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JPH0978179A - 防振鋳鉄およびその製造方法 - Google Patents

防振鋳鉄およびその製造方法

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Publication number
JPH0978179A
JPH0978179A JP7236786A JP23678695A JPH0978179A JP H0978179 A JPH0978179 A JP H0978179A JP 7236786 A JP7236786 A JP 7236786A JP 23678695 A JP23678695 A JP 23678695A JP H0978179 A JPH0978179 A JP H0978179A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cast iron
less
weight
vibration
cast
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP7236786A
Other languages
English (en)
Inventor
Takanobu Nishimura
隆宣 西村
Masanori Kihata
正法 木畑
Masahiko Iwai
昌彦 岩井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toshiba Corp filed Critical Toshiba Corp
Priority to JP7236786A priority Critical patent/JPH0978179A/ja
Publication of JPH0978179A publication Critical patent/JPH0978179A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】焼入れ処理やオーステンパー処理など金属材料
を高温から急冷する熱処理を施すことなく、鋳造材のま
まで高い減衰特性を有すると同時に耐摩耗性および高強
度を兼ね備えた防振鋳鉄を提供する。 【解決手段】最大長さが250μm以上の片状黒鉛を金
属組織中に析出した鋳鉄であり、マルテンサイト組織お
よびベイナイト組織の少くとも一方の金属組織が面積比
で30%以上であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、防振鋳鉄およびそ
の製造方法に係り、特に粗大な黒鉛組織を有し、鋳放し
材(as cast 材)のままでも優れた振動減衰能を有する
防振鋳鉄およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に基地組織中に黒鉛を有する鋳鉄材
料は、振動減衰性に優れているため、工作機械などの機
器の基台の構成材として広く使用されている。上記振動
減衰性は、鉄の基地に伝達されてきた振動が黒鉛の界面
において摩擦運動を起こし、振動エネルギーが熱エネル
ギーに転化し消失するという減衰機構に主に由来するも
のである。一般に上記鋳鉄材料は、複数の減衰機構の組
合せによって振動を減衰する複合材料型の振動減衰材料
として分類されている。
【0003】従って黒鉛組織が粗大な鋳鉄材料ほど振動
減衰性に優れている。また黒鉛組織の違いによる鋳鉄材
料の分類によれば、球状黒鉛鋳鉄よりも片状黒鉛鋳鉄の
方が振動減衰性は優れており、さらにJIS規格に規定
されるFC300材よりもFC100材の方が振動減衰
性が高くなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記のよ
うに黒鉛組織が粗大化するに従って鋳鉄材の強度および
基地組織の硬さは低下する、そのため、高強度および高
精度が要求される機械部品に適用するに際しては、強度
不足によるたわみや変形が大きな問題となる場合が多か
った。また、軟質であるために、耐摩耗性が要求される
ような摺動部を有する機械部品には適用できない問題点
があった。
【0005】一方、ニレジスト鋳鉄や低膨張鋳鉄として
知られているように、20重量%以上の高Ni含有のオ
ーステナイト鋳鉄においては、他の一般鋳鉄と比較して
さらに優れた振動減衰性が得られている。しかしなが
ら、その基地組織はオーステナイト組織を主体としてい
るため、硬さはビッカース硬度(Hv)で200以下と
軟質で耐摩耗性が不十分であるため、同様に摺動部品へ
の適用には限界があった。
【0006】近年、環境規制の厳格化に伴い、鋳造工場
における型ばらし機や砂落し機などの振動機械や岩石の
粉砕機、または土木建設機械や道路工事用機械など、騒
音や振動の発生源となる機器を構成する部品の振動減衰
性を高める要望が益々高くなっている。このような騒音
や振動を発生する機器を構成する部品材料としては、単
に振動減衰性のみではなく、耐摩耗性や高強度特性をも
兼ね備えた材料が要求されている。
【0007】上記のような要求に対応するため、従来か
ら鋳鉄の基地の硬さや強度を高める目的で、鋳造材を焼
入れ処理したり、オーステンパー処理したり、各種の熱
処理を実施して特性改善を行うことが試行されている。
【0008】しかしながら、鋳造後の熱処理によって鋳
鉄材に変形が起こり易い問題点がある。特に、近年、鋳
鉄を用いた製品の大型化や形状の複雑化に伴い、上記熱
処理による変形が顕著になり、製品の信頼性を損ねてい
る現状である。そのため、可能な限り熱処理を実施せず
に鋳造したままの状態、いわゆる鋳放し材(as cast
材)の状態で、ある程度の硬さや強度を併せ持った防振
鋳鉄材料を確保することが強く望まれている。
【0009】本発明は上記問題点および要請に対応する
ためになされたものであり、焼入れ処理やオーステンパ
ー処理など金属材料を高温から急冷する熱処理を施すこ
となく、鋳造材のままで高い減衰特性を有すると同時に
耐摩耗性および高強度を兼ね備えた防振鋳鉄を提供する
ことを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明に係る防振鋳鉄は、最大長さが250μm以
上の片状黒鉛を金属組織中に析出した鋳鉄であり、マル
テンサイト組織およびベイナイト組織の少くとも一方の
金属組織が面積比で30%以上であることを特徴とす
る。
【0011】また、マルテンサイト組織を有する鋳鉄
は、3.0重量%以上4.5重量%以下のCと,0.5
重量%以上5.0重量%以下のSiと,0.3重量%以
上3.0重量%以下のMnと,6.0重量%以上18重
量%以下のNiと,2重量%以下のMoと,1重量%以
下のCuと,残部Feおよび不純物とから構成されるこ
とを特徴とする。
【0012】さらに、ベイナイト組織を有する鋳鉄は、
3.0重量%以上4.5重量%以下のCと,0.5重量
%以上5.0重量%以下のSiと,0.3重量%以上
2.0重量%以下のMnと,3.0重量%以上7.0重
量%以下のNiと,2重量%以下のMoと,2.0重量
%以下のCuと,残部Feおよび不純物とから構成され
ることを特徴とする。
【0013】また片状黒鉛の最大長さは250μm以上
600μm以下に設定するとよい。上記金属組織および
組成を有する防振鋳鉄は、固有減衰能が20%以上であ
り、引張強さが150N/mm2 以上であり、かつビッ
カース硬度(Hv)が300以上である。
【0014】本発明に係る防振鋳鉄の製造方法は、3.
0重量%以上4.5重量%以下のCと,0.5重量%以
上5.0重量%以下のSiと,0.3重量%以上3.0
重量%以下のMnと,6.0重量%以上18重量%以下
のNiと,2重量%以下のMoと,1重量%以下のCu
と,残部Feおよび不純物とから成る鋳鉄材料を溶解
し、所定形状に鋳造した後に、得られた鋳造材を250
〜450℃または550〜650℃の温度範囲で焼戻し
熱処理することにより靭性値を高めることを特徴とす
る。
【0015】ここで片状黒鉛組織は、鋳鉄基地と剛性が
大きく異なるため、鋳鉄基地が伝達する振動を、黒鉛と
の界面において摩擦運動に変えて、その振動を吸収する
という、いわゆる複合型減衰作用を発揮して大きな減衰
効果を発揮する。
【0016】図1は、オーステナイト基地組織中に、片
状黒鉛を析出させた鋳鉄材において、片状黒鉛の最大長
さと固有減衰能(SDC)との関係を示すグラフであ
り、片状黒鉛の最大長さが約200μmおよび約700
μmである鋳鉄の金属組織を示す模式図を併せて示して
いる。各模式図において、灰白色部がマトリックス金属
組織であり、線状黒色部が析出した片状黒鉛である。図
1において、片状黒鉛の最大長さが約400μmまで増
大化するのに比例して鋳鉄材の固有減衰能(SDC)も
増加する。片状黒鉛の最大長さが400μmを超える領
域では固有減衰能の大きな変化はなく、ほぼ飽和状態に
なる。
【0017】一方で、片状黒鉛を有する鋳鉄材の黒鉛の
最大長さが粗大になるほど鋳鉄材の強度が低下する難点
がある。従って、特に強度が要求される部品に鋳鉄材を
用いる場合には、片状黒鉛の最大長さについて適正な領
域を選択する必要がある。そこで本願発明においては、
片状黒鉛鋳鉄の固有減衰能と黒鉛の最大長さとの関係を
示す図1の曲線の屈曲点の前後に渡る領域が、防振鋳鉄
として望ましい黒鉛組織を与える領域として特定した。
すなわち、減衰性および強度を共に満足させるために
は、片状黒鉛の最大長さは250μm〜600μmの範
囲に設定されるが、さらに350〜400μmの範囲
が、さらに好ましい。
【0018】基地組織としてのマルテンサイト組織は、
高硬度の組織であり、鋳鉄材の強度を高めると同時に、
減衰性をも向上させる組織である。マルテンサイト組織
は双晶型の結晶構造を有し、双晶の界面における振動エ
ネルギーの吸収によって高い振動減衰性が得られる。ま
たマルテンサイト組織は、粗大な片状黒鉛の析出によっ
て低下した鋳鉄材の耐摩耗性および強度を補償する作用
も有する。
【0019】このマルテンサイト組織は、従来、一般的
に鉄−炭素合金系に焼入れ処理などを施すことによって
得られる組織であるが、合金組成を本願のように調整す
ることによって、鋳放し材のままでも形成することがで
きる。
【0020】一方、ベイナイト組織は炭化物とフェライ
トとの複合組織であり、鋳鉄材に硬さおよび高靭性を付
与すると同時に高い減衰性を付与する組織である。この
ベイナイト組織は、従来一般的に鋳造材にオーステンパ
ー処理などの熱処理を施すことによって得られる組織で
あるが、合金組成を本願のように調整することによっ
て、鋳放し材のままの状態でも形成することができる。
【0021】本発明が目的とする高い減衰特性と良好な
耐摩耗性および強度と共に兼ね備えた防振鋳鉄を得るた
めには、上記マルテンサイト組織およびベイナイト組織
の少くとも一方の金属組織が面積比で30%以上の割合
で形成されることが必要である。
【0022】また前記したように、減衰性,強度および
耐摩耗性を必要とする機械部品については、大型化や形
状の複雑化がより進む傾向にあり、機械部品の仕様によ
っては実質的に熱処理を施すことが困難になる場合があ
る。これらの機械部品に鋳鉄材を適用する場合には、熱
処理を施すことなく鋳放し材(as cast 材)のままで、
上記マルテンサイト組織またはベイナイト組織を効果的
に形成できる合金組成に設定する必要がある。そこで本
願発明では前記のような合金組成を採用している。
【0023】請求項2記載の防振鋳鉄は、鋳放し材のま
まで相当量のマルテンサイト組織と粗大な片状黒鉛組織
とを同時に形成するために必要な鋳鉄の成分組成を示し
ている。
【0024】C(炭素)は金属組織中に片状黒鉛組織を
析出形成するための必須元素であり、Cの含有量が3.
0重量%未満では片状黒鉛の長さが小さく十分な振動減
衰性が得られない。一方、Cの含有量が4.5重量%を
超えると、鋳造時に合金溶湯が凝固する前に黒鉛が溶湯
面に浮上してしまうため、結果的に浮上黒鉛が鋳造品の
欠陥となるとともに、凝固時点での残留炭素量が低下す
るため、最大長さが250μm以上となるような、十分
に粗大な片状黒鉛組織が得られない。従ってCの含有量
は、3.0〜4.5重量%の範囲に設定される。
【0025】Si(けい素)は、黒鉛化を促進して鋳鉄
材の減衰性を高めるとともに、溶湯の流動性を高めて欠
陥のない鋳造品を形成するために有効な成分である。S
iの含有量が0.5重量%未満では上記黒鉛化作用およ
び流動性の改善効果が少ない。一方、Si含有量が5.
0重量%を超えると、Ni(ニッケル)と反応して金属
間化合物を形成し、却って黒鉛化促進効果が低下してし
まう。従って、Siの含有量は0.5〜5.0重量%の
範囲に設定されるが、2〜3.5重量%の範囲が、より
好ましい。
【0026】Ni(ニッケル)は、鋳鉄材の耐食性を大
幅に向上させると同時に、基地と黒鉛組織との両方に大
きく影響する主要な合金元素である。合金成分として6
〜18重量%含有させることによって、鋳放し材(as c
ast 材)のままで金属組織中に面積比で50%以上のマ
ルテンサイト組織を形成することができる。Ni含有量
が6重量%未満の場合においては、マルテンサイト化が
不十分であり、減衰性が低いパーライト組織を主体とし
た基地組織となってしまう。一方、Ni含有量が18重
量%を超える場合には、オーステナイト組織が主体とな
り鋳鉄材の硬さや強度の低下を引き起こす。またNi
は、鉄中のCの溶解度を下げる傾向があり、これにより
黒鉛組織における片状黒鉛の粗大化を促進する効果も有
する。
【0027】Mo(モリブデン)は鉄系材料の焼入れ性
改善に大きな効果を示す元素であり、Niと共に合金化
すると鋳放し材のままで基地組織のマルテンサイト化を
促進する。その含有量が2%を超えると炭化物MoCを
形成し、却ってMoの焼入れ性改善効果が低下してしま
う。そのためMoの含有量は2重量%以下に設定され
る。
【0028】Mn(マンガン)およびCu(銅)は、そ
れぞれ3重量%まではNiと合金化することによってN
iの代替元素として働く性質を有する。但し、Cuは鋳
鉄材の靭性の低下を生じ易いため、その許容添加量は1
重量%以下に設定される。また鋳放し材の状態でマルテ
ンサイト組織を50%以上の面積比で形成するために
は、〔Ni+0.5Mn+Cu〕で表わされる合計添加
量を7〜19重量%の範囲に設定することが望ましい。
【0029】請求項3記載の防振鋳鉄は、鋳放し材の状
態で相当量のベイナイト組織を形成するために必要な鋳
鉄の成分組成を示している。なおCとSiについては、
前記マルテンサイト組織を有する鋳鉄と同様に粗大な黒
鉛組織を形成するための条件である。
【0030】Mo(モリブデン)は、金属組織のベイナ
イト化に最も効果がある合金元素であり、2重量%以下
の割合で添加される。鋳放し材の状態でベイナイト組織
を形成するためには、少くとも0.5重量%のMoが必
要であるが、2.0重量%を超えて合金化すると炭化物
を形成して減衰効果が低下してしまう。従ってMoの添
加量は0.5〜2.0重量%の範囲に設定することが好
ましい。
【0031】またNiは、上記Moによるベイナイト化
を促進する元素であり、効果的な配合量は3〜7重量%
の範囲である。Niの配合量が7重量%を超える場合に
は、マルテンサイト組織が増加するために、相対的にベ
イナイト組織による鋳鉄材の靭性改善効果が減少する傾
向がある。
【0032】Mn(マンガン)およびCu(銅)は、前
記マルテンサイト組織を形成した鋳鉄の場合と同様に、
Niの代替元素として若干量の添加が許容される。しか
しながら、過量の添加は鋳鉄材の靭性の低下を招くた
め、その添加量の上限は両者ともに2.0重量%であ
る。
【0033】本発明に係る防振鋳鉄は、上記のような所
定組成を有する材料を溶解し、所定の形状に鋳造し、鋳
造凝固時に金属組織中に片状黒鉛を析出せしめて製造さ
れる。
【0034】また請求項2に記載した、マルテンサイト
組織を形成した鋳放し材においては、マルテンサイト組
織の伸びがほとんど発生しないため、強度や靭性値が低
くなる場合があるが、適正な温度範囲で焼戻し熱処理を
施すことにより、鋳鉄材の強度および靭性をさらに改善
することができる。すなわち鋳放し材を250〜450
℃または550〜650℃の温度範囲において焼戻し熱
処理して、結晶歪みをわずかに解放することにより、強
度や伸びを改善でき衝撃値が高い防振鋳鉄を得ることが
できる。但し、前記合金組成を有する鋳放し材の場合、
焼戻しの温度が450〜550℃の範囲においては、却
って脆化が進行し易くなり、衝撃値が低下する傾向があ
ることが判明した。また焼戻し温度が高くなるほど伸び
は大きくなるが、耐摩耗性および減衰性は若干低下する
傾向があることも判明した。従って、焼戻し温度は25
0〜450℃または550〜650℃の範囲に設定する
ことが好ましい。
【0035】本発明に係る防振鋳鉄およびその製造方法
によれば、最大長さが250μm以上の粗大な片状黒鉛
組織を有するとともに減衰性に優れたマルテンサイト組
織またはベイナイト組織を面積比で30%以上の割合で
形成しているため、高い振動減衰能に加えて、優れた耐
摩耗性および高強度を兼ね備えた防振鋳鉄を提供するこ
とができる。
【0036】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施形態について、
以下の実施例を参照して、より具体的に説明する。
【0037】実施例1〜5および比較例1〜5 表1に示すように、C,Si,Ni,Mo,Mn,C
u,Feの各組成比を変えた鋳造材を30kgずつ調製
し高周波誘導電気炉で溶解して合金溶湯とした。次に各
合金溶湯をフラン砂製の鋳型に鋳込み、それぞれ実施例
1〜5および比較例1〜5に係る防振鋳鉄としての1イ
ンチYブロックを鋳造した。そして各Yブロックから切
り出して加工した試験片を用いて、それぞれのマトリッ
クス組織(金属組織)の面積率,片状黒鉛の最大長さ,
固有減衰能(SDC),引張り強さおよびビッカース硬
度(Hv)を測定して下記表1に示す結果を得た。
【0038】なお固有減衰能(SDC:Specific Dampi
ng Capacity )は、各試験片の降伏応力(試験片に0.
2%の永久ひずみを生じさせる応力)の1/10のせん
断応力振幅A0 を与えるように加振し、減衰波形を採取
し、初期振幅A0 の1/3になるまでの減衰波形の振幅
(A1 ,A2 ,……An ,An+1 )を測定して、下記
(1)式で算出した値の平均値を用いた。
【0039】
【数1】
【0040】
【表1】
【0041】上記表1に示す結果から明らかなように、
各実施例に係る防振鋳鉄においては、鋳放し材のままで
金属組織の65%以上がマルテンサイト組織であり、片
状黒鉛の最大長さが260〜490μmとなっている。
これら実施例の固有減衰能は30〜60%であり、引張
り強さも170〜283N/mm2 と高く、さらに硬さ
も480〜686Hvと高く、優れた振動減衰能と高強
度と耐摩耗性とを兼ね備えた防振鋳鉄であることが確認
できた。
【0042】これに対してC含有量が過少な比較例1に
係る鋳鉄材では、ほぼマルテンサイト相のみで金属組織
が形成されているが、片状黒鉛の最大長さが100μm
程度しかないために、減衰能は10%と低い値しか得ら
れない。一方、比較例2および比較例3においては、そ
れぞれC含有量およびSi含有量が過剰であるために、
片状黒鉛の最大長さが過大となり、引張り強さは100
N/mm2 未満であり、強度特性が低下している。また
比較例4および比較例5においては、Ni含有量または
Mn,Cu量が過剰であるため、マルテンサイト相がほ
とんど形成されず、オーステナイト組織が主体となって
いる。そのために硬さおよび引張り強さが低く耐摩耗性
も低い材料となった。
【0043】また実施例1に係る鋳放し材としての防振
鋳鉄に対して200〜650℃の各温度において焼戻し
熱処理を施した後に、各試験片のシャルピー衝撃値を測
定して図2に示す結果を得た。
【0044】図2に示す結果から明らかなように、マル
テンサイト組織を主相とする鋳放し鋳鉄材を250〜4
50℃または550〜650℃の温度範囲で焼戻し熱処
理を実施することにより、鋳鉄材の強度および靭性を改
善することができ、シャルピー衝撃値が高い防振鋳鉄と
することが可能であった。なお450〜550℃の温度
範囲では、却って脆化が進行して衝撃値が低下すること
も確認できた。
【0045】実施例6〜10および比較例6〜7 表2に示すように、C,Si,Ni,Mo,Mn,C
u,Feの各組成比を変えた鋳造材を30kgずつ調製
し高周波誘導電気炉で溶解して合金溶湯とした。次に各
合金溶湯をフラン砂製の鋳型に鋳込み、それぞれ実施例
6〜10および比較例6〜7に係る防振鋳鉄としての1
インチYブロックを鋳造した。そして各Yブロックから
切り出して加工した試験片を用いて、それぞれのマトリ
ックス組織(金属組織)の面積率,片状黒鉛の最大長
さ,固有減衰能(SDC),引張り強さおよびビッカー
ス硬度(Hv)を測定して下記表2に示す結果を得た。
【0046】
【表2】
【0047】上記表2に示す結果から明らかなように、
各実施例に係る防振鋳鉄においては、鋳放し材のままで
金属組織の90%以上がベイナイト組織であり、片状黒
鉛の最大長さが200〜480μmとなっている。これ
ら実施例の固有減衰能は25〜56%であり、引張り強
さも320〜470N/mm2 と高く、さらに硬さも3
80〜546Hvと高く、優れた振動減衰能と高強度と
耐摩耗性とを兼ね備えた防振鋳鉄であることが確認でき
た。
【0048】これに対してC含有量が過少な比較例6に
係る鋳鉄材では、ほぼベイナイト相主体の金属組織が形
成されているが、片状黒鉛の最大長さが140μm程度
しかないために、減衰能は14%と低い値しか得られな
い。一方、比較例7においては、C含有量が過剰である
とともにMoが配合されていないため、鋳放し材におけ
る金属組織はパーライト相のみから成り、減衰能が高い
ベイナイト相が全く形成されていない。また硬さが、ビ
ッカース硬度(Hv)で280と低いため、耐摩耗特性
が不十分である。
【0049】
【発明の効果】以上説明の通り、本発明に係る防振鋳鉄
およびその製造方法によれば、最大長さが250μm以
上の粗大な片状黒鉛組織を有するとともに減衰性に優れ
たマルテンサイト組織またはベイナイト組織を面積比で
30%以上の割合で形成しているため、高い振動減衰能
に加えて、優れた耐摩耗性および高強度を兼ね備えた防
振鋳鉄を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】片状黒鉛の最大長さと固有減衰能との関係を示
すグラフであり、かつ片状黒鉛の最大長さが約200μ
mおよび700μmである鋳鉄の金属組織を示す模式図
をそれぞれ併せて示す図。
【図2】焼戻し温度とシャルピー衝撃値との関係を示す
グラフ。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 最大長さが250μm以上の片状黒鉛を
    金属組織中に析出した鋳鉄であり、マルテンサイト組織
    およびベイナイト組織の少くとも一方の金属組織が面積
    比で30%以上であることを特徴とする防振鋳鉄。
  2. 【請求項2】 マルテンサイト組織を有する鋳鉄は、
    3.0重量%以上4.5重量%以下のCと,0.5重量
    %以上5.0重量%以下のSiと,0.3重量%以上
    3.0重量%以下のMnと,6.0重量%以上18重量
    %以下のNiと,2重量%以下のMoと,1重量%以下
    のCuと,残部Feおよび不純物とから構成されること
    を特徴とする請求項1記載の防振鋳鉄。
  3. 【請求項3】 ベイナイト組織を有する鋳鉄は、3.0
    重量%以上4.5重量%以下のCと,0.5重量%以上
    5.0重量%以下のSiと,0.3重量%以上2.0重
    量%以下のMnと,3.0重量%以上7.0重量%以下
    のNiと,2重量%以下のMoと,2.0重量%以下の
    Cuと,残部Feおよび不純物とから構成されることを
    特徴とする請求項1記載の防振鋳鉄。
  4. 【請求項4】 片状黒鉛の最大長さが250μm以上6
    00μm以下であることを特徴とする請求項1記載の防
    振鋳鉄。
  5. 【請求項5】 固有減衰能が20%以上であり、引張強
    さが150N/mm2以上であり、かつビッカース硬度
    (Hv)が300以上であることを特徴とする請求項1
    記載の防振鋳鉄。
  6. 【請求項6】 3.0重量%以上4.5重量%以下のC
    と,0.5重量%以上5.0重量%以下のSiと,0.
    3重量%以上3.0重量%以下のMnと,6.0重量%
    以上18重量%以下のNiと,2重量%以下のMoと,
    1重量%以下のCuと,残部Feおよび不純物とから成
    る鋳鉄材料を溶解し、所定形状に鋳造した後に、得られ
    た鋳造材を250〜450℃または550〜650℃の
    温度範囲で焼戻し熱処理することにより靭性値を高める
    ことを特徴とする防振鋳鉄の製造方法。
JP7236786A 1995-09-14 1995-09-14 防振鋳鉄およびその製造方法 Pending JPH0978179A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2009145039A1 (ja) * 2008-05-30 2009-12-03 東芝機械株式会社 高剛性高減衰能鋳鉄
US8641962B2 (en) 2007-02-14 2014-02-04 Toshiba Kikai Kabushiki Kaisha Highly stiff and highly damping cast iron
US10077488B2 (en) 2013-05-14 2018-09-18 Toshiba Kikai Kabushiki Kaisha High-strength, high-damping-capacity cast iron

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