JPWO2005001526A1 - 多層膜光学素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このような多層膜光学素子は、ガラス等の基板上に、屈折率の異なる非金属光学物質の薄膜を順次重ね合わせた構造を有し、通常は、ガラス等の基板上に、これらの非金属光学物質を、真空蒸着により、順次成膜していくことにより形成されていた。
このような光学素子において、ガラス等の基板は、光学特性を決定するのに何の役割を果たさないばかりでなく、光を吸収するので、できるだけ薄くする必要がある。このため、従来は、多層膜の形成後、これら基板を研磨して数十μm程度の厚さとしていた。
しかしながら、ガラス等の基板を数十μm程度の厚さにまで研磨することには非常な困難が伴い、研磨中にガラスが破損したりして、歩留まりを低下させるといった問題があった。
このような問題点を解決するものとして、例えば、特開平3−196001号公報に記載されているような、基板を有しない多層膜光学薄膜が公知となっている。
このような多層膜光学薄膜は、以下のようにして製造される。例えば、ガラス基板の上にアルミニウムを蒸着し、その上に、酸化ケイ素の薄膜と酸化チタンの薄膜を、交互にイオンスパッタリングにより成膜する。成膜が完了した時点で、アルミニウムエッチング液によりアルミニウムを溶解すると、ガラス基板と多層光学薄膜が分離し、ガラス基板を有しない多層光学薄膜を得ることができる。
しかしながら、発明者の実験の結果、特開平3−196001号公報に記載されるような多層光学薄膜の製造方法には、大きな問題があることが分かった。それは、多層光学薄膜をイオンスパッタリング等により形成する場合、アルミニウムと多層光学薄膜の界面に凹凸が生じてしまい、その結果、多層光学薄膜が白濁して、光の透過率が大幅に低下し、実用に耐えなくなるというものである。又、これとは別に、アルミニウムが担体としての役割を十分に果たさず、ガラス基板と多層光学薄膜の分離がきれいに行われないという問題があることも分かった。
。
前記目的を達成するための第1の発明は、基板の上に可溶性担体の薄膜を成膜し、前記可溶性担体の上に、多層光学薄膜を成膜し、その後、前記可溶性担体の薄膜を溶解させて、前記基板と前記多層光学薄膜を分離する工程を含む多層膜光学素子の製造方法であって、前記可溶性担体がアルミニウムであり、その厚さが、10〜90nmとされていることを特徴とするものである。
発明者が、前述のような多層光学薄膜の白濁の原因を調査したところ、多層光学薄膜をイオンスパッタリングにより成膜する際に発生する熱のために、可溶性担体であるアルミニウムの再結晶化が発生し、そのためにアルミニウムと多層光学薄膜との界面が凹凸状となり、これにより白濁が発生していることが判明した。発明者等がさらに調査を続けたところ、この凹凸の状態は、アルミニウム層の厚さによって変化し、アルミニウム層の厚さが90nm以下であれば、問題となるような白濁は発生しないことを見いだした。
本発明者は、さらに、基板と光学薄膜との分離がきれいにできないのは、アルミニウム層の厚さが薄すぎると、アルミニウム層が形成されない部分が生じ、その場所で、基板と多層薄膜が直接結合されることがあるためであることを見いだした。そして、実験を重ね、アルミニウム層の厚さが10nm以上あれば、このような問題が発生しないことを見いだした。
よって、本発明においては、可溶性担体となるアルミニウム層の厚さを、10〜90nmの範囲に限定する。ここで、厚さは平均値を言うものとする。
前記目的を達成するための第2の発明は、前記第1の発明であって、前記多層光学薄膜を成膜する工程が、イオンスパッタリング工程であることを特徴とするものである。
イオンスパッタリングにより多層光学薄膜を成膜する場合には、特にアルミニウム層の温度上昇が大きくなるので、前記第1の発明の効果が格別に大きくなる。
前記目的を達成するための第3の発明は、前記第1の発明、又は第2の発明であって、前記多層光学薄膜が交互に積層された五酸化ニオブ薄膜と酸化ケイ素薄膜からなり、前記可溶性担体の直上に成膜される物質が酸化ケイ素であることを特徴とするものである。
五酸化ニオブ薄膜と酸化ケイ素薄膜とを積層して光学薄膜を形成する場合、五酸化ニオブをアルミニウムの上に成膜すると、温度の上昇により、五酸化ニオブとアルミニウムとが反応して酸化アルミニウムが形成さる。酸化アルミニウムはアルミニウムを溶解する物質で溶解されないので、基板と多層光学薄膜との剥離性が悪くなる。これに対し、アルミニウムの直上に酸化ケイ素を成膜するようにすれば、このような問題を防止することができる。
前記目的を達成するための第4の発明は、異なる屈折率を有する層が交互に形成され、製造時に基板が取り除かれた多層膜光学素子であって、前記多層膜光学素子の対向する光学面の面粗さが、Raで3nm以下であることを特徴とするものである。
本発明によれば、基板レスフィルターでRaで3nm以下となるような基板レスフィルターが初めて入手することができ、透過光に対し非常に低損失なフィルタを提供することが可能となる。
得られた多層光学薄膜3における白濁の発生状況、及び多層光学薄膜3と基板1の剥離性と、アルミニウム厚さとの関係を表2に示す。
表2の結果から、アルミニウム厚さが10〜90nmであれば、多層光学薄膜に白濁も発生せず、多層光学薄膜と基板の分離性が良好であることが分かる。なお、多層光学薄膜のアルミニウム側の表面粗さは、アルミニウム厚さが90nmのときRaで0.4nmであり、アルミニウム厚さが100nmのときRaで1nmであった。又、エッチング時間は、アルミニウム厚さが10nmのとき40時間であったが、アルミニウム厚さが5nmのときは完全に剥離できなかった。
次に、表面粗さがRaで0.4nmのアルミニウム層の上に形成した多層膜光学薄膜の粗さを計測した。計測した結果、アルミニウム層側と反対側の最表層の面粗さが3nmであった。通常蒸着法で成膜された膜は、総膜厚が増えるにつれて、膜の表面の面粗さが粗くなる。
しかし、本発明の実施例における多層光学薄膜は、目視で白濁が確認されていないばかりか、表面粗さが最も粗くなると考えられる面でも、基板を有したコンベンショナルなフィルタと同等の面粗さを達成することができている。
ところで、アルミニウム層側と反対側の最表層の面、及びアルミニウム層側の面は、両方とも光束が通過する光学面となる。光学面で非常に小さい粗さを達成できたことにより、光通信用のフィルタに求められる低損失という効果が更に拡大される。なお、本実施例における表面粗さRaは、10μm×10μmの領域を原子間力顕微鏡で計測したものである。
このように、基板レスフィルタの面粗さが、100μm2の範囲内でRa3nm以下であるため、透過光に対しても損失の少ない基板レスフィルタを得ることができる。
次に、表1に示す第1層の成膜をやめ、アルミニウムの上にNb2O5薄膜が形成されるようにし、Al厚さ10nm、90nmとして、上記と同じような方法で、多層光学薄膜を形成した。
その結果、いずれの場合も、NaOH溶液によるエッチングが巧く作用せず、基板と多層光学薄膜との剥離性が悪いため、実用に耐える多層光学薄膜が得られなかった。
Claims (4)
- 基板の上に可溶性担体の薄膜を成膜し、前記可溶性担体の上に、多層光学薄膜を成膜し、その後、前記可溶性担体の薄膜を溶解させて、前記基板と前記多層光学薄膜を分離する工程を含む多層膜光学素子の製造方法であって、前記可溶性担体がアルミニウムであり、その厚さが、10〜90nmとされていることを特徴とする多層膜光学素子の製造方法。
- 前記多層光学薄膜を成膜する工程が、イオンスパッタリング工程であることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の多層膜光学素子の製造方法。
- 請求の範囲第1項又は第2項に記載の多層膜光学素子の製造方法であって、前記多層光学薄膜が交互に積層された五酸化ニオブ薄膜と酸化ケイ素薄膜からなり、前記可溶性担体の直上に成膜される物質が酸化ケイ素であることを特徴とする多層膜光学素子の製造方法。
- 異なる屈折率を有する層が交互に形成され、製造時に基板が取り除かれた多層膜光学素子であって、前記多層膜光学素子の対向する光学面の面粗さが3nm以下であることを特徴とする多層膜光学素子。
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