JPWO2005012255A1 - 炎症性関節疾患の治療剤 - Google Patents
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Abstract
本発明の目的は、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走を抑制するための薬剤、並びに炎症性関節疾患の治療及び/又は予防のための医薬を提供することである。本発明によれば、下記式(I):で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走を抑制するための薬剤、並びに炎症性関節疾患の治療及び/又は予防のための医薬が提供される。
Description
本発明は、ピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走を抑制するための薬剤、並びに炎症性関節疾患の治療及び/又は予防のための医薬に関する。
関節リウマチ、変形性関節症及び感染や外傷に起因する関節炎等を含む炎症性関節疾患は、関節滑膜の炎症を介して軟骨や骨の破壊を惹起する。炎症滑膜には、血管新生、リンパ球浸潤、並びに滑膜細胞の増殖及び活性化が認められる。特に、関節リウマチの病態の形成には、関節局所の滑膜細胞の増殖や遊走が重要であると考えられている。滑膜細胞の増殖や遊走には、炎症性サイトカイン(Arend WP,et al.,Arthritis Rheum 1995;138:151−60)や酸化ストレス(Ozturk HS,et al.,Rheumatol Int 1999:19(1−2):35−7、Firestein GS,et al.,J Clin Invest 1995;96:1631−8、及びWinrow VR,et al.,Br Med Bull 1993;Jul;49(3):506−22)の関与が示唆されている。
関節性疾患の治療のためにはヒアルロン酸ナトリウムが有効であることが知られており、また、亜鉛が関節炎の治療のために有効であることも知られている。ヒアルロン酸ナトリウムは生物適合性及び流動特性が好適であるため、炎症性関節疾患の治療に使用されているが、滑膜細胞の増殖や活性化に対する抑制効果は実質的に認められない。また、亜鉛についても十分な治療効果は得られていない。
一方、下記式(I):
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1〜5のアルキル又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1〜5のアルキル又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル、炭素数5〜7のシクロアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル又はフェニル、又は炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル、炭素数1〜3のアルキルメルカプト、炭素数1〜4のアルキルアミノ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、及びアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体については、医薬の用途として、脳機能正常化作用(特公平5−31523号公報)、過酸化脂質生成抑制作用(特公平5−35128号公報)、抗潰瘍作用(特開平3−215425号公報)、血糖上昇抑制作用(特開平3−215426号公報)、心筋炎の予防及び/又は治療作用(特開2004−137253号公報)、膵疾患の予防及び/又は治療作用(特開2004−143149号公報)及び炎症性腸疾患の予防及び/又は治療作用(WO2004/022543号公報)等が知られている。
また、上記式(I)で示されるいくつかの化合物は抗炎症作用を有していることが知られている(Izvestiya Timiryazevskoi Sel’skohozyaistvennoi Akademii,1968,(5),210−14)。しかしながら、これらの化合物の抗炎症作用は以下に示すようにアミノピリンやフェニルブタゾンと比較して弱い。約0.2mmol/kg腹腔内投与時の炎症抑制率はアミノピリン46%、フェニルブタゾン49%に対し、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾロン−5−オン32.6%、3−メチル−1−ベンジル−2−ピラゾロン−5−オン27.6%、1−フェニル−2−ピラゾロン−5−オン36.2%である。
また、上記式(I)の化合物のうち、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンを有効成分とする製剤は、2001年6月以来、脳保護剤(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)として上市されている。この「エダラボン」は、活性酸素に対して高い反応性を有することが報告されている(Kawai,H.,et al.,J.Phamacol.Exp.Ther.,281(2),921,1997;及びWu,TW.et al.,Life Sci,67(19),2387,2000)。このように、エダラボンは活性酸素をはじめとする種々のフリーラジカルを消去することで、細胞障害などを防ぐ働きをするフリーラジカルスカベンジャーである。しかしながら、滑膜細胞の増殖に対するエダラボンの影響、並びに関節リウマチ等の炎症性関節疾患に対するエダラボンの有効性についてはこれまで報告がない。
特公平5−31523号公報 特公平5−35128号公報 特開平3−215425号公報 特開平3−215426号公報 特開2004−137253号公報 特開2004−143149号公報 WO2004/022543号公報 Arend WP,et al.,Arthritis Rheum 1995;138:151−60 Ozturk HS,et al.,Rheumatol Int 1999:19(1−2):35−7 Firestein GS,et al.,J Clin Invest 1995;96:1631−8 Winrow VR,et al.,Br Med Bull 1993;Jul;49(3):506−22 Izvestiya Timiryazevskoi Sel’skohozyaistvennoi Akademii,1968,(5),210−14 Kawai,H.,et al.,J.Phamacol.Exp.Ther.,281(2),921,1997 Wu,TW.et al.,Life Sci,67(19),2387,2000
関節性疾患の治療のためにはヒアルロン酸ナトリウムが有効であることが知られており、また、亜鉛が関節炎の治療のために有効であることも知られている。ヒアルロン酸ナトリウムは生物適合性及び流動特性が好適であるため、炎症性関節疾患の治療に使用されているが、滑膜細胞の増殖や活性化に対する抑制効果は実質的に認められない。また、亜鉛についても十分な治療効果は得られていない。
一方、下記式(I):
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1〜5のアルキル又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1〜5のアルキル又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル、炭素数5〜7のシクロアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル又はフェニル、又は炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル、炭素数1〜3のアルキルメルカプト、炭素数1〜4のアルキルアミノ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、及びアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体については、医薬の用途として、脳機能正常化作用(特公平5−31523号公報)、過酸化脂質生成抑制作用(特公平5−35128号公報)、抗潰瘍作用(特開平3−215425号公報)、血糖上昇抑制作用(特開平3−215426号公報)、心筋炎の予防及び/又は治療作用(特開2004−137253号公報)、膵疾患の予防及び/又は治療作用(特開2004−143149号公報)及び炎症性腸疾患の予防及び/又は治療作用(WO2004/022543号公報)等が知られている。
また、上記式(I)で示されるいくつかの化合物は抗炎症作用を有していることが知られている(Izvestiya Timiryazevskoi Sel’skohozyaistvennoi Akademii,1968,(5),210−14)。しかしながら、これらの化合物の抗炎症作用は以下に示すようにアミノピリンやフェニルブタゾンと比較して弱い。約0.2mmol/kg腹腔内投与時の炎症抑制率はアミノピリン46%、フェニルブタゾン49%に対し、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾロン−5−オン32.6%、3−メチル−1−ベンジル−2−ピラゾロン−5−オン27.6%、1−フェニル−2−ピラゾロン−5−オン36.2%である。
また、上記式(I)の化合物のうち、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンを有効成分とする製剤は、2001年6月以来、脳保護剤(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)として上市されている。この「エダラボン」は、活性酸素に対して高い反応性を有することが報告されている(Kawai,H.,et al.,J.Phamacol.Exp.Ther.,281(2),921,1997;及びWu,TW.et al.,Life Sci,67(19),2387,2000)。このように、エダラボンは活性酸素をはじめとする種々のフリーラジカルを消去することで、細胞障害などを防ぐ働きをするフリーラジカルスカベンジャーである。しかしながら、滑膜細胞の増殖に対するエダラボンの影響、並びに関節リウマチ等の炎症性関節疾患に対するエダラボンの有効性についてはこれまで報告がない。
本発明の課題は、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走を抑制するための薬剤、並びに炎症性関節疾患の治療及び/又は予防のための医薬を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として、式(I)で示されるピラゾロン誘導体を用いて、ヒト滑膜細胞の増殖能及び遊走能に及ぼす影響について検討した。その結果、上記ピラゾロン誘導体の投与により、ヒト滑膜細胞の増殖及び遊走を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、下記式(I):
(式中、R1は、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し;R2は、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表し;R3は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走を抑制するための薬剤が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、式(I)で示されるピラゾロン誘導体は、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである。
本発明の別の側面によれば、上記式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、炎症性関節疾患の治療及び/又は予防のための医薬が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、上記医薬は、式(I)で示されるピラゾロン誘導体の血漿中未変化体濃度の最大値Cmaxが15〜3000ng/mlとなるように投与される。
本発明の好ましい態様によれば、式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである。
本発明の好ましい態様によれば、炎症性関節疾患は、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走に起因する疾患である。
本発明の好ましい態様によれば、炎症性関節疾患は、関節リウマチ、変形性関節症、感染性関節炎又は外傷性関節炎である。
本発明のさらに別の局面によれば、上記式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の有効量をヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走を抑制する方法が提供される。
本発明のさらに別の局面によれば、上記式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の予防及び/又は治療有効量をヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む、炎症性関節疾患の治療及び/又は予防する方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走を抑制するための薬剤の製造のための式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の使用が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、炎症性関節疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のための式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の使用が提供される。
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として、式(I)で示されるピラゾロン誘導体を用いて、ヒト滑膜細胞の増殖能及び遊走能に及ぼす影響について検討した。その結果、上記ピラゾロン誘導体の投与により、ヒト滑膜細胞の増殖及び遊走を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、下記式(I):
(式中、R1は、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し;R2は、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表し;R3は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走を抑制するための薬剤が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、式(I)で示されるピラゾロン誘導体は、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである。
本発明の別の側面によれば、上記式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、炎症性関節疾患の治療及び/又は予防のための医薬が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、上記医薬は、式(I)で示されるピラゾロン誘導体の血漿中未変化体濃度の最大値Cmaxが15〜3000ng/mlとなるように投与される。
本発明の好ましい態様によれば、式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである。
本発明の好ましい態様によれば、炎症性関節疾患は、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走に起因する疾患である。
本発明の好ましい態様によれば、炎症性関節疾患は、関節リウマチ、変形性関節症、感染性関節炎又は外傷性関節炎である。
本発明のさらに別の局面によれば、上記式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の有効量をヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走を抑制する方法が提供される。
本発明のさらに別の局面によれば、上記式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の予防及び/又は治療有効量をヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む、炎症性関節疾患の治療及び/又は予防する方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走を抑制するための薬剤の製造のための式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の使用が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、炎症性関節疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のための式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の使用が提供される。
図1は、IL−1β刺激による滑膜細胞増殖に及ぼすエダラボンの用量依存性効果(n=13)を測定した結果(平均±SE)を示す。
*:P<0.01、**:P<0.001、***:P<0.0001
†:P<0.001
図2は、IL−1β刺激による滑膜細胞遊走に及ぼすエダラボンの用量依存性効果(n=10)を測定した結果(平均±SD)を示す。
*:P<0.05vsエダラボン0M/IL−1β 0ng/ml
#:P<0.05vsエダラボン0M/IL−1β 10ng/ml
*:P<0.01、**:P<0.001、***:P<0.0001
†:P<0.001
図2は、IL−1β刺激による滑膜細胞遊走に及ぼすエダラボンの用量依存性効果(n=10)を測定した結果(平均±SD)を示す。
*:P<0.05vsエダラボン0M/IL−1β 0ng/ml
#:P<0.05vsエダラボン0M/IL−1β 10ng/ml
本発明による滑膜細胞の増殖及び/又は遊走を抑制するための薬剤、並びに本発明による炎症性関節疾患の治療及び/又は予防のための医薬(以下、これらを総称して、本発明の薬剤と称する)は、本明細書に定義する式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含む。
本発明で用いる式(I)で示される化合物は、互変異性により、以下の式(I’)又は(I”)で示される構造をもとりうる。本明細書の式(I)には、便宜上、互変異性体のうちの1つを示したが、当業者には下記の互変異性体の存在は自明である。本発明の薬剤の有効成分としては、下記の式(I’)又は(I”)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を用いてもよい。
式(I)において、R1の定義におけるアリール基は単環性又は多環性アリール基のいずれでもよい。例えば、フェニル基、ナフチル基などのほか、メチル基、ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子、又は水酸基等の置換基で置換されたフェニル基等が挙げられる。アリール部分を有する他の置換基(アリールオキシ基など)におけるアリール部分についても同様である。
R1、R2及びR3の定義における炭素数1〜5のアルキル基は直鎖状、分枝鎖状のいずれでもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。アルキル部分を有する他の置換基(アルコキシカルボニルアルキル基)におけるアルキル部分についても同様である。
R1の定義における総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基としては、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、プロポキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基等が挙げられる。
R2の定義におけるアリールオキシ基としては、p−メチルフェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、p−ヒドロキシフェノキシ基等が挙げられ、アリールメルカプト基としては、フェニルメルカプト基、p−メチルフェニルメルカプト基、p−メトキシフェニルメルカプト基、p−クロロフェニルメルカプト基、p−ヒドロキシフェニルメルカプト基等が挙げられる。
R2及びR3の定義における炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。R3の定義における炭素数5〜7のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
R3の定義において、フェニル基の置換基における炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられ、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられ、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基としては、メチルメルカプト基、エチルメルカプト基、プロピルメルカプト基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基等が挙げられ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等が挙げられる。
本発明の薬剤の有効成分として好適に用いられる化合物(I)として、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3,4−ジメチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロピルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロポキシフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブロモフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−フルオロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(3−メチル−5−オキソ−2−ピラゾリン−1−イル)安息香酸;
1−(4−エトキシカルボニルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ニトロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−エチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−3−プロピル−2−ピラゾリン−5−オン;
1,3−ジフェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−フェニル−1−(p−トリル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3,4−ジメチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−イソブチル−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェノキシ−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェニルメルカプト−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3,3’,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−2−フェニル−2H−インダゾール−3−オン;
3−(エトキシカルボニルメチル)−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1,3−ジメチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−エチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ブチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキエチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−シクロヘキシル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ベンジル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(α−ナフチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−メチル−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−アミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(アセトアミドフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;及び
1−(4−シアノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン
本発明の薬剤の有効成分としては、式(I)で表される遊離形態の化合物のほか、生理学的に許容される塩を用いてもよい。生理学的に許容される塩としては、塩酸、硫酸、臭化水素塩、リン酸等の鉱酸との塩;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、アスコルビン酸、クエン酸、サリチル酸、ニコチン酸、酒石酸等の有機酸との塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニア、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、エタノールアミン、N−メチルグルタミン、L−グルタミン等のアミンとの塩が挙げられる。また、グリシンなどのアミノ酸との塩を用いてもよい。
本発明の薬剤の有効成分としては、上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩の水和物、又は上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩の溶媒和物を用いてもよい。溶媒和物を形成する有機溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどを例示することができる。また、上記式(I)で表される化合物は、置換基の種類により1以上の不斉炭素を有する場合があり、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。本発明の薬剤の有効成分としては、純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などを用いてもよい。
式(I)で表される化合物はいずれも公知の化合物であり、特公平5−31523号公報などに記載された方法により当業者が容易に合成できる。
本発明の薬剤の投与量は特に限定されないが、通常は、有効成分である式(I)で示される化合物の血漿中未変化体濃度の最大値Cmaxが15〜3000ng/ml、好ましくは15〜2000ng/ml、より好ましくは15〜1300ng/mlとなるように投与する。このような血漿中未変化体濃度を得るためには、式(I)で示される化合物を経口投与の場合には一回あたり0.1〜1000mg/kg体重、好ましくは一回あたり0.5〜50mg/kg体重、より好ましくは一回あたり0.5〜30mg/kg体重、非経口投与の場合には一回あたり0.01〜100mg/kg体重、好ましくは一回あたり0.01〜10mg/kg体重、より好ましくは一回あたり0.1〜10mg/kg体重投与すればよい。上記投与量は1日1回又は2〜3回投与するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜増減してもよい。
本発明の薬剤としては、上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物をそのまま投与してもよいが、一般的には、有効成分である上記の物質と薬理学的及び製剤学的に許容される添加物を含む医薬組成物を調製して投与することが好ましい。
薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を用いることができる。
経口投与に適する医薬組成物には、添加物として、例えば、ブドウ糖、乳糖、D−マンニトール、デンプン、又は結晶セルロース等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、デンプン、又はカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤又は崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム又はタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール又は酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、又はハードファット等の基剤を用いることができる。
注射あるいは点滴用に適する医薬組成物には、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の水性あるいは用時溶解型注射剤を構成しうる溶解剤又は溶解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D−マンニトール、グリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基等のpH調節剤等の添加物を用いることができる。
本発明の薬剤の形態は特に限定されず、当業者に利用可能な種々の形態をとることができる。経口投与に適する薬剤として、例えば、固体の製剤用添加物を用いて錠剤、散剤、顆粒剤、硬ゼラチンカプセル剤、坐剤、又はトローチ剤などを調製することができ、液状の製剤用添加物を用いてシロップ剤、乳剤、軟ゼラチンカプセル剤などを調製することができる。また、非経口投与に適する薬剤として、注射剤、点滴剤、吸入剤、坐剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤などを調製することができる。なお、上記の式(I)の化合物を有効成分とする脳保護剤(点滴剤)が、すでに臨床において使用されているので(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)、本発明の薬剤において上記市販製剤をそのまま用いることができる。
本発明の薬剤の投与経路は特に限定されず、経口的又は非経口的に投与することができる。非経口投与の投与経路も特に限定されず、静脈内、筋肉内、皮内、皮下に注射投与することができる。
本発明の薬剤は、炎症性関節疾患の発症に先立って予防的に投与しておくこともできる。また、炎症性関節疾患を発症した患者に対しては、症状の悪化の防止ないしは症状の軽減などを目的として、本発明の薬剤を該患者に投与することができる。
本発明の薬剤の投与対象となる炎症性関節疾患は最も広義に解釈され、好ましくは滑膜細胞の増殖及び/又は遊走に起因する疾患であり、例えば、関節リウマチ、変形性関節症又は感染や外傷に起因する感染性関節炎や外傷性関節炎等が挙げられる。炎症性関節疾患は、滑膜細胞の増殖と活性化により惹起されると考えられている。活性化された滑膜細胞はサイトカイン、プロスタグランジン、組織破壊酵素などのケミカルメディエーターを産生し、軟骨や骨の破壊を引き起こし、関節の炎症を生じさせる。関節リウマチ、変形性関節症、及び感染や外傷患者から採取した滑膜細胞はインビトロにおいて増殖するが、これらの滑膜細胞の増殖及び遊走は、本発明で用いる式(I)で示されるピラゾロン誘導体により抑制することができる。滑膜細胞の増殖や遊走を抑制することができれば、関節リウマチなどの炎症性関節疾患の対症的な治療が可能である。従って、式(I)で示されるピラゾロン誘導体は、関節リウマチ、変形性関節症又は感染性あるいは外傷性関節炎等の炎症性関節疾患の治療及び/又は予防のために有用である。
本発明で用いる式(I)で示される化合物は、互変異性により、以下の式(I’)又は(I”)で示される構造をもとりうる。本明細書の式(I)には、便宜上、互変異性体のうちの1つを示したが、当業者には下記の互変異性体の存在は自明である。本発明の薬剤の有効成分としては、下記の式(I’)又は(I”)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を用いてもよい。
式(I)において、R1の定義におけるアリール基は単環性又は多環性アリール基のいずれでもよい。例えば、フェニル基、ナフチル基などのほか、メチル基、ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子、又は水酸基等の置換基で置換されたフェニル基等が挙げられる。アリール部分を有する他の置換基(アリールオキシ基など)におけるアリール部分についても同様である。
R1、R2及びR3の定義における炭素数1〜5のアルキル基は直鎖状、分枝鎖状のいずれでもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。アルキル部分を有する他の置換基(アルコキシカルボニルアルキル基)におけるアルキル部分についても同様である。
R1の定義における総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基としては、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、プロポキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基等が挙げられる。
R2の定義におけるアリールオキシ基としては、p−メチルフェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、p−ヒドロキシフェノキシ基等が挙げられ、アリールメルカプト基としては、フェニルメルカプト基、p−メチルフェニルメルカプト基、p−メトキシフェニルメルカプト基、p−クロロフェニルメルカプト基、p−ヒドロキシフェニルメルカプト基等が挙げられる。
R2及びR3の定義における炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。R3の定義における炭素数5〜7のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
R3の定義において、フェニル基の置換基における炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられ、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられ、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基としては、メチルメルカプト基、エチルメルカプト基、プロピルメルカプト基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基等が挙げられ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等が挙げられる。
本発明の薬剤の有効成分として好適に用いられる化合物(I)として、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3,4−ジメチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロピルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロポキシフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブロモフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−フルオロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(3−メチル−5−オキソ−2−ピラゾリン−1−イル)安息香酸;
1−(4−エトキシカルボニルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ニトロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−エチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−3−プロピル−2−ピラゾリン−5−オン;
1,3−ジフェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−フェニル−1−(p−トリル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3,4−ジメチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−イソブチル−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェノキシ−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェニルメルカプト−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3,3’,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−2−フェニル−2H−インダゾール−3−オン;
3−(エトキシカルボニルメチル)−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1,3−ジメチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−エチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ブチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキエチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−シクロヘキシル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ベンジル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(α−ナフチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−メチル−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−アミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(アセトアミドフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;及び
1−(4−シアノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン
本発明の薬剤の有効成分としては、式(I)で表される遊離形態の化合物のほか、生理学的に許容される塩を用いてもよい。生理学的に許容される塩としては、塩酸、硫酸、臭化水素塩、リン酸等の鉱酸との塩;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、アスコルビン酸、クエン酸、サリチル酸、ニコチン酸、酒石酸等の有機酸との塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニア、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、エタノールアミン、N−メチルグルタミン、L−グルタミン等のアミンとの塩が挙げられる。また、グリシンなどのアミノ酸との塩を用いてもよい。
本発明の薬剤の有効成分としては、上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩の水和物、又は上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩の溶媒和物を用いてもよい。溶媒和物を形成する有機溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどを例示することができる。また、上記式(I)で表される化合物は、置換基の種類により1以上の不斉炭素を有する場合があり、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。本発明の薬剤の有効成分としては、純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などを用いてもよい。
式(I)で表される化合物はいずれも公知の化合物であり、特公平5−31523号公報などに記載された方法により当業者が容易に合成できる。
本発明の薬剤の投与量は特に限定されないが、通常は、有効成分である式(I)で示される化合物の血漿中未変化体濃度の最大値Cmaxが15〜3000ng/ml、好ましくは15〜2000ng/ml、より好ましくは15〜1300ng/mlとなるように投与する。このような血漿中未変化体濃度を得るためには、式(I)で示される化合物を経口投与の場合には一回あたり0.1〜1000mg/kg体重、好ましくは一回あたり0.5〜50mg/kg体重、より好ましくは一回あたり0.5〜30mg/kg体重、非経口投与の場合には一回あたり0.01〜100mg/kg体重、好ましくは一回あたり0.01〜10mg/kg体重、より好ましくは一回あたり0.1〜10mg/kg体重投与すればよい。上記投与量は1日1回又は2〜3回投与するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜増減してもよい。
本発明の薬剤としては、上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物をそのまま投与してもよいが、一般的には、有効成分である上記の物質と薬理学的及び製剤学的に許容される添加物を含む医薬組成物を調製して投与することが好ましい。
薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を用いることができる。
経口投与に適する医薬組成物には、添加物として、例えば、ブドウ糖、乳糖、D−マンニトール、デンプン、又は結晶セルロース等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、デンプン、又はカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤又は崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム又はタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール又は酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、又はハードファット等の基剤を用いることができる。
注射あるいは点滴用に適する医薬組成物には、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の水性あるいは用時溶解型注射剤を構成しうる溶解剤又は溶解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D−マンニトール、グリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基等のpH調節剤等の添加物を用いることができる。
本発明の薬剤の形態は特に限定されず、当業者に利用可能な種々の形態をとることができる。経口投与に適する薬剤として、例えば、固体の製剤用添加物を用いて錠剤、散剤、顆粒剤、硬ゼラチンカプセル剤、坐剤、又はトローチ剤などを調製することができ、液状の製剤用添加物を用いてシロップ剤、乳剤、軟ゼラチンカプセル剤などを調製することができる。また、非経口投与に適する薬剤として、注射剤、点滴剤、吸入剤、坐剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤などを調製することができる。なお、上記の式(I)の化合物を有効成分とする脳保護剤(点滴剤)が、すでに臨床において使用されているので(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)、本発明の薬剤において上記市販製剤をそのまま用いることができる。
本発明の薬剤の投与経路は特に限定されず、経口的又は非経口的に投与することができる。非経口投与の投与経路も特に限定されず、静脈内、筋肉内、皮内、皮下に注射投与することができる。
本発明の薬剤は、炎症性関節疾患の発症に先立って予防的に投与しておくこともできる。また、炎症性関節疾患を発症した患者に対しては、症状の悪化の防止ないしは症状の軽減などを目的として、本発明の薬剤を該患者に投与することができる。
本発明の薬剤の投与対象となる炎症性関節疾患は最も広義に解釈され、好ましくは滑膜細胞の増殖及び/又は遊走に起因する疾患であり、例えば、関節リウマチ、変形性関節症又は感染や外傷に起因する感染性関節炎や外傷性関節炎等が挙げられる。炎症性関節疾患は、滑膜細胞の増殖と活性化により惹起されると考えられている。活性化された滑膜細胞はサイトカイン、プロスタグランジン、組織破壊酵素などのケミカルメディエーターを産生し、軟骨や骨の破壊を引き起こし、関節の炎症を生じさせる。関節リウマチ、変形性関節症、及び感染や外傷患者から採取した滑膜細胞はインビトロにおいて増殖するが、これらの滑膜細胞の増殖及び遊走は、本発明で用いる式(I)で示されるピラゾロン誘導体により抑制することができる。滑膜細胞の増殖や遊走を抑制することができれば、関節リウマチなどの炎症性関節疾患の対症的な治療が可能である。従って、式(I)で示されるピラゾロン誘導体は、関節リウマチ、変形性関節症又は感染性あるいは外傷性関節炎等の炎症性関節疾患の治療及び/又は予防のために有用である。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されるものではない。
合成例:3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン(以下、エダラボンと称す)の合成
エタノール50ml中にアセト酢酸エチル13.0g及びフェニルヒドラジン10.8gを加え、3時間還流攪拌した。反応液を放冷後、析出した結晶をろ取し、エタノールより再結晶して、表題の化合物11.3gを無色結晶として得た。
収率 67%
融点 127.5〜128.5℃
[実施例1]:
ヒト培養滑膜細胞は関節リウマチ患者より得た。即ち、関節リウマチ患者の膝関節人工関節置換術の際に、患者の同意を得た後、採取した滑膜を培養し(Kumon Y,et al.,J Rheumatol 1999;26:785−90)、これを用いて以下の実験(1)及び(2)を行った。
(1)細胞増殖能に及ぼすエダラボンの影響の検討
96穴培養プレートを用いて細胞増殖能を検討した。培養滑膜細胞8×103個/ウエルを96穴培養プレートに播種し、培養プレートに細胞が固着した後、図1に示す各種濃度のエダラボンとIL−1βを添加し、37℃でインキュベーションした(合計100μl)。細胞増殖能の評価は、TetraColor ONE Cell Proliferation Assay System(生化学工業より購入)を用いて行った。プレート中のサンプル100μlにTetraColor ONE試薬10μlを加え、37℃で120分間インキュベーションした後、波長450nm(対照波長600nm)にて吸光度を測定し、以下の(A)及び(B)を比較検討した。
(A)エダラボンの細胞増殖に及ぼす時間依存性効果(培養0、24、48、72時間後に測定)
エダラボン非投与群では培養24時間後より有意な滑膜細胞の増殖反応(p<0.0001)が認められたが、エダラボン(1×10−5M)投与群では培養24時間後には有意な細胞増殖反応がみられず、培養48時間後より有意な細胞増殖反応(p<0.0001)が認められた。また、培養24、48、72時間のすべての時点において、エダラボン非投与群の細胞数は、エダラボン投与群の細胞数に比し有意に増加していた。なお、エダラボン投与により細胞数の減少はみられなかった。
(B)エダラボンの細胞増殖に及ぼす用量依存性効果(培養48時間後に測定)
エダラボンの細胞増殖に及ぼす用量依存性効果を測定した結果を図1に示す。IL−1β刺激による滑膜増殖反応は、IL−1β濃度0.01、0.1及び1ng/mlの範囲では用量依存を認めた。また、エダラボンの増殖抑制効果は用量依存性であったが、エダラボン濃度1×10−6Mから増殖抑制効果を認めた。
(2)滑膜細胞の遊走能に及ぼすエダラボンの影響の検討
24穴培養プレートとケモタキセル(ポアサイズ8μm、クラボウ)を用いて細胞遊走能(走化性)を検討した。ケモタキセルを24穴培養プレート内に設置し、ケモタキセル内に培養滑膜細胞5×104個を播種した。上層チャンバーにエダラボン、下層チャンバーには走化性物質であるIL−1βを入れて37℃で18時間培養し、ケモタキセルのポアを通り抜けて遊走してきた細胞数を共焦点レーザー顕微鏡を用いて計測し、遊走の指標とした。測定結果を図2に示す。
IL−1β濃度10ng/ml刺激下で、培養滑膜細胞の遊走能は有意に増加したが、この遊走はエダラボン濃度1×10−7Mにより有意に抑制された。
(3)まとめ
式(1)で示されるピラゾロン誘導体は既に述べたように約0.2mmol/kg投与において抗炎症作用を有していることが知られている。エダラボンを例に取ると、抗炎症作用を発現することが知られている0.2mmol/kg(34.8mg/kg)を腹腔内投与した時の血漿中未変化体濃度の最大値Cmaxは、3000ng/ml以上と推定される(10mg/kg腹腔内投与時の血漿中未変化体濃度の最大値Cmaxは約2900ng/mlである)。一方、細胞増殖抑制効果は1×10−6M(174.2ng/ml)、滑膜細胞遊走抑制効果は1×10−7M(17.4ng/ml)以上で発現している。これらの濃度を比較すると、抗炎症作用を示すことが知られている濃度は細胞増殖抑制効果を示す濃度の17倍以上であるため、式(1)で示されるピラゾロン誘導体はこの誘導体が有する抗炎症作用に関係なく、炎症性関節疾患を治療及び/又は予防しうるものと考えられる。
合成例:3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン(以下、エダラボンと称す)の合成
エタノール50ml中にアセト酢酸エチル13.0g及びフェニルヒドラジン10.8gを加え、3時間還流攪拌した。反応液を放冷後、析出した結晶をろ取し、エタノールより再結晶して、表題の化合物11.3gを無色結晶として得た。
収率 67%
融点 127.5〜128.5℃
[実施例1]:
ヒト培養滑膜細胞は関節リウマチ患者より得た。即ち、関節リウマチ患者の膝関節人工関節置換術の際に、患者の同意を得た後、採取した滑膜を培養し(Kumon Y,et al.,J Rheumatol 1999;26:785−90)、これを用いて以下の実験(1)及び(2)を行った。
(1)細胞増殖能に及ぼすエダラボンの影響の検討
96穴培養プレートを用いて細胞増殖能を検討した。培養滑膜細胞8×103個/ウエルを96穴培養プレートに播種し、培養プレートに細胞が固着した後、図1に示す各種濃度のエダラボンとIL−1βを添加し、37℃でインキュベーションした(合計100μl)。細胞増殖能の評価は、TetraColor ONE Cell Proliferation Assay System(生化学工業より購入)を用いて行った。プレート中のサンプル100μlにTetraColor ONE試薬10μlを加え、37℃で120分間インキュベーションした後、波長450nm(対照波長600nm)にて吸光度を測定し、以下の(A)及び(B)を比較検討した。
(A)エダラボンの細胞増殖に及ぼす時間依存性効果(培養0、24、48、72時間後に測定)
エダラボン非投与群では培養24時間後より有意な滑膜細胞の増殖反応(p<0.0001)が認められたが、エダラボン(1×10−5M)投与群では培養24時間後には有意な細胞増殖反応がみられず、培養48時間後より有意な細胞増殖反応(p<0.0001)が認められた。また、培養24、48、72時間のすべての時点において、エダラボン非投与群の細胞数は、エダラボン投与群の細胞数に比し有意に増加していた。なお、エダラボン投与により細胞数の減少はみられなかった。
(B)エダラボンの細胞増殖に及ぼす用量依存性効果(培養48時間後に測定)
エダラボンの細胞増殖に及ぼす用量依存性効果を測定した結果を図1に示す。IL−1β刺激による滑膜増殖反応は、IL−1β濃度0.01、0.1及び1ng/mlの範囲では用量依存を認めた。また、エダラボンの増殖抑制効果は用量依存性であったが、エダラボン濃度1×10−6Mから増殖抑制効果を認めた。
(2)滑膜細胞の遊走能に及ぼすエダラボンの影響の検討
24穴培養プレートとケモタキセル(ポアサイズ8μm、クラボウ)を用いて細胞遊走能(走化性)を検討した。ケモタキセルを24穴培養プレート内に設置し、ケモタキセル内に培養滑膜細胞5×104個を播種した。上層チャンバーにエダラボン、下層チャンバーには走化性物質であるIL−1βを入れて37℃で18時間培養し、ケモタキセルのポアを通り抜けて遊走してきた細胞数を共焦点レーザー顕微鏡を用いて計測し、遊走の指標とした。測定結果を図2に示す。
IL−1β濃度10ng/ml刺激下で、培養滑膜細胞の遊走能は有意に増加したが、この遊走はエダラボン濃度1×10−7Mにより有意に抑制された。
(3)まとめ
式(1)で示されるピラゾロン誘導体は既に述べたように約0.2mmol/kg投与において抗炎症作用を有していることが知られている。エダラボンを例に取ると、抗炎症作用を発現することが知られている0.2mmol/kg(34.8mg/kg)を腹腔内投与した時の血漿中未変化体濃度の最大値Cmaxは、3000ng/ml以上と推定される(10mg/kg腹腔内投与時の血漿中未変化体濃度の最大値Cmaxは約2900ng/mlである)。一方、細胞増殖抑制効果は1×10−6M(174.2ng/ml)、滑膜細胞遊走抑制効果は1×10−7M(17.4ng/ml)以上で発現している。これらの濃度を比較すると、抗炎症作用を示すことが知られている濃度は細胞増殖抑制効果を示す濃度の17倍以上であるため、式(1)で示されるピラゾロン誘導体はこの誘導体が有する抗炎症作用に関係なく、炎症性関節疾患を治療及び/又は予防しうるものと考えられる。
式(I)で示されるピラゾロン誘導体は、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走を効果的に抑制することができ、炎症性関節疾患の治療及び/又は予防のための医薬として有用である。
本出願が主張する優先権の基礎となる出願である特願2003−205352の明細書に記載の内容は全て、本明細書の開示の一部として本明細書中に引用により取り込むものとする。
本出願が主張する優先権の基礎となる出願である特願2003−205352の明細書に記載の内容は全て、本明細書の開示の一部として本明細書中に引用により取り込むものとする。
Claims (21)
- 下記式(I):
(式中、R1は、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し;R2は、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表し;R3は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走を抑制するための薬剤。 - 式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである請求項1に記載の薬剤。
- 下記式(I):
(式中、R1は、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し;R2は、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表し;R3は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の有効量をヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走を抑制する方法。 - 式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである請求項3に記載の方法。
- 滑膜細胞の増殖及び/又は遊走を抑制するための薬剤の製造のための、下記式(I):
(式中、R1は、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し;R2は、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表し;R3は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の使用。 - 式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである請求項5に記載の使用。
- 下記式(I):
(式中、R1は、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し;R2は、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表し;R3は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む、炎症性関節疾患の治療及び/又は予防のための医薬。 - 式(I)で示されるピラゾロン誘導体の血漿中未変化体濃度の最大値Cmaxが15〜3000ng/mlとなるように投与されることを特徴とする、請求項7に記載の医薬。
- 式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである請求項7又は8に記載の医薬。
- 炎症性関節疾患が、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走に起因する疾患である、請求項7から9の何れかに記載の医薬。
- 炎症性関節疾患が、関節リウマチ、変形性関節症、感染性関節炎又は外傷性関節炎である、請求項7から10の何れかに記載の医薬。
- 下記式(I):
(式中、R1は、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し;R2は、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表し;R3は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の予防及び/又は治療有効量をヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む、炎症性関節疾患の治療及び/又は予防する方法。 - 式(I)で示されるピラゾロン誘導体の血漿中未変化体濃度の最大値Cmaxが15〜3000ng/mlとなるように投与されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
- 式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである請求項12又は13に記載の方法。
- 炎症性関節疾患が、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走に起因する疾患である、請求項12から14の何れかに記載の方法。
- 炎症性関節疾患が、関節リウマチ、変形性関節症、感染性関節炎又は外傷性関節炎である、請求項12から15の何れかに記載の方法。
- 炎症性関節疾患の治療及び/又は予防のための医薬の製造のための下記式(I):
(式中、R1は、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し;R2は、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表し;R3は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の使用。 - 式(I)で示されるピラゾロン誘導体の血漿中未変化体濃度の最大値Cmaxが15〜3000ng/mlとなるように投与されることを特徴とする、請求項17に記載の使用。
- 式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである請求項17又は18に記載の使用。
- 炎症性関節疾患が、滑膜細胞の増殖及び/又は遊走に起因する疾患である、請求項17から19の何れかに記載の使用。
- 炎症性関節疾患が、関節リウマチ、変形性関節症、感染性関節炎又は外傷性関節炎である、請求項17から20の何れかに記載の使用。
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