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JP3472017B2 - 耐火圧延形鋼およびその製造方法 - Google Patents

耐火圧延形鋼およびその製造方法

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Publication number
JP3472017B2
JP3472017B2 JP03624396A JP3624396A JP3472017B2 JP 3472017 B2 JP3472017 B2 JP 3472017B2 JP 03624396 A JP03624396 A JP 03624396A JP 3624396 A JP3624396 A JP 3624396A JP 3472017 B2 JP3472017 B2 JP 3472017B2
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JP
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less
rolling
steel
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JP03624396A
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広一 山本
卓 吉田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
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  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建造物の構造部材
として用いられる耐火性と靭性に優れた圧延H形鋼等フ
ランジを有する圧延形鋼と制御圧延による圧延形鋼の製
造方法に係わるものである。
【0002】
【従来の技術】建築物の超高層化、建築設計技術の高度
化などから耐火設計の見直しが建設省総合プロジェクト
により行われ、昭和62年3月に「新耐火設計法」が制
定された。この規定により、旧法令による火災時に鋼材
の温度を350℃以下にするように耐火被覆するとした
制限が解除され、鋼材の高温強度と建築物の実荷重との
兼合により、それに適合する耐火被覆方法を決定できる
ようになった。即ち600℃での設計高温強度を確保で
きる場合はそれに見合い耐火被覆を削減できるようにな
った。
【0003】このような動向に対応し、先に特開平2−
77523号公報の耐火性の優れた建築用低降伏比鋼お
よび鋼材並びにその製造方法が提案されている。この先
願発明の要旨は600℃での降伏点が常温時の2/3以
上となるようにMo、Nbを添加し高温強度を向上させ
たものである。鋼材の設計高温強度を600℃に設定し
たのは、合金元素による鋼材費の増加分と従来鋼材を耐
火被覆する施工費との兼ね合いから最も経済的であると
いう知見に基づいたものである。
【0004】また、従来は鋼のAl脱酸は溶製過程の初
期段階でAl添加され、溶鋼の脱酸と生成したAl2
3 を浮上分離し高清浄化することを目的にしていた。即
ち、如何に溶鋼の酸素濃度を下げ、鋼中の粗大な一次脱
酸酸化物個数を減らすかに主題がおかれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は前述の先
願技術によって製造された鋼材を各種の形鋼、特に複雑
な形上から厳しい圧延造形上の制約を有するH形鋼の素
材に適用することを試みた結果、ウエブ、フランジ、フ
ィレットの各部位での圧延仕上げ温度、圧下率、冷却速
度に差が生じることから、部位により組織、特にベイナ
イト組織割合が著しく異なり、常温・高温強度、延性、
靭性がばらつき、溶接構造用圧延鋼材(JISG3106)等の規
準に満たない部位が生じた。また、粒内フェライトの生
成による組織微細化では、フェライトの組織割合が比較
的高い成分では効果的であるが、ベイナイトの割合が高
くなると組織の微細化が困難となる欠点があった。
【0006】上記の課題を解決するためには、圧延時の
加熱温度1200〜1300℃でもγ粒径をASTM N
o.で6番以上に細粒化できれば、ベイナイト組織割合が
高くても組織微細化が可能となる。したがって、この高
温加熱時のγ細粒化法の開発が課題となる。この目的を
達成するには高温で分解せず安定に存在する、微細な析
出物を分散させ、これにより成長するγ粒界をピンニン
グし、γ粒成長を抑制し細粒化する方法が考えられる。
本発明はこの析出物としてMg系酸化物およびMg系酸
化物とTiNの複合析出物が効果的であることを見出し
これらを微細晶出・析出させた鋼を開発することを指向
した。
【0007】加えて、従来の耐火鋼では600℃におけ
る高温強度を保証していたが、本発明では、建築物の耐
火被覆の非被覆化の適用範囲を広げることを目的とし
て、より高温(700℃)での高温強度を保証できる耐
火鋼を開発することが課題である。本発明は従来の発想
とは異なり、製鋼過程における脱酸材の選択、その添加
順序及び凝固過程の冷却制御により酸化物の組成とサイ
ズ、分散密度を制御し、生成させた酸化物を異相析出物
(TiN 等) の優先析出サイトとし活用する点にある。本
願出願人は先に特願平6−11705号で、前記酸化物
を粒内フェライト変態核として機能させ、粒内フェライ
トの生成により組織を微細し、H形鋼の部位間の材質特
性の均質化と高靭性化を達成する発明を提案した。本発
明はこれとは異なり、高温安定性の高い微細なMg系酸
化物(主としてMgO)およびMg系酸化物とTiN の複
合析出物を高密度分散させ、これらの析出物を圧延加熱
時の1200〜1300℃でのγ相の粒成長を抑制する
ためのピンニングサイトととして機能させ、γ相の細粒
化により組織を微細化を達成したものである。この組織
の微細化によりH形鋼の部位間の材質特性の均質化と高
靭性化を達成することと、微量Nb、V添加による焼入
性向上に加え、Cu添加によるCuの析出強化とにより
700℃での降伏強度がSM490鋼のJIS規格での
常温の降伏点の下限値325MPaの2/3の220M
Pa以上となる高温での高強度化を達成することを特徴
としている。さらに、ベイナイト組織での靭性を向上さ
せために、靭性低下の原因となる高炭素島状マルテンサ
イト(以下、M*と略記する)の生成抑制を極低ボロン
化とマイクロアロイングによる低炭素化により達成した
ことも本発明の特徴である。 また、製造法におけるT
MCPの特徴は厚鋼板で多く行われている低温・大圧下
圧延とは異なり、形鋼における軽圧下の熱間圧延におい
ても効率的に組織の細粒化が可能となるように圧延パス
間で水冷し、水冷、圧延、水冷とを繰り返す工程をとる
方法にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、組織を微細化
することを目的とし、製鋼過程において適正な脱酸処理
を行い、溶鋼の高清浄化、溶存酸素濃度の調整、Ti添
加、最後にSi-Mg 合金及びNi-Mg 合金を添加する添加順
序とMg添加量の限定を行い、鋳片に微細なMg系酸化物
を微細分散させた鋳片と、この鋳片を素材として、熱間
圧延パス間で水冷することにより、H形鋼のフランジの
表面と内部に温度差を与え、軽圧下条件下においても、
より高温の板厚中央部への圧下浸透を高め、α生成核と
なる加工転位を導入し、板厚中央部での組織の微細化が
達成できる圧延中水冷方法を開発した。加えて、圧延後
のγ/α変態温度域を冷却制御することにより、核生成
させたフェライトの粒成長を抑制する方法によればミク
ロ組織の微細化ができ、高能率で製造コストの安価な耐
火用圧延形鋼の生産が可能であると言う知見に基づき前
記課題を解決したもので、その要旨とするところは、以
下のとおりである。 重量% でC:0.02〜0.06% 、Si: 0.05〜0.25% 、Mn:
0.8〜1.6%、Mo:0.4〜0.8%、Cu:0.7〜1.5%、N: 0.004〜
0.010%、 B: 0.0003% 以下、Nb:0.03%以下、V:0.1% 以
下、Al:0.005% 以下、を含み、残部がFeおよび不可避不
純物からなる溶鋼の酸素量を重量%で 0.003〜0.010%に
調整後、TiとNの比がTi/N: 3.0〜3.5となるよう
にTi:0.012〜0.030%を添加し、更にMg: 0.0005〜0.0050
% を添加して鋳造した鋼片中に大きさ3μm 以下のMg系
酸化物およびMg系酸化物とTiNの複合析出物を50個
/mm2以上含有させたことを特徴とする耐火圧延形鋼。 重量% でC:0.02〜0.06% 、Si: 0.05〜0.25% 、Mn:
0.8〜1.6%、Mo:0.4〜0.8%、Cu:0.7〜1.5%、N: 0.004〜
0.010%、 B: 0.0003% 以下、Nb:0.03%以下、V:0.1% 以
下、Al:0.005% 以下、を含み、かつCr:1.0% 以下、Ni:
2.0% 以下のいずれかの1種または2種以上を含有し残
部がFeおよび不可避不純物からなる溶鋼の酸素量を重量
%で 0.003〜0.010%に調整後、TiとNの比がTi/N:
3.0〜3.5 となるようにTi:0.012〜0.030%を添加し、更
にMg: 0.0005〜0.0050% を添加して鋳造した鋼片中に大
きさ3μm 以下のMg系酸化物およびMg系酸化物とTi
Nの複合析出物を50個/mm2以上含有させたことを特徴と
する耐火圧延形鋼。 重量% でC:0.02〜0.06% 、Si: 0.05〜0.25% 、Mn:
0.8〜1.6%、Mo:0.4〜0.8%、Cu:0.7〜1.5%、N: 0.004〜
0.010%、 B: 0.0003% 以下、Nb:0.03%以下、V:0.1% 以
下、Al:0.005% 以下、を含み、残部がFeおよび不可避不
純物からなる溶鋼の酸素量を重量%で 0.003〜0.010%に
調整後、TiとNの比がTi/N: 3.0〜3.5となるよう
にTi:0.012〜0.030%を添加し、更にMg: 0.0005〜0.0050
% を添加して成分調整した溶鋼を鋳造し、鋳片中に大き
さ3μm 以下のMg系酸化物およびMg系酸化物とTiN
の複合析出物を50個/mm2以上含有させた鋳片を1200〜13
00℃の温度域に再加熱した後に圧延を開始し、圧延工程
で形鋼のフランジ表面温度を 700℃以下に水冷し、以降
の圧延パス間の復熱過程で圧延する水冷・圧延工程を一
回以上繰り返し圧延し、圧延終了後に 0.5〜10℃/sの冷
却速度で 700〜400 ℃まで冷却し放冷することを特徴と
する耐火圧延形鋼の製造方法。 重量% でC:0.02〜0.06% 、Si: 0.05〜0.25% 、Mn:
0.8〜1.6%、Mo:0.4〜0.8%、Cu:0.7〜1.5%、N: 0.004〜
0.010%、 B: 0.0003% 以下、Nb:0.03%以下、V:0.1% 以
下、Al:0.005% 以下、を含み、かつCr:1.0% 以下、Ni:
2.0% 以下のいずれかの1種または2種以上を含有し残
部がFeおよび不可避不純物からなる溶鋼の酸素量を重量
%で 0.003〜0.010%に調整後、TiとNの比がTi/N:
3.0〜3.5 となるようにTi:0.012〜0.030%を添加し、更
にMg: 0.0005〜0.0050% を添加して成分調整した溶鋼を
鋳造し、鋳片中に大きさ3μm 以下のMg系酸化物および
Mg系酸化物とTiNの複合析出物を50個/mm2以上含有
させた鋳片を1200〜1300℃の温度域に再加熱した後に圧
延を開始し、圧延工程で形鋼のフランジ表面温度を 700
℃以下に水冷し、以降の圧延パス間の復熱過程で圧延す
る水冷・圧延工程を一回以上繰り返し圧延し、圧延終了
後に 0.5〜10℃/sの冷却速度で 700〜400 ℃まで冷却し
放冷することを特徴とする耐火圧延形鋼の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】鋼材の高温強度は鉄の融点のほぼ
1/2 の温度の 700℃以下では常温での強化機構とほぼ同
様であり、フェライト結晶粒径の微細化、合金元素
による固溶体強化、硬化相による分散強化、微細析
出物による析出強化等によって支配される。一般に高温
強度の上昇にはMo、Crの添加による析出強化と転位
の消失抑制による高温軟化抵抗を増加させることにより
達成されている。しかしMo、Crの添加は著しく焼入
性を上昇させ、添加なしでのフェライト+パーライト組
織から硬化相のベイナイト組織に変化させる。また、ベ
イナイト組織を優先生成する成分系鋼を圧延H形鋼に適
用した場合は、その特異な形状からウェブ、フランジ、
フィレットの各部位で、圧延仕上げ温度、圧下率、冷却
速度に差を生じるため、各部位間で生成するベイナイト
組織の割合が大きく変化する。この結果、部位により常
温・高温強度、延性、靭性が異なった値となり部位間で
のばらつきとなる。また、部位によっては規準に満たな
い特性を示す部位が生じる。加えて、これらの元素の添
加により溶接部を著しく硬化させ、溶接熱影響部の靭性
を低下させる。
【0010】本発明の特徴は、製鋼工程において、溶鋼
酸素の調整、脱酸元素の選択と添加手順の適正化によ
り、鋳片中に多数の微細なMg系酸化物およびMg系酸
化物とTiN の複合析出物を分散させることにより、形鋼
圧延での高温加熱条件下においてもγ相の粗粒化を抑制
する効果を有する鋳片を製造することにある。この鋳片
を素材とすることにより、高温加熱・圧延によっても組
織の微細化が達成でき、耐火性・靭性に優れた形鋼の製
造が可能となる。
【0011】加えて本発明では、熱間圧延工程におい
て、熱間圧延パス間でフランジ表面を水冷し、その復熱
時に圧延することを繰り返すことによりフランジの板厚
中心部に圧下浸透効果を付与し、この部位においてもT
MCPによる組織微細化効果を高め、この組織微細化に
よりH形鋼の各部位における母材の機械特性を向上させ
るとともにバラツキを低減し均質化を達成するものであ
る。
【0012】以下に本発明形鋼の成分範囲と制御条件の
限定理由について述べる。まず、Cは鋼を強化するため
に添加するもので、0.02% 未満では構造用鋼として必要
な強度が得られず。また、ベイナイト組織鋼においては
0.06% を超える過剰の添加は、M*を生成し、母材靭
性、耐溶接割れ性、溶接熱影響部(以下HAZと略記)
靭性などを著しく低下させるので、下限を0.02% 、上限
を0.06% とした。
【0013】次に、Siは母材の強度確保、溶鋼の脱酸
などに必要であるが、0.25% を超えるとHAZ内に硬化
組織の高炭素島状マルテンサイトを生成し、溶接継手部
靭性を著しく低下させる。また、0.05% 未満では溶鋼の
予備脱酸が十分にできないためSi含有量を0.05〜0.25
% の範囲に限定した。Mnは母材の強度、靭性の確保に
は0.8%以上の添加が必要であるが、溶接部の靭性、割れ
性などに対する許容濃度の上限から1.6%とした。
【0014】Moは母材強度および高温強度の確保に有
効な元素である。0.4%未満ではMo炭化物(Mo2C)の析
出が不十分で強化作用を発揮できないため十分な高温強
度が確保できず、0.8%超では、焼入性の上昇により母材
及びHAZが過剰に硬化し、靭性が劣化するため 0.4〜
0.8%に限定した。Cuはα温度域での保持及び緩冷却に
よりα相中の転位上にCu相を析出し、その析出硬化に
より母材の常温強度を増加させる。さらに耐火鋼として
の保証温度700℃加熱時における強度低下を抑制す
る。ただし、このα中でのCu相の析出は0.7%未満では
α中でのCuの固溶限内であり、析出が生じないためC
u析出による強化は得られない。また1.5%を超えるとそ
の析出強化は飽和するのでCu:0.7〜1.5%に限定した。
【0015】Nはα中に固溶し、強度を上昇させるが、
上部ベイナイト組織では、M*を生成し靭性を劣化させ
るので、固溶Nはできるだけ低減する必要がある。しか
し、本発明でのNはTiと化合させ鋼中にTiNを微細
析出させ、固溶Nを低減させた上で、TiNによる結晶
の粒成長を抑制し組織微細化を達成させるために添加し
ている。従って、この効果の発現には、N量が0.004%未
満ではTiNの析出量が不足し、0.010%超では析出量は
十分となるが、粗大なTiNが析出し、靭性を損ねるの
でN: 0.004〜0.010%に限定した。
【0016】Bは微量添加で焼入性を上昇させ強度増加
に寄与するが、0.0003% 超のBを含有すると上部ベイナ
イト組織中にM*を生成し靭性を著しく低下させること
が判明したので0.0003% 以下に制限した。NbはNb炭
窒化物の析出による強化と焼入性の上昇による強化を有
し、常温・高温強度の増加を目的に添加される。ただ
し、Nb:0.03%越える添加では、粗大なNbTi炭窒化物
を生成し、母材及び溶接部靭性を低下させるために 0.0
3%以下に制限した。
【0017】Vは微量添加により圧延組織を微細化で
き、バナジン炭窒化物の析出により強化することから低
合金化でき溶接特性を向上できる。しかしながら、Vの
過剰な添加は溶接部の硬化や、母材の高降伏点化をもた
らすので、含有量の上限をV:0.1%とした。加えて、「Ti
とNの量比がTi/N: 3.0〜3.5 となるTi,N量を含有
し」としたのは、添加Ti、Nのほぼ全量を化学量論的
にTiNとして析出させ、靭性低下の原因となる固溶T
i、Nをできるだけ低減させるためにTiとNの含有量比
を限定したものである。
【0018】Alを0.005%以下としたのは、Alは強力
な脱酸元素であり、0.005%超の含有では、MgO の生成が
阻害され、微細な分散ができないため0.005%以下に制限
した。次いで、成分を調整した溶鋼の酸素量を重量%で
0.003〜0.010%に調整するのは、溶鋼の高清浄化および
鋳片中に微細なMg系酸化物を晶出させるために行うも
のである。この溶鋼の[O] 濃度が0.003%未満では微細な
酸化物が減少し、圧延再加熱時のγ細粒化ができない。
一方、0.010%を超える場合は、他の条件を満たしていて
も、酸化物は3μm以上の大きさに凝集粗大化し、脆性
破壊の起点となり、靭性の劣化をまねくため、溶鋼の
[O] 濃度を重量%で 0.003〜0.010%に限定した。
【0019】この溶鋼の酸素量の調整は酸素量が0.010%
を超える場合は、真空脱ガス、Al、Si、Mg添加に
より0.010%以下に低減し、0.003%未満の場合は、酸化鉄
を添加し増加させる方法で行った。次に上述の溶鋼にT
i、Mgと順次添加するのは、 Mgは強力脱酸元素で
あり、先に生成したTi酸化物とMgを反応させ酸素を
奪い微細なMgOを形成させるためである。
【0020】さらに、Mg合金の添加により重量%でMg:
0.001〜0.005%に調整した溶鋼を後述する一定の鋳造冷
却速度で鋳込む。TiはTiNを析出し、固溶Nを低減
することによりM*の生成を抑制する。また、微細析出
したTiNはγ相の細粒化にも寄与する。これらのTi
の作用により組織を微細化し強度・靭性を向上させる。
従って、0.012%未満ではTiNの析出量が不足し、これ
らの効果を発現しないためTi量の下限値を0.012%とし
た。しかし0.030%を超えると過剰なTiはTiCを析出
し、その析出硬化により母材および溶接熱影響部の靭性
を劣化させるため0.030%以下に制限した。
【0021】Mg添加に使用したMg合金はSi-Mg-Al及び
Ni-Mg である。Mg合金を用いた理由は合金化によりM
g含有濃度を低減し、溶鋼への添加時の脱酸反応を抑制
し、添加時の安全性の確保とMgの歩留を向上させるた
めである。Mgを0.0005〜0.0050% に限定するのは、M
gも強力な脱酸元素であり、晶出したMg酸化物は溶鋼
中で容易に浮上分離されるため0.005%を超えて添加して
も、これ以上は歩留まらないため上限を0.0050% とし
た。また、0.0005% 未満では目的のMg系酸化物の分散
密度が不足するため下限を0.0005% とした。なお、ここ
でのMg系酸化物は、主にMgOと表記しているが、電
子顕微鏡解析などによると、この酸化物はTi、微量の
Alおよび不純物として含まれているCaなどとの複合
酸化物を形成している。
【0022】不可避不純物として含有するP、Sについ
ては、それらの量を特に限定しないが凝固偏析による溶
接割れ、靭性の低下を生じるので、極力低減すべきであ
りP、S量はそれぞれ0.02% 未満に制限することが望ま
しい。以上の元素に加えて、母材強度の上昇、および母
材の靭性向上の目的で、Cr、Niの1種または2種以
上を含有することができる。
【0023】Crは焼入性の向上により、母材の強化に
有効である。しかし1.0%を超える過剰の添加は、靭性お
よび硬化性の観点から有害となるため、上限を1.0%とし
た。Niは母材の強靭性を高める極めて有効な元素であ
るが2.0%を超える添加は合金コストを増加させ経済的で
ないので上限を2.0%とした。成分調整を完了した溶鋼を
鋳込む際の冷却速度は、Mg系酸化物粒子の個数の増加
とその粒成長を抑制するため、鋳込み開始から 900℃ま
での冷却速度を 0.5〜20℃/sで冷却するのが望ましい。
すなわち、過冷却により晶出する複合酸化物の核生成数
を増加させると同時に冷却中の粒成長を抑制し、大きさ
3μm以下にした酸化物を鋳片に50個/mm2以上含有さ
せるために行うものである。この温度間の冷却速度が
0.5℃/s未満の緩冷却では複合酸化物は凝集粗大化
し、50個/mm2未満となり靭性、延性を低下させるから
である。一方、冷却速度の上限は現状の鋳造技術での冷
却速度の限界である20℃/s以下とする。
【0024】次に、鋳片中にMg系酸化物およびMg系酸化
物とTiNの複合析出物が50個/mm2以上含む必要があ
る理由について述べる。製品の材質特性は製鋼、鋳造工
程に支配される先天的因子の鋳片の凝固組織、成分偏
析、本発明の微細複合酸化物、析出物等と圧延、TMC
P、熱処理工程等により支配される後天的因子のミクロ
組織により決定される。当然、この先天的因子である鋳
片の性質は後の工程に継承される。本発明の特徴は、こ
の鋳片の先天的因子の1つを制御することにあり、鋳片
中に高温でのγ粒成長の抑制機能を発揮する微細なMg
系酸化物を分散晶出させることにある。これらの粒子の
分散個数が50個/mm2未満では、1200〜1300℃
加熱におけるγ粒径がASTM No.6番以上の細粒を得
ることはできないため下限を50個/mm2とする。
【0025】なお、Mg系酸化物個数はX線マイクロア
ナライザー(EPMA)で測定し決定したものである。
上記の処理を経た鋳片は、次いで1200〜1300℃
の温度域に再加熱する。この温度域に再加熱温度を限定
したのは、熱間加工による形鋼の製造には塑性変形を容
易にするため1200℃以上の加熱が必要であり、且つ
V、Nb、Moなどの元素を十分に固溶させる必要があ
るため再加熱温度の下限を1200℃とした。その上限
は加熱炉の性能、経済性から1300℃とした。
【0026】熱間圧延のパス間で水冷し、圧延中に一回
以上、フランジ表面温度を700℃以下に冷却し、次の
圧延パス間の復熱過程で圧延する水冷・圧延工程を1回
以上繰り返し行うとしたのは、圧延パス間の水冷によ
り、フランジの表層部と内部とに温度差を付与し、軽圧
下条件においても内部への加工歪みを浸透させるため
と、水冷により短時間で低温圧延を実現させTMCPを
効率的に行うためである。
【0027】フランジ表面温度を700℃以下に冷却し
た後、復熱過程で圧延するのは、仕上げ圧延後の加速冷
却による表面の焼入れ硬化を抑制し厚み方向の硬さ分布
を均一にさせるために行うものである。その理由は、フ
ランジ表面温度を700℃以下に冷却すれば、表層部で
は、一旦γ/α変態温度を切り、次の圧延までに表層部
は復熱昇温し、γ/αの二相共存温度域での加工とな
り、γ細粒化と加工された微細αとの混合組織を形成す
る。これにより表層部の焼入性は著しく低減でき、加速
冷却により生じる表面層の焼入れ硬化を抑制できるから
である。
【0028】また、圧延終了後、引続き、0.5〜10
℃/sの冷却速度で700〜400℃まで冷却し放冷す
るとしたのは、加速冷却によりフェライトの粒成長抑制
とベイナイト組織を微細化し高強度・高靭性を得るため
である。次いで、加速冷却を700〜400℃で停止す
るのは、700℃を超える温度で停止した場合は、表層
部の一部がAr1 点以上となりγ相を残存し、これを核に
フェライトが成長し粗粒化するため加速冷却の停止温度
を700℃以下とした。また、400℃未満の冷却で
は、その後の放冷中にベイナイト相のラス間に生成する
M*が、冷却中に焼戻されセメンタイトを析出すること
により分解できず、硬化相として存在することになる。
このM*は脆性破壊の起点として作用し、靭性低下を招
く。これらの理由により、加速冷却の停止温度を700
〜400℃に限定した。
【0029】
【実施例】試作形鋼は転炉溶製し、合金を添加後、予備
脱酸処理を行い、溶鋼の酸素濃度を調整後、Ti、B、
次いでMg合金を添加し、連続鋳造により 250〜300mm
厚鋳片に鋳造した。鋳片の冷却速度はモールド下方の二
次冷却帯の水量と鋳片の引き抜き速度の選択によりおよ
そ5℃/sに制御した。該鋳片を加熱し、粗圧延工程の
図示は省略するが、図1に示すユニバーサル圧延装置列
でH形鋼に圧延した。圧延パス間水冷は中間ユニバーサ
ル圧延機4の前後に水冷装置5aを設け、フランジ外側
面のスプレー冷却とリバース圧延の繰り返しにより行
い、圧延後の加速冷却は仕上げユニバーサル圧延機6で
圧延終了後にその後面に設置した冷却装置5bでフラン
ジ外側面をスプレー冷却した。
【0030】機械特性は図2に示す、フランジ2の板厚
t2 の中心部(1/2t2 )でフランジ幅全長(B) の1/4,1/
2 幅(1/4B,1/2B) から、採集した試験片を用い求めた。
なお、これらの箇所についての特性を求めたのは、フラ
ンジ1/4F部はH形鋼の平均的な機械特性を示し、フラン
ジ1/2F部はその特性が最も低下するので、これらの2箇
所によりH形鋼の機械試験特性を代表できると判断した
ためである。
【0031】表1、表3には、本発明鋼及び比較鋼の化
学成分値を、表2、表4には、これらの鋼におけるTi
添加前の酸素濃度および鋳片中のMg系酸化物およびこ
れとTiNとの複合体の分布密度を示す。表5、表6に
は、圧延加熱時のγ粒度、圧延・加速冷却条件を,次い
で表7、表8には、これらのH形鋼の機械試験特性値を
示す。なお、圧延加熱温度を1300℃に揃えたのは、
一般的に加熱温度の低下によりγ粒は細粒化し、機械試
験特性を向上させることは周知であり、高温加熱条件で
は機械特性の最低値を示すと推定され、この値がそれ以
下の加熱温度での機械試験特性を代表できると判断した
ためである。
【0032】表7、8に示すように、本発明によるH形
鋼1〜5、A1〜A3では、SM490級鋼でのJIS規格
の降伏強度の下限値+120N/mm2以内(YP=325〜445N/m
m2)に制御され、しかも、降伏比(YP/TS )も0.8 以下
の低YR値を満たし、抗張力(前記JISG3106)及
び700℃での降伏強度が220N/mm2以上を満たしてい
る。シャルピー衝撃吸収エネルギー値についても−10
℃で47(J) 以上でありJIS規格値を十分に満たして
いる。
【0033】一方、比較鋼のH形鋼6では、Mo含有量
が、H形鋼7では、Cu含有量が、下限値以下であり、
700℃での高温強度の目標値を満たさない。加えて、
H形鋼7では、Siが上限値を超えているため靭性値が
目標値以下となる。H形鋼8では、N量の不足に加え、
Ti/Nの値が3.5を超えるためγ粒径は粗粒化し靭
性が目標値以下となる。
【0034】H形鋼9では、N、Tiが過剰で、しかも
Ti/Nの値が過小であるため、固溶NによるM*と粗
大TiNの生成により靭性が低下する。H形鋼10で
は、Bが、H形鋼11ではAlが過剰であるために、靭
性値がクリアできない。また、H形鋼では、Mg量が不
足し、Mg酸化物の生成個数が不足し、γ粒径が粗粒と
なり、組織微細化が達成できず靭性値がクリアできな
い。
【0035】比較鋼のH形鋼A4では、Ti添加前の溶
鋼の酸素濃度が本発明の下限値以下となっているために
Mg系酸化物の個数が不足し、それに反し、比較鋼のH
形鋼A5では、この酸素濃度の上限値を超えているため
に3μm以上の大きさの粗大な酸化物が形成され、これ
らにより何れもシャルピー衝撃値が開発目標の−10℃
で47J以上を達成できない。H形鋼A6では、圧延中
の水冷がなされていず、十分な組織微細化が達成でき
ず、700℃での降伏強度および−10℃でのシャルピ
ー衝撃値の目標値を達成できない。
【0036】即ち、本発明の製造法の要件が総て満たさ
れた時に、表7、8に示されるH形鋼1〜5、A1〜A
3のように、圧延形鋼の機械試験特性の最も保証しにく
いフランジ板厚1/2,幅1/2 部においても十分な常温・高
温強度、低温靭性を有する、耐火性及び靭性の優れた圧
延形鋼の生産が可能になる。なお、本発明が対象とする
圧延形鋼は上記実施例のH形鋼に限らずI形鋼、山形
鋼、溝形鋼、不等辺不等厚山形鋼等のフランジを有する
形鋼にも適用できることは勿論である。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
【0044】
【表8】
【0045】
【発明の効果】本発明による圧延形鋼は機械試験特性の
最も保証しにくいフランジ板厚1/2,幅1/2 部においても
十分な強度、靭性を有し、高温特性に優れ、耐火材の被
覆を大幅に省略できる、優れた耐火性及び靭性を持つ形
鋼が圧延ままで製造可能になり、施工コスト低減、工期
の短縮による大幅なコスト削減が図られ、大型建造物の
信頼性向上、安全性の確保、経済性等の産業上の効果は
極めて顕著なものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法を実施する装置配置例の略図である。
【図2】H形鋼の断面形状および機械試験片の採取位置
を示す図である。
【符号の説明】
1…H形鋼 2…フランジ 3…ウェブ 4…中間圧延機 5a…中間圧延機前後面の水冷装置 5b…仕上げ圧延機後面冷却装置 6…仕上げ圧延機

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量% で C:0.02〜0.06% 、 Si: 0.05〜0.25% 、 Mn:0.8〜1.6%、 Mo:0.4〜0.8%、 Cu:0.7〜1.5%、 N: 0.004〜0.010%、 B:0.0003% 以下、 Nb:0.03%以下、 V:0.1% 以下、 Al:0.005% 以下、 を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなる溶鋼の酸
    素量を重量%で 0.003〜0.010%に調整後、TiとNの比が
    Ti/N: 3.0〜3.5 となるようにTi:0.012〜0.030%を
    添加し、更にMg: 0.0005〜0.0050% を添加して鋳造した
    鋼片中に大きさ3μm 以下のMg系酸化物およびMg系酸
    化物とTiNの複合析出物を50個/mm2以上含有させたこ
    とを特徴とする耐火圧延形鋼。
  2. 【請求項2】 重量% で C:0.02〜0.06% 、 Si: 0.05〜0.25% 、 Mn:0.8〜1.6%、 Mo:0.4〜0.8%、 Cu:0.7〜1.5%、 N :0.004〜0.010%、 B: 0.0003%以下、 Nb:0.03%以下、 V:0.1% 以下、 Al:0.005% 以下、 を含み、かつCr:1.0% 以下、Ni:2.0% 以下のいずれかの
    1種または2種以上を含有し残部がFeおよび不可避不純
    物からなる溶鋼の酸素量を重量%で 0.003〜0.010%に調
    整後、TiとNの比がTi/N: 3.0〜3.5 となるように
    Ti:0.012〜0.030%添加し、更にMg: 0.0005〜0.0050% を
    添加して鋳造した鋼片中に大きさ3μm以下のMg系酸化
    物およびMg系酸化物とTiNの複合析出物を50個/mm2
    以上含有させたことを特徴とする耐火圧延形鋼。
  3. 【請求項3】 重量% で C:0.02〜0.06% 、 Si: 0.05〜0.25% 、 Mn:0.8〜1.6%、 Mo:0.4〜0.8%、 Cu:0.7〜1.5%、 N: 0.004〜0.010%、 B: 0.0003%以下、 Nb:0.03%以下、 V:0.1% 以下、 Al:0.005% 以下、 を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなる溶鋼の酸
    素量を重量%で 0.003〜0.010%に調整後、TiとNの比が
    Ti/N: 3.0〜3.5 となるようにTi:0.012〜0.030%を
    添加し、更にMg: 0.0005〜0.0050% を添加して成分調整
    した溶鋼を鋳造し、鋳片中に大きさ3μm 以下のMg系酸
    化物およびMg系酸化物とTiNの複合析出物を50個/m
    m2以上含有させた鋳片を1200〜1300℃の温度域に再加熱
    した後に圧延を開始し、圧延工程で形鋼のフランジ表面
    温度を 700℃以下に水冷し、以降の圧延パス間の復熱過
    程で圧延する水冷・圧延工程を一回以上繰り返し圧延
    し、圧延終了後に 0.5〜10℃/sの冷却速度で 700〜400
    ℃まで冷却し放冷することを特徴とする耐火圧延形鋼の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 重量% で C:0.02〜0.06% 、 Si: 0.05〜0.25% 、 Mn:0.8〜1.6%、 Mo:0.4〜0.8%、 Cu:0.7〜1.5%、 N: 0.004〜0.010%、 B: 0.0003%以下、 Nb:0.03%以下、 V:0.1% 以下、 Al:0.005% 以下、 を含み、かつCr:1.0% 以下、Ni:2.0% 以下のいずれかの
    1種または2種以上を含有し残部がFeおよび不可避不純
    物からなる溶鋼の酸素量を重量%で 0.003〜0.010%に調
    整後、TiとNの比がTi/N: 3.0〜3.5 となるように
    Ti:0.012〜0.030%を添加し、更にMg: 0.0005〜0.0050%
    を添加して成分調整した溶鋼を鋳造し、鋳片中に大きさ
    3μm 以下のMg系酸化物およびMg系酸化物とTiNの
    複合析出物を50個/mm2以上含有させた鋳片を1200〜1300
    ℃の温度域に再加熱した後に圧延を開始し、圧延工程で
    形鋼のフランジ表面温度を 700℃以下に水冷し、以降の
    圧延パス間の復熱過程で圧延する水冷・圧延工程を一回
    以上繰り返し圧延し、圧延終了後に 0.5〜10℃/sの冷却
    速度で 700〜400 ℃まで冷却し放冷することを特徴とす
    る耐火圧延形鋼の製造方法。
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