JPH10184665A - 動圧軸受 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 レーザプリンタなどに使用される高速回転の
ポリゴンミラースキャナモータなどの動圧軸受におい
て、高速回転による軸受部の空気の排出や潤滑油の排出
を解決し、優れた回転安定性と軸受寿命の改良を目的と
する。 【解決手段】 溝幅比ｋを溝角度βに応じて、ｋ×ｓｉ
ｎ（β）をほぼ、０．１としたものである。これによ
り、溝角度をより鋭角にしたときの軸受寿命の低下や高
速回転での回転安定性を阻害する空気の軸受部への滞留
を解消することができる等の効果を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はレーザビームプリン
タのポリゴンミラースキャナモータなどに使用される高
速回転・高回転精度に適した動圧軸受に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】従来、この高速回転に適する軸受の一つ
として、特開平３−１６３２１２に記載されているもの
がある。図３にこの動圧軸受の構造を示す。図３におい
て、２組の動圧発生溝８，９の間に設けられた空所７に
閉じこめられた空気は高速回転時に発熱等で膨張し外部
へ出ようとするが、この時、溝８，９の角度を２０度未
満の鋭角とし、流速に対する抵抗を少なくし、かつ溝の
深さを４μｍ以上とし、空気をスムーズに排出させる構
成としていた。この事により、回転時に軸受部に空気が
滞留することなく安定した回転を得ていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
従来の課題を解決するものであり、高速回転・高回転精
度に適した動圧軸受を提供することを目的とする。

【０００４】しかしながら、高速回転時のアンバランス
等による振れ回りの圧力（以下、スクィーズアクション
と呼ぶ）により潤滑油が軸受部から逃げようとする挙動
に対しては、溝角度が鋭角になると発生する動圧が低下
し、不利となる為、寿命の点で不十分であった。

【０００５】また、特に１ｍ／ｓｅｃを超えるような周
速では、溝の深さが、深くなると潤滑油による遠心力の
影響で空気の排出が阻害されてくることも分かってき
た。本発明は、このような従来の課題を解決するもので
あり、高速回転性能に優れ、安定した潤滑油の保持を実
現する軸受を提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明は、動圧発生溝の幅を溝角度に応じて規制した
もので、溝角度が小さいときには空気の通り道である溝
の幅を広くし、空気の排出をスムーズにし、かつスクィ
ーズアクションによる潤滑油への圧力を下げる事によ
り、潤滑油の軸受部からの排出を押さえるものであり、
動圧発生溝の幅ｄと溝と溝のピッチｅとの比を溝幅比ｋ
＝ｄ／ｅとし、溝の回転方向に対する角度をβとしたと
き、ｋ×ｓｉｎ（β）をほぼ、０．１としたものであ
る。

【０００７】これにより、溝角度をより鋭角にしたとき
の軸受寿命の低下や高速回転での回転安定性を阻害する
空気の軸受部への滞留を解消することができる。また、
この時、溝深さもある程度深く設定できる。

【０００８】また、低速の回転時には、むしろ軸受剛性
を高める必要性があるため、溝幅比ｋは小さくかつ角度
βは大きくする方が良い。

【０００９】

【発明の実施の形態】本発明の請求項１に記載の発明
は、軸とこの軸に回転自在に挿入される中空スリーブと
を有し、前記軸又はスリーブ内周のいずれか一方には少
なくとも２組の動圧発生溝を有し、前記軸とスリーブの
間に潤滑油が保持され、前記動圧発生溝の幅ｄと溝と溝
のピッチｅとの比をｋ＝ｄ／ｅとし、溝の回転方向に対
する角度をβとしたとき、ｋ×ｓｉｎ（β）をほぼ、
０．１とした動圧軸受としたものであり、動圧発生溝の
幅を溝角度に応じて規制したもので、溝角度が小さいと
きには空気の通り道である溝の幅を広くし、空気の排出
をスムーズにし、かつスクィーズアクションによる潤滑
油への圧力を下げる事により、潤滑油の軸受部からの排
出を押さえるという作用を有する。

【００１０】請求項２に記載の発明は、溝角度βを１５
度未満の鋭角とし、回転の周速が１ｍ／ｓｅｃ以上とし
たものであり、高速の回転において、特に回転性能と潤
滑油の保持性能を向上させるという作用を有する。

【００１１】請求項３に記載の発明は、溝幅比ｋが、
０．３５〜０．６５としたもので、溝部の幅と非溝部の
幅をほぼ同じとし、非溝部の潤滑油の量と溝の潤滑油の
量がほぼ同じとなるように設定したことにより、スクィ
ーズアクションによって排出されようとする潤滑油がス
ムーズに溝部へ回るという作用を有する。

【００１２】

【実施例】以下本発明の実施例について、図面を参照し
て説明する。

【００１３】図１，図２において回転軸１はスリーブ２
に挿入され、スリーブ２には、その軸受部６に２組の動
圧発生溝４，５が、溝角度β１，β２で設けられてお
り、そのスリーブ２の軸受部６と回転軸１との間には、
クリアランスΔＲを保って潤滑油３が満たされている。
この時、溝幅比ｋ＝ｄ／ｅは、溝角度との間に、ｋ×ｓ
ｉｎ（β１）、ｋ×ｓｉｎ（β２）≒０．１（0.09〜0.
12程度）の関係が設定されている。

【００１４】上記構成により、回転軸１が例えば、アン
バランス等で振られる時働くスクィーズアクションが発
生した場合、軸受部６の面に働く力は、非溝部で大きく
なるが、この力によって排出されようとする潤滑油３は
溝４，５へ逃げようとし、これが溝に沿って、圧力の働
いている方向と逆方向の内周側へ回り込む分と軸受の外
側へ逃げようとする分に分けられるが、この溝幅比ｋを
大きくとることにより、潤滑油３の外側へ逃げる分が減
少する。一方、この外側へ逃げる圧力が高い場合、溝角
度を大きくし、動圧を大きくすればよいが、高速回転で
は今度は空気の排出を阻害するため回転安定性が悪くな
る。この角度β１，β２と溝幅比ｋを前記の一定の関係
内で設定することにより、高速回転での回転安定性と潤
滑油３の保持性能のバランスを保つことができる。従っ
て、溝幅比ｋはこの潤滑油３がスクィーズアクションに
よって排出される量との釣り合いから０．５に設定する
のが理想である。しかしながら、実際の加工上の公差の
問題で、０．３５〜０．６５迄の設定とし、この設定で
も効果は十分発揮されることを確認した。

【００１５】特に、回転軸１の周速が１ｍ／ｓｅｃを超
えるような高速回転では、溝角度β１，β２を１５度未
満に設定すると更に効果を発揮する。

【００１６】

【発明の効果】上記実施例の記載から明らかなように、
請求項１記載の発明によれば、高速回転において、潤滑
油の保油性と空気の排出がよくなり、高速回転の安定性
と軸受寿命の向上が図れるという有利な効果が得られ
る。また、請求項２記載の発明によれば、数万ｒｐｍな
ど回転軸の周速が１ｍ／ｓｅｃを超える回転において、
上述の効果が更に発揮されるものである。更に、請求項
３記載の発明によれば、潤滑油の排出に対して有利とな
り、優れた信頼性を得るという効果を奏するものであ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例１による動圧軸受を示す説明図

【図２】本発明の実施例１における動圧軸受の動作説明
のための部分断面図

【図３】従来の動圧軸受の構成を示す説明図

【符号の説明】

１ 回転軸 ２，１０ スリーブ ３ 潤滑油 ４，５，８，９ 動圧発生溝 ６ 軸受部

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】軸とこの軸に回転自在に挿入される中空ス
   リーブとを有し、前記軸又はスリーブ内周のいずれか一
   方には少なくとも２組の動圧発生溝を有し、前記軸とス
   リーブの間に潤滑油が保持され、前記動圧発生溝の幅ｄ
   と溝と溝のピッチｅとの比をｋ＝ｄ／ｅとし、溝の回転
   方向に対する角度をβとしたとき、ｋ×ｓｉｎ（β）を
   ほぼ、０．１とした動圧軸受。
2. 【請求項２】溝角度βを１５度未満の鋭角とし、回転の
   周速が１ｍ／ｓｅｃ以上である請求項１記載の動圧軸
   受。
3. 【請求項３】溝幅比ｋが、０．３５〜０．６５とした請
   求項１および／または請求項２記載の動圧軸受。