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JPH10321374A - 有機el素子 - Google Patents

有機el素子

Info

Publication number
JPH10321374A
JPH10321374A JP9145808A JP14580897A JPH10321374A JP H10321374 A JPH10321374 A JP H10321374A JP 9145808 A JP9145808 A JP 9145808A JP 14580897 A JP14580897 A JP 14580897A JP H10321374 A JPH10321374 A JP H10321374A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
electrode
organic
electron injection
injection electrode
layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP9145808A
Other languages
English (en)
Inventor
Kenji Nakatani
賢司 中谷
Isamu Kobori
勇 小堀
Masami Mori
匡見 森
Kazuhisa Daihisa
和寿 大久
Michio Arai
三千男 荒井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
TDK Corp
Original Assignee
TDK Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by TDK Corp filed Critical TDK Corp
Priority to JP9145808A priority Critical patent/JPH10321374A/ja
Priority to US09/079,286 priority patent/US6118212A/en
Priority to EP98303833A priority patent/EP0880307A3/en
Priority to KR1019980018125A priority patent/KR19980087216A/ko
Publication of JPH10321374A publication Critical patent/JPH10321374A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

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    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K59/00Integrated devices, or assemblies of multiple devices, comprising at least one organic light-emitting element covered by group H10K50/00
    • H10K59/80Constructional details
    • H10K59/805Electrodes
    • H10K59/8052Cathodes
    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K50/00Organic light-emitting devices
    • H10K50/80Constructional details
    • H10K50/805Electrodes
    • H10K50/82Cathodes
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y10TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC
    • Y10STECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y10S428/00Stock material or miscellaneous articles
    • Y10S428/917Electroluminescent

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  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Optics & Photonics (AREA)
  • Electroluminescent Light Sources (AREA)
  • Conductive Materials (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 外部環境から十分に保護され、電子注入電極
と有機層界面での成膜性、密着性を改善し、高輝度、高
効率で、ダークスポットの発生を抑制し、輝度半減時間
の長い、長寿命、高表示品質の有機EL素子を実現す
る。 【解決手段】 ホール注入電極と電子注入電極と、これ
らの電極間に1種以上の有機層とを有し、前記電子注入
電極は、スパッタ法で成膜され、かつLiを0.4〜1
4at%含有するAlLi合金であつて、この電子注入電
極の有機層と反対側に、Al、Alおよび遷移金属(た
だしTiを除く)、Tiまたは窒化チタンのいずれか1
種以上を含有する保護電極を有する有機EL素子とし
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機化合物を用い
た有機EL素子に関し、さらに詳細には、発光層に電子
を供給する電子注入電極および保護電極の改良に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、有機EL素子が盛んに研究されて
いる。これは、錫ドープ酸化インジウム(ITO)など
の透明電極(ホール注入電極)上にトリフェニルジアミ
ン(TPD)などのホール輸送材料を蒸着により薄膜と
し、さらにアルミキノリノール錯体(Alq3)などの
蛍光物質を発光層として積層し、さらにMgなどの仕事
関数の小さな金属電極(電子注入電極)を形成した基本
構成を有する素子で、10V前後の電圧で数100から
数10,000cd/m2ときわめて高い輝度が得られるこ
とで注目されている。
【0003】このような有機EL素子の電子注入電極と
して用いられる材料は、発光層や電子注入輸送層等へ電
子を多く注入するものが有効であると考えられている。
換言すれば、仕事関数の小さい材料ほど電子注入電極と
して適していると言える。仕事関数の小さい材料として
は種々のものがあるが、有機EL素子の電子注入電極と
して用いられるものとしては、例えば特開平2−155
95号公報には、アルカリ金属以外の複数の金属からな
り、かつこれらの金属の少なくとも1種の金属の仕事関
数が、4eV未満である電子注入電極として、例えばMg
Agが開示されている。
【0004】また、仕事関数の小さいものとしてはアル
カリ金属が好ましく、米国特許第3173050号、同
3382394号明細書には、アルカリ金属として、例
えばNaKが記載されている。しかし、アルカリ金属を
用いたものは、活性が高く、化学的に不安定であり、安
全性、信頼性の点でMgAg等を用いた電子注入電極に
比べ劣っている。
【0005】アルカリ金属を用いた電子注入電極の、安
定性を高める試みとして、例えば、特開昭60−165
771号公報、特開平4−212287号公報、特開平
5−121172号公報、特開平5−159882号公
報に記載されているAlLi合金を用いた電子注入電極
が知られている。これらの公報に記載されているAlL
i合金のLiの濃度とその製造方法を挙げると、(1)
特開昭60−165771号公報では、Li濃度が3.
6〜99.8at%(1〜99wt%)、好ましくは29.
5〜79.1at%(10〜50wt%)であり、その実施
例には15.8〜79.1at%(4.8〜50wt%)の
範囲のAlLi合金が記載されている。また、これらの
AlLi合金は全て蒸着法にて成膜されている。(2)
特開平4−212287号公報では、6at%以上、好ま
しくは6〜30at%であり、その実施例にはLi濃度が
28at%のAlLi合金が記載されている。また、これ
らのAlLi合金は抵抗加熱共蒸着や電子ビーム蒸着、
スパッタで成膜できる旨記載されているが、実施例では
蒸着法のみ用いている。(3)特開平5−121172
号公報では、0.0377〜0.38at%(0.01〜
0.1:100wt比)、実施例では、0.060〜0.
31at%(0.016〜0.08:100wt比)のAl
Li合金を、抵抗加熱蒸着あるいは電子ビーム蒸着にて
形成する点が、また好ましくは、15.9at%以下(5
0以下:100wt比)、その実施例には29.5〜6
1.8at%(10〜30wt%)のAlLi合金を成膜す
る点が記載されている。(4)特開平5−159882
号公報には、Li濃度が5〜90at%、実施例にはLi
濃度が16〜60at%のAlLi合金を、Li源は抵抗
加熱蒸着、他方を電子ビーム蒸着を用いた2元蒸着で成
膜する点について記載されている。
【0006】しかし、上記(1)(3)および(4)の
AlLi合金電極は、真空蒸着でのみ成膜されている。
(2)のAlLi合金電極は、スパッタ法についての記
載はあるものの、実施例は真空蒸着法で行われており、
スパッタ法についての具体的記載もない。
【0007】真空蒸着法を用いる場合、リチウム単独で
は化学的安定性、成膜性および密着性の点で劣るため、
AlLi合金をLi蒸着源として用いている。しかし、
互いの金属の蒸気圧が異なるため、Alとの2元蒸着
(共蒸着)が必要となる。2元蒸着を用いた場合、組成
の制御が容易ではなく、また、最適な組成を毎回安定し
て得ることは困難である。従って、実際に得られるLi
濃度は、16〜79at%の比較的高濃度側に偏り、また
一定しない。Li濃度が高くなると、化学的に不安定と
なり、その結果、成膜性や密着性等が悪化し、素子特性
を劣化させる要因となる。また、品質も一定しない。一
方、単一の蒸着源から蒸着を行うこととすると、Liの
濃度は0.38at%以下の低いものとなり、合金として
の仕事関数が高くなり、電子注入効率が低下し、実用的
な特性を有する素子を得ることが困難である。
【0008】また、真空蒸着法により成膜された電子注
入電極は、膜としての緻密さが低く、有機層界面との密
着性が悪いため、発光効率が低下したり、電極が剥離し
てダークスポットが発生する等、EL素子の特性や寿
命、表示品質を低下させる要因となっていた。
【0009】さらに、Liのように仕事関数の小さい材
料は酸素や水分に対して反応性が高く、また材料の供給
や追加の作業は通常大気中で行われるため、材料表面に
は酸化物が形成されている。高品位の電子注入電極を形
成するためには、この酸化膜を除去してから蒸着を行う
ことが好ましいが、酸化物は金属単体よりも蒸発温度が
低かったり、あるいは蒸気圧が高いことはほとんど無く
酸化膜を除去することは困難であリ、純粋な金属膜から
なる高品位の電子注入電極を形成することは容易ではな
い。また、これらの酸化物材料による蒸着膜が電子注入
電極と有機層界面や、電極内部に形成された場合には、
仕事関数や電気伝導性が金属単体と異なるため、所望の
EL特性が得られない。さらに、実用的に見ると、材料
の交換や追加が短期間で必要となったり、大面積にした
場合には組成制御や膜厚、膜質の均一性に問題が生じる
こと、成膜レートを上げた場合には組成制御や、膜質の
再現性、膜質の均一性に問題が生じる等生産性の点でも
種々の問題を生じていた。
【0010】また、電子注入電極に用いられる合金は、
前述のようにLi単独のものと比較してはるかに安定で
はあるが、空気や湿気に直接さらされた場合、酸化した
り、腐食されたりして、ダークスポットや輝度半減時間
等、素子寿命が低下する。このため、シリコンやテフロ
ン等の封止膜を設けて外部と遮断する試みもなされてい
るが、未だ十分でなく、よりダークスポットの発生が少
なく、発光輝度の半減時間の長い、長寿命の有機EL素
子が望まれている。
【0011】ところで、有機EL素子をLCDのような
ドットマトリクスタイプ等のフラットパネルディスプレ
イに応用する試みもなされている。有機EL素子をフラ
ットパネルディスプレイに応用する場合、陰電極配線と
陽電極配線を交差させ、その間に有機EL素子構造体を
設けた単純マトリクス駆動タイプと、各画素毎にTFT
(薄膜トランジスタ)等のスイッチング素子を介在させ
たアクティブマトリクス駆動タイプとに大別される。
【0012】従来、単純マトリクス方式、アクティブマ
トリクス方式のどちらの場合においても、所定の配線材
をスパッタ法等により所望のパターンに形成するが、大
画面、高精細のディスプレイを形成しようとする場合、
配線材の比抵抗が大きいと、配線電極での電圧降下によ
り発光輝度が低下し、同一画面内で発光輝度が異なり、
いわゆる輝度ムラを生じてしまう。また、高速、高応答
性のディスプレイを実現するためには信号の遅延を防止
するため、配線電極の低抵抗化が重要な課題である。つ
まり、例えば2〜3インチ以上の大画面、高精細ディス
プレイの場合、配線電極は十分低い薄膜比抵抗を有する
ことが必要である。
【0013】また、有機EL素子は陽極から陰極へ順方
向に電流が流れる際に発光するので、一種の発光ダイオ
ードと見なすことができ、逆方向へは電流が流れにく
い、いわゆるダイオード特性を有しているが、単純マト
リクス型においては、このダイオード特性が極めて重要
である。すなわち、逆方向への電流(リーク電流)があ
ると、クロストロークや、輝度ムラ等の表示品質の低下
を招き、さらには不要な素子の発熱などの発光に寄与し
ないエネルギー消費が起こり、発光効率が低下する。従
って、逆方向への電流(リーク電流)を極力小さくする
ことが求められている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、外部
環境から十分に保護され、電子注入電極と有機層界面で
の成膜性、密着性を改善し、高効率で、ダークスポット
の発生を抑制し、輝度半減時間の長い、長寿命、高表示
品質の有機EL素子を実現することである。
【0015】また、電子注入電極と有機層界面での成膜
性、密着性、膜物性を改善し、高輝度、高効率、高表示
品質の有機EL素子を実現することである。
【0016】また、有機層側あるいはその反対側の面で
それぞれの機能に応じた膜界面物性を有する電子注入電
極を有し、高輝度、高効率で、しかも酸化や腐食され難
く、長寿命、高表示品質の有機EL素子を実現すること
である。
【0017】また、低抵抗の配線電極を有し、高速、小
電力で高精細の有機ELディスプレイを実現することで
ある。
【0018】また、逆方向への電流漏れ(リーク電流)
が少なく、クロストロークや輝度ムラのない高表示品質
の有機ELディスプレイを実現することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】以上のような目的は、以
下の(1)〜(9)の構成により達成される。 (1) ホール注入電極と電子注入電極と、これらの電
極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、前記電子
注入電極は、スパッタ法で成膜され、かつLiを0.4
〜14at%含有するAlLi合金であつて、この電子注
入電極の有機層と反対側に、Al、Alと遷移金属(た
だしTiを除く)、Tiおよび窒化チタンのいずれか1
種以上を含有する保護電極を有する有機EL素子。 (2) ホール注入電極と電子注入電極と、これらの電
極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、前記電子
注入電極は、スパッタ法で成膜され、かつLiを0.1
〜20at%含有するAlLi合金であつて、この電子注
入電極の有機層と反対側に、Al、Alと遷移金属(た
だしTiを除く)、Tiおよび窒化チタンのいずれか1
種以上を含有する保護電極を有し、前記電子注入電極
は、さらに副成分としてCu、MgおよびZrの1種ま
たは2種以上をこれらの総量に対し、それぞれ、Cu:
10wt%以下、Mg: 5wt%以下、Zr:0.5
wt%以下含有する有機EL素子。 (3) ホール注入電極と電子注入電極と、これらの電
極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、前記電子
注入電極は、スパッタ法で成膜され、かつLiを0.1
〜20at%含有するAlLi合金であつて、前記電子注
入電極は、有機層側にLiが多く、保護電極側にLiが
少ないLi濃度勾配を有する有機EL素子。 (4) さらに、前記電子注入電極の有機層と反対側に
保護電極を有する上記(3)の有機EL素子。 (5) 前記保護電極は、Al、Alと遷移金属(ただ
しTiを除く)、Tiおよび窒化チタンのいずれか1種
以上を含有する上記(4)の有機EL素子。 (6) 前記電子注入電極はLiを0.4〜14at%含
有する上記(2)〜(5)のいずれかの有機EL素子。 (7) 前記電子注入電極は、Liを0.4〜6.5
(ただし6.5を含まない)at%含有する上記(1)〜
(6)のいずれかの有機EL素子。 (8) 前記電子注入電極は、Liを6.5〜14at%
含有する上記(1)〜(6)のいずれかの有機EL素
子。 (9)前記保護電極はAlまたはAlと遷移金属であっ
て、配線電極として機能する上記(1)〜(8)のいず
れかの有機EL素子。
【0020】なお、特開平5−121172号公報に
は、AlLiを用いた合金薄膜上にAl薄膜を積層する
旨が記載されている。しかし、表1に記載されている第
1金属であるLiの含有量は、29.5〜61.8at%
(10〜30wt%)と多く、化学的に不安定である。ま
た、具体的な組成についての記載はなく、しかも成膜方
法は蒸着法であり、本発明の電子注入電極と保護電極と
は異なるものである。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の具体的構成につい
て詳細に説明する。
【0022】本発明の有機EL素子は、ホール注入電極
と電子注入電極と、これらの電極間に1種以上の有機層
とを有し、前記電子注入電極は、スパッタ法で成膜さ
れ、かつLiを0.1〜20at%、特に0.4〜14at
%含有するAlLi合金であつて、この電子注入電極の
有機層と反対側に、Al;Alおよび遷移金属(ただし
Tiを除く);Ti;窒化チタンのいずれか1種以上を
含有する保護電極を有する。また、この保護電極は電子
注入電極が後述のように濃度勾配を有する場合には有っ
てもなくてもよい。
【0023】スパッタ法を用いることにより、成膜され
た電子注入電極膜は、蒸着の場合と比較して、スパッタ
される原子や原子団が比較的高い運動エネルギーを有す
るため、表面マイグレーション効果が働き、有機層界面
での密着性が向上する。また、プレスパッタを行うこと
で、真空中で表面酸化物層を除去したり、逆スパッタに
より有機層界面に吸着した水分や酸素を除去できるの
で、クリーンな電極−有機層界面や電極を形成でき、そ
の結果、高品位で安定した有機EL素子ができる。ター
ゲットとしては前記組成範囲のAlLi合金や、Al、
Li単独でも良く、これらに加えて副成分のターゲット
を、あるいは副成分を添加して用いても良い。さらに、
蒸気圧の大きく異なる材料の混合物をターゲットとして
用いても、生成する膜とターゲットとの組成のズレは少
なく、蒸着法のように蒸気圧等による使用材料の制限も
ない。また、蒸着法に比較して材料を長時間供給する必
要がなく、膜厚や膜質の均一性に優れ、生産性の点で有
利である。
【0024】スパッタ法により形成された電子注入電極
は緻密な膜なので、粗な蒸着膜に比較して膜中への水分
の進入が非常に少なく、化学的安定性が高く、長寿命の
有機EL素子が得られる。
【0025】電子注入電極のLi含有量は、後述のよう
にCu,Mg,Znを添加したり、Liの濃度勾配を有
する場合には0.1〜20at%である。また、単にAl
Li合金の場合には0.4〜14at%である。Li含有
量が多すぎても、少なすぎても電子注入効率が低下し、
また、多すぎる場合安定性が低下する。電子注入電極の
Li含有量は、好ましくは0.4〜6.5(ただし6.
5を含まない)at%、より好ましくは、0.4〜5(た
だし5を含まない)at%、さらには0.4〜4.5at
%、またさらには0.4〜4at%、特に0.4〜3at%
の範囲、あるいは好ましくは6.5〜14at%、より好
ましくは7〜12at%の範囲が好ましい。Li元素の量
が多すぎると成膜された電子注入電極の安定性が低下
し、少なすぎると本発明の効果が得られない。また、発
光輝度の安定性を高めるためにはLi濃度を高めに設定
することが好ましく、逆に駆動電圧の安定性を高めるた
めにはLi濃度を低めに設定することが好ましい。
【0026】また、本発明に用いられているAlLi合
金電子注入電極は、104〜106程度の高い整流性(逆
方向での抵抗/順方向での抵抗)を有している。このた
め、画素数が104〜106程度の単純マトリクス型ディ
スプレイにおいて、1画素での順方向電流値が、残りの
全画素での逆方向での電流値の総和より大きくなり、ク
ロストークなく画像表示を行うことができる。
【0027】本発明の有機EL素子は、電子注入電極の
上、つまり有機層と反対側には保護電極を有する。保護
電極を設けることにより、電子注入電極が外気や水分等
から保護され、構成薄膜の劣化が防止され、電子注入効
率が安定し、素子寿命が飛躍的に向上する。また、この
保護電極は、非常に低抵抗であり、後述のように電子注
入電極の抵抗が高い場合には配線電極としての機能も有
する。この保護電極は、Al、Alおよび遷移金属(た
だしTiを除く)、Tiまたは窒化チタン(TiN)の
いずれか1種または2種以上を含有し、これらを単独で
用いた場合、それぞれ保護電極中に少なくとも、Al:
90〜100at%、Ti:90〜100at%、TiN:
90〜100 mol%程度含有されていることが好まし
い。また、2種以上用いるときの混合比は任意である
が、AlとTiの混合では、Tiの含有量は10at%以
下が好ましい。また、これらを単独で含有する層を積層
してもよい。特にAl、Alおよび遷移金属は、後述の
配線電極として用いた場合、良好な効果が得られ、Ti
Nは耐腐食性が高く、封止膜としての効果が大きい。T
iNは、その化学量論組成から10%程度偏倚していて
もよい。さらに、Alおよび遷移金属の合金は、遷移金
属、特にMg,Sc,Nb,Zr,Hf,Nd,Ta,
Cu,Si,Cr,Mo,Mn,Ni,Pd,Pt,W
等を、好ましくはこれらの総計が10at%以下、特に5
at%以下、特に2at%以下含有していてもよい。遷移金
属の含有量は少ないほど、後述の配線材として機能させ
た場合の薄膜抵抗は下げられる。
【0028】Alに対して平衡状態で固溶できる元素は
比較的少ないが、スパッタ法で成膜した薄膜では、非平
衡固溶により広い組織範囲で均一な単相組織の合金膜を
形成できるので、合金元素の選択範囲を広くできる。合
金元素としての遷移金属は、酸素に対する活性が高く、
化学的に安定な不動態を形成することから、Al−遷移
金属合金をスパッタ法で成膜した薄膜は、耐腐食性の向
上に効果がある。
【0029】本発明の保護電極は、Al、Ti、窒化チ
タンを用いると、化学的に安定で、比抵抗が比較的低い
ことなどから好ましいが、その他に、他の導電性無機材
料により構成してもよい。このような導電性無機材料は
特に限定されず、導電性金属(合金および金属間化合物
を含む)および導電性セラミックスから、上記したよう
な配線層として必要な導電性が得られ、かつ後述の有機
保護層形成時に陰電極および有機層を十分に保護できる
ような材料を適宜選択すればよい。このような導電性無
機材料としては、Ag、Au、Cr、Mo、Ptおよび
Wのいずれか、あるいはこれらの合金、または酸化亜鉛
(ZnO)、酸化錫(SnO)もしくは酸化インジウム
(In23)、あるいはこれらの混合物が好ましい。ま
た、合金を用いる場合の混合比は任意である。
【0030】本発明の保護電極は、配線電極として機能
させることができる。つまり、電子注入電極の膜抵抗が
高い場合、あるいは最低限電子注入機能を有する程度の
膜厚とした場合等にはこれを補うため、また、単純マト
リクスの配線電極として用いた場合、電圧降下が少な
く、輝度ムラが防止でき、さらに、TFT等を用いたア
クティブマトリクスタイプのディスプレイに応用した場
合、高速化が可能である。配線電極は電子注入電極上に
積層した保護電極を低抵抗化のための配線電極としても
よいし、保護電極として積層し、さらに所定のパターン
の配線電極として積層したものであってもよい。
【0031】本発明の保護電極を配線電極として機能さ
せることが好ましい電子注入電極の膜抵抗は、ディスプ
レイの大きさや保護電極の材質にもよるが、通常0.2
Ω/□以上、特に0.5Ω/□以上となった場合であ
り、その上限は特に規制されるものではないが通常数1
00Ω/□程度である。また、そのような電子注入電極
の厚みとしては、ディスプレイの大きさや保護電極の材
質にもよるが、通常300nm以下、特に200nm以下と
なった場合に必要になってくる。
【0032】本発明の保護電極を配線電極として機能さ
せる場合、好ましい比抵抗としては500μΩ・cm以
下、より好ましくは50μΩ・cm、特に30μΩ・cm以
下、さらには10μΩ・cm以下である。その下限値とし
ては特に制限されるものではないが、Alの比抵抗であ
る3〜4μΩ・cm程度が挙げられる。このような比抵抗
を有する保護電極としては、AlまたはAlおよび遷移
金属の合金が好ましく挙げられる。この場合、Al・遷
移金属合金の遷移金属の含有量は、好ましくは5at%、
より好ましくは2at%、特に1at%以下が好ましく、A
l単体を用いたものが最も好ましい。
【0033】保護電極の厚さは、電子注入効率を確保
し、水分や酸素あるいは有機溶媒の進入を防止するた
め、一定以上の厚さとすればよく、好ましくは50nm以
上、さらに100nm以上、特に100〜1000nmの範
囲が好ましい。保護電極層が薄すぎると、本発明の効果
が得られず、また、保護電極層の段差被覆性が低くなっ
てしまい、端子電極との接続が十分ではなくなる。一
方、保護電極層が厚すぎると、保護電極層の応力が大き
くなるため、ダークスポットの成長速度が高くなってし
まう。なお、配線電極として機能させる場合の厚さは、
電子注入電極の膜厚が薄いために膜抵抗が高く、これを
補う場合には、通常100〜500nm 程度、その他の
配線電極として機能される場合には100〜300nm程
度である。
【0034】電子注入電極と保護電極とを併せた全体の
厚さとしては、特に制限はないが、通常100〜100
0nm程度とすればよい。
【0035】保護電極を形成した後、さらにその上に有
機保護槽を設けてもよい。有機保護層は、塩素を含むフ
ッ化炭素重合体から選択された少なくとも1種の重合体
を蒸着源とする真空蒸着法により形成されたものである
か、前記少なくとも1種の重合体をターゲットとするス
パッタ法により形成されたものであり、塩素を含むフッ
素系有機高分子薄膜である。蒸着源またはターゲットと
なる前記フッ化炭素重合体としては、塩素を含むフッ化
炭素化合物の単独重合体およびその共重合体が好まし
い。前記単独重合体および共重合体としては、クロロト
リフルオロエチレン単独重合体、ジクロロジフルオロエ
チレン単独重合体、クロロトリフルオロエチレンとジク
ロロジフルオロエチレンとの共重合体が好ましく、特
に、クロロトリフルオロエチレン単独重合体が好まし
い。なお、本発明では、これらの単独重合体や共重合体
のほか、テトラフルオ ロエチレンとクロロトリフルオ
ロエチレンまたはジクロロジフルオロエチレンとの共重
合体なども用いることができる。前記各重合体の分子量
は、好ましくは400以上、より好ましくは1000以
上60万以下、さらに好ましくは1万以上50万以下で
ある。なお、共重合体を用いる場合、共重合比は特に限
定されないが、例えばクロロトリフルオロエチレンとジ
クロロジフルオロエチレンとの共重合体では、クロロト
リフルオロエチレン:ジクロロジフルオロエチレン=
2:1〜10:1であることが好ましい。
【0036】蒸着またはスパッタにより形成された有機
保護層は、蒸着源またはターゲットとほぼ同じ重合体か
ら構成される。
【0037】有機保護層の厚さは、好ましくは10nm〜
100μmであり、より好ましくは50nm〜10μmであ
る。有機保護層が薄すぎると封止効果が不十分となり、
厚すぎると応力が大きくなるため、ダークスポットの成
長速度が高くなってしまう。
【0038】なお、有機保護層は、ターゲットや蒸着源
の異なる複数層から構成してもよい。保護層は、保護電
極と有機保護層とのほかに、保護電極と有機保護層との
間に非フッ素系有機材料層や非導電性無機材料層を含ん
でいてもよい。
【0039】形成される電子注入電極は、有機層に接す
る界面にLi元素が多く、その反対側の面にAl元素が
多くなるように、膜厚方向にLiの濃度が変化する濃度
勾配を有する構造としてもよい。このような濃度勾配を
持たせることで、電子注入機能が必要な有機層界面に、
高濃度で低仕事関数のLi元素を存在させ、外気等との
接触の恐れの多い反対側の面に反応活性の高いLi元素
を低濃度で存在させることができ、高い電子注入効率を
保持しつつ、安定性を高めた電子注入電極を実現でき
る。この場合、少なくとも電子注入電極の断面中、保護
電極側界面から膜厚の1/3までの位置のLi濃度をC
oとし、有機層側界面から膜厚1/3までの位置のLi
濃度をCiとしたとき、Co/Ciが0.5以下、特に
10-3〜0.4となる範囲で濃度勾配を有することが好
ましい。濃度勾配は、連続していても、非連続であって
もよい。このような濃度勾配は、例えば、イオンエッチ
ングを行いながらオージェ電子分光法等を用いて確認す
ることができる。また、このような濃度勾配を有する場
合の前記AlLiの平均Li濃度は0.1〜20at%で
あり、好ましくは0.4〜14at%であり、その他より
好ましい範囲等は上記と同様である。なお、Ciは14
〜100at%であることが好ましい。
【0040】電子注入電極中にLi元素の濃度勾配を持
たせるには、好ましくは後述するように、スパッタ圧力
をコントロールすることにより容易に実現できるが、そ
の他に例えば、AlLi合金スパッタターゲットと、A
l金属ターゲットとを同時に使用し、それぞれの成膜レ
ートをコントロールしてもよい。また、このような連続
的な濃度勾配を持たせる以外、例えば非連続的(段階
的)に、Li元素の混合比を変えた膜を成膜してもよ
い。
【0041】本発明の電子注入電極は、好ましくは、さ
らに前記AlLiに加えて副成分として、Cu、Mgお
よびZrのいずれか1種または2種以上を、それぞれこ
れらの総量に対し、Cu: 10wt%以下、Mg:
5wt%以下、Zr:0.5wt%以下含有し、好ましく
は、Cu: 0.05〜10wt%、Mg: 0.01〜
5wt%、Zr: 0.01〜0.5wt%含有し、より好
ましくは、Cu: 0.1〜6wt%、Mg: 0.
1〜3wt%、Zr: 0.01〜0.5wt%含有する。
【0042】これら、Cu、MgおよびZrのいずれか
を含有することにより、電子注入電極薄膜の膜物性が改
善され、有機層への密着力がさらに向上し、電子注入効
率が向上すると共に、膜内での応力歪等が減少し膜が安
定するため、ダークスポットの発生が抑制され、素子の
寿命が飛躍的に延びる。また、これらの副成分を含有し
た場合の前記AlLiのLi濃度は0.1〜20at%で
あり、好ましくは0.4〜14at%であり、その他より
好ましい範囲等は上記と同様である。また、この場合に
も、前記Liの濃度勾配を有していてもよい。
【0043】これら副成分を添加する手段としては、前
記AlLiのターゲットに加えてこれらの金属元素のタ
ーゲットを用いて成膜する方法や、AlLiのターゲッ
トにこれらの金属チップを置いてスパッタする方法など
が挙げられるが、成膜される電子注入電極の組成を安定
させ、副成分の含有量を上記範囲内に制御させる容易さ
を考慮すると、AlLiと副成分元素の混合ターゲット
を用いることが好ましい。このようなターゲットとして
は、非酸化雰囲気で原料を溶解した後、混合溶湯をエチ
レングリコール等の非水で冷却し、熱間圧延加工後旋盤
加工等によりターゲット形状を得る、雰囲気溶解法によ
り好ましく得ることができる。また、その他に急冷粉末
冶金、複合材、メカニカルアイロング等でもよい。C
u,Mg,Zrを添加することにより、ターゲット組織
の微細化が可能となり、異常放電を抑制することができ
る。さらに、これら副成分に加えて、添加物あるいは不
可避成分としてFe、Si、O等の1種または2種以上
を、それぞれ5wt%以下含有していてもよい。
【0044】スパッタ時のスパッタガスの圧力は、好ま
しくは0.1〜5Paの範囲が好ましく、この範囲でスパ
ッタガスの圧力を調節することにより、前記範囲のLi
濃度のAlLi合金を容易に得ることができる。また、
成膜中にスパッタガスの圧力を、前記範囲内で変化させ
ることにより、上記Li濃度勾配を有する電子注入電極
を容易に得ることができる。また、成膜ガス圧力と基板
ターゲット間距離の積が20〜65Pa・cmを満たす成膜
条件にすることが好ましい。
【0045】スパッタガスは、通常のスパッタ装置に使
用される不活性ガスや、反応性スパッタではこれに加え
てN2、H2、O2、C24、NH3等の反応性ガスが使用
可能である。
【0046】スパッタ法としてはRF電源を用いた高周
波スパッタ法等も可能であるが、成膜レートの制御が容
易であり、有機EL素子構造体へのダメージを少なくす
るためにはDCスパッタ法を用いることが好ましい。D
Cスパッタ装置の電力としては、好ましくは0.1〜1
0W/cm2、特に0.5〜7W/cm2の範囲である。ま
た、成膜レートは5〜100nm/min 、特に10〜50
nm/min の範囲が好ましい。
【0047】電子注入電極薄膜の厚さは、電子注入を十
分行える一定以上の厚さとすれば良く、1nm以上、好ま
しくは3nm以上とすればよい。また、その上限値には特
に制限はないが、通常膜厚は3〜500nm程度とすれば
よい。
【0048】本発明の有機EL素子は、前述のような反
応性スパッタを利用して、保護電極としてTiの窒化物
を設けてもよい。このTiNのN量は、この化学量論組
成から多少偏倚していても良く、それらの組成の0.5
〜2倍の範囲であればよい。
【0049】TiNの保護電極を形成する場合、ターゲ
ットには好ましくはTiを用いる。また、反応性ガスと
しては好ましくは、N2 、NH3 、NO、NO2 、N2
O等が挙げられる。これらの反応性ガスは単独で用いて
も、2種以上を混合して用いてもよく、Ar等の不活性
ガスとの混合ガスとして用いてもよい。
【0050】本発明で製造される有機EL発光素子は、
基板上にホール注入電極と、その上に電子注入電極を有
するこれらの電極に挟まれて、それぞれ少なくとも1層
の電荷輸送層および発光層を有し、さらに最上層として
保護電極を有する。なお、電荷輸送層は省略可能であ
る。そして、電子注入電極は、前述のとおり、スパッタ
法で成膜される仕事関数の小さい金属、化合物または合
金で構成され、ホール注入電極は、錫ドープ酸化インジ
ウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZ
O)、ZnO、SnO2、In23等をスパッタ法で成
膜した構成からなる。
【0051】本発明により製造される有機EL発光素子
の構成例を図1に示す。図1に示されるEL素子は、基
板21上に、ホール注入電極22、ホール注入・輸送層
23、発光および電子注入輸送層24、電子注入電極2
5、保護電極26を順次有する。
【0052】本発明の有機EL素子は、図示例に限ら
ず、種々の構成とすることができ、例えば発光層を単独
で設け、この発光層と電子注入電極との間に電子注入輸
送層を介在させた構造とすることもできる。また、必要
に応じ、ホール注入・輸送層と発光層とを混合しても良
い。
【0053】電子注入電極は前述のように成膜し、発光
層等の有機物層は真空蒸着等により、ホール注入電極は
蒸着やスパッタ等により成膜することができるが、これ
らの膜のそれぞれは、必要に応じてマスク蒸着または膜
形成後にエッチングなどの方法によってパターニングで
き、これによって、所望の発光パターンを得ることがで
きる。さらには、基板が薄膜トランジスタ(TFT)で
あって、そのパターンに応じて各膜を形成することでそ
のまま表示および駆動パターンとすることもできる。
【0054】電極成膜後に、前記保護電極に加えて、S
iOX 等の無機材料、テフロン等の有機材料等を用いた
保護膜を形成してもよい。保護膜は透明でも不透明であ
ってもよく、保護膜の厚さは50〜1200nm程度とす
る。保護膜は前記した反応性スパッタ法の他に、一般的
なスパッタ法、蒸着法等により形成すればよい。
【0055】さらに、素子の有機層や電極の酸化を防ぐ
ために素子上に封止層を形成することが好ましい。封止
層は、湿気の侵入を防ぐために市販の低吸湿性の光硬化
性接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、架
橋エチレン−酢酸ビニル共重合体接着剤シート等の接着
性樹脂層を用いて、ガラス板等の封止板を接着し密封す
る。ガラス板以外にも金属板、プラスチック板等を用い
ることもできる。
【0056】次に、本発明のEL素子に設けられる有機
物層について述べる。
【0057】発光層は、ホール(正孔)および電子の注
入機能、それらの輸送機能、ホールと電子の再結合によ
り励起子を生成させる機能を有する。発光層には比較的
電子的にニュートラルな化合物を用いることが好まし
い。
【0058】ホール注入輸送層は、陽電極からのホール
の注入を容易にする機能、ホールを安定に輸送する機能
および電子を妨げる機能を有し、電子注入輸送層は、陰
電極からの電子の注入を容易にする機能、電子を安定に
輸送する機能およびホールを妨げる機能を有するもので
あり、これらの層は、発光層に注入されるホールや電子
を増大・閉じこめさせ、再結合領域を最適化させ、発光
効率を改善する。
【0059】発光層の厚さ、ホール注入輸送層の厚さお
よび電子注入輸送層の厚さは特に限定されず、形成方法
によっても異なるが、通常、5〜500nm程度、特に1
0〜300nmとすることが好ましい。
【0060】ホール注入輸送層の厚さおよび電子注入輸
送層の厚さは、再結合・発光領域の設計によるが、発光
層の厚さと同程度もしくは1/10〜10倍程度とすれ
ばよい。ホールもしくは電子の、各々の注入層と輸送層
を分ける場合は、注入層は1nm以上、輸送層は20nm以
上とするのが好ましい。このときの注入層、輸送層の厚
さの上限は、通常、注入層で500nm程度、輸送層で5
00nm程度である。このような膜厚については注入輸送
層を2層設けるときも同じである。
【0061】本発明の有機EL素子の発光層には発光機
能を有する化合物である蛍光性物質を含有させる。この
ような蛍光性物質としては、例えば、特開昭63−26
4692号公報に開示されているような化合物、例えば
キナクリドン、ルブレン、スチリル系色素等の化合物か
ら選択される少なくとも1種が挙げられる。また、トリ
ス(8−キノリノラト)アルミニウム等の8−キノリノ
ールないしその誘導体を配位子とする金属錯体色素など
のキノリン誘導体、テトラフェニルブタジエン、アント
ラセン、ペリレン、コロネン、12−フタロペリノン誘
導体等が挙げられる。さらには、特願平6−11056
9号のフェニルアントラセン誘導体、特願平6−114
456号のテトラアリールエテン誘導体等を用いること
ができる。
【0062】また、それ自体で発光が可能なホスト物質
と組み合わせて使用することが好ましく、ドーパントと
しての使用が好ましい。このような場合の発光層におけ
る化合物の含有量は0.01〜10wt% 、さらには0.
1〜5wt% であることが好ましい。ホスト物質と組み合
わせて使用することによって、ホスト物質の発光波長特
性を変化させることができ、長波長に移行した発光が可
能になるとともに、素子の発光効率や安定性が向上す
る。
【0063】ホスト物質としては、キノリノラト錯体が
好ましく、さらには8−キノリノールないしその誘導体
を配位子とするアルミニウム錯体が好ましい。このよう
なアルミニウム錯体としては、特開昭63−26469
2号、特開平3−255190号、特開平5−7073
3号、特開平5−258859号、特開平6−2158
74号等に開示されているものを挙げることができる。
【0064】具体的には、まず、トリス(8−キノリノ
ラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネ
シウム、ビス(ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜
鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウ
ムオキシド、トリス(8−キノリノラト)インジウム、
トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウ
ム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−
8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−
キノリノラト)カルシウム、5,7−ジクロル−8−キ
ノリノラトアルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−
8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、ポリ[亜
鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)メ
タン]、等がある。
【0065】また、8−キノリノールないしその誘導体
のほかに他の配位子を有するアルミニウム錯体であって
もよく、このようなものとしては、ビス(2−メチル−
8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム(III)
、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(オルト−
クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−
8−キノリノラト)(メタークレゾラト)アルミニウム
(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ
−クレゾラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル
−8−キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)
アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノ
ラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム(II
I) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−
フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−
メチル−8−キノリノラト)(2,3−ジメチルフェノ
ラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キ
ノリノラト)(2,6−ジメチルフェノラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)
(3,4−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメ
チルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチ
ル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフ
ェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8
−キノリノラト)(2,6−ジフェニルフェノラト)ア
ルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラ
ト)(2,4,6−トリフェニルフェノラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)
(2,3,6−トリメチルフェノラト)アルミニウム(I
II) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,
3,5,6−テトラメチルフェノラト)アルミニウム(I
II) 、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(1−ナ
フトラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−8
−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(II
I) 、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)
(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(パラ−
フェニルフェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,
4−ジメチル−8−キノリノラト)(メタ−フェニルフ
ェノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチ
ル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラ
ト)アルミニウム(III) 、ビス(2,4−ジメチル−8
−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラ
ト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4−エチ
ル−8−キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニ
ウム(III) 、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キ
ノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウ
ム(III) 、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリ
ノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム(III) 、
ビス(2−メチル−6−トリフルオロメチル−8−キノ
リノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III) 等が
ある。
【0066】このほか、ビス(2−メチル−8−キノリ
ノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−ビス(2−
メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス
(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)アルミニウム
(III) −μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キ
ノリノラト)アルミニウム(III) 、ビス(4−エチル−
2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −
μ−オキソ−ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノ
リノラト)アルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−4
−メトキシキノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オ
キソ−ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラト)
アルミニウム(III) 、ビス(5−シアノ−2−メチル−
8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ−オキソ−
ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラト)ア
ルミニウム(III) 、ビス(2−メチル−5−トリフルオ
ロメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III) −μ
−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル
−8−キノリノラト)アルミニウム(III) 等であっても
よい。
【0067】このほかのホスト物質としては、特願平6
−110569号に記載のフェニルアントラセン誘導体
や特願平6−114456号に記載のテトラアリールエ
テン誘導体なども好ましい。
【0068】発光層は電子注入輸送層を兼ねたものであ
ってもよく、このような場合はトリス(8−キノリノラ
ト)アルミニウム等を使用することが好ましい。これら
の蛍光性物質を蒸着すればよい。
【0069】また、必要に応じて発光層は、少なくとも
一種以上のホール注入輸送性化合物と少なくとも1種以
上の電子注入輸送性化合物との混合層とすることも好ま
しく、この混合層中にドーパントを含有させることが好
ましい。このような混合層における化合物の含有量は、
0.01〜20wt% 、さらには0.1〜15wt% とする
ことが好ましい。
【0070】混合層では、キャリアのホッピング伝導パ
スができるため、各キャリアは極性的に優勢な物質中を
移動し、逆の極性のキャリア注入は起こり難くなり、有
機化合物がダメージを受け難くなり、素子寿命がのびる
という利点があるが、前述のドーパントをこのような混
合層に含有させることにより、混合層自体のもつ発光波
長特性を変化させることができ、発光波長を長波長に移
行させることができるとともに、発光強度を高め、かつ
素子の安定性を向上させることができる。
【0071】混合層に用いられるホール注入輸送性化合
物および電子注入輸送性化合物は、各々、後述のホール
注入輸送層用の化合物および電子注入輸送層用の化合物
の中から選択すればよい。なかでも、ホール注入輸送層
用の化合物としては、強い蛍光を持ったアミン誘導体、
例えばホール輸送材料であるトリフェニルジアミン誘導
体、さらにはスチリルアミン誘導体、芳香族縮合環を持
つアミン誘導体を用いるのが好ましい。
【0072】電子注入輸送性の化合物としては、キノリ
ン誘導体、さらには8−キノリノールないしその誘導体
を配位子とする金属錯体、特にトリス(8−キノリノラ
ト)アルミニウム(Alq3)を用いることが好まし
い。また、上記のフェニルアントラセン誘導体、テトラ
アリールエテン誘導体を用いるのも好ましい。
【0073】ホール注入輸送層用の化合物としては、強
い蛍光を持ったアミン誘導体、例えば上記のホール輸送
材料であるトリフェニルジアミン誘導体、さらにはスチ
リルアミン誘導体、芳香族縮合環を持つアミン誘導体を
用いるのが好ましい。
【0074】この場合の混合比は、それぞれのキャリア
移動度とキャリア濃度を考慮する事で決定するが、一般
的には、ホール注入輸送性化合物の化合物/電子注入輸
送機能を有する化合物の重量比が、1/99〜99/
1、さらには10/90〜90/10、特には20/8
0〜80/20程度となるようにすることが好ましい。
【0075】また、混合層の厚さは、分子層一層に相当
する厚みから、有機化合物層の膜厚未満とすることが好
ましく、具体的には1〜85nmとすることが好ましく、
さらには5〜60nm、特には5〜50nmとすることが好
ましい。
【0076】また、混合層の形成方法としては、異なる
蒸着源より蒸発させる共蒸着が好ましいが、蒸気圧(蒸
発温度)が同程度あるいは非常に近い場合には、予め同
じ蒸着ボード内で混合させておき、蒸着することもでき
る。混合層は化合物同士が均一に混合している方が好ま
しいが、場合によっては、化合物が島状に存在するもの
であってもよい。発光層は、一般的には、有機蛍光物質
を蒸着するか、あるいは樹脂バインダー中に分散させて
コーティングすることにより、発光層を所定の厚さに形
成する。
【0077】また、ホール注入輸送層には、例えば、特
開昭63−295695号公報、特開平2−19169
4号公報、特開平3−792号公報、特開平5−234
681号公報、特開平5−239455号公報、特開平
5−299174号公報、特開平7−126225号公
報、特開平7−126226号公報、特開平8−100
172号公報、EP0650955A1等に記載されて
いる各種有機化合物を用いることができる。例えば、テ
トラアリールベンジシン化合物(トリアリールジアミン
ないしトリフェニルジアミン:TPD)、芳香族三級ア
ミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリア
ゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有する
オキサジアゾール誘導体、ポリチオフェン等である。こ
れらの化合物は2種以上を併用してもよく、併用すると
きは別層にして積層したり、混合したりすればよい。
【0078】ホール注入輸送層をホール注入層とホール
輸送層とに分けて設層する場合は、ホール注入輸送層用
の化合物のなかから好ましい組合せを選択して用いるこ
とができる。このとき、陽電極(ITO等)側からイオ
ン化ポテンシャルの小さい化合物の層の順に積層するこ
とが好ましい。また陽電極表面には薄膜性の良好な化合
物を用いることが好ましい。このような積層順について
は、ホール注入輸送層を2層以上設けるときも同様であ
る。このような積層順とすることによって、駆動電圧が
低下し、電流リークの発生やダークスポットの発生・成
長を防ぐことができる。また、素子化する場合、蒸着を
用いているので1〜10nm程度の薄い膜も、均一かつピ
ンホールフリーとすることができるため、ホール注入層
にイオン化ポテンシャルが小さく、可視部に吸収をもつ
ような化合物を用いても、発光色の色調変化や再吸収に
よる効率の低下を防ぐことができる。ホール注入輸送層
は、発光層等と同様に上記の化合物を蒸着することによ
り形成することができる。
【0079】また、必要に応じて設けられる電子注入輸
送層には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム
(Alq3)等の8−キノリノールなしいその誘導体を
配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキ
サジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導
体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニ
ルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等を用い
ることができる。電子注入輸送層は発光層を兼ねたもの
であってもよく、このような場合はトリス(8−キノリ
ノラト)アルミニウム等を使用することが好ましい。電
子注入輸送層の形成は発光層と同様に蒸着等によればよ
い。
【0080】電子注入輸送層を電子注入層と電子輸送相
とに分けて積層する場合には、電子注入輸送層用の化合
物の中から好ましい組み合わせを選択して用いることが
できる。このとき、陰電極側から電子親和力の値の大き
い化合物の順に積層することが好ましい。このような積
層順については電子注入輸送層を2層以上設けるときも
同様である。
【0081】基板材料としては、ガラスや石英、樹脂等
の透明ないし半透明材料を用いる。また、基板に色フィ
ルター膜や蛍光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体
反射膜を用いて発光色をコントロールしてもよい。
【0082】色フィルター膜には、液晶ディスプレイ等
で用いられているカラーフィルターを用いれば良いが、
有機ELの発光する光に合わせてカラーフィルターの特
性を調整し、取り出し効率・色純度を最適化すればよ
い。
【0083】また、EL素子材料や蛍光変換層が光吸収
するような短波長の外光をカットできるカラーフィルタ
ーを用いれば、素子の耐光性・表示のコントラストも向
上する。
【0084】また、誘電体多層膜のような光学薄膜を用
いてカラーフィルターの代わりにしても良い。
【0085】蛍光変換フィルター膜は、EL発光の光を
吸収し、蛍光変換膜中の蛍光体から光を放出させること
で、発光色の色変換を行うものであるが、組成として
は、バインダー、蛍光材料、光吸収材料の三つから形成
される。
【0086】蛍光材料は、基本的には蛍光量子収率が高
いものを用いれば良く、EL発光波長域に吸収が強いこ
とが望ましい。実際には、レーザー色素などが適してお
り、ローダミン系化合物・ペリレン系化合物・シアニン
系化合物・フタロシアニン系化合物(サブフタロ等も含
む)ナフタロイミド系化合物・縮合環炭化水素系化合物
・縮合複素環系化合物・スチリル系化合物・クマリン系
化合物等を用いればよい。
【0087】バインダーは基本的に蛍光を消光しないよ
うな材料を選べば良く、フォトリソグラフィー・印刷等
で微細なパターニングが出来るようなものが好ましい。
また、ITOの成膜時にダメージを受けないような材料
が好ましい。
【0088】光吸収材料は、蛍光材料の光吸収が足りな
い場合に用いるが、必要の無い場合は用いなくても良
い。また、光吸収材料は、蛍光性材料の蛍光を消光しな
いような材料を選べば良い。
【0089】ホール注入輸送層、発光層および電子注入
輸送層の形成には、均質な薄膜が形成できることから真
空蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着法を用いた
場合、アモルファス状態または結晶粒径が0.1μm 以
下の均質な薄膜が得られる。結晶粒径が0.1μm を超
えていると、不均一な発光となり、素子の駆動電圧を高
くしなければならなくなり、電荷の注入効率も著しく低
下する。
【0090】真空蒸着の条件は特に限定されないが、1
-4Pa以下の真空度とし、蒸着速度は0.01〜1nm/
sec 程度とすることが好ましい。また、真空中で連続し
て各層を形成することが好ましい。真空中で連続して形
成すれば、各層の界面に不純物が吸着することを防げる
ため、高特性が得られる。また、素子の駆動電圧を低く
したり、ダークスポットの成長・発生を抑えたりするこ
とができる。
【0091】これら各層の形成に真空蒸着法を用いる場
合において、1層に複数の化合物を含有させる場合、化
合物を入れた各ボートを個別に温度制御して共蒸着する
ことが好ましい。
【0092】本発明の有機EL素子は、通常、直流駆動
型のEL素子として用いられるが、交流駆動またはパル
ス駆動とすることもできる。印加電圧は、通常、2〜2
0V程度とされる。
【0093】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を比較例ととも
に示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0094】<実施例1>スパッタ法にて作製した厚さ
100nmのパターニングITO透明電極(ホール注入電
極)を有するガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタ
ノールを用いて超音波洗浄し、次いで煮沸エタノール中
から引き上げて乾燥し、表面をUV/O3洗浄した後、
真空蒸着装置の基板ホルダーに固定して、槽内を1×1
-4Pa以下まで減圧した。4,4’,4”−トリス(−
N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ト
リフェニルアミン(以下、m−MTDATA)を蒸着速
度0.2nm/sec.で40nmの厚さに蒸着し、ホール注入
層とし、次いで減圧状態を保ったまま、N,N’−ジフ
ェニル−N,N’−m−トリル−4,4’−ジアミノ−
1,1’−ビフェニル(以下、TPD)を蒸着速度0.
2nm/sec.で35nmの厚さに蒸着し、ホール輸送層とし
た。さらに、減圧を保ったまま、トリス(8−キノリノ
ラト)アルミニウム(以下、Alq3 )を蒸着速度0.
2nm/sec.で50nmの厚さに蒸着して、電子注入輸送・
発光層とした。次いで減圧を保ったまま、このEL素子
構造体基板を真空蒸着装置からスパッタ装置に移し、ス
パッタ圧力1.0PaにてAlLi電子注入電極(Li濃
度:7.2at%)を50nmの厚さに成膜した。その際ス
パッタガスにはArを用い、投入電力は100W、ター
ゲットの大きさは4インチ径、基板とターゲットの距離
は90mmとした。さらに、減圧を保ったまま、このEL
素子基板を他のスパッタ装置に移し、Alターゲットを
用いたDCスパッタ法により、スパッタ圧力0.3Paに
てAl保護電極を200nmの厚さに成膜した。この時ス
パッタガスにはArを用い、投入電力は500W、ター
ゲットの大きさは4インチ径、基板とターゲットの距離
は90mmとした。
【0095】得られた有機EL素子に乾燥アルゴン雰囲
気中で直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で
連続駆動させた。初期には、6.5V 、530cd/m2
の緑色(発光極大波長λmax =530nm)の発光が観測
された。輝度の半減時間は850時間で、その間の駆動
電圧の上昇は1.9Vであった。この間、大きさが50
μm を超えるダークスポットの発生および成長は確認さ
れなかった。
【0096】<実施例2>実施例1において、AlLi
電子注入電極のLi濃度を10.6at%とした他は実施
例1と同様にして有機EL素子を得た。
【0097】得られた有機EL素子に乾燥アルゴン雰囲
気中で直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で
連続駆動させた。初期には、6.6V 、550cd/m2
の緑色(発光極大波長λmax =530nm)の発光が観測
された。輝度の半減時間は850時間で、その間の駆動
電圧の上昇は2.0Vであった。この間、大きさが50
μm を超えるダークスポットの発生および成長は確認さ
れなかった。
【0098】<実施例3>実施例1において、AlLi
電子注入電極のLi濃度を2.3at%とした他は実施例
1と同様にして有機EL素子を得た。
【0099】得られた有機EL素子に乾燥アルゴン雰囲
気中で直流電圧を印加し、10mA/cm2 の定電流密度で
連続駆動させた。初期には、6.7V 、520cd/m2
の緑色(発光極大波長λmax =530nm)の発光が観測
された。輝度の半減時間は860時間で、その間の駆動
電圧の上昇は1.4Vであった。この間、大きさが50
μm を超えるダークスポットの発生および成長は確認さ
れなかった。
【0100】<実施例4>保護電極をTiとするため
に、Tiターゲットを用いたDCスパッタ法により、ス
パッタ圧力0.3Paにて成膜した以外は実施例1と同様
にして素子を作製し、実施例1と同様にして評価したと
ころ、同等の特性が得られた。
【0101】<実施例5>保護電極をTiNとするため
に、スパッタガスをN2/Ar(N2分圧10%)にした
以外は実施例1と同様にして素子を作製し、評価したと
ころ、同等の特性が得られた。
【0102】<実施例6>実施例1において、Al保護
電極の代わりに、AlにTi,Zr,Nd,Ta,C
u,Cr,NiおよびPtをそれぞれ2at%含有させた
保護電極を成膜した。得られた薄膜の比抵抗は、それぞ
れ、Al+Ti:15μΩ・cm、Al+Zr:18μΩ
・cm、Al+Nd:14μΩ・cm、Al+Ta:18μ
Ω・cm、Al+Cu:5μΩ・cm、Al+Cr:16μ
Ω・cm、Al+Ni:9μΩ・cm、Al+Pt:11μ
Ω・cmであった。また、実施例1と同様にして評価した
ところほぼ同等の結果を得た。なお、Mg,Sc,N
b,Hf,Si,Mo,Mn,PdおよびW等の他の遷
移金属を用いた場合にも同様の結果が得られた。
【0103】<実施例7>実施例1において、電子注入
電極成膜の際、スパッタ圧力を0.45〜0.3Paに変
化させて成膜し、有機EL素子を得た。
【0104】成膜された電子注入電極薄膜をイオンエッ
チングしながらオージェ電子顕微鏡を用いてLi濃度を
調べたところ、保護電極側界面から1/3の距離での濃
度が4.6at%、さらに2/3の距離での濃度が7.0
at%であった。得られた有機EL素子について、実施例
1と同様に評価したところ、ほぼ同等の結果が得られ
た。
【0105】<実施例8>実施例7において、保護電極
を設けることなく有機EL素子を得、これを実施例7と
同様にして評価したところ、ほぼ同様の結果が得られ
た。
【0106】<実施例9>実施例1において、ターゲッ
トの組成を、Li:8.0at%、Cu:0.50at%、
Mg:0.93wt%、Zr:0.065wt%、Al:残
部とし、スパッタ圧力1.0Pa、投入電力は100Wと
した他は実施例1と同様にして有機EL素子を得た。成
膜された電子注入電極の膜組成を調べたところ、Li:
7.1at%、Cu:1.4wt%、Mg:0.87wt%、
Zr:0.11wt%、Al:残部であった。
【0107】得られた有機EL素子に乾燥アルゴン雰囲
気中で直流電圧を印加したところ、最高輝度として、1
4V、920mA/cm2 で42.000cd/m2 が得ら
れ、高輝度、高効率であった。また、10mA/cm2 の定
電流密度で連続駆動させたところ、初期には、6.6V
、660cd/m2 の緑色(発光極大波長λmax =530
nm)発光が観測された。輝度半減時間は950時間で、
その間の駆動電圧の上昇は2.5V であった。大きさ
が10μm を超えるダークスポットの発生および成長
は、500時間まで観測されなかった。
【0108】<実施例10>実施例9において、ターゲ
ットを変えて、電子注入電極の膜組成を、Li:2.2
at%、Cu: 3.2wt%、Mg:0.12wt%、Z
r:0.12wt%、Al:残部とし、その他は実施例9
と同様にして素子を作製した。
【0109】得られた有機EL素子について、実施例9
と同様にして評価したところ、初期には、6.8V 、
580cd/m2 の緑色(発光極大波長λmax =530n
m)発光が観測された。輝度半減時間は900時間で、
その間の駆動電圧の上昇は1.1Vであった。また大き
さが10μm を超えるダークスポットの発生および成長
は500時間まで認められなかった。
【0110】<実施例11>実施例1において、電子注
入電極を5nm、保護電極を300nm、とした他は実施例
1と同様にして有機EL素子を作製し、実施例1と同様
にして評価したところほぼ同様の結果が得られた。
【0111】<実施例12>実施例1において、ITO
透明電極を0.3mm幅で、その間隔が0.03mmとした
ストライプ状にパターニングし、電子注入電極と保護電
極が、0.3mm幅で、その間隔が0.03mmのストライ
プ状でITO透明電極と直交するように予め素子分離構
造体を設け、さらに保護電極のみが基板端部に設けられ
た取り出し電極に、回り込みにより接続されて、配線電
極として作用するようにメタルマスクを設置した以外
は、実施例1と同様にして64×256画素の単純マト
リクスディスプレイを作製した。
【0112】得られたディスプレイの画面の大きさは約
3.4インチで、これを輝度が100cd/m2 得られる
条件でマトリクス駆動(Duty1/64)したところ発光
ムラのない高品質で高精細な画像が得られた。ここで用
いた配線電極の膜比抵抗は3.6μΩ・cmであり、十分
に低抵抗な配線電極として作用したことが確認された。
またリーク電流による輝度の低下やクロストークもない
ことが確認された。
【0113】<実施例13>実施例1において、ITO
透明電極を0.3mm幅で、その間隔が0.03mmとした
ストライプ状にパターニングし、保護電極のみが基板端
部に設けられた取り出し電極に、回り込みにより接続さ
れて、配線電極として作用するようにメタルマスクを設
置し、実施例1と同様にして製膜した後、電子注入電極
と保護電極が、0.3mm幅で、その間隔が0.03mmの
ストライプ状でITO透明電極と直交するように通常の
ウエットプロセスを用いてパターニングして、実施例1
0と同様なディスプレイを作製した。
【0114】得られた有機ELディスプレイを実施例1
2と同様にして駆動したところ、ウエットプロセスで用
いた溶媒や、溶液の染み込みと思われる欠陥が若干見ら
れたものの、実施例9とほぼ同様な表示品質が得られ
た。
【0115】<比較例1>AlLi電子注入電極(Li
濃度28at%)を真空共蒸着にて形成し、さらに、減圧
を保ったまま、Al保護電極を真空蒸着にて形成した以
外は、実施例1と同様にして素子を作製し評価したとこ
ろ、初期は7.4V 、480cd/m2 、輝度の半減時間
は300時間で、その間の駆動電圧の上昇は3.3V
であった。また大きさが100μm を超えるダークスポ
ットの発生および成長が120時間で認められた。
【0116】<比較例2>Al保護電極を形成しなかっ
た他は、実施例1と同様にして素子を作製し評価したと
ころ、初期には6.5V 、550cd/m2 、輝度の半減
時間は650時間で、その間の駆動電圧の上昇は2.1
V であった。また大きさが100μm を超えるダーク
スポットの発生および成長が200時間で認められた。
【0117】<比較例3>実施例8において、保護電極
を設けることなく有機EL素子を作製し、評価したとこ
ろ、初期に8.1V 、500cd/m2 の発光しか確認す
ることができなかった。また、画面内に定常的な輝度の
明暗がはっきりと認められた。
【0118】
【発明の効果】本発明によれば、外部環境から十分に保
護され、電子注入電極と有機層界面での成膜性、密着性
を改善し、高効率で、ダークスポットの発生を抑制し、
輝度半減時間の長い、長寿命、高表示品質の有機EL素
子を実現できる。
【0119】また、電子注入電極と有機層界面での成膜
性、密着性、膜物性を改善し、高輝度、高効率、高表示
品質の有機EL素子を実現できる。
【0120】また、有機層側あるいはその反対側の面で
それぞれの機能に応じた膜界面物性を有する電子注入電
極を有し、高輝度、高効率で、しかも酸化や腐食され難
く、長寿命、高表示品質の有機EL素子を実現できる。
【0121】また、低抵抗の配線電極を有し、高速、小
電力で高精細の有機ELディスプレイを実現できる。
【0122】また、逆方向への電流漏れ(リーク電流)
が少なく、クロストロークや輝度ムラのない高表示品質
の有機ELディスプレイを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機EL素子の構成例を示す概念図である。
【符号の説明】
21 基板 22 ホール注入電極 23 ホール注入・輸送層 24 発光層 25 電子注入電極 26 保護電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大久 和寿 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 荒井 三千男 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホール注入電極と電子注入電極と、これ
    らの電極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、 前記電子注入電極は、スパッタ法で成膜され、かつLi
    を0.4〜14at%含有するAlLi合金であつて、 この電子注入電極の有機層と反対側に、Al、Alと遷
    移金属(ただしTiを除く)、Tiおよび窒化チタンの
    いずれか1種以上を含有する保護電極を有する有機EL
    素子。
  2. 【請求項2】 ホール注入電極と電子注入電極と、これ
    らの電極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、 前記電子注入電極は、スパッタ法で成膜され、かつLi
    を0.1〜20at%含有するAlLi合金であつて、 この電子注入電極の有機層と反対側に、Al、Alと遷
    移金属(ただしTiを除く)、Tiおよび窒化チタンの
    いずれか1種以上を含有する保護電極を有し、 前記電子注入電極は、さらに副成分としてCu、Mgお
    よびZrの1種または2種以上をこれらの総量に対し、
    それぞれ、 Cu: 10wt%以下、 Mg: 5wt%以下、 Zr:0.5wt%以下 含有する有機EL素子。
  3. 【請求項3】 ホール注入電極と電子注入電極と、これ
    らの電極間に設けられた1種以上の有機層とを有し、 前記電子注入電極は、スパッタ法で成膜され、かつLi
    を0.1〜20at%含有するAlLi合金であつて、 前記電子注入電極は、有機層側にLiが多く、保護電極
    側にLiが少ないLi濃度勾配を有する有機EL素子。
  4. 【請求項4】 さらに、前記電子注入電極の有機層と反
    対側に保護電極を有する請求項3の有機EL素子。
  5. 【請求項5】 前記保護電極は、Al、Alと遷移金属
    (ただしTiを除く)、Tiおよび窒化チタンのいずれ
    か1種以上を含有する請求項4の有機EL素子。
  6. 【請求項6】 前記電子注入電極はLiを0.4〜14
    at%含有する請求項2〜5のいずれかの有機EL素子。
  7. 【請求項7】 前記電子注入電極は、Liを0.4〜
    6.5(ただし6.5を含まない)at%含有する請求項
    1〜6のいずれかの有機EL素子。
  8. 【請求項8】 前記電子注入電極は、Liを6.5〜1
    4at%含有する請求項1〜6のいずれかの有機EL素
    子。
  9. 【請求項9】 前記保護電極はAlまたはAlと遷移金
    属であって、配線電極として機能する請求項1〜8のい
    ずれかの有機EL素子。
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