JPH11243948A - 動物細胞増殖用の細胞培養床基材及びその調製方法 - Google Patents
動物細胞増殖用の細胞培養床基材及びその調製方法Info
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- JPH11243948A JPH11243948A JP10067821A JP6782198A JPH11243948A JP H11243948 A JPH11243948 A JP H11243948A JP 10067821 A JP10067821 A JP 10067821A JP 6782198 A JP6782198 A JP 6782198A JP H11243948 A JPH11243948 A JP H11243948A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 動物細胞増殖用の効果的な細胞培養床基材を
提供しようとする。 【解決手段】 培養すべき動物細胞の種類に応じて選択
された、絹フィブロイン及び絹セリシンのいずれか一方
からなるか、又はその両方を特定の比率において含むも
のからなる膜体を、細胞培養床の基質に被着させたもの
であり、被着状態は下層を水不溶性としてから上層を被
着させ、かつ水不溶性とした成層膜とすることができ
る。
提供しようとする。 【解決手段】 培養すべき動物細胞の種類に応じて選択
された、絹フィブロイン及び絹セリシンのいずれか一方
からなるか、又はその両方を特定の比率において含むも
のからなる膜体を、細胞培養床の基質に被着させたもの
であり、被着状態は下層を水不溶性としてから上層を被
着させ、かつ水不溶性とした成層膜とすることができ
る。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は動物細胞を培養する
ための細胞培養床基材及びその調製方法、特に浮遊性の
動物細胞をも基材表面に効率よく付着・増殖するに適し
た細胞培養床及びその調製方法に関するものである。
ための細胞培養床基材及びその調製方法、特に浮遊性の
動物細胞をも基材表面に効率よく付着・増殖するに適し
た細胞培養床及びその調製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、バイオテクノロジー技術の進展に
伴い、新しい細胞融合や遺伝子導入に関する技術が次々
と開発され、これに関連して動物細胞を多量に培養する
技術や、動物細胞の培養技術と遺伝子導入技術とを融合
した遺伝子工学的手法によりヒト治療用ワクチン、イン
ターフェロン、及び細胞増殖因子などの有用な生理活性
物質を工業的に生産しようとする研究開発が盛んに行わ
れている。すなわち、動物細胞を遺伝子操作して、外来
遺伝子を効率よく発現させる技術をさらに発展させれ
ば、新規有用物質を効率的に生産できることから、その
ような有用物質の生産母体である生体細胞を工業規模で
効率的に増殖できる細胞培養床基材を開発することが大
きな社会的要請となっている。特に、ここにいう“動
物”もしくは“生体”の概念には“昆虫”をも含むもの
として、昆虫細胞の効果的な培養床基材が開発されれ
ば、有毒物質の判定等においても力を発揮すると考えら
れる。
伴い、新しい細胞融合や遺伝子導入に関する技術が次々
と開発され、これに関連して動物細胞を多量に培養する
技術や、動物細胞の培養技術と遺伝子導入技術とを融合
した遺伝子工学的手法によりヒト治療用ワクチン、イン
ターフェロン、及び細胞増殖因子などの有用な生理活性
物質を工業的に生産しようとする研究開発が盛んに行わ
れている。すなわち、動物細胞を遺伝子操作して、外来
遺伝子を効率よく発現させる技術をさらに発展させれ
ば、新規有用物質を効率的に生産できることから、その
ような有用物質の生産母体である生体細胞を工業規模で
効率的に増殖できる細胞培養床基材を開発することが大
きな社会的要請となっている。特に、ここにいう“動
物”もしくは“生体”の概念には“昆虫”をも含むもの
として、昆虫細胞の効果的な培養床基材が開発されれ
ば、有毒物質の判定等においても力を発揮すると考えら
れる。
【0003】しかしながら動物細胞の大量培養には、浮
遊性か付着性かという培地内での存在形態に応じた種々
の工夫が必要である。例えば、血球系癌細胞であるリン
パ芽球細胞、又はカルシノーマ、ザルコーマなどの樹立
化細胞株は浮遊状態で増殖する浮遊細胞であり、培養溶
液中に通気し攪拌しなければならない。この通気・攪拌
培養ではCO2,O2,N2 、空気などの混合比や分圧を制
御したり、溶存酸素を制御する必要があり、装置構成が
複雑高価となる。また浮遊性動物細胞を多量培養するに
は長期間を要し、この過程において微生物汚染などの致
命的な問題が生ずる。培養能率がよくないことは、種々
の制御を行う回分培養操作においても最終的な細胞密度
が107cells/ml に届かなかったという発明者らの実験例
でも確認されている。
遊性か付着性かという培地内での存在形態に応じた種々
の工夫が必要である。例えば、血球系癌細胞であるリン
パ芽球細胞、又はカルシノーマ、ザルコーマなどの樹立
化細胞株は浮遊状態で増殖する浮遊細胞であり、培養溶
液中に通気し攪拌しなければならない。この通気・攪拌
培養ではCO2,O2,N2 、空気などの混合比や分圧を制
御したり、溶存酸素を制御する必要があり、装置構成が
複雑高価となる。また浮遊性動物細胞を多量培養するに
は長期間を要し、この過程において微生物汚染などの致
命的な問題が生ずる。培養能率がよくないことは、種々
の制御を行う回分培養操作においても最終的な細胞密度
が107cells/ml に届かなかったという発明者らの実験例
でも確認されている。
【0004】これらの浮遊細胞に対し、付着性細胞の大
量培養は比較的容易であるが、付着性細胞の大部分は培
養容器の表面に付着した場合しか成長しないため、フラ
スコやローラーボトルでの増殖は非能率的であり、却っ
てコスト高となる傾向があった。従って付着面積を大き
くとるマイクロキャリアー培養法やホローファイバー培
養法等、特殊形態の培養装置も開発されているが、簡便
さの視点からはフラスコ等通常の培養容器によって付着
性細胞を能率的に培養できることが望まれる。
量培養は比較的容易であるが、付着性細胞の大部分は培
養容器の表面に付着した場合しか成長しないため、フラ
スコやローラーボトルでの増殖は非能率的であり、却っ
てコスト高となる傾向があった。従って付着面積を大き
くとるマイクロキャリアー培養法やホローファイバー培
養法等、特殊形態の培養装置も開発されているが、簡便
さの視点からはフラスコ等通常の培養容器によって付着
性細胞を能率的に培養できることが望まれる。
【0005】次ぎに、浮遊性、付着性などその性状に関
わらず細胞を効率的かつ経済的に培養するには、培地に
栄養物質を随時補給し、培養液が細胞の増殖に適した環
境となるようにその培地を頻繁に交換しなければなら
ず、これが効率的な細胞培養を阻害する要因ともなって
いた。また細胞培養を継続するには、細胞を目的量まで
増殖させると、細胞のみ、あるいは細胞と有用培地とを
分離する必要があり、遠心分離機による操作やデカンテ
ーション法が用いられる。この細胞/培地分離の見地か
らは、基材への付着性に欠ける浮遊性細胞よりも基材表
面への付着性がよい付着性細胞の方が便利である。
わらず細胞を効率的かつ経済的に培養するには、培地に
栄養物質を随時補給し、培養液が細胞の増殖に適した環
境となるようにその培地を頻繁に交換しなければなら
ず、これが効率的な細胞培養を阻害する要因ともなって
いた。また細胞培養を継続するには、細胞を目的量まで
増殖させると、細胞のみ、あるいは細胞と有用培地とを
分離する必要があり、遠心分離機による操作やデカンテ
ーション法が用いられる。この細胞/培地分離の見地か
らは、基材への付着性に欠ける浮遊性細胞よりも基材表
面への付着性がよい付着性細胞の方が便利である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以上のことを踏まえ、
細胞培養床基材に対して細胞増殖の促進のために試みら
れた従来の方法に着目すると、基材表面にプラズマ処
理を施して電荷を与える方法、基材表面に細胞増殖因
子を固定化する方法、及び基材表面にコラーゲンを薄
く被覆する方法等がある。しかしながらのプラズマ処
理法は大型で高価なプラズマ処理装置を必要とし、の
細胞増殖因子についてはこれを天然物から単離しかつ同
定する手間を無視できない。またのコラーゲンは比較
的入手容易であるが、最近では狂牛病の原因源となる恐
れが有るとして使用が制約され始めた。すなわち、狂牛
病が豚等にも広がるという危険性を否定できない現在、
豚の皮膚成分から抽出・調製されるコラーゲンに万が一
狂牛病因子が混入する可能性は否定できないからであ
る。
細胞培養床基材に対して細胞増殖の促進のために試みら
れた従来の方法に着目すると、基材表面にプラズマ処
理を施して電荷を与える方法、基材表面に細胞増殖因
子を固定化する方法、及び基材表面にコラーゲンを薄
く被覆する方法等がある。しかしながらのプラズマ処
理法は大型で高価なプラズマ処理装置を必要とし、の
細胞増殖因子についてはこれを天然物から単離しかつ同
定する手間を無視できない。またのコラーゲンは比較
的入手容易であるが、最近では狂牛病の原因源となる恐
れが有るとして使用が制約され始めた。すなわち、狂牛
病が豚等にも広がるという危険性を否定できない現在、
豚の皮膚成分から抽出・調製されるコラーゲンに万が一
狂牛病因子が混入する可能性は否定できないからであ
る。
【0007】したがって、本発明はコラーゲンに代わる
新規の効果的な動物細胞培養のための細胞培養床基材を
提供しようとするものである。本発明は新規の細胞培養
床基材による動物細胞の培養に直接貢献し、さらにはそ
の動物細胞から有用物質を生産させることを意図するも
のである以上、遺伝的な形状や性状がそろった細胞を増
殖させる基礎技術である細胞クローニング技術が重要と
なり、多様な動物細胞を広くクローニング収集しておく
こととも関連する。
新規の効果的な動物細胞培養のための細胞培養床基材を
提供しようとするものである。本発明は新規の細胞培養
床基材による動物細胞の培養に直接貢献し、さらにはそ
の動物細胞から有用物質を生産させることを意図するも
のである以上、遺伝的な形状や性状がそろった細胞を増
殖させる基礎技術である細胞クローニング技術が重要と
なり、多様な動物細胞を広くクローニング収集しておく
こととも関連する。
【0008】昆虫細胞は、有用な生理活性物質を動物細
胞培養により生産する物質生産系として極めて有望視さ
れている。なかでも、鱗翅目昆虫からは300種以上も
の核多角体(NPV)ウイルスが分離されている。昆虫
細胞に接種されたNPVウイルスは、その宿主昆虫に特
異的に感染して急激に増殖し、天敵害虫駆除用の微生物
として幅広く利用できる(例えば、クワゴマダラヒトリ
培養細胞系で効率的に増殖させたNPVウイルスによ
り、クワゴマダラヒトリ等の害虫を防除する。)他、天
敵害虫駆除以外の目的でも有効に利用できる。
胞培養により生産する物質生産系として極めて有望視さ
れている。なかでも、鱗翅目昆虫からは300種以上も
の核多角体(NPV)ウイルスが分離されている。昆虫
細胞に接種されたNPVウイルスは、その宿主昆虫に特
異的に感染して急激に増殖し、天敵害虫駆除用の微生物
として幅広く利用できる(例えば、クワゴマダラヒトリ
培養細胞系で効率的に増殖させたNPVウイルスによ
り、クワゴマダラヒトリ等の害虫を防除する。)他、天
敵害虫駆除以外の目的でも有効に利用できる。
【0009】動物細胞に生産される有用物質の一典型で
あるマウス型モノクローナル抗体は、マウス腹水中にお
いて成育させたハイブリドーマより産生分泌されるもの
である。しかしながら、すべてのハイブリドーマがマウ
ス腹水中で良好に生育できるものではなく、例え生育で
きたとしてもその腹水からのモノクローナル抗体の精製
には一定の困難を伴う。そこで浮遊性細胞であるハイブ
リドーマを人工的な環境で培養するための、各種培養方
法や培養液が開発されてきた。一方、基質に対して付着
性を発揮する有用動物細胞の一例として、ヒト大腸癌に
由来するガン細胞SW−1116は、ガン関連性抗原C
A1−9と、ガン胎児性抗原CEAを生産し、大腸癌や
肝癌の診断に広く用いられるものである。
あるマウス型モノクローナル抗体は、マウス腹水中にお
いて成育させたハイブリドーマより産生分泌されるもの
である。しかしながら、すべてのハイブリドーマがマウ
ス腹水中で良好に生育できるものではなく、例え生育で
きたとしてもその腹水からのモノクローナル抗体の精製
には一定の困難を伴う。そこで浮遊性細胞であるハイブ
リドーマを人工的な環境で培養するための、各種培養方
法や培養液が開発されてきた。一方、基質に対して付着
性を発揮する有用動物細胞の一例として、ヒト大腸癌に
由来するガン細胞SW−1116は、ガン関連性抗原C
A1−9と、ガン胎児性抗原CEAを生産し、大腸癌や
肝癌の診断に広く用いられるものである。
【0010】本発明は、上記のような昆虫細胞を含む動
物細胞の一般的属性が、付着性である場合にはその付着
性の程度に応じて付着及び増殖させるとともに、浮遊性
である場合には付着性を与えて好ましく付着及び増殖さ
せるための細胞培養床を提供しようとするものである。
このように、本発明の細胞培養床が、動物細胞の付着性
の度合いに応じてそれらの細胞を選択的に付着せしめる
という機能は、付着性細胞と浮遊性細胞との分離などに
も利用することができる。
物細胞の一般的属性が、付着性である場合にはその付着
性の程度に応じて付着及び増殖させるとともに、浮遊性
である場合には付着性を与えて好ましく付着及び増殖さ
せるための細胞培養床を提供しようとするものである。
このように、本発明の細胞培養床が、動物細胞の付着性
の度合いに応じてそれらの細胞を選択的に付着せしめる
という機能は、付着性細胞と浮遊性細胞との分離などに
も利用することができる。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明は培養すべき動物細胞の種類に応じて選択さ
れた絹蛋白質であって、絹フィブロイン及び絹セリシン
のいずれか一方のみを含むか又はその両方を特定の比率
において含む膜体を、細胞培養床の基質に被着させたも
のからなる動物細胞増殖用の細胞培養床基材を構成した
ものである。
め、本発明は培養すべき動物細胞の種類に応じて選択さ
れた絹蛋白質であって、絹フィブロイン及び絹セリシン
のいずれか一方のみを含むか又はその両方を特定の比率
において含む膜体を、細胞培養床の基質に被着させたも
のからなる動物細胞増殖用の細胞培養床基材を構成した
ものである。
【0012】上記の構成は、本発明者が細胞培養床基材
の組成を変えることで基材表面に対する有用細胞の付着
性を制御できる技術の確立を目指し、基材を生体高分子
の中から選択したり、絹フィブロイン及び絹セリシンの
一方又は両方を選択的に基材表面に層状に被覆する実験
を行った結果得られたものである。即ち、絹蛋白質の適
当な選択によって浮遊細胞を確実に付着できると共に、
各種細胞を多量に増殖できることが見出された。
の組成を変えることで基材表面に対する有用細胞の付着
性を制御できる技術の確立を目指し、基材を生体高分子
の中から選択したり、絹フィブロイン及び絹セリシンの
一方又は両方を選択的に基材表面に層状に被覆する実験
を行った結果得られたものである。即ち、絹蛋白質の適
当な選択によって浮遊細胞を確実に付着できると共に、
各種細胞を多量に増殖できることが見出された。
【0013】本発明はまた、絹フィブロイン及び絹セリ
シンの各々と、その両方を特定の比率で混合したものか
ら、少なくとも二種類の層材料を選択し、細胞培養床の
基質に各層を水不溶性として層状に被着させたものから
なる動物細胞増殖用の細胞培養床基材を構成したもので
ある。。
シンの各々と、その両方を特定の比率で混合したものか
ら、少なくとも二種類の層材料を選択し、細胞培養床の
基質に各層を水不溶性として層状に被着させたものから
なる動物細胞増殖用の細胞培養床基材を構成したもので
ある。。
【0014】上記の構成は、発明者が細胞培養床基材の
調製方法と、細胞の付着性及び増殖性との関係を調べた
結果確立されたものである。即ち、絹フィブロイン又は
絹セリシンのいずれであっても、それを細胞培養床基材
の表面に被覆する際には水溶液として適用し、これを培
養床表面又はさらに別の被覆材のための下地とするとき
は、水に対して不溶化させるために結晶化を進め、水不
溶性にしなければならないことが明らかとなった。この
ような絹蛋白の水不溶化処理はアルコール又はアルデヒ
ド接触、あるいは紫外線照射により行われる。
調製方法と、細胞の付着性及び増殖性との関係を調べた
結果確立されたものである。即ち、絹フィブロイン又は
絹セリシンのいずれであっても、それを細胞培養床基材
の表面に被覆する際には水溶液として適用し、これを培
養床表面又はさらに別の被覆材のための下地とするとき
は、水に対して不溶化させるために結晶化を進め、水不
溶性にしなければならないことが明らかとなった。この
ような絹蛋白の水不溶化処理はアルコール又はアルデヒ
ド接触、あるいは紫外線照射により行われる。
【0015】また、本発明の細胞培養床基材の構成にお
いて用いられる絹フィブロイン及び絹セリシンは、好ま
しくはオートクレーブ中で滅菌し、その後蒸留水で透析
して得られた絹蛋白質であり、典型的な細胞培養床基材
の調整方法としては細胞培養容器の内面に滅菌絹蛋白質
水溶液を接触させ、容器内面に残留した絹蛋白質水溶液
を乾燥し、さらに水不溶化処理することにより絹コーテ
ィング膜を形成する工程を基本的に含むものである。
いて用いられる絹フィブロイン及び絹セリシンは、好ま
しくはオートクレーブ中で滅菌し、その後蒸留水で透析
して得られた絹蛋白質であり、典型的な細胞培養床基材
の調整方法としては細胞培養容器の内面に滅菌絹蛋白質
水溶液を接触させ、容器内面に残留した絹蛋白質水溶液
を乾燥し、さらに水不溶化処理することにより絹コーテ
ィング膜を形成する工程を基本的に含むものである。
【0016】本発明による典型的な細胞培養床基材は、
その培養床上に水不溶性絹蛋白質を層状に被覆して製造
される。細胞培養床担体の材質及び形状は特定されない
が、素材としては例えばスチレンの重合物であるポリス
チレンやガラスなど、形状(形態)としてはシャーレ
状、繊維塊状、布状、筒状及び粒子状などが適用され
る。
その培養床上に水不溶性絹蛋白質を層状に被覆して製造
される。細胞培養床担体の材質及び形状は特定されない
が、素材としては例えばスチレンの重合物であるポリス
チレンやガラスなど、形状(形態)としてはシャーレ
状、繊維塊状、布状、筒状及び粒子状などが適用され
る。
【0017】原料の絹蛋白質としては、家蚕又は野蚕由
来の絹フィブロイン及び絹セリシンが用いられる。これ
らは蚕体の絹糸腺内の液状絹蛋白質、あるいは繭糸、絹
糸又は絹製品をLiBrやCaCl2 等の中性塩の濃厚
溶液で可溶化したものから得ることができる。
来の絹フィブロイン及び絹セリシンが用いられる。これ
らは蚕体の絹糸腺内の液状絹蛋白質、あるいは繭糸、絹
糸又は絹製品をLiBrやCaCl2 等の中性塩の濃厚
溶液で可溶化したものから得ることができる。
【0018】細胞培養床基材の調製においては、まず絹
フィブロイン(又は絹セリシン)を基材表面に第1層と
して直接被覆及び不溶化し、次いで絹セリシン(又は絹
フィブロイン)をこの第1層上に被覆し不溶化させる。
具体的手順は細胞培養床容器に、濃度2%以下、なる
べくなら0.1〜0.3%の絹フィブロイン(又は絹セ
リシン)の水溶液を入れ、室温に3〜30分間静置後、
デカンテーション法でこの絹蛋白質水溶液を除去し、そ
の水溶液被膜を形成せしめる。(なお、この被膜形成は
スプレー法、又は浸漬法によっても行うことができ
る。)細胞培養床の基材表面に均一に絹膜を形成する
ため、基材(容器内面)を裏返し、30〜60℃に加熱
・乾燥する。乾燥直後の絹蛋白質は水溶解性であるた
め、絹蛋白質に対する貧溶媒であるメタノール水溶液
(50Wt%)を加え20〜30分間放置する。かく
して形成された絹フィブロイン(又は絹セリシン)の第
1層上に、絹セリシン(又は絹フィブロイン)の第2層
を同様の手順で形成することにより、本発明の典型的な
細胞培養床容器が調製される。
フィブロイン(又は絹セリシン)を基材表面に第1層と
して直接被覆及び不溶化し、次いで絹セリシン(又は絹
フィブロイン)をこの第1層上に被覆し不溶化させる。
具体的手順は細胞培養床容器に、濃度2%以下、なる
べくなら0.1〜0.3%の絹フィブロイン(又は絹セ
リシン)の水溶液を入れ、室温に3〜30分間静置後、
デカンテーション法でこの絹蛋白質水溶液を除去し、そ
の水溶液被膜を形成せしめる。(なお、この被膜形成は
スプレー法、又は浸漬法によっても行うことができ
る。)細胞培養床の基材表面に均一に絹膜を形成する
ため、基材(容器内面)を裏返し、30〜60℃に加熱
・乾燥する。乾燥直後の絹蛋白質は水溶解性であるた
め、絹蛋白質に対する貧溶媒であるメタノール水溶液
(50Wt%)を加え20〜30分間放置する。かく
して形成された絹フィブロイン(又は絹セリシン)の第
1層上に、絹セリシン(又は絹フィブロイン)の第2層
を同様の手順で形成することにより、本発明の典型的な
細胞培養床容器が調製される。
【0019】培養床担体に被覆された絹フィブロイン又
は絹セリシン、場合によっては両者の混合物が、上記の
ように不溶化処理されてどの程度溶解性を残しあるいは
不溶化するかの物理量としての結晶化度をX線回折測定
より求めたところ、それぞれ結晶化度13、9、及び1
1%であった。本発明において、必要な被覆物質の結晶
化度は8%以上、なるべくなら11%以上あればよい。
また絹フィブロインと絹セリシンの混合割合は任意であ
り、典型的には50/50(重量比)が採用される。
は絹セリシン、場合によっては両者の混合物が、上記の
ように不溶化処理されてどの程度溶解性を残しあるいは
不溶化するかの物理量としての結晶化度をX線回折測定
より求めたところ、それぞれ結晶化度13、9、及び1
1%であった。本発明において、必要な被覆物質の結晶
化度は8%以上、なるべくなら11%以上あればよい。
また絹フィブロインと絹セリシンの混合割合は任意であ
り、典型的には50/50(重量比)が採用される。
【0020】以上のようにして比較的簡単に調製された
細胞培養床基材は、従来の細胞培養床基材と同様、又は
それ以上に効率的な動物細胞の増殖用培養床として、付
着性細胞はもとより浮遊性細胞をも、その浮遊性を付着
性に変えて増殖、培養するこができる。
細胞培養床基材は、従来の細胞培養床基材と同様、又は
それ以上に効率的な動物細胞の増殖用培養床として、付
着性細胞はもとより浮遊性細胞をも、その浮遊性を付着
性に変えて増殖、培養するこができる。
【0021】例えば、細胞培養床基材への付着性が劣悪
な野蚕由来のAntheraea eucalipti細胞や浮遊性を示す
家蚕由来と言われるBombyx mori(SPC-Bm36) 細胞はスチ
レン等、従来の典型的な合成重合体基材への付着性が劣
悪であるが、本発明の細胞培養床基材へは強固に付着
し、増殖性もきわめて良好である。また細胞の付着性の
違いに応じて、細胞培養床基材の組成比を適宜調整し、
細胞の付着性及び増殖性を制御することも可能である。
このような細胞付着性及び増殖性の制御は、細胞培養床
基材の不溶化又は固定化処理に違いによっても行うこと
ができる。
な野蚕由来のAntheraea eucalipti細胞や浮遊性を示す
家蚕由来と言われるBombyx mori(SPC-Bm36) 細胞はスチ
レン等、従来の典型的な合成重合体基材への付着性が劣
悪であるが、本発明の細胞培養床基材へは強固に付着
し、増殖性もきわめて良好である。また細胞の付着性の
違いに応じて、細胞培養床基材の組成比を適宜調整し、
細胞の付着性及び増殖性を制御することも可能である。
このような細胞付着性及び増殖性の制御は、細胞培養床
基材の不溶化又は固定化処理に違いによっても行うこと
ができる。
【0022】従って、遺伝的特性が異なる細胞を含む複
数の細胞を加えた水溶液を、付着性制御された本発明の
細胞培養床に適用すると、培養床の付着性(吸着能)に
対して特異的な細胞を強く付着させ、他の細胞はデカン
テーション法等により培養液ごと除去するという細胞選
別操作を行うことができる。また外見上の違いからは分
別不能な細胞群もそれらの付着性もしくは接着性の違い
から分別することができ、この見地において組換体細胞
から大量に、インターフェロン、エルスロポエチン、テ
ィシュープラスミノーゲン アクチベーター(TPA) など
の有用物質を増殖させるために、本発明の細胞培養床基
材が大きな役割を果たすものと考えられる。
数の細胞を加えた水溶液を、付着性制御された本発明の
細胞培養床に適用すると、培養床の付着性(吸着能)に
対して特異的な細胞を強く付着させ、他の細胞はデカン
テーション法等により培養液ごと除去するという細胞選
別操作を行うことができる。また外見上の違いからは分
別不能な細胞群もそれらの付着性もしくは接着性の違い
から分別することができ、この見地において組換体細胞
から大量に、インターフェロン、エルスロポエチン、テ
ィシュープラスミノーゲン アクチベーター(TPA) など
の有用物質を増殖させるために、本発明の細胞培養床基
材が大きな役割を果たすものと考えられる。
【0023】本発明の細胞培養床基材に適用できる細胞
としては、動物の各種組織の初代培養、動物由来の
樹立細胞など広範囲に存在する。の細胞の具体例とし
ては、チャイニーズハムスター卵巣癌細胞(CHO) 、サル
腎癌細胞(COS) 、ヒト子宮癌細胞(Hela)、ヒトやマウ
ス、ラットなどの骨髄種細胞等が一般に樹立され、既知
のあらゆる癌細胞が対象となりうる。
としては、動物の各種組織の初代培養、動物由来の
樹立細胞など広範囲に存在する。の細胞の具体例とし
ては、チャイニーズハムスター卵巣癌細胞(CHO) 、サル
腎癌細胞(COS) 、ヒト子宮癌細胞(Hela)、ヒトやマウ
ス、ラットなどの骨髄種細胞等が一般に樹立され、既知
のあらゆる癌細胞が対象となりうる。
【0024】動物細胞の培養に関連して産生される有用
物質には、その動物細胞が生産する固有の物質のほか、
外部から組み込まれた遺伝子コードによる蛋白質及びペ
プチドがあり、これらの有用物質としてはペプチドホル
モン、サイトカイン、輸送蛋白質等が挙げられる。従っ
て、本発明が究極的に意図する新規培養システムの開発
は、動物細胞の培養を伴うこれら機能性蛋白質の生産に
一般的に適用することができる。
物質には、その動物細胞が生産する固有の物質のほか、
外部から組み込まれた遺伝子コードによる蛋白質及びペ
プチドがあり、これらの有用物質としてはペプチドホル
モン、サイトカイン、輸送蛋白質等が挙げられる。従っ
て、本発明が究極的に意図する新規培養システムの開発
は、動物細胞の培養を伴うこれら機能性蛋白質の生産に
一般的に適用することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例及び検証例
について詳細に説明する。
について詳細に説明する。
【0026】実施例1 絹フィブロイン繊維を9.5MのLiBrで60℃30
分溶解させた後、セルロース製透析膜に入れて水道水と
十分置換し、母液として濃度3.36ml/dl の絹フィブ
ロイン水溶液を調製した。この水溶液を母液として、そ
のものを用いた3.36ml/dl のものと、さらに、
水を加えて0.40ml/dl の2種類として、各種細胞の
培養実験を行った。これらの絹フィブロイン水溶液はオ
ートクレーブにより滅菌処理され、細胞培養容器として
の12ウエルプレートにおける6ウエルに注入し、10
分間放置した後、デカンテーション法で実質的に除去
し、ウエル内表面に被着した水溶液を十分に乾燥し、さ
らに紫外線照射によって不溶化、即ち結晶・固定化され
た絹蛋白膜を形成した。なお、滅菌後の前記水溶液がス
プレーや浸漬法により、ウエル内面上に被膜化されたと
きは、その後乾燥し、不溶化される。プレートにおい
て、内表面にこの絹蛋白膜を有する6ウエルと、絹蛋白
膜を有しないが代わりにコラーゲンを被覆した6ウエル
をそれぞれ試験区及び対照区として、そのいずれにも各
種昆虫細胞に応じた培地に1×105 cells/ml となる
ようにその細胞を接種してなる細胞培養液を0.7ml注
入し、これを27℃に維持して5日間おいてから、培養
された各細胞濃度とその生存率を測定した。
分溶解させた後、セルロース製透析膜に入れて水道水と
十分置換し、母液として濃度3.36ml/dl の絹フィブ
ロイン水溶液を調製した。この水溶液を母液として、そ
のものを用いた3.36ml/dl のものと、さらに、
水を加えて0.40ml/dl の2種類として、各種細胞の
培養実験を行った。これらの絹フィブロイン水溶液はオ
ートクレーブにより滅菌処理され、細胞培養容器として
の12ウエルプレートにおける6ウエルに注入し、10
分間放置した後、デカンテーション法で実質的に除去
し、ウエル内表面に被着した水溶液を十分に乾燥し、さ
らに紫外線照射によって不溶化、即ち結晶・固定化され
た絹蛋白膜を形成した。なお、滅菌後の前記水溶液がス
プレーや浸漬法により、ウエル内面上に被膜化されたと
きは、その後乾燥し、不溶化される。プレートにおい
て、内表面にこの絹蛋白膜を有する6ウエルと、絹蛋白
膜を有しないが代わりにコラーゲンを被覆した6ウエル
をそれぞれ試験区及び対照区として、そのいずれにも各
種昆虫細胞に応じた培地に1×105 cells/ml となる
ようにその細胞を接種してなる細胞培養液を0.7ml注
入し、これを27℃に維持して5日間おいてから、培養
された各細胞濃度とその生存率を測定した。
【0027】使用した昆虫由来の細胞/培地は、(a)Sf9
/IPl-41(10% FBS) 、(b)Sf9/Sf900II 、(c)Bm N4/IPl-
4 (10% FBS) 、(d)High five/EX-CEll400 、(e)High f
iveSf900/II0の5種類であり、測定された細胞増殖後の
細胞濃度と生存率を表1にまとめた。
/IPl-41(10% FBS) 、(b)Sf9/Sf900II 、(c)Bm N4/IPl-
4 (10% FBS) 、(d)High five/EX-CEll400 、(e)High f
iveSf900/II0の5種類であり、測定された細胞増殖後の
細胞濃度と生存率を表1にまとめた。
【0028】
【表1】
【0029】上記実施例によれば、2種類の絹蛋白濃度
0.4ml/dlと3.36ml/dlの実験区によって若干の
差はあるが、本発明に従って絹フィブロイン被覆した実
験区では、細胞培養数が絹蛋白膜を有しない対照区とほ
ぼ同等、もしくはより増大したという結果を示してい
る。したがって、絹蛋白質はコラーゲンとほぼ同等もし
くはそれ以上の効果を発現したものであり、これらの細
胞は従来培養困難であるとして適用されなかった昆虫由
来のものであることに留意すべきである。
0.4ml/dlと3.36ml/dlの実験区によって若干の
差はあるが、本発明に従って絹フィブロイン被覆した実
験区では、細胞培養数が絹蛋白膜を有しない対照区とほ
ぼ同等、もしくはより増大したという結果を示してい
る。したがって、絹蛋白質はコラーゲンとほぼ同等もし
くはそれ以上の効果を発現したものであり、これらの細
胞は従来培養困難であるとして適用されなかった昆虫由
来のものであることに留意すべきである。
【0030】実施例2 25頭の家蚕(日137号×支137号)の熟蚕体内よ
り、液状絹蛋白質が多量に含まれる中部糸腺を取り出
し、蒸留水で十分水洗した後、ピンセットで絹糸腺細胞
を除去した。得られた液状絹蛋白質35gを40mlの蒸
留水に入れ、分散時間を変えてpH6.8付近の絹セリシ
ンと絹フィブロイン水溶液とを別々に調製した。分散時
間が30分では絹セリシン溶液が、分散時間4時間では
絹フィブロイン溶液が調製できた。両試料溶液を約0.
8%にまで濃縮したものを原液とした。この他、絹フィ
ブロイン溶液と絹セリシン溶液との等量混合溶液を調製
した。これらの原液のうち、例えば絹フィブロイン水溶
液の滅菌は次のようにして行った。絹フィブロイン繊維
を60℃、30分9.5M LiBrで溶解させた後、L
iBr溶液を含んだ絹フィブロイン水溶液をペーパ濾紙
で濾過する。これをセルロース製透析膜に詰めて両端を
縫糸で封じ、これを蒸留水の入った容器に入れ、容器ご
と120℃、20分にてオートクレープ装置内に入れ、
滅菌処理を施した。オートクレープ処理後、セルロース
製透析膜を温度5℃の蒸留水の中で2日間攪拌しながら
透析処理を行った。透析後、クリーンベンチ中でセルロ
ース製透析膜の蓋を開け、滅菌させた絹フィブロイン溶
液を無菌状態にある容器に移して次の使用に備える。絹
セリシン水溶液等の滅菌も同様に行われる。以降、特に
指定しない限り、こうして調製した滅菌済の絹フィブロ
イン水溶液あるいは絹セリシン水溶液を用いて実験を行
った。
り、液状絹蛋白質が多量に含まれる中部糸腺を取り出
し、蒸留水で十分水洗した後、ピンセットで絹糸腺細胞
を除去した。得られた液状絹蛋白質35gを40mlの蒸
留水に入れ、分散時間を変えてpH6.8付近の絹セリシ
ンと絹フィブロイン水溶液とを別々に調製した。分散時
間が30分では絹セリシン溶液が、分散時間4時間では
絹フィブロイン溶液が調製できた。両試料溶液を約0.
8%にまで濃縮したものを原液とした。この他、絹フィ
ブロイン溶液と絹セリシン溶液との等量混合溶液を調製
した。これらの原液のうち、例えば絹フィブロイン水溶
液の滅菌は次のようにして行った。絹フィブロイン繊維
を60℃、30分9.5M LiBrで溶解させた後、L
iBr溶液を含んだ絹フィブロイン水溶液をペーパ濾紙
で濾過する。これをセルロース製透析膜に詰めて両端を
縫糸で封じ、これを蒸留水の入った容器に入れ、容器ご
と120℃、20分にてオートクレープ装置内に入れ、
滅菌処理を施した。オートクレープ処理後、セルロース
製透析膜を温度5℃の蒸留水の中で2日間攪拌しながら
透析処理を行った。透析後、クリーンベンチ中でセルロ
ース製透析膜の蓋を開け、滅菌させた絹フィブロイン溶
液を無菌状態にある容器に移して次の使用に備える。絹
セリシン水溶液等の滅菌も同様に行われる。以降、特に
指定しない限り、こうして調製した滅菌済の絹フィブロ
イン水溶液あるいは絹セリシン水溶液を用いて実験を行
った。
【0031】これらの滅菌後の水溶液をそれぞれポリス
チレン製ペトリ皿(35φ×10mm)(Becton Dickins
on labware製、Faclon 1018 )に流し込み、25℃で1
0分間放置した後、デカンテーション法で液相を除去
し、25℃で乾燥することによってペトリ皿の底面を被
覆した。10〜15mM燐酸ナトリウム水溶液と蒸留水で
洗浄し、乾燥機で乾燥した同ペトリ皿をメタノール処
理、及び紫外線照射処理によりペトリ皿底面の被覆材を
固定化処理した。メタノール処理は50%重量メタノー
ルで5分間浸漬する方法を採用した。紫外線照射処理
は、窒素気流下、紫外線ランプ(ナショナル殺菌灯、Gl
-15W)から50cm下で30分間処理する方法を採用し
た。
チレン製ペトリ皿(35φ×10mm)(Becton Dickins
on labware製、Faclon 1018 )に流し込み、25℃で1
0分間放置した後、デカンテーション法で液相を除去
し、25℃で乾燥することによってペトリ皿の底面を被
覆した。10〜15mM燐酸ナトリウム水溶液と蒸留水で
洗浄し、乾燥機で乾燥した同ペトリ皿をメタノール処
理、及び紫外線照射処理によりペトリ皿底面の被覆材を
固定化処理した。メタノール処理は50%重量メタノー
ルで5分間浸漬する方法を採用した。紫外線照射処理
は、窒素気流下、紫外線ランプ(ナショナル殺菌灯、Gl
-15W)から50cm下で30分間処理する方法を採用し
た。
【0032】この実施例のものにおいては、柞蚕由来の
培養細胞、Antheraea eucalypti 細胞(略してAe細胞)
の増殖状態と細胞培養床に対する付着性を調べた。同細
胞の培養には、牛胎児血清とカイコ血清とをそれぞれ5
%含んだGrace 培地を用いた。前述の通り、被覆材を固
定化させた後のペトリ皿を用い1mlの培地に2×10個
のAe培養細胞を播種した。炭酸ガス濃度5%、26℃の
インキュベータ内に静置し、65時間後培養床に対する
Ae培養細胞の付着状態を調べた。細胞培養容器底面を倒
立顕微鏡の視野で軽く揺り動かし、細胞の浮遊状態から
その付着状態を評価した。さらに、細胞の培養効率を検
討するため、細胞が付着した絹蛋白質細胞培養床容器を
超音波ピペット洗浄器(300W 、26kHz )に入れ、
25℃で15秒間超音波照射を行い、ピペッティングに
より培養容器底面の細胞を剥離させ、培養容液中の細胞
数を血球計算板法を用いて計測した。得られた結果を表
2に示す。なお、表中、F は家蚕絹フィブロイン、S は
家蚕絹セリシン、括弧内のM は50重量%メタノール処
理による不溶化、UVは紫外線照射処理による不溶化を表
す。また、比較例として滅菌処理しない絹フィブロイン
水溶液より形成した被膜F'による細胞付着状態を表の最
下行に示した。以下の実施例において用いたF'もこの意
味である。このようなF'とF(M)、F(UV) との比較は、絹
蛋白の滅菌により、細胞付着性はそれほど変わらない
が、増殖数が改善されたことを示している。
培養細胞、Antheraea eucalypti 細胞(略してAe細胞)
の増殖状態と細胞培養床に対する付着性を調べた。同細
胞の培養には、牛胎児血清とカイコ血清とをそれぞれ5
%含んだGrace 培地を用いた。前述の通り、被覆材を固
定化させた後のペトリ皿を用い1mlの培地に2×10個
のAe培養細胞を播種した。炭酸ガス濃度5%、26℃の
インキュベータ内に静置し、65時間後培養床に対する
Ae培養細胞の付着状態を調べた。細胞培養容器底面を倒
立顕微鏡の視野で軽く揺り動かし、細胞の浮遊状態から
その付着状態を評価した。さらに、細胞の培養効率を検
討するため、細胞が付着した絹蛋白質細胞培養床容器を
超音波ピペット洗浄器(300W 、26kHz )に入れ、
25℃で15秒間超音波照射を行い、ピペッティングに
より培養容器底面の細胞を剥離させ、培養容液中の細胞
数を血球計算板法を用いて計測した。得られた結果を表
2に示す。なお、表中、F は家蚕絹フィブロイン、S は
家蚕絹セリシン、括弧内のM は50重量%メタノール処
理による不溶化、UVは紫外線照射処理による不溶化を表
す。また、比較例として滅菌処理しない絹フィブロイン
水溶液より形成した被膜F'による細胞付着状態を表の最
下行に示した。以下の実施例において用いたF'もこの意
味である。このようなF'とF(M)、F(UV) との比較は、絹
蛋白の滅菌により、細胞付着性はそれほど変わらない
が、増殖数が改善されたことを示している。
【0033】
【表2】
【0034】この実施例によれば、細胞増殖数は対照区
と大差ないが、細胞培養容器の表面と昆虫細胞との付着
力は、S+F(UV) 、 F(UV)、AF(M) で特異的に増大した。
一般的に付着力の弱い昆虫細胞の増殖にとって本発明の
素材が有効であることがわかる。
と大差ないが、細胞培養容器の表面と昆虫細胞との付着
力は、S+F(UV) 、 F(UV)、AF(M) で特異的に増大した。
一般的に付着力の弱い昆虫細胞の増殖にとって本発明の
素材が有効であることがわかる。
【0035】実施例3 桑の生葉で飼育した家蚕(日137号×支137号)2
5頭の熟蚕体内より、液状絹蛋白質を多量に含む中部糸
腺を取り出した。蒸留水で十分水洗した後、ピンセット
で絹糸腺細胞を除去することにより、内側が液状の絹フ
ィブロイン、外側が液状の絹セリシンとからできている
絹蛋白質のゲル状物を調製した。このゲル状態の絹蛋白
質35gを40mlの蒸留水に入れ、45分蒸留水でさら
した分散液ならびに5時間蒸留水でさらした分散液がそ
れぞれ純粋な絹フィブロインあるいは絹セリシンの水溶
液となる。この絹フィブロインと、絹セリシンとを各単
独に用いて市販の細胞培養床表面に被覆したり、あるい
は一方を先ず細胞培養床表面に付着し、不溶化した後、
他方の素材をその上に被覆、付着させて不溶化処理を行
い、市販の培養容器表面を層状に被覆することにより細
胞培養床基材を作った。
5頭の熟蚕体内より、液状絹蛋白質を多量に含む中部糸
腺を取り出した。蒸留水で十分水洗した後、ピンセット
で絹糸腺細胞を除去することにより、内側が液状の絹フ
ィブロイン、外側が液状の絹セリシンとからできている
絹蛋白質のゲル状物を調製した。このゲル状態の絹蛋白
質35gを40mlの蒸留水に入れ、45分蒸留水でさら
した分散液ならびに5時間蒸留水でさらした分散液がそ
れぞれ純粋な絹フィブロインあるいは絹セリシンの水溶
液となる。この絹フィブロインと、絹セリシンとを各単
独に用いて市販の細胞培養床表面に被覆したり、あるい
は一方を先ず細胞培養床表面に付着し、不溶化した後、
他方の素材をその上に被覆、付着させて不溶化処理を行
い、市販の培養容器表面を層状に被覆することにより細
胞培養床基材を作った。
【0036】基材調製にあたり、これらの絹蛋白質水溶
液の濃度は、重量法において0.6%とした。この濃度
の絹フィブロイン水溶液、絹セリシン水溶液、及び
絹フィブロインと絹セリシンの等量混合液を、それぞ
れポリスチレン製ペトリ皿(35mmφ×10mm)(Bect
on Dickinson labware製、Faclon 1018 )に流し込み、
25℃で10分間放置した後、デカンテーション法で試
料溶液を除去し、40℃で2時間乾燥した。このように
各種蛋白質で様式を変えて被覆した直後の各種蛋白質は
水溶解性である。そのため、水不溶性処理として25℃
に維持された50重量%のメタノール水溶液を絹蛋白被
覆後のポリスチレン製ペトリ皿に満たし、20分間放置
する。その放置後、ペトリ皿からデカンテーション法で
メタノール水溶液を除去し、80℃の乾燥機で乾燥させ
る。
液の濃度は、重量法において0.6%とした。この濃度
の絹フィブロイン水溶液、絹セリシン水溶液、及び
絹フィブロインと絹セリシンの等量混合液を、それぞ
れポリスチレン製ペトリ皿(35mmφ×10mm)(Bect
on Dickinson labware製、Faclon 1018 )に流し込み、
25℃で10分間放置した後、デカンテーション法で試
料溶液を除去し、40℃で2時間乾燥した。このように
各種蛋白質で様式を変えて被覆した直後の各種蛋白質は
水溶解性である。そのため、水不溶性処理として25℃
に維持された50重量%のメタノール水溶液を絹蛋白被
覆後のポリスチレン製ペトリ皿に満たし、20分間放置
する。その放置後、ペトリ皿からデカンテーション法で
メタノール水溶液を除去し、80℃の乾燥機で乾燥させ
る。
【0037】細胞培養実験の直前において、そのペトリ
皿を紫外線ランプ(ナショナル 殺菌灯、Gl-15W)の5
0cm下に置き、窒素気流下で10分間紫外線照射した。
皿を紫外線ランプ(ナショナル 殺菌灯、Gl-15W)の5
0cm下に置き、窒素気流下で10分間紫外線照射した。
【0038】ここでは野蚕由来の培養細胞(Ae細胞)の
増殖状態と細胞培養床に対する付着性を調べた。同細胞
の培養には、牛胎児血清とカイコ体液の加熱血清とをそ
れぞれ5%含んだGrace 培地を用いた。前述の通り、被
覆材を固定化させた後のペトリ皿を用い、1mlの培地に
継代3日目のAe培養細胞(8.0×104 cell/ml)を
播種した。炭酸ガス濃度5%、26℃のインキュベータ
内に静置し、65時間後培養床に対するAe培養細胞の付
着状態ならびに細胞増殖量を調べた。得られた結果を表
3に示す。細胞の増殖性は培地1ml当たりの平均細胞数
を測定することにより調べた。なお、再確認も含め以下
の表において示した記号は次のことを意味する。
増殖状態と細胞培養床に対する付着性を調べた。同細胞
の培養には、牛胎児血清とカイコ体液の加熱血清とをそ
れぞれ5%含んだGrace 培地を用いた。前述の通り、被
覆材を固定化させた後のペトリ皿を用い、1mlの培地に
継代3日目のAe培養細胞(8.0×104 cell/ml)を
播種した。炭酸ガス濃度5%、26℃のインキュベータ
内に静置し、65時間後培養床に対するAe培養細胞の付
着状態ならびに細胞増殖量を調べた。得られた結果を表
3に示す。細胞の増殖性は培地1ml当たりの平均細胞数
を測定することにより調べた。なお、再確認も含め以下
の表において示した記号は次のことを意味する。
【0039】(1)培養床基材 F ・・・家蚕絹フィブロイン AF・・・柞蚕絹フィブロイン S ・・・家蚕絹セリシン F/S ・・家蚕絹フィブロインを先ず細胞培養床表面を被
覆させ不溶化処理後、家蚕絹セリシンをさらにその表面
に被覆し不溶化処理をほどこした細胞培養床基材。 S/F ・・家蚕絹セリシンを先ず細胞培養床表面を被覆さ
せ不溶化処理後、家蚕絹フィブロインをさらにその表面
に被覆し不溶化処理をほどこした細胞培養床基材。 AF/S・・柞蚕絹フィブロインを先ず細胞培養床表面を被
覆させ不溶化処理後、家蚕絹セリシンをさらにその表面
に被覆し不溶化処理をほどこした細胞培養床基材。 F+S ・・家蚕絹フィブロインと家蚕絹セリシンの当量溶
液を混合したものを、細胞培養床表面を被覆させ不溶化
処理をほどこした細胞培養床基材。
覆させ不溶化処理後、家蚕絹セリシンをさらにその表面
に被覆し不溶化処理をほどこした細胞培養床基材。 S/F ・・家蚕絹セリシンを先ず細胞培養床表面を被覆さ
せ不溶化処理後、家蚕絹フィブロインをさらにその表面
に被覆し不溶化処理をほどこした細胞培養床基材。 AF/S・・柞蚕絹フィブロインを先ず細胞培養床表面を被
覆させ不溶化処理後、家蚕絹セリシンをさらにその表面
に被覆し不溶化処理をほどこした細胞培養床基材。 F+S ・・家蚕絹フィブロインと家蚕絹セリシンの当量溶
液を混合したものを、細胞培養床表面を被覆させ不溶化
処理をほどこした細胞培養床基材。
【0040】(2)培養床上での細胞の付着状態(4段
階法により評価) - ・・・付着固定されていない + ・・・少し付着固定されている ++ ・・普通に付着固定されている +++ ・・非常によく付着固定されている
階法により評価) - ・・・付着固定されていない + ・・・少し付着固定されている ++ ・・普通に付着固定されている +++ ・・非常によく付着固定されている
【0041】
【表3】
【0042】培養初期のAe細胞、Bm細胞の濃度は、それ
ぞれ8×104 cell/ml、2.3×106 cell/mlであ
った。対照区容器における継代3日目の細胞の濃度は、
それぞれ4.8×105 、9.4×106 cell/mlであ
った。
ぞれ8×104 cell/ml、2.3×106 cell/mlであ
った。対照区容器における継代3日目の細胞の濃度は、
それぞれ4.8×105 、9.4×106 cell/mlであ
った。
【0043】この実施例の検証結果によれば、本発明の
細胞培養容器は昆虫細胞、Ae細胞の増殖性を向上させる
ことがわかる。Ae細胞の増殖性には野蚕由来のAFが特に
効果的であった。
細胞培養容器は昆虫細胞、Ae細胞の増殖性を向上させる
ことがわかる。Ae細胞の増殖性には野蚕由来のAFが特に
効果的であった。
【0044】比較例1 表3の最下行のF+S は、比較例として絹セリシンと絹フ
ィブロインとの混合物質を細胞培養床基材に用いて、実
施例1と同様の方法で細胞培養床を調製し、Ae培養細胞
の付着増殖実験を行ったものであり、増殖状態は成層被
膜 F/S又はS/Fには1ランク及ばないことがわかる。
ィブロインとの混合物質を細胞培養床基材に用いて、実
施例1と同様の方法で細胞培養床を調製し、Ae培養細胞
の付着増殖実験を行ったものであり、増殖状態は成層被
膜 F/S又はS/Fには1ランク及ばないことがわかる。
【0045】実施例4 Bombyx mori(SPC Bm 36)(Quiot,sericologia,22,25(198
2)) の培養細胞を用い、実施例1と同じ方法で、各種の
培養床基材からなる培養床における培養細胞の付着状態
と培養液中で細胞数培養状況と付着性を評価した。その
測定結果を表4に示す。
2)) の培養細胞を用い、実施例1と同じ方法で、各種の
培養床基材からなる培養床における培養細胞の付着状態
と培養液中で細胞数培養状況と付着性を評価した。その
測定結果を表4に示す。
【0046】
【表4】
【0047】この実施例は、SPC Bm 36 昆虫細胞の培養
実験結果であり、実験区では対照区よりも付着割合がよ
く、増殖状態もよいことがわかる。
実験結果であり、実験区では対照区よりも付着割合がよ
く、増殖状態もよいことがわかる。
【0048】比較例2 表4の最下行のF+S は、比較例として絹セリシンと絹フ
ィブロインとの混合物質を細胞培養床基材に用い、実施
例1と同様の方法で細胞培養を調製し、SPCBm培養細胞
の付着増殖実験を行った。
ィブロインとの混合物質を細胞培養床基材に用い、実施
例1と同様の方法で細胞培養を調製し、SPCBm培養細胞
の付着増殖実験を行った。
【0049】この実施例においては、コラーゲンと絹蛋
白との比較又はコラーゲンの影響を調べるための基材調
製を行った。これには、まず0.3%、pH3.0の組織
培養用コラーゲン溶液(株式会社高研製)をペトリ皿に
流し込み、10分後デカンテーション法でコラーゲン溶
液を除去し、30℃で容器表面を軽く乾燥させた。次
に、pH7.4の燐酸緩衝液を加え、コラーゲン被覆物の
表面を膨潤状態にした後、上記絹フィブロイン溶液ある
いは絹セリシン溶液を加えて、5℃で30分放置する。
絹蛋白質水溶液を除去・乾燥して絹フィブロイン/コラ
ーゲン、あるいは絹セリシン/コラーゲンの培養床被覆
物を調製した。(なお、コラーゲン層と絹蛋白質層との
境界は互いに混ざり合い、このように両物質が混在する
範囲は条件によって種々に変化し、場合によっては単一
層を呈することもあり得る。)その後、紫外線照射ある
いはメタノール浸漬による固定化処理を行った。表5は
このようなコラーゲン調製基材との関係において、本実
施例の細胞培養床の細胞付着数を測定した結果である。
表5中、C+S はコラーゲンと絹セリシンの成層皮膜を表
し、C はコラーゲン皮膜を表す。
白との比較又はコラーゲンの影響を調べるための基材調
製を行った。これには、まず0.3%、pH3.0の組織
培養用コラーゲン溶液(株式会社高研製)をペトリ皿に
流し込み、10分後デカンテーション法でコラーゲン溶
液を除去し、30℃で容器表面を軽く乾燥させた。次
に、pH7.4の燐酸緩衝液を加え、コラーゲン被覆物の
表面を膨潤状態にした後、上記絹フィブロイン溶液ある
いは絹セリシン溶液を加えて、5℃で30分放置する。
絹蛋白質水溶液を除去・乾燥して絹フィブロイン/コラ
ーゲン、あるいは絹セリシン/コラーゲンの培養床被覆
物を調製した。(なお、コラーゲン層と絹蛋白質層との
境界は互いに混ざり合い、このように両物質が混在する
範囲は条件によって種々に変化し、場合によっては単一
層を呈することもあり得る。)その後、紫外線照射ある
いはメタノール浸漬による固定化処理を行った。表5は
このようなコラーゲン調製基材との関係において、本実
施例の細胞培養床の細胞付着数を測定した結果である。
表5中、C+S はコラーゲンと絹セリシンの成層皮膜を表
し、C はコラーゲン皮膜を表す。
【0050】
【表5】
【0051】実施例5 昆虫培養細胞(Ae SPC Bm 36)を用いて、クローンNP
Vウイルスの大量増殖実験を次のようにして行った。こ
の細胞に対するNPVウイルスの感染率を事前評価した
ところ、7.9%であった。これを限界希釈法でクロー
ニングしてNPVウイルス高感受性細胞を選抜した。次
に、このNPVウイルス高感受性SPC Bm36 細胞を106
cells/mlに希釈した細胞浮遊液を本発明の細胞培養床
基材からなる培養容器に入れ、26℃で24時間の培養
後、所定の濃度に希釈したNPVウイルスを接種する。
6時間後、細胞培養容器を静かに傾けることにより培養
液を除去し、Grace 培地を含む5%Agarose を静かに重
層したとき細胞の付着状態の評価を行った。評価結果を
次の評価レベルで示す。 ±・・・ファルコンの培養容器の付着量と同じである。 + ・・・ファルコンの培養容器の付着量よりやや優れ
る。 ++・・・ファルコンの培養容器の付着量より優れる。 得られた結果を表6に示す。
Vウイルスの大量増殖実験を次のようにして行った。こ
の細胞に対するNPVウイルスの感染率を事前評価した
ところ、7.9%であった。これを限界希釈法でクロー
ニングしてNPVウイルス高感受性細胞を選抜した。次
に、このNPVウイルス高感受性SPC Bm36 細胞を106
cells/mlに希釈した細胞浮遊液を本発明の細胞培養床
基材からなる培養容器に入れ、26℃で24時間の培養
後、所定の濃度に希釈したNPVウイルスを接種する。
6時間後、細胞培養容器を静かに傾けることにより培養
液を除去し、Grace 培地を含む5%Agarose を静かに重
層したとき細胞の付着状態の評価を行った。評価結果を
次の評価レベルで示す。 ±・・・ファルコンの培養容器の付着量と同じである。 + ・・・ファルコンの培養容器の付着量よりやや優れ
る。 ++・・・ファルコンの培養容器の付着量より優れる。 得られた結果を表6に示す。
【0052】
【表6】
【0053】SPC Bm 36 細胞は、培養床基材への付着性
が悪く、かつNPVウイルスに対する感受性が低いとい
う特性を有するが、本発明の細胞培養床基材からなる培
養容器で培養することによりSPC Bm 36 細胞を培養床基
材表面に付着させることが可能となり、その結果、高感
受性細胞を効率的にクローニングすることに成功した。
が悪く、かつNPVウイルスに対する感受性が低いとい
う特性を有するが、本発明の細胞培養床基材からなる培
養容器で培養することによりSPC Bm 36 細胞を培養床基
材表面に付着させることが可能となり、その結果、高感
受性細胞を効率的にクローニングすることに成功した。
【0054】プラーク形成条件 形成したプラークの端より2mm以上中心側のプラーク部
分は、他のウイルスの混在の無い均一なクローン株であ
った。このクローン株のウイルス感染率を評価したとこ
ろ、SPC Bm 36 細胞では98%となり、クローンNPV
ウイルスの選抜が可能となることが明らかとなった。
分は、他のウイルスの混在の無い均一なクローン株であ
った。このクローン株のウイルス感染率を評価したとこ
ろ、SPC Bm 36 細胞では98%となり、クローンNPV
ウイルスの選抜が可能となることが明らかとなった。
【0055】この実施例では、実施例1あるいは実施例
3と同様の方法で調製した絹蛋白質を含む絹蛋白質/コ
ラーゲンからなる培養床基材、あるいは絹蛋白質/キチ
ンからなる培養床担体に、実施例1と同様にして紫外線
照射処理を施して試料面を固定化処理したものを用い
た。
3と同様の方法で調製した絹蛋白質を含む絹蛋白質/コ
ラーゲンからなる培養床基材、あるいは絹蛋白質/キチ
ンからなる培養床担体に、実施例1と同様にして紫外線
照射処理を施して試料面を固定化処理したものを用い
た。
【0056】この実施例によれば、本発明において昆虫
細胞の付着数及び付着性の向上が確認された。
細胞の付着数及び付着性の向上が確認された。
【0057】実施例6 本発明の細胞培養床における付着細胞の培養状況を調べ
た。培養プレートの規格は次の通りであった。6ウエル
平底、培養面積9.2cm2 、容量16ml/ウエル。ポリ
スチレン製で親水処理した培養プレート(Sumitomo Bak
elite 製、商品番号 MS-80060 、以下MS-aと略記)、コ
ラーゲンコートした市販プレート(Sumitomo Bakelite
製、商品番号 MS-0006K 、以下MS-bと略記)、ならびに
本発明による絹フィブロインコートを施した新規プレー
ト(以下、MS-cと略記)を用いて培養実験を行った。用
いた細胞は、付着性の大腸ガン細胞、SW1116 アメリカ
ンタイプ カルチャー コレクション[ATCC,CCCl-233]
であり、使用培地はRPM11640であった。培養開始時にお
ける培地中における細胞数並びに25℃で5日経過後の
培地中の細胞数を調べた。すなわち、培養5日目に培地
をデカンテーションで除去した後、トリプシン−EDTA溶
液(0.25%トリプシン−1m MEDTA )で処理して細
胞培養床に付着した細胞を回収した。細胞数は血球計数
盤を用いて計算した。
た。培養プレートの規格は次の通りであった。6ウエル
平底、培養面積9.2cm2 、容量16ml/ウエル。ポリ
スチレン製で親水処理した培養プレート(Sumitomo Bak
elite 製、商品番号 MS-80060 、以下MS-aと略記)、コ
ラーゲンコートした市販プレート(Sumitomo Bakelite
製、商品番号 MS-0006K 、以下MS-bと略記)、ならびに
本発明による絹フィブロインコートを施した新規プレー
ト(以下、MS-cと略記)を用いて培養実験を行った。用
いた細胞は、付着性の大腸ガン細胞、SW1116 アメリカ
ンタイプ カルチャー コレクション[ATCC,CCCl-233]
であり、使用培地はRPM11640であった。培養開始時にお
ける培地中における細胞数並びに25℃で5日経過後の
培地中の細胞数を調べた。すなわち、培養5日目に培地
をデカンテーションで除去した後、トリプシン−EDTA溶
液(0.25%トリプシン−1m MEDTA )で処理して細
胞培養床に付着した細胞を回収した。細胞数は血球計数
盤を用いて計算した。
【0058】まず、保存のため液体窒素中に保存した大
腸ガン細胞、SW1116 1mlを解凍し、10%牛胎児血清
を含有する10mlのRPMI培養液で5回洗浄した。同培養
液で調製した細胞濃度3×104 cell/mlの細胞懸濁液
5mlを用いて細胞の培養実験を開始した。37℃、CO
2 、5.0%の条件で培養した。培養5日目の細胞を回
収し、細胞数を測定した。得られた結果を表7に示す。
腸ガン細胞、SW1116 1mlを解凍し、10%牛胎児血清
を含有する10mlのRPMI培養液で5回洗浄した。同培養
液で調製した細胞濃度3×104 cell/mlの細胞懸濁液
5mlを用いて細胞の培養実験を開始した。37℃、CO
2 、5.0%の条件で培養した。培養5日目の細胞を回
収し、細胞数を測定した。得られた結果を表7に示す。
【0059】
【表7】
【0060】この実施例によれば、昆虫細胞から得られ
たCEA 等の有用物質が定量できるという画期的な成果を
示した。
たCEA 等の有用物質が定量できるという画期的な成果を
示した。
【0061】実施例7 実施例1と同様の方法で、マウスミエローマ細胞である
NS-Aとヒトアルブミンを免疫して得られるマウスの脾臓
細胞のB 細胞とをポリエチレングリコール(PEG )法で
細胞融合して調製した浮遊性のヒトアルブミンに対する
マウス1gGl 抗体であるハイブリドーマKBS 29-02 を用
いて各種細胞培養器中での増殖状況を評価した。得られ
た結果を表8に示す。
NS-Aとヒトアルブミンを免疫して得られるマウスの脾臓
細胞のB 細胞とをポリエチレングリコール(PEG )法で
細胞融合して調製した浮遊性のヒトアルブミンに対する
マウス1gGl 抗体であるハイブリドーマKBS 29-02 を用
いて各種細胞培養器中での増殖状況を評価した。得られ
た結果を表8に示す。
【0062】
【表8】
【0063】この実施例においても、実施例6と同様の
成果が確認された。
成果が確認された。
【0064】実施例8 実施例1と同様の方法で、付着性細胞の鼻孔ガン細胞KB
[ATCC 、CCl-17]を用いて各種細胞培養器中での細胞の
増殖状況を評価した。得られた結果を表9に示す。この
実施例において、付着細胞は本発明の細胞培養床上で良
好に増殖することが明らかである。
[ATCC 、CCl-17]を用いて各種細胞培養器中での細胞の
増殖状況を評価した。得られた結果を表9に示す。この
実施例において、付着細胞は本発明の細胞培養床上で良
好に増殖することが明らかである。
【0065】
【表9】
【0066】実施例9 モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを多量に
増殖するため、次の態様において実験を行った。
増殖するため、次の態様において実験を行った。
【0067】大腸ガン、鼻孔ガン細胞をヒトの組織から
取り出しても培養用の組織には僅かしか生産物が含まれ
ていないので、大量に増殖しなければならない。ガン
細胞ならば、増殖させた後に顕微鏡観察でガン細胞の形
状、形態を観察すれば判別できる。細胞を培養して増
殖させることでガン増殖因子を定量できる。サンプルが
微量だと検出できないので、組織を増やして、大腸ガン
が産出する物質(CEA,CA19-9)を産出することが必要と
なる。ガン患者のヒトの血液中にはガン細胞が産出する
物質が微量であり、大量に調製することができない。し
たがって、これらの物質を大量に調製する場合には、ガ
ン細胞を増殖することが大切である。こうした視点か
ら、SW1116が生産するガン胎児性抗原、Carcinoembryon
ic antigen(CEA) 、ガン関連性抗原、CA 19-9 を定量す
ることにした。
取り出しても培養用の組織には僅かしか生産物が含まれ
ていないので、大量に増殖しなければならない。ガン
細胞ならば、増殖させた後に顕微鏡観察でガン細胞の形
状、形態を観察すれば判別できる。細胞を培養して増
殖させることでガン増殖因子を定量できる。サンプルが
微量だと検出できないので、組織を増やして、大腸ガン
が産出する物質(CEA,CA19-9)を産出することが必要と
なる。ガン患者のヒトの血液中にはガン細胞が産出する
物質が微量であり、大量に調製することができない。し
たがって、これらの物質を大量に調製する場合には、ガ
ン細胞を増殖することが大切である。こうした視点か
ら、SW1116が生産するガン胎児性抗原、Carcinoembryon
ic antigen(CEA) 、ガン関連性抗原、CA 19-9 を定量す
ることにした。
【0068】実施例1と同様の方法で、付着性の大腸ガ
ン細胞(SW1116)を増殖し、培養5日間に同細胞からの
代謝物の分析には、ビーズ個相サンドイッチEIA法に
よる免疫分析装置OlYDAS-120(オリンパス製)により評
価した。得られた結果を表10に示す。
ン細胞(SW1116)を増殖し、培養5日間に同細胞からの
代謝物の分析には、ビーズ個相サンドイッチEIA法に
よる免疫分析装置OlYDAS-120(オリンパス製)により評
価した。得られた結果を表10に示す。
【0069】
【表10】
【0070】実施例10 ハイブリドーマKBS 29-02 を用い、実施例4と同様の方
法で、ハイブリドーマ抗体細胞から出されるMAb 抗体量
を測定した。このMAb ヒトアルブミンに対するモノクロ
ナール抗体である。得られた結果を表11に示す。
法で、ハイブリドーマ抗体細胞から出されるMAb 抗体量
を測定した。このMAb ヒトアルブミンに対するモノクロ
ナール抗体である。得られた結果を表11に示す。
【0071】
【表11】
【0072】ハイブリドーマKBS 29-02 からモノクロナ
ール抗体(MAb )が確かに産出していることが明らかと
なった。細胞培養床基材による差異は認められない。以
上のことから、本発明による絹フィブロインコートを施
した細胞培養床で細胞を増殖したときには、細胞培養に
悪影響を及ぼさず、付着細胞は効率良く付着増殖するこ
とが明らかとなり、増殖した細胞数に対応した細胞から
の代謝産物量が確認された。
ール抗体(MAb )が確かに産出していることが明らかと
なった。細胞培養床基材による差異は認められない。以
上のことから、本発明による絹フィブロインコートを施
した細胞培養床で細胞を増殖したときには、細胞培養に
悪影響を及ぼさず、付着細胞は効率良く付着増殖するこ
とが明らかとなり、増殖した細胞数に対応した細胞から
の代謝産物量が確認された。
【0073】
【発明の効果】本発明によれば、動物細胞の付着性に優
れた細胞培養床基材が用いられるので、付着性動物細胞
を効率的に増殖することができる。そのため、本発明の
細胞培養基材はシャーレ、フラスコなどの培養容器表面
の外、ローラー回転培養機、びん表面、培養プレート表
面、マイクロキャリアービーズ表面等にも被覆でき、浮
遊性細胞と同様に大量培養する際に利用できる。細胞培
養の操作は容易となり、通常浮遊性細胞の継代の作業効
率工場を妨げていた遠心分離(1000rpm 5〜10
分)による培地交換の繁雑さは不要となり、効率的な細
胞、継代に有益である。
れた細胞培養床基材が用いられるので、付着性動物細胞
を効率的に増殖することができる。そのため、本発明の
細胞培養基材はシャーレ、フラスコなどの培養容器表面
の外、ローラー回転培養機、びん表面、培養プレート表
面、マイクロキャリアービーズ表面等にも被覆でき、浮
遊性細胞と同様に大量培養する際に利用できる。細胞培
養の操作は容易となり、通常浮遊性細胞の継代の作業効
率工場を妨げていた遠心分離(1000rpm 5〜10
分)による培地交換の繁雑さは不要となり、効率的な細
胞、継代に有益である。
【0074】動物培養細胞においては、特に細胞工学的
に重要なハイブリドーマによる実験において優れた結果
を得ることができたので、今後、本発明において、有用
物質を多量に生産できることが明らかとなった。
に重要なハイブリドーマによる実験において優れた結果
を得ることができたので、今後、本発明において、有用
物質を多量に生産できることが明らかとなった。
【0075】また、有毒・有害物質の判定に今後重要に
なると考えられる昆虫細胞を用いた実験において、細胞
の付着性が良いという優れた結果を得ることができたの
で、本発明は、昆虫関連の微生物のクローニングにも広
く利用できることが明らかである。
なると考えられる昆虫細胞を用いた実験において、細胞
の付着性が良いという優れた結果を得ることができたの
で、本発明は、昆虫関連の微生物のクローニングにも広
く利用できることが明らかである。
【0076】本発明は、従来多様されてきた親水性プレ
ート、あるいはコラーゲンをコートしたコラーゲンプレ
ートに代替し得るものであり、特にコラーゲンプレート
に代わる新規プレートとして有用であり、広範囲の動物
細胞の培養を用いる有用生産物質の工業的生産において
効率的に利用できる。
ート、あるいはコラーゲンをコートしたコラーゲンプレ
ートに代替し得るものであり、特にコラーゲンプレート
に代わる新規プレートとして有用であり、広範囲の動物
細胞の培養を用いる有用生産物質の工業的生産において
効率的に利用できる。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年3月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正内容】
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明は培養すべき動物細胞の種類に応じて選択さ
れた絹蛋白質であって、絹フィブロイン及び絹セリシン
のいずれか一方のみを含むか、又はその両方を特定の比
率において含む少なくとも二層の膜体であって、成層化
後に水不溶化処理されたものを、細胞培養床の基質上に
おける成層体として含む動物細胞増殖用の細胞培養床基
材を構成したものである。
め、本発明は培養すべき動物細胞の種類に応じて選択さ
れた絹蛋白質であって、絹フィブロイン及び絹セリシン
のいずれか一方のみを含むか、又はその両方を特定の比
率において含む少なくとも二層の膜体であって、成層化
後に水不溶化処理されたものを、細胞培養床の基質上に
おける成層体として含む動物細胞増殖用の細胞培養床基
材を構成したものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正内容】
【0013】本発明はまた、絹フィブロイン及び絹セリ
シンの各々と、その両方を特定の比率で混合したものか
ら、少なくとも二種類の層材料を選択し、各層を(次の
層がその上から被着される前に)水不溶性とすることに
より、細胞培養床の基質上に積層状に被着せしめてなる
動物細胞増殖用の細胞培養床基材を構成し、増殖細胞に
対する各層の特徴を並列的に発揮させるものである。こ
れについて従来は、絹フィブロイン又は絹セリシンのい
ずれであっても、それを細胞培養床基材の表面に被覆す
る際には水溶液として適用するため、この上にさらに別
の水溶液からなる膜材を被覆しても互いに混和して当然
との先入観があり、水不溶化処理してまで成層構造を実
現しようという発想はなかったといえる。
シンの各々と、その両方を特定の比率で混合したものか
ら、少なくとも二種類の層材料を選択し、各層を(次の
層がその上から被着される前に)水不溶性とすることに
より、細胞培養床の基質上に積層状に被着せしめてなる
動物細胞増殖用の細胞培養床基材を構成し、増殖細胞に
対する各層の特徴を並列的に発揮させるものである。こ
れについて従来は、絹フィブロイン又は絹セリシンのい
ずれであっても、それを細胞培養床基材の表面に被覆す
る際には水溶液として適用するため、この上にさらに別
の水溶液からなる膜材を被覆しても互いに混和して当然
との先入観があり、水不溶化処理してまで成層構造を実
現しようという発想はなかったといえる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正内容】
【0014】従って上記の構成は、発明者が細胞培養床
基材の調製方法と、細胞の付着性及び増殖性との関係を
調べた結果、成層構造が必要であるとの観点から確立さ
れたものである。そして、次層の下地となる過渡的な表
層の水不溶化処理は、アルコール又はアルデヒド接触、
あるいは紫外線照射による絹蛋白の結晶化によってもた
らされる。
基材の調製方法と、細胞の付着性及び増殖性との関係を
調べた結果、成層構造が必要であるとの観点から確立さ
れたものである。そして、次層の下地となる過渡的な表
層の水不溶化処理は、アルコール又はアルデヒド接触、
あるいは紫外線照射による絹蛋白の結晶化によってもた
らされる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正内容】
【0015】細胞培養床基材上に形成された絹フィブロ
イン及び絹セリシンを含む各層は、その調製途上又は調
製後の使用中における細菌汚染を防止するため、水溶液
段階において、オートクレーブ中で滅菌し、その後蒸留
水で透析して得られた絹蛋白質膜から形成することがで
きる。従って、本発明の好ましい細胞培養床基材におけ
る一層の絹蛋白膜の調製手順は、1)細胞培養容器の内面
に滅菌絹蛋白質水溶液を接触させ、2)容器内面に残留し
た絹蛋白質水溶液を乾燥し、3)さらに水不溶化処理する
ことにより絹コーティング膜を完成する、ものである。
イン及び絹セリシンを含む各層は、その調製途上又は調
製後の使用中における細菌汚染を防止するため、水溶液
段階において、オートクレーブ中で滅菌し、その後蒸留
水で透析して得られた絹蛋白質膜から形成することがで
きる。従って、本発明の好ましい細胞培養床基材におけ
る一層の絹蛋白膜の調製手順は、1)細胞培養容器の内面
に滅菌絹蛋白質水溶液を接触させ、2)容器内面に残留し
た絹蛋白質水溶液を乾燥し、3)さらに水不溶化処理する
ことにより絹コーティング膜を完成する、ものである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正内容】
【0030】実施例2 25頭の家蚕(日137号×支137号)の熟蚕体内よ
り、液状絹蛋白質が多量に含まれる中部糸腺を取り出
し、蒸留水で十分水洗した後、ピンセットで絹糸腺細胞
を除去した。得られた液状絹蛋白質35gを40mlの蒸
留水に入れ、分散時間を変えてpH6.8付近の絹セリシ
ンと絹フィブロイン水溶液とを別々に調製した。分散時
間が30分では絹セリシン溶液が、分散時間4時間では
絹フィブロイン溶液が調製できた。両試料溶液を約0.
8%にまで濃縮したものを原液とした。この他、絹フィ
ブロイン溶液と絹セリシン溶液との等量混合溶液を調製
した。これらの原液のうち、例えば絹フィブロイン水溶
液の滅菌は次のようにして行った。絹フィブロイン繊維
を60℃、30分9.5M LiBrで溶解させた後、L
iBr溶液を含んだ絹フィブロイン水溶液をペーパ濾紙
で濾過する。これをセルロース製透析膜に詰めて両端を
縫糸で封じ、これを蒸留水の入った容器に入れ、容器ご
と120℃、20分にてオートクレーブ装置内に入れ、
滅菌処理を施した。オートクレーブ処理後、セルロース
製透析膜を温度5℃の蒸留水の中で2日間攪拌しながら
透析処理を行った。透析後、クリーンベンチ中でセルロ
ース製透析膜の蓋を開け、滅菌させた絹フィブロイン溶
液を無菌状態にある容器に移して次の使用に備える。絹
セリシン水溶液等の滅菌も同様に行われる。以降、特に
指定しない限り、こうして調製した滅菌済の絹フィブロ
イン水溶液あるいは絹セリシン水溶液を用いて実験を行
った。
り、液状絹蛋白質が多量に含まれる中部糸腺を取り出
し、蒸留水で十分水洗した後、ピンセットで絹糸腺細胞
を除去した。得られた液状絹蛋白質35gを40mlの蒸
留水に入れ、分散時間を変えてpH6.8付近の絹セリシ
ンと絹フィブロイン水溶液とを別々に調製した。分散時
間が30分では絹セリシン溶液が、分散時間4時間では
絹フィブロイン溶液が調製できた。両試料溶液を約0.
8%にまで濃縮したものを原液とした。この他、絹フィ
ブロイン溶液と絹セリシン溶液との等量混合溶液を調製
した。これらの原液のうち、例えば絹フィブロイン水溶
液の滅菌は次のようにして行った。絹フィブロイン繊維
を60℃、30分9.5M LiBrで溶解させた後、L
iBr溶液を含んだ絹フィブロイン水溶液をペーパ濾紙
で濾過する。これをセルロース製透析膜に詰めて両端を
縫糸で封じ、これを蒸留水の入った容器に入れ、容器ご
と120℃、20分にてオートクレーブ装置内に入れ、
滅菌処理を施した。オートクレーブ処理後、セルロース
製透析膜を温度5℃の蒸留水の中で2日間攪拌しながら
透析処理を行った。透析後、クリーンベンチ中でセルロ
ース製透析膜の蓋を開け、滅菌させた絹フィブロイン溶
液を無菌状態にある容器に移して次の使用に備える。絹
セリシン水溶液等の滅菌も同様に行われる。以降、特に
指定しない限り、こうして調製した滅菌済の絹フィブロ
イン水溶液あるいは絹セリシン水溶液を用いて実験を行
った。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 早坂 昭二 茨城県つくば市松代4−26−408−401 (72)発明者 井上 國世 京都府京都市下京区堺町通五条上ル俵屋町 213番地 (72)発明者 西川 茂道 滋賀県草津市下笠町字辻出945−1 和研 薬株式会社草津センター内 (72)発明者 山本 昌治 滋賀県草津市下笠町字辻出945−1 和研 薬株式会社草津センター内
Claims (7)
- 【請求項1】 培養すべき動物細胞の種類に応じて選択
された絹蛋白質であって、絹フィブロイン及び絹セリシ
ンのいずれか一方のみを含むか、又はその両方を特定の
比率において含む膜体を、細胞培養床の基質に被着させ
たものからなることを特徴とする動物細胞増殖用の細胞
培養床基材。 - 【請求項2】 前記絹フィブロイン及び絹セリシンが滅
菌した後、蒸留水で透析して得られた絹蛋白質であるこ
とを特徴とする請求項1記載の細胞培養床基材。 - 【請求項3】 絹蛋白質からなる膜体の下層にコラーゲ
ン層を有することを特徴とする請求項1記載の細胞培養
床基材。 - 【請求項4】 絹フィブロイン及び絹セリシンの各々
と、その両方を特定の比率で混合したものから、少なく
とも二種類の層材料を選択し、細胞培養床の基質に各層
を水不溶性として層状に被着させたことを特徴とする動
物細胞増殖用の細胞培養床基材。 - 【請求項5】 前記絹フィブロイン及び絹セリシンが滅
菌した後、蒸留水で透析して得られた絹蛋白質であるこ
とを特徴とする請求項4記載の細胞培養床基材。 - 【請求項6】 細胞培養容器の内面に滅菌絹蛋白質水溶
液を接触させ、容器内面に残留した絹蛋白質水溶液を乾
燥し、水不溶化処理することにより絹コーティング膜を
形成する工程を基本的に含むことを特徴とする細胞培養
床基材の調製方法。 - 【請求項7】 前記細胞培養容器の内面に接触させた絹
蛋白質水溶液を、デカンテーション法により実質的に除
去し、その後容器内面に残留した絹蛋白質水溶液を乾燥
することを特徴とする請求項6記載の調製方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10067821A JPH11243948A (ja) | 1998-03-02 | 1998-03-02 | 動物細胞増殖用の細胞培養床基材及びその調製方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10067821A JPH11243948A (ja) | 1998-03-02 | 1998-03-02 | 動物細胞増殖用の細胞培養床基材及びその調製方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11243948A true JPH11243948A (ja) | 1999-09-14 |
Family
ID=13356002
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
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