【発明の詳細な説明】
白血病抑制因子およびエンドテリンアンタゴニストの用途
発明の背景
発明の分野
本発明は心臓疾患の処置における心機能の調節方法に関する。
発明の背景
約300万人のアメリカ人が心不全におかされており、毎年40万人が発病し
ている。現在ではアメリカにおける主要な認可診断の1種である。急性心筋梗塞
を含む急性心臓疾患の処置における最近の進歩はいずれ慢性の心不全を発病する
であろう患者人口にまで拡大している。
現在の心不全の治療は主としてアンギオテンシン変換酵素(Angiotensin-conv
erting enzyme:ACE)阻害剤および利尿剤の使用であった。心不全の処置に長
期に用いられてきたが、ACE阻害剤は心不全末期への進行を遅らせると考えら
れており、ACE阻害剤の患者の大多数は機能第III期心不全である。さらに、
ACE阻害剤は60%以上の心不全患者の症状を持続的に緩解することは不可能
であり、約15−20%のみが心不全死を減少させると考えられている。心臓移
植は提供される心臓の入手によって制限される。さらに、ジゴキシンを除いて、
筋変力陽性剤の慢性投与は有効な薬物にかならず不利な副作用、例えば、不整脈
、突然死または生死に関連する他の有害な副作用をもたらす。現在の治療におけ
るこれらの欠点は別の治療手段の必要性を示唆している。
大量のデータは心不全の処置における心筋の病的肥大が有害であり得ることを
示唆しており、心室の拡大、心壁の緊張/圧迫、心筋細胞の縦対横の比の増大お
よび心臓の動きおよび機能に伴う減退を特徴とする。事実、ACE阻害剤の作用
は心臓に負担をかけないばかりか、心筋層内の局部的レニン−アンギオテンシン
系に関係すると予想されている病的肥大応答を阻害すると主張されてきた。
細胞レベルでは、心臓は筋細胞と非−筋細胞と称される周囲の支持細胞のシン
シチウムとして機能する。非筋細胞は本質的に線維芽細胞/間葉細胞であるが、
内皮および平滑筋細胞も含む。実際、筋細胞は成人心筋肉の大部分を構成してい
るが、心臓に存在する総細胞数の約30%のみである。インビボの心臓筋細胞に
密接に関連するために、非−筋細胞は筋細胞の成長および/または発達に影響を
与え得る。この相互作用は細胞−細胞の接触によって直接的にまたはパラクリン
因子によって間接的に伝達される。非−筋細胞数およびそれらが相互に作用する
細胞外マトリックスの両方が心筋肥大においておよび損傷および梗塞に応答して
増加することから、インビボのこの関係は重要である。これらの変化は異常な心
筋機能に関連している。
心筋細胞は誕生直後に分化し得ない。さらなる成長は各細胞の肥大によって行
われる。筋細胞肥大の細胞培養モデルはよく研究されおり、心臓筋細胞肥大のメ
カニズムより解明されている。シンプソンら、Circ.Res.,51:787-801(1982);
チャンら、FASEB J.,5:3037-3046(1991)。培地中の心臓筋細胞の研究の多くは
非−筋細胞による汚染を最小化に関するものである。例えば、シンプソンおよび
サビヨン、Cir.Cres.,50:101-116(1982);リビイ、J.Mol.Cell.Cardiol.,
16:803-811(1984); イワキら、J.Biol.Chem.,265:13809-13817(1990)。
成人心臓心室筋細胞の肥大は慢性的過剰負荷に至る種々の症状に対する1種の
反応である。この反応は筋細胞の大きさ、および共存細胞の分裂を伴わない収縮
性蛋白含有量の増加、および心房のナトリウム排泄増加性ペプチド(atrial nat
riuretic peptide:ANP)の遺伝子を含む胎芽遺伝子の活性化を特徴とする。
チャンら、上掲。成人筋細胞肥大は、主として各筋肉線維の負担の減少を可能に
することによって、悪化した心臓機能に対する短期的反応として有効である。過
酷で長期の負荷については、しかしながら、肥大細胞は悪化し死滅し始める。カ
ッツ、「心臓疾患」、カッツAM編集、Physiology of the Heart(New York:Ra
ven Press;1992)pp.638-668。
内皮細胞、平滑筋細胞、および線維芽細胞/間葉細胞は心臓で筋細胞のごく近
くに存在する。ナグ、Cytobios.,28:41-61(1980)。インビトロの研究では、こ
れらの「非−筋細胞」支持細胞によって産生されるパラクリン因子が肥大に関与
しているかもしれないことを示唆している。このような因子の確認が心臓生態学
および薬物における主要な研究として残されている。チャンら、Science,260:9
16-917(1993)。また、この重要な生理学的反応を伝達し得る新規な活性体の分離
および定性のための心筋細胞肥大に関するインビトロ試験系の利用に関して、チ
ャンら、Annu.Rev.Physiol.,S5:77-95(1993)。
肥大およびその原因の研究のために細胞培養モデルの開発が行われてきた。す
なわち、例えば、全能マウス胎芽幹細胞は、線維芽細胞のフィーダー層の不存在
下または白血病阻害因子(LIF)の除去下で培養したとき、多細胞の嚢胞性胎
芽様体に分化する。ロビンら、J.Biol.Chem.,265:11905-11909(1990)。これ
らの胎芽様体は心臓の特定のマーカーを攻撃し、提示し(ロビンら、上掲、デチ
ュマンら、J.Embryol.Exp.Morphol.,87:27-45[1985];ミラー−ハンスら、J
.Biol.Chem.,268:25244-25252[1993])、これらはインビトロ肥大反応を誘発
し得る因子の有効な資源として役立つかもしれない。チャン、Science、上掲;
ミラー−ハンスら、上掲。
さらに、ロングら、Cell Reg.,2:1081-1095(1991)、は培養新生児ラット心臓
非筋細胞、これは本来的には線維芽様細胞であるが、インビトロ心臓筋細胞の肥
大を誘導する未確認蛋白を産生することを発見した。ヘパリン−セファローズに
結合したこの因子はホスホイノシトール加水分解を刺激せず、45−50kDの
みかけの分子量を有していた。血小板ー誘導成長因子、腫瘍壊死因子α、酸性お
よび塩基性線維芽細胞成長因子および形質転換成長因子β1に対する抗血清を中
和する実験により、これらの成長因子は候補としての可能性から除去された。
エンドテリンはインビトロおよびインビボの両方で心臓中の細胞に作用するこ
とが示されている。インビボのエンドテリンは、正常および疾患性の心臓の心房
および心室の心筋中の両方に存在しており、心筋の変力性活性、心臓中の血管の
平滑筋増殖および冠状血管収縮を増強する。ウエイら、Circulation,89:1580-1
586(1994)。インビトロエンドテリンは、培養成人心臓心筋細胞中の多種の細胞
−信号経路を刺激する。ヒラル−ダンダンら、Mol.Pharm.,45:1183-1190(1994
);ジョーンズら、Am.J.Physiol.(Heart Circ.Physiol.32)263:H1447-H1454
[1992]。数人の研究者はエンドテリン−1、これは内皮細胞中に産生されること
が知られているが、インビトロの心臓筋細胞の肥大を誘発することが知られてい
る。
スベイタら、J.Biol.Chem.,265:20555-20562(1990)、イトーら、Circ Res.,
69:209-215(1991)、スズキら、J.Cardiovasc.Pharmacol.,17 Suppl 7:S182-S
186(1991)。1994年9月6日発行U.S.特許第5,344,644号も参照。
LIFはまた、その具体的な活性または作用によって、白血球阻害因子、分化
誘導因子(DIF、D−因子)、肝細胞刺激因子(HSF−II、HSF−III)
および黒色腫誘導LPL阻害剤(MLPLI)としても知られている(ヒルトン
ら、J.Cell.Biochem.,46:21-26[1991])が、筋細胞および非筋細胞の両方で
のラット新生児心臓細胞培養物からコリン作動性ニューロン分化因子(CDF)
として確認された。ヤマモリら、Science,246:1412-1416(1989)。さらに、LI
Fは、心筋梗塞および虚血性組織の保護を含む、反応性酸素種の有害作用の防護
、阻害および予防に有効であることが判明した。U.S.特許第5,370,870
号。最終的にLIFおよび、GH/サイトカイン受容体に結合する蛋白類の別の
物質であるカルジオトロフィン−1は培養物中の新生児ラット心臓筋細胞に対し
て蛋白類のうちで最も高い肥大活性を示し、そしてまたそれらは類似の形態特徴
を示す。ペニカら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:1142-1146(1995)。
発明の要約
今回の発明によって、非−筋細胞が、LIFおよびエンドテリンとして同定さ
れている肥大因子を産生することが判明した。従って、本発明の1つの態様は、
肥大を阻害または軽減するために心不全歴のある哺乳動物を処置する方法であっ
て、そのような処置を必要とする哺乳動物にLIFアンタゴニストの治療的有効
量を慢性的に投与することを含む方法を提供する。
別の態様において、本発明は、肥大を阻害または軽減するために心不全歴のあ
る哺乳動物を処置する方法であって、そのような処置を必要とする哺乳動物にL
IFアンタゴニストおよびエンドテリンアンタゴニストの治療的有効量を慢性的
に投与することを含む方法を提供する。
さらなる態様において、本発明は医薬的に許容され得る担体とともに、LIF
アンタゴニストおよびエンドテリンアンタゴニストを含む医薬組成物を提供する
。
図面の簡単な説明
図1は、培養ラット新生児の心臓筋細胞の大きさに対する、新生児ラットから
の非−筋細胞−調整培地(NCM)の効果を肥大度およびANP産生量によって
表したものである。筋細胞はNCMで48時間処理した。培養培地をANPにつ
いて試験し(Fig.1B)、細胞を結晶性バイオレットによって染色し、肥大を
測定した(Fig.1A)。未処理対照には3点をつけ、最大肥大細胞に7点をつ
けた。データは2連で行われ、2連で測定された3回の実験の平均値および標準
誤差を示す。
図2は、ラット新生児の心臓NCMにおける肥大活性の経時的な観察を示す。
継代−1ラット新生児心臓非筋細胞は10%血清含有培地中で5日間培養され、
ついで、血清無含有培地で2回洗浄された。試験培地を添加し、所定時間の培養
後一部を採取した。データは2連で行われ、2連で測定された3回の実験の平均
値および標準誤差を示す。
図3は、ラット新生児心臓NCMにより誘導された筋細胞肥大に対する、BQ
−123、LIFモノクローナル抗体(Mab)D62.3.2およびそれらの組み
合わせの効果を示す。筋細胞はNCM(黒丸)、NCMおよび100μモル/L
BQ−123(白丸)、NCMおよび50μg/mL LIFMabD62.3.
2(白四角)、および100μモル/L BQ−123および50μg/mL
LIFMabD62.3.2(白三角)で処理した。培養培地はANPについて試験
され(Fig.3B)、細胞は染色され、肥大を点数で示した(Fig.3A)。F
ig.3Aのデータは2連で行われ、2連で測定された3回の実験の平均値および
標準誤差を示す。*p<0.05値は共変数分析による。Fig.3Bのデータは
3連で行われ、2連で測定された1回の実験を示す。
図4は、エンドテリン−1、マウスLIF、フェニルエフリン、およびCT−
1によって誘導された心臓筋細胞肥大に対するBQ−123の効果を示す。培養
ラット新生児心臓筋細胞は、エンドテリン−1(a)、マウスLIF(b)、フ
ェニルエフリン(c)およびCT−1(d)の存在下、0μモル/L(黒丸)、
100μモル/L(白丸)、10μモル/L(白四角)および1μモル/L(白
三
角)のBQ−123で処理された。データは2連で行われ、2連で測定された3
回の実験の平均値および標準誤差を示す。
図5は、エンドテリン−1、マウスLIF、フェニルエフリン、およびCT−
1によって誘導された心臓筋細胞肥大に対するLIFMabD62.3.2の効果を
示す。培養ラット新生児心臓筋細胞は、エンドテリン−1(a)、マウスLIF
(b)、フェニルエフリン(d)およびCT−1(e)の存在下、0μg/mL
(黒丸)、50μg/mL(白丸)、5μg/mL(白四角)および0.5μg
/L(白三角)のLIFMabD62.3.2で処理された。データは2連で行わ
れ、2連で測定された3回の実験の平均値および標準誤差を示す。
図6は、培養新生児ラット心臓筋細胞肥大およびANP産生に対するLIFお
よびエンドテリンの効果を示す。筋細胞はマウスLIF(白丸)、エンドテリン
−1(黒丸)およびマウスLIFとエンドテリン−1の組み合わせ(黒三角)で
処理した。試験培地はANP(Fig.6A)について試験され、結晶性バイオレ
ットで染色され、細胞の大きさについて点数が付けられた(Fig.6B)。デー
タは2連で行われ、2連で測定された3回の実験の平均値および標準誤差を示す
。LIFおよびエンドテリンの組み合わせの濃度は各試剤の濃度をたして測定さ
れた。
好ましい具体例の詳細な説明
1.定義
一般的に、詳細な説明、実施例および請求の範囲で用いられる場合は、下記の
用語または語句は定義された意味を有する:
この明細書で用いられる「LIFアンタゴニスト」および「エンドテリンアン
タゴニスト」は、LIFまたはエンドテリンとそれらの各受容体間の相互作用を
遮断または阻害するなんらかの分子を意味する。このようなアンタゴニストは種
々の方法でこの作用を示す。例えば、ある種のアンタゴニストは、十分な親和性
と特異性をもって、LIFまたはエンドテリンに結合し、それぞれの受容体がな
んら作用しないようにLIFまたはエンドテリンを中和する。別の種類のアンタ
ゴニストはLIFまたはエンドテリンおよびそれらの各受容体間の相互作用に基
づく分子である。このような分子は、LIFまたはエンドテリン受容体のフラグ
メント、または小さい有機化学分子を含む、例えば、各受容体とLIFまたはエ
ンドテリン間の相互作用を阻害するペプチド類似体である。LIFは、例えば、
メトカーフ、Growth Factors,7:169-173(1992)およびクルツロックら、Endocri
ne Reviews,12:208-217(1991)に記載されている。LIF受容体の活性化は細胞
間のチロシンキナーゼを刺激することが知られている。キシモトら、Science,2
58:593-597(1992)。いくつかの研究所は、培養中の線維芽細胞がLIFを産生し
得ることを示した(エリアスら、Am.J.Physiol.(Lung Cell.Mol.Physiol.1
0)266:L426-L435[1994]、ロレンツォら、Clin.Immunol.Immunopath.,70:260-
265[1994]、ハミルトンら、J.Immunol.,150:1496-1502[1993])。
3種のエンドテリン−関連ペプチド、エンドテリン−1、−2および−3、が
存在する。イノウエら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:2863-2867(1989)。エ
ンドテリン−1は21個のアミノ酸ペプチドであり、強い静脈および動脈血管収
縮剤である。成熟した生物学的に活性なペプチドは38−39個のアミノ酸分子
「ビッグエンドテリン」の蛋白分解生成物である。ヤナギサワおよびマサキ、Tr
ends Pharm.Sci.,10:374-378(1989)。エンドテリンは、大動脈平滑筋細胞、糸
球体間質細胞および骨芽細胞中の蛋白チロシンリン酸化を誘導することが知られ
ている(バチスチーニら、Peptides,14:385-399[1993])が、培養物中の新生児
ラット筋細胞ではエンドテリンは、αアドレナリン剤と同様に、ホスホイノシチ
ド加水分解およびジアシルグリセリンの蓄積を刺激する。スベイタら、上掲およ
びイトーら、上掲。エンドテリン類は血管の内皮細胞、上皮細胞、マクロファー
ジ、線維芽細胞および他の多種類の細胞から産生される。バチスチーニら、上掲
。
これらの分子に対するアンタゴニストは心臓の成長または肥大活性に影響を与
え、これらは、例えば、心房性ナトリウム排泄増加性ペプチド(ANP)分泌ま
たは、特定の平板培養培地および平板培養密度、好ましくは読み出しのための結
晶性バイオレットによる染色を用いてここに記載の筋細胞肥大試験によって測定
される。アンタゴニストの好ましい機能は心臓の筋肉組織の成長と減少間の連続
的な平衡に望ましい結果をもたらすことである。
LIFアンタゴニストの例としてはこれに限定されるものではないが、抗体、
蛋白、ペプチド、糖蛋白、糖脂質、糖ペプチド、多糖類、少糖類、核酸、有機化
学分子、ペプチド様物、薬理学的試剤およびそれらの代謝物、転写および翻訳制
御配列などが挙げられる。別の種類のアンタゴニストは、当該受容体とLIFま
たはエンドテリン間に生じる細胞内または膜関連現象を遮断または阻害する。
具体例において好ましくは、アンタゴニストは抗体であり、この抗体は、LI
Fまたはエンドテリンに結合する性質を有し、当該受容体との相互作用を阻害す
る所望の性質を有する。このような抗体は好ましくは、組換ヒトLIFに対して
産生され、ヒトおよびマウスLIFの両方によって誘導される肥大を中和するが
、CT−1、エンドテリン−、またはフェニルエフリン−誘導肥大は中和しない
ものである。例えば、下記の実施例において、これらの基準に合致する3種のモ
ノクローナル抗体が確認され、各々は組換ヒトLIFの別々の抗原決定基を認識
する。これらの3種の抗体はすべてマウスおよびヒトLIFによって誘導される
筋細胞肥大を中和し、そのうちの2種はNCMによって誘導される肥大を同程度
に阻害する。これらの抗体の1種またはそれ以上は1993年11月25日に公
開されたWO93/23556に記載されている。キムら、J.Immunol.Meth.
,156:9-17(1992)およびアルホンソら、J.Leukocyte Biology(Abstracts of th
e 28th National Meeting of the Society for Leukocyte Biology,vol.O,no
.SP.2(1991))(NY,NY,p.49)(Mab D4.16.9、MabD25.1.4および
MabD62.3.2)。
別の好ましい態様において、このアンタゴニストはエンドテリンまたはLIF
受容体の根本的な構造に基づく可溶性受容体であり、LIFまたはエンドテリン
と当該受容体との相互作用を阻害する所望の性質を有する。別の好ましい態様に
おいて、このアンタゴニストは有機分子であり、通常、分子モデル研究に基づく
経口活性化合物であり、LIFまたはエンドテリンと当該受容体との相互作用を
阻害する所望の性質を有する。別の好ましい態様において、このアンタゴニスト
はLIFまたはエンドテリンインビボ発現の転写調節剤である。
エンドテリンアンタゴニストの例は下記のものに限定されるものではないが、
ある種のエンドテリンに対するアンタゴニストであり、エンドテリン−1、−2
および−3、ビッグエンドテリン、またはそれらの組み合わせが含まれる。この
ようなアンタゴニストは抗体だけでなく、エンドテリンAまたはエンドテリンB
受容体またはその両方の選択的遮断剤であるペプチドも含む。上で指摘したよう
に、エンドテリンA受容体は、エンドテリン−3に優先してエンドテリン−1お
よびエンドテリン−2に対して選択的である。エンドテリンB受容体は同じ親和
性で3種の総てに結合する。一例はBQ−123(イハラら、Life Science,50
:247-250[1992]、1993年8月3日公開JP51−94254、ウエブら、Bi
ochem.Biophys.Res.Comm.,185:887-892[1992])、エンドテリンA受容体の
強力かつ特異的遮断剤であり、CT−1、マウスLIFまたはフェニルエフリン
ではなく、エンドテリン−1によって誘導される肥大活性のみを遮断する環状ペ
ンタペプチドである。他の例はイハラら、Biochem.Biophys.Res.Comm.,178:
132-137(1991)に記載のBQ−123への親化合物である。さらなる例はEP6
47236、EP647449、EP633259(フェニル−スルホニルアミ
ノ−ピリミジン誘導体)、EP601386(スルホンアミド化合物)、US特
許第5292740号(フェニルスルホンアミドピリミジン類)、およびUS特
許第5270313号(フェニル−スルホニル−アミノピリミジン誘導体)。
「抗体」(Abs)および「免疫グロブリン」(Igs)は同じ構造的特徴を有す
る糖蛋白である。抗体は特定の抗原に対して結合特異性を示すが、免疫グロブリ
ンは抗体および抗原特異性を欠く他の抗体様分子の両方を含む。後者の部類のポ
リペプチドは、例えば、リンパ系で低濃度で産生され、骨髄腫では高濃度で産生
される。
「生来の抗体および免疫グロブリン」とは、約150000ダルトンのヘテロ
四量体糖蛋白であり、2個の同一の軽鎖(L)および2個の同一の重鎖(H)か
らなる。各軽鎖は1個の共有ジスルフィド結合によって重鎖に連結されているが
、ジスルフィド結合の数は種々の免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる
。各重鎖および軽鎖は規則的に間隔をおいた鎖間ジスルフィドブリッジを有する
。
各重鎖は一方の末端に可変領域(VH)を有し、ついで、多数の定常領域を有す
る。各軽鎖は一方の末端に可変領域(VL)を有し、他端に1個の定常領域を有
し、軽鎖の定常領域は重鎖の最初の可変領域と一列になっている。特定のアミノ
酸残基は軽鎖と重鎖可変領域間に界面を形成していると考えられている(クロチ
アら、J.Mol.Biol.,186:651-663[1985]、ノボトニーおよびヘーバー、Proc.
Natl.Acad.Sci.USA,82:4592-4596[1985])。
「可変」なる用語は可変領域のある部分が抗体間の配列が非常に異なり、その
特定の抗原に対する各々の特定の抗体の結合および特異性に用いられるという事
実をいう。しかしながら、可変性は抗体の可変領域全体に平等に分布しているわ
けではない。軽鎖および重鎖領域の両方中の相補性決定領域(CDRs)または
超可変領域と称される3つの部分に集中している。可変領域のより高度に保存さ
れている部分はフレーム枠(frame work:FR)と称される。生来の重および軽
鎖はそれぞれ、大部分はβ−シート構造を採用し、3つのCDRsに結合し、β
−シート構造に結合するループを形成しているか、ある場合にはβ−シート構造
の一部を形成している4つのFR領域を含む。各鎖中のCDRsは共にFR領域
のすぐ近くにあり、他の鎖からのCDRsとともに抗体の抗原結合部位の形成に
寄与している(カバトら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,
Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,MD[1991])。定常
領域は直接抗原抗体結合に関与しているが、抗体依存性細胞毒性の抗体の関与な
どの種々のエフェクター機能を表す。
抗体のパパイン消化は2個の同じ抗原結合フラグメント、「Fab」フラグメン
トと称され、各フラグメントは1個の抗体結合部位を有し、残余の「Fc」フラ
グメントを産生する。この名称は容易に結晶化するのに由来する。ペプシン処理
は、2個の抗原結合部位を有し、さらに交差−結合抗原でもあり得る、1個のF
(ab')2を産生する。
「Fv」は完全な抗原−認識および結合部位を含む最小抗体フラグメントであ
る。この領域は緊密な非共有結合の1本の重鎖−および1本の軽鎖−可変領域の
2量体からなる。この配置で各可変領域の3個のCDRsが相互作用し、VH−VL
2量体の表面の抗原−結合部位を決定している。まとめると、6個のCDRsは
抗体に抗原結合特異性をもたらす。しかしながら、1個の可変領域(または、抗
原に対してたった3個のCDRs特異性を含むFvの半分)でも、全結合部位より
低い親和性にて抗原を認識し結合する能力を有する。
Fabフラグメントはまた軽鎖の定常領域および重鎖の第1定常領域(CH1)
を含む。Fab'フラグメントは抗体ヒンジ部から1個またはそれ以上のシステイ
ンを含む重鎖CH1領域のカルボキシ末端に少数個の残基が追加されている点で
Fabフラグメントと異なる。Fab'−SHとは、この明細書中では定常領域のシ
ステイン残基が遊離のチオール基を有するFabと定義されるものである。F(ab'
)2抗体は本来的に、その間にヒンジのシステインを有する1対のF(ab')2として
産生される。
脊椎動物類からの抗体(イムノグロブリン)の「軽鎖」は、定常領域のアミノ
酸配列に基づいて明確に区別される2種のカッパー鎖およびラムダ鎖の1種に特
定できる。
重鎖の定常領域のアミノ酸配列によって、イムノグロブリン類は異なる種類に
特定することができる。イムノグロブリンには5種の主な種類はIgA、IgD、
IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのいくつかはさらに、例えば、IgG−
1、IgG−2、IgG−3、IgG−4、IgA−1およびIgA−2などのサブ
クラス(アイソタイプ)に分類される。イムノグロブリンの異なる種類に対応す
る重鎖定常領域は、それぞれα、δ、ε、γ、μと称される。イムノグロブリン
の異なる種類のサブユニット構造および3次元の配置は周知である。
広義で用いられる「抗体」なる用語は広義においておよび具体的には単一のモ
ノクローナル抗体(アゴニストおよびアンタゴニスト抗体を含む)およびポリエ
ピトープ特異性を有する抗体組成物を含む。
この明細書で用いられる「モノクローナル抗体」なる用語は1つの集団の実質
的に均質な抗体から得られる抗体をいい、すなわち、各抗体はより少ない量で存
在し得る天然に生じる可能性のある突然変異以外は同一である集団を含む。モノ
クローナル抗体は高度の特異性を有し、唯一の抗原性部位に対して向けられる。
さらに、典型的には種々の決定基(エピトープ)に対して向けられる種々の抗体
を含む通常の(ポリクローナル)抗体製剤に対して、各モノクローナル抗体はそ
の抗原の唯一の決定基に対して向けられる。その特異性に加えて、モノクローナ
ル抗体はハイブリドーマ培養物によって合成され、他のイムノグロブリンによっ
て汚染されていないという利点がある。
この明細書中のモノクローナル抗体は、それらが所望の生物学的活性を示す限
り、起源の種属やイムノグロブリンの種類およびサブクラスの指定とは無関係に
、抗−LIFまたは抗−エンドテリン抗体の可変(超可変を含む)領域と定常領
域を(例えば、「ヒト化」抗体)、または重鎖と軽鎖を、または他の種属からの
鎖と別種属からの鎖をスプライシングすることによって、または異種蛋白との融
合によって、産生されるハイブリッドおよび組換抗体または抗体フラグメント(
Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv)を含む(カビリーら、米国特許第4,81
6,567号およびメージおよびラオミ、Monoclonal Antibody Production Tech
niques and Applications,pp.79-97(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)参
照)。
すなわち、修飾語「モノクローナル」とは抗体の実質的に均質な集団から得ら
れる抗体の特徴を指し、なんらかの特定の方法による抗体の産生を必要とするも
のであると解釈されるべきでない。例えば、本発明において使用されるモノクロ
ーナル抗体はコーラーおよびミルステイン、Nature,256:495(1975)にはじめて
記載されたハイブリドーマ法によって、または組換DNA法によって製造され得
る(カビリーら上掲)。
この明細書に記載のモノクローナル抗体は具体的には、所望の生物学的活性を
示すかぎり、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種属から誘導される抗体
の対応する配列に一致しているか、または相同であるか、または特定の抗体の種
類またはサブクラスに属するが、鎖の残部は別の種属から誘導される抗体に対応
する配列に一致するか、または相同であるか、別の抗体の種類またはサブクラス
に属する、「キメラ」抗体(イムノグロブリン)およびその抗体のフラグメント
を含む(カビリーら、上掲、モリソンら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:685
1-6855[1984])。
非−ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非−ヒトイムノグロブ
リンから誘導される最小配列を含む、特定のキメライムノグロブリン、イムノグ
ロブリン鎖またはそれらのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab'およびF(a
b')2、または抗体の他の抗原−結合配列)である。大部分は、ヒト化抗体は、レ
シピエントの相補性−決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性
および能力を有するマウス、ラット、またはウサギ非−種属(ドナー抗体)のC
DRからの残基によって置換されている、ヒトイムノグロブリン(レシピエント
抗体)である。ある場合には、ヒトイムノグロブリンのFvフレーム枠残基は対
応する非ヒト残基によって置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエン
トの抗体にも移入されたCDRまたはフレームワーク配列のいずれにも見当たら
ない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の挙動を精製し、適正化する
ためになされる。一般に、ヒト化抗体は実質的に少なくとも1つの、典型的には
2つの可変領域を含み、可変領域にはすべてまたは実質的にすべてのCDR領域
が非−ヒトイムノグロブリンのCDR領域に対応し、すべてのまたは実質的にす
べてのFR領域がヒトイムノグロブリン共通配列のFR領域である。ヒト化抗体
は所望によりまたイムノグロブリン定常領域(Fc)の少なくとも1部を含み、
典型的にはヒトイムノグロブリンのものである。さらなる詳細、ジョーンズら、
Nature,321:522-525(1986); ライクマンら、Nature,332:323-329(1988); およ
びプレスタCurr.Op.Struct.Biol.,2:593-596(1992)参照。
「ヒトの非−ヒト免疫原性」とは、医薬的に許容され得る担体および医薬的有
効量におけるポリペプチドとヒトの適当な組織を接触させた時に、適当な潜伏期
間(例えば、8〜14日)後にポリペプチドを次ぎに投与したときに、ポリペプ
チドの感受性または耐性の状態を示さないことを意味する。
「心不全」とは、代謝組織の条件に必要な割合で心臓が血液を送らない心臓の
機能の異常をいう。心不全は、虚血、先天性、リョーマチ性または特発性の形態
を含む幾つかの要素によって惹起される。
「処置」とは、治療的または予防もしくは防止手段の両方をいい、その目的は
肥大の阻害または減弱(少なくする)ことである。処置の必要な人には障害をす
でにもっている人、および障害をもつ傾向がある人または障害が阻害されている
人を含む。肥大は特発性、心臓栄養または筋栄養的原因を含むか、または虚血も
しくは心筋梗塞などの虚血性発作の結果としてのなんらかの原因に由来する。典
型的には、処置は肥大の進行の停止または減速のために、特に、虚血からなどの
心臓損傷が生じた後に行われる。好ましくは、心筋梗塞の処置のためには、薬剤
が肥大の防止または減弱のために心筋梗塞直後に与えられる。
「慢性」投与は、急性的方法に対して、継続的方法での薬剤の投与をいい、最
初の抗−肥大効果を維持するために長期間にわたって投与される。
処置の目的のための「哺乳動物」とは、犬、馬、猫、牛などの、人、家畜なら
びに農業用動物、および動物園、スポーツまたは愛玩動物を含む、哺乳動物とし
て分類される動物をいう。
この明細書で用いられる「ACEインヒビター」とは、アンギオテンシンIか
らアンギオテンシンIIへの変換を阻害するアンギオテンシン−変換酵素阻害薬物
をいう。ACEインヒビターは全身の血管の抵抗を減らし、循環性うっ血を緩和
することによってうっ血性心不全に効果がある。ACEインヒビターには以下の
ようなものがあるが、これに限定されるものではない。商品名アクプリル(キナ
プリル)、商品名アルテース(ラミプリル)、商品名カポテン(カプトリル)、
商品名ロテンシン(ベナゼプリル)、商品名モノプリル(ホシノプリル)、商品
名プリニビル(リシノプリル)、商品名バソテック(エナラプリル)および商品
名ゼストリル(リシノプリル)。ACEインヒビターの1つの例は商品名カポテ
ンの名称で市販されているものである。一般に、カプトリルといい、このACE
インヒビターは化学的には1−[(2S)−3−メルカプト−2−メチルプロピ
オニル−]−L−プロリンを指す。
II .発明の実施の方法
本発明は心不全を有する哺乳動物の処置方法であり、LIFアンタゴニストの
治療的有効量を慢性的に哺乳動物に投与するものである。所望により、LIFア
ンタゴニストはエンドテリンに対するアンタゴニストの有効量と組み合わせて慢
性的に投与される。別の任意の要素として、CT−1アンタゴニストなどの心臓
栄養インヒビター、カプトリルなどのACEインヒビター、および/またはヒト
成長ホルモンおよび/またはうっ血性心不全の場合にIGF−I、または、他の
種類の心不全または心臓障害の場合に他の抗−肥大または心筋栄養因子とともに
挙げられる。
1.アンタゴニストの製造および同定
A.一般的製法
LIFおよびエンドテリンに対するアンタゴニストはエンドテリンまたはLI
Fの受容体の推測される属(family)を用いて製造することができる。エンドテ
リンA受容体は、エンドテリン−3以上にエンドテリン−1およびエンドテリン
−2に対して選択的である。エンドテリンB受容体は同じ親和性で3つのすべて
に結合する。アライら、Nature,348:730-735(1990)。LIFおよび線毛神経栄
養因子(CNTF)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−
11(IL−11)、CT−1およびオンコスタチンM(OSM)は、GH/サ
イトカイン受容体属の構成員であるGP130を含む蛋白であることを示す関連
受容体を用いる。キシモトら、Cell,76:253-262(1994); キタムラら、Trends E
ndocrinol.Metab.,5:8-14(1994); デイビスおよびヤンコポウロズ、Curr.Opi
n.Cell Biol.,5:281-285(1993); ペニカら、上掲。
LIFおよびエンドテリンの受容体はそれらの当該属からクローン化された発
現であってもよい;ついで、受容体の可溶体は細胞外ドメインの同定およびそれ
らからの膜内外ドメインを削除することによって製造される。受容体の可溶体は
ついでアンタゴニストとして用いられるか、またはその受容体は、それぞれのL
IFまたはエンドテリン活性と拮抗するであろう小分子を遮蔽するために用いら
れる。
別法として、アンタゴニストとして作用する生来のLIFまたはエンドテリン
の変異体が製造される。LIFおよびエンドテリンの受容体結合部位は結合研究
によって決定することができ、またそれらの1つまたはそれ以上は標準の技術(
削除または適当な核酸のラジカル置換)によって削除され、分子はアンタゴニス
ト
として作用する。アンタゴニスト活性はここに記載の肥大試験を含むいくつかの
手段によって測定され得る。
B.抗体調製
(i)出発原料および方法
イムノグロブリン(Ig)およびある種のそれらの変異体は公知であり、多く
は組換細胞培養で製造される。U.S.特許第4,745,055号; EP第256
,654号; EP第120,694号; EP第125,023号; EP第255,6
94号; EP第266,663号; WO88/03559; フォークナーら、Nat
ure,298:286(1982); モリソン、J.Immun.,123:793(1979); コウナーら、Proc
. Natl.Acad.Sci.USA,77:2197(1980); ラソら、Cancer Res.,41:2073(1981
); モリソンら、Ann.Rev.Immunol.,2:239(1984); モリソンら、Science,229
:1202(1985); およびモリソンら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851(1984)
参照。再構成されたイムノグロブリン鎖もまた公知である。例えば、U.S.特許
第4,444,878号; WO88/03565号およびEP第68,763号お
よびここに記載の文献参照。本発明のキメラのイムノグロブリン部分はIgG−
1、IgG−2、IgG−3またはIgG−4サブタイプ、IgA、IgE、IgDま
たはIgMから得られるが、好ましくはIgG−1またはIgG−3から得られる
。
(ii)ポリクローナル抗体
LIFまたはエンドテリンに対するポリクローナル抗体は一般に、LIFまた
はエンドテリンおよびアジュバントの多重皮下(sc)、または腹腔内(ip)
注射によって動物で産生される。LIFまたはエンドテリンまたは標的アミノ酸
配列を含むフラグメントを免疫化されるべき種属に、免疫原性である蛋白、例え
ば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、牡ウシチオグロブリ
ン、またはダイズトリプシンインヒビターを、例えば、マレイミドベンゾイルス
ルホンスクシンイミドエステル(システイン残基による結合)、N−ヒドロキシ
スクシンイミド(リジン残基による)、グルタールアルデヒド、無水コハク酸、
SOCl2、またはR1N=C=NR(式中、RおよびR1は異なるアルキルである
)
などの二官能基または誘導体化剤を用いて結合するのが有効であり得る。
ペプチドまたはコンジュゲートの1mgまたは1μg(それぞれ、ウサギまた
はマウスに)をフロイント完全アジュバント3容と混和し、この溶液を皮内の複
数部位に注射して、動物をLIFまたはエンドテリンペプチドまたはフラグメン
ト、免疫原性コンジュゲートまたは誘導体に対して免疫化する。1カ月後動物に
フロイント完全アジュバント中最初の量の1/5または1/10量のペプチドま
たはコンジュゲートを複数部位に皮下注射することによって追加抗原注射する。
7〜14日後に動物から採血し、LIFまたはエンドテリンまたはそれらのフラ
グメントに対する抗体力価について血清の試験をする。力価がプラトーに達する
まで動物に追加抗原注射を行う。好ましくは、動物は、別の蛋白および/または
別の架橋剤によって結合されているが、同じLIFまたはエンドテリンまたはそ
れらのフラグメントのコンジュゲートで追加抗原注射されるのが好ましい。コン
ジュゲートはまた組換細胞培養中で蛋白融合物として製造され得る。またミョウ
バンなどの凝集剤が免疫応答を増強させるために適当に用いられる。
(iii)モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体、すなわち、少数量存在している
ことがある潜在的な天然の突然変異を除いて同じポピュレーションを構成する個
々の抗体のポピュレーションから得られる。このように修飾語句「モノクローナ
ル」は、別個の抗体の混合物ではないものとしての抗体の特徴を表す。
例えば、モノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein,Nature,256: 495(1
975)に最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製するか、または組換えDN
A法(Cabillyら、上記)により製造することができる。
該ハイブリドーマ法において、マウスまたはハムスターのような他の適切な宿
主動物を上記のごとく免疫し、免疫に使用するLIFまたはエンドテリンまたは
それらのフラグメントと特異的に結合する抗体を製造するかまたは製造すること
ができるリンパ球を誘発する。あるいはまた、リンパ球はin vitroで免疫するこ
とができる。次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適切な融合物
質を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding,M
onoclonal Antibodies: Principles and Practice,59-103頁[Academic Press,
1986])。
このようにして調製したハイブリドーマ細胞を、好ましくは、融合していない
親骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する1またはそれ以上の物質を含む適切な
培養液中に接種し、増殖させる。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチング
アニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合は、典
型的には、ハイブリドーマ用の培養液は、HGPRT−欠損細胞の増殖を妨げる物質
であるヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT培地)を含むで
あろう。
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選ばれた抗体産生細胞による高レベ
ルの抗体産生を支持し、HAT培地のような培地に対して感受性の細胞である。こ
れらのうち、好ましい骨髄腫細胞系は、Salk Institute Distribution Center,
San Diego,California USAから入手可能なMOPC-21およびMPC-11マウス腫瘍、お
よびAmerican Type Culture Collection,Rockville,Maryland USAか
ら入手可能なSP-2細胞から誘導されるようなネズミ骨髄腫系である。
ハイブリドーマ細胞が増殖している培養液において、LIFおよびエンドテリ
ンに対するモノクローナル抗体の産生が試験される。好ましくは、ハイブリドー
マ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、放射性免疫試験
法(RIA)または酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)のようなin vitro結合試験
法によるかまたは免疫沈降法によって測定される。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、MunsonおよびPollard、Anal.Bi
ochem.,107: 220(1980)のScatchard分析によって測定することができる。
所望の特異性、親和性、および/または活性を有する抗体を産生するハイブリ
ドーマ細胞を確認し、次いで該クローンを、限界希釈法によってサブクローンし
、標準的方法により増殖させることができよう(Goding,上記)。本目的に適し
た培養液には、例えばD-MEMまたはPRMI-1640培地が含まれる。さらに、ハイブリ
ドーマ細胞は動物中の腹水腫瘍としてin vivoで増殖させることができる。
サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、例えば、プロテイン
A−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、
透析、またはアフィニティクロマトグラフィーのような通常のイムノグロブリン
精製法によって培養液、腹水、または血清から適切に分離される。
モノクローナル抗体をコードするDNAは、容易に単離され、通常の手順(例え
ば、ネズミ抗体の重および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合することがで
きるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)配列決定することがで
きる。ハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源として用いられる
。単離されたら、DNAを発現ベクター中に入れ、次いでこれをE.coli細胞、サルC
OS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または該発現ベクターをト
ランスファーしなければイムノグロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞の
ような宿主細胞中にトランスファーする。抗体をコードするDNAの細菌における
組換え発現に関する総説的文献には、Skerraら、Curr.Opinion in Immunol.,5:
256-262(1993)、およびPluckthun,Immunol.Revs.,130: 151-188(1992)が含
まれる。
該DNAは、ホモローガスなネズミ配列の代わりにヒト重−および軽−鎖定常ド
メインをコードする配列で置換するか(Cabillyら、上記;Morrisonら、Proc.Na
t.Acad.Sci.,81: 6851[1984])、または非イムノグロブリンポリペプチドをコ
ードする配列のすべてまたは一部を、イムノグロブリンコード配列と共有結合す
ることにより修飾することもできる。この方法において、ここに記載の抗−LI
Fまたは抗−エンドテリンモノクローナル抗体に結合特異性を有する「キメラ」
または「ハイブリッド」抗体が製造される。
典型的にはそのような非イムノグロブリンポリペプチドで、本発明の抗体の定
常領域を置換するか、または該ポリペプチドで抗体の1つの抗原結合部位の可変
領域を置換することによりLIFまたはエンドテリンに対する特異性を有する抗
原結合部位、および別の抗原に対する特異性を有する別の抗原結合部位を含むキ
メラ二価抗体を作製する。
キメラまたはハイブリッド抗体は、架橋剤を含む方法を含む合成タンパク質化
学で知られた方法を用いてin vitroで製造することもできる。例えば、イムノト
キシンはジスルフィド−交換反応を用いるかまたはチオエーテル結合を形成させ
ることにより構築することができる。本目的に適した試薬の例にはイミノチオレ
ートおよびメチル−4−メルカプトブチルイミデートが含まれる。
(iv)ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化する方法は当該分野でよく知られている。一般的には、ヒ
ト化抗体はヒト以外の供給源からその中に導入された1またはそれ以上のアミノ
酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基はしばしば「輸入」残基と呼ばれ
、典型的には「輸入」可変領域から取り出される。ヒト化は、Winterおよび共同
研究者らの方法(Jonesら、Nature,321: 522-525[1986]; Riechmannら、Nature
332: 323-327[1988]; Verhoeyenら、Science,239: 1534-1536[1988])に従い、
齧歯類のCDRsまたはCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することにより実
質的に行うことができる。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、実質的に
完全なヒト可変領域以下がヒト以外の種由来の対応する配列で置換されているキ
メラ抗体(Cabillyら、上記)である。実際には、ヒト化抗体は、典型的に
は、いくつかのCDR残基およびおそらくいくつかのFR残基が齧歯類抗体中の類似
の部位由来の残基で置換されているヒト抗体である。
ヒト化抗体を作製するのに用いられるヒト可変領域(軽および重両方)の選択
は抗原性を減らすのに非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法にした
がって、齧歯類抗体の可変領域の配列は既知のヒト可変領域配列の完全なライブ
ラリーに対してスクリーニングされる。次に、齧歯類の配列に最も近いヒト配列
は、ヒト化抗体のためのヒトフレーム枠(FR)として認められている(Simsら
、J.Immunol.,151: 2296[1993]; ChothiaおよびLesk,J.Mol.Biol.,196: 9
01[1987])。別の方法では、軽または重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト
抗体の共通配列由来の特定のフレーム枠を用いる。同じフレーム枠をいくつかの
異なるヒト化抗体用に用いることができよう(Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci
. USA,89: 4285[1992]; Prestaら、J.Immunol.,151: 2623[1993])。
さらに、抗体が抗原に対する高親和性および他の好ましい生物学的特徴を保持
してヒト化されることが重要である。好ましい方法によればこの目的を達成する
には、ヒト化抗体は、親およびヒト化配列の三次元モデルを用いる種々の概念的
ヒト化生成物、および親配列の分析方法によって製造される。三次元イムノグロ
ブリンモデルは当業者によく知られており、普通に利用可能である。選ばれた候
補イムノグロブリン配列の、有望な三次元的立体構造を図解し、表示するコンピ
ュータープログラムが利用可能である。これらの表示を検査することにより、候
補イムノグロブリン配列の機能における残基の考えられる役割の分析、すなわち
、候補イムノグロブリンのその抗原に対する結合能に影響を及ぼす残基の分析を
行うことができる。このように、FR残基は、標的抗原に対する親和性の増加と
いった所望の抗体特性を達成するために共通および輸入配列から選び、結合する
ことができる。一般的には、CDR残基は抗原の結合に対する影響に直接および最
も実質的に関与している。
(v)ヒト抗体
ヒトモノクローナル抗体はハイブリドーマ法により製造され得る。ヒトモノク
ローナル抗体製造のためのヒト骨髄腫およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系は
、
例えば、コズボル、J.Immunol.,133:3001(1984); ブロデュールら、Monoclona
l Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekke
r,Inc.,New York,1987); およびボウナーら、J.Immunol.,147:86-95(1991)
に記載されている。
今や免疫に関して、内因性イムノグロブリン生成物の不存在下でヒト抗体の完
全なレパートリーを生成することができるトランスジェニック動物(例えば、マ
ウス)を作製することができる。例えば、キメラおよび生殖系突然変異マウスに
おける抗体重鎖結合領域(JH)のホモ接合体の欠失は内因性抗体産生の完全な阻
害をもたらすことが記載されている。そのような生殖系突然変異マウスにおける
ヒト生殖系イムノグロブリン遺伝子配列のトランスファーは、抗原免疫注射によ
りヒト抗体の産生をもたらす(例えば、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.
USA,90: 2551-255(1993); Jakobovitsら、Nature,362: 255-258(1993); Brug
germannら、Year in Immuno.,7: 33(1993)参照)。
別法として、ファージ提示技術(the pharge display technology)(マックカフ
ェティら、Nature,348:552-553[1990])が、非−免疫化ドナーからのイムノグロ
ブリン可変(V)領域遺伝子レパートリーからインビトロでのヒト抗体および抗体
フラグメントの製造のために用いられる。この技術により、抗体V領域遺伝子は
M13またはfdなどの糸状バクテリオファージの主要かまたは主要でない被覆
遺伝子のいずれかにインフレーム(in-frame)クローン化されファージ粒子の表
面上の機能的抗体フラグメントとして提示される。糸状粒子はファージゲノムの
1本鎖DNA複写物を含み、抗体の機能的特徴に基づく選択はまたこれらの特徴
を表す抗体をコードする遺伝子の選択に帰着するからである。すなわち、ファー
ジはB−細胞の特徴のいくつかに似ている。ファージの提示(display)は種々
の形式(フォーマット)で行われ得る;それらの概説については、ジョンソンお
よびチスウェル、Curr.Op.Struct.Biol.,3:564-571(1993)。V−遺伝子切片
のいくつかの供給源はファージの提示のために用いられ得る。クラックソンら、
Nature,352:624-628(1991)は、免疫化マウスの脾臓に由来するV遺伝子の小さ
い任意の順列組み合わせのライブラリーから抗−オキサゾロン抗体の異なった配
列
を分離した。非−免疫化ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーは構築するこ
とができ、抗原(自己抗原を含む)の異なった配列に対する抗体は本質的に、マ
ークスら、J.Mol.Biol.,222:581-597(1991); またはグリフィスら、EMBO J.,
12:725-734(1993)に記載の技術によって分離することができる。
本来の免疫応答において、抗体遺伝子は高い率で突然変異を蓄積している(体
細胞過剰突然変異)。導入された変化のいくつかはより高い親和性をもたらし、
高親和性表面イムノグロブリンを提示しているB−細胞は、後の抗原免疫注射の
間に優先的に複製され分化される。この本来の方法は「チェインシャフリング」
として知られている技術を採用して模倣され得る(マークスら、Bio/Technology,
10:779-783[1992])。この方法において、ファージ提示物よって得られる第1次
(primary)ヒト抗体の親和性は重鎖および軽鎖V領域遺伝子を非−免疫化ドナ
ーから得られるV領域遺伝子の天然由来の変異体のレパートリーで順次置換する
ことによって改良され得る。この技術はnM範囲の親和性を有する抗体および抗
体フラグメントの産生を可能にする。非常に大きなファージ抗体レパートリーの
作成のための方策はウォーターハウスら、Nucl.Acids Res.,21:2265-2266(199
3)に記載されている。
遺伝子のシャフリングはまた、ヒト抗体が初めのげっ歯類抗体と同様の親和性
および特異性を有する場合に、げっ歯類抗体からヒト抗体を誘導するのに用い得
る。「エピトーププリンティング」とも称される、この方法により、ファージ提
示技術により得られるげっ歯類抗体の重鎖または軽鎖V領域遺伝子がヒトV領域
遺伝子のレパートリーで置換され、げっ歯類−ヒトキメラを創造し得る。抗原の
選択は、機能的抗原結合部位を回復し得るヒト可変領域の分離に帰着し、言い換
えれば、エビトープはパートナーの選択を支配(刻印)する。この方法を反復し
て、残りのげっ歯類V領域を置換し、ヒト抗体を得る(PCTWO93/062
13、1993年4月1日公開)。CDR移植よるげっ歯類抗体の伝統的ヒト化
と異なり、この技術は完全なヒト抗体を提供し、げっ歯類起源のフレーム枠また
はCDR残基をもたない。
(vi)二特異性抗体
二特異性抗体はモノクローナル抗体であり、好ましくはヒトまたはヒト化抗体
であり、少なくとも2種の抗原に対して結合特異性を有する。本発明の場合、結
合特異性の1つはLIFに対するものであり、もう1つはエンドテリンに対する
ものである。二特異性抗体の調製方法は公知である。
伝統的に二特異性抗体の組換製造法は、2本のイムノグロブリン重鎖−軽鎖が
異なる特異性を有する該重鎖−軽鎖対の共発現に基づいている(Millsteinおよび
Cuello、Nature,305: 537-539[1983])。イムノグロブリン重および軽鎖が無作
為に寄せ集まっているために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、1
つだけが正しい二特異性構造を有する10個の異なる抗体分子の潜在的混合物を
生成する。通常、アフィニティクロマトグラフィー段階によって行われる正しい
分子の精製はかなりやっかいであり、生成物の収量は低い。同様な手順がWO93/0
8829(1993年5月13日公開)およびTrauneckerら、EMBO J.,10: 3655-3659(199
1)に開示されている。
別のより好ましい方法によれば、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を
有する抗体可変領域を、イムノグロブリン定常領域配列と融合させる。好ましく
は融合は、少なくとも、ヒンジ、CH2およびCH3領域の部分を含むイムノグ
ロブリン重鎖定常領域と行われる。融合の少なくとも1つ中に存在する、軽鎖結
合に必要な部位を含む第1重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。イ
ムノグロブリン重鎖融合物および所望によりイムノグロブリン軽鎖をコードして
いるDNAを別の発現ベクター中に挿入し、適切な宿主生物中に同時トランスフェ
クトされる。これは、構築物において用いられる3本のポリペプチド鎖の比が等
しくないときに最適の収量が得られる態様において3本のポリペプチドフラグメ
ントの相互の割合を調整する際の大きな柔軟性をもたらす。しかしながら、等比
の少なくとも2本のポリペプチド鎖の発現が高収量を生じるか、または該比が特
別の有意性を有しないときは、1つの発現ベクター中に2本または3本すべての
ポリペプチド鎖のコード配列を挿入することが可能である。この方法の好ましい
態様では、二特異性抗体は1つの腕に第1の結合特異性を有するハイブリッドイ
ムノグロブリン重鎖、および他の腕にハイブリッドイムノグロブリン重鎖−軽鎖
対(第2の結合特異性をもたらす)からなる。この非対称構造は、二特異性分子
の1方の半分のみにイムノグロブリン軽鎖が存在することで分離が容易となるの
で、所望しないイムノグロブリン鎖の組み合わせからの所望する二特異性化合物
の分離が促されることがわかった。二特異性抗体のさらなる詳細は、例えば、ス
レッシュら、Methods in Enzymology,121:210(1986)参照。
(vii)ヘテロコンジュゲート抗体
ヘテロコンジュゲート抗体もまた本発明の範囲内にある。ヘテロコンジュゲー
ト抗体は2個の共有結合した抗体からなる。このような抗体は、例えば、望まれ
ない細胞に対する免疫系を標的とし(U.S.特許第4,676,980号)、HIV
感染の処置のため(WO91/00360号;WO92/00373号;および
EP03089号)に提案された。ヘテロコンジュゲート抗体はなんらかの都合
のよい架橋法を用いて製造され得る。適切な架橋剤は当分野で周知であり、多数
の架橋技術とともにアメリカ合衆国特許第4676980号に記載されている。
C.アンタゴニストの生成
不純物からアンタゴニストの分離に用いられる技術は採用される当該抗体が何
であるかにより変化する。これらの方法には、イムノアフィニティクロマトグラ
フィー、イオン交換カラム分画(例えば、カルボキシメチルまたはスルホプロピ
ル基を含むDEAEまたはマトリックス)、ブルーセファローズクロマトグラフ
ィー、CMブルーセファローズ、MONO−Q、MONO−S、レンチルレクチ
ン−セファローズ、WGA−セファローズ、Con−Aセファローズ、エーテル
トヨパール、ブチルトヨパール、フェニルトヨパールまたはプロテインAセファ
ローズ、SDS−PAGEクロマトグラフィー、シリカクロマトグラフィー、ク
ロマトフォーカシング、逆相HPLC(例えば、付加した脂肪族基を有するシリ
カゲル)、例えば、セファデックスモレキュラーシーブまたはサイズ排除クロマ
トグラフィーを用いるゲル濾過、選択的にLIFアンタゴニストまたはエンドテ
リンアンタゴニストに結合するカラム上のクロマトグラフィー、およびエタノー
ルまたは硫酸アンモニウム沈澱から選択される1またはそれ以上の方法を挙げる
こ
とができる。プロテアーゼインヒビターは蛋白分解を阻害するために上記の工程
のいずれかに含まれる。適切なプロテアーゼインヒビターとしては、フェニルメ
チルスルホニルフルオリド(PMSF)、ロイペプチン、ペプスタチン、アプロ
チニン、4−(2−アミノエチル)−ベンゼンスルホニルフルオリド塩酸塩−ベ
スタチン、キモスタチンおよびベンズアミジンの例がある。
D.肥大試験
肥大阻害活性が推測されるアンタゴニストを試験するために予備試験を行った
。この試験において、用いられた培地は血清を含まず低プレーティング密度で生
存可能なものである。この培地中に直接プレーティングすることによって、より
少ない細胞を除去するように、洗浄工程が省かれる。このプレーティング密度は
重要である:多くのより少数の(many fewer)細胞および生存細胞が減少し;多く
のより多くの(many more)細胞および筋細胞が自己誘導肥大を始める。その段階
には:
(a)少なくともインシュリン、トランスフェリンおよびアプロチニンで補足さ
れたD−MEM/F−12培地中1mL当たり、約7.5×104細胞の細胞密度
の筋細胞の懸濁液を96−ウェルにプレートし;
(b)LIFまたはエンドテリンの存在下で細胞を培養し;
(c)(LIFまたはエンドテリンのアンタゴニストの疑いのある)試験される
べき物質を加え;
(d)細胞を当該物質とともに培養し;
(e)肥大について測定する
段階が含まれる。
培地は、細胞の成育を確実により長くするEGFなどの追加の要素で補足する
ことができるが、そのような補足は必須ではない。D−MEM/F−12培地は
ギブコBRL、ゲティスバーグ、MDから購入することができ、下記の媒質から
なる。
より好ましい肥大試験は、
(a)雌ウシ血清を含む培地で、好ましくは4%胎子雌ウシ血清を含むD−ME
M/F−12培地で、96−ウェル組織培養プレートのウェルを、好ましくは、
ウェルを約8時間37℃にてインキュベートして、プレーコーティングし;
(b)培地を除去し;
(c)インシュリン、トランスフェリンおよびアプロチニンで補足されたD−M
EM/F−12培地中1mL当たり7.5×104細胞で内側の60ウェルに筋細
胞の懸濁液をプレートし;
(d)LIFまたはエンドテリンの存在下、少なくとも24時間筋細胞を培養し;
(e)被験物質を添加し;
(f)細胞を被験物質とともに(好ましくは24−72時間、より好ましくは4
8時間)培養し;
(g)肥大を(好ましくは、結晶バイオレット染色後)顕微鏡試験により測定す
る。
好ましくは、工程(c)で用いられる培地は、血清無含有であり、またペニシリ
ン/ストレプトマイシン(pen/strep)およびグルタミンを含有している。最も
好ましくは、培地はD−MEMF−12の100mL、トランスフェリン(10
mg/mL)100μL、インスリン(5mg/mL)20μL、アプロチニン
(2mg/mL)50μL、pen/strep(JRHバイオサイエンスNo.5960
2−77P)1mL、およびL−グルタミン(200mM)1mLを含む。
他の肥大試験法は、ラットANP受容体A−IgG融合蛋白に対する125I−ラ
ットANPの結合に関する競合の測定による、心房ナトリウム排泄増加性ペプチ
ド(ANP)放出の測定である。使用に適した方法は、チャモウら、Biochemist
ry, 29: 9885-9891(1990)に記載のCD4−IgG融合蛋白を用いるGP130を
測定に用いられる方法に似ている。
2.治療的組成物およびアンタゴニストの投与
LIFに対するアンタゴニスト単独またはたはエンドテリンに対するアンタゴ
ニストと組み合わせたものは、心不全の経歴のある哺乳動物(例えば、動物また
はヒト)のインビボ処置の薬物としての使用が発見され、肥大作用を防止し、減
少させる。例えば、LIFアンタゴニスト単独またはエンドテリンアンタゴニス
トを伴って、ACEインヒビターを用いることができないかまたは効果がない場
合にうっ血性の心臓疾患の処置に有用である。
心臓疾患処置のためのアンタゴニストの治療用製剤は、所望の生理学的に許容
され得る担体、賦形剤または安定剤と所望の純度を有するアンタゴニストを混和
して凍結乾燥ケーキまたは水溶液の形態で貯蔵用に製造される(Remington's Ph
armaceutical Sciences,16th edition,Oslo,A.,Ed.[1980])。許容され得る
担体、賦形剤、または安定剤は採用される投与量および濃度にてレシピエントに
対して毒性のない、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝液;アス
コルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基より少ない)ポリペプチド;
血清アルブミン、ゼラチンまたはイムノグロブリンなどの蛋白;ポリビニルピロ
リドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニ
ンまたはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノー
ス、またはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどののキレート剤:マ
ンニトールまたはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対
イオン;および/またはツイーン、プルロニックス、またはポリエチレングリコ
ール(PEG)などの非−イオン性界面活性剤である。
アンタゴニストはまた、U.S.特許第4,640,835; 4,496,689;
4,301,144;4,670,417;4,791,192または4,179,33
7号に記載の方法で、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコ
ール、またはポリオキシアルキレンなどの種々の非蛋白性ポリマーの1つと適切
に結合される。
インビボ投与に用いられるアンタゴニストは無菌でなければならない。これは
凍結乾燥または解凍の前後に容易に滅菌濾過膜による濾過によって容易になし得
る。通常、アンタゴニストは凍結乾燥または溶液の状態で保存される。
治療用アンタゴニスト組成物は一般に、滅菌利用可能な口を有する容器、例え
ば、静脈内注射液袋または皮下注射針による貫通が可能な密栓を有するバイアル
に入っている。
アンタゴニスト投与は慢性的投与方法で、例えば、下記の経路の1つを用いて
なされる:静脈内注射または点滴、腹腔内、大脳内、筋肉内、眼内、動脈内、病
巣内経路、経口活性な小分子を用いるか、または下記の持続性放出系を用いる場
合は経口的投与である。アンタゴニストはクリアランス率が十分遅い時は点滴ま
たは腹腔内巨丸剤投与か、または血流またはリンパへの投与により継続的に投与
される。好ましい投与方法は、直接心臓に投与し、原因箇所に分子を直接送り、
アンタゴニストの副作用を最小化するようにするものである。
持続製剤の適切な例としては、蛋白を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マト
リックスが挙げられ、このマトリックスは、例えば、フィルム、またはマイクロ
カプセルなどの成型品の形態である。持続性マトリックスの例にはポリエステル
、ヒドロゲル(例えば、ランガーら、J.Biomed.Mater.Res.,15:167-277[1981
]およびランガー、Chem.Tech.,12:98-105[1982]に記載のポリ(2−ヒドロキ
シエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド類(
U.S.特許第3,773,919号、EP第58,481号)、L−グルタミン酸お
よびγ エチル−L−グルタメートのコポリマー(シッドマンら、Biopolymers,2
2:547-556[1983])、非−分解性エチレンビニルアセテート(ランガーら、上掲)
、商品名ルプロンデポ(乳酸−グリコール酸コポリマーとロイプロリドアセテー
トからなる注射可能なマイクロスフィア)などの分解性乳酸−グリコール酸コポ
リマーおよびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP133,988)な
どが挙げられる。
アンタゴニストはまた、例えば、コアセルベーション技術または界面重合によ
り製造されたマイクロカプセル(例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロース
またはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ[メチルメタアクリレート]マイ
クロカプセル)中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマ
イクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ−粒子およびナノ−カプセル)中
に、またはマクロエマルジョン中に挿入され得る。このような技術はRemington'
s Pharmaceutical Sciences、上掲に記載されている。
エチレンビニルアセテートおよび乳酸−グリコール酸のようなポリマーは10
0日以上にわたって放出を可能にするが、ある種のヒドロゲルはより短期間蛋白
を放出する。カプセル封入されると、蛋白は長期に体内に残留し、37℃で湿気
にさらされた結果、変性または凝集し得、生物学的活性の損失または免疫原性の
変化の可能性の原因になり得る。合理的な方法によってこれに関与するメカニズ
ムに基づいて蛋白の安定性を図り得る。例えば、凝集メカニズムがチオ−ジスル
フィド交換による分子間S−S結合の生成であると判明した場合は、スルフヒド
リル残基の修飾、酸性溶液の凍結乾燥、湿度含有率の調節、適当な添加剤の使用
および具体的なポリマーマトリックス組成物の開発により安定性を確保し得る。
持続性−放出アンタゴニスト組成物はまたリポソーム性捕捉アンタゴニストを
含む。アンタゴニストを含むリポソームはそれ自体公知の方法により製造され得
る:DE第3,218,121号; エピステインら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
, 82:3688-3692(1985); ハワンら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4030-4034
(1980); EP第52,322号; EP第36,676号; EP第143,949号;
EP第142,641号; 日本特許出願83−118008号; U.S.特許第4
,485,045号および第4,544,545号およびEP第102,324号。
通常、リポソームは小さく(約200−800オングストローム)単層型であり
、脂質含有が約30モル%コレステロールより大であり、選択部分が、最適アン
タゴニスト治療のために調整される。適切な持続性製剤はEP647,449に
記載されている。
治療用に採用されるアンタゴニストの有効量は、例えば、治療目的、投与経路
、患者の症状による。従って、治療者は所望の治療効果を得るために、投与量の
力価を測定し、要求される投与経路を変更する必要がある。上記の要素に基づい
て変化するが、LIFアンタゴニスト単独で用いられる典型的1日投与量は約1
μg/kg患者の体重〜100mg/kg患者の体重または1日当たりそれ以上
で
あり、好ましくは、約10μg/kg・日〜100mg/kg・日である。
もし、2種類のアンタゴニストを一緒に投与するならば、同じ経路で投与する
必要はないし、同じ製剤中で投与する必要もない。しかし、所望により1つの製
剤に結合することができる。両方のアンタゴニストを、各自の有効量で、または
最適とは言えないが、結合すれば有効である各自の量で患者に投与できる。好ま
しくはこのような各自の量は約10μg/kg・日〜100mg/kg・日であ
る。他の好ましい具体例は、両方のアンタゴニストの注射による投与であり、例
えば、用いるアンタゴニストの種類によるが、静脈内または皮下注射による。典
型的には施療者は心臓機能障害の処置のための所望の効果を達成する投与量に達
するまで、アンタゴニストを投与する。例えば、その量は肥大を減少させ、心室
収縮性を増大させ、末梢血管抵抗を減少させるか、またはうっ血性心臓疾患患者
における同じような重篤性の症状の緩解しまたは処置する、すなわち、心臓筋肉
組織を拡張と収縮の間の平衡の連続に望ましい結果を得る量である。この治療の
進行は容易に常用の試験方法で観察され得る。
2種類のアンタゴニストを、もし一緒に用いるならば、好ましくは細胞を含ま
ない医薬組成物を調製するために適当な担体中で共に製剤化され得る。1つの具
体例において、製剤に用いられる緩衝液は組成物が混合してすぐに用いられるか
、または後の使用のために保存されるかどうかにより変化する。なぜなら長期の
保存は溶解性および凝集などの安定性の問題を起こし得るが、これはpHを変え
ることによって対処し得るからである。最終的な製剤は安定な溶液かまたは凍結
乾燥固体であり得る。
アンタゴニストは所望により、ACEインヒビター、CT−1インヒビター、
hGH、および/またはIGF−Iを含む心不全処置のための他の薬剤と結合さ
せまたは協奏させて投与される。
このような薬剤の有効量は、用いる場合は、医師または熟練者の判断による。
投与量および調節はうっ血性心不全の最良の管理を達成するために行われ、理
想的には利尿剤またはジギタリスの使用、および低血圧および腎臓障害などの症
状を考慮する。さらに投与は用いられる薬剤の種類および処置されるべき具体的
な患者などの要素に依存する。典型的には用いられる量はもしその薬剤がアンタ
ゴニストとともではなく用いられるときの量と同じである;しかしながら、より
少ない量が、副作用の存在、処置される症状、患者の種類、アンタゴニストおよ
び薬剤の種類などに依存して採用されるが、ただし、薬剤の総量は処置される症
状に対する有効な投与量である。
すなわち、例えば、ACEインヒビターの場合、エナラプリルの試験投与量は
5mgである。ついでこれは、患者がそれに耐えるならば、1日1回、1日当た
り10−20mgに上昇させる。他の例としては、カプトリルは最初試験投与量
6.25mgでヒトの患者に経口的に投与され、ついで患者がそれに耐えるなら
ば、1日2回(BID)または1日3回(TID)25mgに上昇させ、BID
またはTID50mgに上昇させ得る。耐性濃度は低血圧の兆候による血圧の減
少が伴うかどうかを測定することによって推定する。もしその兆候があれば、も
し、指示があれば、投与量はBIDまたはTID100mgまで増加させ得る。
カプトリルは有効成分としてヒドロクロロチアジドと組み合わせて、およびカプ
トリルが結腸に到達するまで保護する腸内または遅延放出コーティングを有する
pH安定化コアとして投与用に製造される。カプトリルは錠剤またはカプセルの
形態での投与用として得られる。カプトリルおよび他のACEインヒビターに関
連する投与量、投与、処方戔および禁忌は、the Physician Desk Reference,Med
ical Economics Data Production Co.,Montvale,NJ.2314-2320(1994)に記載され
ている。下記の実施例は説明のためのものであり、限定のためのものではない。
明細書中のすべての引用文献は特にここに引用して明細書の記載とする。
実施例1
1.材料および方法
A.材料
コラゲナーゼCLS2をWorthinton(Freehold,NJ)およびPercollTMをPharm
acia Biotech AB(Uppsala,スウェーデン)のものである。培養培地および補足
物質はGIBCO BRL(Grand Island,NY)のものである。アプロチニンお
よび結晶バイオレットはSigma、St.Louis,MOのものである。結晶化したウシ血
清アルブミン(BSA)はICN Biomedicals(Aurora,IL)のものである。ファ
ルコン96ウェルプレートをBecton Dickenson(Oxnard,CA)およびLab TekTM
チェンバー・スライドはNunc(Naperville,IL)のものである。ヒト/ブタ エ
ンドテリン−1はAmerican Peptides(Sunnyvale,CA)のものである。マウスお
よびヒトLIFは組換手法により調製した。Rose and Todaro,WO93/05
169およびKimら、上掲参照。ここで用いられる組換マウスLIFはGenzyme,
Massのものであり、抗−ヒトLIFモノクローナル抗体をKimら、上掲およびW
O93/23556、上掲、に記載と同様にして得た。BQ−123はIharaら
、 Life Science,上掲; 特開昭51-94254号上掲; Webbら、上掲、に記載と同様に
して得; およびANPおよびANP−受容体IgG融合蛋白はChamowら、上掲、
に記載と同様にして得た。
B.筋細胞培養および肥大試験
新生児のラットの心室筋細胞をPennicaら、上掲、に記載と同様にして、96
−ウェルプレート中で培養した。要約すると、一連のコラゲナーゼ消化、続いて
商品名ペルコール勾配精製により1日令のスプラーグ・ドーリー・ラットから、
筋細胞を単離した。Iwakiら、J.Biol.Chem.,265:13809-13817(1990)。低勾配
界面でバンドになっている筋細胞を集め、2回洗浄し、15%(vol/vol)ウシ
胎児血清を含むD−MEM/F12培地中に再懸濁させた。細胞をトランスフェ
リン10μg/mL、インスリン1μg/ml、アプロチニン1μg/ml、グルタミン
2mmol/L、ペニシリンG100U/mLおよびストレプトマイシン100μg/m
lで補足した、血清無含有D−MEM/F12培地(試験培地)中に希釈し、最
終濃度を7.5×104細胞/mLとした。細胞を含むこの試験培地の最終血清濃
度は<0.1%であった。筋細胞を96−ウエルのウェル当たり200μL平板培
養し、平底プレートを予め4%(v/v)ウシ胎児血清を含むD−MEM/F12
培地中で8時間37℃でコーティングした。5%CO2中37℃で24時間後、
試験物質を加えた。試験物質を加え48時間後細胞を固定し、メタノールおよび
ホルムアルデヒド中5%(wt/vol)結晶バイオレットで染色し、肥大を顕微鏡
試験により1〜7度までの点をつけた。未処理の細胞を陰性対照として用い、3
度とした。毒性試験の結果は0〜2度とした。各試験の陽性対照はフェニレフリ
ン100μmol/Lであり、7度とした。
C.非−筋細胞培養
上記の方法では上部勾配界面のバンドに非−筋細胞が豊富である。それを集め
て2回洗浄し、10%(v/v)ウシ胎児血清(30mL/50心臓)を含むD−
MEM/F12培地中に再懸濁させた。5%CO2中37℃で1時間後、フラス
コを緩やかに回転させながら振盪し、培地を入れた。培地中で4日後、細胞をト
リプシン処理し、T25フラスコ(5mL/フラスコ)中mL当たり4×105細
胞を再プレーティングした。混じっていた筋細胞はすべてこの方法で破壊された
。培地中5日後、細胞を血清無含有D−MEM/F12培地中で2回洗浄し、調
整培地(1mg/mLBSAを含む試験培地)を加えた。調整培地を24時間後に除
去し、遠心分離して細胞および残骸を除去し、4℃で保存した。
D.ANP測定
ラットANP濃度を、ラットANP受容体A−IgG融合蛋白に対するラット1 25
I−ANPの結合の競合により測定した。Chamowら、上掲。
E.エンドテリン測定
エンドセリン濃度をアマーシャム・エンドテリン1,2(高感度)試験システ
ム(Amercham,Arlington Heights,IL)を用いて測定した。
F.LIF測定
LIFサンドウイッチELISAを、以下の修正を加えてKimら、上掲、記載
と同様にして行った。マイクロタイタープレートをMab D4.16.9(ヒトL
IFに対する)とともに一晩コーティングし、0.5%(w/v)BSAでブロッ
クし、洗浄した後、マウスLIF標準および試料を加え、プレートを2時間室温
にてインキュベートした。ついで、ビオチン化された(商品名Pierce ImmunoPur
e、商品名Sulfo-NHS-BiotinTM)Mab D62.3.2(ヒトLIFに対して)を加
え、プレートを室温にて1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、ストレ
プタビジン−パーオキシダーゼコンジュゲート(ベーリンガー−マンハイム・バ
イオケミカルズ、インディアナポリス、IN)を加え、プレートを30分間室温
にてインキュベートした。そのプレートを洗浄し、パーオキシダーゼの基質TM
B(テトラメチルベンジジン)(Kirkegaard and Perry,Gaithersburg、MD)を
加えた。H3PO4を添加することにより10分後発色を終了させた。450nmで
の吸光度をマイクロタイタープレート・リーダーを用いて測定した。NCM中の
ラットLIFの濃度評価は、マウスLIF標準曲線と比較して決定した。
G.免疫細胞化学
筋細胞を、D−MEM/F12培地中4%(v/v)ウシ胎児血清とともに予め
コーティングした4−チェンバーLab Tek(商品名)グラス・チェンバー・スラ
イド中にプレーティングし、24時間培養した。それらを試験物質に48時間暴
露し、ついで、リン酸緩衝塩類溶液(PBS)中で3回洗浄し、95%(v/v)
エタノールで15分間固定した。ついで、スライドを0.1%(v/v)ツイーン-
20(商品名)界面活性剤とともにPBS含有1%(w/v)BSAで30分間ブロ
ックし、BODIPY FL(商品名)ブランド試薬(PBS中1%BSA中10μg/ml
)(Molecular Probes,Eugene OR)にコンジュゲートさせたファラシジンと4
0分間インキュベートし、収縮性線維中に存在するf-アクチンを染色した。つ
いで、そのスライドを0.1%ツイーン-20(商品名)界面活性剤中PBSで3回
洗浄した。ファラシジン染色細胞をUltima(商品名)レーザー−走査型共焦点顕
微鏡(Meridian Instruments,Okemos,MI)で画像化した。A1.4NA60X
(商品名)油浸漬対物レンズを488nm励起と協調させて用い、得られた蛍光を
525−nmロング−パス・フィルターにより測定した。データを0.2μmの水平
および垂直分解および0.5μmのz-分解で集めた。各データ点を平均200測定
点集めた。最終画像を、複合zまたは深部画像を1つの二次元表現に圧縮して最
大蛍光投影アルゴリズムを構築した。
非−筋細胞を4−チェンバーLab Tek(商品名)グラス・チェンバー・スライ
ド中にプレーティングし、5日間培養し、PBS中で3回洗浄し、95%エタノ
ールで15分間固定した。スライドをPBS中で3回洗浄し、0.1%(v/v)
トリトン X-100(商品名)界面活性剤とともにPBS含有1%BSAで30分間
ブロックし、以下の一次抗体とともに2時間インキュベートした:(1)筋細胞
を染色するためのモノクローナル抗−トロポミオシン(サルコメリック)(Sigm
a,St.Louis,MO)1:50、(2)線維芽細胞の染色のためのモノクローナル
抗−アルファ平滑筋アクチン(Sigma)1:2500、(3)内皮細胞を染色す
るためのウサギ抗−ヒトVon Willebrandt因子(DAKO,Carpenteria,CA)1:5
00。PBS中で3回洗浄後、スライドを適当な蛍光複合二次抗体(Sigma)1
:200と45分間インキュベートし、PBS中で3回洗浄した。
2.結果
A.培養心臓非−筋細胞による肥大活性の産生
50%(v/v)NCMに48時間暴露後、新生児ラット心室筋細胞は未処理細
胞(肥大度3)と比較して、収縮性線維の器室化が進行し肥大した(肥大度7)。
筋細胞の大きさの増大は肥大度として示されるが、投与量依存性であり(Fig1
A)、ANP産生の増大を伴う(Fig1B)。NCMにおける肥大活性は5時間
まで急速に蓄積し、24時間でピークに達する(Fig2)。最大活性に1mL当
たり0.2〜0.4百万細胞の接種密度が必要である。
B.エンドテリン受容体遮断剤およびLIFモノクローナル抗体による非−
筋細胞調整培地肥大活性の阻害
エンドテリンA受容体遮断剤BQ−123および組換ヒトLIFに対するMab
(MabD62.3.2)は各々NCM肥大活性を一部阻害した。両方を1緒に添加
したとき、活性は殆ど完全に遮断された(Fig3)。BQ−123およびLIF
Mabは特異的インヒビターであると思われる。BQ−123はエンドテリン−1
によって誘発された肥大活性のみを遮断し、CT−1、マウスLIF(mLIF
)またはフェニルエフリンにより誘発された肥大活性を遮断しなかった(Fig4
)。LIFMabは、mLIFにより誘発された活性を一部分中和したが、エンド
テリン−1、CT−1またはフェニルエフリンにより誘発された活性に影響を与
えなかった。BQ−123およびLIFMabそれ自体は筋細胞の形態学に影響を
与えなかった。
NCMにおけるエンドテリンおよびLIFの存在は免疫試験により確認された
。NCM中のエンドテリン(エンドテリン−1および−2およびビッグエンドテ
リ
ン)は放射性免疫試験によって測定され、3つの製剤につき、平均229±10
pmol/Lであった。NCM中のLIFの濃度は、2つの抗−ヒトLIFモノ
クローナル抗体および標準としてのマウスLIFによるELISAサンドイッチ
法を用いて測定された。この方法を用いたLIFの濃度について得られた値は3
つの製剤につき、190±50pmol/Lであった。
C.インビトロ心筋細胞肥大に対する精製LIFおよびエンドテリンの作用
精製LIFおよびエンドテリン−1単独、および2つの試剤の組み合わせの最
大濃度に48時間暴露後、筋細胞の具体的な形態学が検討された。LIFに暴露
された細胞は樹枝状−様進行で伸長する傾向があった。エンドテリンに暴露され
た細胞は進行はなくより緊密であった。組み合わせに暴露したものは進行はなく
、大きさが増大した混合表現型であり、フェニルエフリンおよびNCMによる処
置から得られた形態に似ている。
収縮性線維の器質化は、f−アクチンを可視化する蛍光ファラシジンで染色し
た筋細胞につき観察された。未処理対照の線維は器質化されず、筋細胞中の線維
と比較して短かったが、肥大していた。エンドテリン−処理細胞中の線維は並列
で器質化されず、外観はもつれたようであったが、顕著な凝結はみられなかった
。mLIF、mLIFおよびエンドテリンの組み合わせ、およびフェニルエフリ
ンでの処理筋細胞中の線維は並んで、肉腫様ユニットを示す顕著な凝結を伴って
器質化した。mLIF−処理細胞中で収縮性線維は突起の先端に伸長しているの
が見られた。Fig6の結果はLIFおよびエンドテリンがANP産生に関して加
法的であることを示しており(Fig6A)、細胞の大きさに関して肥大度として
示されている(Fig6B)。
D.非−筋細胞の確認
免疫化学的検討では、培養心臓非−筋細胞の大多数は緊張した線維状態で、平
滑筋アクチンに対する抗体で染色された。アルファ平滑筋アクチンの発現が新生
ラット心臓組織から誘導された培養線維芽細胞中で観察された。Brouty-Boyleら
、In Vitro Cell Dev.Biol.,28A:293-296(1992)。これらの検討における筋細胞
はこのアクチンイソフォームもまた発現し、染色像による線維芽細胞と区別する
こ
とができた。類似の緊張線維染色像が、ロングら、上掲、により心臓非−筋細胞
の検討において報告されている。非−筋細胞の1%以下は内皮細胞(フォンヴィ
レブラント因子に対する抗体により)および筋細胞(肉腫トロポミオシンに対す
る抗体により)であることが判明した。一次抗体が除去されたスライド上には染
色はなかった。エンドテリンおよびLIF肥大活性を遮断するためにこの実施例
中で用いられた試剤は特異的であると見られる。BQ−123のみがエンドテリ
ン−1により誘発された肥大活性を遮断し、CT−1、マウスLIF、またはフ
ェニルエフリンにより誘発された肥大活性を遮断しなかった。エンドテリン−1
および−2およびビッグエンドテリンを測定した、エンドテリンについての放射
性免疫試験ではNCM中のエンドテリンの存在についての受容体遮断剤データが
確認された。
この実施例中で用いられたLIFモノクローナル抗体は、組換ヒトLIFに対
して創生され、ヒトおよびマウスLIFによって誘発された肥大に対して中和活
性を示しが、CT−1−、エンドテリン−、またはフェニルエフリン−誘発肥大
に対しては中和活性を示さなかった。4つのモノクローナル抗体(MabD3.1
4.1、MabD4.16.9、MabD25.1.4、MabD62.3.2、アメリカン
タイプカルチャーコレクション、12301パークローンドライブ、ロックビル
、メリーランドに、1992年6月23日付で寄託され、それぞれ、HB110
76、HB11077、HB11074およびHB11075のATCC受託番
号が与えられた)が購入され、それぞれ組換ヒトLIFの異なるエピトープを認
識した。これらのうちの3つ(MabD4.16.9、MabD25.1.4、MabD6
2.3.2)はマウスおよびヒトLIFにより誘発された筋細胞肥大を中和し、2
つ(MabD25.1.4、MabD62.3.2)は、NCMにより誘発された肥大の
阻害が同程度であった。MabD3.14.1は筋細胞肥大を誘発するマウスまたは
ヒトLIFの能力を中和しなかった。NCM中のラットLIF濃度の概算は、マ
ウスおよびヒトLIF−誘発肥大活性を中和するモノクローナル抗体のうちの2
つおよび標準としてのマウスLIFによるELISAサンドイッチ法を用いて行
った。ラットLIFのアミノ酸配列はマウスLIFとの類似が92%である。グ
ー
ら、Growth Factors,7:175-179(1992)。
この培養系では、精製LIFもエンドテリン単独でも、筋細胞の大きさおよび
ANP産生の両方に関して、ナノモル濃度でさえも最大肥大応答を誘発しなかっ
た。さらに、各試剤はフェニルエフリンによって誘発されたものとは異なる形態
学的特徴を誘発した。しかし、LIFおよびエンドテリンを一緒にしたときは、
細胞の大きさ、形態学的特徴、および収縮性線維器質化において、NCMで処理
したものに類似した最大肥大が筋細胞中に誘発された。もしエンドテリン活性が
遮断されているとしたら予想されるように、NCMおよびBQ−123で処理さ
れた筋細胞は、精製LIFで処理された筋細胞に似ていた。
LIFおよびエンドテリンで誘発された応答は細胞の大きさおよびANP形成
に関して加法的である。
免疫蛍光試験は、この実施例における非−筋細胞培養は、1%以下の内皮細胞
および筋細胞とともに、本質的に線維芽細胞−様細胞(平滑筋アクチンに対する
抗体で染色された)を含むことを示している。
要約すると、LIFおよびエンドテリンが、培養心臓新生児ラット筋細胞に対
する肥大活性の大部分に応答し得る、培養心臓新生児ラットNCM中の因子とし
て確認された。エンドテリンおよびLIFの存在は免疫試験により確認され、2
00pmol/Lの範囲にあることが判明した。精製LIFおよびエンドテリン
は、各分子についての形態学的特徴を伴った部分的肥大応答を誘発したが、因子
単独では組み合わせで見られた最大肥大応答を促進しなかった。両方の試剤の組
み合わせに対する応答は、筋細胞の大きさ、形態学的特徴、ANP産生および収
縮性線維の器質化に関して加法的であると思われる。
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(72)発明者 ルイス,エリザベス・エイ
アメリカ合衆国94117カリフォルニア州
サン・フランシスコ、ベイカー・ストリー
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(72)発明者 マザー,ジェニー・ピー
アメリカ合衆国94030カリフォルニア州
ミルブレイ、ラ・プレンダ・ドライブ269
番
(72)発明者 パオニ,ニコラス・エフ
アメリカ合衆国94002カリフォルニア州
ベルモント、テラス・ドライブ1756番