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JPH08283902A - 耐火用圧延形鋼およびその製造方法 - Google Patents

耐火用圧延形鋼およびその製造方法

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Publication number
JPH08283902A
JPH08283902A JP8961795A JP8961795A JPH08283902A JP H08283902 A JPH08283902 A JP H08283902A JP 8961795 A JP8961795 A JP 8961795A JP 8961795 A JP8961795 A JP 8961795A JP H08283902 A JPH08283902 A JP H08283902A
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less
rolling
steel
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molten steel
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JP8961795A
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Koichi Yamamoto
広一 山本
Taku Yoshida
卓 吉田
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Nippon Steel Corp
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Nippon Steel Corp
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Publication date
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  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 建造物の構造部材に用いる耐火性と靭性の優
れたフランジを有する形鋼、例えばH形鋼をMg系酸化
物を分散させた鋳片を素材とし、これを加速冷却型制御
圧延することにより製造する。 【構成】 低窒素化、Mg合金等の添加と鋳込み後の冷
却速度の制御により鋳片にMg系複合酸化物を晶出分散
させ、この微細分散Mg系複合酸化物により圧延加熱時
のγ粒径を細粒化した鋼片に、加速冷却型制御圧延を付
加することにより組織微細化を行い、耐火性の優れた圧
延形鋼を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、建造物の構造部材とし
て用いられる耐火性、靭性の優れたH形鋼等フランジを
有する圧延形鋼と制御圧延による圧延形鋼の製造方法に
係わるものである。
【0002】
【従来の技術】建築物の超高層化、建築設計技術の高度
化などから耐火設計の見直しが建設省総合プロジェクト
により行われ、昭和62年3月に「新耐火設計法」が制
定された。この規定により、旧法令による火災時に鋼材
の温度を350℃以下にするように耐火被覆するとした
制限が解除され、鋼材の高温強度と建築物の実荷重との
かねあいにより、それに適合する耐火被覆方法を決定で
きるようになった。即ち600℃での設計高温強度を確
保できる場合はそれに見合い耐火被覆を削減できるよう
になった。
【0003】このような動向に対応し、先に特開平2−
77523号公報の耐火性の優れた建築用低降伏比鋼お
よび鋼材並びにその製造方法が提案されている。この先
願発明の要旨は600℃での降伏点が常温時の70%以
上となるようにMo、Nbを添加し高温強度を向上させ
たものである。鋼材の設計高温強度を600℃に設定し
たのは、合金元素による鋼材費の上昇とそれによる耐火
被覆施工費との兼ね合いから最も経済的であるという知
見に基づいたものである。
【0004】また、従来は鋼のAl脱酸は溶製過程の初
期段階でAl添加され、溶鋼の脱酸と生成したAl2
3 を浮上分離し高清浄化することを目的にしていた。即
ち、如何に溶鋼の酸素濃度を下げ、鋼中の粗大な一次脱
酸酸化物個数を減らすかに主題がおかれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は前述の先
願技術によって製造された鋼材を各種の形鋼、特に複雑
な形状から厳しい圧延造形上の制約を有するH形鋼の素
材に適用することを試みた結果、ウエブ、フランジ、フ
ィレットの各部位での圧延仕上げ温度、圧下率、冷却速
度に差が生じることから、部位により組織、特にベイナ
イト割合が著しく異なり、常温・高温強度、延性、靭性
がバラツキ、溶接構造用圧延鋼材(JIS G3106) 等の規準
に満たない部位が生じた。また、粒内フェライトの生成
による組織微細化では、フェライトの組織割合が比較的
高い成分では効果的であるが、ベイナイトの割合が高く
なると組織の微細化が困難となる欠点があった。
【0006】上記の課題を解決するためには、圧延時の
加熱温度1200〜1300℃でもγ粒径をASTM
No. で6番以上に細粒化ができればベイナイト割合の
高い組織でも組織微細化が可能となるので、このγ細粒
化法の開発が課題となる。この目的を達成するには高温
で分解せず安定に存在する微細な析出物を分散分布さ
せ、これにより成長するγ粒界をピンニングし、γ粒成
長を抑制し細粒化する方法が考えられれる。本発明はこ
の析出物として微細なMg系酸化物が効果的であること
を見出しこれらを微細晶出させた鋼を開発することを指
向した。
【0007】本発明は従来の発想とは異なり、製鋼過程
における脱酸剤の選択、その添加順序及び凝固過程の冷
却制御により酸化物の組成とサイズ、分散密度を制御
し、生成させた酸化物を異相析出の優先析出サイトとし
活用する点にある。本願出願人は先に特願平6−117
05号で、前記酸化物を粒内フェライト変態核として機
能させ、粒内フェライトの生成により組織を微細し、H
形鋼の部位間の材質特性の均質化と高靭性化を達成する
手段を提案した。本発明はこれとは異なり、高温安定性
の高い微細なMg系酸化物(主としてMgO)を高密度
分散させ、これらの析出物を圧延加熱時の1200〜1
300℃でのγ粒の粒成長を抑制するためのピンニング
サイトととして機能させ、γ粒の細粒化により組織を微
細化することによりH形鋼の部位間の材質特性の均質化
と高靭性・高温高強度化を達成することを特徴としてい
る。
【0008】また、製造法におけるTMCPの特徴は厚
鋼板で多く行われている低温・大圧下圧延とは異なり、
形鋼における軽圧下の熱間圧延においても効率的に組織
の細粒化が可能となるように圧延パス間で水冷し、水
冷、圧延、水冷とを繰り返す工程をとる方法にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、組織を微細化
することを目的とし、製鋼過程において適正な脱酸処
理を行い、溶鋼の高清浄化、溶存酸素濃度の規制、およ
びSi-Mg 合金及びNi-Mg 合金の添加を行い、微細なMg系
酸化物を含有させた鋳片を圧延しH形鋼としたものと、
該鋳片を素材として熱間圧延パス間で水冷することに
より、H形鋼のフランジの表面と内部に温度差を与え、
軽圧下条件下においても、より高温の内部への圧下浸透
を高め、α生成核となる加工転位を導入し、板厚中心部
での組織の微細化が達成できる圧延中水冷方法を開発し
た。加えて、圧延後のγ/α変態温度域を冷却制御する
ことにより、その核生成させたフェライトの粒成長を抑
制する方法によればミクロ組織の細粒化ができ、高能率
で製造コストの安価な耐火用圧延形鋼の生産が可能であ
ると言う知見に基づき前記課題を解決したもので、その
要旨とするところは、以下のとおりである。
【0010】(1) 重量% で、C:0.04〜0.20% 、Si:0.05
〜0.50% 、Mn:0.4〜1.8%、Mo:0.4〜1.0%、N:0.004%以
下、Al:0.004% 以下、を含み、残部がFeおよび不可避不
純物からなる溶鋼を、予備脱酸処理によって、溶存酸素
を重量%で0.003 〜0.015%に調整後、Mg合金を添加し重
量%でMg:0.001〜0.005%に成分調整した溶鋼を鋳込んだ
鋳片内に大きさ3μm以下のMg系酸化物を50個/mm2以上
含有する鋳片を熱間圧延して製造した耐火用圧延形鋼。
【0011】(2) 重量% で、C:0.04〜0.20% 、Si:0.05
〜0.50% 、Mn:0.4〜1.8%、Mo:0.4〜1.0%、N:0.004%以
下、Al:0.004% 以下、を含み、加えてCr:1.0% 以下、C
u:1.0%以下、Ni:2.0% 以下、Nb:0.04% 以下、V:0.1%
以下、Ti:0.025% 以下のいずれかの1種または2種以上
を含有し残部がFeおよび不可避不純物からなる溶鋼を、
予備脱酸処理によって、溶存酸素を重量%で0.003 〜0.
015%に調整後、Mg合金を添加し重量%でMg:0.001〜0.00
5%に成分調整した該溶鋼を鋳込んだ鋳片内に大きさ3μ
m以下のMg系酸化物を50個/mm2以上含有する鋳片を熱間
圧延して製造した耐火用圧延形鋼。
【0012】(3) 重量% で、C:0.04〜0.20% 、Si:0.05
〜0.50% 、Mn:0.4〜1.8%、Mo:0.4〜1.0%、N:0.004%以
下、Al:0.004% 以下、を含み、残部がFeおよび不可避不
純物からなる溶鋼を、予備脱酸処理によって、溶存酸素
を重量%で0.003 〜0.015%に調整後、Mg合金を添加し重
量%でMg:0.001〜0.005%に成分調整した溶鋼を鋳込んだ
鋳片を1200〜1300℃の温度域に再加熱後に圧延を開始
し、圧延工程で形鋼のフランジ表面温度を700 ℃以下に
水冷し、以降の圧延パス間の復熱過程で圧延する水冷・
圧延工程を一回以上繰り返し圧延し、圧延終了後に0.5
〜10℃/sの冷却速度で700 〜400 ℃まで冷却し放冷する
耐火用圧延形鋼の製造方法。
【0013】(4) 重量% で、C:0.04〜0.20% 、Si:0.05
〜0.50% 、Mn:0.4〜1.8%、Mo:0.4〜1.0%、N:0.004%以
下、Al:0.004% 以下、を含み、加えてCr:1.0% 以下、C
u:1.0%以下、Ni:2.0% 以下、Nb:0.04% 以下、V:0.1%
以下、Ti:0.025% 以下のいずれかの1種または2種以上
を含有し残部がFeおよび不可避不純物からなる溶鋼を、
予備脱酸処理によって、溶存酸素を重量%で0.003 〜0.
015%に調整後、Mg合金を添加し重量%でMg:0.001〜0.00
5%に成分調整した該溶鋼を鋳込んだ鋳片を1200〜1300℃
の温度域に再加熱後に圧延を開始し、圧延工程で形鋼の
フランジ表面温度を700 ℃以下に水冷し、以降の圧延パ
ス間の復熱過程で圧延する水冷・圧延工程を一回以上繰
り返し圧延し、圧延終了後に0.5 〜10℃/sの冷却速度で
700 〜400 ℃まで冷却し放冷する耐火用圧延形鋼の製造
方法。
【0014】
【作用】以下、本発明について詳細に説明する。鋼材の
高温強度は鉄の融点のほぼ1/2 の温度の700 ℃以下では
常温での強化機構とほぼ同様であり、フェライト結晶
粒径の微細化、合金元素による固溶体強化、硬化相
による分散強化 微細析出物による析出強化等によっ
て支配される。一般に高温強度の上昇にはMo、Crの
添加による析出強化と転位の消失抑制による高温での軟
化抵抗を高めることにより達成されている。しかしM
o、Crの添加は著しく焼き入れ性を上げ、母材のフェ
ライト+ パーライト組織をベイナイト組織に変化させ
る。ベイナイト組織を生成し易い成分系鋼を圧延H形鋼
に適応した場合は、その特異な形状からウェブ、フラン
ジ、フィレットの各部位で、圧延仕上げ温度、圧下率、
冷却速度に差を生じるため、各部位によりベイナイト組
織割合が大きく変化する。その結果として常温・高温強
度、延性、靭性がバラツキ、規準に満たない部位が生じ
る。加えて、これらの元素の添加により溶接部を著しく
硬化させ、靭性を低下させる。
【0015】本発明の特徴は、製鋼工程において、脱酸
の制御、鋳込み後の冷却速度を規制し、鋳片内に多数の
微細なMg系酸化物を晶出・分散させた鋳片により、圧
延加熱時のγ粒径を細粒化した状態から圧延し耐火性・
靭性に優れたH形鋼を得ることである。加えて本発明で
は、熱間圧延工程において、熱間圧延パス間でフランジ
表面を水冷し、その復熱時に圧延することを繰り返すこ
とによりフランジの板厚中心部に圧下浸透効果を付与
し、この部位においてもTMCPによる組織微細化効果
を高め、この組織微細化によりH形鋼の各部位における
母材の機械特性を向上するとともに均一化を達成するも
のである。
【0016】以下に本発明形鋼の成分範囲と制御条件の
限定理由について述べる。まず、Cは鋼を強化するため
に添加するもので、0.04% 未満では構造用鋼として必要
な強度が得られず。また、0.20% を超える過剰の添加
は、母材靭性、耐溶接割れ性、溶接熱影響部(以下HA
Zと略記)靭性などを著しく低下させるので、下限を0.
04% 、上限を0.20% とした。
【0017】次に、Siは母材の強度確保、溶鋼の予備
脱酸などに必要であるが、0.50% を超えるとHAZ組織
内に硬化組織の高炭素島状マルテンサイトを生成し、溶
接継手部靭性を著しく低下させる。また、0.05% 未満で
は必要な溶鋼の予備脱酸ができないためSi含有量を0.
05〜0.50% の範囲に限定した。Mnは母材の強度、靭性
の確保には0.4%以上の添加が必要であるが、溶接部の靭
性、割れ性などの許容できる範囲で上限を1.8%とした。
【0018】Moは母材強度および高温強度の確保に有
効な元素である。0.4%未満ではMo炭化物(Mo2 C)
の析出が不十分で強化作用を持たないため十分な高温強
度が確保できず、1.0%超では焼き入れ性が上昇しすぎ母
材及びHAZの靭性が劣化するため0.4 〜1.0%に制限し
た。Nは窒化物を生成し、析出強化および粒径の制御作
用を有するが、固溶Nはフェライトを強化し、またベイ
ナイト相のラス境界に高炭素島状マルテンサイトを形成
させ靭性を劣化させるためN含有量0.004%以下に制限し
た。
【0019】Alを0.004%以下としたのは、Alは強力
な脱酸元素であり、0.004%超の含有ではAl含有量の多
い粒子径の大きなAlー Mg系複合酸化物を生成し、微
細な3μm以下のMg系酸化物が形成されず、高温再加
熱時においてのγ細粒化ができないためAlを0.004%以
下とした。成分を調整した溶鋼を予備脱酸処理を行い溶
存酸素を重量%で0.003 〜0.015%に調整するのは、溶鋼
の高清浄化と同時に鋳片内に微細なMg系酸化物を晶出
させるために行うものである。予備脱酸後の[O] 濃度が
0.003%未満では微細な酸化物が減少し、細粒化できず靭
性を向上できない。一方、0.015%を超える場合は、他の
条件を満たしていても、酸化物が3μm以上の大きさに
粗大化し脆性破壊の起点となり、靭性を低下させるため
に予備脱酸後の[O] 濃度を重量%で0.003 〜0.015%に限
定した。
【0020】予備脱酸処理は真空脱ガス、Al、Si、
Mg脱酸により行った。その理由は真空脱ガス処理は直
接溶鋼中の酸素をガスおよびCOガスとして除去し、A
l、Si、Mgなどの強脱酸により生成する酸化物系介
在物は浮上、除去しやすく溶鋼の清浄化に有効なためで
ある。次に上述の溶鋼にMg合金を添加し重量%でMg:0.0
01〜0.005%に成分調整した溶鋼を後述する一定の鋳造冷
却速度で鋳込む。
【0021】Mg添加に使用したMg合金はSi-Mg 及びNi
-Mg である。Mg合金を用いた理由は合金化によりMg
の濃度を低くし、Mg酸化物生成時の反応を抑え、添加
時の安全性確保とMgの歩留を上げるためである。Mg
を0.001 〜0.005%に限定するのは、Mgも強力な脱酸元
素であり、晶出したMg酸化物は溶鋼中で容易に浮上分
離されるため0.005%を超えての添加では歩留が低いため
その上限を0.005%とした。また、0.001%未満では目的の
Mg系酸化物の分散密度が不足するため下限を0.001%と
した。なお、ここでのMg系酸化物は、主にMgOを表
しているが、この酸化物は微量のAlおよび不純物とし
て含まれているCaなどの酸化物と複合化している場合
が多いのでこのような表現を用いた。
【0022】不可避不純物として含有するP、Sはその
量について特に限定しないが凝固偏析による溶接割れ、
靭性の低下を生じるので、極力低減すべきであり、望ま
しくはP、S量はそれぞれ0.02% 未満である。以上の成
分に加えて、母材強度の上昇、および母材の靭性向上の
目的で、Cr、Cu、Ni、Nb、V、Tiの1種また
は2種以上を含有することができる。
【0023】Crは焼き入れ性の向上により、母材の強
化に有効である。しかし1.0%を超える過剰の添加は、靭
性および硬化性の観点から有害となるため、上限を1.0%
とした。Cuは母材の強化、耐候性に有効な元素である
が、応力除去焼鈍による焼き戻し脆性、溶接割れ性、熱
間加工割れを促進するため、上限を1.0%とした。
【0024】Niは、母材の強靭性を高める極めて有効
な元素であるが2.0%を超える添加は合金コストを増加さ
せ経済的でないので上限を2.0%とした。Nb、V、Ti
は微量添加により圧延組織を微細化でき、それらの炭窒
化物の析出により強化することから低合金化でき溶接特
性を向上できる。しかしながら、これらの元素の過剰な
添加は溶接部の硬化や、母材の高降伏点化をもたらすの
で、各々の含有量の上限をNb:0.04% 、V:0.1%、Ti:0.0
25% とした。
【0025】成分調整を終了した溶鋼を鋳込む際の冷却
速度は、Mg系酸化物粒子の個数の増加とその大きさを
制御するため、鋳込み開始から900 ℃までの冷却速度を
0.5〜20℃/sで冷却するのが望ましい。すなわち、過冷
却により晶出する複合酸化物の核生成数を増加させると
同時に冷却中の粒子成長を抑制し、大きさ3μm以下に
した酸化物を鋳片に50個/mm2 以上含有させるため
に行うものである。この温度間の冷却速度が0.5℃/
s未満の緩冷却では複合酸化物は凝集粗大化し、50個
/mm2 未満となり靭性、延性を低下させ、一方、冷却
速度の上限は現状の鋳造技術での冷却速度の限界である
20℃/sとする。
【0026】次に、鋳片に複合酸化物が50個/mm2
以上含む必要がある理由について述べる。製品の材質特
性は製鋼、鋳造工程に支配される先天的因子の鋳片の凝
固組織、成分偏析、本発明の微細複合酸化物、析出物等
と圧延、TMCP、熱処理工程等により支配される後天
的因子のミクロ組織により決定される。当然、この先天
的因子である鋳片の性質は後の工程に継承される。本発
明の特徴は、この鋳片の先天的因子の1つを制御するこ
とにあり、鋳片中に高温でのγ粒成長の抑制機能を発揮
する微細なMg系酸化物を分散晶出させることにある。
この粒子の分散個数が50個/mm2 未満では、120
0〜1300℃加熱におけるγ粒径がASTM No.
6番以上の細粒をえることはできないため下限を50個
/mm2とした。
【0027】なお、Mg系酸化物個数はX線マイクロア
ナライザー(EPMA)で測定し決定したものである。
上記の処理を経た鋳片は次に1200〜1300℃の温
度域に再加熱する。この温度域に再加熱温度を限定した
のは、熱間加工による形鋼の製造には塑性変形を容易に
するため1200℃以上の加熱が必要であり、且つV、
Nbなどの元素を十分に固溶させる必要があるため再加
熱温度の下限を1200℃とした。その上限は加熱炉の
性能、経済性から1300℃とした。
【0028】熱間圧延のパス間で水冷し、圧延中に一回
以上、フランジ表面温度を700℃以下に冷却し、以降
の圧延パス間の復熱過程で圧延する水冷・圧延工程を1
回以上繰り返し行うとしたのは、圧延パス間の水冷によ
り、フランジの表層部と内部とに温度差を付け、軽圧下
条件においても内部への加工を浸透させるためと、低温
圧延を短時間で効率的に行うためである.フランジ表面
温度を700℃以下に冷却した後、復熱過程で圧延する
のは、仕上げ圧延後の加速冷却による表面の焼入れ硬化
を抑制し軟化させるために行うものである。その理由は
フランジ表面温度を700℃以下に冷却すれば一旦γ/
α変態温度を切り、次の圧延までに表層部は復熱昇温
し、圧延はγ/αの二相共存温度域での加工となり、γ
細粒化と加工された微細αとの混合組織を形成する。こ
れにより表層部の焼き入性を著しく低減でき、加速冷却
により生じる表面層の硬化を防止できるからである。
【0029】また、圧延終了後、引続き、0.5〜10
℃/Sの冷却速度で700〜400℃まで冷却し放冷す
るとしたのは、加速冷却によりフェライトの粒成長抑制
とベイナイト組織を微細化し高強度・高靭性を得るため
である。引き続く加速冷却を700〜400℃で停止す
るのは、700℃を超える温度で加速冷却を停止する
と、一部がAr1 点以上となりγ相を残存し、このγ相
が、共存するフェライトを核にフェライト変態し、さら
にフェライトが成長し粗粒化するために加速冷却の停止
温度を700℃以下とした。また、400℃未満の冷却
では、その後の放冷中にベイナイト相のラス間に生成す
る高炭素マルテンサイトが、冷却中にセメンタイトを析
出することにより分解できず、硬化相として存在するこ
とになる。これが脆性破壊の起点として作用し、靭性の
低下を招くために、この温度範囲に限定した。
【0030】
【実施例】試作形鋼は転炉溶製し、合金を添加後、予備
脱酸処理を行い、溶鋼の酸素濃度を調整後、Mg合金を添
加し、連続鋳造により250 〜300mm 厚鋳片に鋳造した。
鋳片の冷却はモールド下方の二次冷却帯の水量と鋳片の
引き抜き速度の選択により制御した。該鋳片を加熱し、
粗圧延工程の図示は省略するが、図1に示す、ユニバー
サル圧延装置列でH形鋼に圧延した。圧延パス間水冷は
中間ユニバーサル圧延機4の前後に水冷装置5aを設
け、フランジ外側面のスプレー冷却とリバース圧延の繰
り返しにより行い、圧延後の加速冷却は仕上げユニバー
サル圧延機6で圧延終了後にその後面に設置した冷却装
置5bでフランジ外側面をスプレー冷却した。
【0031】機械特性は図2に示す、フランジ2の板厚
2 の中心部(1/2t2 )でフランジ幅全長(B) の1/4,1/
2 幅(1/4B,1/2B) から、試験片を採集し求めた。なお、
これらの箇所の特性を求めたのはフランジ1/4F部はH形
鋼の平均的な機械特性を示し、フランジ1/2F部はその特
性が最も低下するので、これらの2箇所によりH形鋼の
機械試験特性を代表できると判断したためである。
【0032】表1、表3には、本発明鋼及び比較鋼の化
学成分値を、表2、表4には、それらの鋼の鋳込み後の
冷却速度及び鋳片中のMg系酸化物の分散密度を示す。
表5、表6および表7には、圧延加熱時のγ粒度、圧延
・加速冷却条件及び製品の機械試験特性値を示す。な
お、圧延加熱温度を1300℃に揃えたのは、一般的に
加熱温度の低下はγ粒を細粒化し機械特性を向上させる
ことは周知であり、高温加熱条件では機械特性の最低値
を示すと推定され、この値がそれ以下の加熱温度での機
械試験特性を代表できると判断したためである。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
【表7】
【0040】表5、6および7に示すように、本発明に
よるH形鋼1〜5、A1〜A3は目標の常温の降伏点範
囲がJIS規格の下限値+120N/mm2以内のSM490 ではYP
=325〜445N/mm2、SM520 ではYP=355〜475N/mm2、に制御
され、しかも、降伏比(YP/TS )も0.8 以下の低YR値を
満たし、抗張力(前記JISG3106)及び600℃
での降伏強度と常温の降伏強度の比が2/3以上であ
り、−10℃でのシャルピー衝撃値47(J) 以上を十分
に満たしている。一方、比較鋼のH形鋼6では、成分の
NとAlが本発明の上限値を超えたため、過剰のNはフ
ェライトの靭性を低下し、過剰のAlはMg系酸化物の
生成を阻害し、この分散個数で50個/mm2 未満とな
り、γ粒度がASTM No.6番以下と粗粒化し微細
組織が得られない。これのためシャルピー衝撃値が開発
目標の−10℃で47J以上を達成できない。比較鋼の
H形鋼7では、Mg添加前の溶鋼の酸素濃度が本発明の
下限値以下となっているためにMg系酸化物の個数が不
足し、それに反し、比較鋼のH形鋼8では、この酸素濃
度の上限値を超えているために3μm以上の大きさの粗
大な酸化物が形成されるために、何れもシャルピー衝撃
値が開発目標の−10℃で47J以上を達成できない。
比較鋼のH形鋼9では、Mgが添加されていない。次い
で、比較鋼のH形鋼10では、成分・製鋼条件は満たし
ているものの圧延中でのフランジ外側面を700℃以下
に水冷する処理が施されていないので、水冷停止温度が
710℃と水冷停止温度の制限の上限を超え、圧延後の
冷却速度が1/2F部では冷却速度の制限以下となるた
め常温強度及び600℃での強度不足をきたす。
【0041】規格強度、520MPa級鋼に区分される
比較鋼のH形鋼A4では、Mo含有量が本発明の下限値
を以下であるため600℃での強度不足となり、加えて
Mgが添加されていないので組織の微細化ができずシャ
ルピー衝撃値が開発目標の−10℃で47J以上を達成
できない。また、比較鋼のH形鋼A5では、鋳込み後の
冷却速度が下限値以下であるのでMg系酸化物の個数が
不足し、シャルピー衝撃値がクリアーできない。
【0042】即ち、本発明の製造法の要件が総て満たさ
れた時に、表5、6および7に示されるH形鋼1〜5、
A1〜A3のように、圧延形鋼の機械試験特性の最も保
証しにくいフランジ板厚1/2,幅1/2 部においても十分な
常温・高温強度、低温靭性を有する、耐火性及び靭性の
優れた圧延形鋼の生産が可能になる。なお、本発明が対
象とする圧延形鋼は上記実施例のH形鋼に限らずI形
鋼、山形鋼、溝形鋼、不等辺不等厚山形鋼等のフランジ
を有する他の形鋼にも適用できることは勿論である。
【0043】
【発明の効果】本発明による圧延形鋼は機械試験特性の
最も保証しにくいフランジ板厚1/2,幅1/2 部においても
十分な強度、靭性を有し、高温特性に優れ、耐火材の被
覆厚さが従来の20〜50%で耐火目的を達成できる、
優れた耐火性及び靭性を持つ形鋼が圧延ままで製造可能
になり、施工コスト低減、工期の短縮による大幅なコス
ト削減が図られ、大型建造物の信頼性向上、安全性の確
保、経済性等の産業上の効果は極めて顕著なものがあ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法を実施する装置配置例の略図である。
【図2】H形鋼の断面形状および機械試験片の採取位置
を示す図である。
【符号の説明】
1…H形鋼 2…フランジ 3…ウェブ 4…中間圧延機 5a…中間圧延機前後面の水冷装置 5b…仕上げ圧延機後面冷却装置 6…仕上げ圧延機
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/58 C22C 38/58

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量% で C:0.04〜0.20% 、 Si:0.05 〜0.50% 、 Mn:0.4〜1.8%、 Mo:0.4〜1.0%、 N:0.004%以下、 Al:0.004% 以下、 を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなる溶鋼を、
    予備脱酸処理によって、溶存酸素を重量%で0.003 〜0.
    015%に調整後、Mg合金を添加し重量%でMg:0.001〜0.00
    5%に成分調整した溶鋼を鋳込んだ鋳片内に大きさ3μm
    以下のMg系酸化物を50個/mm2以上含有する鋳片を熱間圧
    延して製造したことを特徴とする耐火用圧延形鋼。
  2. 【請求項2】 重量% で C:0.04〜0.20% 、 Si:0.05 〜0.50% 、 Mn:0.4〜1.8%、 Mo:0.4〜1.0%、 N:0.004%以下、 Al:0.004% 以下、 を含み、加えてCr:1.0% 以下、Cu:1.0%以下、Ni:2.0%
    以下、Nb:0.04% 以下、V:0.1%以下、Ti:0.025% 以下の
    いずれかの1種または2種以上を含有し残部がFeおよび
    不可避不純物からなる溶鋼を、予備脱酸処理によって、
    溶存酸素を重量%で0.003 〜0.015%に調整後、Mg合金を
    添加し重量%でMg:0.001〜0.005%に成分調整した該溶鋼
    を鋳込んだ鋳片内に大きさ3μm以下のMg系酸化物を50
    個/mm2以上含有する鋳片を熱間圧延して製造したことを
    特徴とする耐火用圧延形鋼。
  3. 【請求項3】 重量% で C:0.04〜0.20% 、 Si:0.05 〜0.50% 、 Mn:0.4〜1.8%、 Mo:0.4〜1.0%、 N:0.004%以下、 Al:0.004% 以下、 を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなる溶鋼を、
    予備脱酸処理によって、溶存酸素を重量%で0.003 〜0.
    015%に調整後、Mg合金を添加し重量%でMg:0.001〜0.00
    5%に成分調整した溶鋼を鋳込んだ鋳片を1200〜1300℃の
    温度域に再加熱後に圧延を開始し、圧延工程で形鋼のフ
    ランジ表面温度を700 ℃以下に水冷し、以降の圧延パス
    間の復熱過程で圧延する水冷・圧延工程を一回以上繰り
    返し圧延し、圧延終了後に0.5 〜10℃/sの冷却速度で70
    0 〜400 ℃まで冷却し放冷することを特徴とする耐火用
    圧延形鋼の製造方法。
  4. 【請求項4】 重量% で C:0.04〜0.20% 、 Si:0.05 〜0.50% 、 Mn:0.4〜1.8%、 Mo:0.4〜1.0%、 N:0.004%以下、 Al:0.004% 以下、 を含み、加えてCr:1.0% 以下、Cu:1.0%以下、Ni:2.0%
    以下、Nb:0.04% 以下、V:0.1%以下、Ti:0.025% 以下の
    いずれかの1種または2種以上を含有し残部がFeおよび
    不可避不純物からなる溶鋼を、予備脱酸処理によって、
    溶存酸素を重量%で0.003 〜0.015%に調整後、Mg合金を
    添加し重量%でMg:0.001〜0.005%に成分調整した該溶鋼
    を鋳込んだ鋳片を1200〜1300℃の温度域に再加熱後に圧
    延を開始し、圧延工程で形鋼のフランジ表面温度を700
    ℃以下に水冷し、以降の圧延パス間の復熱過程で圧延す
    る水冷・圧延工程を一回以上繰り返し圧延し、圧延終了
    後に0.5 〜10℃/sの冷却速度で700 〜400 ℃まで冷却し
    放冷することを特徴とする耐火用圧延形鋼の製造方法。
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