JPH023844B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、道路橋等におけるプレストレストコ
ンクリート床版の架設工法に関する。

近年、交通量の増大に加えて車輛の走行速度と
重量が大きくなり、道路の僅かな弱点でも破損を
受けるため、道路維持が一段と難かしくなつてき
ている。なかでも鋼桁上に鉄筋コンクリート床版
を架設したいわゆる鋼橋では、その鉄筋コンクリ
ート床版の損傷が多くなつており、その対策とし
て新床版においては、床版厚の増加、主桁剛度差
による付加曲げモーメントの考慮、およい配筋方
法等について、建設省より新しい指導がなされて
いる。

ところで、この種のコンクリート床版を架設す
る場合の従来工法は、主桁上に支保工・型枠等を
組み、次いで下面配筋および上面配筋を行なつた
後、コンクリートを打設し、この打設コンクリー
トの硬化後に脱型するという工法が主体であつ
た。この工法では、コンクリートの全てを現場打
ちする工法であるため、床版自体に継目が形成さ
れず、かつ全体的な工費も廉価になる利点を有す
るが、この工法による床版は通常の鉄筋コンクリ
ート床版であるため、前述した理由で損傷を受け
やすい問題があつた。

一方、他の工法として、予め工場等で製作した
プレキヤスト床版を用いて主筋方向すなわち幅員
方向はRC構造とし、配力筋方向すなわち橋軸方
向に縦締め用プレストレスを導入し、主桁上に目
地コンクリートを打設して主桁と一体化する工法
も一部で実施されている。この工法では、鉄筋コ
ンクリート床版の橋軸方向にプレストレスを導入
することにより、床版自体の強度、耐久性をある
程度向上できる利点を有する反面、次のような欠
点があつた。すなわち、床版の橋軸方向に縦締用
プレストレスを導入するため、その橋軸方向のあ
る一定区間ごとに作業を不連続的に進めてゆく必
要があること。さらに、プレキヤスト床版は相当
の重量物となるため、その製造地（工場等）から
架設現場までの運搬に多大な費用がかかる上に高
所での架設作業が困難となり、このため全体的な
工費も高くつき、しかも目地コンクリート部分が
床版の継目となるため、強度上の不連続部分が形
成されやすいなどの欠点があつた。

本発明は、以上のような点を考慮してなされた
もので、床版に対し実質的にその橋軸方向および
幅員方向の両方向に連続的にプレストレスを導入
し得て強度、耐久性に優れた床版を形成すること
ができ、しかも強度上の不連続部分もなく、かつ
全体的な工費も廉価で、現場での施工性も良好な
道路橋等におけるプレストレストコンクリート床
版の架設工法を提供することを目的とする。

以下、本発明を図面に示す一実施例に基づいて
説明する。

本発明による工法は、第１図に示すように、予
め工場等において、孔１ａ…を有する支持梁１の
上下に主筋２および配力筋２′からなる鉄筋メツ
シユを組み付け、支持梁１より吊材３を介してプ
レートよりなる型枠４を取り付けて成るいわゆる
セミプレハブ床版５を製作しておき、これを現場
に運搬してきて同図に示すように主桁６，６上に
順次並べて架設する。なお、セミプレハブ床版５
の型枠４としては、第２図に示すように、主桁６
の上部フランジ６ａ上に立設したジベル７にそれ
ぞれ対応する部分に大径の孔８を設けてあり、こ
の孔８をジベル７にはめることにより、セミプレ
ハブ床版５を架設した状態において、これらの孔
８から前記ジベル７が型枠４の上面上へそれぞれ
臨むように構成されている。なお、特に図示しな
かつたが、セミプレハブ床版５の型枠４にはラツ
プ代が設けてあり、セミプレハブ床版５どうしを
並べて架設した状態でこれらのラツプ代部分が互
いに重なるように配慮されている。

このようにして、主桁６，６上にセミプレハブ
床版５を順次並べて架設したら、次いでこれらセ
ミプレハブ床版５にコンクリートを打設する前
に、第２図に示すように下面のみが開口した中空
の抜型９を各ジベル７にそれぞれ被せて型枠４上
にセツトし、これによつて各ジベル７、および孔
８によつて露出した上部フランジ６ａの表面にコ
ンクリートが付着しないようにシールしておく。
そしてさらに、打設されるコンクリートにプレス
トレスを導入するために必要な本数のPC鋼材１
０を、第３図および第４図に示すように平面的に
見てＸ字状に交差する如くセミプレハブ床版の上
下筋の中間に幅員方向斜めに差し通して配設して
おく。ここで、前記抜型９としては、その中空部
内径を孔８の径よりも大きく、また、後で脱型し
やすいように下部に向かうにしたがいその外形を
しだいに小さく形成しておくのが好ましい。ま
た、前記PC鋼材１０の幅員方向に対する傾き角
θは通常は30°前後で充分であるが、必要ならば
45°程度でも良い。しかし、何れの場合でも、１
本のPC鋼材１０が第３図に示すように少なくと
も隣り合う２つのセミプレハブ床版を貫通するよ
うに斜めに配する必要がある。なお、このPC鋼
材１０としては、打設コンクリート中において緊
張可能な状態となるように、例えばPC鋼線の周
りにグリース等の潤滑剤を塗布してこれをプラス
チツクシースで被覆して成るいわゆるアンボンド
ワイヤーでも、あるいはPCワイヤーの何れでも
良い。なお、PCワイヤーを使用する場合には、
予めセミプレハブ床版内にシース管をセツトし、
これにPCワイヤーを差し通して配設する。

このようにして、抜型９およびPC鋼材１０の
セツトを終えたら、次いでコンクリート１１を打
設して所定期間養生し、コンクリートの硬化後に
前記各PC鋼材１０の両端を順次緊張してプレス
トレスを導入する。このプレストレス導入作業を
実施すると、硬化したコンクリート１１には幅員
方向および橋軸方向の両方向に圧縮力が作用す
る。すなわち、各PC鋼材１０は第３図に示すよ
うに平面的に見てＸ字状に交差する如く幅員方向
斜めに配されているから、このPC鋼材１０によ
る圧縮力のうち、PC鋼材１０の傾き角θに対応
する分力が橋軸方向の圧縮力として作用する。

ところで、この両方向の圧縮力は、硬化したコ
ンクリート１１と一体化している各セミプレハブ
床版５にも当然作用し、これによつて各セミプレ
ハブ床版５はそのコンクリート１１と共に橋軸方
向、幅員方向の両方向もしくは一方向に主桁６，
６上を若干移動させられる力を受けることにな
る。ここで、型枠４上に臨ませたジベル７は抜型
８によつてコンクリート１１との一体化が阻止さ
れており、かつ型枠４に設けた孔８はジベル７よ
りも充分に大径となつているので、各ユニツトス
ラブ５は何れの方向にも移動自在であり、この結
果、プレストレスの導入は支障なく行なわれる。
また、このプレストレス導入作業を行なう際、前
記PC鋼材１０の両端は最初の部分を除けばその
全てが幅員方向両端に位置するので、現場におけ
るプレストレス導入作業が行ないやすく、しかも
コンクリート１１さえ硬化しておれば、連続的に
その作業を進めてゆくことができる。

以上のようにして、プレストレスを導入した
ら、次に抜型９を脱形してこの部分にコンクリー
トを充填すれば、第３図に示すようなプレストレ
ストコンクリート床版Ａが形成される。このよう
にして形成された床版Ａは、その橋軸方向および
幅員方向の何れの方向にもある定まつた圧縮応力
度（プレストレス）が与えられ、この結果、強度
および耐久性に優れた床版が構成される。なお、
床版Ａはジベルまわりの後打ちコンクリートを介
して主桁６，６に一体化される。

なお、実施例においては、型枠４を一体物のプ
レートで形成し、かつ主桁６，６上に位置する部
分にジベル７との干渉を除く孔８を設けた例を示
したが、例えば第５図に示すように型枠４′を分
割したプレートで形成し、かつ図示のように上部
フランジ６ａ上に載る程度の範囲で互いに間隔を
あけて設けた場合には、その間隔と等しい幅でか
つジベル７との干渉を除く孔８′を有する帯状の
ゴム板等からなる捨て型枠１２を使用し、この上
に抜型９をセツトするようにしても良い。

また、実施例では、支持梁１に設けた孔１ａの
一つに対し、PC鋼材１０を２本通した例を示し
たが、例えば第６図に示すように、孔１ａの数を
増やして一つの孔１ａに対し１本づつ通すように
しても良い。

以上詳述したように、本発明は、上方に延びる
ジベルを複数設けた主桁上に、主筋および配力筋
等の必要な鉄筋を組むと共にその下に型枠を取付
けて成るセミプレハブ床版を、前記型枠に形成し
た前記ジベルよりも大径の孔をジベルにはめるこ
とにより、複数並べて架設し、次いでこれらセミ
プレハブ床版にコンクリートを打設する前に、下
面のみが開口した中空かつ打設コンクリート内か
ら上方に脱型可能な抜型を、前記孔および前記ジ
ベルに被せることにより、ジベルおよび主桁の上
面に打設コンクリートが付着しないようにシール
しておくと共に、必要本数のPC鋼材を、少なく
とも隣り合う２つのセミプレハブ床版にわたり幅
員方向斜めであつて平面的に見てＸ字状に交差さ
せかつ硬化後の打設コンクリート中において緊張
可能な状態に配しておき、打設コンクリートの硬
化後に前記PC鋼材を順次緊張してプレストレス
を導入し、床版を形成するようにしたから、床版
に対し実質的にその橋軸方向および幅員方向の両
方向に連続的にプレストレスを導入し得て強度、
耐久性に優れた床版を形成することができ、ま
た、コンクリートは現場打ちであるので、継目に
よる強度上の不連続部分も形成されず、かつ、全
体的な工費も兼価であり、さらに、予め工場等で
製作しておいたセミプレハブ床版を架設する工法
としているので現場での配筋作業も少なく、また
プレストレスの導入作業も容易に行なえて現場で
の施工性も良好であるなど種々の優れた効果があ
る。

【図面の簡単な説明】

図は本発明の実施例を説明するために示したも
ので、第１図は主桁上に架設したセミプレハブ床
版の概略断面図、第２図は型枠が主桁上に位置す
る部分の斜視図、第３図は架設された床版の概略
平面図、第４図は第１図ので示す部分の拡大図
（支持梁を除く）、第５図および第６図はそれぞれ
本発明の他の実施例を示す第２図同様の斜視図で
ある。 １……支持梁、２……主筋、２′……配力筋、
４，４′……型枠、５……セミプレハブ床版、６
……主桁、７……ジベル、８，８′……孔、９…
…抜型、１０……PC鋼材、１１……コンクリー
ト、１２……捨て型枠。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 上方に延びるジベルを複数設けた主桁上に、
   主筋および配力筋等の必要な鉄筋を組むと共にそ
   の下に型枠を取付けて成るセミプレハブ床版を、
   前記型枠に形成した前記ジベルよりも大径の孔を
   ジベルにはめることにより、複数並べて架設し、
   次いでこれらセミプレハブ床版にコンクリートを
   打設する前に、下面のみが開口した中空かつ打設
   コンクリート内から上方に脱型可能な抜型を、前
   記孔および前記ジベルに被せることにより、ジベ
   ルおよび主桁の上面に打設コンクリートが付着し
   ないようにシールしておくと共に、必要本数の
   PC鋼材を、少なくとも隣り合う２つのセミプレ
   ハブ床版にわたり幅員方向斜めであつて平面的に
   見てＸ字状に交差させかつ硬化後の打設コンクリ
   ート中において緊張可能な状態に配しておき、打
   設コンクリートの硬化後に前記PC鋼材を順次緊
   張してプレストレスを導入することを特徴とする
   道路橋等におけるプレストレスコンクリート床版
   の架設工法。