;3234 分離流路;3270 流量モニタ;3272 温度モニタ;3254,3256 隔壁;3258,3260,3262 カバー;3264 排気ポート;3300A,3300B 流量調整装置;
4001 流路;4002 温調機構;4003 第1の主温度センサ;4003a 第1の副温度センサ;4004 第2の主温度センサ;4004a 第2の副温度センサ;4005 温度制御部;4006 温度差測定器;4008A,4008B 差分検出回路;4008C ブリッジ回路;4007 温度センサ;4009 時間差測定部;4010 流量測定部;4012 ケース本体;4013 構造体;4013a 貫通孔;4013b 円筒部;4013c 伝熱部;4014 固定プレート;4016 シール部材;4017 温調部材;4019 シール部材;4020 制御弁;4021 ピストン;4022 圧電素子;4023 ピストン室;4024 スプール;4025 磁性体;4026 電磁石;4027 シール部材;4030 制御部;4032 増幅器;4033 比較器;4034 ピストン駆動回路;4035 スプール駆動回路;4041 ポペット;4042 シャフト;4043 シャフトガイド;4044,4046 歯車;4045 サーボモータ;4047 シール部材;4048 ポペット駆動回路;4101 原料貯留部;4102 配液部;4103 処理部;4104 生成物貯留部;4105 配管室;4106 動作制御手段(動作制御部);4107 熱媒体コントローラ(温度調整手段);4110A,4110B 貯留容器;4112 洗浄液容器;4114 圧力源;4116A,4116B,4116C ポンプ;4121A,4121B 輸送管;4124A,4124B 圧力センサ;4126A,4126B 流路切換弁;4130 逆洗ポンプ;4132 流路切換弁;4140,4140a,4140b,4140c 混合部;4142,4142a,4142b,4142c 反応部;4146 温度調整ケース;4148A,4148B 予備加熱流路;4150A,4150B 出口流路;4152,4152a,4152b 合流部;4154,4155 ヘッダ部;4156,4157 分液流路;4158,4158a,4158b 合流空間;4162 反応流路;4172 ケース本体;4174 蓋部;4182 熱交換器;4184 熱媒体流入口;4188 給液配管;4190 連通路;4192 熱媒体流路;4198 流通路;4200 連絡通路;4202 流出口;4204,4204a 回収配管(導出部);4206 熱交換器;4208,4208a 回収容器;4210 回収口;4211a 光学的流体検知センサ;4211b 液面検知センサ;4212 回転テーブル;4214 アクチュエータ;4216,4218,4220,4222,4222a,4222b,4222c 温度センサ;4224 障害物;4226 収率評価器;4228,4228a,4228b 分離抽出部;4230 疎水性壁面;4232 親水性壁面;4234 分離流路;4270 流量モニタ;4272 温度モニタ;4254,4256 隔壁;4258,4260,4262 カバー;4264 排気ポート;4300A,4300B 流量調整装置;
5010 プランジャポンプ;5012 シリンダ;5014 プランジャ;5016 隔壁;5022 ピストン;5024 ロッド;5026 ポンプ室;5028 バッファ室;5030 吐出ポート;5032 吸込ポート;5034,5036 逆止弁;5050 カム機構;5054 モータ;5056 板カム;5056A 端面カム;5058 ローラ(カムフォロワ);5060 エアシリンダ(流体圧装置);5062 圧力板;5064 圧力空気室;5068 空気制御弁;5070 圧力空気源;5072 ドレン;5080 制御部;5082 エンコーダ;
6001 プランジャポンプ装置;6002 マイクロリアクタ;6010 プランジャポンプ;6012 シリンダ;6014 プランジャ;6016 ピストン;6017 ポンプ室;6018 ロッド;6019 駆動装置;6020 モータ;6022 送りねじ;6024 ナット;6026 リニアスケール;6028 制御部;6030 吐出ポート;6032 吸込ポート;6034 逆止弁;6036 吐出ライン;6038 流体タンク;6040 供給ライン;6042 原料受入ポート;6044 導入流路;6046 流量計;6048 圧力センサ;6050 混合・反応部;6101 原料貯留部;6102 配液部;6103 処理部;6104 生成物貯留部;6105 配管室;6107 熱媒体コントローラ;6110 貯留容器;6110A,6110B 貯留容器;6110 貯留容器;6110A,6110B 貯留容器;6112 洗浄液容器;6114 圧力源;6116A,6116B,6116C プランジャポンプ;6121A,6121B 輸送管;6122A,122B リリーフ弁;6124A,6124B 圧力測定センサ;6125 界面;6126A,6126B 流路切換弁;6126A 流路切換弁;6126A,6126B 流路切換弁;6130 逆洗ポンプ;6132 流路切換弁;6134 廃液口;6136 廃液容器;6136 廃液貯留容器;6140 混合部;6140a 混合部;6140,6140a 混合部;6140a 混合部;6140b 混合部;6140c 混合部;6140a 混合部;6140b 混合部;6140c 混合部;6140 混合部;6142 反応部;6142a 反応部;6142b 反応部;6142 反応部;6142a,6142b,6142c 反応部
;6142a 反応部;6142b 反応部;6142 反応部;6142a 反応部;6142b 反応部;6142a 反応部;6142b 反応部;6142 反応部;6144a 上板;6144c 下板;6144b 中板;6144d,6144e 基材;6146 各温度調整ケース;6146 温度調整ケース;6147A,6147B 流入ポート;6148A,6148B 予備加熱流路;6148 口;6150A,6150B 出口流路;6150A 出口流路;6150B 出口流路;6150A,6150B 出口流路;6152 合流部;6152a 合流部;6152b 合流部;6154,6155 ヘッダ部;6155 ヘッダ部;6156,6157 分液流路;6156 分液流路;6156,6157 分液流路;6157 分液流路;6157a 連絡孔;6158 一定時間合流空間;6158 合流空間;6158a 合流空間;6158b 合流空間;6159 開口面;6160 流出ポート;6162 反応流路;6162,6163 反応流路;6162 反応流路;6162b 蛇行部分;6162a,6162c 連絡部;6163 反応流路;6163c 反応流路;6163a 部分;6163b 部分;6164 入口ポート;6165 出口ポート;6170 空間;6172 ケース本体;6174 蓋部;6176 溝;6178 給液路;6179 開口;6180 排液路;6182 熱交換器;6188 給液配管;6190 連通路;6192 熱媒体流路;6194 ボルト;6195 ナット;6196 スペーサ;6198 流通路;6200 連絡通路;6202 流出口;6204 回収配管;6204,6204a 回収配管;6206 熱交換器;6208 回収容器;6208,6208a 回収容器;6210 回収口;6211a 光学的流体検知センサ;6211b 液面検知センサ;6212 回転テーブル;6214 アクチュエータ;6216,6218 温度センサ;6220 温度センサ;6220,6222a,6222b,6222c 温度センサ;6222 温度センサ;6224 各障害物;6224 障害物;6226 インライン収率評価器;6228 分離抽出部;6228a 分離抽出部;6228b 分離抽出部;6228a 分離抽出部;6228b 分離抽出部;6228a 分離抽出部;6228b 分離抽出部;6230 疎水性壁面;6232 親水性壁面;6234 分離流路;6234a 排出口;6234b 排出口;6236 シリコン部材;6240 導入口;6240 粉体溶解器;6242 原料導入口;6244 ヒータ;6246 攪拌器;6249 配管;6250 パン;6250 符号;6252 符号;6254,6256 隔壁;6258,6260,6262 カバー;6264 符号;6270 流量モニタ;6272 温度モニタ;6300A,6300B 流量調整装置;
7001 マルチ分光分析装置;7010 ケーシング;7014 フローセル;7016 内部空間;7018 仕切;7020 発光部;7022 受光部;7024 光源部;7024a−7024g 光源;7026 光ファイバ;7028 分光部;7028a−7028g 分光器;7028a 紫外分光器;7028b 可視光分光器;7028c−7028e 近赤外分光器;7028f 赤外分光器;7028g 遠赤外分光器;7030 AD変換器;7032 制御部;7034 ディスプレイ;7036 記憶装置;7038 警報装置;7040 分岐流路;7042 流量調整弁;7044 開閉弁;7046 ケーシング;7047 基板;7048 流路;7050 継手部;7052 発光ケース;7054 受光ケース;7056 固定ナット;7058 混合・反応部;7060 マイクロクエンチ部;7062 3方切換弁;7064 製品貯蔵ライン;7066 予備タンク;7068 予備ライン;7101 原料貯留部;7102 配液部;7103 処理部;7104 生成物貯留部;7105 配管室;7107 熱媒体コントローラ;7110 貯留容器;7110A,7110B 貯留容器;7110 貯留容器;7110A,7110B 貯留容器;7112 洗浄液容器;7114 圧力源;7116A,7116B ポンプ;7116C ポンプ;7116A ポンプ;7121A,7121B 輸送管;7122A,7122B リリーフ弁;7124A,7124B 圧力測定センサ;7125 界面;7126A,7126B 流路切換弁;7126A 流路切換弁;7126A,7126B 流路切換弁;7130 逆洗ポンプ;7132 流路切換弁;7134 廃液口;7136 廃液容器;7136 廃液貯留容器;7140 混合部;7140a 混合部;7140,7140a 混合部;7140a 混合部;7140b 混合部;7140c 混合部;7140a 混合部;7140b 混合部;7140c 混合部;7140 混合部;7142 反応部;7142a 反応部;7142b 反応部;7142 反応部;7142a,7142b,7142c 反応部;7142a 反応部;7142b 反応部;7142 反応部;7142a 反応部;7142b 反応部;7142a 反応部;7142b 反応部;7142 反応部;7144a 上板;7144c 下板;7144b 中板;7144d,7144e 基材;7146 各温度調整ケース;7146 温度調整ケース;7147A,7147B 流入ポート;7148A,7148B 予備加熱流路;7148 口;7150A,7150B 出口流路;7150A 出口流路;7150B 出口流路;7150A,7150B 出口流路;7152 合流部;7152a 合流部;7152b 合流部;7154,7155 ヘッダ部;7155 ヘッダ部;7156,7157 分液流路;7156 分液流路;7156,7157 分液流路;7157 分液流路;7157a 連絡孔;7158 一定時間合流空間;7158 合流空間;7158a 合流空間;7158b 合流空間;7159 開口面;7160 流出ポート;7162 反応流路;7162,7163 反応流路;7162 反応流路;7162b 蛇行部分;7162a,7162c 連絡部;7163 反応流路;7163c 反応流路;7163a 部分;7163b 部分;7164 入口ポート;7165 出口ポート;7170 空間;7172 ケース本体;7174 蓋部;7176 溝;7178 給液路;7179 開口;7180 排液路;7182 熱交換器;7188 給液配管;7190 連通路;7192 熱媒体流路;7194 ボルト;7195 ナット;7196 スペーサ;7198 流通路;7200 連絡通路;7202 流出口;7204 回収配管;7204,7204a 回収配管;7206 熱交換器;7208 回収容器;7208,7208a 回収容器;7210 回収口;7211a 光学的流体検知センサ;7211b 液面検知センサ;7212 回転テーブル;7214 アクチュエータ;7216,7218 温度センサ;7220 温度センサ;7220,7222a,7222b,7222c 温度センサ;7222 温度センサ;7224 各障害物;7224 障害物;7226 インライン収率評価器;7228 分離抽出部;7228a 分離抽出部;7228b 分離抽出部;7228a 分離抽出部;7228b 分離抽出部;7228a 分離抽出部;7228b 分離抽出部;7230 疎水性壁面;7232 親水性壁面;7234 分離流路;7234a 排出口;7234b 排出口;7236 シリコン部材;7240 導入口;7240 粉体溶解器;7242 原料導入口;7244 ヒータ;7246 攪拌器;7249 配管;7250 パン;7250 符号;7252 符号;7254,7256 隔壁;7258,7260,7262 カバー;7264 符号;7270 流量モニタ;7272 温度モニタ;7300A,7300B 流量調整装置
流体反応装置
本発明は、微小空間で流体どうしを反応させる流体反応装置に関する。
上述した目的を達成するための本発明は、これに限定されるものではないが、以下の発明を包含する。
(1) 複数の流体をマイクロ反応空間を有する反応流路に導入して反応させる流体反応装置において、反応に使用する流体を個々に導入する導入部と、流体を合流させて混合する混合流路を有する平板状の混合基板と、流体を複数の輸送管を介して前記混合流路に向けて輸送する流体輸送手段と、流体の流量を制御する流量制御手段と、前記反応流路の温度を制御する温度制御手段と、反応後の物質を導出する導出部と、これらの動作を制御する動作制御手段を備えたことを特徴とする流体反応装置。
(1)に記載の発明によれば、実用的な量産手段としてのマイクロリアクタが提供され、本発明は、マイクロ空間における高収率な反応を確実に且つ連続的に行わせることができる。液体と液体の反応では数十から数百μmクラスのマイクロ空間内のレイノルズ数は小さく、流れは層流になり、分子拡散による混合が律速段階になる。逆を言えば、数百μm以下のマイクロ空間では従来型機械式撹拌混合よりも、層流拡散を利用した混合の方が効率がよい。流体が混合される混合部がマイクロ空間であるので、拡散時間が短縮され、短時間で均一混合になるため、たとえば爆発性の反応でも温度をマイナス50℃というような極低温での反応にする必要がなくなり、安全で収率が上がるため生産性が高くなる。また、反応が複雑で反応時間が長いものでも、マイクロ空間にすることにより反応速度を高めたり選択的に反応させることで、高収率が得られるようになった。
また、混合を平板状の混合基板において行うことで、熱媒体流体との接触面積を大きくし、反応流体への熱伝達速度を速くすることができる。したがって、反応流体全域での温度均一性を高め、温度制御の精度を高めることができる。使用されるプロセスは有機合成、無機合成、触媒反応からバイオ系生化学合成、微粒子製造まで、実験室レベルから薬品製造ラインまで広く対応可能である。
混合基板内の流路の条件は、フィックの法則から推測できる拡散時間と拡散距離の関係から、拡散距離を小さく、即ちマイクロ寸法にすることが必要である。合流個所を複数設けたり、ポーラスフリットやピラーなどの障害物を合流後の流路に置くことにより、合流後の2液界面面積を大きくすることが好ましい。
合流個所を並列に複数設ける場合は、それらの合流個所には極力時間差を生じさせないことが望ましい。また、合流後の流路幅を徐々に100μm以下、可能ならば40μm以下まで縮小させ、合流した流れの中での2液の幅を強制的に縮め、拡散混合をより短時間に強制的に行わせることが望ましい。これによって混合時間は格段に短くなり、爆発性の反応は常温でも可能になり、有機合成反応における反応経路をシンプルに出来、無駄な反応が少なくなるため、高選択性で高収率で不純物が生成が極端に少なくなり、原料の使用量も下がってランニングコスト面でも有利になる。
(2) (1)に記載の発明において、反応に使用する流体を個々に溜めておく貯留容器を設置する設置スペースが設けられていることを特徴とする流体反応装置。
(3) (1)または(2)に記載の発明において、反応後の物質を前記導出部より回収する回収容器を複数個設置可能な設置スペースが設けられていることを特徴とする流体反応装置。
(4) (1)ないし(3)のいずれかに記載の発明において、前記マイクロ反応空間には、流路幅500μm以下の流路が存在することを特徴とする流体反応装置。
(5) (1)ないし(4)のいずれかに記載の発明において、導入される流体は気体または液体であり、反応後の物質は気体または液体または固体のいずれか、またはそれらの混合体で、導入される流体が連続的な流れであることを特徴とする流体反応装置。
(6) (1)ないし(5)のいずれかに記載の発明において、前記流体輸送手段は圧力発生手段または電気的誘電力相互作用手段を有することを特徴とする流体反応装置。
(7) (1)ないし(6)のいずれかに記載の発明において、前記流量制御手段は通過流体の体積を測定するセンサ部と、センサ部の測定情報を基に流体が通過する通過面積をコントロールする通過量コントロール部を有していることを特徴とする流体反応装置。
(8) (1)ないし(7)のいずれかに記載の発明において、前記混合基板が複数設けられていることを特徴とする流体反応装置。
(9) (1)ないし(8)のいずれかに記載の発明において、混合後の流体の反応を進行させるために、前記反応流路を前記混合基板とは別に設けた反応基板に形成したことを特徴とする流体反応装置。
(10) (9)に記載の発明において、前記反応基板が複数設けられていることを特徴とする流体反応装置。
(11) (1)ないし(11)のいずれかに記載の発明において、前記流体輸送手段と前記混合基板の間に第1の流路選択切換弁を、前記混合基板と物質回収口の間に第2の流路選択切換弁を具備したことを特徴としたことを特徴とする流体反応装置。
(12) (11)に記載の発明において、前記第1の流路選択切換弁と第2の流路選択切換弁は電気動作または空気圧動作により作動する自動弁であることを特徴とする流体反応装置。
(13) (1)ないし(12)のいずれかに記載の発明において、混合流路に導入された流体が混合された後、混合流路または/および反応流路に流体が充満されたことを判断する充満検知手段を具備し、充満された時点で流体の輸送手段を停止させまたは第1の流路選択切換弁を切換え、流体を反応終結時間に適応する一定時間混合流路または/および反応流路に滞留させておく制御が可能なことを特徴とする流体反応装置。
(14) (13)に記載の発明において、前記充満検知手段は、物質回収口から出始めた流体を検知する流体有無センサ、または、混合反応後の輸送管内の流体の有無を検知する流体有無センサであることを特徴とする流体反応装置。
(15) (1)ないし(14)のいずれかに記載の発明において、前記混合流路と前記反応流路には個別に温度測定センサが設けられ、個別に温度制御が可能であることが特徴とすることを特徴とする流体反応装置。
(16) (1)ないし(15)のいずれかに記載の発明において、前記混合基板と前記反応基板の少なくとも一部を積層させて配置させることを特徴とする流体反応装置。
(17) (1)ないし(16)のいずれかに記載の発明において、前記第2の流路選択切換弁を切り換えて、混合流路、反応流路内の通常の流れの方向とは逆方向に流体を送り込む逆洗手段を具備したことを特徴とする流体反応装置。
(18) (17)に記載の発明において、前記逆洗手段は、圧送手段として1本ピストンポンプを有することを特徴とする流体反応装置。
(19) (11)ないし(18)のいずれかに記載の発明において、前記第1の流路選択切換弁には窒素ガス供給ライン、純水供給ライン、有機溶剤供給ライン、酸供給ライン、水素水供給ライン、およびオゾン水供給ラインのいずれか1または複数に接続されていることを特徴とする流体反応装置。
(20) (11)ないし(19)のいずれかに記載の発明において、前記第2の流路選択切換弁には窒素ガス供給ライン、純水供給ライン、有機溶剤供給ライン、酸供給ライン、水素水供給ライン、およびオゾン水供給ラインのいずれか1または複数に接続されていることを特徴とする流体反応装置。
(21) (3)ないし(20)に記載の発明において、前記導出部の設置スペースには、2個以上の回収容器を保持可能なテーブルと、テーブル移動機構とを設けたことを特徴とする流体反応装置。
(22) (21)に記載の発明において、前記テーブル移動機構は回転機構または往復機構であることを特徴とする流体反応装置。
(23) (1)ないし(22)に記載の発明において、反応後の物質の収率を測定する収率測定手段が具備されていることを特徴とする流体反応装置。
(24) (23)に記載の発明において、収率測定手段が紫外吸光、赤外分光、近赤外分光であることを特徴とする流体反応装置。
(25) 複数の流体をマイクロ反応空間を含む流路において反応させる流体反応装置に用いられる流体混合装置であって、複数の平板状の基材を接合し、複数の流体をそれぞれのヘッダ空間から合流空間に連続的に供給して混合させるように構成され、各流体の前記ヘッダ空間を前記基材の異なる表面に設け、前記各ヘッダ空間と前記合流空間とを連通するそれぞれ複数の分液流路を、異なるヘッダ空間からの分液流路が前記合流空間の流入部において交互に開口するように形成したことを特徴とする流体混合装置。
(25)に記載の発明によれば、基材の表面に所定の流路を加工して接合することにより、微細な流路を交互に隣接させて合流空間に流入させる混合流路を有する混合装置が、簡単な構成で容易に製造される。
(26) (25)に記載の発明において、前記各ヘッダ空間は、前記異なる表面において同心の円弧状に形成され、前記合流空間はこれらの円弧のほぼ中心上に配置されていることを特徴とする流体混合装置。
(27) (25)または(26)に記載の発明において、前記ヘッダ空間は前記基材のそれぞれ表裏面に形成され、前記合流空間は前記基材の一方の表面に形成され、他方の表面上のヘッダ空間と連通する分液流路は前記基材を貫通して設けられていることを特徴とする流体混合装置。
(28) (25)または(27)に記載の発明において、前記各ヘッダ空間と前記合流空間とを連通する前記複数の分液流路は互いに平行に延びて形成されていることを特徴とする流体混合装置。
(28)に記載の発明によれば、複数の分液流路が互いに平行に延びて形成されているので、合流空間側で集中することがなく、設計や製造が容易である。
(29) 複数の流体をマイクロ反応空間を含む流路において反応させる流体反応装置に用いられる流体混合装置であって、複数の平板状の基材を接合し、複数の流体をそれぞれのヘッダ空間から合流空間に連続的に供給して混合させるように構成され、前記ヘッダ空間を前記基材の表面に沿って設け、前記合流空間を流体が前記基材の板厚方向に流れるように設け、前記ヘッダ空間と前記合流空間とを連通するそれぞれ複数の分液流路を、異なるヘッダ空間からの分液流路が前記合流空間の流入部において交互に開口するように形成したことを特徴とする流体混合装置。
(29)に記載の発明によれば、合流空間を流体が基材の板厚方向に流れるように設けているので、合流空間が基材の板面を占拠せず、ヘッダ空間と複数の分液流路とを基材の板面上に自由に配置することができる。
(30) (29)に記載の発明において、前記ヘッダ空間が前記基材の表面において前記合流空間の両側に設けられ、異なるヘッダ空間からの分液流路どうしが前記合流空間の流入部において互いにずれた位置に開口していることを特徴とする流体混合装置。
(30)に記載の発明によれば、異なるヘッダ空間からの流体が、合流空間の流入部において対向しつつ互いにずれた位置に流入し、旋回流を伴いながら交互に隣接する流れを形成し、界面の面積を増加させる。
(31) (29)に記載の発明において、各流体の前記ヘッダ空間を前記基材の異なる表面に設け、分液流路の少なくとも一方は前記基材を貫通して設けられ、異なるヘッダ空間からの分液流路どうしが前記合流空間の対向する側において相対向するように、かつ前記合流空間の同じ側において交互に隣接するように形成されていることを特徴とする流体混合装置。
(31)に記載の発明によれば、平面的に交互に隣接する流れが2層になって立体的に配置された層状の流れとなって、界面の面積を増加させる。
(32) (29)ないし(31)のいずれかに記載の発明において、前記合流空間は、流体が前記基材の板厚方向に流れた後に、該基材に沿って流れるように屈曲して形成されていることを特徴とする流体混合装置。
(32)に記載の発明によれば、合流空間は、流体が基材の板厚方向に流れた後に基材の面に沿って流れるように屈曲して形成されているので、板厚方向の寸法増加が抑制される。
(33) 複数の流体を平板状の基材に形成された500μm以下の流路幅部分を含む空間に連続的に供給して混合させる混合流路を有し、前記複数の流体の合流点から流れに沿って5mm以上の長さに渡って直径50μm以下の柱状の障害物が等間隔に配置されていることを特徴とする流体混合装置。
(33)に記載の発明によれば、混合流路における流体の合流点から流れに沿って微細な柱状の障害物を分散して配置することにより、マイクロ流路を用いた混合装置が、簡単な構成で容易に製造される。
(34) (33)に記載の発明において、前記柱状の障害物は複数列の柱が列の間隔をずらして流れ方向に交互配置されたことことを特徴とする流体混合装置。
(35) (33)または(34)に記載の発明において、前記柱状の障害物は複数で流れ方向に千鳥状に配置されていることを特徴とする流体混合装置。
(36) (25)ないし(35)のいずれかに記載の発明において、合流後において、流路の幅が徐々に小さくなる部分と徐々に大きくなる部分を持つことを特徴とする流体混合装置。徐々に小さくなる流路の面は複数流体の合流する面と同一面上であることが好ましい。
(37) (25)ないし(36)のいずれかに記載の発明において、合流後において、流路の幅寸法と深さ寸法が交互に縮小、拡大を繰り返すことを特徴とする流体混合装置。その最小寸法は100μm以下であることが好ましい。
(38) (25)ないし(37)のいずれかに記載の発明において、合流後において、流路の幅方向寸法が深さ方向寸法よりも大きい扁平状部分を有することを特徴とする流体混合装置。
(39) (25)ないし(38)のいずれかに記載の発明において、流路を形成する部材が、SUS316、SUS304、Ti、石英ガラス、パイレックスガラス(登録商標)等の硬質ガラス、PEEK(polyetheretherketone)、PE(polyethylene)、PVC(polyvinylchloride)、PDMS(polydimethylsiloxane)、Si、PTFE(polytetrafluoroethylene)、PCTFE(polychlorotrifluoroethylene)、およびPFA(perfluoroalkoxylalkane)の内の1または複数を含むこと特徴とすることを特徴とする流体混合装置。これらの素材から、耐薬品性、耐圧性、熱伝導性の面を考慮して、好ましいものが選択される。混合、反応基板材料の接液部の材質は、表面からの溶出が少なく表面触媒修飾が可能で、ある程度の耐薬品性を持ち、−40〜150℃の広い温度範囲に耐えるものが望ましい。
(40) (25)ないし(38)のいずれかに記載の発明において、流路の内壁の一部またはすべての材質が、Au、Ag、Pt、Pd、Ni、Cu、Ru、Zr、Ta、Nbまたはこれらの金属を含む化合物であることを特徴とする流体混合装置。
(41) (25)ないし(40)のいずれかに記載の発明において、前記基材は、少なくとも1辺の大きさが150mmを越える寸法の矩形であることを特徴とする流体混合装置。
(42) (25)ないし(41)のいずれかに記載の発明において、流体の複数導入口と混合後の単一流体の出口は前記基板の反対側の面に存在することを特徴とする流体混合装置。
(43) (25)ないし(42)のいずれかに記載の発明において、混合反応基板を同一基板内に、流体の温度を反応温度に向けて上昇、または下降させる予備温度調整部を具備したことを特徴とする流体混合装置。
(44) (1)ないし(24)のいずれかに記載の発明において、前記混合基板として、(25)ないし(43)のいずれかの流体混合装置を用いることを特徴とする流体反応装置。
(45) (1)ないし(24)、および(44)のいずれかに記載の発明において、反応基板の流路を形成する周囲部材はSUS316、SUS304、Ti、石英ガラス、パイレックスガラス(登録商標)等の硬質ガラス、PEEK、PE、PVC、PDMS、Si、PTFE、PCTFEの内の1または複数を含むこと特徴とすることを特徴とする流体反応装置。
(46) (1)ないし(24)、(44)、および(45)のいずれかに記載の発明において、反応基板の流路の内壁の一部またはすべての材質がAu、Ag、Pt、Pd、Ni、Cu、Ru、Zr、Ta、Nbの内の1または複数またはこれらの金属を含む化合物であることを特徴とする流体反応装置。
(47) (1)ないし(24)、および(44)ないし(46)のいずれかに記載の発明において、前記混合基板および/または反応基板が、熱媒体流路を有する温度調整ケース内に収容されていることを特徴とする流体反応装置。これにより、熱媒体流路が混合基板および/または反応基板の全域に沿って均一な流れを作り、反応領域を均一な温度に調整する。
(48) (47)に記載の発明において、前記該熱媒体流体流路内に温度測定手段が設けられていることを特徴とする流体反応装置。
(49) (46)または(47)に記載の発明において、前記熱媒体流路は、前記混合基板および/または反応基板の表裏面に沿った複数の分岐流路を有することを特徴とする流体反応装置。
(50) (47)ないし(49)のいずれかに記載の発明において、前記温度調整ケースはケース本体と蓋部を有し、前記熱媒体流路はこれらを連絡するように形成されていることを特徴とする流体反応装置。
(51) (50)に記載の発明において、熱流体が流入する前記ケース本体の第1のヘッダに設けられた複数の絞り穴が前記蓋部の第2のヘッダと直結し、第2のヘッダには前記混合基板および/または反応基板の表裏面に平行な流れを形成する複数の分岐流路へと直結する第2の絞り穴が設けられていることを特徴とする流体反応装置。
(52) (47)ないし(51)のいずれかに記載の発明において、前記温度調整ケースの材料はTi、Al、SUS304、SUS316のいずれかであることを特徴とする流体反応装置。
(53) (1)ないし(24)、および(44)ないし(52)のいずれかに記載の発明において、前記温度制御手段は、流体混合基板または反応基板を囲い込み混合流体の温度を調整する温度調整媒体保持機構と、保持機構に保持された温度調整媒体と、温度測定センサと、温度調整媒体と混合反応流体の間の伝熱量を調整する伝熱量調整手段を備えたことを特徴とする流体反応装置。
(54) (53)に記載の発明において、前記温度調整媒体として、シリコンオイル、フッ素オイル、アルコール、液体窒素、電気抵抗熱線、ペルチェ素子のいずれか1または複数が用いられることを特徴とする流体反応装置。シリコンオイルは、たとえば−40〜150℃と広い範囲の温度制御を1つの流体で行うことができる。または高温側を重視するならばフッ素系オイル、低温側ならばアルコール系が望ましい。
(55) (53)または(54)に記載の発明において、伝熱量調整手段はポンプ流量調整、流量調整弁、電気量のいずれかであることを特徴とする流体反応装置。
(56) (53)ないし(55)のいずれかに記載の発明において、温度調整媒体保持機構を断熱部材で覆う構造にしたことを特徴とする流体反応装置。
(57) (56)に記載の発明において、断熱部材はシリコンゴムであることを特徴とする流体反応装置。
(58) (1)ないし(24)、および(44)ないし(57)のいずれかに記載の発明において、反応後物質中の必要物質、不要物質を分別する分離抽出手段を具備したことを特徴とする流体反応装置。
(59) (1)ないし(24)、および(44)ないし(58)のいずれかに記載の発明において、粉体原料を液化溶解するための粉体溶解器を具備したことを特徴とする流体反応装置。
(60) (1)ないし(24)、および(44)ないし(59)のいずれかに記載の発明において、流体反応装置内の一部または全域を装置外と隔離し、装置外の圧力より負の圧力としたことを特徴とする流体反応装置。
(61) (1)ないし(24)、および(44)ないし(60)のいずれかに記載の発明において、流体反応装置の下部において漏れた液を貯める液貯めパンと、漏れた液を検知する漏液センサとを具備したことを特徴とする流体反応装置。
(62) (1)ないし(24)、および(44)ないし(61)のいずれかに記載の発明において、流体反応装置に付属した動作制御手段を含む動作制御部には、流体の流量と反応温度を表示する表示機構が具備されていることを特徴とする流体反応装置。
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態のマイクロ反応装置について説明する。
図1ないし図3は本発明の流体反応装置の実施例であり、2液を混合した後に反応させる装置である。図2又は図3に示すように、この実施の形態の装置は、全体が1つの設置スペースに設置されてユニット化されている。この実施の形態では、この設置スペースは長方形であり、長手方向に沿って4つの領域に区画される。
一端側の第1の領域は原料流体を貯留する複数の原料貯留容器10A,10Bとその付帯設備が設置された原料貯留部(原料容器設置スペース)1であり、それに隣接する第2の領域は流体を原料貯留容器10A,10Bから処理部3に供給するポンプや流路を設定する切換弁等が設置された配液部2となっている。第2の領域に隣接する第3の領域は、送液された原料流体に所定の処理を施す処理部3となっており、他端側の第4の領域は、処理の結果得られた流体(生成流体)を導出部より導出して貯留する生成流体貯留部(回収容器設置スペース)4である。また、各部の動作の制御を行うコンピュータである動作制御部6と、処理部3の温度調整を行うための熱媒体コントローラ7が設けられている。なお、この実施の形態では、動作制御部6と熱媒体コントローラ7は反応装置と別置きになっているが、勿論一体でも良い。図2に示すように、第2〜第4の領域の床下部分には温度調整配管室5が形成され、ここには後述する処理基板40,42へ加熱又は冷却用の熱媒体を送るための配管が設けられている。
このように、上流側から下流側へと各設備を配置することによって流体の流れを円滑にし、かつ装置全体をコンパクトにまとめることができる。この実施の形態では、設備の配列を直線状にしたが、例えば、全体が正方形に近いスペースであれば、各設備を流体の流れがループを形成するように構成してもよい。このような区画は概略のものであり、設計の際には空いたスペースを有効に活用するために適宜に各設備を配置することができる。
原料貯留部1には、複数(この実施の形態では6個)の貯留容器10A,10Bが設置されている。勿論必要な数の貯留容器10A,10Bを使用すればよい。同じ流体を2つの貯留容器10A,10Bに収容し、これらを交互に切り換えて用いることにより、処理を継続的に行うことができる。外部からの流体源として、原料貯留部1に、ライン洗浄用のアセトンなどの有機溶剤、塩酸、純水などが入った洗浄液容器12や、パージ用等の窒素ガス圧力源14を置いてもよい。また、廃液容器36を置いてもよい。
配液部(導入部)2には、原料貯留容器10A,10Bに流体導入口を介して接続された原料ポンプ16A,16Bとその付帯設備が設置されている。この実施の形態では、各原料ポンプ16A,16Bの吐出量は原料ポンプ16A,16Bを駆動しているモーター18A,18Bの回転数により管理されるので、原料ポンプ16A,16Bは圧力発生手段と流量調整手段を兼ねている。図1における原料ポンプ16A,16Bはピストン式を例としている。他の圧力発生手段、流量調整手段の例を図4ないし図6に示す。
圧力発生手段と流量調整手段とを別に構成してもよい。図4では、貯留容器10A,10Bに窒素ガス圧力源14より圧力ガスを送り込むことで液体を圧送し、出口に設けられたマスフローコントローラ20によって流量を調整している。マスフローコントローラ20はセンサ部が熱線式、コントローラ部がピエゾ圧電式であるが、流量を測定するセンサ部と流量をコントロールするコントローラ部を持っている他の流量調整手段でも良い。センサ部は、たとえば図5(a)に示すような、超音波圧電素子式の流量センサ20aでもよいし、図5(b)に示すような差圧式流量センサ20bでもよい。コントローラ部は、図5(a)または(b)に示すピエゾ圧電素子式スプールを用いたコントローラ20dでもよく、図6に示すような磁気浮上式スプールを用いたコントローラ20cでもよい。
配液部2の付帯設備としては、原料ポンプ16A,16B下流側の各輸送管21A,21Bに配置されたリリーフ弁22A,22B、流路内圧力測定センサ24A,24B、流路選択切換弁26A,26B、逆洗ポンプ28が有る。流路選択切換弁26A,26Bは、通常のライン以外に、洗浄液容器12や、パージ用等の窒素ガス圧力源14と接続されている。逆洗ポンプ28は、流路内が生成物で閉塞した場合に用いられる。ポンプ28は、洗浄液容器12から有機溶剤、塩酸、純水などを吐き出し、流路選択切換弁32を介して後述する反応基板の下流側出口に接続される。洗浄液は通常経路とは逆に流れ、混合基板40の流入口から流路選択切換弁26A,26Bを経て廃液口34から廃液貯留容器36に入れられる。ポンプ28は発生圧力が高く脈動の力で生成物を移動させることも可能なように1本ピストン型のポンプが好ましい。有機溶剤はアセトン、エタノール、メタノールなどが用いられ、塩酸の代わりに、硝酸、りん酸、有機酸を用いてもよい。図1のインフラ用水等の導入口140は、工場設備として純水や水素水の供給設備を持っている場合の導入口で、容器10の設置スペース(原料貯留部)1に置かれた洗浄液容器12内の洗浄液の代わりに洗浄に使用できる。水素水はPd、Niなどの触媒付活用として使われる。オゾン水は、酸化性洗浄用として使われる。また、外部の原料槽から配管を介してこの導入口140から原料溶液を受け入れることもできる。
処理部3は、この例では、図7および図9に示すような、2枚の処理基板、すなわち、混合基板40と反応基板42を有している。混合基板40と反応基板42は、薄板状の基材44の少なくとも一方の表面に所定形状の溝を加工したものを2枚又はそれ以上重ねて接合して構成された平板状の部材であり、基材44の表面の溝により内部に流路が形成されている。流路の形状や寸法は、行われる処理の反応プロセスに応じて設計される。また、基材44の材料も後述するように処理に合わせて選択し、使用圧力に耐えるのに必要な厚さに設計する。これらの処理基板40,42は、図11に示すように、温度調整ケース46に収容されて用いる。
図7は、予備加熱(予備温度調整)と混合処理を行うための混合基板40を示すもので、3枚の薄板状の基材である上板44a、中板44b、下板44cが接合されて全厚さ5mmの混合基板40が形成されている。流路を形成する溝はいずれも中板44bに形成されており、図において、実線は中板44bの上面に形成された溝、鎖線は中板44bの下面に形成された溝を示している。すなわち、上板44aを貫通して形成された2つの流入ポート47は、中板44bの上面に形成されたそれぞれ2つの予備加熱流路48に連通する。これらの予備加熱流路48はそれぞれ途中で分岐しかつそれぞれ拡大し、再度合流して出口流路50,51に通じ、さらに混合部52に通じている。一方の出口流路50は、中板44bの上面に、他方の出口流路51は中板44bの下面に形成されている。
混合部52は、図8に拡大して示すように、中板44bの上下面にそれぞれ出口流路50,51と通じる円弧状の溝として形成されたヘッダ部54,55と、このヘッダ部54,55の各点から円弧の中心に向かって延びる複数の分液流路56,57と、これらの表裏の径方向流路が合流するように形成された合流空間58とを有している。分液流路56,57と合流空間58は中板44bの上面に形成され、分液流路56,57はそれぞれのヘッダ部54,55に通じるものが交互に配置されている。下面側のヘッダ部55に通じる分液流路57は、中板44bを貫通する連絡孔57aにより連通している。合流空間58は、他端の出口側に向けて徐々に幅が小さくなるように形成され、他端側の中板44bおよび下板44cを貫通して形成された流出ポート60に開口している。
図示の例では、合流空間58の入口側の開口面59においてA液の分液流路56が5本、B液の分液流路57が4本、交互に配置されている。流出したA液とB液は交互の層状で縞状の流れのまま徐々に流路幅が縮小し、この場合は40μmに達し、強制的に両液が混合されるようになる。幅はその後徐々に大きくなっており、定常流速が得られるようになっている。
図9(a)および(b)は、反応基板42を示すもので、この例では2枚の基材44が接合されて計5mmの反応基板42が構成されている。この反応基板42では、反応流路62が蛇行して形成され、長い流路を効率的に提供している。反応流路62は、入口ポート64および出口ポート65につながる連絡部62a,62cが狭幅に、中央の蛇行部分62bは幅広に形成されている。したがって、出入口部分で絞られて急速に流れ、副生成物の付着を避けており、中央部分では緩やかに流れて、加熱と反応の時間を長く取ることができるようになっている。
図10(a)および(b)に示すのは、流路の形状の幅が除々に小さくなる部分63aと除々に大きくなる部分63bを持つ反応基板42aの他の例である。この実施の形態では、基材44d,44eの間に、幅寸法が最大aから最小bの範囲で増減する反応流路63が形成されている。幅寸法の増減に合わせ、深さを増減させてもよい。この例では流路の断面積が一定になるよう深さが最大cから最小dの範囲で変化するようになっている。
図10(c)は、他の実施の形態の反応基板42b内の反応流路63cの横断面を示している。この反応流路63cは、幅eは深さfより大きい扁平形状をしており、熱触媒からの熱の伝達方向(矢印で表示)に交差する広い伝熱面を有するので、流路内の流体に有効に熱の伝達が行われる。
なお、合流空間58や反応流路62に、適当な触媒を配置することは反応を促進するために有効である。このような触媒は反応の種類に応じて選択される。配置の仕方は、例えば、流路の内面に塗布したり、後述するような流路の障害物として配置することができる。
これらの基板40,42を形成する基材44の少なくとも流路を形成する素材は、例えば、SUS316、SUS304、Ti、石英ガラス、パイレックスガラス(登録商標)等の硬質ガラス、PEEK(polyetheretherketone)、PE(polyethylene)、PVC(polyvinylchloride)、PDMS(polydimethylsiloxane)、Si、PTFE(polytetrafluoroethylene)、PCTFE(polychlorotrifluoroethylene)、およびPFA(perfluoroalkoxylalkane)の内から、耐薬品性、耐圧性、熱伝導性、耐熱性等を考慮して、好ましいものを選択する。混合基板40および反応基板42材料の接液部の材質は、表面からの溶出が少なく表面触媒修飾が可能で、ある程度の耐薬品性を持ち、−40〜150℃の広い温度範囲に耐えるものが望ましい。
図11は、処理ブロックの構成を示すもので、温度調整ケース46は、内部に処理基板40,42を収容する空間70が形成されるようなケース本体72とこれを覆う蓋部74とからなり、これらには複数の平行な熱媒体流路を構成する溝76が内面に開口して形成されている。ケース本体72には、これらの溝76に連通する給液路78と排液路80(図12(a)参照)が形成され、これらの給液路78と排液路80はそれぞれ給液管および戻し管を介して熱媒体コントローラ7に接続されている。これら給液路78と排液路80は、接合される蓋部74側にも開口を介して連通している。このように、この例では、処理基板40,42は温度調整ケース46に完全に収容された状態で加熱(または冷却)され、熱媒体流体は混合基板40、または反応基板42の表裏面に直接接触している。
熱媒体コントローラ7には、媒体温度を補正する制御機構と熱媒体を輸送する輸送ポンプが内蔵されている。熱媒体流体は個々の熱交換器82を通過後、熱媒体配管を介して混合基板40や反応基板42の温度調整ケース46の熱媒体流入口84に達するようになっている。熱交換器82は例えば冷却用の市水の量を変えることで熱媒体の個々の温度を変えられるようになっている。
図12(a)〜(d)には、温度調整ケース46の他の例が示されており、ここでは、熱媒体流路はケース本体72と蓋部74のそれぞれの内部に形成されている。給液路78は、図12(c)に示すように、給液配管88の先端が挿入された二重管の構成となっており、細い連通路90を介して熱媒体流路92に連通している。排液側も同様の構成である。図12(b)に示すように、混合基板40と反応基板42はボルト94、ナット95及びスペーサ96を介して積層して結合されている。
図12(b)には、温度調整ケース46に収容された処理基板40,42への原料溶液の供給・排出の経路が示されている。すなわち、それぞれの溶液は、温度調整ケース46を貫通して形成された流通路98を介して混合基板40へ流出入する。また、処理基板40,42どうしの、例えば混合基板40から反応基板42への流通は、温度調整ケース46の流通路98を連絡する連絡配管100を介して行う。図12(d)には、反応基板42への液の流入部と流出部の構造が説明されている。液の流れを上方向から下方向へ向かわせるために、通常は処理基板40,42の液の入口は上面に、出口は下面に形成する。
図1に示す実施の形態では、反応基板42の流出口102は、回収配管104を介して生成流体貯留部4に接続されている。生成流体貯留部4には、冷却用の熱交換器106、流路選択切換弁32等の下流側に回収容器108が設けられている。回収容器108が置かれる生成流体貯留部4は、他の領域から温度等の影響を受けないように、また生成流体から発生する可能性のある有毒ガスを遮断するように隔離されている。
図13は、生成流体貯留部4の他の実施の形態を示すもので、複数の回収容器108が回転テーブル112上に保持されている。図13の場合は、回収容器108は2個であり、回転テーブル112を移動させるアクチュエータ114は180度回転型ロータリーアクチュエータである。勿論、回収容器108の数やアクチュエータ114の種類は適宜に選択可能である。動作制御部6は、例えば、回収容器108の液面を検知する液面検知センサ111bにより、回収容器108の交換時期を判断し、流路選択切換弁32により液流を止め、物質回収口110の下流に設けた光学的流体検知センサ111aによりこれを確認して、アクチュエータ114を作動させる。
上記のように構成された流体反応装置により、薬液等の製品を生産する工程を説明する。なお、自動化できる工程は基本的に動作制御部6によって自動制御される。
まず、原料貯留部1において必要な原料溶液A,Bを、貯留容器10A,10Bに用意しておく。処理基板として必要な混合基板40と反応基板42を選び、処理部3に設置する。熱媒体コントローラ7により熱媒体の温度を設定し、熱交換器82の市水の量を調整して各熱媒体経路の温度をそれぞれ調整し、混合基板40および反応基板42の温度調整ケース46へ流通させてこれらを所定の温度に維持する。温度の制御は、温度調整ケース46への入口に設けた温度センサ116,118により管理されるが、処理基板40,42内の流路に洗浄用の純水等を流す間に、その温度を混合基板40の出口の温度センサ120,122で測定し、フィードバックすることにより、正確に行うことができる。
温度が調整され、流路の洗浄を終えてから、流路選択切換弁32を切り換え、原料貯留容器10A,10Bからポンプ16A,16B、混合基板40、反応基板42、流出口102、回収口110を経て回収容器108に至る処理流路を構成し、ポンプ16A,16Bを作動して所定の流量で原料溶液A,Bをそれぞれ圧送する。流路選択弁32をアクチュエータにより作動する自動弁としており、これらの動作は自動運転も可能である。
混合基板40においては、溶液は予備加熱部において所定の温度に予備加熱された後、混合部52において合流し、混合する。この際、各液はヘッダ部54,55から分液流路56,57を経由して交互に配置した加工から合流空間58に流入し、さらに下流へ向かうに従い断面が減少するので、マイクロサイズの流れが規則的に混在する流れとなり、フィックの法則に則って迅速に混合する。その状態で、反応温度に維持された反応基板42の反応流路62に流入すると、反応は、物質移動や熱伝導の制約を受けずに迅速に進行する。したがって、量産手段として充分実用的であるとともに、反応速度の早い爆発性の反応でも低温下で行う必要がなくなる。また、この例では、反応流路62が混合流路に比べて充分幅が広く形成されているので、反応速度が遅い反応の場合でも充分な時間を掛けて行うことができ、高い収率を得ることができる。
得られた生成物は、反応流路62の流出口102から回収配管104を経由して熱交換器106に送られ、ここで冷却されて、回収口110より回収容器108に流入する。原料貯留容器10A,10Bが空になったり、回収容器108が満杯になったら、それぞれ流路選択切換弁26A,26Bを切り換えて他の容器と交換することにより、連続的な運転が可能である。なお、反応に時間が掛かる場合には、混合基板40および反応基板42内に液を一定時間閉じ込めてバッチ運転することも可能である。流路選択弁26A、26Bも自動弁であるのでこれらの動作は自動運転も可能である。
バッチ運転の方法は、図1においてポンプ16A,16Bを一時停止してもよいし、流路選択切換弁26A,26Bを切り換えて、処理部3への流入を停止させてもよい。これにより、反応時間が長い場合でも反応流路62の長さを長くする必要がなくなる。バッチ運転の際は、混合流路または/および反応流路に流体が充満されたことを判断する充満検知手段を用いて運転制御を行うことが好ましい。これは、例えば、図13に示すような光学的流体検知センサ111aが用いられる。これにより、混合流路または/および反応流路に流体が充満されたと判断した時点で、流体の輸送手段を停止させまたは第1の流路選択切換弁を切換え、流体を反応終結時間に適応する一定時間混合流路または/および反応流路に滞留させておく。
図14(a)は、他の実施の形態の混合部52aを示すもので、2つのヘッダ部54a,55aは円弧状ではなく幅方向に直線的に延びており、また合流空間58aの前端側、すなわちヘッダ部54aに向かう側の幅Wはヘッダ部54aの幅とほぼ同じに設定されている。そして、分液流路56a,57aは互いに平行に延びて、ヘッダ部と合流空間を連絡するように形成されている。合流空間58は、他端の出口側に向けて徐々に幅が小さくなるように、平面視において台形状に形成され、他端側の中板44bおよび下板44cを貫通して形成された流出ポート60に開口している。出口側の幅wは、縮小比(r=w/W)が処理対象に応じて適宜の値になるように選択する。
先の実施の形態と同様に、ヘッダ部54a,55aは中板44bの上下面に分かれて形成され、一方のヘッダ部55aと分液流路57aとは、中板44bを貫通する連絡孔57xにより互いに連通している。
この実施の形態では、図8の実施の形態に比較して製造工程が容易であり、また、スケールアップモデルへの移行が容易であるという利点が有る。第1の点は、図8の場合は、合流空間58aの近辺で分液流路56a,57aどうしが近接するので、この部分の製造が他の部分より難しくなるが、図14(a)の実施の形態では、このような問題は無いからである。
第2の点は、第1の点と関連するが、以下、説明する。例えば、混合部を含む反応装置が医薬品の製造に用いられる場合、装置は、開発段階だけでなく生産段階でも用いられる。開発段階から生産段階に移行すれば、混合部もスケールアップに対応しなければならない。例えば、開発初期の流量が0.1L/hだとすれば、前臨床では1L/hレベル、パイロットプラントレベルで50L/h、生産プラントレベルで100〜200L/hとなり、当初の開発機に比べれば1000倍前後のスケールアップが必要になる。混合部において、流路の幅は装置の基本性能に影響する因子であり、基本的に変えないので、分液流路の本数を増やすことになる。
図8の場合は、先に述べたように、分液流路56,57が集合する部分が製造上のネックとなる。従って、この部分の溝どうしの最小寸法が既定であれば、本数が増えるほどヘッダ部側の幅が拡大してしまい、結果として装置の寸法(チップサイズ)が大きくなってしまう。図14(a)の実施の形態では、処理量に応じて、つまり比例して、図14(b)に示すように、幅Wが大きくなるだけである。
また、図8の場合は、スケールアップに伴って合流角度が変化するので、製造工程が複雑化する。場合によっては、合流角度が変化する結果、開発段階と同じ性能をスケールアップ後の生産段階で得られないかもしれない。一方、図14(a)の実施の形態では、このような問題が無いことは明らかである。
図15は、さらに他の実施の形態の混合部52bを示すもので、2つのヘッダ部54b,55bは、平面視においてコ字状に形成されて、2つの側枝部54x、55xがそれぞれ同じ中心線に対して対称になるように配置されている。合流空間58bは、この例では、下方に延びる空間である。2つのヘッダ部54b,55bの側枝部54x、55xからは、それぞれ中心線に向けて分液流路56b,57bが平行に延び、合流空間58bに開口している。異なるヘッダ部54b,55bからの分液流路56b,57bは、合流空間58bにおいて、同じ側については交互に隣接し、かつ反対側については互いに対向する位置で開口するように配置されている。合流空間58bは、最下層の基材44d内を上下に延びているが、形状、寸法等は先の実施の形態と同様である。
図15の実施の形態では、分液流路56b,57bからの流れが平面的に交互に隣接する流れを形成するが、この実施の形態では、これが2層になって立体的に配置された層流となる。従って、隣接する流れとの界面の面積が増えて、拡散による混合を一層促進する。また、対向流どうしが衝突するので流れが微細化し、それによる界面の面積増加効果によっても混合効果が高められる。この実施の形態が、スケールアップモデルへの移行が容易であるという利点を有するのは、図14の場合と同様である。
図16は、さらに他の実施の形態の混合部52cを示すもので、混合空間58cを下方に延びる直交部58xと板面に沿って延びる平行部58yとから形成している。図15では、混合空間58bの全長が上下方向に、すなわち、混合基板40や基材44の厚さ方向に延びているので、全体の寸法が増加する、あるいは、逆に混合空間58bの長さが制約されるという不具合を生じる。また、板厚方向に空間を形成することも製造上容易ではない。この実施の形態では、混合空間58cは下方に延びる直交部58xと板面に沿って延びる平行部58yとから形成されているので、板厚の増加は僅かであり、製造工程も平板表面に加工してから重ねるという他の部分と同じ工程で対応可能である。
図17は、さらに他の実施の形態の混合部52dを示すもので、2つのヘッダ部54d,55dは、同図(a)に示すように、混合空間58dの両側にそれぞれ分かれて配置されており、混合空間58dは、同図(b)に示すように、一旦下方に延びた後に板面に沿って延びて形成されている。異なるヘッダ部54d,55dからの分液流路56d,57dは、混合空間58dにおいて対向してかつ互いにずれて開口している。分液流路56d,57dからの流れは平面的に交互に隣接する流れを形成し、かつ隣接する流れの間で、同図(c)に示すように、旋回流を形成しながら混合空間58dを下降する。この場合の旋回流も2つの液の界面の面積を増加させ、混合効果を高めることができる。
図18は、図17の混合部の変形例を示すもので、2つのヘッダ部54d,55dは、基材44bの同じ側の面に形成されている。混合空間58cが下方に延びる直交部58xを有しているので、2つのヘッダ部54d,55dを混合空間58cと同一面の両側に形成することができ、分液流路56d,57dを互いに干渉することなく、交互に開口させることができるからである。
図19は、混合基板40における混合部52eの他の実施の形態を示すもので、Y字状に合流する合流空間58eに、障害物124を一定間隔aで所定の距離Lに渡って配置したものである。この例では、φ50μm以下である柱状の障害物124を、合流点からL=5mm以上に渡って5列に配置した。各障害物124は隣接するものが流れ方向にピッチの半分ずつずれるように、千鳥状に配置されている。これによって界面が蛇行するので2つの流体の界面面積を大きくすることができる。図20の混合部52fでは、合流空間58fに障害物124を1列に配置したもので、同様に界面面積を大きくすることができる。これは、より狭い合流空間58fで採用するのに好適である。
図21は、流体反応装置の処理部3の液フローの他の実施の形態を示すものである。これは、図1の処理部3において、混合基板40→反応基板42の組み合わせを2系統R1,R2設け、さらに配液部2の流路選択切換弁26A,26Bを用いて原料溶液A,Bをいずれの系統R1,R2にも供給可能にしたものである。この実施の形態では、2系統を用いることで、必要に応じて処理量を増やすことができるが、その他にも種々の使用方法が有る。例えば、反応生成物が固体粒子を析出しやすく、配管途中で詰まりやすい場合などでは、それに備えて一方の系統を予備として使用する。また、流路選択切換弁26A,26Bでライン1を交互に切り換えて、上述したバッチ運転を連続的に行うことができる。勿論、このようなラインは、3以上を適宜に並列して設けることができる。この場合も流路選択弁切換弁26A、26Bは自動操作が可能である。
図22は、処理部3において反応基板を複数直列に配置した例を示す。この例では、混合基板40と3つの反応基板42a,42b,42cの計4つの処理基板に個々の温度センサ120,122a,122b,122cを設けており、反応の段階に応じて反応基板42a,42b,42cを独立して温度制御することが可能である。この実施の形態の処理部3の構成は、生化学反応のように反応時間と反応温度を大胆に且つ瞬時に変化させたい反応に適している。たとえば反応基板42aでは100℃、反応基板42bでは−20℃というような反応もこのシステムでは可能になる。
図23は、処理部3において混合基板40を複数設けた実施の形態である。この実施の形態では、A液とB液を混合し反応させる混合基板40と反応基板42の下流に、第2の混合基板40aが設けられ、ここでポンプ16Cから輸送された第3の原料溶液または反応剤であるC液と合流し、混合する。これらの2つの混合基板40,40aと1つの反応基板42の温度は個別に制御される。なお、C液は反応停止剤でもよい。
この実施の形態では、インラインの収率評価器126が第2の混合基板40aの下流の流出口102に直接接続されている。これにより、化学反応の結果の収率をリアルタイムで確認でき、直ぐにプロセスパラメータへフィードバックすることが可能ととなる。インライン収率評価器126としては、測定物を分離せずに測定可能な方法として赤外分光、近赤外分光、紫外吸光等の方法がある。
この実施の形態では、さらに、反応生成物の中から不要な物質と必要な物質を分離する分離抽出手段128が設けられている。図示する例は、分離抽出手段128として、物質内の疎水性分子のみを通過させる疎水性壁面130と、物質内の親水性分子のみを通過させる親水性壁面132でそれぞれ形成された分離流路134に分岐させたものである。分離した物質は、それぞれ回収配管104,104aを介して回収容器108,108aに回収される。分離抽出手段128としては、その他に、疎水性物質だけを吸着可能な膜やポーラスフリットを使用することも考えられる。
図24は、混合・反応と分離抽出を繰り返して連続反応処理するための実施の形態である。A液とB液が反応した後の不要物質は排出口134aから系外に出され、C液を加えた第2の反応における不要物質は排出口134bから系外に出される。第4の液であるD液は反応停止剤でもよく、他の原料溶液でも良い。最後にインライン収率評価器126を設けても良い。
図25(a)には、図24の回路を積層化した構成が示されている。流体は上方から下方へ流れる。図中の各ブロックは、それぞれ混合基板40a、反応基板42a、分離抽出基板128a、混合基板40b、反応基板42b、分離抽出基板128b、および混合基板40cが、温度調整ケース46に収容されて構成され、さらにボルト94、ナット95、スペーサ96によって積層化されている。図9に示すように、各基板間の液の移動は連絡通路100で行われる。各ブロックどうしの間には空気を介在させ、空気の断熱性を利用して他のブロックの熱影響を受けないようにして、温度制御精度を向上させている。図25(b)に示すように、各ブロックの周りをクリーンで気泡を含んだシリコン部材136等の断熱材で覆うのが好ましい。
本発明の流体反応装置に導入される流体は液体、気体、回収される物質は液体、気体、固体またはこれらの混合体であるが、導入物質が粉体などの固体の場合は図1における原料貯留部1のスペースに粉体溶解器を設置することも可能である。図26は、A液が粉体を溶解した溶液、B液は元々液体の場合の原料貯留部1の実施の形態である。原料の粉体と溶媒は粉体溶解器140の原料導入口142から導入される。この実施の形態では、原料粉体をヒータ144による加熱と攪拌器146による攪拌によって溶解し、生成した原料流体を取出し口148に引き込まれた配管より、ポンプ16Aによって、混合基板40、反応基板42に送り込むようになっている。
図2において、150は装置下部に設けられた液溜めパンであり、152は液溜めパン150上に設置された漏液センサを示す。またこの装置例では、配液部2、処理部3、生成流体貯留部4は隔壁154、156により区画されており、各部屋にはカバー158,160,162が取り付けられて装置外部とこれらを隔離している。164は排気ポートであり、排気ファンと接続され、装置内の圧力を装置外より負とすることで装置内の有毒ガスが外部に漏出することを防いでいる。
また、動作制御部6には、図1に示すように、流体反応装置内の動作で特に重要な流体の流量と反応温度をモニタできる流量モニタ170、温度モニタ172が搭載されている。
以上、本発明の流体反応装置のいくつかの回路構成を実施の形態に沿って説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限られるものではなく、発明の趣旨に沿って種々の改変が可能である。すなわち、直列あるいは並列する処理基板の数は、施す処理や生産量に応じて、1以上の適宜の数に決められる。処理基板の結合の仕方は、例えば、スリットを形成した枠体に順次挿入するようにしてもよい。この実施の形態では、処理基板を水平に配置しているが、斜め又は垂直に配置してもよい。
マイクロリアクタ
本発明は、さらに、本発明の流体反応装置及び流体混合装置において使用することができるマイクロリアクタにも関する。
上述した目的を達成するための本発明は、これに限定されるものではないが、以下の発明を包含する。
(1) 第1の流体源に連通する第1の流路と、第2の流体源に連通する第2の流路とがそれぞれ内部に複数形成されたマニホールド部と、該マニホールド部に隣接する合流空間とを有し、前記マニホールド部は前記合流空間に面する開口端面を有し、前記第1の流路と第2の流路の開口は、前記開口端面において交互に隣接するように立体的に配置されていることを特徴とするマイクロリアクタ。
(1)に記載の発明によれば、マニホールド部の開口端面から合流空間に流出する流れ(集合流)は、第1の流体と第2の流体のそれぞれの流れ(要素流れ)が交互に隣接する立体的構造になっており、一方の流体の流れは他方の流体の流れに周囲を覆われている。したがって、これらの流体どうしの間の界面の比率は例えば、平面的に並列した流れに比べて2倍となり、より大きな相互拡散による混合効果を得ることができる。
(2) (1)に記載の発明において、前記マニホールド部は、前記第1の流路と第2の流路を構成する溝が交互に形成された板状のエレメントを積層することにより、前記開口端面においてこれら第一の流路と第二の流路が千鳥状に配置されていることを特徴とするマイクロリアクタ。
(2)に記載の発明によれば、要素流れが交互に隣接する立体的な集合流を作るマニホールド部を容易に構築することができる。
(3) (1)または(2)に記載の発明において、前記第1の流路と第2の流路の前記開口の断面における最大幅寸法が3000μm以下であることを特徴とするマイクロリアクタ。
(3)に記載の発明によれば、第1の流路と第2の流路に固形物が混入しても閉塞せずに、混合を促進することができ、下流側に絞り部または流体レンズを設けることにより、マイクロ反応状態の条件を形成することができる。
(4) (1)ないし(3)のいずれかに記載の発明において、前記合流空間またはその下流側に、前記第1の流路と第2の流路からの流れ混合を迂回させる促進物体が設けられていることを特徴とするマイクロリアクタ。
(4)に記載の発明によれば、集合流が混合促進物体を迂回する際に界面が湾曲するので、界面の比率がさらに大きくなって混合が促進され、また、流路断面も減少するので、マイクロ反応を促進することができる。
(5) (4)に記載の発明において、前記混合促進物体の表面に、触媒作用を有する物質を設けたことを特徴とするマイクロリアクタ。
(5)に記載の発明によれば、該物質の触媒作用により、所要の反応が促進される。
(6) (4)または(5)に記載の発明において、前記混合促進物体の代表寸法が、該混合促進物体の直前における前記第1の流路と第2の流路からの個々の流れの最小幅寸法の0.1倍から10倍の範囲内にあることを特徴とするマイクロリアクタ。
混合促進物体の大きさが要素流れの最小幅寸法(代表寸法)と比較して小さすぎると、混合促進物体は単なる多孔質物体となり十分な混合が期待できず、また大きすぎると千鳥状に流入する異種流体の要素流れが塊状に流動するため、やはり十分な混合が得られない。
(7) (1)ないし(6)のいずれかに記載の発明において、前記合流空間の下流側に、流路断面が徐々に減少する絞り部または流体レンズが設けられていることを特徴とするマイクロリアクタ。
(7)に記載の発明によれば、集合流が絞り部または流体レンズを通過する際に、その断面寸法が徐々に減少し、要素流れを維持しつつその代表寸法が減少する。したがって、マイクロ反応条件が強化され、要素流れの寸法に依存する界面の比率も大きく向上する。
(8) (7)に記載の発明において、前記第1の流路と第2の流路からの個々の流れの仮想断面の最小幅が、前記絞り部または流体レンズの下流側部分において500μm以下になっていることを特徴とするマイクロリアクタ。
(8)に記載の発明によれば、物理的なマイクロ寸法の流路を用いることなく、要素流れにおいてマイクロ反応条件を構成することができる。
(9) (7)または(8)に記載の発明において、前記開口端面と前記絞り部または流体レンズとは、ほぼ相似な流路断面を有することを特徴とするマイクロリアクタ。
(9)に記載の発明によれば、絞り部または流体レンズを通過する際に形状変化を伴わないので、要素流れを維持しつつその代表寸法を減少させることが容易になる。
(10) (1)ないし(9)のいずれかに記載の発明において、複数の前記マニホールド部が、前記合流空間においてそれぞれの開口端面を対向させるように配置されていることを特徴とするマイクロリアクタ。
(10)に記載の発明によれば、マニホールド部からの集合流どうしをさらに衝突させて、乱流によるさらなる混合促進作用を得ることができる。
(11) (1)ないし(10)のいずれかに記載の発明において、前記第1の流路、第2の流路、前記合流空間および/またはその下流側を流れる流体を加熱または冷却する熱交換器を設けたことを特徴とするマイクロリアクタ。これにより、爆発性反応や難反応に対する温度制御を精密に行い、マイクロ反応の効果を高めることができる。
(12) (11)に記載の発明において、前記熱交換器は、被加熱流体流路および/または熱媒体流路を構成する溝が形成された板状のエレメントを積層することにより構成されていることを特徴とするマイクロリアクタ。これにより、積層するエレメントを適宜に選択し、あるいは積層数を変更することで、対象とする反応に適した熱交換量や熱交換パターンを得るように調整可能である。
(13) (11)または(12)に記載の発明において、前記合流空間の下流側を流れる流体を加熱または冷却する熱交換器の被加熱流体流路を合成反応時間調整用のディレイループとし、ディレイループパターンの変更または積層枚数の変更により熱交換内の滞留時間を調整可能となっていることを特徴とするマイクロリアクタ。
(14) (11)ないし(13)のいずれかに記載の発明において、前記熱交換器の熱媒体として、被加熱流体に混入しても被加熱流体を汚染しない流体を用いることを特徴とするマイクロリアクタ。被加熱流体に混入しても被加熱流体を汚染しない流体としては、被加熱流体自体や、これと近い組成の溶液が好適である。
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
図27は、この発明のマイクロリアクタを用いた化合物製造システムの全体構成を示す図である。この化合物製造システムは、原料溶液La,Lbをそれぞれ供給する2つの原料供給部2001a,2001bと、これらの原料供給部2001a,2001bからの原料溶液La,Lbを混合して反応させる混合・反応部2002と、反応生成物を一時貯留する貯留槽2003と、さらに生成物を濃縮・精製する精製槽2004とを有している。
2つの原料供給部2001a,2001bは、この実施の形態では、それぞれ粉体状等の原料を所定濃度の溶液とする溶解槽2011a,2011bと、できた溶液を貯留するリザーバ2012a,2012bとを有し、リザーバ2012a,2012bの下流側にはそれぞれ流体移送ポンプ2013a,2013bを介して混合・反応部2002に連通する原料移送配管2014a,2014bが設けられている。溶解槽2011a,2011bには必要に応じて保温ジャケット2015や撹拌機2016が設けられている。
反応生成物を一時貯留する貯留槽2003は、必要に応じて設けるもので、この実施の形態では、保温ジャケット2015や撹拌機2016を備えた密閉容器として構成され、所定のセンサを有している。精製槽2004は、この実施の形態では、合成された流体を真空雰囲気下で濃縮するもので、保温ジャケット2015や撹拌機2016の他に、真空ポンプ2017や回収容器2018が設けられている。
また、上記構成の各部には、必要に応じて、開閉弁、流量調整弁、流量計、各種のセンサ、洗浄流体回路等が設けられている。センサとしては、温度センサ(図中Tで表示)、流量センサ(図中Fで表示)、圧力センサ(図中Psで表示)、液面センサ(図中Lで表示)、pHセンサ(図中pHで表示)等が有る。また、各部を個別におよび/または全体として制御する制御装置(図示略)が設けられている。
混合・反応部2は、この実施の形態では、図28に示すように、原料溶液La,Lbをそれぞれ予備加熱する2つの予熱ブロック2020a,2020bと、加熱された2つの原料溶液La,Lbをそれぞれ細流にした状態で合流させる混合ブロック2040と、合流した流体をさらに縮径した反応流路に導き、加熱して反応させる反応ブロック2060とを有している。これらのブロックは、いずれも原料溶液La,Lbや熱媒体Ma,Mbを流通させる流路が溝状に形成された平板を重ねて接合して、マニホールドを構築したものである。
予熱ブロック2020a,2020bは、図29(a)に示すように、原料溶液La,Lbを流す複数の平行な溶液流路2021が形成された板状の第1の熱交換エレメント2022と、図29(b)に示すように、熱媒体Ma,Mbを流す複数の平行な熱媒体流路2023が形成された板状の第2の熱交換エレメント2024とを、それぞれの流路2021,2023が互いに直交するように交互に積層して構成している。予熱ブロック2020a,2020bは、表裏をカバープレート2025A,2025Bで覆ってボルト等の締結具、シール部材、あるいは接着剤を用いて結合している。各熱交換エレメント2022,2024には流路の両端近傍に貫通孔2026,2027が設けられ、これらは溶液流路2021と熱媒体流路2023に個別に通じるとともにカバープレート2025A,2025Bの溶液流入ポート2028A、溶液流出ポート2028B、熱媒体流入ポート2029A、熱媒体流出ポート2029Bと連通している。
原料溶液La,Lbは、図30に示すように、各熱交換エレメント2022,2024の流路を直列に流れ、熱媒体Ma,Mbは、図31に示すように、各熱交換エレメント2022,2024の流路を並列に流れるようになっており、ここで熱交換エレメント2022,2024を介して熱交換を行う。これらの熱交換エレメント2022,2024は熱交換に好適な熱伝導性の良い素材を用い、一方、カバープレート2025A,2025Bは、熱伝導性の小さい素材を用いて形成されている。
混合ブロック2040は、図32に示すように、2つの原料流入路2041a,2041bと1つの合流部2042とが形成された複数の部材からなる枠体2043の内部に、複数の板状のマニホールドエレメント2044A,2044Bと表裏のカバープレート2045a,2045bが積層されて構成されたマニホールド2046が収容されて構成されている。原料流入路2041a,2041bはそれぞれ予熱ブロック2020a,2020bの溶液流出ポート2028Bに接続され、合流部2042は後述する反応ブロック2060の流入口2061に接続され、図28に示すように、これと一体の合流空間2047を構成している。
図33に示すように、各マニホールドエレメント2044A,2044Bには、重ねた時に各原料流入路2041a,2041bに連通する貫通給液孔2048a,2048bがそれぞれ幅方向に位置の異なる列に沿って複数配置されている。カバープレート2045a,2045bには、一方の貫通給液孔2048a,2048bのみにつながる貫通孔2049a,2049bが形成されており、これらはそれぞれ枠体2043に形成されたヘッダ部2050a,2050bを介して各原料流入路2041a,2041bに連通している。マニホールドエレメント2044A,2044Bには、これらの貫通給液孔2048a,2048bから一側端縁部のほぼ中央に向かって延びる分液流路2051a,2051bが形成されている。これらの分液流路2051a,2051bは、断面が矩形になるように形成され、原料流入路2041a,2041bに連通するものが交互に並ぶように、また、側縁部近傍の所定長さ部分では互いに平行な平行分液流路2052a,2052bとなっている。平行分液流路2052a,2052bはマニホールドエレメント2044A,2044Bの側面において開口している。
図33に示すように、隣接するマニホールドエレメント2044A,2044Bは、対応する位置の分液流路2051a,2051b(平行分液流路2052a,2052b)が異なる原料流入路2041a,2041bに連通するように構成されている。つまり、マニホールドエレメント2044Aでは、図33において上端に原料流入路2041aに連通する分液流路2051a(平行分液流路2052a)が有るのに対して、マニホールドエレメント2044Bでは、上端に原料流入路2041bに連通する分液流路2051b(平行分液流路2052b)が有るようになっている。したがって、図34に示すように、マニホールド2046の開口端面2053には、異なる原料流入路2041a,2041bに連通する平行分液流路2052a,2052bの噴出口2054a,2054bが交互に隣接する格子状に開口している。
反応ブロック2060は、図35に示す2枚のカバープレート2062A,2062Bの間に、図36に示すような板状の熱交換エレメント2063,2064を交互に積層したもので、熱交換器としての構成は、基本的に先の予熱ブロック2020a,2020bと同様である。すなわち、合流溶液Lmおよび熱媒体Mcを流す複数の平行な溶液流路と熱媒体流路がそれぞれ形成された板状の熱交換エレメント2063,2064を、それぞれの流路が互いに直交するように交互に積層し、表裏をカバープレート2062A,2062Bで覆ってボルト等の締結具、シール部材、あるいは接着剤を用いて結合している。各熱交換エレメント2063,2064には流路の両端近傍に貫通孔が設けられ、これらは溶液流路と熱媒体流路に個別に通じるとともにカバープレート2062A,2062Bのポートと連通しており、これらの流路に合流した溶液および熱媒体を流通させるようになっている。
流入側のカバープレート2062A,2062Bには、混合ブロック2040の合流部2042と同径でこれと連絡するように開口する流入口2061が設けられている。この流入口2061の下流側には徐々に断面寸法が小さくなる絞り部(流体レンズ)2065が設けられており、その先端側はカバープレート2062Aの連絡流路2066、貫通流路2067を介して熱交換エレメント2063の反応流路2068に通じている。図36(a)に示すように、反応流路2068は、熱交換エレメント2063の表面に溝によって形成された複数の平行流路2069を直列に結んでいる点で、予熱ブロック2020a,2020bの溶液流路2021とは異なる。熱媒体流路2070および熱媒体Mcの流れは、図31の場合と同じなので、説明を省略する。
絞り部2065は、この実施の形態では、図34に示すように、断面が相似的に変化する。すなわち断面形状が正方形のまま変わらずに、断面寸法が小さくなるようになっている。これにより、混合ブロック2040の開口から流出し、合流した後完全に混合する前の状態で存在すると想定される個々の溶液の流れ(「要素流れ」と言う。)の断面寸法を均等に減少させることができる。
例えば、上記の実施の形態の場合において、混合ブロック2040における流路断面寸法が100μm×100μmであり、1つのマニホールドエレメント2044A,2044Bの並列する流路数が10であるとすれば、合流部42の断面寸法は約1mm×1mmである。絞り部2065における断面寸法減少比(ρ=(S1/S2)1/2)を1/10とすると、絞り部2065後の反応流路2068の寸法は0.1mm×0.1mmであり、反応流路2068における原料溶液La,Lbの「要素流れ」の断面寸法は10μm×10μmとなる。なお、S1,S2はそれぞれ絞り部2065の前後の断面積である。この「要素流れ」の幅wは、絞り部2065が相似的変化をする場合は、混合ブロック40における流路の幅Wと断面寸法減少比ρの積として算出される。
w=W×ρ
合流した流れにおける反応がマイクロ反応である条件は、必ずしも物理的な流路幅の問題ではなく、ある条件下では、上記のような仮想的な「要素流れ」の幅の問題である。つまり、「要素流れ」の幅を充分小さくすることにより、界面比率を上昇させて混合を促進し、また、Fickの法則に則って、反応速度を向上させることができる。このような効果を得るには、要素流れの断面における幅の最小値wminが500μm以下であることが好ましい。上記の例では、この仮想最小幅wminは、10μmであり、充分にこの条件を満たしている。
上述した混合ブロック2040、反応ブロック2060においては、温度条件が厳密に制御されている。すなわち、各ブロックにおいて、熱媒体の温度は流路の入口と出口に設けた温度センサで測定され、また、これを通過する溶液の温度もそれぞれのセンサで測定されている。これらの測定値は、制御装置に入力されて、反応が最適の条件下行われるようにフィードバック制御している。
上記において、エレメントに流路となる溝を形成する方法としては、機械加工、エッチング等、寸法や素材に応じて適宜の方法が採用される。この実施の形態では、予熱ブロック、混合ブロック2040、反応ブロック2060を、それぞれ板状のエレメントを結合して構成しているので、これらを完全に分解して洗浄することが可能であり、不純物に対する精度が厳しい医薬製造などにも適している。また、予熱ブロック2020a,2020b、混合ブロック2040、反応ブロック2060の間に溶液を移送するための配管がないため熱損失が極めて少なく高精度の温度制御が可能である。
また、上述した各部を構成する機器は、例えば、機械加工やエッチングなどで流路を設けた基盤上に、適宜に配置するようにして、ユニット化することにより、設置や操作が容易となり、製造コストも低減することができる。このような基盤を複数重ねて立体化し、これらを配管することで構築することもでき、さらなる省スペース化が可能となる。さらには、基盤上に各機器を一体加工してワンチップ状にしたものとすることもできる。必要に応じて、各部のプロセスを制御する制御システムを設けることが望ましい。
精密温度制御を可能とするため、ミキサー、リアクタ部分を設置した平板配管部の両面に熱交換を設置した平板で囲みサンドイッチ構造にしてもよい。また、1個以上の機器と周辺配管を設けた最小構成の基盤をユニットとし、これを複数個重ねて結合することでフレキシブルな装置構成を可能とすることができる。また、このようなユニット化し、またはチップ化した連続合成システムとバッチ式分離・精製システムを複数結合して、連続多段合成反応を行わせるようにしてもよい。
原料流体は双方が液体である場合が好適であるが、気体どうしでも勿論可能である。また、一方を気体、他方を液体として混合ブロック2040内で混合することができる。この際に発生するマイクロバブルを利用すれば高い混合作用を得ることができる。流路を構成する素材、あるいは流路の表面コーティングの素材は、該当部分に熱伝導均一性、触媒担持性、耐薬品性、生体安全性などを付与する目的で適宜に行われるが、例えばダイヤモンドをコーティングすることも考えられる。
以下、前記のように構成された化合物製造システムを用いて医薬等の化合物を製造する方法を説明する。原料供給部2001a,2001bにおいて溶解槽2011a,2011bで溶製された原料溶液La,Lbはリザーバ2012a,2012bに貯留されている。混合・反応部2002では、それぞれ熱媒体を流して、予熱ブロック2020a,2020bおよび反応ブロック2060における加熱(または冷却)温度を、例えば約−80℃〜+200℃に設定し、各温度はセンサの測定値に基づく制御でその値に保持される。
流体移送ポンプ2013a,2013bの稼動によって、原料溶液La,Lbは予熱ブロック2020a,2020bに圧送され、各熱交換エレメント2063,2064の熱媒体流路2023に分岐して流れ、ここで効率良く熱交換して所定温度に到達する。予備加熱された各原料溶液La,Lbは、それぞれ混合ブロック2040の2つの溶液流入ポート2028Aに流入し、枠体2043の原料流入路2041a,2041bからカバープレート2045a,2045bの貫通孔2049a,2049bを経由して各マニホールドエレメント2044A,2044Bの分液流路2051a,2051bに流れ、さらに、平行分液流路2052a,2052bを経由して、マニホールド2046の開口端面2053に格子状に開口する噴出口2054a,2054bから合流部2042に流出して集合流を形成する。ここで、1つの溶液の流れの周囲が他の溶液で覆われているので、マイクロ反応の条件下で層流が維持された集合流となる場合でも、2種の溶液間の相互拡散に必要な界面を充分に提供することができる。また、合流部2042の断面寸法はミリメートル単位で比較的大きいので、合流直後に固形物が生成した場合でも、絞り部2065までに消滅するものであれば、即座に詰まりを生じることはない。
原料溶液La,Lbからなる集合流は、さらに合流部2042から絞り部2065に流入し、反応流路2068における原料溶液La,Lbの「要素流れ」の断面寸法もさらに減少する。これにより、合流した流れにおける界面の比率がさらに大きくなり、界面において相互拡散して混合が促進され、これが反応流路2068に流入して反応温度に達した時に、速やかに反応が進行する。
このようにして反応によって合成された生成物は、反応ブロック2060から排出され、貯留槽2003において所定の条件下で貯留される。さらに、生成物は、下流の精製槽2004において真空雰囲気下で濃縮され、回収容器2018に回収される。反応ブロック2060の下流に、合成物質の性状を評価するインラインセンサ2071を配置し、この測定値に基づいて運転条件をフィードバック制御することができる。図示例ではセンサとしてpH計を用いているが、生成物に応じて適宜を選択することができる。
なお、上記の実施の形態において、混合ブロック2040における流路の寸法を例えば1mm×1mmに設定しても、合流部が10mm×10mmとなり、断面寸法減少比を1/10とすれば、後方の絞り部2065以下の反応流路2068の寸法は、1mm×1mmとなる。この反応流路2068内の集合流において層流が維持されているとすれば、反応流路2068での流れの仮想最小幅wminは100μmとなり、実質的にマイクロ反応空間の条件を満たす。したがって、この実施の形態によれば、容易に加工可能なmmサイズ寸法のエレメントのみで100μm級のマイクロ反応空間を実現できる。このように絞り部により断面寸法を減少させる場合には、混合ブロック2040における流路の最大寸法を1000μm以上3000μm以下とすることで、固形物が進入しても詰まりを防止することができる。
上記の実施の形態では、予熱ブロック2020a,2020b、混合ブロック2040、反応ブロック2060を、それぞれ板状のエレメントを結合して構成しているので、これらを完全に分解して洗浄することが可能であり、不純物に対する精度が厳しい医薬製造などにも適している。
図37A〜図37Dは、混合ブロック2040の合流部2042に絞り部2065を設ける代わりに、混合促進物体を設けた実施の形態を示すものである。図37Aは、合流部2042に微細な球状の混合促進物体2072を、概ね混合ブロック2040の流路の開口に対応するように配置している。球状の混合促進物体2072を、流路に沿って所定の長さの部分に配置することにより、噴出口2054a,2054bから流出した集合流がこれらに沿って迂回するので、要素流れどうしの界面の比率を向上させることができる。
混合促進物体2072の大きさが要素流れの代表長さと比較して小さすぎると、混合促進物体2072は単なる多孔質物体となり十分な混合が期待できず、また大きすぎると千鳥状に流入する異種流体の要素流れがかたまりとなって流動するため、やはり十分な混合が得られない。最適な混合促進物体2072の代表長さは、要素流れの最大幅の0.1倍から10倍が望ましい。なお、要素流れの最大幅は小さいほど迅速な混合が期待でき、少なくとも800μm以下、好ましくは10μm以下が良い。
混合促進物体は、種々の形状のものを適宜に採用することができ、また、適宜にこれらを組み合わせることができる。図37B〜図37Dにそのいくつかの例を示す。図37Bは、柱状体を格子状に組んだ網状の混合促進物体2073を、流れ方向に複数枚配置したもの、図37Cは、平行な柱状体を並列した網状の混合促進物体2074を、流路に沿って向きが交互になるように複数配置したもの、図37Dは、2枚の網状の混合促進物体2073の間に球状の混合促進物体2072を配置したものである。
なお、混合促進物体2072〜2074の表面に適切な触媒を固定すれば、反応を促進させることができる。混合促進物体2072〜2074を用いたこれらの実施の形態においては、反応が比較的広い空間内で進行するため、固形状の反応生成物が生じる場合でも流路が閉塞しにくいという利点がある。なお、混合促進物体2072〜2074だけでは混合が不十分な場合は、絞り部2065と併用してもよい。図37Eでは、絞り部2065の下流側に球状の混合促進物体2072を設けており、図37Fでは、球状の混合促進物体2072の下流側に絞り部2065を設けたものである。
図38Aは、この発明の他の実施の形態のマイクロリアクタの構成を示すもので、一組の同じ構造の混合ブロック2040A,2040Bを対向させて配置したものである。これらの混合ブロック2040A,2040Bには、原料供給部2001a,2001bからの原料溶液La,Lbが供給されているが、向かい合う噴出口2054a,2054bからは異なる原料溶液La,Lbが流出するように配置する。これにより、それぞれの要素流れを衝突させて噴流を形成することで、混合を促進する。合流部2042Aの形状は、衝突面に直交する方向に合流溶液を引き出す構成となるが、例えば、円盤状の空間としてその周辺部から接線方向に引き出す構成としても良い。
この実施の形態では、絞り部2065を用いずに、広い合流部2042Aのままで混合を促進することができるので、反応によって固形の生成物が生じる場合でも流路の閉塞を回避することができる利点が有る。勿論、場合に応じて、図38Bに示すように、絞り部2065と併用してもよく、あるいは図示しないが、混合促進物体2072と併用してもよい。
これらの実施の形態では、混合ブロック2040を互いに180度をなす方向から対向させているが、180度より小さい角度で対向させて、Y字状の合流路を形成するようにしてもよい。上記の実施の形態では、2種の流体を混合させるようにしたが、2種以上の流体を同時に混合させるのに好適であることは言うまでもない。また、2つの混合ブロック40の温度を異なるように設定できるので、安定温度条件が異なる流体を混合させる場合にも好適である。
流量調整装置
本発明は、さらに、本発明の流体反応装置及び流体混合装置において使用することができる流量調整装置にも関する。
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、流路を流れる流体の流量を調整する流量調整装置であって、前記流路を流れる流体を加熱または冷却する温調機構と、前記流路の第1の測定点における流体の温度が変化する時刻と、前記第1の測定点よりも下流側の第2の測定点における流体の温度が変化する時刻との時間差から前記流路内を流れる流体の流量を算出する流量測定部と、前記第2の測定点を通過する流体の温度を測定する下流側温度センサと、前記下流側温度センサの下流側に設けられた制御弁と、前記流量測定部により求められた流量に基づいて、流体の流量が一定となるように前記制御弁を制御する制御部とを備えたことを特徴とする流量調整装置である。
本発明によって流体の流量が測定される原理について図42を参照して説明する。図42において、縦軸は温度を表し、横軸は時間を表している。まず、温調機構により流体を加熱し、流体の温度を符号T1に示すように所定の変化率で上昇させる。このとき、流体が流路内を流れていると、第1の測定点での流体の温度は符号C1に示すように変化する。さらに、第1の測定点の下流側に位置する第2の測定点では、流体の温度は符号C2に示すように変化する。この場合、温度カーブC1のピークと温度カーブC2のピークとの時間差はΔtである。そして、流体の流量は以下の式から求めることができる。
流量=第1の測定点と第2の測定点との距離×流路断面積÷時間差Δt
比重、比熱、および粘度の異なる流体が流れた場合は、第1の測定点での流体の温度は符号C1´のように変化し、第2の測定点での温度は符号C2´のように変化する。そして、温度カーブC1´のピークと温度カーブC2´のピークとの時間差はΔtとなる。つまり、上述した温度カーブC1と温度カーブC2との時間差と、温度カーブC1´と温度カーブC2´との時間差は同じである。これは、流体の比重、比熱、粘度が異なっても、流体の平均流速が同一の条件下では、上流側の温度カーブと下流側の温度カーブとの時間差は流量のみに依存するからである。例えば、図41に示すように、流体の粘度が変わっても、最大流速が変わるのみで平均流速(すなわち流量)は変わらない。したがって、2つの測定点に現れる温度カーブの時間差を測定すれば、流体の物性の影響を受けずに正確な流量測定が可能になる。
流量が0.01〜10L/hさらには0.01〜2L/hと少ない場合では、流路の内径が2mm以下と小さく、レイノルズ数は小さくなるため流体の流れが層流となる。したがって、流路内での流速分布を示すカーブに乱れが無くその形状が安定していることが温度変化の時間差に基づく流量の測定を可能にしている。これにより種々の試薬を用いた試験を行う場合であっても、事前に試薬の比熱、比重、および粘度などの物性値を把握することが不要となり、単に目標とする流量を設定するだけで所望の流量を得ることができる。
本発明に用いられる流体の例としては、試薬、有機溶剤、生化学物質などが挙げられる。例えば、医薬品の開発段階においては、数多くの試薬を用いて、濃度、溶媒、温度などの条件を様々に変化させて試験を行う、いわゆるスクリーニングが行われる。このスクリーニングでは、試薬の物性に左右されず、正確な体積を測定することが求められる。本発明によれば、試薬の種類によらず正確な試薬の体積(流量)を求めることができるので、好ましい開発環境を提供することができる。
本発明の好ましい態様は、前記流量測定部は、前記第1の測定点および前記第2の測定点における流体の温度変化を示す温度カーブ上の互いに対応する2点間の時間差に基づいて流体の流量を算出することを特徴とする。
図42に示した例では、2つの温度カーブのピークが現れるときの時間差を測定しているが、本発明はこれに限られない。例えば、温度カーブの立ち上がり時の時間差を求めてもよく、また、ピークから所定時間だけずれた時点の時間差を求めてもよい。このように、本発明では、温度カーブ上の互いに対応する2点間の時間差を測定する。
本発明の好ましい態様は、前記第1の測定点を通過する流体の温度を測定する上流側温度センサをさらに設けたことを特徴とする。また、前記上流側温度センサは、前記流路を流れる流体に接触するセンサホルダと、前記流路に近い位置まで前記センサホルダの内部に挿入されたサーミスタとを備えていてもよい。さらに、前記下流側温度センサは、前記流路を流れる流体に接触するセンサホルダと、前記流路に近い位置まで前記センサホルダの内部に挿入されたサーミスタとを備えていてもよい。
本発明の好ましい態様は、少なくとも前記第1の測定点と前記第2の測定点とを含む空間の温度を一定に保つ環境温度制御機構をさらに設けたことを特徴とする。
微小流路を流れる流体の温度測定は外乱の影響を受けやすく、正確な流量測定ができないおそれがある。本発明によれば、第1の測定点および第2の測定点の温度を積極的に一定に保つことにより、外乱を遮断することができる。したがって、流体の流量を正確に測定することができる。
本発明の好ましい態様は、前記温調機構は、ペルチェ素子、ゼーベック素子、電磁波発生器、または抵抗加熱線を備えることを特徴とする。
温調機構としては、加熱手段に限らず、冷却手段を用いてもよい。また、前記温調機構は、前記流路を構成する孔が形成された円筒部と前記円筒部に熱を伝える伝熱部とを有する構造体と、前記構造体の伝熱部を加熱または冷却する温調部材とを備えていてもよい。
本発明の好ましい態様は、前記制御弁は、流量を調整する弁と、前記弁を駆動する駆動源とを有しており、該駆動源は、圧電素子、電磁石、サーボモータ、またはステッピングモータを備えていることを特徴とする。
本発明によれば、応答性の良好な駆動源を用いることにより、流量測定部により測定された実流量に基づいて速やかに弁を駆動させて流量を一定に保つことができる。
本発明の好ましい態様は、前記制御弁は、流量を調整する弁と、前記弁を駆動する駆動源とを有しており、該駆動源は、複数の圧電素子が積層された構造を有することを特徴とする。
本発明によれば、高圧の流体が流れる場合であっても、高圧や圧力変動の影響を受けることなく流量を一定に保つことができる。
本発明の好ましい態様は、前記制御弁を通過する流体の圧力は1MPa〜10MPaであることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御弁を通過する流体の流量は0.01〜10L/hであることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記流路は、耐食性のある材料から形成されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記材料は、ステンレス鋼、チタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ四フッ化エチレン、またはポリクロロトリフルオロエチレンであることを特徴とする。
本発明の他の態様は、流体を貯留する複数の容器と、流体を混合させる混合部と、混合した流体を反応させる反応部と、上記流量調整装置とを備えたことを特徴とする流体反応装置である。
以下、本発明の実施形態に係る流量調整装置について図面を参照して説明する。図43は本発明の第1の実施形態に係る流量調整装置を示す模式図である。図43に示すように、本実施形態の流量調整装置は、流路3001を流れる液体(流体)の流量を測定する流量測定部3010と、液体の流量を調整する制御弁3020と、流量測定部3010により測定された流量に基づいて制御弁3020を制御する制御部3030とから基本的に構成されている。
流量測定部3010は、流路3001を流れる液体を所定の周期で加熱する温調機構3002と、流路3001を流れる液体の温度を測定する上流側温度センサ3003および下流側温度センサ3004とを備えている。温調機構3002は流路3001の壁部を取り囲むように設けられており、流路3001の壁部を介して液体を加熱する。この温調機構3002は温度制御部3005に接続されており、最適な温度上昇率で液体を加熱するようになっている。なお、温調機構3002としては、ペルチェ素子、ゼーベック素子、電磁波発生器、抵抗加熱器などが好適に用いられる。また、温調機構3002は、液体を冷却することで液体に温度変化を与えるようにしてもよい。
上流側温度センサ3003は、流路3001の第1の測定点P1に配置されており、この第1の測定点P1を通過する液体の温度を測定する。下流側温度センサ3004は、流路1の第2の測定点P2に配置されており、この第2の測定点P2を通過する液体の温度を測定する。また、流量測定部3010は、加熱された液体が2つの測定点P1,P2を通過する時間差に基づいて液体の流量を求める時間差測定部3009を備えている。
上流側温度センサ3003は温調機構3002の下流側に位置しており、温調機構3002に近接して配置されている。下流側温度センサ3004は上流側温度センサ3003の下流側に位置しており、上流側温度センサ3003から所定の距離だけ離間して配置されている。上流側温度センサ3003および下流側温度センサ3004は、いずれも流路3001の外面に取り付けられており、流路3001の壁部を介して液体の温度を測定するようになっている。なお、上流側温度センサ3003および下流側温度センサ3004としては、応答性に優れたサーミスタ式温度計や熱電対などが好適に用いられる。
上流側温度センサ3003と下流側温度センサ3004は時間差測定部3009に接続されており、上流側温度センサ3003および下流側温度センサ3004の出力が時間差測定部3009に送られるようになっている。この時間差測定部3009により液体の流量が測定される原理は、図42を参照して既に説明した通りである。すなわち、液体が流れている状態で温調機構3002が液体を加熱すると、加熱された液体が下流側に流れ、上流側の第1の測定点P1および下流側の第2の測定点P2をこの順に通過する。このとき、第1の測定点P1における液体の温度は上流側温度センサ3003により測定され、第2の測定点P2における液体の温度は下流側温度センサ3004により測定される。
上流側温度センサ3003と下流側温度センサ3004の出力は連続的に時間差測定部3009に送られ、ここで温度カーブC1および温度カーブC2(図42参照)のそれぞれのピークが検出される。なお、温度カーブのピークは、公知の方法を用いて検出することができる。例えば、前後2つの測定値の差の符号が変わったときをピークと判断することができる。そして、温度カーブC1のピークが現れた時間と、温度カーブC2のピークが現れた時間との差が算出され、以下の式から、流路1を流れる液体の流量が求められる。
流量(L/h)=センサ間の距離(第1の測定点P1と第2の測定点P2との距離)×流路1の断面積÷時間差
なお、時間差を求めるに際して比較すべき点は温度カーブのピークに限られない。すなわち、温度カーブ上の対応する2点間の時間差を求めればよい。例えば、2つの温度カーブの立ち上がり時の時間差を求めてもよい。
図43に示すように、制御弁3020は流量測定部3010の下流側に配置されている。この制御弁3020は、液体の流れに対向するように配置されたピストン(弁)3021と、ピストン3021を駆動する圧電素子(駆動源)3022とを備えている。圧電素子(圧電アクチュエータ)3022はピストン3021の裏面に固定され、圧電素子3022とピストン3021とは一体的に構成されている。ピストン3021および圧電素子3022はピストン室3023に収容されている。流路3001の一部はT字路となっており、ピストン3021は、T字路に流れ込む液体がピストン3021の前面にぶつかるように配置されている。圧電素子3022に電圧が印加されると圧電素子3022が伸縮し、これによりピストン3021を液体の流れ方向に沿って移動させてピストン3021の開度αを調整する。
ピストン3021の上流側には絞り部3001aが設けられており、ここで流路3001を絞り込むことによりピストン3021による正確な流量調整を可能としている。上述したピストン室3023は有底円筒状に形成されており、このピストン室3023は流路3001の外面に液密に固定されている。このような構成により、ピストン3021と流路3001との隙間から液体が漏れた場合でも、液体がピストン室3023の内部に保持されるので、液体の外部への漏洩が防止される。
本実施形態に係る流量調整装置を組み込んだマイクロリアクタでは、試薬どうしの反応により流量調整装置の下流側で反応生成物が生成される。この場合、反応生成物の種類によっては、流量調整装置の下流側の液体の圧力が上昇し、流路1から液体が漏れるおそれがある。本実施形態によれば、有底円筒状のピストン室3023により液体の外部への漏洩を防止することができるので、正確な流量調整が可能となる。
次に、制御部3030について説明する。制御部3030は、時間差測定部3009に接続された増幅器3032と、流量を一定に保つためのピストン3021の開度を決定する比較部(PID制御部)3033と、制御弁3020の圧電素子3022に印加する電圧を生成するピストン駆動回路3034とを備えている。増幅器3032は、時間差測定部3009により算出された液体の流量(実流量)を表す信号を増幅し、増幅後の信号(実流量)を比較部3033に送る。比較部3033には設定流量(目標値)が予め入力されており、比較部3033は、実流量と設定流量とを比較し、実流量を設定流量に一致させるためのピストン3021の開度を演算する。比較部3033により演算されたピストン3021の開度はピストン駆動回路3034により電圧に変換される。そして、この電圧が圧電素子3022に印加され、圧電素子3022によりピストン3021が駆動される。このようにして、制御弁3020を通過する液体の流量が常に一定となるように制御部3030によって制御弁3020が制御される。
流量測定部3010の測定結果を制御弁3020の動作に速やかに反映させるためには、流量測定部3010と制御弁3020との間の流路3001の距離はできるだけ短いことが好ましい。すなわち、下流側温度センサ3004とピストン3021との距離は、好ましくは10〜100mm、より好ましくは10〜50mm、さらに好ましくは10〜20mmである。また、制御弁3020に用いられる駆動源(アクチュエータ)には圧電素子のような応答性の優れたものを用いることが好ましい。このようにすることで、流路3001を流れる流量の変動(脈動)を速やかに解消することができ、一定の流量を保つことができる。
この流量調整装置は、2種類またはそれ以上の液体を反応させる流体反応装置(マイクロリアクタ)に好適に用いられる。一般に、液体を混合させる混合空間が小さいほど、液体の混合が速やかに行われる。本実施形態に係る流量調整装置の流路3001の内径は、好ましくは0.1〜5mmであり、より好ましくは0.1〜2mmであり、さらに好ましくは0.1〜1mmである。また、微少量のみを取り扱い範囲とする場合には、最小径を0.02mmまでとすることも可能である。なお、流路の幅(内径)が小さくなると、液体を高圧で移送することが必要となってくる。本実施形態では、流量調整装置の出口(制御弁3020の下流側)における液体の圧力は1MPa〜10MPa、2MPa〜5MPa、または3MPa〜4MPaである。
取り扱う液体としては、試薬、有機溶媒、生化学物質などが挙げられる。したがって、流路3001を構成する材料としては、耐食性を有するものであることが好ましい。また、上述したように、上流側温度センサ3003および下流側温度センサ3004は流路3001の壁部を介して液体の温度を測定するため、流路3001を構成する材料は、熱伝導性に優れ、−40〜150℃の広い温度範囲に耐えるものが好ましい。さらに、流路3001を構成する材料は、液体の高圧に耐えうるものであることが好ましい。これらの点を考慮し、流路3001を構成する材料の好ましい例として、SUS316またはSUS304などのステンレス鋼、Ti(チタン)、石英ガラスまたはパイレックス(登録商標)ガラスなどの硬質ガラス、PEEK(polyetheretherketone)、PE(polyethylene)、PVC(polyvinylchloride)、PDMS(polydimethylsiloxane)、Si、PTFE(polytetrafluoroethylene)、PCTFE(polychlorotrifluoroethylene)などの樹脂が挙げられる。
ステンレス鋼またはTiを用いる場合は、流路3001の壁部の肉厚は0.01〜0.1mmとすることが好ましく、PEEK、PTFE、PCTFEなどの樹脂を用いる場合は、流路3001の壁部の肉厚は0.5〜1mmとすることが好ましい。熱伝導性を考えると、熱容量の小さいTiを用いることが好ましい。樹脂を用いる場合は、上流側温度センサ3003および下流側温度センサ3004が取り付けられる流路3001の部位の肉厚を局所的に薄くして熱伝導率を向上させることが好ましい。
なお、流路3001を上記材料の中から選択した複数の材料の組み合せから構成してもよい。例えば、流路3001の接液部に耐食性のある材料を用い、その外側に耐圧性のある材料を重ねてもよい。また、液体の温度を正確に測定するためには、流路3001を次のように構成することが好ましい。すなわち、上流側温度センサ3003および下流側温度センサ3004が設けられる部分を熱伝導率の高い材料で構成し、上流側温度センサ3003と下流側温度センサ3004との間の部分を熱伝導率の低い材料で構成する。このような構成によれば、流路3001が温度測定に与える影響を小さくすることができ、また、温調機構3002の熱が流路3001を伝って下流側温度センサ3004の測定値に影響を与えてしまうことを防止することができる。
図44は、温調機構と上流側温度センサの他の構成例を示す断面図である。図44に示す例では、PTFEやPCTFEなどのフッ素樹脂からなるケース本体3012に孔加工が施されて、長手方向に延びる流路3001が形成されている。また、ケース本体3012には、この流路3001に直交する方向に孔加工が施されて凹部3012aが形成されている。このケース本体3012の凹部3012aには、流路3001を流れる液体を加熱するための構造体3013が挿入されている。
図45(a)は、図44のVII−VII線断面図である。図44および図45(a)に示すように、構造体3013は、流路3001を構成する断面矩形状あるいは円形状の貫通孔3013aが先端部に形成された円筒部3013bと、ケース本体3012の外側に位置する伝熱部3013cとを備えている。伝熱部3013cは、貫通孔3013aが形成された端部とは反対側の端部に設けられている。なお、図45(a)に示す例では、銅製の伝熱部3013cの外側を耐薬品性のあるチタン製の円筒部3013bで覆っているが、円筒部3013bと伝熱部3013cとを同一の材料により一体に形成してもよい。
円筒部3013bは、例えばPEEKなどの断熱性を有する材料からなる固定プレート3014をボルト3015でケース本体3012に固定することによりケース本体3012に固定される。また、ケース本体3012と円筒部3013bとの間には、シール部材3016が配置されており、このシール部材3016により液体の漏洩が防止されている。
構造体3013の伝熱部3013cにはヒータやペルチェ素子などの温調部材3017が取り付けられており、伝熱部3013cを介して温調部材3017からの熱が円筒部3013bに伝えられるようになっている。したがって、温調部材3017からの熱は、銅製の伝熱部3013cを伝わり、チタン製の円筒部3013bを経て貫通孔3013aを通過する液体に伝達される。このように、流路3001を流れる液体は、構造体3013の貫通孔3013aを通過することにより加熱される。なお、銅製の伝熱部3013cや温調部材3017が直接液体に接触することはない。なお、温調部材3017にペルチェ素子などを用いて液体を冷却する場合には、熱の流れは上述のものと逆となる。
図45(b)は、上述した構造体の他の構成例を示す断面図である。チタンは耐薬品性があるものの、熱伝導率は銅よりも悪いため、図45(b)に示す例では、構造体3013の円筒部3013bと伝熱部3013cを銅材で一体に形成している。また、貫通孔3013aは断面が円形などとなるように形成されている。貫通孔3013aの内面および円筒部3013bの外面など液体に曝される部分には、耐薬品性を有する材料によってめっき処理がなされている。めっき処理のなされた円筒部3013bとケース本体との間には、液体の漏洩を防止するためのシール部材が配置される。このような構成により、温調部材からの熱が、より効率よく貫通孔3013aを流れる液体に伝達される。
図44に示すように、上流側温度センサ3003は、流路3001に直交する方向に形成された孔3012bに挿入されており、チタンなどの耐薬品性を有する金属からなるセンサホルダ3003aと、流路3001に近い位置までセンサホルダ3003aの内部に挿入されたサーミスタ3003bとを備えている。センサホルダ3003aの先端には、加熱部の構造体3013と同様に流路3001を構成する貫通孔を設けてもよい。センサホルダ3003aの先端は流路3001中の液体に接触するようになっているが、サーミスタ3003bは、流路3001を流れる液体には直接接触しないようになっている。このサーミスタ3003bによって流路3001を流れる液の温度を検出することができる。センサホルダ3003aは、ボルト3018によりケース本体3012に固定されている。また、ケース本体3012とセンサホルダ3003aとの間には、シール部材3019が配置されており、このシール部材3019により液体の漏洩が防止されている。なお、温調部材3017にペルチェ素子などを用いて液体を冷却する場合には、熱の流れは上述のものと逆となる。
なお、上述の例では、センサホルダ3003aをチタンなどの耐薬品性を有する金属から形成した例を説明したが、センサホルダ3003aを伝熱性のよい銅により形成し、液体に接触する部分には耐薬品性を有する材料によってめっき処理をしてもよい。このような構成とすれば、流路3001を流れる液体の温度を効率よく検出することが可能となる。また、図44では、上流側温度センサ3003についてのみ述べたが、図44に示す構造は、下流側温度センサ3004にも適用できることは言うまでもない。
図46は制御弁の他の構成例を示す拡大図である。上述したように、ピストン3021を駆動する駆動源には高圧の液体に抗してピストン3021を駆動させることが要求される。図46に示す構成例では、駆動力を増すために、2つの圧電素子3022を積層させている。このような構成により、液体が高圧の場合であっても、ピストン3021の開度αを正確に調整することができ、流量を一定に保つことができる。なお、必要に応じて3つ以上の圧電素子を積層させてもよい。
次に、本発明の第2の実施形態について図47を参照して説明する。図47は本発明の第2の実施形態に係る流量調整装置を示す模式図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成は、上述した第1の実施形態の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。
既に述べたように、流量測定部3010は、液体の温度変化を利用して流量を求めるため、周囲雰囲気の温度が変化すると、正確な流量を求めることができなくなる。そこで、本実施形態では、液体の温度を安定的に測定するために、環境温度制御機構3011を流量測定部3010に配置している。この環境温度制御機構3011は、上流側温度センサ3003および下流側温度センサ3004を気密に収容する隔壁3011aと、隔壁3011aの内部空間の温度を調整するペルチェ素子などの温調器3011bと、隔壁3011aの内部空間の温度を測定する温度センサ3011cと、温度センサ3011cからの信号(内部空間の実温度)に基づいて温調器3011bを制御する温度制御器3011dを備えている。なお、温度制御器3011dとして、上述した温度制御部3005を用いてもよい。
隔壁3011aは断熱材から構成されている。温調器3011bは温度制御器3011dに接続されており、内部空間の温度を一定に保つように温度制御器3011dによって制御される。このように構成された環境温度制御機構3011によれば、上流側温度センサ3003(すなわち第1の測定点P1)、下流側温度センサ3004(第2の測定点P2)、およびその間に位置する流路3001の部位の周囲の温度を一定に保つことができ、熱的外乱を遮断することができる。したがって、時間差測定部3009は正確な流量測定を行うことができ、結果として、高い精度で流量を一定に保つことができる。
次に、本発明の第3の実施形態について図48を参照して説明する。図48は本発明の第3の実施形態に係る流量調整装置を示す模式図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成は、上述した第1の実施形態の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図48に示すように、本実施形態では、上流側温度センサ3003が省かれており、時間差測定部3009は温調機構3002および下流側温度センサ3004に接続されている。本実施形態では、第1の測定点P1は温調機構3002の位置となる。
ここで、本実施形態の流量測定部3010により流量が測定される原理について図49を参照して説明する。流路3001を流れる液体は温調機構3002により加熱され、加熱開始時刻t1が時間差測定部3009に記録される。このとき、温調機構3002(すなわち第1の測定点P1)では、液体の温度は温度カーブT3で示すように所定の変化率で上昇する。加熱された液体は流路3001を流れ、やがて第2の測定点P2を通過する。このとき、下流側温度センサ3004により温度カーブC3が検出される。そして、時間差測定部3009により、温度カーブT3の立ち上がり時点t1と温度カーブC3の立ち上がり時点t2との時間差Δtが求められ、上述した式により液体の流量が算出される。なお、図42を参照して説明した例と同様に、2つの温度カーブのピークが現れる時間差を測定してもよい。
図48に示すように、本実施形態の制御弁3020では、ピストン3021に代えて円柱状のスプール3024が用いられている。このスプール3024は流路3001のT字路に配置されており、その先端は流路3001に摺動可能に嵌め込まれている。スプール3024の端部には磁性体(例えば鉄心)3025が取り付けられており、磁性体3025の周囲には電磁石3026が配置されている。電磁石3026と流路3001との間にはシール部材3027が配置されており、このシール部材3027により液体の漏洩が防止されている。磁性体3025は電磁石3026により形成された電磁力により駆動され、これによりスプール3024がその軸方向に沿って移動する。なお、このような構成を有する制御弁3020は、ソレノイドバルブ(電磁弁)と呼ばれている。
図50は図48に示すスプールの斜視図である。図50に示すように、スプール3024の側面には、斜めに延びる溝3024aが形成されている。溝3024aは三角形状の断面を有しており、その断面の大きさは軸方向位置に応じて変化する。すなわち、溝3024aの断面はスプール3024の先端において最も大きく、断面位置が反対側端部に向かうにしたがって徐々に小さくなる。液体はこの溝3024aを通って流れるので、スプール3024を軸方向に移動させることにより流量を調整することができる。この場合、スプール(弁)3024の開度αは、流路3001から突出した溝3024aの長さによって表すことができる。
本実施形態の制御部3030は、ピストン駆動回路に代えて、スプール駆動回路3035を備えている。このスプール駆動回路3035は、比較部3033により演算されたスプール3024の開度を電流に変換し、この電流が電磁石3026に供給されることでスプール3024が移動する。このようにして、制御弁3020を通過する液体の流量が常に一定となるように制御部3030によって制御弁3020が制御される。なお、液体が高圧であっても正確に流量を一定とするために、大きな電磁力を発生させることができる電磁石を用いることが好ましい。
次に、本発明の第4の実施形態について図51を参照して説明する。図51は本発明の第4の実施形態に係る流量調整装置を示す模式図である。なお、特に説明しない本実施形態の構成は、上述した第1の実施形態の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図51に示すように、本実施形態の制御弁3020は、ピストン3021に代えて逆三角錐形状のポペット3041を備えている。このポペット3041は、流路3001のT字路に位置しており、その先端が液体の流れに対向するように配置されている。ポペット3041にはシャフト3042が一体的に固定されており、このシャフト3042は有底円筒状のシャフトガイド3043に嵌合されている。シャフトガイド3043の外周面には歯車3044が設けられており、この歯車3044は、サーボモータ3045に連結された歯車3046と噛み合っている。シャフト3042は、キーやキー溝などの回転防止機構(図示せず)により回転しないように構成されている。なお、ポペット3041、シャフト3042、およびシャフトガイド3043とは同軸上に整列されている。
シャフトガイド3043と流路3001との間にはシール部材3047が配置されており、液体が流路3001から漏洩してしまうことが防止されている。シャフト3042の外周面には雄ねじ3042aが形成され、シャフトガイド3043の内周面には、雄ねじ3042aに噛み合う雌ねじ(図示せず)が形成されている。このような構成により、サーボモータ3045によりシャフトガイド3043を回転させると、ポペット3041がT字路の開口部に対して垂直方向に移動し、これによりポペット(弁)3041の開度αが調整される。なお、サーボモータの代わりにステッピングモータを使用してもよい。
本実施形態の制御部3030は、ピストン駆動回路に代えて、ポペット駆動回路3048を備えている。このポペット駆動回路3048は、比較部3033により演算されたポペット3041の開度を電流に変換し、この電流がサーボモータ3045に供給されることでポペット3041が移動する。このようにして、第1の実施形態と同様に、制御弁3020を通過する液体の流量が常に一定となるように制御部3030によって制御弁3020が制御される。なお、液体が高圧であっても正確に流量を一定とするために、大きなトルクを発生させることができるサーボモータまたはステッピングモータを用いることが好ましい。
なお、上述した実施形態は、必要に応じて組み合わせることができる。例えば、第2の実施形態に係る環境温度制御機構3011を第3および第4の実施形態に組み込んでもよい。また、上述した実施形態に係る流量調整装置は、液体のみならず気体の流量を測定し、かつ制御することもできる。
次に、上述した本発明の一実施形態に係る流量調整装置を組み込んだ流体反応装置(マイクロリアクタ)について説明する。図52乃至図54(b)は本発明の一実施形態に係る流量調整装置を組み込んだ流体反応装置の全体構成を示す図である。なお、以下に述べる流体反応装置は、2種類またはそれ以上の液体を混合し、反応させるために用いられる装置である。
図52,図53,図54(a),および図54(b)に示すように、流体反応装置は、全体が1つの設置スペースに設置されてパッケージ化されている。この構成例では、この設置スペースは長方形であり、長手方向に沿って4つの領域に区画される。すなわち、一端側の第1の領域は、原料液を貯留する複数の貯留容器3110(図52では2つの貯留容器3110A,3110Bのみを示す)が設置された原料貯留部3101であり、それに隣接する第2の領域は、貯留容器3110の原料液を移送するポンプ3116A,3116Bなどが設置された配液部3102となっている。第2の領域に隣接する第3の領域は、原料液を混同させる混合部(混合チップ)3140および混合された原料液を反応させる反応部(反応チップ)3142を有する処理部3103となっている。他端側の第4の領域は、処理の結果得られた生成物を導出して貯留する生成物貯留部(回収容器設置スペース)3104である。
また、この流体反応装置は、各部の動作の制御を行うコンピュータである動作制御部3106と、温度調整ケース3146に熱媒体を流して処理部3103の温度調整を行う熱媒体コントローラ3107を備えている。また、動作制御部3106には、図52に示すように、液体の流量と温度をモニタできる流量モニタ3270および温度モニタ3272が搭載されている。なお、この構成例では、動作制御部3106と熱媒体コントローラ3107は流体反応装置と別置きになっているが、勿論一体でも良い。図53に示すように、第2〜第4の領域の床下部分には配管室3105が形成され、ここには混合部3140および反応部3142へ加熱又は冷却用の熱媒体を送るための配管が設けられている。
このように、上流側から下流側へと各部を配置することによって液体の流れを円滑にし、かつ装置全体をコンパクトにまとめることができる。この構成例では、各部の配列を直線状にしたが、例えば、全体が正方形に近いスペースであれば、各部を液体の流れがループを形成するように構成してもよい。
図53において、符号3250は装置下部に設けられた液溜めパンであり、符号3252は液溜めパン3250上に設置された漏液センサを示す。またこの装置例では、配液部3102、処理部3103、生成物貯留部3104は隔壁3254,3256により区画されており、各部にはカバー3258,3260,3262が取り付けられて装置外部とこれらを隔離している。符号3264は排気ポートであり、図示しない排気ファンに接続されている。そして、装置内の圧力を装置外より負とすることで装置内の有毒ガスが外部に漏出することを防いでいる。
図52に示す原料貯留部3101には、2つの貯留容器3110A,3110Bが設置されているが、必要に応じて3つまたはそれ以上の貯留容器を使用してもよい。例えば、同じ液体を2つの貯留容器に収容し、これらを交互に切り換えて用いることにより、処理を継続的に行うことができる。なお、原料貯留部3101に、ライン洗浄用のアセトンなどの有機溶剤、塩酸、純水などが入った洗浄液容器3112や、パージ用の窒素ガスが封入された圧力源3114を設けてもよい。また、廃液容器3136を原料貯留部3101に置いてもよい。
配液部(導入部)3102には、貯留容器3110A,3110Bに輸送管3121A,3121Bを介して接続されたポンプ3116A,3116Bが設置されている。図52におけるポンプ3116A,3116Bには遠心式ポンプが使用されている。また、配液部3102は、ポンプ3116A,3116Bの下流側に配置された流量調整装置3300A,3300B、リリーフ弁3122A,3122B、圧力測定センサ3124A,3124B、流路切換弁3126A,3126B、および逆洗ポンプ3130を有している。流路切換弁3126A,3126Bは、輸送管3121A,3121Bの他に、洗浄液容器3112や、圧力源3114にそれぞれ接続されている。逆洗ポンプ3130は、混合部3140や反応部3142の流路内が生成物によって閉塞した場合に用いられる。逆洗ポンプ3130は洗浄液を貯留する洗浄液容器3112に接続され、さらに流路切換弁3132を介して反応部3142の出口に接続される。逆洗ポンプ3130により移送される洗浄液は通常の流れと逆に流れる。すなわち、洗浄液は、反応部3142の出口から混合部3140の入口に向かって流れ、流路切換弁3126A,3126Bを経て廃液口3134から図示しない配管を通って廃液貯留容器3136に入れられる。
逆洗ポンプ3130は吐出圧力が高く、洗浄液に脈動を起こさせて生成物を除去することが可能なように1本ピストン型のポンプが好ましい。洗浄液としては、有機溶剤、塩酸、硝酸、りん酸、有機酸、純水などが好適に用いられる。有機溶剤の例としては、アセトン、エタノール、メタノールなどが挙げられる。図52に示す導入口3240は、外部から純水や水素水を導入する場合に設けられたもので、洗浄液容器3112内の洗浄液の代わりに洗浄に使用できる。
図55は、原料液の予備加熱(予備温度調整)と混合を行うための混合部3140を示すもので、3枚の薄板状の基材である上板3144a、中板3144b、下板3144cが接合されて全厚さ5mmの混合部3140が形成されている。なお、以下に説明する流路はいずれも中板3144bの表面に形成された溝である。上板3144aを貫通して形成された2つの流入ポート3147A,3147Bは、中板3144bの上面に形成されたそれぞれ2つの予備加熱流路3148A,3148Bに連通する。これらの予備加熱流路3148A,3148Bはそれぞれ途中で分岐しかつそれぞれ拡大し、再度合流する。さらに、予備加熱流路3148A,3148Bはそれぞれ出口流路3150A,3150Bに連通し、これらの出口流路3150A,3150Bは合流部3152に通じている。出口流路3150Aは、中板3144bの上面に、出口流路3150Bは中板3144bの下面に形成されている。
図56は図55に示す合流部の拡大図である。図56に示すように、合流部3152は、出口流路3150A,3150Bに通じる円弧状の溝として中板3144bの上下面にそれぞれ形成されたヘッダ部3154,3155と、このヘッダ部3154,3155から円弧の中心に向かって延びる複数の分液流路3156,3157と、これらの分液流路3156,3157が合流する合流空間3158とを有している。分液流路3156,3157と合流空間3158は中板3144bの上面に形成され、分液流路3156,3157は交互に配置されている。下面側のヘッダ部3155と分液流路3157とは、中板3144bを貫通する連絡孔3157aにより連通している。合流空間3158は、下流側に向けて幅が徐々に小さくなるように形成され、中板3144bおよび下板3144cを貫通して形成された流出ポート3160に連通している。
図56に示す例では、合流空間3158の入口側の開口面3159において分液流路3156が5本、分液流路3157が4本、交互に配置されている。分液流路3156,3157からそれぞれ流出した2種類の液体は、合流空間3158内で縞状の流れを形成しつつ下流側に流れ、合流空間3158の流路幅が徐々に縮小するに従い、強制的に両液が混合される。この例では、合流空間3158の流路幅は最終的に40μmに達する。加工技術精度を上げれば、流路幅を10μmにすることも可能である。
図57(a)は図52に示す反応部を示す平面図、図57(b)は図57(a)に示す反応部の断面図である。この例では、2枚の基材3144d,3144eが接合されて厚さ5mmの反応部3142が構成されている。この反応部3142では、反応流路3162が蛇行しており、長い流路を効率的に提供している。反応流路3162は、入口ポート3164および出口ポート3165にそれぞれつながる連絡部3162a,3162cと、連絡部3162a,3162cに連通する蛇行部分3162bとを有しており、連絡部3162a,3162cの幅は狭く、蛇行部分3162bの幅が広く形成されている。したがって、出入口部分では液体が急速に流れ、副生成物の付着を防止しており、蛇行部分3162bでは緩やかに流れて、加熱と反応の時間を長く取ることができるようになっている。
図58(a)および図58(b)に示すのは、反応流路の幅が除々に小さくなる部分3163aと除々に大きくなる部分3163bを持つ反応部の他の構成例である。この反応部3142aには、基材3144d,3144eの間に、幅寸法が最大aから最小bの範囲で増減する反応流路3163が形成されている。幅寸法の増減に合わせ、深さを増減させてもよい。この例では、反応流路3163の断面積が一定になるよう深さが最大cから最小dの範囲で変化するようになっている。
図58(c)は、反応流路の他の構成例を示す横断面図である。この反応部3142bでは、反応流路3163cは、その幅eが深さfより大きい扁平形状を有しており、熱触媒からの熱の伝達方向(矢印で表示)に交差する広い伝熱面を有するので、反応流路3163c内の液体に熱の伝達が有効に行われる。なお、合流空間3158や反応流路3162,3163に、適当な触媒を配置することは反応を促進するために有効である。このような触媒は反応の種類に応じて選択される。配置の仕方は、例えば、流路の内面に塗布したり、後述するような流路の障害物として配置することができる。
混合部3140および反応部3142の少なくとも流路を形成する素材としては、例えば、SUS316、SUS304、Ti、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス等の硬質ガラス、PEEK(polyetheretherketone)、PE(polyethylene)、PVC(polyvinylchloride)、PDMS(Polydimethylsiloxane)、Si、PTFE(polytetrafluoroethylene)、PCTFE(PolyChloroTriFluoroEthylene)の内から、耐薬品性、耐圧性、熱伝導性、耐熱性等を考慮して、好ましいものを選択する。混合部3140および反応部3142の接液部の材質は、表面からの溶出が少なく表面触媒修飾が可能で、ある程度の耐薬品性を持ち、−40〜150℃の広い温度範囲に耐えるものが望ましい。
図59は、混合部および反応部の温度を調整する温度調整ケースの構成を示す斜視図である。なお、以下の説明では、反応部3142の温度を調整する温度調整ケース3146についてのみ述べるが、混合部3140のための温度調整ケース3146も同様の構成を有しており、その重複する説明を省略する。温度調整ケース3146は、内部に反応部3142を収容する空間3170が形成されたケース本体3172と該空間3170を覆う蓋部3174とを備えており、これらの内面には、平行に延びる複数の熱媒体流路を構成する溝3176が形成されている。ケース本体3172には、溝3176に連通する給液路3178と排液路3180(図52参照)が形成され、これらの給液路3178と排液路3180はそれぞれ熱媒体コントローラ3107に接続されている。給液路3178は、蓋部3174の溝3176に開口3179を介して連通し、排液路3180も蓋部3174の溝3176に図示しない開口を介して連通している。この例では、溝3176を流れる熱媒体は反応部3142の表裏面に直接接触し、反応部3142は温度調整ケース3146に完全に収容された状態で加熱(または冷却)される。
図示しないが、熱媒体コントローラ3107には、熱媒体の温度を制御する制御機構と熱媒体を移送するポンプが内蔵されている。図52に示すように、熱媒体は熱交換器3182を通過後、混合部3140および反応部3142の温度調整ケース3146に供給されるようになっている。熱交換器3182は例えば冷却用の市水の量を変えることで混合部3140および反応部3142に供給される熱媒体の温度を独立に変えられるようになっている。
図60(a)乃至図60(d)には、温度調整ケース3146の他の例が示されており、ここでは、熱媒体流路3192はケース本体3172と蓋部3174のそれぞれの内部に形成されている。給液路3178は、図60(c)に示すように、給液配管3188の先端が挿入された二重管の構成となっており、細い連通路3190を介して熱媒体流路3192に連通している。排液側も同様の構成である。図60(b)に示すように、混合部3140を収容する温度調整ケース3146と反応部3142を収容する温度調整ケース3146とは、ボルト3194、ナット3195およびスペーサ3196を介して積層して結合されている。
図60(b)には、温度調整ケース3146に収容された混合部3140および反応部3142への液体の供給・排出の経路が示されている。すなわち、それぞれの液体は、温度調整ケース3146を貫通して形成された流通路3198を介して混合部3140へ流出入する。また、混合部3140と反応部3142との間の液体の流通は、温度調整ケース3146の流通路3198を連絡する連絡通路3200を介して行う。図60(d)には、反応部3142の液の流入部と流出部の構造が説明されている。液の流れを下方向へ向かわせるために、通常は混合部3140および反応部3142の液の入口は上面に、出口は下面にそれぞれ形成する。
図52に示すように、反応部3142の流出口3202は、回収配管3204を介して生成物貯留部3104に接続されている。生成物貯留部3104には、冷却用の熱交換器3206、流路切換弁3132の下流側に回収容器3208が設けられている。回収容器3208が置かれる生成物貯留部3104は、他の領域から温度等の影響を受けないように、また生成物から発生する可能性のある有毒ガスが外部に漏洩しないように隔離されている。
図61は、生成物貯留部3104の他の構成例を示すもので、複数の回収容器3208が回転テーブル3212上に設置されている。この例では、回収容器3208は2個であり、回転テーブル3212を移動させるアクチュエータ3214は180度回転型ロータリーアクチュエータである。勿論、回収容器3208の数やアクチュエータ3214の種類は適宜に選択可能である。図52に示す動作制御部3106は、回収容器3208の液面を検知する液面検知センサ3211bからの信号により、回収容器3208の交換時期を判断し、流路切換弁3132(図52参照)により液流を止め、回収口3210の下流に設けた光学的流体検知センサ3211aにより液流の停止を確認して、アクチュエータ3214を作動させて他の回収容器3208を回収口3210の下方に移動させる。
次に、上記のように構成された流体反応装置により、薬液等の液体(原料液)を反応させる工程について説明する。なお、流体反応装置の動作は基本的に動作制御部3106によって自動制御される。まず、原料貯留部3101において、原料液を貯留した貯留容器3110A,3110Bに用意しておく。熱媒体コントローラ3107により熱媒体の温度を設定し、熱交換器3182を通過させる市水の量を調整して各熱媒体の温度をそれぞれ調整し、混合部3140および反応部3142の温度調整ケース3146へ熱媒体を流通させてこれらを所定の温度に維持する。熱媒体の温度は、温度調整ケース3146の入口に設けた温度センサ3216,3218により測定される。
この例では、原料液を処理部3103に供給する前に、混合部3140および反応部3142内の流路に純水等の洗浄液を流して予め洗浄する。流路を洗浄している間、洗浄液の温度を混合部3140の出口の温度センサ3220および反応部3142の出口の温度センサ3222で測定し、洗浄液の温度を熱媒体コントローラ3107にフィードバックする。このようにして、混合部3140および反応部3142を所定の温度に調整する。
混合部3140および反応部3142の温度が調整され、流路の洗浄を終えてから、流路切換弁3132を切り換え、ポンプ3116A,3116Bを駆動して、貯留容器3110A,3110B内の原料液をそれぞれ移送する。原料液は、流量調整装置3300A,3300Bにより所定の流量に調整され、その後、混合部3140、反応部3142、流出口3202、回収口3210を経て回収容器3208に至る。なお、流路切換弁3132はアクチュエータにより作動する自動弁としており、この動作は自動運転も可能である。
混合部3140においては、原料液は予備加熱流路3148A,3148B(図55参照)において所定の温度に加熱された後、合流部3152において合流し、混合する。その際、各液は、図56に示すように、ヘッダ部3154,3155から分液流路3156,3157を経由して合流空間3158に流入する。合流空間3158の断面は下流へ向かうに従い徐々に減少するので、マイクロサイズの流れが規則的に混在し、フィックの法則に則って迅速に混合する。その状態で、所定の温度に維持された反応部3142の反応流路3162に流入すると、反応は、物質移動や熱伝導の制約を受けずに迅速に進行する。したがって、量産手段として充分実用的であるとともに、反応速度の早い爆発性の反応でも低温下で行う必要がなくなる。また、この例では、反応流路3162の幅が合流空間3158の幅に比べて充分広く形成されているので、反応速度が遅い場合でも充分な時間をかけて行うことができ、高い収率を得ることができる。
得られた生成物は、反応流路3162の流出口3202から回収配管3204を経由して熱交換器3206に送られ、ここで冷却されて、回収口3210より回収容器3208に流入する。貯留容器3110A,3110Bが空になったり、回収容器3208が満杯になったら、動作制御部3106によりポンプ3116A,3116Bの運転を停止させて処理を終了させる。この場合、貯留容器3110A,3110Bの他に、追加の貯留容器を原料貯留部3101に予め用意しておけば、流路切換弁3126A,3126Bを切り換えることにより、運転を停止させることなく連続的な処理が可能である。なお、反応に時間が掛かる場合には、混合部3140および反応部3142内に液を一定時間閉じ込めてバッチ運転することも可能である。流路切換弁3126A、3126Bも自動弁であるのでこれらの動作は自動運転も可能である。
バッチ運転の方法は、ポンプ3116A,3116Bを一時停止してもよいし、流路切換弁3126A,3126Bを切り換えて、処理部3103への液体の流入を停止させてもよい。これにより、液体の反応時間が長い場合でも反応流路3162の長さを長くする必要がなくなる。バッチ運転の際は、合流空間3158および/または反応流路3162に液体が充満されたことを検知する充満検知手段を用いて運転制御を行うことが好ましい。これは、例えば、図61に示すような光学的流体検知センサが用いられる。これにより、合流空間3158および/または反応流路3162に液体が充満されたと判断した時点で、ポンプ3116A,3116Bを停止させまたは第1の流路切換弁を切換え、液体を反応終結時間に適応する一定時間合流空間3158および/または反応流路3162に滞留させておく。
なお、本発明に係る流量調整装置3300A,3300Bによれば、液体の流量を正確に測定することができるので、測定された流量と液体の供給時間から液体の供給量を求めることができる。したがって、動作制御部3106は液体の供給量に基づいて生成物の生成量を調整することができ、また流体反応装置の動作を制御することができる。例えば、液体の供給量が所定の値に達したときに動作制御部3106がポンプ3116A,3116Bの運転を停止させる、または流路切換弁3126A,3126Bを切り換えるようにしてもよい。このように、本発明に係る流量調整装置を流体反応装置に組み込むことにより、動作制御部3106は液体の供給量に基づいて流体反応装置の各部の動作を制御することができる。
図62(a)および図62(b)は、混合部3140における合流部の他の構成例を示すものである。この合流部3152aは、Y字状の合流空間3158aに、障害物3224を一定間隔aで所定の距離Lに亘って配置したものである。この例では、直径50μm以下である柱状の障害物3224を、合流点からL=5mmに亘って配置した。図62(b)に示すように、各障害物3224は隣接するものが流れ方向にピッチの半分だけずれるように、千鳥状に配置されている。これによって液体Aおよび液体Bの界面3125が蛇行するので2つの液体の界面面積(接触面積)を大きくすることができる。図63に示す合流部3152bでは、合流空間3158bの中央部に一列の障害物3224を流れ方向に沿って千鳥状に配置したもので、同様に界面面積を大きくすることができる。これは、狭い合流空間3158bで採用するのに好適である。
図64は、流体反応装置の処理部3103の他の構成例を示すものである。これは、図52の処理部3103において、混合部3140と反応部3142との組み合わせをそれぞれ有する2系統R1,R2設け、さらに配液部3102の流路切換弁3126A,3126Bを用いて2種類の原料液をいずれの系統R1,R2にも供給可能にしたものである。このように、2系統を用いることで、必要に応じて処理量を増やすことができるが、その他にも種々の使用方法が有る。例えば、反応生成物が固体粒子を析出しやすく、配管途中で詰まりやすい場合などでは、一方の系統を予備として使用する。また、流路切換弁3126A,3126Bで移送ラインを交互に切り換えて、上述したバッチ運転を連続的に行うことができる。勿論、3系統以上の移送ラインを適宜に並列して設けることができる。この場合も流路切換弁3126A,3126Bは自動操作が可能である。
図65は、処理部3103において反応部を複数直列に配置した例を示す。この例では、1つの混合部3140と3つの反応部3142a,3142b,3142cが直列に接続されており、それぞれに温度センサ3220,3222a,3222b,3222cが設けられている。この例では、反応の段階に応じて反応部3142a,3142b,3142cを独立して温度制御することが可能となっている。この構成は、生化学反応のように反応時間と反応温度を大胆に且つ瞬時に変化させたい反応に適している。たとえば反応部3142aでは100℃で反応させ、反応部3142bでは−20℃で反応させるというような反応もこのシステムでは可能になる。
図66は、処理部3103において混合部を複数設けた例である。この構成例では、A液とB液を混合し反応させる第1の混合部3140および反応部3142が設けられ、この反応部3142の下流側に第2の混合部3140aが設けられている。この混合部3140aではポンプ3116Cから輸送された第3の原料液または反応剤であるC液がA液とB液と合流し、混合する。これらの2つの混合部3140,3140aと1つの反応部3142の温度は個別に制御される。なお、C液は反応停止剤でもよい。
この構成例では、インライン収率評価器3226が第2の混合部3140aの流出口3202に直接接続されている。これにより、化学反応の結果の収率をリアルタイムで確認でき、直ぐにプロセスパラメータへフィードバックすることが可能となる。インライン収率評価器3226としては、被測定物を分離せずに測定可能な方法として赤外分光、近赤外分光、紫外吸光等の方法がある。
この構成例では、さらに、反応生成物の中から不要な物質と必要な物質を分離する分離抽出部3228が第2の混合部3140aの下流側に設けられている。図示するように、分離抽出部3228は、Y字形の分離流路3234を有している。第2の混合部3140aからの液体は分離流路3234により2つの流れに分岐され、1つは物質内の疎水性分子のみを通過させる疎水性壁面3230から形成された流路に、他方は物質内の親水性分子のみを通過させる親水性壁面3232から形成された流路に流れ込む。分離した物質は、それぞれ回収配管3204,3204aを介して回収容器3208,3208aに回収される。分離抽出部3228としては、その他に、疎水性物質だけを吸着可能な膜やポーラスフリットを使用することも考えられる。
図67は、混合・反応と分離抽出を繰り返して連続処理するための構成例である。すなわち、A液とB液を処理する混合部3140a、反応部3142a、および分離抽出部3228aが上流側に配置され、分離抽出部3228aから抽出された液体とC液を処理する混合部3140b、反応部3142b、および分離抽出部3228bが下流側に配置されている。A液とB液が反応した後の不要物質は分離抽出部3228aの排出口3234aから系外に出され、C液を加えた第2の反応における不要物質は分離抽出部3228bの排出口3234bから系外に出される。さらに、分離抽出部3228bから抽出された液体と第4の液であるD液を混合させる混合部3140cが設けられている。なお、D液は反応停止剤でもよく、他の原料溶液でも良い。混合部3140cの下流側にインライン収率評価器3226を設けても良い。
図68(a)には、図67の各部を積層化した構成が示されている。液体は下方へ流れる。混合部3140a、反応部3142a、分離抽出部3228a、混合部3140b、反応部3142b、分離抽出部3228b、および混合部3140cは、温度調整ケース3146にそれぞれ収容され、さらにボルト3194、ナット3195、スペーサ3196によって所定の間隔をおいて積層化されている。各部間の液の移動は連絡通路3200(図55(b)参照)を介して行われる。各部の間には空気を介在させ、空気の断熱性を利用して他の部の熱影響を受けないようにして、温度制御の精度を向上させている。図68(b)に示すように、各温度調整ケース3146の周りを気泡を含んだクリーンなシリコン部材3236等の断熱材で覆うのが好ましい。
この流体反応装置に導入される流体は液体、気体であり、回収される物質は液体、気体、固体またはこれらの混合体である。導入物質が粉体などの固体の場合は原料貯留部3101に粉体溶解器を設置することも可能である。図69は、2つの原料液のうち、一方が粉体を溶解した溶液、他方は元々液体の場合の原料貯留部3101の構成例である。原料の粉体と溶媒は粉体溶解器3240の原料導入口3242から導入される。この例では、原料粉体をヒータ3244による加熱と攪拌器3246による攪拌によって溶解し、生成した原料液を、取出し口3148に引き込まれた配管3249より、ポンプ3116Aによって、混合部3140および反応部3142に送り込むようになっている。
このように、本発明に係る流量調整装置は、微小空間で流体を混合させ反応させる流体反応装置(マイクロリアクタ)に好適に用いることができる。本発明は、今まで述べた実施の形態に限定されるものではなく、また図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。
流量測定装置および流量調整装置
本発明は、さらに、本発明の流体反応装置及び流体混合装置において使用することができる流量調整装置にも関する。
上述した目的を達成するための本発明は、これに限定されるものではないが、以下の発明を包含する。
(1) 流路を流れる流体を所定の温調位置において短時間温調する温調機構と、前記流路の前記温調位置より下流側の温度測定位置に配置された少なくとも1つの主温度センサとを備え、前記主温度センサにより観測した温度測定位置における温度変化に基づいて温調された流体の通過時を判断し、この判断結果に基づいて流量を算出する流量測定装置において、前記流路の前記温調位置より上流側に副温度センサを設置し、前記主温度センサの温度測定値を前記副温度センサの測定値により補正することを特徴とする流量測定装置。
(1)に記載の発明においては、流路の上流側に設置した副温度センサにより、流体の移動に起因する温度変化を受けていない流路の温度が測定される。従って、主温度センサの温度測定値を副温度センサの測定値により補正することにより、外乱の影響を除いた流体の温度変化を検出することができる。従って、温調された流体の通過時をより正確に判断し、この判断結果に基づいてより正確に流量を算出することができる。
副温度センサの配置個所は、主温度センサの測定位置における外乱(例えば配管を伝わる温調機構の熱)の影響を測定することができるような箇所であり、通常、温調位置に対して主温度センサと対称の位置、あるいは曲線的配管であれば等距離の位置である。従って、複数の主温度センサに対してそれぞれ副温度センサを設置する場合には、それぞれに対応する位置に設置する。この位置は、現場の状況に応じて正確に対称な位置とは限らないので、流量がゼロの時の等温点を探すようにしてもよい。
本発明によって流体の流量が測定される原理について図73を参照して説明する。図73(a)において、縦軸は温度を表し、横軸は時間を表している。まず、温調機構により流体に符号HLで示すように熱負荷を与えて、所定の変化率で温度を上昇させる。このとき、流体が流路内を流れていると、第1の測定点P1と第2の測定点P2では、それぞれS1,S2のような温度変化が見られる。その内の配管を経由する熱伝導等による温度変化をs1、s2とすると、実際の流体の温度変化はその差分、すなわち、図73(a)において細線を付した部分である。これは、図73(b)において、曲線ΔS1,ΔS2として示されている。曲線ΔS1,ΔS2のピークの部分は、温調位置Phにおいて温調を受けた液体の中心点を測温していると考えられるので、その時間差Δtは、流体がP1,P2間を移動する時間に相当すると考えられる。従って、流体の流量は以下の式から求めることができる。
流量=温度測定点間の距離(D)×流路断面積÷時間差(Δt)
流体の比重、比熱、粘度が異なっても、流体の平均流速が同一の条件下では、上流側の温度カーブと下流側の温度カーブとの時間差は流量のみに依存するので、上記の流量の求め方は変わらない。例えば、図72に示すように、流体の粘度が変わっても、最大流速が変わるのみで平均流速(すなわち流量)は変わらない。したがって、2つの測定点に現れる温度カーブの時間差を測定すれば、流体の物性の影響を受けずに正確な流量測定が可能になる。
流量が0.01〜10L/hさらには0.01〜2L/hと少ない場合では、流路の内径が2mm以下と小さく、レイノルズ数は小さくなるため流体の流れが層流となる。したがって、流路内での流速分布を示すカーブに乱れが無くその形状が安定していることが温度変化の時間差に基づく流量の測定を可能にしている。これにより種々の試薬を用いた試験を行う場合であっても、事前に試薬の比熱、比重、および粘度などの物性値を把握することが不要となり、単に目標とする流量を設定するだけで所望の流量を得ることができる。
本発明に用いられる流体の例としては、試薬、有機溶剤、生化学物質などが挙げられる。例えば、医薬品の開発段階においては、数多くの試薬を用いて、濃度、溶媒、温度などの条件を様々に変化させて試験を行う、いわゆるスクリーニングが行われる。このスクリーニングでは、試薬の物性に左右されず、正確な体積を測定することが求められる。本発明によれば、試薬の種類によらず正確な試薬の体積(流量)を求めることができるので、好ましい開発環境を提供することができる。
図73に示した例では、2つの温度カーブのピークが現れるときの時間差を測定しているが、本発明はこれに限られない。例えば、温度カーブの立ち上がり時の時間差を求めてもよく、また、ピークから所定時間だけずれた時点の時間差を求めてもよい。このように、本発明では、温度カーブ上の互いに対応する2点間の時間差を測定する。
(2) (1)に記載の発明において、前記補正は、前記主温度センサの測定値と前記副温度センサの測定値の差を求めることにより行われることを特徴とする流量測定装置。差を求める方法は、ブリッジ回路のように出力の差分を直接に求めるアナログ式でも、測定信号をアナログ/デジタル変化した後に処理するデジタル式でもよい。
(3) (1)または(2)に記載の発明において、前記主温度センサを異なる温度測定位置に少なくとも2つ設け、これらの温度測定位置における通過時どうしの時間差に基づいて流量を算出することを特徴とする流量測定装置。
(3)に記載の発明においては、第1の測定点および第2の測定点における流体の温度変化を示す温度カーブ上の互いに対応する2点間の時間差に基づいて流体の流量を算出することができる。なお、副温度センサによる補正は、第1の測定点および第2の測定点の双方の主温度センサ測定値に対して行っても良いし、外乱の影響の大きい方のみに行ってもよい。
(4) (1)または(2)に記載の発明において、前記温調機構が温調を行った時と、温度測定位置における通過時との時間差に基づいて流量を算出することを特徴とする流量測定装置。
(5) (1)ないし(4)のいずれかに記載の発明において、前記補正後の温度測定値が極値に達した時点を温調流体の通過時と判断することを特徴とする流量測定装置。温度測定値が極小値(冷却の場合)または極大値(加熱の場合)に達した時点は、温調によって熱影響を受けた部分が通過する時点と考えられるからである。
(6) (1)ないし(5)のいずれかに記載の発明において、前記副温度センサは、前記温調位置に対して前記温度測定位置とほぼ対称の位置に有ることを特徴とする流量測定装置。
(7) (1)ないし(6)のいずれかに記載の発明において、前記副温度センサの位置を、流路に沿って調整可能としてあることを特徴とする流量測定装置。
(8) (1)ないし(7)のいずれかに記載の発明において、前記主温度センサまたは副温度センサの測定値をアナログ/デジタル変換してデジタル回路に取り入れて処理することを特徴とする流量測定装置。
(9) (1)ないし(8)のいずれかに記載の発明において、前記温調機構は、ペルチェ素子、ゼーベック素子、電磁波発生器、抵抗加熱線、サーミスタ、または白金抵抗体を備えることを特徴とする流量測定装置。温調機構としては、加熱手段に限らず、冷却手段を用いてもよい。
(10) (1)ないし(9)のいずれかに記載の発明において、前記流路は、耐食性のある材料から形成されていることを特徴とする流量測定装置。
(11) (10)に記載の発明において、前記材料は、ステンレス鋼、チタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ四フッ化エチレン、またはポリクロロトリフルオロエチレンであることを特徴とする流量測定装置。
(12) (1)ないし(11)のいずれかに記載の流量測定装置と、前記流路の前記流量測定装置より下流側部分に設けられた制御弁と、前記流量測定部により求められた流量に基づいて、流体の流量が一定となるように前記制御弁を制御する制御部とを備えたことを特徴とする流量調整装置。
(13) (12)に記載の発明において、前記制御弁は、流量を調整する弁と、前記弁を駆動する駆動源とを有しており、該駆動源は、圧電素子、電磁石、サーボモータ、またはステッピングモータを備えていることを特徴とする流量調整装置。本発明によれば、応答性の良好な駆動源を用いることにより、流量測定部により測定された実流量に基づいて速やかに弁を駆動させて流量を一定に保つことができる。
(14) (12)に記載の発明において、前記制御弁は、流量を調整する弁と、前記弁を駆動する駆動源とを有しており、該駆動源は、複数の圧電素子が積層された構造を有することを特徴とする流量調整装置。本発明によれば、高圧の流体が流れる場合であっても、高圧や圧力変動の影響を受けることなく流量を一定に保つことができる。
(15) (12)ないし(14)のいずれかに記載の発明において、前記制御弁を通過する流体の圧力は1MPa〜10MPaであることを特徴とする流量測定装置。
(16) (12)ないし(15)のいずれかに記載の発明において、前記制御弁を通過する流体の流量は0.01〜10L/hであることを特徴とする流量測定装置。
(17) 流体を貯留する複数の容器と、流体を混合させる混合部と、混合した流体を反応させる反応部と、(12)ないし(16)のいずれかに記載の流量調整装置とを備えたことを特徴とする流体反応装置。
以下、本発明の実施の形態に係る流量調整装置について図面を参照して説明する。図74は本発明の第1の実施の形態に係る流量調整装置を示す模式図である。図74に示すように、本実施の形態の流量調整装置は、流路4001を流れる液体(流体)の流量を測定する流量測定部4010と、液体の流量を調整する制御弁4020と、流量測定部(流量測定装置)4010により測定された流量に基づいて制御弁4020を制御する制御部4030とから基本的に構成されている。
流量測定部4010は、流路4001を流れる液体を所定の周期で加熱する温調機構4002と、温調機構4002の設置位置(温調位置Ph)より下流側の第1の測定点Pm1において液体の温度を測定する第1の主温度センサ4003と、第1の測定点Pm1より下流側の第2の測定点Pm2において液体の温度を測定する第2の主温度センサ4004とが設けられている。更にこれらの主温度センサとそれぞれ温調機構4002に対して対称な(等距離な)上流側の位置Ps1、Ps2に、それぞれ副温度センサ4003a、4aが設けられている。温調機構4002と第1の主温度センサ4003の距離、および第1の主温度センサ4003と第2の主温度センサ4004の距離Dは特に限定されるものではないが、0.5[mm]〜10[mm]が好ましい。温調機構4002は流路4001の壁部を取り囲むように設けられており、流路4001の壁部を介して液体を加熱する。この温調機構4002は温度制御部4005に接続されており、最適な温度上昇率で液体を加熱するようになっている。なお、温調機構4002としては、ペルチェ素子、ゼーベック素子、電磁波発生器、抵抗加熱器などが好適に用いられる。また、温調機構4002は、液体を冷却することで液体に温度変化を与えるようにしてもよい。
第1の主温度センサ4003と第1の副温度センサ4003aの出力は、第1の差分検出回路8Aに入力され、同様に、第2の主温度センサ4004と第2の副温度センサ4004aの出力は、第2の差分検出回路4008Bに入力されている。これらの差分検出回路4008A,4008Bは、例えば図75に示すようなブリッジ回路4008Cによって構成され、主温度センサ4003,4004と副温度センサ4003a,4004aからの差分信号を、時間差測定部4009に出力する。時間差測定部4009は、各差分信号の変化から、加熱された液体が2つの測定点P1,P2を通過する時間をそれぞれ算出し、その差に基づいて液体の流速、つまり流量を求める。
装置の稼動の初期に主温度センサ4003,4004と副温度センサ4003a,4004aの出力をバランスさせる必要が有る。これは、流路4001に流体が流れていない(流速ゼロ)の状態で、差分出力がゼロとなるようにしなければならない。これは、主温度センサ4003,4004と副温度センサ4003a,4004aを対称位置に配置した状態で、ブリッジ回路4008Cの抵抗R1,R2を調整して行なう方法と、ブリッジ回路4008Cの抵抗R1,R2は等しくしておき、主温度センサ4003,4004と副温度センサ4003a,4004aの対称関係をずらせて調整する方法とが有る。現場の状況は複雑であり、いずれの方法が正しいというものではなく、状況に応じて適宜に選択し、あるいは両方を組み合わせて行っても良い。
なお、主温度センサ4003,4004と副温度センサ4003a,4004aの差分を取り出す方法としては、上記のようなブリッジ回路4008Cを用いたアナログ的方法の他に、各温度センサの温度信号をアナログ/デジタル変換してデジタル回路に取り入れ、ソフトウエアで差分を算出する方法でもよい。この場合、ブリッジ回路を通さないで入力しても良いし、ブリッジ回路通過後のピーク検出以降をデジタル処理しても良い。
流路4001は基本的に密閉系であり、反応性の大きい、あるいは環境に対して有害であったり危険な液体を扱う場合もあるので、開口部を形成することは好ましくない。従って、この例では、温調機構4002、第1の主温度センサ4003および第2の主温度センサ4004は、いずれも流路4001を構成する配管4001Aの外面に取り付けられている。それぞれの副温度センサも同様に流路4001の外面に取り付けられている。従って、これらの温度センサ4003,4003a,4004,4004aは、流路4001の壁部を介して液体の温度を測定するようになっている。なお、温度センサ4003,4003a,4004,4004aとしては、応答性に優れたサーミスタ式温度計や熱電対などが好適に用いられる。もちろん、流路4001の壁部に、温調機構4002や温度センサ4003,4003a,4004,4004aを埋設してもよい。いずれの場合も、対応する主温度センサ4003,4004と副温度センサ4003a,4004aは同じ設置方法を採用することが好ましい。
時間差測定部4009により液体の流量が測定される原理は、図73により説明した通りである。すなわち、液体が流れている状態で温調機構4002が図73に示すようなパルス負荷で液体を加熱すると、加熱された液体は下流側に流れ、第1の測定点Pm1および第2の測定点Pm2をこの順に通過する。このとき、第1の測定点Pm1における液体の温度は第1の主温度センサ4003により測定され、第2の測定点P2における液体の温度は第2の主温度センサ4004により測定される。
ここで、これらの主温度センサ4003,4004は、流路の壁部の温度を測定しているので、温調機構4002からの熱は壁部を通って流体に伝わり、更に下流側で再度壁部を通して温度センサに伝わる。従って、温調機構4002が与えた熱量が壁部を2度通過する間に、配管4001Aを通しての熱伝導や外部からの影響のために、温度検出部の距離が離れた場合に純粋な流体の温度変化が検出しにくくなる。そこで、この実施の形態では、各主温度センサ4003,4004について温調機構4002に対して対称な位置に副温度センサ4003a,4004aを配置し、周囲温度変化と管壁伝熱の影響を測定する。そして、この副温度センサ4003a,4004aと主温度センサ4003,4004の温度信号の差分を取ることによって、周囲温度変化と管壁伝熱の影響をキャンセルした流体自体の温度変化を測定する。これによって、流体に与える熱量を大きくしても、流体の温度変化自体を正確に検出することができるため、温度検出位置間の距離を大きくし、広い流量範囲で正確な流量検出を行なうことができる。
すなわち、第1の主温度センサ4003および副温度センサ4003aの出力信号(図73(a)のS1およびs1)は差分検出回路4008Aに入力されてそれらの差分信号(図73(b)のΔS1)が出力され、第2の温度センサ4004および副温度センサ4004aの出力信号(図73(a)のS2およびs2)は差分検出回路4008Bに入力されてそれらの差分信号(図73(b)のΔS2)が出力され、これらの出力は連続的に時間差測定部4009に送られる。時間差測定部4009は、これらの出力ΔS1,ΔS2の変化を監視し、それらがピークに達した(変化率=0の)時の時刻をそれぞれ記録し、その時間差Δtを算出し、下記の式によって流量に換算する。
流量=温度測定点間の距離(D)×流路の断面積÷時間差(Δt)
なお、図73(a)の測定時間差Δtは、従来の方法の場合を比較のために示しており、主温度センサ4003,4004の温度測定値自体のピークの時間差を採用している。
ここでは流体の流量を温度変化のピークの移動速度に基づいて求めているが、温度変化曲線の対応する他の2点間の時間差を求めてもよい。例えば、2つの温度カーブの立ち上がり時の時間差を求めてもよい。
流量測定部4010による上記のような流量算出の方法は、アナログ回路で製作してもデジタル処理で行っても構わない。デジタル処理で行う場合は、温度センサ4003,4003a,4004,4004aの信号をアナログ/デジタル変換して入力しても、差分検出回路4008A,4008Bを通過した後の差分信号をアナログ/デジタル変換して入力する方法でもよい。
図74に示すように、制御弁4020は流量測定部4010の下流側に配置されている。この制御弁4020は、液体の流れに対向するように配置されたピストン(弁)4021と、ピストン4021を駆動する圧電素子(駆動源)4022とを備えている。圧電素子(圧電アクチュエータ)4022はピストン4021の裏面に固定され、圧電素子4022とピストン4021とは一体的に構成されている。ピストン4021および圧電素子4022はピストン室4023に収容されている。流路4001の一部はT字路となっており、ピストン4021は、T字路に流れ込む液体がピストン4021の前面にぶつかるように配置されている。圧電素子4022に電圧が印加されると圧電素子4022が伸縮し、これによりピストン4021を液体の流れ方向に沿って移動させてピストン4021の開度αを調整する。
ピストン4021の上流側には絞り部4001aが設けられており、ここで流路4001を絞り込むことにより、ピストン4021による正確な流量調整を可能としている。上述したピストン室4023は有底円筒状に形成されており、このピストン室4023は流路4001の外面に液密に固定されている。このような構成により、ピストン4021と流路4001との隙間から液体が漏れた場合でも、液体がピストン室4023の内部に保持されるので、液体の外部への漏洩が防止される。
本実施の形態に係る流量調整装置を組み込んだマイクロリアクタでは、試薬どうしの反応により流量調整装置の下流側で反応生成物が生成される。この場合、反応生成物の種類によっては、流量調整装置の下流側の液体の圧力が上昇し、流路4001から液体が漏れるおそれがある。本実施の形態によれば、有底円筒状のピストン室4023により液体の外部への漏洩を防止することができるので、正確な流量調整が可能となる。
次に、制御部4030について説明する。制御部4030は、時間差測定部4009に接続された増幅器4032と、流量を一定に保つためのピストン4021の開度を決定する比較部(PID制御部)4033と、制御弁4020の圧電素子4022に印加する電圧を生成するピストン駆動回路4034とを備えている。増幅器4032は、時間差測定部4009により算出された液体の流量(実流量)を表す信号を増幅し、増幅後の信号(実流量)を比較部4033に送る。比較部4033には設定流量(目標値)が予め入力されており、比較部4033は、実流量と設定流量とを比較し、実流量を設定流量に一致させるためのピストン4021の開度を演算する。比較部4033により演算されたピストン4021の開度はピストン駆動回路4034により電圧に変換される。そして、この電圧が圧電素子4022に印加され、圧電素子4022によりピストン4021が駆動される。このようにして、制御弁4020を通過する液体の流量が常に一定となるように制御部4030によって制御弁4020が制御される。
流量測定部4010の測定結果を制御弁4020の動作に速やかに反映させるためには、流量測定部4010と制御弁4020との間の流路4001の距離はできるだけ短いことが好ましい。すなわち、第2の主温度センサ4004とピストン4021との距離は、好ましくは10〜100mm、より好ましくは10〜50mm、さらに好ましくは10〜20mmである。また、制御弁4020に用いられる駆動源(アクチュエータ)には圧電素子のような応答性の優れたものを用いることが好ましい。このようにすることで、流路4001を流れる流量の変動(脈動)を速やかに解消することができ、一定の流量を保つことができる。
この流量調整装置は、2種類またはそれ以上の液体を反応させる流体反応装置(マイクロリアクタ)に好適に用いられる。一般に、液体を混合させる混合空間が小さいほど、液体の混合が速やかに行われる。本実施の形態に係る流量調整装置の流路4001の内径は、好ましくは0.1〜5mmであり、より好ましくは0.1〜2mmであり、さらに好ましくは0.1〜1mmである。また、微少量のみを取り扱い範囲とする場合には、最小径を0.02mmまでとすることも可能である。なお、流路の幅(内径)が小さくなると、液体を高圧で移送することが必要となってくる。本実施の形態では、流量調整装置の出口(制御弁4020の下流側)における液体の圧力は1MPa〜10MPa、2MPa〜5MPa、または3MPa〜4MPaである。
取り扱う液体としては、試薬、有機溶媒、生化学物質などが挙げられる。したがって、流路4001を構成する材料としては、耐食性を有するものであることが好ましい。また、上述したように、第1の主温度センサ4003および第2の主温度センサ4は流路4001の壁部を介して液体の温度を測定するため、流路4001を構成する材料は、熱伝導性に優れ、−40〜150℃の広い温度範囲に耐えるものが好ましい。さらに、流路4001を構成する材料は、液体の高圧に耐えうるものであることが好ましい。これらの点を考慮し、流路4001を構成する材料の好ましい例として、SUS316、SUS304、Ti、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス等の硬質ガラス、PEEK(polyetheretherketone)、PE(polyethylene)、PVC(polyvinylchloride)、PDMS(Polydimethylsiloxane)、Si、PTFE(polytetrafluoroethylene)、PCTFE(Polychlorotrifluoroethylene)、およびPFA(perfluoroalkoxylalkane)などの樹脂が挙げられる。
ステンレス鋼またはTiを用いる場合は、流路4001の壁部の肉厚は0.01〜0.1mmとすることが好ましく、PEEK、PTFE、PCTFE、PFAなどの樹脂を用いる場合は、流路4001の壁部の肉厚は0.1〜1mmとすることが好ましい。熱伝導性を考えると、熱容量の小さいTiを用いることが好ましい。樹脂を用いる場合は、第1の主温度センサ4003および第2の主温度センサ4004が取り付けられる流路4001の部位の肉厚を局所的に薄くして熱伝導率を向上させることが好ましい。
図76は制御弁の他の構成例を示す拡大図である。上述したように、ピストン4021を駆動する駆動源には高圧の液体に抗してピストン4021を駆動させることが要求される。図76に示す構成例では、駆動力を増すために、2つの圧電素子4022を積層させている。このような構成により、液体が高圧の場合であっても、ピストン4021の開度αを正確に調整することができ、流量を一定に保つことができる。なお、必要に応じて3つ以上の圧電素子を積層させてもよい。
図77は、この発明の第2の実施の形態を示すもので、先の実施の形態を簡略化したものである。なお、特に説明しない本実施の形態の構成は、上述した第1の実施の形態の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。
ここでは、第1の主温度センサ4003に対応する副温度センサ4003aのみを設置し、第2の主温度センサ4004については、対応する副温度センサを設けていない。第1の主温度センサ4003および副温度センサ4003aの処理は第1の差分検出回路4008Aを介して時間差測定部4009に入力され、第2の副温度センサの出力はそのまま時間差測定部4009に入力されている。従って、時間差測定部4009は、第1の温度測定位置Pm1については、差分(図78に示すΔS1の温度曲線)を基にピークを判断するが、第2の温度測定位置Pm2については、主温度センサ4004の測定値からピークを判断する。
これは、温調位置Phから距離が離れることによって、配管4001A等の熱は外部に逃げて、測定値への影響が少なくなるからである。また、第2の温度測定位置Pm2では、流体からの温度信号も小さくなるため、差分を取らない方が信号を検出し易くなるという点も考慮している。
このようにすることで、必要とする検出精度を確保しつつ、1つの温度センサと差分検出回路とを省いて、構成を簡略化し、コストを低下させることができる。また、流量測定部4010の全長や、配管4001Aの直線部の長さを小さくすることができるので、装置寸法の縮小化や、装置の設計の自由度の増加等を図ることができる。
次に、本発明の第3の実施の形態について図79を参照して説明する。図79は本発明の第3の実施の形態に係る流量調整装置を示す模式図である。図79に示すように、本実施の形態では、第1の主温度センサ4003、第1の副温度センサ4003aおよび第1の差分検出回路4008Aが省かれており、流量測定部4010は、第2の主温度センサ4004、第2の副温度センサ4004aおよび第2の差分検出回路4008Bが、時間差測定部4009に接続されて構成されている。本実施の形態では、第1の測定点Pm1は温調機構4002の位置Phと重なる。
ここで、本実施の形態の流量測定部4010により流量が測定される原理について図80を参照して説明する。流路4001を流れる液体は温調機構4002による熱負荷パルスHLを受けて加熱され、昇温し始める。加熱パルスは矩形波、三角波、サイン波等が適宜に使用される。なお、熱負荷パルスHLの負荷時間は、0.001秒から100秒、好ましくは、0.01秒から10秒であり、更に好ましくは、0.1秒から1秒である。加熱された液体は流路4001を流れ、やがて第2の測定点P2を通過する。このとき、第2の温度センサ4004と第1の側温度センサ4004aの差分により温度カーブΔS2が検出される。そして、時間差測定部4009によりそのピークが判定され、熱負荷パルスHLの代表点の時間との時間差Δtが求められ、上述した式により液体の流量が算出される。なお、熱負荷パルスHLの代表点は、この例ではパルスの後端側の点を採用しているが、流体の温度上昇に対応する適当な点を、実験的に求めて採用すればよい。
図79に示すように、本実施の形態の制御弁4020では、ピストン4021に代えて円柱状のスプール4024が用いられている。このスプール4024は流路4001のT字路に配置されており、その先端は流路4001に摺動可能に嵌め込まれている。スプール4024の端部には磁性体(例えば鉄心)4025が取り付けられており、磁性体4025の周囲には電磁石4026が配置されている。電磁石4026と流路4001との間にはシール部材4027が配置されており、このシール部材4027により液体の漏洩が防止されている。磁性体4025は電磁石4026により形成された電磁力により駆動され、これによりスプール4024がその軸方向に沿って移動する。なお、このような構成を有する制御弁4020は、ソレノイドバルブ(電磁弁)と呼ばれている。
図81は図79に示すスプールの斜視図である。図81に示すように、スプール4024の側面には、斜めに延びる溝4024aが形成されている。溝4024aは三角形状の断面を有しており、その断面の大きさは軸方向位置に応じて変化する。すなわち、溝4024aの断面はスプール4024の先端において最も大きく、断面位置が反対側端部に向かうにしたがって徐々に小さくなる。液体はこの溝4024aを通って流れるので、スプール4024を軸方向に移動させることにより流量を調整することができる。この場合、スプール(弁)4024の開度αは、流路4001から突出した溝4024aの長さによって表すことができる。
本実施の形態の制御部4030は、ピストン駆動回路に代えて、スプール駆動回路4035を備えている。このスプール駆動回路4035は、比較部4033により演算されたスプール4024の開度を電流に変換し、この電流が電磁石4026に供給されることでスプール4024が移動する。このようにして、制御弁4020を通過する液体の流量が常に一定となるように制御部4030によって制御弁4020が制御される。なお、液体が高圧であっても正確に流量を一定とするために、大きな電磁力を発生させることができる電磁石を用いることが好ましい。
次に、本発明の第4の実施の形態について図82を参照して説明する。図82は本発明の第4の実施の形態に係る流量調整装置を示す模式図である。なお、特に説明しない本実施の形態の構成は、上述した第1の実施の形態の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図82に示すように、本実施の形態の制御弁4020は、ピストン4021に代えて逆三角錐形状のポペット4041を備えている。このポペット4041は、流路4001のT字路に位置しており、その先端が液体の流れに対向するように配置されている。ポペット4041にはシャフト4042が一体的に固定されており、このシャフト4042は有底円筒状のシャフトガイド4043に嵌合されている。シャフトガイド4043の外周面には歯車4044が設けられており、この歯車4044は、サーボモータ4045に連結された歯車4046と噛み合っている。シャフト4042は、キーやキー溝などの回転防止機構(図示せず)により回転しないように構成されている。なお、ポペット4041、シャフト4042、およびシャフトガイド4043とは同軸上に整列されている。
シャフトガイド4043と流路4001との間にはシール部材4047が配置されており、液体が流路4001から漏洩してしまうことが防止されている。シャフト4042の外周面には雄ねじ4042aが形成され、シャフトガイド4043の内周面には、雄ねじ4042aに噛み合う雌ねじ(図示せず)が形成されている。このような構成により、サーボモータ4045によりシャフトガイド4043を回転させると、ポペット4041がT字路の開口部に対して垂直方向に移動し、これによりポペット(弁)4041の開度αが調整される。なお、サーボモータの代わりにステッピングモータを使用してもよい。
本実施の形態の制御部4030は、ピストン駆動回路に代えて、ポペット駆動回路4048を備えている。このポペット駆動回路4048は、比較部4033により演算されたポペット4041の開度を電流に変換し、この電流がサーボモータ4045に供給されることでポペット4041が移動する。このようにして、第1の実施の形態と同様に、制御弁4020を通過する液体の流量が常に一定となるように制御部4030によって制御弁4020が制御される。なお、液体が高圧であっても正確に流量を一定とするために、大きなトルクを発生させることができるサーボモータまたはステッピングモータを用いることが好ましい。
なお、上述した実施の形態は、必要に応じて組み合わせることができる。例えば、第2の実施の形態に係る環境温度制御機構4011を第3および第4の実施の形態に組み込んでもよい。また、上述した実施の形態に係る流量調整装置は、液体のみならず気体の流量を測定し、かつ制御することもできる。
次に、上述した本発明の一実施の形態に係る流量調整装置を組み込んだ流体反応装置(マイクロリアクタ)について説明する。図83ないし図85(b)は本発明の一実施の形態に係る流量調整装置を組み込んだ流体反応装置の全体構成を示す図である。なお、以下に述べる流体反応装置は、2種類またはそれ以上の液体を混合し、反応させるために用いられる装置である。
図83,図84,図85(a),および図85(b)に示すように、流体反応装置は、全体が1つの設置スペースに設置されてパッケージ化されている。この構成例では、この設置スペースは長方形であり、長手方向に沿って4つの領域に区画される。すなわち、一端側の第1の領域は、原料液を貯留する複数の貯留容器4110(図83では2つの貯留容器4110A,4110Bのみを示す)が設置された原料貯留部4101であり、それに隣接する第2の領域は、貯留容器4110の原料液を移送するポンプ4116A,4116Bなどが設置された配液部4102となっている。第2の領域に隣接する第3の領域は、原料液を混同させる混合部(混合チップ)4140および混合された原料液を反応させる反応部(反応チップ)4142を有する処理部4103となっている。他端側の第4の領域は、処理の結果得られた生成物を導出して貯留する生成物貯留部(回収容器設置スペース)4104である。
また、この流体反応装置は、各部の動作の制御を行うコンピュータである動作制御部4106と、温度調整ケース4146に熱媒体を流して処理部4103の温度調整を行う熱媒体コントローラ4107を備えている。また、動作制御部4106には、図83に示すように、液体の流量と温度をモニタできる流量モニタ4270および温度モニタ4272が搭載されている。なお、この構成例では、動作制御部4106と熱媒体コントローラ4107は流体反応装置と別置きになっているが、勿論一体でも良い。図84に示すように、第2〜第4の領域の床下部分には配管4001A室4105が形成され、ここには混合部4140および反応部4142へ加熱又は冷却用の熱媒体を送るための配管4001Aが設けられている。
このように、上流側から下流側へと各部を配置することによって液体の流れを円滑にし、かつ装置全体をコンパクトにまとめることができる。この構成例では、各部の配列を直線状にしたが、例えば、全体が正方形に近いスペースであれば、各部を液体の流れがループを形成するように構成してもよい。
図84において、符号4250は装置下部に設けられた液溜めパンであり、符号4252は液溜めパン4250上に設置された漏液センサを示す。またこの装置例では、配液部4102、処理部4103、生成物貯留部4104は隔壁4254,4256により区画されており、各部にはカバー4258,4260,4262が取り付けられて装置外部とこれらを隔離している。
符号4264は排気ポートであり、図示しない排気ファンに接続されている。そして、装置内の圧力を装置外より負とすることで装置内の有毒ガスが外部に漏出することを防いでいる。
図83に示す原料貯留部4101には、2つの貯留容器4110A,4110Bが設置されているが、必要に応じて3つまたはそれ以上の貯留容器を使用してもよい。例えば、同じ液体を2つの貯留容器に収容し、これらを交互に切り換えて用いることにより、処理を継続的に行うことができる。なお、原料貯留部4101に、ライン洗浄用のアセトンなどの有機溶剤、塩酸、純水などが入った洗浄液容器4112や、パージ用の窒素ガスが封入された圧力源4114を設けてもよい。また、廃液容器4136を原料貯留部4101に置いてもよい。
配液部(導入部)4102には、貯留容器4110A,4110Bに輸送管4121A,4121Bを介して接続されたポンプ4116A,4116Bが設置されている。図83におけるポンプ4116A,4116Bには遠心式ポンプが使用されている。また、配液部4102は、ポンプ4116A,4116Bの下流側に配置された流量調整装置300A,300B、リリーフ弁4122A,4122B、圧力測定センサ4124A,4124B、流路切換弁4126A,4126B、および逆洗ポンプ4130を有している。流路切換弁4126A,4126Bは、輸送管4121A,4121Bの他に、洗浄液容器4112や、圧力源4114にそれぞれ接続されている。逆洗ポンプ4130は、混合部4140や反応部4142の流路内が生成物によって閉塞した場合に用いられる。逆洗ポンプ4130は洗浄液を貯留する洗浄液容器4112に接続され、さらに流路切換弁4132を介して反応部4142の出口に接続される。逆洗ポンプ4130により移送される洗浄液は通常の流れと逆に流れる。すなわち、洗浄液は、反応部4142の出口から混合部4140の入口に向かって流れ、流路切換弁4126A,4126Bを経て廃液口4134から図示しない配管4001Aを通って廃液貯留容器4136に入れられる。
逆洗ポンプ4130は吐出圧力が高く、洗浄液に脈動を起こさせて生成物を除去することが可能なように1本ピストン型のポンプが好ましい。洗浄液としては、有機溶剤、塩酸、硝酸、りん酸、有機酸、純水などが好適に用いられる。有機溶剤の例としては、アセトン、エタノール、メタノールなどが挙げられる。図83に示す導入口4240は、外部から純水や水素水を導入する場合に設けられたもので、洗浄液容器4112内の洗浄液の代わりに洗浄に使用できる。
図86は、原料液の予備加熱(予備温度調整)と混合を行うための混合部4140を示すもので、3枚の薄板状の基材である上板4144a、中板4144b、下板4144cが接合されて全厚さ5mmの混合部4140が形成されている。なお、以下に説明する流路はいずれも中板4144bの表面に形成された溝である。上板4144aを貫通して形成された2つの流入ポート4147A,4147Bは、中板4144bの上面に形成されたそれぞれ2つの予備加熱流路4148A,4148Bに連通する。これらの予備加熱流路4148A,4148Bはそれぞれ途中で分岐しかつそれぞれ拡大し、再度合流する。さらに、予備加熱流路4148A,4148Bはそれぞれ出口流路4150A,4150Bに連通し、これらの出口流路4150A,4150Bは合流部4152に通じている。出口流路4150Aは、中板4144bの上面に、出口流路4150Bは中板4144bの下面に形成されている。
図87は図86に示す合流部の拡大図である。図87に示すように、合流部4152は、出口流路4150A,4150Bに通じる円弧状の溝として中板4144bの上下面にそれぞれ形成されたヘッダ部4154,4155と、このヘッダ部4154,4155から円弧の中心に向かって延びる複数の分液流路4156,4157と、これらの分液流路4156,4157が合流する合流空間4158とを有している。分液流路4156,4157と合流空間4158は中板4144bの上面に形成され、分液流路4156,4157は交互に配置されている。下面側のヘッダ部4155と分液流路4157とは、中板4144bを貫通する連絡孔4157aにより連通している。合流空間4158は、下流側に向けて幅が徐々に小さくなるように形成され、中板4144bおよび下板4144cを貫通して形成された流出ポート4160に連通している。
図87に示す例では、合流空間4158の入口側の開口面4159において分液流路4156が5本、分液流路4157が4本、交互に配置されている。分液流路4156,4157からそれぞれ流出した2種類の液体は、合流空間4158内で縞状の流れを形成しつつ下流側に流れ、合流空間4158の流路幅が徐々に縮小するに従い、強制的に両液が混合される。この例では、合流空間4158の流路幅は最終的に40μmに達する。加工技術精度を上げれば、流路幅を10μmにすることも可能である。
図88(a)は図83に示す反応部を示す平面図、図88(b)は図88(a)に示す反応部の断面図である。この例では、2枚の基材4144d,4144eが接合されて厚さ5mmの反応部4142が構成されている。この反応部4142では、反応流路4162が蛇行しており、長い流路を効率的に提供している。反応流路4162は、入口ポート4164および出口ポート4165にそれぞれつながる連絡部4162a,4162cと、連絡部4162a,4162cに連通する蛇行部分4162bとを有しており、連絡部4162a,4162cの幅は狭く、蛇行部分4162bの幅が広く形成されている。したがって、出入口部分では液体が急速に流れ、副生成物の付着を防止しており、蛇行部分4162bでは緩やかに流れて、加熱と反応の時間を長く取ることができるようになっている。
図89(a)および図89(b)に示すのは、反応流路の幅が除々に小さくなる部分4163aと除々に大きくなる部分4163bを持つ反応部の他の構成例である。この反応部4142aには、基材4144d,4144eの間に、幅寸法が最大aから最小bの範囲で増減する反応流路4163が形成されている。幅寸法の増減に合わせ、深さを増減させてもよい。
この例では、反応流路4163の断面積が一定になるよう深さが最大cから最小dの範囲で変化するようになっている。
図89(c)は、反応流路の他の構成例を示す横断面図である。この反応部4142bでは、反応流路4163cは、その幅eが深さfより大きい扁平形状を有しており、熱触媒からの熱の伝達方向(矢印で表示)に交差する広い伝熱面を有するので、反応流路4163c内の液体に熱の伝達が有効に行われる。なお、合流空間4158や反応流路4162,4163に、適当な触媒を配置することは反応を促進するために有効である。このような触媒は反応の種類に応じて選択される。配置の仕方は、例えば、流路の内面に塗布したり、後述するような流路の障害物として配置することができる。
混合部4140および反応部4142の少なくとも流路を形成する素材としては、例えば、SUS316、SUS304、Ti、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス等の硬質ガラス、PEEK(polyetheretherketone)、PE(polyethylene)、PVC(polyvinylchloride)、PDMS(polydimethylsiloxane)、Si、PTFE(polytetrafluoroethylene)、PCTFE(Polychlorotrifluoroethylene)、およびPFA(perfluoroalkoxylalkane)の内から、耐薬品性、耐圧性、熱伝導性、耐熱性等を考慮して、好ましいものを選択する。混合部4140および反応部4142の接液部の材質は、表面からの溶出が少なく表面触媒修飾が可能で、ある程度の耐薬品性を持ち、−40〜150℃の広い温度範囲に耐えるものが望ましい。
図90は、混合部および反応部の温度を調整する温度調整ケースの構成を示す斜視図である。なお、以下の説明では、反応部4142の温度を調整する温度調整ケース4146についてのみ述べるが、混合部4140のための温度調整ケース4146も同様の構成を有しており、その重複する説明を省略する。温度調整ケース4146は、内部に反応部4142を収容する空間4170が形成されたケース本体4172と該空間4170を覆う蓋部4174とを備えており、これらの内面には、平行に延びる複数の熱媒体流路を構成する溝4176が形成されている。ケース本体4172には、溝4176に連通する給液路4178と排液路4180(図83参照)が形成され、これらの給液路4178と排液路4180はそれぞれ熱媒体コントローラ4107に接続されている。給液路4178は、蓋部4174の溝4176に開口4179を介して連通し、排液路4180も蓋部4174の溝4176に図示しない開口を介して連通している。この例では、溝4176を流れる熱媒体は反応部4142の表裏面に直接接触し、反応部4142は温度調整ケース4146に完全に収容された状態で加熱(または冷却)される。
図示しないが、熱媒体コントローラ4107には、熱媒体の温度を制御する制御機構と熱媒体を移送するポンプが内蔵されている。図83に示すように、熱媒体は熱交換器4182を通過後、混合部4140および反応部4142の温度調整ケース4146に供給されるようになっている。熱交換器4182は例えば冷却用の市水の量を変えることで混合部4140および反応部4142に供給される熱媒体の温度を独立に変えられるようになっている。
図91(a)ないし図91(d)には、温度調整ケース4146の他の例が示されており、ここでは、熱媒体流路4192はケース本体4172と蓋部4174のそれぞれの内部に形成されている。給液路4178は、図91(c)に示すように、給液配管4001A4188の先端が挿入された二重管の構成となっており、細い連通路4190を介して熱媒体流路4192に連通している。排液側も同様の構成である。図91(b)に示すように、混合部4140を収容する温度調整ケース4146と反応部4142を収容する温度調整ケース4146とは、ボルト4194、ナット4195およびスペーサ4196を介して積層して結合されている。
図91(b)には、温度調整ケース4146に収容された混合部4140および反応部4142への液体の供給・排出の経路が示されている。すなわち、それぞれの液体は、温度調整ケース4146を貫通して形成された流通路4198を介して混合部4140へ流出入する。また、混合部4140と反応部4142との間の液体の流通は、温度調整ケース4146の流通路4198を連絡する連絡通路4200を介して行う。図91(d)には、反応部4142の液の流入部と流出部の構造が説明されている。液の流れを下方向へ向かわせるために、通常は混合部4140および反応部4142の液の入口は上面に、出口は下面にそれぞれ形成する。
図83に示すように、反応部4142の流出口4202は、回収配管4001A4204を介して生成物貯留部4104に接続されている。生成物貯留部4104には、冷却用の熱交換器4206、流路切換弁4132の下流側に回収容器4208が設けられている。回収容器4208が置かれる生成物貯留部4104は、他の領域から温度等の影響を受けないように、また生成物から発生する可能性のある有毒ガスが外部に漏洩しないように隔離されている。
図92は、生成物貯留部4104の他の構成例を示すもので、複数の回収容器4208が回転テーブル4212上に設置されている。この例では、回収容器4208は2個であり、回転テーブル4212を移動させるアクチュエータ4214は4180度回転型ロータリーアクチュエータである。勿論、回収容器4208の数やアクチュエータ4214の種類は適宜に選択可能である。図83に示す動作制御部4106は、回収容器4208の液面を検知する液面検知センサ4211bからの信号により、回収容器4208の交換時期を判断し、流路切換弁4132(図83参照)により液流を止め、回収口4210の下流に設けた光学的流体検知センサ4211aにより液流の停止を確認して、アクチュエータ4214を作動させて他の回収容器4208を回収口4210の下方に移動させる。
次に、上記のように構成された流体反応装置により、薬液等の液体(原料液)を反応させる工程について説明する。なお、流体反応装置の動作は基本的に動作制御部4106によって自動制御される。まず、原料貯留部4101において、原料液を貯留した貯留容器4110A,4110Bに用意しておく。熱媒体コントローラ4107により熱媒体の温度を設定し、熱交換器4182を通過させる市水の量を調整して各熱媒体の温度をそれぞれ調整し、混合部4140および反応部4142の温度調整ケース4146へ熱媒体を流通させてこれらを所定の温度に維持する。熱媒体の温度は、温度調整ケース4146の入口に設けた温度センサ4216,4218により測定される。
この例では、原料液を処理部4103に供給する前に、混合部4140および反応部4142内の流路に純水等の洗浄液を流して予め洗浄する。流路を洗浄している間、洗浄液の温度を混合部4140の出口の温度センサ4220および反応部4142の出口の温度センサ4222で測定し、洗浄液の温度を熱媒体コントローラ4107にフィードバックする。このようにして、混合部4140および反応部4142を所定の温度に調整する。
混合部4140および反応部4142の温度が調整され、流路の洗浄を終えてから、流路切換弁4132を切り換え、ポンプ4116A,4116Bを駆動して、貯留容器4110A,4110B内の原料液をそれぞれ移送する。原料液は、流量調整装置4300A,4300Bにより所定の流量に調整され、その後、混合部4140、反応部4142、流出口4202、回収口4210を経て回収容器4208に至る。なお、流路切換弁4132はアクチュエータにより作動する自動弁としており、この動作は自動運転も可能である。
混合部4140においては、原料液は予備加熱流路4148A,4148B(図86参照)において所定の温度に加熱された後、合流部4152において合流し、混合する。その際、各液は、図87に示すように、ヘッダ部4154,4155から分液流路4156,4157を経由して合流空間4158に流入する。合流空間4158の断面は下流へ向かうに従い徐々に減少するので、マイクロサイズの流れが規則的に混在し、フィックの法則に則って迅速に混合する。その状態で、所定の温度に維持された反応部4142の反応流路4162に流入すると、反応は、物質移動や熱伝導の制約を受けずに迅速に進行する。したがって、量産手段として充分実用的であるとともに、反応速度の早い爆発性の反応でも低温下で行う必要がなくなる。また、この例では、反応流路4162の幅が合流空間4158の幅に比べて充分広く形成されているので、反応速度が遅い場合でも充分な時間をかけて行うことができ、高い収率を得ることができる。
得られた生成物は、反応流路4162の流出口4202から回収配管4001A4204を経由して熱交換器4206に送られ、ここで冷却されて、回収口4210より回収容器4208に流入する。貯留容器4110A,4110Bが空になったり、回収容器4208が満杯になったら、動作制御部4106によりポンプ4116A,4116Bの運転を停止させて処理を終了させる。この場合、貯留容器4110A,4110Bの他に、追加の貯留容器を原料貯留部4101に予め用意しておけば、流路切換弁4126A,4126Bを切り換えることにより、運転を停止させることなく連続的な処理が可能である。なお、反応に時間が掛かる場合には、混合部4140および反応部4142内に液を一定時間閉じ込めてバッチ運転することも可能である。流路切換弁4126A、4126Bも自動弁であるのでこれらの動作は自動運転も可能である。
バッチ運転の方法は、ポンプ4116A,4116Bを一時停止してもよいし、流路切換弁4126A,4126Bを切り換えて、処理部4103への液体の流入を停止させてもよい。これにより、液体の反応時間が長い場合でも反応流路4162の長さを長くする必要がなくなる。バッチ運転の際は、合流空間4158および/または反応流路4162に液体が充満されたことを検知する充満検知手段を用いて運転制御を行うことが好ましい。これは、例えば、図92に示すような光学的流体検知センサが用いられる。これにより、合流空間4158および/または反応流路4162に液体が充満されたと判断した時点で、ポンプ4116A,4116Bを停止させまたは第1の流路切換弁を切換え、液体を反応終結時間に適応する一定時間合流空間4158および/または反応流路4162に滞留させておく。
なお、本発明に係る流量調整装置4300A,4300Bによれば、液体の流量を正確に測定することができるので、測定された流量と液体の供給時間から液体の供給量を求めることができる。したがって、動作制御部4106は液体の供給量に基づいて生成物の生成量を調整することができ、また流体反応装置の動作を制御することができる。例えば、液体の供給量が所定の値に達したときに動作制御部4106がポンプ4116A,4116Bの運転を停止させる、または流路切換弁4126A,4126Bを切り換えるようにしてもよい。このように、本発明に係る流量調整装置を流体反応装置に組み込むことにより、動作制御部4106は液体の供給量に基づいて流体反応装置の各部の動作を制御することができる。
図93(a)および図93(b)は、混合部4140における合流部の他の構成例を示すものである。この合流部4152aは、Y字状の合流空間4158aに、障害物4224を一定間隔aで所定の距離Lに亘って配置したものである。この例では、直径50μm以下である柱状の障害物4224を、合流点からL=5mmに亘って配置した。図93(b)に示すように、各障害物4224は隣接するものが流れ方向にピッチの半分だけずれるように、千鳥状に配置されている。これによって液体Aおよび液体Bの界面4125が蛇行するので2つの液体の界面面積(接触面積)を大きくすることができる。図94に示す合流部4152bでは、合流空間4158bの中央部に一列の障害物4224を流れ方向に沿って千鳥状に配置したもので、同様に界面面積を大きくすることができる。これは、狭い合流空間4158bで採用するのに好適である。
図95は、流体反応装置の処理部4103の他の構成例を示すものである。これは、図83の処理部4103において、混合部4140と反応部4142との組み合わせをそれぞれ有する2系統R1,R2設け、さらに配液部4102の流路切換弁4126A,4126Bを用いて2種類の原料液をいずれの系統R1,R2にも供給可能にしたものである。このように、2系統を用いることで、必要に応じて処理量を増やすことができるが、その他にも種々の使用方法が有る。例えば、反応生成物が固体粒子を析出しやすく、配管4001A途中で詰まりやすい場合などでは、一方の系統を予備として使用する。また、流路切換弁4126A,4126Bで移送ラインを交互に切り換えて、上述したバッチ運転を連続的に行うことができる。勿論、3系統以上の移送ラインを適宜に並列して設けることができる。この場合も流路切換弁4126A,4126Bは自動操作が可能である。
図96は、処理部4103において反応部を複数直列に配置した例を示す。この例では、1つの混合部4140と3つの反応部4142a,4142b,4142cが直列に接続されており、それぞれに温度センサ4220,4222a,4222b,4222cが設けられている。この例では、反応の段階に応じて反応部4142a,4142b,4142cを独立して温度制御することが可能となっている。この構成は、生化学反応のように反応時間と反応温度を大胆に且つ瞬時に変化させたい反応に適している。たとえば反応部4142aでは100℃で反応させ、反応部4142bでは−20℃で反応させるというような反応もこのシステムでは可能になる。
図97は、処理部4103において混合部を複数設けた例である。この構成例では、A液とB液を混合し反応させる第1の混合部4140および反応部4142が設けられ、この反応部4142の下流側に第2の混合部4140aが設けられている。この混合部4140aではポンプ4116Cから輸送された第3の原料液または反応剤であるC液がA液とB液と合流し、混合する。これらの2つの混合部4140,4140aと1つの反応部4142の温度は個別に制御される。なお、C液は反応停止剤でもよい。
この構成例では、インライン収率評価器4226が第2の混合部4140aの流出口4202に直接接続されている。これにより、化学反応の結果の収率をリアルタイムで確認でき、直ぐにプロセスパラメータへフィードバックすることが可能となる。インライン収率評価器4226としては、被測定物を分離せずに測定可能な方法として赤外分光、近赤外分光、紫外吸光等の方法がある。
この構成例では、さらに、反応生成物の中から不要な物質と必要な物質を分離する分離抽出部4228が第2の混合部4140aの下流側に設けられている。図示するように、分離抽出部4228は、Y字形の分離流路4234を有している。第2の混合部4140aからの液体は分離流路4234により2つの流れに分岐され、1つは物質内の疎水性分子のみを通過させる疎水性壁面4230から形成された流路に、他方は物質内の親水性分子のみを通過させる親水性壁面4232から形成された流路に流れ込む。分離した物質は、それぞれ回収配管4001A4204,4204aを介して回収容器4208,4208aに回収される。分離抽出部4228としては、その他に、疎水性物質だけを吸着可能な膜やポーラスフリットを使用することも考えられる。
図98は、混合・反応と分離抽出を繰り返して連続処理するための構成例である。すなわち、A液とB液を処理する混合部4140a、反応部4142a、および分離抽出部4228aが上流側に配置され、分離抽出部4228aから抽出された液体とC液を処理する混合部4140b、反応部4142b、および分離抽出部4228bが下流側に配置されている。A液とB液が反応した後の不要物質は分離抽出部4228aの排出口4234aから系外に出され、C液を加えた第2の反応における不要物質は分離抽出部4228bの排出口4234bから系外に出される。さらに、分離抽出部4228bから抽出された液体と第4の液であるD液を混合させる混合部4140cが設けられている。なお、D液は反応停止剤でもよく、他の原料溶液でも良い。混合部4140cの下流側にインライン収率評価器4226を設けても良い。
図99(a)には、図98の各部を積層化した構成が示されている。液体は下方へ流れる。混合部4140a、反応部4142a、分離抽出部4228a、混合部4140b、反応部4142b、分離抽出部4228b、および混合部4140cは、温度調整ケース4146にそれぞれ収容され、さらにボルト4194、ナット4195、スペーサ4196によって所定の間隔をおいて積層化されている。各部間の液の移動は連絡通路4200(図86(b)参照)を介して行われる。各部の間には空気を介在させ、空気の断熱性を利用して他の部の熱影響を受けないようにして、温度制御の精度を向上させている。図99(b)に示すように、各温度調整ケース4146の周りを気泡を含んだクリーンなシリコン部材4236等の断熱材で覆うのが好ましい。
この流体反応装置に導入される流体は液体、気体であり、回収される物質は液体、気体、固体またはこれらの混合体である。導入物質が粉体などの固体の場合は原料貯留部4101に粉体溶解器を設置することも可能である。図100は、2つの原料液のうち、一方が粉体を溶解した溶液、他方は元々液体の場合の原料貯留部4101の構成例である。原料の粉体と溶媒は粉体溶解器4240の原料導入口4242から導入される。この例では、原料粉体をヒータ4244による加熱と攪拌器4246による攪拌によって溶解し、生成した原料液を、取出し口4148に引き込まれた配管4001A4249より、ポンプ4116Aによって、混合部4140および反応部4142に送り込むようになっている。
このように、本発明に係る流量調整装置は、微小空間で流体を混合させ反応させる流体反応装置(マイクロリアクタ)に好適に用いることができる。本発明は、今まで述べた実施の形態に限定されるものではなく、また図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。
プランジャポンプ装置
本発明は、さらに、本発明の流体反応装置及び流体混合装置において使用することができるプランジャポンプ装置にも関する。
上述した目的を達成するための本発明は、これに限定されるものではないが、以下の発明を包含する。
(1) プランジャポンプ装置であって、一対のプランジャポンプを並列に接続したプランジャポンプ装置において、前記各プランジャポンプのプランジャをそれぞれが交互に前進するように連動させるカム機構と、前記各プランジャをその後退時に前記カム機構に向けて押圧する流体圧装置と、前記流体圧装置の動作を前記プランジャの動作サイクルに応じて制御する制御部とを有することを特徴とするプランジャポンプ装置。
(1)に記載の発明においては、カム機構が各プランジャポンプのプランジャを交互に前進させ、一方、流体圧装置が各プランジャをカム機構に向けて押圧するので、プランジャはカム機構で位置決めされつつ前後進し、ポンプ動作を行う。流体圧装置の動作は、制御部によってプランジャの動作サイクルに応じて制御されるので、カム機構との不必要な干渉を排除することができる。
(2) (1)に記載の発明において、前記制御部は、各プランジャの前進時において、前記流体圧装置による押圧を停止させることを特徴とするプランジャポンプ装置。
(2)に記載の発明においては、各プランジャの前進時において、カム機構と流体圧装置との不必要な干渉が排除される。
(3) (1)又は(2)に記載の発明において、前記一対のプランジャポンプはそれぞれ吐出動作の初期と終期において増速過程と減速過程をそれぞれ行い、一方の増速過程と他方の減速過程が互いに重なるようにタイミングが設定されていることを特徴とするプランジャポンプ装置。
(3)に記載の発明においては、一対のプランジャポンプの吐出量の総和が一定に維持される。
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載の発明において、前記各プランジャポンプは、前進と後退の間に一定の停止過程を行なうことを特徴とするプランジャポンプ装置。
(4)に記載の発明においては、各プランジャポンプが前進と後退の間に一定の停止過程を行なうので、各プランジャポンプにおける流れや弁の動作が安定してから次の動作が始められる。
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
図101は、この発明の実施の形態の2連式のプランジャポンプ装置を示す図であり、例えば、マイクロリアクタに薬液を連続的に定流量で吐出する目的で使用される。このプランジャポンプ装置は、同一構造の一対のプランジャポンプ5010から構成されている。各プランジャポンプ5010は、シリンダ5012と、シリンダ5012内を摺動可能に設けられたプランジャ5014と、これらを往復移動させる駆動手段とを有している。シリンダ5012の内部には、この空間を2つに分割する隔壁5016が設けられており、ここでは、一方(この図では右側)をポンプ空間5018、他方(この図では左側)をアクチュエータ空間5020と称する。
各プランジャ5014は、ポンプ空間5018に配置された円板状のピストン5022と、これに連結されたロッド5024により構成され、ロッド5024は、隔壁5016およびアクチュエータ空間5020の端部壁5020aを挿通して、シリンダ5012の外部へ突出している。ポンプ空間5018は、ピストン5022によって端部側のポンプ室5026と隔壁5016側のバッファ室5028に区画され、ピストン5022とシリンダ5012の内壁との間にはシール構造が設けられている。ポンプ室5026の端部壁5026aには、吐出ポート5030および吸込ポート5032とが設けられ、これらはそれぞれ逆止弁5034,5036を介して吐出ライン5038および流体タンク5040につながる供給ライン5042に接続されている。これにより、薬液等の流体は、プランジャ5014の後退動作(図101において右への移動)によって吸込ポート5032からポンプ室5026に吸い込まれ、プランジャ5014の前進動作(図101において左への移動)によって吐出ポート5030から吐出されるようになっている。プランジャ5014をはじめとする接液部の材質は、腐食性や浸食性の薬液を扱う場合には、それに対応することができることが好ましく、例えば、サファイヤ、ルビー、アルミナ、セラミック、SUS、ハステロイ、チタン等を適宜に用いる。
このプランジャポンプ装置には、2種類の駆動手段が設けられている。第1の駆動手段は、シリンダ5012の外側に設けられたカム機構5050であり、各プランジャポンプ5010のプランジャ5014を交互に前進させるように連動させる。このカム機構5050は、カムシャフト5052を一定速度で回転させる駆動モータ5054と、カムシャフト5052に一体に設置された一対の板カム5056と、各プランジャ5014のロッド5024の外端部に設けられたローラ(カムフォロワ)5058とから構成されている。板カム5056は所定形状の外形を有しており、回転に伴ってローラ5058との接触位置が変化することにより、ロッド5024が所定の変位パターンで往復動作するようになっている。
第2の駆動手段は、シリンダ5012のアクチュエータ空間5020に形成された流体圧装置5060(エアシリンダ)である。すなわち、各ロッド5024の中央部には圧力板5062が設けられ、圧力板5062と隔壁5016の間に圧力空気室5064を形成している。圧力空気室5064には、圧力空気導入用のポート5066が設けられ、これはソレノイド弁である空気制御弁5068を介して圧力空気源5070とドレン5072に切り換え可能に接続されている。圧力板5062とアクチュエータ空間5020の端部壁5020aとの間の空間は、端部壁近傍の開口5074を介して外部空間に通じている。また、バッファ室5028は、隔壁5016近傍のポート5076および空気制御弁5068を介してドレン5072に通じており、万一ピストン5022とシリンダ5012内壁の隙間から流体がリークした場合でも外部に流出しないようになっている。
空気制御弁5068は、ソレノイドが非励磁の状態の第1の切換位置では、図101において上側のプランジャポンプ5010について示すように、圧力空気室5064およびバッファ空間のいずれもドレン5072に接続され、プランジャ5014はニュートラルの状態となる。一方、ソレノイドが励磁状態の第2の切換位置では、図101において下側のプランジャポンプ5010について示すように、圧力空気室5064が圧力空気源5070に接続され、バッファ空間はドレン5072に接続された状態となる。従って、プランジャ5014はポンプ室5026を拡大する方向に(図101において左方向に)押される。このように、ピストン5022と圧力空気室5064、ソレノイド弁、および加圧空気源によって、一方向のみ動作するエアシリンダ5060が構成されている。圧力空気源5070の空気圧は例えば3〜5kg/cm2程度に設定する。
これらの2つの駆動手段を連動させて制御するために、制御部5080が設けられている。カムシャフト5052にはエンコーダが設けら、その出力は制御部5080に入力されている。これによりカムシャフト5052の回転位置情報、すなわち各プランジャ5014の往復動作位置情報が制御部5080に入力されるようになっている。制御部5080は、このエンコーダ5082により与えられるプランジャ5014の往復動作位置情報に基づいて、空気制御弁5068のソレノイドのオンオフを切り換え、エアシリンダ5060の動作を制御する。
以下、上記のように構成されたプランジャポンプ装置の動作について説明する。
まず、1つのプランジャポンプ5010の動作について説明する。図102において線Aは、カムシャフト5052を一定回転速度で回転させた場合のプランジャ5014の速度線図であり、横軸はカムシャフト5052の回転角度を、縦軸はプランジャ5014の速度(+は前進方向、−は後退方向)をそれぞれ示す。吐出量はプランジャ5014の速度に比例するので、縦軸は吐出量をも表す。また、横軸は時間軸でもある。線Bはカム機構5050によるプランジャ5014の押圧状態を、線Cはエアシリンダ5060のオンオフを、線Dはポンプ室5026の容積変化を、それぞれ表す。
回転角度0〜15度の範囲において、板カム5056の当接面は一定の加速度で所定の値(定常吐出速度)まで速度を上昇させつつ前進し、以降は15〜180度の範囲においてその定常吐出速度で前進する。この間、空気制御弁5068は非励磁の状態の第1の切換位置にあるので、プランジャ5014はニュートラルであり、プランジャ5014には線Bに示すように板カム5056からの力だけが作用し、プランジャ5014は、線Aに示すように前進して吐出動作を行う。さらに回転角度180〜195度の範囲において、プランジャ5014は一定の比率で0まで速度を低下させた後、回転角度195〜210度の範囲において速度は0となり吐出動作は停止される。
回転角度0〜210度の間においては、線Cに示すように、プランジャ5014はニュートラルであり、カム機構5050はプランジャ5014がポンプ動作を行うだけの仕事をすれば良い。上記のように、吐出動作において増速過程(回転角度0〜15度)と減速過程(回転角度180〜195度)がちょうど180度ずれている。また、吐出の全工程は回転角度0〜195度の範囲で行われる。
次に、回転角度210〜225度の範囲において、板カム5056の当接面は一定の加速度で所定の値(定常吸込速度)まで速度を上昇させつつ後退する。一方、エンコーダ5082が回転角度210度を検出した時に、制御部5080は空気制御弁5068のソレノイドを励磁し、空気制御弁5068は第2の切換位置となって、圧力空気室5064に圧力空気が送られる。この結果、エアシリンダ5060が作動状態となって、プランジャ5014をカム機構5050に向けて押圧し、後退する板カム5056に追随させて移動させる。エアシリンダ5060の圧力はプランジャ5014が流体の吸込動作を行うのに充分な値に設定されているので、プランジャ5014により吸込動作が行われる。カム機構5050の剛性やモータ5054の駆動力はエアシリンダ5060による押圧力に耐えられるように設定されており、プランジャ5014後退時におけるカム機構5050の位置決め機能が損なわれることはない。
以降、回転角度225〜330度の範囲においてプランジャ5014は定常吸込速度で後退して吐出動作を行う。さらに回転角度330〜345度の範囲において、プランジャ5014は一定の比率で0まで速度を低下させた後、回転角度345〜360度の範囲において速度が0となり、吸込動作は停止される。図101から明らかなように、吸込の時間の方が吐出の時間より短いので、定常吸込速度は定常吐出速度より大きくなる。
上記の工程において、吐出動作の後(回転角度195〜210度の範囲)と吸込動作の後(回転角度330〜345度の範囲)にそれぞれ停止過程を設けている。従って、吐出ポート5030又は吸込ポート5032の逆止弁5034,5036の閉動作が確実に行われてから、あるいはこの部分での流れが落ち着いてから次の吸込又は吐出の動作が始まるので、逆止弁5034,5036からの逆流等による脈動が防止される。
次に、プランジャポンプ装置の全体の動作を、図103を参照して説明する。なお、図103においては、各過程の比率は誇張されている。また、過程の説明は実線で示したプランジャポンプ5010についてされている。
2つのプランジャポンプ5010は、共通のカムシャフト5052に位相が180度異なるように取り付けられた2つの板カム5056により駆動されている。つまり、これらの動作は位相が180度異なっている。プランジャポンプ装置全体の吐出量は並列接続された各プランジャポンプ5010の和となって、図103の2点鎖線で表される。先に説明したように、吐出動作において増速過程(回転角度0〜15度)と減速過程(回転角度180〜195度)がちょうど180度ずれており、これらにおける増速率と減速率が等しいので、これらのプランジャポンプ5010の吐出量の和は一定となり、動作の切り換えの際に脈動が生じないようになっている。
さらに、このプランジャポンプ装置では、プランジャ5014が常にカム機構5050に接触しているので、板カム5056の当接面によってプランジャ5014が確実に位置決めされる。従って、吐出量が高い精度で制御され、この点でも、脈動を抑制することができる。
また、カム機構5050に対してプランジャ5014を押しつけるために、オンオフ動作が可能な第2の駆動手段を用いているので、カム機構5050による前進動作の際にはこれをオフにすることで、カム機構5050の負荷を減らすことができる。従って、カム機構5050の駆動装置であるモータ5054等のアクチュエータのコストを低減させるとともに、これらの部材の当接部における摩擦を軽減して、長寿命を可能としている。
図104は、この発明の他の実施の形態を示すもので、カム機構5050Aが板カム5056ではなく端面カム5056Aを用いたものである。これの動作は、基本的に前述した実施の形態と同様なので、説明を省略する。
以上、本発明を具体例を挙げながら詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。例えば、流体圧装置の作動源としては、圧力空気ではなく、圧力液体でもよい。
プランジャポンプ装置
本発明は、さらに、本発明の流体反応装置及び流体混合装置において使用することができるプランジャポンプ装置にも関する。
上述した目的を達成するための本発明は、これに限定されるものではないが、以下の発明を包含する。
(1) プランジャポンプ装置であって、それぞれ個別の駆動装置を有し、液体源とマイクロリアクタ流路間において並列に接続された一対のプランジャポンプと、前記マイクロリアクタ流路内に設置された流量計と、前記一対のプランジャポンプを交互に一定の所定送り速度で吐出動作させる制御部を備え、前記制御部は、前記プランジャポンプが吐出動作しているときの前記流量計の測定値に基づいて、所定のタイミングで前記送り速度を調整することを特徴とするプランジャポンプ装置。
(1)に記載の発明においては、プランジャポンプが吐出動作しているときの流量計の測定値に基づいて、所定のタイミングで送り速度が調整されるので、複雑な制御手段を用いることなく、プランジャポンプの吐出量の精度を維持することができる。流量計による測定値は、所定の時間の平均値として求めることが望ましい。プランジャポンプを個別に調整するようにしてもよく、その場合には測定も個別に行うこととする。
(2) (1)に記載の発明において、前記マイクロリアクタ流路内に設置された圧力センサを備え、前記制御部は、前記圧力センサの出力値に基づいて前記送り速度を微調整することを特徴とするプランジャポンプ装置。
(2)に記載の発明においては、マイクロリアクタ流路内に設置された圧力センサの出力値に基づいて送り速度が微調整されるので、種々の原因による脈動が抑制される。
(3) (1)又は(2)に記載の発明において、前記制御部は、前記一対のプランジャポンプを、それぞれが吐出動作の初期と終期において増速過程と減速過程を行い、一方の増速過程と他方の減速過程が互いに重なるようにして流量を一定のまま切換制御することを特徴とするプランジャポンプ装置。
(3)に記載の発明においては、一方のプランジャポンプから他方のプランジャポンプへの移行が、流量を一定としたまま行われる。
(4) (3)に記載の発明において、前記切換制御時には、前記送り速度の微調整を一方のプランジャポンプについてのみ行うことを特徴とするプランジャポンプ装置。
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の発明において、前記制御部は、前記プランジャポンプが前進と後退の間に一定の停止過程を行うように制御することを特徴とするプランジャポンプ装置。
(5)に記載の発明においては、各プランジャポンプが前進と後退の間に一定の停止過程を行うので、各プランジャポンプにおける流れや弁の動作が安定してから次の動作が始められる。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載の発明において、前記プランジャポンプのプランジャの位置を検出する位置センサを備え、前記制御部はこの位置センサの出力に基づいて送り速度を制御することを特徴とするプランジャポンプ装置。
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
図106は、この発明の実施の形態の2連式のプランジャポンプ装置を示す図であり、例えば、マイクロリアクタに薬液を連続的に定流量で吐出する目的で使用される。このプランジャポンプ装置6001は、同一構造の一対のプランジャポンプ6010から構成されている。各プランジャポンプ6010は、シリンダ6012と、シリンダ6012内を摺動可能に設けられたプランジャ6014と、これらを往復移動させる駆動装置6019と、各部を制御する制御部6028とを有している。
各プランジャ6014は、円板状のピストン6016と、これに連結されたロッド6018により構成され、端部化への間にポンプ室6017を形成している。ロッド6018は、端部壁を挿通して駆動装置6019に連結されている。駆動装置6019は、この実施の形態では、モータ6020により回転駆動される送りねじ6022と、これに螺合するナット6024を有しており、ナット6024はロッド7018の端部に固定されている。送りねじ6022とナット6024の間にはボール(ベアリング)が介在しており、ボールねじと呼ばれる円滑かつ高精度の直動機構が構成されている。また、ナット6024の位置を検出するリニアスケール(位置センサ)6026が設けられ、その出力は制御部6028に送られている。制御部6028はこの出力に基づいてモータ6020の回転をフィードバック制御し、プランジャ6014の位置や送り速度を正確に制御することができる。
ピストン6016とシリンダ6012の内壁との間にはシール構造が設けられている。ポンプ室6017の端部壁には、吐出ポート6030および吸込ポート6032とが設けられ、これらはそれぞれ逆止弁6034を介して吐出ライン6036又は流体タンク6038につながる供給ライン40に接続されている。これにより、薬液等の流体は、プランジャ6014の後退動作(図106において左への移動)によって吸込ポート6032からポンプ室に吸い込まれ、プランジャ6014の前進動作(図106において右への移動)によって吐出ポート6030から吐出されるようになっている。プランジャ6014をはじめとする接液部の材質は、腐食性や浸食性の薬液を扱う場合には、それに対応することができることが好ましく、例えば、サファイヤ、ルビー、アルミナ、セラミック、SUS、ハステロイ、チタン等を適宜に用いる。
図107に示すように、2つのプランジャポンプ6010の吐出ポート6030は合流し、マイクロリアクタ6002の原料受入ポート6042に接続される。このマイクロリアクタ6002では、2つの原料受入ポート6042が設けられ、これらは導入流路6044を経由して混合・反応部50において合流する。導入流路6044には、それぞれ流量計6046と圧力センサ6048が設けられており、これらの出力は制御部6028に入力され、後述するような制御に用いられる。なお、図107では制御部6028は各プランジャポンプ装置6001ごとに設けられているが、もちろん1つの制御部6028を共有するようにしてもよい。また、これらの制御部6028を例えばマイクロリアクタ6002の制御装置と連結して統合制御するようにしてもよい。
以下、このような構成のプランジャポンプ装置6001の動作を説明する。制御部6028は、プランジャポンプ6010を、2つの制御方法、すなわち予め決められたパターンに沿って制御するパターン制御と、センサの測定値に基づいて制御するフィードバック制御を組み合わせて用いる。これらはいずれもプランジャ6014の送り速度を制御するものであるが、基本的にはパターン制御が主であり、フィードバック制御は従である。これについて概念的に説明すると、全体の制御関数Fは、時間tの関数であるパターン制御関数F1(t)と、測定圧力pの関数であるフィードバック制御関数F2(p)によって、
F=F1(t)[1+F2(p)] (式1)
で表される。すなわち、圧力変動が無い場合にはF=F1(t)のパターン制御のみであり、圧力変動がある場合にはそれがF2(p)の比率で変動する。F2(p)がどの程度の寄与をするかは、その関数の設定の仕方により決められるが、例えば、最大で10%程度とするのが好ましい。
図108及び図109は、パターン制御について説明するものである。図108は個々のプランジャポンプ6010の動作を示すもので、線Aは、プランジャ6014が1往復する際の速度線図である。横軸は時間を1周期を360度として表し、縦軸はプランジャ6014の速度(+は前進方向、−は後退方向)をそれぞれ示す。吐出量はプランジャ6014の速度に比例するので、縦軸は吐出量をも表す。また、線Bはポンプ室6017の容積変化を表す。図109は、2つのプランジャポンプ6010が位相を180度ずらせた状態で動作している状態を示す。
これらの図から分かるように、2つのプランジャポンプ6010は吐出過程の初期と終期において、一方は増速過程、他方は減速過程を行うように重複動作している。これにより、この切換過程では総流量が一定となるように制御されつつ、吐出動作を行うプランジャポンプ6010が切り換えられる。また、各プランジャポンプ6010の吐出動作の後と吸込動作の後にそれぞれ短時間の停止過程が設けられている。従って、吐出ポート6030又は吸込ポート6032の逆止弁6034,6036の閉動作が確実に行われてから、あるいはこの部分での流れが落ち着いてから次の吸込又は吐出の動作が始まるので、逆止弁6034,6036からの逆流等による脈動が防止される。
このパターン制御では、吐出時の定常送り速度Vcは必要な吐出量及び次の式に基づい
て決められ、これにより当初のパターン関数P(t)が設定される。
流量L=プランジャ6014断面積S×プランジャ6014送り速度V (式2)
しかしながら、実機では計算と異なる場合が有り、使用による経時変化も有る。そこで、この設定値を実測値によって調整する作業を行う。これは、定常的に行うのではなく、適当なタイミングと頻度で行う。定常的にフィードバック制御しても、流量センサの応答速度が低いので効果が無く、プランジャ6014の特性からして、適時の調整で充分と考えられるからである。タイミングと頻度は任意であるが、例えば、始動時に行う、一定の稼動時間経過ごとに行う、あるいはこれらを組み合わせる等が挙げられる。
この調整過程について、図110のフロー図と、図111の各測定値の変化を示すグラフを参照して説明する。なお、図111(a)は、マイクロリアクタ6002流路に設置した流量計6046の測定値の変化の一例を、(b)は圧力センサ6048の出力値の変化の一例を、(c)はプランジャ6014の送り速度の変化の一例をそれぞれ示すものである。
まず、制御部6028は、調整作業のタイミングかどうかを判断する(ステップ1)。これは、例えば、始動時にその指令信号の有無を検出する、あるいはタイマーから所定時間稼動したことを知らせる信号の有無を検出することにより行う。そのタイミングであれば、
まず第1のプランジャポンプ6010のみが吐出動作をしている時の流量を測定する(ステップ2)。ここでは、ある時点での瞬間的流量ではなく、所定の時間の平均流量を算出する。1つのサイクルでなく、幾つかのサイクルにおける1つのポンプの流量の平均値を用いるようにしてもよい。
次に、測定した流量と規定流量の差ΔLを算出し、これが事前に設定した許容上限値より大きいかどうかを判断する(ステップ3)。図111(a)に示すように、設定した上限値より大きい場合には、それに対する送り速度の調整量を算出し(ステップ4)、算出値に
基づいて調整を行う(ステップ5)。調整量ΔVの算出は、式2に基づく以下の式を用いる。
送り速度調整量ΔV=流量差ΔL/プランジャ断面積S (式3)
ステップ3においてΔLが許容上限値より小さい場合には調整を行わない。次に、第2のポンプについて同じように測定ないし調整動作を行い(ステップ6〜ステップ9)、調整作業を終了する。このようにして新たな定常送り速度Vcが決められ、これに沿って切換過程の勾配等を調整した新たなパターン関数P(t)が決定される。これにより、実機での正確な流量出力が簡単な制御手法で達成される。
この実施の形態では、プランジャポンプ6010ごとに調整を行っているので、2つのプランジャポンプ6010や流路の特性に差が有る場合でも、常に流量変動が無い送液を行うことができる。なお、プランジャポンプ6010ごとに差が無い場合には2つを同じパターン関数で制御するようにしてもよい。この場合は、ステップ6〜ステップ9は省略する。ステップ2において、2つのポンプの吐出動作の流量を測定し、これを平均して測定値とするのが好ましい。
次に、マイクロリアクタ6002の流路に設置した圧力センサ6048の測定値に基づいて送り速度をフィードバック制御する場合を、図111及び図112を参照して説明する。これは、送り速度全体の制御関数を、以下に再掲する式1のように設定して行う。
F=F1(t)[1+F2(p)] (式1)
F(p)の実際の形は、例えば、実験と理論的な解析を併用してPID制御の係数を求めることにより得られる。
圧力は流路の長さや形状などで変わるが、一定の流量が保たれていれば圧力は一定になる。このため、圧力の変化は流路内流量変動を表すから、これをフィードバック制御すれば流量変動を抑えることができる。また、圧力センサ6048の応答は一般的な流量計6046と比べて、速くかつ高精度であるため、流量の変動を抑えるには好適である。なお、2つのポンプが動作する切換過程では、各ポンプの制御関数において、P(t)の部分は一方が増加し、他方が減少することで総流量が維持される点が異なるが、フィードバック制御の意味は同じである。
この実施の形態のプランジャポンプ装置6001では、プランジャ6014の送りがメカニカルな誤差によりずれたり、流体内に気体が混入したり、チェック弁動作が不安定になったりした場合などに生ずる脈動を打ち消すように吐出量をコントロールすることが出来る。例えば、図111(b)においてケース1は定常送り中の圧力変動を、ケース6002は定常送り中の圧力変動を、それぞれ示すが、これを検出して送り速度を同図(c)のようにフィードバック制御することで、圧力変動は抑制され、吐出量の変動も同図(a)に示すように抑制される。
なお、上記の実施の形態においては、図112(a)に示すように、1台が吐出を行う定常吐出過程時、及び2台が吐出を行う切換過程時のいずれにおいても、常時圧力センサ6048によるフィードバック制御を行うようにしたが、2つのプランジャに同じ制御を同時に行うと制御が不安定になる等の不具合が起きる場合が有る。そこで、図112(b)に示すように、切換過程においては、一方のポンプのみに圧力フィードバック制御を行うようにしてもよい。この例では、切換過程において増速過程にあるポンプについて圧力フィードバック制御を行っているが、逆でもよい。また、図112(c)に示すように、吐出量の多い方のポンプのみに圧力フィードバック制御を行うようにしてもよい。
次に、上述した本発明の一実施形態に係る流量調整装置を組み込んだ流体反応装置(マイクロリアクタ6002)について説明する。図113ないし図115(b)は本発明の一実施形態に係る流量調整装置を組み込んだ流体反応装置の全体構成を示す図である。なお、以下に述べる流体反応装置は、2種類またはそれ以上の液体を混合し、反応させるために用いられる装置である。
図113,図114,図115(a),および図115(b)に示すように、流体反応装置は、全体が1つの設置スペースに設置されてパッケージ化されている。この構成例では、この設置スペースは長方形であり、長手方向に沿って4つの領域に区画される。すなわち、一端側の第1の領域は、原料液を貯留する複数の貯留容器6110(図113では2つの貯留容器6110A,6110Bのみを示す)が設置された原料貯留部6101であり、それに隣接する第2の領域は、貯留容器6110の原料液を移送する2連式プランジャポンプ6001A,6001Bが設置された配液部6102となっている。第2の領域に隣接する第3の領域は、原料液を混同させる混合部(混合チップ)6140および混合された原料液を反応させる反応部(反応チップ)6142を有する処理部6103となっている。他端側の第4の領域は、処理の結果得られた生成物を導出して貯留する生成物貯留部(回収容器設置スペース)6104である。
また、この流体反応装置は、各部の動作の制御を行うコンピュータである動作制御部6106と、温度調整ケース6146に熱媒体を流して処理部6103の温度調整を行う熱媒体コントローラ6107を備えている。また、動作制御部6106には、図113に示すように、液体の流量と温度をモニタできる流量モニタ6270および温度モニタ6272が搭載されている。なお、この構成例では、動作制御部6106と熱媒体コントローラ6107は流体反応装置と別置きになっているが、勿論一体でも良い。図114に示すように、第2〜第4の領域の床下部分には配管室6105が形成され、ここには混合部6140および反応部6142へ加熱又は冷却用の熱媒体を送るための配管が設けられている。
このように、上流側から下流側へと各部を配置することによって液体の流れを円滑にし、かつ装置全体をコンパクトにまとめることができる。この構成例では、各部の配列を直線状にしたが、例えば、全体が正方形に近いスペースであれば、各部を液体の流れがループを形成するように構成してもよい。
図114において、符号6250は装置下部に設けられた液溜めパンであり、符号6252は液溜めパン6250上に設置された漏液センサを示す。またこの装置例では、配液部6102、処理部6103、生成物貯留部6104は隔壁6254,6256により区画されており、各部にはカバー6258,6260,6262が取り付けられて装置外部とこれらを隔離している。符号6264は排気ポートであり、図示しない排気ファンに接続されている。そして、装置内の圧力を装置外より負とすることで装置内の有毒ガスが外部に漏出することを防いでいる。
図113に示す原料貯留部6101には、2つの貯留容器6110A,6110Bが設置されているが、必要に応じて3つまたはそれ以上の貯留容器を使用してもよい。例えば、同じ液体を2つの貯留容器に収容し、これらを交互に切り換えて用いることにより、処理を継続的に行うことができる。なお、原料貯留部6101に、ライン洗浄用のアセトンなどの有機溶剤、塩酸、純水などが入った洗浄液容器6112や、パージ用の窒素ガスが封入された圧力源6114を設けてもよい。また、廃液容器6136を原料貯留部6101に置いてもよい。
配液部(導入部)6102には、貯留容器6110A,6110Bに輸送管6121A,6121Bを介して接続されたポンプ6001A,6001Bが設置されている。また、配液部6102は、プランジャポンプ6001A,6001Bの下流側に配置された流量調整装置6300A,6300B、リリーフ弁6122A,6122B、圧力測定センサ6124A,6124B、流路切換弁6126A,6126B、および逆洗ポンプ6130を有している。流路切換弁6126A,6126Bは、輸送管6121A,6121Bの他に、洗浄液容器6112や、圧力源6114にそれぞれ接続されている。逆洗ポンプ6130は、混合部6140や反応部6142の流路内が生成物によって閉塞した場合に用いられる。逆洗ポンプ6130は洗浄液を貯留する洗浄液容器6112に接続され、さらに流路切換弁6132を介して反応部6142の出口に接続される。逆洗ポンプ6130により移送される洗浄液は通常の流れと逆に流れる。すなわち、洗浄液は、反応部6142の出口から混合部6140の入口に向かって流れ、流路切換弁6126A,6126Bを経て廃液口6134から図示しない配管を通って廃液貯留容器6136に入れられる。
逆洗ポンプ6130は吐出圧力が高く、洗浄液に脈動を起こさせて生成物を除去することが可能なように1本ピストン16型のポンプが好ましい。洗浄液としては、有機溶剤、塩酸、硝酸、りん酸、有機酸、純水などが好適に用いられる。有機溶剤の例としては、アセトン、エタノール、メタノールなどが挙げられる。図113に示す導入口6240は、外部から純水や水素水を導入する場合に設けられたもので、洗浄液容器6112内の洗浄液の代わりに洗浄に使用できる。
図116は、原料液の予備加熱(予備温度調整)と混合を行うための混合部6140を示すもので、3枚の薄板状の基材である上板6144a、中板6144b、下板6144cが接合されて全厚さ5mmの混合部6140が形成されている。なお、以下に説明する流路はいずれも中板6144bの表面に形成された溝である。上板6144aを貫通して形成された2つの流入ポート6147A,6147Bは、中板6144bの上面に形成されたそれぞれ2つの予備加熱流路6148A,6148Bに連通する。これらの予備加熱流路6148A,6148Bはそれぞれ途中で分岐しかつそれぞれ拡大し、再度合流する。さらに、予備加熱流路6148A,6148Bはそれぞれ出口流路6150A,6150Bに連通し、これらの出口流路6150A,6150Bは合流部6152に通じている。出口流路6150Aは、中板6144bの上面に、出口流路6150Bは中板6144bの下面に形成されている。
図117は図116に示す合流部の拡大図である。図117に示すように、合流部6152は、出口流路6150A,6150Bに通じる円弧状の溝として中板6144bの上下面にそれぞれ形成されたヘッダ部6154,6155と、このヘッダ部6154,6155から円弧の中心に向かって延びる複数の分液流路6156,6157と、これらの分液流路6156,6157が合流する合流空間6158とを有している。分液流路6156,6157と合流空間6158は中板6144bの上面に形成され、分液流路6156,6157は交互に配置されている。下面側のヘッダ部6155と分液流路6157とは、中板6144bを貫通する連絡孔6157aにより連通している。合流空間6158は、下流側に向けて幅が徐々に小さくなるように形成され、中板6144bおよび下板6144cを貫通して形成された流出ポート6160に連通している。
図117に示す例では、合流空間6158の入口側の開口面6159において分液流路6156が5本、分液流路6157が4本、交互に配置されている。分液流路6156,6157からそれぞれ流出した2種類の液体は、合流空間6158内で縞状の流れを形成しつつ下流側に流れ、合流空間6158の流路幅が徐々に縮小するに従い、強制的に両液が混合される。この例では、合流空間6158の流路幅は最終的に40μmに達する。加工技術精度を上げれば、流路幅を10μmにすることも可能である。
図118(a)は図113に示す反応部を示す平面図、図118(b)は図118(a)に示す反応部の断面図である。この例では、2枚の基材6144d,6144eが接合されて厚さ5mmの反応部6142が構成されている。この反応部6142では、反応流路6162が蛇行しており、長い流路を効率的に提供している。反応流路6162は、入口ポート6164および出口ポート6165にそれぞれつながる連絡部6162a,6162cと、連絡部6162a,6162cに連通する蛇行部分6162bとを有しており、連絡部6162a,6162cの幅は狭く、蛇行部分6162bの幅が広く形成されている。したがって、出入口部分では液体が急速に流れ、副生成物の付着を防止しており、蛇行部分6162bでは緩やかに流れて、加熱と反応の時間を長く取ることができるようになっている。
図119(a)および図119(b)に示すのは、反応流路の幅が除々に小さくなる部分6163aと除々に大きくなる部分6163bを持つ反応部の他の構成例である。この反応部6142aには、基材6144d,6144eの間に、幅寸法が最大aから最小bの範囲で増減する反応流路6163が形成されている。幅寸法の増減に合わせ、深さを増減させてもよい。この例では、反応流路6163の断面積が一定になるよう深さが最大cから最小dの範囲で変化するようになっている。
図119(c)は、反応流路の他の構成例を示す横断面図である。この反応部6142bでは、反応流路6163cは、その幅eが深さfより大きい扁平形状を有しており、熱触媒からの熱の伝達方向(矢印で表示)に交差する広い伝熱面を有するので、反応流路6163c内の液体に熱の伝達が有効に行われる。なお、合流空間6158や反応流路6162,6163に、適当な触媒を配置することは反応を促進するために有効である。このような触媒は反応の種類に応じて選択される。配置の仕方は、例えば、流路の内面に塗布したり、後述するような流路の障害物として配置することができる。
混合部6140および反応部6142の少なくとも流路を形成する素材としては、例えば、SUS316、SUS304、Ti、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス等の硬質ガラス、PEEK(polyetheretherketone)、PE(polyethylene)、PVC(polyvinylchloride)、PDMS(Polydimethylsiloxane)、Si、PTFE(polytetrafluoroethylene)、PCTFE(PolyChloroTriFluoroEthylene)の内から、耐薬品性、耐圧性、熱伝導性、耐熱性等を考慮して、好ましいものを選択する。混合部6140および反応部6142の接液部の材質は、表面からの溶出が少なく表面触媒修飾が可能で、ある程度の耐薬品性を持ち、−40〜150℃の広い温度範囲に耐えるものが望ましい。
図120は、混合部および反応部の温度を調整する温度調整ケースの構成を示す斜視図である。なお、以下の説明では、反応部6142の温度を調整する温度調整ケース6146についてのみ述べるが、混合部6140のための温度調整ケース6146も同様の構成を有しており、その重複する説明を省略する。温度調整ケース6146は、内部に反応部6142を収容する空間6170が形成されたケース本体6172と該空間6170を覆う蓋部6174とを備えており、これらの内面には、平行に延びる複数の熱媒体流路を構成する溝6176が形成されている。ケース本体6172には、溝6176に連通する給液路6178と排液路6180(図113参照)が形成され、これらの給液路6178と排液路6180はそれぞれ熱媒体コントローラ6107に接続されている。給液路6178は、蓋部6174の溝6176に開口6179を介して連通し、排液路6180も蓋部6174の溝6176に図示しない開口を介して連通している。この例では、溝6176を流れる熱媒体は反応部6142の表裏面に直接接触し、反応部6142は温度調整ケース6146に完全に収容された状態で加熱(または冷却)される。
図示しないが、熱媒体コントローラ6107には、熱媒体の温度を制御する制御機構と熱媒体を移送するポンプが内蔵されている。図113に示すように、熱媒体は熱交換器6182を通過後、混合部6140および反応部6142の温度調整ケース6146に供給されるようになっている。熱交換器6182は例えば冷却用の市水の量を変えることで混合部6140および反応部6142に供給される熱媒体の温度を独立に変えられるようになっている。
図121(a)ないし図121(d)には、温度調整ケース6146の他の例が示されており、ここでは、熱媒体流路6192はケース本体6172と蓋部6174のそれぞれの内部に形成されている。給液路6178は、図121(c)に示すように、給液配管6188の先端が挿入された二重管の構成となっており、細い連通路6190を介して熱媒体流路6192に連通している。排液側も同様の構成である。図121(b)に示すように、混合部6140を収容する温度調整ケース6146と反応部6142を収容する温度調整ケース6146とは、ボルト6194、ナット6195およびスペーサ6196を介して積層して結合されている。
図121(b)には、温度調整ケース6146に収容された混合部6140および反応部6142への液体の供給・排出の経路が示されている。すなわち、それぞれの液体は、温度調整ケース6146を貫通して形成された流通路6198を介して混合部6140へ流出入する。また、混合部6140と反応部6142との間の液体の流通は、温度調整ケース6146の流通路6198を連絡する連絡通路6200を介して行う。図121(d)には、反応部6142の液の流入部と流出部の構造が説明されている。液の流れを下方向へ向かわせるために、通常は混合部6140および反応部6142の液の入口は上面に、出口は下面にそれぞれ形成する。
図113に示すように、反応部6142の流出口6202は、回収配管6204を介して生成物貯留部6104に接続されている。生成物貯留部6104には、冷却用の熱交換器6206、流路切換弁6132の下流側に回収容器6208が設けられている。回収容器6208が置かれる生成物貯留部6104は、他の領域から温度等の影響を受けないように、また生成物から発生する可能性のある有毒ガスが外部に漏洩しないように隔離されている。
図122は、生成物貯留部6104の他の構成例を示すもので、複数の回収容器6208が回転テーブル6212上に設置されている。この例では、回収容器6208は2個であり、回転テーブル6212を移動させるアクチュエータ6214は180度回転型ロータリーアクチュエータである。勿論、回収容器6208の数やアクチュエータ6214の種類は適宜に選択可能である。図113に示す動作制御部6106は、回収容器6208の液面を検知する液面検知センサ6211bからの信号により、回収容器6208の交換時期を判断し、流路切換弁6132(図113参照)により液流を止め、回収口6210の下流に設けた光学的流体検知センサ6211aにより液流の停止を確認して、アクチュエータ6214を作動させて他の回収容器6208を回収口6210の下方に移動させる。
次に、上記のように構成された流体反応装置により、薬液等の液体(原料液)を反応させる工程について説明する。なお、流体反応装置の動作は基本的に動作制御部6106によって自動制御される。まず、原料貯留部6101において、原料液を貯留した貯留容器6110A,6110Bに用意しておく。熱媒体コントローラ6107により熱媒体の温度を設定し、熱交換器6182を通過させる市水の量を調整して各熱媒体の温度をそれぞれ調整し、混合部6140および反応部6142の温度調整ケース6146へ熱媒体を流通させてこれらを所定の温度に維持する。熱媒体の温度は、温度調整ケース6146の入口に設けた温度センサ6216,6218により測定される。
この例では、原料液を処理部6103に供給する前に、混合部6140および反応部6142内の流路に純水等の洗浄液を流して予め洗浄する。流路を洗浄している間、洗浄液の温度を混合部6140の出口の温度センサ6220および反応部6142の出口の温度センサ6222で測定し、洗浄液の温度を熱媒体コントローラ6107にフィードバックする。このようにして、混合部6140および反応部6142を所定の温度に調整する。
混合部6140および反応部6142の温度が調整され、流路の洗浄を終えてから、流路切換弁6132を切り換え、プランジャポンプ6001A,6001Bを駆動して、貯留容器6110A,6110B内の原料液をそれぞれ移送する。原料液は、流量調整装置6300A,6300Bにより所定の流量に調整され、その後、混合部6140、反応部6142、流出口6202、回収口6210を経て回収容器6208に至る。なお、流路切換弁6132はアクチュエータにより作動する自動弁としており、この動作は自動運転も可能である。
混合部6140においては、原料液は予備加熱流路6148A,6148B(図116参照)において所定の温度に加熱された後、合流部6152において合流し、混合する。その際、各液は、図117に示すように、ヘッダ部6154,6155から分液流路6156,6157を経由して合流空間6158に流入する。合流空間6158の断面は下流へ向かうに従い徐々に減少するので、マイクロサイズの流れが規則的に混在し、フィックの法則に則って迅速に混合する。その状態で、所定の温度に維持された反応部6142の反応流路6162に流入すると、反応は、物質移動や熱伝導の制約を受けずに迅速に進行する。したがって、量産手段として充分実用的であるとともに、反応速度の早い爆発性の反応でも低温下で行う必要がなくなる。また、この例では、反応流路6162の幅が合流空間6158の幅に比べて充分広く形成されているので、反応速度が遅い場合でも充分な時間をかけて行うことができ、高い収率を得ることができる。
得られた生成物は、反応流路6162の流出口202から回収配管6204を経由して熱交換器6206に送られ、ここで冷却されて、回収口6210より回収容器6208に流入する。貯留容器6110A,6110Bが空になったり、回収容器6208が満杯になったら、動作制御部6106によりプランジャポンプ6001A,6001Bの運転を停止させて処理を終了させる。この場合、貯留容器6110A,6110Bの他に、追加の貯留容器を原料貯留部6101に予め用意しておけば、流路切換弁6126A,6126Bを切り換えることにより、運転を停止させることなく連続的な処理が可能である。なお、反応に時間が掛かる場合には、混合部6140および反応部6142内に液を一定時間閉じ込めてバッチ運転することも可能である。流路切換弁6126A、6126Bも自動弁であるのでこれらの動作は自動運転も可能である。
バッチ運転の方法は、プランジャポンプ6001A,6001Bを一時停止してもよいし、流路切換弁6126A,6126Bを切り換えて、処理部6103への液体の流入を停止させてもよい。これにより、液体の反応時間が長い場合でも反応流路6162の長さを長くする必要がなくなる。バッチ運転の際は、合流空間6158および/または反応流路6162に液体が充満されたことを検知する充満検知手段を用いて運転制御を行うことが好ましい。これは、例えば、図122に示すような光学的流体検知センサが用いられる。これにより、合流空間6158および/または反応流路6162に液体が充満されたと判断した時点で、プランジャポンプ6001A,6001Bを停止させまたは第1の流路切換弁を切り換え、液体を反応終結時間に適応する一定時間合流空間6158および/または反応流路6162に滞留させておく。
図123(a)および図123(b)は、混合部6140における合流部の他の構成例を示すものである。この合流部6152aは、Y字状の合流空間6158aに、障害物6224を一定間隔aで所定の距離Lに亘って配置したものである。この例では、直径50μm以下である柱状の障害物6224を、合流点からL=5mmに亘って配置した。図123(b)に示すように、各障害物6224は隣接するものが流れ方向にピッチの半分だけずれるように、千鳥状に配置されている。これによって液体Aおよび液体Bの界面6125が蛇行するので2つの液体の界面面積(接触面積)を大きくすることができる。図19に示す合流部6152bでは、合流空間6158bの中央部に一列の障害物6224を流れ方向に沿って千鳥状に配置したもので、同様に界面面積を大きくすることができる。これは、狭い合流空間6158bで採用するのに好適である。
図125は、流体反応装置の処理部6103の他の構成例を示すものである。これは、図113の処理部6103において、混合部6140と反応部6142との組み合わせをそれぞれ有する2系統R1,R2設け、さらに配液部6102の流路切換弁6126A,6126Bを用いて2種類の原料液をいずれの系統R1,R2にも供給可能にしたものである。このように、2系統を用いることで、必要に応じて処理量を増やすことができるが、その他にも種々の使用方法が有る。例えば、反応生成物が固体粒子を析出しやすく、配管途中で詰まりやすい場合などでは、一方の系統を予備として使用する。また、流路切換弁6126A,6126Bで移送ラインを交互に切り換えて、上述したバッチ運転を連続的に行うことができる。勿論、3系統以上の移送ラインを適宜に並列して設けることができる。この場合も流路切換弁6126A,6126Bは自動操作が可能である。
図126は、処理部6103において反応部を複数直列に配置した例を示す。この例では、1つの混合部6140と3つの反応部6142a,6142b,6142cが直列に接続されており、それぞれに温度センサ6220,6222a,6222b,6222cが設けられている。この例では、反応の段階に応じて反応部6142a,6142b,6142cを独立して温度制御することが可能となっている。この構成は、生化学反応のように反応時間と反応温度を大胆に且つ瞬時に変化させたい反応に適している。たとえば反応部6142aでは100℃で反応させ、反応部6142bでは−20℃で反応させるというような反応もこのシステムでは可能になる。
図127は、処理部6103において混合部を複数設けた例である。この構成例では、A液とB液を混合し反応させる第1の混合部6140および反応部6142が設けられ、この反応部6142の下流側に第2の混合部6140aが設けられている。この混合部6140aではプランジャポンプ6116Cから輸送された第3の原料液または反応剤であるC液がA液とB液と合流し、混合する。これらの2つの混合部6140,6140aと1つの反応部6142の温度は個別に制御される。なお、C液は反応停止剤でもよい。
この構成例では、インライン収率評価器226が第2の混合部6140aの流出口6202に直接接続されている。これにより、化学反応の結果の収率をリアルタイムで確認でき、直ぐにプロセスパラメータへフィードバックすることが可能となる。インライン収率評価器6226としては、被測定物を分離せずに測定可能な方法として赤外分光、近赤外分光、紫外吸光等の方法がある。
この構成例では、さらに、反応生成物の中から不要な物質と必要な物質を分離する分離抽出部6228が第2の混合部6140aの下流側に設けられている。図示するように、分離抽出部6228は、Y字形の分離流路6234を有している。第2の混合部6140aからの液体は分離流路6234により2つの流れに分岐され、1つは物質内の疎水性分子のみを通過させる疎水性壁面6230から形成された流路に、他方は物質内の親水性分子のみを通過させる親水性壁面6232から形成された流路に流れ込む。分離した物質は、それぞれ回収配管6204,6204aを介して回収容器6208,6208aに回収される。分離抽出部6228としては、その他に、疎水性物質だけを吸着可能な膜やポーラスフリットを使用することも考えられる。
図128は、混合・反応と分離抽出を繰り返して連続処理するための構成例である。すなわち、A液とB液を処理する混合部6140a、反応部6142a、および分離抽出部6228aが上流側に配置され、分離抽出部6228aから抽出された液体とC液を処理する混合部6140b、反応部6142b、および分離抽出部6228bが下流側に配置されている。A液とB液が反応した後の不要物質は分離抽出部6228aの排出口6234aから系外に出され、C液を加えた第2の反応における不要物質は分離抽出部6228bの排出口6234bから系外に出される。さらに、分離抽出部6228bから抽出された液体と第4の液であるD液を混合させる混合部6140cが設けられている。なお、D液は反応停止剤でもよく、他の原料溶液でも良い。混合部6140cの下流側にインライン収率評価器6226を設けても良い。
図129(a)には、図23の各部を積層化した構成が示されている。液体は下方へ流れる。混合部6140a、反応部6142a、分離抽出部6228a、混合部6140b、反応部6142b、分離抽出部6228b、および混合部6140cは、温度調整ケース6146にそれぞれ収容され、さらにボルト6194、ナット6195、スペーサ6196によって所定の間隔をおいて積層化されている。各部間の液の移動は連絡通路6200(図116(b)参照)を介して行われる。各部の間には空気を介在させ、空気の断熱性を利用して他の部の熱影響を受けないようにして、温度制御の精度を向上させている。図129(b)に示すように、各温度調整ケース6146の周りを気泡を含んだクリーンなシリコン部材6236等の断熱材で覆うのが好ましい。
この流体反応装置に導入される流体は液体、気体であり、回収される物質は液体、気体、固体またはこれらの混合体である。導入物質が粉体などの固体の場合は原料貯留部6101に粉体溶解器を設置することも可能である。図130は、2つの原料液のうち、一方が粉体を溶解した溶液、他方は元々液体の場合の原料貯留部6101の構成例である。原料の粉体と溶媒は粉体溶解器6240の原料導入口6242から導入される。この例では、原料粉体をヒータ6244による加熱と攪拌器246による攪拌によって溶解し、生成した原料液を、取出し口6148に引き込まれた配管6249より、プランジャポンプ6116Aによって、混合部6140および反応部6142に送り込むようになっている。
マルチ分光装置
本発明は、さらに、本発明の流体反応装置及び流体混合装置において使用することができるマルチ分光分析装置にも関する。
上述した目的を達成するための本発明は、これに限定されるものではないが、以下の発明を包含する。
(1) マルチ分光分析装置であって、医薬品製薬製造ラインおよび医薬品開発段階の有機合成反応結果を評価するためのマルチ分光分析装置であって、複数の波長の異なる光源を有する光源部と、被測定液を流通させるフローセルを構成するケーシングと、上記フローセルにおいて被測定液に近接する複数の発光部と受光部と、受光部から得られた各波長の分光を個々に行う分光器を有する分光部と、分光器で得られた被測定液の分光情報を演算制御して出力する制御部とを具備したことを特徴とするマルチ分光分析装置。
(1)に記載の発明においては、光源部から波長領域の異なる複数の光を発光させ、これを異なる分光器で受光して、被測定液を通過した各波長の分光が個々に行われる。このような複数の分析情報を組み合わせることにより、精度の高い、漏れの無い分析が行われる。
(2) (1)に記載の発明において、前記光源部は、紫外光、可視光、近赤外光、赤外光、遠赤外光のうち、少なくとも2つ以上の波長領域をカバーする光源を有することを特徴とするマルチ分光分析装置。
(2)に記載の発明においては、光源部からの、紫外光、可視光、近赤外光、赤外光、遠赤外光のうち、少なくとも2つ以上の波長領域をカバーする光源を組み合わせて用いることにより、処理対象や目的に応じた分析情報を得ることができる。
(3) (1)又は(2)に記載の発明において、前記フローセルが複数形成され、各フローセルに発光部と受光部がそれぞれ配置されていることを特徴とするマルチ分光分析装置。
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載の発明において、前記ケーシングは、仕切によって内部に複数のフローセルを形成するように構成されていることを特徴とするマルチ分光分析装置。
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の発明において、前記ケーシングは、内部に1つのフローセルを形成するように構成され、複数の前記ケーシングが基板上に着脱自在に取り付け可能となっていることを特徴とするマルチ分光分析装置。
(6) 可視領域から近赤外領域の光源を一つの光源で兼用し、異なる受光部に導くように構成したことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のマルチ分光分析装置。
(7) (1)〜(6)のいずれかに記載の発明において、前記発光部と受光部間の距離を調整可能であることを特徴とするマルチ分光分析装置。
(8) 反応領域の下流側に、(1)〜(7)のいずれかに記載のマルチ分光分析装置を有することを特徴とするマイクロリアクタ。
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
図131は、この発明の一実施の形態のマルチ分光分析装置7001を模式的に示すもので、例えば、例えば、一対の基板によって構成されるケーシング7010の中に構成されている。この分光分析装置7001は、後述する図140に示すように、マイクロリアクタの下流側部分を構成する部材の一部に組み込まれ、使用される。
ケーシング7010には、マイクロリアクタの下流側の流路(反応生成物が流れる流路)7012につながる複数のフローセル7014が形成されている。フローセル7014は全体として矩形平板状の内部空間7016を複数の仕切7018で区画することにより形成され、その両側には発光部7020と受光部7022とが対向して配置されている。この実施の形態では、複数のフローセル7014を一つのケーシング7010内の内部空間7016に収めることにより寸法を小さくすることができ、また流量のばらつきを抑制して分析精度を向上させることが可能になる。フローセル7014内の流路は、できるだけ滞流や通過抵抗が無いような形状とするのが好ましい。
ケーシング7010を構成する材料は、熱伝導性に優れ、−40〜150℃の広い温度範囲に耐えるものが好ましい。さらに、フローセル7014の流路を構成する材料は、液体の高圧に耐えうるものであることが好ましい。これらの点を考慮し、流路を構成する材料の好ましい例として、SUS316、SUS304、Ti、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス等の硬質ガラス、PEEK(polyetheretherketone)、PE(polyethylene)、PVC(polyvinylchloride)、PDMS(Polydimethylsiloxane)、Si、PTFE(polytetrafluoroethylene)、PCTFE(Polychlorotrifluoroethylene)、およびPFA(perfluoroalkoxylalkane)などの樹脂が挙げられる。
異なる波長域の光を出力する複数の光源7024a〜7024gを有する光源部7024が、フローセル7014の近傍の所定箇所に設置されており、それぞれの出力光は光ファイバ7026によって発光部7020に導かれている。この実施の形態では、紫外光を出力する光源7024aは重水素ランプであり、可視光から近赤外光を出力する光源7024b〜7024eはハロゲンランプであり、赤外光はニクロム赤外光源7024fである。可視光から近赤外光までを1個のハロゲンランプで賄ってもよい。このようにすることで装置の大きさがよりコンパクトにすることができる。
受光部7022は光ファイバ7026によって、フローセル7014の近傍に設置された分光器7028a〜7028gを有する分光部7028に結合されている。分光器7028a〜7028gは、例えば、CCD素子によって構成され、それぞれが受光した光を波長帯域ごとに分けて強度を測定することができるようになっている。この実施の形態では7個の分光器7028a〜7028gを設置しており、各分光器7028a〜7028gの分担する波長範囲は、200〜400nm(紫外分光器7028a)、400〜700nm(可視光分光器7028b)、700〜1000nm(第1近赤外分光器7028c)、1000〜1700nm(第2近赤外分光器7028d)、1700〜2200nm(第3近赤外分光器7028e)、2200〜25000nm(赤外分光器7028f)及び波長25000nmを超える波長領域(遠赤外分光器7028g)のようになっている。これらの組合せは測定物質によってはすべて網羅する必要はなく、2つ以上の適宜の数の組合せであればよい。
この実施の形態では発光部7020と受光部7022の間の光路は流体の流れ方向に形成されており、流路幅に関係なく所定の光路長に合わせて設定することができる。また、各区分流路ごとの光路長の調整は、発光部7020と受光部7022の突出長さを変えることにより行うことができる。たとえば紫外分光器7028aでは、通常サンプル液を希釈してオフラインで分析するが、インライン測定では、濃度が濃い状態のままの測定となるので、不要な反応を回避するために光路長を短くして測定する(たとえば1mm 以下)。また、近赤外分光器7028c〜7028eでは比較的感度が弱いため光路長は長めにしておく(5〜10mm)。後述するように、吸収波長の幅の広い複数の成分を瞬時に同時に測定するには、各波長域の得失に合わせてフローセル7014の形状・寸法を設定することが必要である。
各分光器7028a〜7028gからは、事前に設定された波長領域毎の受光強度が出力され、AD変換器7030を介して制御部7032に入力される。制御部7032は、このデータと、事前に入力された各光源7024a〜7024gの波長領域毎の強度分布データに基づいて透過率(吸収率)を算出し、さらにこれを基に、目的とする反応生成物(正規の製品)の生成量と、反応副生成物の生成量を求め、その結果としてさらに、収率や転化率、及び副次的に溶媒濃度も求める。
反応生成物と反応副生成物は、実験段階でなければ事前に絞り込まれているので、生成が予定される成分に対応した波長吸収に備えた光源7024a〜7024gと分光器7028a〜7028gの組合せを用いればよい。この場合、反応副生成物が複数有って、生成する可能性が低いものでも、例えばFDA(米国食品医薬品局)のGMP(適正製造基準)をクリアするためには設置することが望ましい。
一方、医薬品の開発段階では、試薬の種類や濃度、温度、流速など条件を種々振って、いわゆるスクリーニングと言われる可能性のある反応を見つける作業がある。このように、どのような反応生成物が生じるか予測ができない場合には、任意の生成物を検出可能なように、予め全波長領域の光源7024a〜7024gと分光器7028a〜7028gを設置しておき、データが蓄積されてから、不要なものを外したり、適当なものと入れ替える等の措置を行う。
制御部7032は、反応生成物や反応副生成物の生成量、収率や転化率等のデータをディスプレイ7034に表示し、記憶装置7036へ記憶するとともに、これらのデータが予め設定した閾値を超えた場合に警報装置7038により警報を発生し、さらに閾値を超えた場合には処理を自動的に中止する等の処置を執る。さらに、上記のようなデータと反応条件の相関関係を事前に求めておき、検出データに基づいてマイクロリアクタの反応条件、例えば反応温度、流量、圧力等を制御するようにしてもよい。
一般に、単一の光源を用いる分光分析装置7001では、光はある波長領域に集中して分布するので、周辺領域における感度は低下する。このマルチ分光分析装置7001では、複数の波長域の異なる光源7024a〜7024gと分光器7028a〜7028gを設けているので、広い波長領域に渡って正確なデータを得ることができる。以下、各分光器7028a〜7028gの特徴と、それに基づく組合せの方法を、表131を参照しつつ説明する。表131は、それぞれの官能基、分子等の吸収スペクトル波長を例示する。
紫外分光器7028aは、全成分の吸収スペクトル傾向を読み、収率変化や不純物量変化を検知するのに適している。赤外分光器7028fは、個々の物質の多くの有機官能基に対応可能であるが、強度が強すぎて妨害物質が出る場合が有る。その場合は近赤外分光器7028c〜7028eを代用する。また、溶媒が水の場合には、赤外分光器7028fでは水が妨害物質になる場合がある。可視光分光器7028bは、クロロフィルやカロチンなど有色物質を検出するのに好適である。この実施の形態において、3つの近赤外分
光器7028c〜7028eを使い分けしている理由は、近赤外の領域700〜2200nmの範囲で測定能力の弱い部分を作らず、たとえば反応によって共役系が長くなったり、結合の微妙な変化によるピークの小さなシフトを、精度良く読み取るためある。
以下、さらに具体的な反応について、図132を参照して説明する。図132(a)の反応は、溶媒ピリジン中で行われるオーバーリアクション反応で、マイクロ流路効果に基
づいて正反応が行われればモノベンゾイルレゾルシノールが生じるが、マイクロ流路中の濃度のアンバランスが生じるとさらに反応が進んで副反応であるジベンゾイルレゾルシノ−ルが生じる。ベンゼン環、CO、OH、などの官能基の生成を吸収域を測定することにより求めて、モノ体とジ体の比を検出することができる。ベンゼン環は赤外分光器7028fで測定可能であるが、溶媒ピリジンがバックグランドとして検出される可能性が有り、測定不能、またはピークが重なり合って判別しにくい場合も有る。その場合は、近赤外分光器7028c〜7028eを用いればよい。
なお、上記の場合、ベンゾイル基の個数が1 個と2個の場合で吸収強度の差が充分に出るような特定の波長領域が、例えば近赤外分光器7028c〜7028eまたは赤外分光器7028fの領域に存在する場合には、これを選択すればよい。この場合も、反応系全体液の吸収スペクトルは紫外分光器7028aで監視し、反応の変化があった場合は警報を発したり、処理を停止する等の処置を執る。
図132(b)の反応は、ベンジルフェニールアラニンをメタノール中で水素ガスと反応させ、還元してフェニールアラニンメチルエステルを生じさせる。これは、保護基の接触水素による脱保護反応であって、Pd 触媒が使用される。NH2 とNH の比を読めば、反応率が分かる。強度のあるNH2 は近赤外分光器7028c〜7028eで、弱いNH は赤外分光器7028fで読むことが可能であり、妨害物質のオーバーラップ次第で近赤外分光器7028c〜7028eと赤外分光器7028fを使い分けすることが可能である。もちろん、両成分を個別にそれぞれの波長域で測定してもよい。この場合も、全体液の吸収スペクトルは紫外分光器7028aで監視し、反応の変化があった場合は、警報を発したり、処理を停止する等の処置を執る。
図132(c)の反応は、ポリペプチド合成の一工程で、グリシン無水物に水が加わり、塩酸が触媒になってグリシルグリシンに変わる加水分解反応である。生成物中に水が存在する反応であるので、水が吸収妨害しやすい赤外分光器7028fを避け、近赤外分光器7028c〜7028e領域の弱い感度でかつ水の影響を受けない領域を使用して測定すればよい。
図133は、図131の実施の形態の変形例を示すもので、フローセル7014をケーシング7010内に個別に形成し、流体流路を各フローセル7014に分岐して導くようにしたものである。これにより、各フローセル7014が他のフローセル7014の影響を受けず、流路抵抗も少ないので流体の流れがより均一になる。また、図示するように、フローセル7014への分岐流路7040には流量調整弁7042を個別に設置することにより、各分光器7028a〜7028gの特性に合わせて適当な流量に調整することができる。
図134は、同じく図131の実施の形態の変形例を示すもので、フローセル7014をケーシング7010内に個別に形成しているが、各分岐流路7040に開閉弁7044が設置されている。これにより、必要な波長のフローセル7014の開閉弁7044のみを開とし、不要なフローセル7014の開閉弁7044を閉じることで、余分な流路抵抗の発生を防止している。また、図135の実施の形態は、各フローセル7014を直列につなげたものである。この実施の形態では、分流の必要がないので流路抵抗さえ配慮すれば扱いやすいという利点が有る。
図136は、他の実施の形態のマルチ分光分析装置7001の構造を示すもので、内部に1つのフローセル7014を構成するケーシング7046が基板7047上に複数配置されている。各ケーシング7046はたとえば石英ガラスのような透明な素材で形成され、内部に流路7048が形成され、この流路7048は側面で開口して継手部7050となっている。ケーシング7046内には、流路7048を挟んで発光部7020と受光部7022が置かれ、これらは光ファイバ7026により外部の光源と分光器(図示略)に連結されている。
この場合は流路7048の幅が光が横断する光路長になる。継手部7050はマイクロリアクタ等と配管により接続する。ケーシング7046の材料は耐薬品性を持ったPCTFE、PTFE、PEEK でもよく、この場合の発光部7020、受光部7022は直接接液せぬよう石英で保護される。この実施の形態では、流路7048への接続は継手部7050を介して行うので、接続は自由に変更することができる。各フローセル7014への流体の流れは並列分流でもよく、直列でもよく、フローセル7014個々に開閉弁7044を設け選択的に流しても良い。
図137は、図136の変形例を示すもので、光路長を短く設定するために、発光部7020と受光部7022を流路7048中に突出させているものである。この場合フローセル7014内の滞流や流路抵抗を少なくするために、流路7048を徐々に拡径するテーパ部7049aを形成している。
図138は、図136の変形例を示すもので、基板7047上に複数配置された各ケーシング7046において、光路長を自由に調整することが可能になっている。フローセル7014中の流路7048を挟んで発光ケース7052と受光ケース7054を対向させて配置されている。発光ケース7052、受光ケース7054とも石英で作られ、発光ケース7052内には発光部7020が、受光ケース7054内には受光部7022が取り付けられる。発光ケース7052、受光ケース7054の外形は少なくとも一方がねじになっており、ケース7046の外面に取り付けられた固定ナット7056に螺合されている。これにより、光路長の長さを自在に調節することが可能である。片側固定で反対側調整してもいいし、両側とも調整可能にしてもよい。これによって、各波長域の感度、分子濃度、溶媒物質の情報から個別に現場で自在に調節することが可能になる。インラインで一般に濃度の高い液を分析するので、光路長は、オフラインの場合より短くし、10mm〜0.5mm、好ましくは5mm〜0.1mmに設定する。
図139(a)は、この発明のマルチ分光分析装置7001の用い方の実施の形態を示すもので、マイクロリアクタの混合・反応部7058の下流側に、反応の継続を停止させるために急冷を行うマイクロクエンチ部7060を設置したものである。マイクロクエンチ部7060は、例えば、水冷ジャケット構造とすることができる。この実施の形態では、混合・反応部7058とマイクロクエンチ部7060の間にマルチ分光分析装置7001を設置することにより、反応の進行度合いを確認した上でマイクロクエンチを行うことで、目的とする製品を安定に製造することができる。
図139(b)は、この発明のマルチ分光分析装置7001の用い方の他の実施の形態を示すもので、マイクロリアクタの混合・反応部7058の下流側に、マルチ分光分析装置7001を設置し、さらにその下流側に3方切換弁7062を設置している。3方切換弁7062はマルチ分光分析装置7001からのラインを通常の製品貯蔵ライン7064と、予備タンク7066につながる予備ライン7068に選択的に接続するように切り換えるものである。マルチ分光分析装置7001の出力信号は制御部7032に送られ、制御部7032が成分に異常が有ると判断した場合には、3方切換弁7062を予備タンク7066側に切り換える。これにより、異常成分が製品貯蔵ライン7064に混入するのを防止することができる。
次に、上述した本発明の一実施形態に係るマルチ分光分析装置を組み込んだ流体反応装置(マイクロリアクタ)について説明する。図140ないし図142(b)は本発明の一実施形態に係る流量調整装置を組み込んだ流体反応装置の全体構成を示す図である。なお、以下に述べる流体反応装置は、2種類またはそれ以上の液体を混合し、反応させるために用いられる装置である。
図140,図141,図142(a),および図142(b)に示すように、流体反応装置は、全体が1つの設置スペースに設置されてパッケージ化されている。この構成例では、この設置スペースは長方形であり、長手方向に沿って4つの領域に区画される。
すなわち、一端側の第1の領域は、原料液を貯留する複数の貯留容器7110(図140では2つの貯留容器7110A,7110Bのみを示す)が設置された原料貯留部7101であり、それに隣接する第2の領域は、貯留容器7110の原料液を移送するポンプ7116A,7116Bなどが設置された配液部7102となっている。第2の領域に隣接する第3の領域は、原料液を混同させる混合部(混合チップ)7140および混合された原料液を反応させる反応部(反応チップ)7142を有する処理部7103となっている。他端側の第4の領域は、処理の結果得られた生成物を導出して貯留する生成物貯留部(回収容器設置スペース)7104である。
また、この流体反応装置は、各部の動作の制御を行うコンピュータである動作制御部7106と、温度調整ケース7146に熱媒体を流して処理部7103の温度調整を行う熱媒体コントローラ7107を備えている。また、動作制御部7106には、図140に示すように、液体の流量と温度をモニタできる流量モニタ7270および温度モニタ7272が搭載されている。なお、この構成例では、動作制御部7106と熱媒体コントローラ7107は流体反応装置と別置きになっているが、勿論一体でも良い。図141に示すように、第2〜第4の領域の床下部分には配管室7105が形成され、ここには混合部7140および反応部7142へ加熱又は冷却用の熱媒体を送るための配管が設けられている。動作制御部7106とマルチ分光分析装置7001の制御部7032は別になっているが、勿論一体でも良い。
このように、上流側から下流側へと各部を配置することによって液体の流れを円滑にし、かつ装置全体をコンパクトにまとめることができる。この構成例では、各部の配列を直線状にしたが、例えば、全体が正方形に近いスペースであれば、各部を液体の流れがループを形成するように構成してもよい。
図141において、符号7250は装置下部に設けられた液溜めパンであり、符号7252は液溜めパン7250上に設置された漏液センサを示す。またこの装置例では、配液部7102、処理部7103、生成物貯留部7104は隔壁7254,7256により区画されており、各部にはカバー7258,7260,7262が取り付けられて装置外部とこれらを隔離している。符号7264は排気ポートであり、図示しない排気ファンに接続されている。そして、装置内の圧力を装置外より負とすることで装置内の有毒ガスが外部に漏出することを防いでいる。
図140に示す原料貯留部7101には、2つの貯留容器7110A,7110Bが設置されているが、必要に応じて3つまたはそれ以上の貯留容器を使用してもよい。例えば、同じ液体を2つの貯留容器に収容し、これらを交互に切り換えて用いることにより、処理を継続的に行うことができる。なお、原料貯留部7101に、ライン洗浄用のアセトンなどの有機溶剤、塩酸、純水などが入った洗浄液容器7112や、パージ用の窒素ガスが封入された圧力源7114を設けてもよい。また、廃液容器7136を原料貯留部7101に置いてもよい。
配液部(導入部)7102には、貯留容器7110A,7110Bに輸送管7121A,7121Bを介して接続されたポンプ7116A,7116Bが設置されている。図140におけるポンプ7116A,7116Bには遠心式ポンプが使用されている。また、配液部7102は、ポンプ7116A,7116Bの下流側に配置された流量調整装置7300A,7300B、リリーフ弁7122A,7122B、圧力測定センサ7124A,7124B、流路切換弁7126A,7126B、および逆洗ポンプ7130を有している。流路切換弁7126A,7126Bは、輸送管7121A,7121Bの他に、洗浄液容器7112や、圧力源7114にそれぞれ接続されている。逆洗ポンプ7130は、混合部7140や反応部7142の流路内が生成物によって閉塞した場合に用いられる。逆洗ポンプ7130は洗浄液を貯留する洗浄液容器7112に接続され、さらに流路切換弁7132を介して反応部7142の出口に接続される。逆洗ポンプ7130により移送される洗浄液は通常の流れと逆に流れる。すなわち、洗浄液は、反応部7142の出口から混合部7140の入口に向かって流れ、流路切換弁7126A,7126Bを経て廃液口7134から図示しない配管を通って廃液貯留容器7136に入れられる。
逆洗ポンプ7130は吐出圧力が高く、洗浄液に脈動を起こさせて生成物を除去することが可能なように1本ピストン16型のポンプが好ましい。洗浄液としては、有機溶剤、塩酸、硝酸、りん酸、有機酸、純水などが好適に用いられる。有機溶剤の例としては、アセトン、エタノール、メタノールなどが挙げられる。図140に示す導入口7240は、外部から純水や水素水を導入する場合に設けられたもので、洗浄液容器7112内の洗浄液の代わりに洗浄に使用できる。
図143は、原料液の予備加熱(予備温度調整)と混合を行うための混合部7140を示すもので、3枚の薄板状の基材である上板7144a、中板7144b、下板7144cが接合されて全厚さ5mmの混合部7140が形成されている。なお、以下に説明する流路はいずれも中板7144bの表面に形成された溝である。上板7144aを貫通して形成された2つの流入ポート7147A,7147Bは、中板7144bの上面に形成されたそれぞれ2つの予備加熱流路7148A,7148Bに連通する。これらの予備加熱流路7148A,7148Bはそれぞれ途中で分岐しかつそれぞれ拡大し、再度合流する。さらに、予備加熱流路7148A,7148Bはそれぞれ出口流路7150A,7150Bに連通し、これらの出口流路7150A,7150Bは合流部7152に通じている。出口流路7150Aは、中板7144bの上面に、出口流路7150Bは中板7144bの下面に形成されている。
図144は図143に示す合流部の拡大図である。図144に示すように、合流部7152は、出口流路7150A,7150Bに通じる円弧状の溝として中板7144bの上下面にそれぞれ形成されたヘッダ部7154,7155と、このヘッダ部7154,7155から円弧の中心に向かって延びる複数の分液流路7156,7157と、これらの分液流路7156,7157が合流する合流空間7158とを有している。分液流路7156,7157と合流空間7158は中板7144bの上面に形成され、分液流路7156,7157は交互に配置されている。下面側のヘッダ部7155と分液流路7157とは、中板7144bを貫通する連絡孔7157aにより連通している。合流空間7158は、下流側に向けて幅が徐々に小さくなるように形成され、中板7144bおよび下板7144cを貫通して形成された流出ポート7160に連通している。
図144に示す例では、合流空間7158の入口側の開口面7159において分液流路7156が5本、分液流路7157が4本、交互に配置されている。分液流路7156,7157からそれぞれ流出した2種類の液体は、合流空間7158内で縞状の流れを形成しつつ下流側に流れ、合流空間7158の流路幅が徐々に縮小するに従い、強制的に両液が混合される。この例では、合流空間7158の流路幅は最終的に40μmに達する。加工技術精度を上げれば、流路幅を10μmにすることも可能である。
図145(a)は図140に示す反応部を示す平面図、図145(b)は図145(a)に示す反応部の断面図である。この例では、2枚の基材7144d,7144eが接合されて厚さ5mmの反応部7142が構成されている。この反応部7142では、反応流路7162が蛇行しており、長い流路を効率的に提供している。反応流路7162は、入口ポート7164および出口ポート7165にそれぞれつながる連絡部7162a,7162cと、連絡部7162a,7162cに連通する蛇行部分7162bとを有しており、連絡部7162a,7162cの幅は狭く、蛇行部分7162bの幅が広く形成されている。したがって、出入口部分では液体が急速に流れ、副生成物の付着を防止しており、蛇行部分7162bでは緩やかに流れて、加熱と反応の時間を長く取ることができるようになっている。
図146(a)および図146(b)に示すのは、反応流路の幅が除々に小さくなる部分7163aと除々に大きくなる部分7163bを持つ反応部の他の構成例である。この反応部7142aには、基材7144d,7144eの間に、幅寸法が最大aから最小bの範囲で増減する反応流路7163が形成されている。幅寸法の増減に合わせ、深さを増減させてもよい。この例では、反応流路7163の断面積が一定になるよう深さが最大cから最小dの範囲で変化するようになっている。
図146(c)は、反応流路の他の構成例を示す横断面図である。この反応部7142bでは、反応流路7163cは、その幅eが深さfより大きい扁平形状を有しており、熱触媒からの熱の伝達方向(矢印で表示)に交差する広い伝熱面を有するので、反応流路7163c内の液体に熱の伝達が有効に行われる。なお、合流空間7158や反応流路7162,7163に、適当な触媒を配置することは反応を促進するために有効である。このような触媒は反応の種類に応じて選択される。配置の仕方は、例えば、流路の内面に塗布したり、後述するような流路の障害物として配置することができる。
混合部7140および反応部7142の少なくとも流路を形成する素材としては、例えば、SUS316、SUS304、Ti、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス等の硬質ガラス、PEEK(polyetheretherketone)、PE(polyethylene)、PVC(polyvinylchloride)、PDMS(Polydimethylsiloxane)、Si、PTFE(polytetrafluoroethylene)、PCTFE(PolyChloroTriFluoroEthylene)の内から、耐薬品性、耐圧性、熱伝導性、耐熱性等を考慮して、好ましいものを選択する。混合部7140および反応部7142の接液部の材質は、表面からの溶出が少なく表面触媒修飾が可能で、ある程度の耐薬品性を持ち、−40〜150℃の広い温度範囲に耐えるものが望ましい。
図147は、混合部および反応部の温度を調整する温度調整ケースの構成を示す斜視図である。なお、以下の説明では、反応部7142の温度を調整する温度調整ケース7146についてのみ述べるが、混合部7140のための温度調整ケース7146も同様の構成を有しており、その重複する説明を省略する。温度調整ケース7146は、内部に反応部7142を収容する空間7170が形成されたケース本体7172と該空間7170を覆う蓋部7174とを備えており、これらの内面には、平行に延びる複数の熱媒体流路を構成する溝7176が形成されている。ケース本体7172には、溝7176に連通する給液路7178と排液路7180(図140参照)が形成され、これらの給液路7178と排液路7180はそれぞれ熱媒体コントローラ7107に接続されている。給液路7178は、蓋部7174の溝7176に開口7179を介して連通し、排液路7180も蓋部7174の溝7176に図示しない開口を介して連通している。この例では、溝7176を流れる熱媒体は反応部7142の表裏面に直接接触し、反応部7142は温度調整ケース7146に完全に収容された状態で加熱(または冷却)される。
図示しないが、熱媒体コントローラ7107には、熱媒体の温度を制御する制御機構と熱媒体を移送するポンプが内蔵されている。図140に示すように、熱媒体は熱交換器7182を通過後、混合部7140および反応部7142の温度調整ケース7146に供給されるようになっている。熱交換器7182は例えば冷却用の市水の量を変えることで混合部7140および反応部7142に供給される熱媒体の温度を独立に変えられるようになっている。
図148(a)ないし図148(d)には、温度調整ケース7146の他の例が示されており、ここでは、熱媒体流路7192はケース本体7172と蓋部7174のそれぞれの内部に形成されている。給液路7178は、図148(c)に示すように、給液配管7188の先端が挿入された二重管の構成となっており、細い連通路7190を介して熱媒体流路7192に連通している。排液側も同様の構成である。図148(b)に示すように、混合部7140を収容する温度調整ケース7146と反応部7142を収容する温度調整ケース7146とは、ボルト7194、ナット7195およびスペーサ7196を介して積層して結合されている。
図148(b)には、温度調整ケース7146に収容された混合部7140および反応部7142への液体の供給・排出の経路が示されている。すなわち、それぞれの液体は、温度調整ケース7146を貫通して形成された流通路7198を介して混合部7140へ流出入する。また、混合部7140と反応部7142との間の液体の流通は、温度調整ケース7146の流通路7198を連絡する連絡通路200を介して行う。図148(d)には、反応部7142の液の流入部と流出部の構造が説明されている。液の流れを下方向へ向かわせるために、通常は混合部7140および反応部7142の液の入口は上面に、出口は下面にそれぞれ形成する。
図140に示すように、反応部7142の流出口202は、回収配管204を介して生成物貯留部7104に接続されている。生成物貯留部7104には、冷却用の熱交換器7206、流路切換弁7132の下流側に回収容器7208が設けられている。回収容器7208が置かれる生成物貯留部7104は、他の領域から温度等の影響を受けないように、また生成物から発生する可能性のある有毒ガスが外部に漏洩しないように隔離されている。
図149は、生成物貯留部7104の他の構成例を示すもので、複数の回収容器7208が回転テーブル7212上に設置されている。この例では、回収容器7208は2個であり、回転テーブル7212を移動させるアクチュエータ7214は180度回転型ロータリーアクチュエータである。勿論、回収容器7208の数やアクチュエータ7214の種類は適宜に選択可能である。図140に示す動作制御部7106は、回収容器7208の液面を検知する液面検知センサ7211bからの信号により、回収容器7208の交換時期を判断し、流路切換弁7132(図140参照)により液流を止め、回収口7210の下流に設けた光学的流体検知センサ7211aにより液流の停止を確認して、アクチュエータ7214を作動させて他の回収容器7208を回収口7210の下方に移動させる。
次に、上記のように構成された流体反応装置により、薬液等の液体(原料液)を反応させる工程について説明する。なお、流体反応装置の動作は基本的に動作制御部7106によって自動制御される。まず、原料貯留部7101において、原料液を貯留した貯留容器7110A,7110Bに用意しておく。熱媒体コントローラ7107により熱媒体の温度を設定し、熱交換器7182を通過させる市水の量を調整して各熱媒体の温度をそれぞれ調整し、混合部7140および反応部7142の温度調整ケース7146へ熱媒体を流通させてこれらを所定の温度に維持する。熱媒体の温度は、温度調整ケース7146の入口に設けた温度センサ7216,7218により測定される。
この例では、原料液を処理部7103に供給する前に、混合部7140および反応部7142内の流路に純水等の洗浄液を流して予め洗浄する。流路を洗浄している間、洗浄液の温度を混合部7140の出口の温度センサ7220および反応部7142の出口の温度センサ7222で測定し、洗浄液の温度を熱媒体コントローラ7107にフィードバックする。このようにして、混合部7140および反応部7142を所定の温度に調整する。
混合部7140および反応部7142の温度が調整され、流路の洗浄を終えてから、流路切換弁7132を切り換え、ポンプ7116A,7116Bを駆動して、貯留容器7110A,7110B内の原料液をそれぞれ移送する。原料液は、流量調整装置7300A,7300Bにより所定の流量に調整され、その後、混合部7140、反応部7142、流出口7202、回収口7210を経て回収容器7208に至る。なお、流路切換弁7132はアクチュエータにより作動する自動弁としており、この動作は自動運転も可能である。
混合部7140においては、原料液は予備加熱流路7148A,7148B(図143参照)において所定の温度に加熱された後、合流部7152において合流し、混合する。その際、各液は、図144に示すように、ヘッダ部7154,7155から分液流路7156,7157を経由して合流空間7158に流入する。合流空間7158の断面は下流へ向かうに従い徐々に減少するので、マイクロサイズの流れが規則的に混在し、フィックの法則に則って迅速に混合する。その状態で、所定の温度に維持された反応部7142の反応流路7162に流入すると、反応は、物質移動や熱伝導の制約を受けずに迅速に進行する。したがって、量産手段として充分実用的であるとともに、反応速度の早い爆発性の反応でも低温下で行う必要がなくなる。また、この例では、反応流路7162の幅が合流空間7158の幅に比べて充分広く形成されているので、反応速度が遅い場合でも充分な時間をかけて行うことができ、高い収率を得ることができる。
得られた生成物は、反応流路7162の流出口7202から回収配管7204を経由してマルチ分光分析装置7001に送られ、光源部7024から波長領域の異なる複数の光を異なる分光部28で受光して、被測定液を通過した各波長の分光が行われ、その結果に基づいてその含有成分が測定され、さらにその結果に基づいて、記述したような種々の措置が執られる。
マルチ分光分析装置7001を通過した処理液体は、熱交換器7206に送られ、ここで冷却されて、回収口7210より回収容器7208に流入する。貯留容器7110A,7110Bが空になったり、回収容器7208が満杯になったら、動作制御部7106によりポンプ7116A,7116Bの運転を停止させて処理を終了させる。この場合、貯留容器7110A,7110Bの他に、追加の貯留容器を原料貯留部7101に予め用意しておけば、流路切換弁7126A,7126Bを切り換えることにより、運転を停止させることなく連続的な処理が可能である。なお、反応に時間が掛かる場合には、混合部7140および反応部7142内に液を一定時間閉じ込めてバッチ運転することも可能である。流路切換弁7126A、7126Bも自動弁であるのでこれらの動作は自動運転も可能である。
バッチ運転の方法は、ポンプ7116A,7116Bを一時停止してもよいし、流路切換弁7126A,7126Bを切り換えて、処理部7103への液体の流入を停止させてもよい。これにより、液体の反応時間が長い場合でも反応流路7162の長さを長くする必要がなくなる。バッチ運転の際は、合流空間7158および/または反応流路7162に液体が充満されたことを検知する充満検知手段を用いて運転制御を行うことが好ましい。これは、例えば、図149に示すような光学的流体検知センサが用いられる。これにより、合流空間7158および/または反応流路7162に液体が充満されたと判断した時点で、ポンプ7116A,7116Bを停止させまたは第1の流路切換弁を切換え、液体を反応終結時間に適応する一定時間合流空間7158および/または反応流路7162に滞留させておく。
図150(a)および図150(b)は、混合部7140における合流部の他の構成例を示すものである。この合流部7152aは、Y字状の合流空間7158aに、障害物7224を一定間隔aで所定の距離Lに亘って配置したものである。この例では、直径50μm以下である柱状の障害物7224を、合流点からL=5mmに亘って配置した。図150(b)に示すように、各障害物7224は隣接するものが流れ方向にピッチの半分だけずれるように、千鳥状に配置されている。これによって液体Aおよび液体Bの界面7125が蛇行するので2つの液体の界面面積(接触面積)を大きくすることができる。図151に示す合流部7152bでは、合流空間7158bの中央部に一列の障害物7224を流れ方向に沿って千鳥状に配置したもので、同様に界面面積を大きくすることができる。これは、狭い合流空間7158bで採用するのに好適である。
図152は、流体反応装置の処理部7103の他の構成例を示すものである。これは、図10の処理部7103において、混合部7140と反応部7142との組み合わせをそれぞれ有する2系統R1,R2設け、さらに配液部7102の流路切換弁7126A,7126Bを用いて2種類の原料液をいずれの系統R1,R2にも供給可能にしたものである。このように、2系統を用いることで、必要に応じて処理量を増やすことができるが、その他にも種々の使用方法が有る。例えば、反応生成物が固体粒子を析出しやすく、配管途中で詰まりやすい場合などでは、一方の系統を予備として使用する。また、流路切換弁7126A,7126Bで移送ラインを交互に切り換えて、上述したバッチ運転を連続的に行うことができる。勿論、3系統以上の移送ラインを適宜に並列して設けることができる。この場合も流路切換弁7126A,7126Bは自動操作が可能である。
図153は、処理部7103において反応部を複数直列に配置した例を示す。この例では、1つの混合部7140と3つの反応部7142a,7142b,7142cが直列に接続されており、それぞれに温度センサ7220,7222a,7222b,7222cが設けられている。この例では、反応の段階に応じて反応部7142a,7142b,7142cを独立して温度制御することが可能となっている。この構成は、生化学反応のように反応時間と反応温度を大胆に且つ瞬時に変化させたい反応に適している。たとえば反応部7142aでは100℃で反応させ、反応部7142bでは−20℃で反応させるというような反応もこのシステムでは可能になる。
図154は、処理部7103において混合部を複数設けた例である。この構成例では、A液とB液を混合し反応させる第1の混合部7140および反応部7142が設けられ、この反応部7142の下流側に第2の混合部7140aが設けられている。この混合部7140aではポンプ7116Cから輸送された第3の原料液または反応剤であるC液がA液とB液と合流し、混合する。これらの2つの混合部7140,7140aと1つの反応部7142の温度は個別に制御される。なお、C液は反応停止剤でもよい。
この構成例では、インライン収率評価器7226が第2の混合部7140aの流出口7202に直接接続されている。これにより、化学反応の結果の収率をリアルタイムで確認でき、直ぐにプロセスパラメータへフィードバックすることが可能となる。インライン収率評価器7226としては、被測定物を分離せずに測定可能な方法として赤外分光、近赤外分光、紫外吸光等の方法がある。
この構成例では、さらに、反応生成物の中から不要な物質と必要な物質を分離する分離抽出部7228が第2の混合部7140aの下流側に設けられている。図示するように、分離抽出部7228は、Y字形の分離流路7234を有している。第2の混合部7140aからの液体は分離流路7234により2つの流れに分岐され、1つは物質内の疎水性分子のみを通過させる疎水性壁面7230から形成された流路に、他方は物質内の親水性分子のみを通過させる親水性壁面7232から形成された流路に流れ込む。分離した物質は、それぞれ回収配管7204,7204aを介して回収容器7208,7208aに回収される。分離抽出部7228としては、その他に、疎水性物質だけを吸着可能な膜やポーラスフリットを使用することも考えられる。
図155は、混合・反応と分離抽出を繰り返して連続処理するための構成例である。すなわち、A液とB液を処理する混合部7140a、反応部7142a、および分離抽出部7228aが上流側に配置され、分離抽出部7228aから抽出された液体とC液を処理する混合部7140b、反応部7142b、および分離抽出部7228bが下流側に配置されている。A液とB液が反応した後の不要物質は分離抽出部7228aの排出口7234aから系外に出され、C液を加えた第2の反応における不要物質は分離抽出部7228bの排出口7234bから系外に出される。さらに、分離抽出部7228bから抽出された液体と第4の液であるD液を混合させる混合部7140cが設けられている。なお、D液は反応停止剤でもよく、他の原料溶液でも良い。混合部7140cの下流側にインライン収率評価器7226を設けても良い。
図156(a)には、図155の各部を積層化した構成が示されている。液体は下方へ流れる。混合部7140a、反応部7142a、分離抽出部7228a、混合部7140b、反応部7142b、分離抽出部7228b、および混合部7140cは、温度調整ケース7146にそれぞれ収容され、さらにボルト7194、ナット7195、スペーサ7196によって所定の間隔をおいて積層化されている。各部間の液の移動は連絡通路7200(図143(b)参照)を介して行われる。各部の間には空気を介在させ、空気の断熱性を利用して他の部の熱影響を受けないようにして、温度制御の精度を向上させている。図156(b)に示すように、各温度調整ケース7146の周りを気泡を含んだクリーンなシリコン部材7236等の断熱材で覆うのが好ましい。
この流体反応装置に導入される流体は液体、気体であり、回収される物質は液体、気体、固体またはこれらの混合体である。導入物質が粉体などの固体の場合は原料貯留部7101に粉体溶解器を設置することも可能である。図157は、2つの原料液のうち、一方が粉体を溶解した溶液、他方は元々液体の場合の原料貯留部7101の構成例である。原料の粉体と溶媒は粉体溶解器7240の原料導入口7242から導入される。この例では、原料粉体をヒータ7244による加熱と攪拌器7246による攪拌によって溶解し、生成した原料液を、取出し口7148に引き込まれた配管7249より、ポンプ7116Aによって、混合部7140および反応部7142に送り込むようになっている。