JPH0770637A - アーク溶接部の耐疲労性に優れた耐食性鋼板の製造方法 - Google Patents
アーク溶接部の耐疲労性に優れた耐食性鋼板の製造方法Info
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- JPH0770637A JPH0770637A JP21934993A JP21934993A JPH0770637A JP H0770637 A JPH0770637 A JP H0770637A JP 21934993 A JP21934993 A JP 21934993A JP 21934993 A JP21934993 A JP 21934993A JP H0770637 A JPH0770637 A JP H0770637A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】アーク溶接部の耐疲労性に優れた耐食性鋼板の
製造方法の提供。 【構成】C: 0.006〜0.08%、Si: 0.6〜1.6 %、Mn:
0.50〜1.5 %、P:0.03〜0.10%、S:0.010 %以下、
Cu: 0.2〜0.7 %、Ni:0.10〜0.40%およびCr:0.1 %
以下を含有する素材鋼スラブを加熱して熱間圧延し、A
r3点以上の温度域で仕上圧延を完了し、500 ℃以下の温
度域で巻き取るアーク溶接部の耐疲労性に優れた耐食性
鋼板の製造方法。 【効果】自動車の足廻り部品用の素材として好適な、ア
ーク溶接部の耐疲労性に優れた耐食性鋼板を製造するこ
とができる。
製造方法の提供。 【構成】C: 0.006〜0.08%、Si: 0.6〜1.6 %、Mn:
0.50〜1.5 %、P:0.03〜0.10%、S:0.010 %以下、
Cu: 0.2〜0.7 %、Ni:0.10〜0.40%およびCr:0.1 %
以下を含有する素材鋼スラブを加熱して熱間圧延し、A
r3点以上の温度域で仕上圧延を完了し、500 ℃以下の温
度域で巻き取るアーク溶接部の耐疲労性に優れた耐食性
鋼板の製造方法。 【効果】自動車の足廻り部品用の素材として好適な、ア
ーク溶接部の耐疲労性に優れた耐食性鋼板を製造するこ
とができる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、主に自動車の足廻り部
品用の素材として好適な、アーク溶接部の耐疲労性と耐
食性に優れた引張強さ 540〜790 N/mm2級の鋼板に関す
る。
品用の素材として好適な、アーク溶接部の耐疲労性と耐
食性に優れた引張強さ 540〜790 N/mm2級の鋼板に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車では環境問題などに対処す
るために燃費向上が図られており、自動車用鋼板には、
高強度化による薄肉 (軽量) 化が要求されている。
るために燃費向上が図られており、自動車用鋼板には、
高強度化による薄肉 (軽量) 化が要求されている。
【0003】この高強度化の要求に対応するためには、
次のような二つの重要な特性の向上が要求される。すな
わち、加工性の観点から高強度化による成形性の劣化を
できる限り少なくすること、ならびに、自動車の足廻り
部品に関しては耐孔あき性に代表される耐食性および耐
疲労性を向上させることである。
次のような二つの重要な特性の向上が要求される。すな
わち、加工性の観点から高強度化による成形性の劣化を
できる限り少なくすること、ならびに、自動車の足廻り
部品に関しては耐孔あき性に代表される耐食性および耐
疲労性を向上させることである。
【0004】耐食性の向上のためにめっき処理を施すと
加工性の劣化が起こるだけでなく、溶接部に発生するブ
ローホールのため、溶接部の耐疲労性も劣化する。
加工性の劣化が起こるだけでなく、溶接部に発生するブ
ローホールのため、溶接部の耐疲労性も劣化する。
【0005】このようなことから、加工性や溶接性を損
なうことなく耐食性を改善する方法として、鋼板自体に
耐食性をもたせることが提案されている。このような改
善方法により、めっき処理する場合にも薄目付量でよい
ことになる。
なうことなく耐食性を改善する方法として、鋼板自体に
耐食性をもたせることが提案されている。このような改
善方法により、めっき処理する場合にも薄目付量でよい
ことになる。
【0006】高耐食性自動車用鋼板として、例えば特公
昭60−9584号公報には、C: 0.001〜0.05%、Si:0.00
05〜0.3 %、Mn:0.01〜0.29%、Al: 0.001〜0.07%、
Cu:0.26〜0.35%、P: 0.005〜0.02%およびNi:0.03
〜0.09%を基本成分して、その他にNb、V、Mo、Bの1
種または2種以上(Nb、V、Moは0.01〜0.3 %、Bは0.
0001〜0.05%)、必要によりCr:0.01〜0.1 %を含有す
るものが開示されている。
昭60−9584号公報には、C: 0.001〜0.05%、Si:0.00
05〜0.3 %、Mn:0.01〜0.29%、Al: 0.001〜0.07%、
Cu:0.26〜0.35%、P: 0.005〜0.02%およびNi:0.03
〜0.09%を基本成分して、その他にNb、V、Mo、Bの1
種または2種以上(Nb、V、Moは0.01〜0.3 %、Bは0.
0001〜0.05%)、必要によりCr:0.01〜0.1 %を含有す
るものが開示されている。
【0007】成形性に優れた高耐食性鋼板として、例え
ば特公平1−53344 号公報には、C:0.02%以下、Si:
0.3 %以下、Mn:0.5 %以下、P:0.025 %以下、S:
0.025 %以下、酸可溶Al:0.02〜0.15%、Ti:C量の4
倍以上でかつ0.02%以上 0.3%以下、Cr: 5.5〜10%未
満、Cu:0.01〜0.50%およびNi:0.01〜0.50%を含有す
るものが開示されている。
ば特公平1−53344 号公報には、C:0.02%以下、Si:
0.3 %以下、Mn:0.5 %以下、P:0.025 %以下、S:
0.025 %以下、酸可溶Al:0.02〜0.15%、Ti:C量の4
倍以上でかつ0.02%以上 0.3%以下、Cr: 5.5〜10%未
満、Cu:0.01〜0.50%およびNi:0.01〜0.50%を含有す
るものが開示されている。
【0008】本出願人は、特開平4−141525号公報およ
び同4−141526号公報において、Cr: 0.5〜5.0 %、
P:0.12%以下、Cu: 0.5〜3.0 %を含有することを最
も特徴とする耐食性の優れた熱延高張力鋼板の製造方法
を示した。
び同4−141526号公報において、Cr: 0.5〜5.0 %、
P:0.12%以下、Cu: 0.5〜3.0 %を含有することを最
も特徴とする耐食性の優れた熱延高張力鋼板の製造方法
を示した。
【0009】上記のように鋼板の耐食性を向上させるた
めに、CrあるいはCu、Pを含有させることは既に知られ
ているが、Crは化成処理性を劣化させ、かつ塗装密着性
も劣化させる。このため、自動車の足廻り部品のように
電着塗装を行う場合には、塗装密着性が劣化するという
問題がある。
めに、CrあるいはCu、Pを含有させることは既に知られ
ているが、Crは化成処理性を劣化させ、かつ塗装密着性
も劣化させる。このため、自動車の足廻り部品のように
電着塗装を行う場合には、塗装密着性が劣化するという
問題がある。
【0010】また、上記のような従来の鋼板では、耐食
性および成形性に関しては考慮されているものの、アー
ク溶接部の耐疲労性について検討しているものはみられ
ない。一般に強度が上昇するとアーク溶接部の耐疲労性
は劣化し、特に540 N/mm2以上の強度では著しい。この
主要因には、亀裂の起点となる止端部への応力集中と残
留応力の影響のふたつが考えられる。
性および成形性に関しては考慮されているものの、アー
ク溶接部の耐疲労性について検討しているものはみられ
ない。一般に強度が上昇するとアーク溶接部の耐疲労性
は劣化し、特に540 N/mm2以上の強度では著しい。この
主要因には、亀裂の起点となる止端部への応力集中と残
留応力の影響のふたつが考えられる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、耐食
性とともに、例えば自動車の足廻り部品として実際の使
用上重要であるアーク溶接部の耐疲労性に優れた特性を
併せ持つ熱延鋼板の製造方法を提供することにある。
性とともに、例えば自動車の足廻り部品として実際の使
用上重要であるアーク溶接部の耐疲労性に優れた特性を
併せ持つ熱延鋼板の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は次の耐食
性鋼板の製造方法にある。
性鋼板の製造方法にある。
【0013】重量%で、C: 0.006〜0.08%、Si: 0.6
〜1.6 %、Mn:0.50〜1.5 %、P:0.03〜0.10%、S:
0.010 %以下、Cu: 0.2〜0.7 %、Ni:0.10〜0.40%お
よびCr:0.1 %以下を含有し、残部はFeおよび不可避不
純物からなる素材鋼スラブを加熱して熱間圧延し、Ar3
点以上の温度域で仕上圧延を完了し、500 ℃以下の温度
域で巻き取ることを特徴とするアーク溶接部の耐疲労性
に優れた耐食性鋼板の製造方法。
〜1.6 %、Mn:0.50〜1.5 %、P:0.03〜0.10%、S:
0.010 %以下、Cu: 0.2〜0.7 %、Ni:0.10〜0.40%お
よびCr:0.1 %以下を含有し、残部はFeおよび不可避不
純物からなる素材鋼スラブを加熱して熱間圧延し、Ar3
点以上の温度域で仕上圧延を完了し、500 ℃以下の温度
域で巻き取ることを特徴とするアーク溶接部の耐疲労性
に優れた耐食性鋼板の製造方法。
【0014】上記の素材鋼は、耐食性向上のためにCu、
Pを添加するのに加え、塗装鋼板とした場合の塗装密着
性の劣化を防止するためにCr含有量を抑制し、さらにア
ーク溶接部の耐疲労性向上のために、Cu、P、Siを化成
処理性に問題のない範囲で複合添加するものであること
を特徴とする。
Pを添加するのに加え、塗装鋼板とした場合の塗装密着
性の劣化を防止するためにCr含有量を抑制し、さらにア
ーク溶接部の耐疲労性向上のために、Cu、P、Siを化成
処理性に問題のない範囲で複合添加するものであること
を特徴とする。
【0015】
【作用】本発明の製造方法を上記のように定めた理由に
ついて、以下詳細に説明する。
ついて、以下詳細に説明する。
【0016】まず、本発明方法の対象となる素材鋼の化
学組成を定めた理由を作用効果とともに述べる。%は重
量%を意味する。
学組成を定めた理由を作用効果とともに述べる。%は重
量%を意味する。
【0017】C: 0.006〜0.08% Cは耐食性、成形性に対して重要な元素である。C含有
量が0.006 %未満では、粒界に偏析するPのために耐2
次加工脆性が大きく低下する。一方、0.08%を超えると
パーライトの増大により耐食性が低下するだけでなく、
加工性も低下する。また、溶接部は焼入れによる応力集
中により耐疲労性が低下する。このため、C含有量の範
囲は 0.006〜0.08%とした。
量が0.006 %未満では、粒界に偏析するPのために耐2
次加工脆性が大きく低下する。一方、0.08%を超えると
パーライトの増大により耐食性が低下するだけでなく、
加工性も低下する。また、溶接部は焼入れによる応力集
中により耐疲労性が低下する。このため、C含有量の範
囲は 0.006〜0.08%とした。
【0018】Si: 0.6〜1.6 % SiはCu、Pと複合添加するとアーク溶接部の耐疲労性を
向上させる。すなわち、Si含有量が増加すると、後述す
るように、溶接部のビード形状がなめらかになり、溶接
部の余盛り角度が大きく、かつ適正な角度となる結果、
耐疲労性が向上する。この効果はSi含有量が0.6 %以上
でなければ認められない。しかし、 1.6%を超えるとこ
の効果は飽和してしまう。さらに化成処理性も低下す
る。よって、Si含有量の範囲は 0.6〜1.6 %とした。
向上させる。すなわち、Si含有量が増加すると、後述す
るように、溶接部のビード形状がなめらかになり、溶接
部の余盛り角度が大きく、かつ適正な角度となる結果、
耐疲労性が向上する。この効果はSi含有量が0.6 %以上
でなければ認められない。しかし、 1.6%を超えるとこ
の効果は飽和してしまう。さらに化成処理性も低下す
る。よって、Si含有量の範囲は 0.6〜1.6 %とした。
【0019】Mn:0.50〜1.5 % Mnは、Si単独添加による熱間脆性防止のために含有させ
る。この効果はMn含有量が0.50%以上でないと得られな
い。一方、1.5 %を超えると伸びが低下し、加工性の劣
化が著しくなる。このため、Mn含有量の範囲は0.50〜1.
5 %とした。
る。この効果はMn含有量が0.50%以上でないと得られな
い。一方、1.5 %を超えると伸びが低下し、加工性の劣
化が著しくなる。このため、Mn含有量の範囲は0.50〜1.
5 %とした。
【0020】P:0.03〜0.10% PはCuとともに添加すると耐食性を向上させる。また、
Si、Cuと複合添加することでアーク溶接部の耐疲労性を
向上させる。この効果は共にP含有量が0.03%以上で現
れる。しかし、0.10%を超えると耐2次加工脆性の劣化
が著しく、実用部品への適用は困難となる。このため、
P含有量の範囲は0.03〜0.10%とした。
Si、Cuと複合添加することでアーク溶接部の耐疲労性を
向上させる。この効果は共にP含有量が0.03%以上で現
れる。しかし、0.10%を超えると耐2次加工脆性の劣化
が著しく、実用部品への適用は困難となる。このため、
P含有量の範囲は0.03〜0.10%とした。
【0021】S:0.010 %以下 Sは経済上の問題がなければ低い方が望ましい。Sの増
加に従い耐食性が劣化し、特に0.010 %を超えると介在
物による伸びフランジ性(ホイールディスクのハブ穴成
形に代表される穴拡げ性)が著しく低下する。よって、
S含有量の上限は0.010 %とした。
加に従い耐食性が劣化し、特に0.010 %を超えると介在
物による伸びフランジ性(ホイールディスクのハブ穴成
形に代表される穴拡げ性)が著しく低下する。よって、
S含有量の上限は0.010 %とした。
【0022】Cu: 0.2〜0.7 % CuはPと同様に耐食性向上のための必須元素である。し
かし、その効果を得るには0.2 %以上の含有量が必要で
ある。一方、0.7 %を超えるとこの効果が飽和する。ま
た、Si、Pと複合添加するとアーク溶接部の耐疲労性を
向上させる。このため、Cu含有量の範囲は 0.2〜0.7 %
とした。
かし、その効果を得るには0.2 %以上の含有量が必要で
ある。一方、0.7 %を超えるとこの効果が飽和する。ま
た、Si、Pと複合添加するとアーク溶接部の耐疲労性を
向上させる。このため、Cu含有量の範囲は 0.2〜0.7 %
とした。
【0023】なお、Cuを含有させると、Cuチェッキング
(スラブ表面のFeの酸化により残部に低融点のCuが濃化
して、溶体Cuが鋼の粒界を浸食し、スラブ表面に亀裂を
発生させる現象)が起こりやすく、これを防止するため
に、NiをCu含有量の 1/2程度で含有させる必要が生ず
る。
(スラブ表面のFeの酸化により残部に低融点のCuが濃化
して、溶体Cuが鋼の粒界を浸食し、スラブ表面に亀裂を
発生させる現象)が起こりやすく、これを防止するため
に、NiをCu含有量の 1/2程度で含有させる必要が生ず
る。
【0024】Ni:0.10〜0.40% Niは上記のように、Cuチェッキング防止のための必須元
素である。Cu含有量の1/2 程度でこの効果が得られるの
で、下限は0.10%とした。一方、1/2 程度をあまり超え
るとコストが高くなるだけであるので、上限を0.40%と
した。この理由て、Ni含有量の範囲は0.10〜0.40%とし
た。
素である。Cu含有量の1/2 程度でこの効果が得られるの
で、下限は0.10%とした。一方、1/2 程度をあまり超え
るとコストが高くなるだけであるので、上限を0.40%と
した。この理由て、Ni含有量の範囲は0.10〜0.40%とし
た。
【0025】Cr:0.1 %以下 Crは無塗装鋼板では耐孔あき性を向上させるのに有効な
元素である。しかし、塗装密着性を著しく劣化させる。
そのため、Cr含有量が0.1 %を超えると、自動車の足廻
り部品では電着塗装後の最大孔あき深さが増加する。よ
って、Cr含有量の上限は0.1 %とした。
元素である。しかし、塗装密着性を著しく劣化させる。
そのため、Cr含有量が0.1 %を超えると、自動車の足廻
り部品では電着塗装後の最大孔あき深さが増加する。よ
って、Cr含有量の上限は0.1 %とした。
【0026】次に、製造条件の限定理由について説明す
る。
る。
【0027】熱間圧延は、転炉などで溶製し、連続鋳造
などにより製造した上記の素材鋼スラブを1100℃以上に
加熱した後行う、通常の方法で実施する。
などにより製造した上記の素材鋼スラブを1100℃以上に
加熱した後行う、通常の方法で実施する。
【0028】熱間圧延における仕上圧延はAr3点以上の
温度域で完了させる。これは、Ar3点未満の温度域で圧
延を行うとフェライト変態を起こし、かつそのフェライ
トが加工を受け、延性を劣化させるためである。
温度域で完了させる。これは、Ar3点未満の温度域で圧
延を行うとフェライト変態を起こし、かつそのフェライ
トが加工を受け、延性を劣化させるためである。
【0029】巻き取りは500 ℃以下の温度域で実施しな
ければならない。巻取温度が500 ℃を超えると結晶粒径
が粗大化し、かつCuの粒内の析出およびPの粒界への偏
析により、耐2次加工脆性が著しく劣化するためであ
る。成形性とのかね合いもあり、できれば450 ℃以下と
するのが望ましい。
ければならない。巻取温度が500 ℃を超えると結晶粒径
が粗大化し、かつCuの粒内の析出およびPの粒界への偏
析により、耐2次加工脆性が著しく劣化するためであ
る。成形性とのかね合いもあり、できれば450 ℃以下と
するのが望ましい。
【0030】本発明方法の作用効果例を図1〜図6に基
づいて説明する。
づいて説明する。
【0031】図1は、上記の方法で製造された熱延鋼板
(本発明例、Si: 1.0%、Cu: 0.4%、P:0.07%)と
Plain-C系の熱延鋼板(比較例、Si: 0.6%未満、Cu:
0.1%、P:0.02%) とについて、溶接部疲労限
(σw :応力振幅)に及ぼす母材引張強さ(TS)の影
響を示す図である。このときの板厚は、2.6mm であり、
酸洗後、サンプルを切り出し、母材引張強さ(JIS5号試
験片、0°方向) と溶接後の溶接部疲労限を調査したも
のである。
(本発明例、Si: 1.0%、Cu: 0.4%、P:0.07%)と
Plain-C系の熱延鋼板(比較例、Si: 0.6%未満、Cu:
0.1%、P:0.02%) とについて、溶接部疲労限
(σw :応力振幅)に及ぼす母材引張強さ(TS)の影
響を示す図である。このときの板厚は、2.6mm であり、
酸洗後、サンプルを切り出し、母材引張強さ(JIS5号試
験片、0°方向) と溶接後の溶接部疲労限を調査したも
のである。
【0032】アーク溶接にはパルスMAG溶接を用い、
溶接条件は、シールドガス:Ar80%−CO2 20%、溶接電
流: 190A、溶接電圧:22V、溶接速度:100cm/min 、
ワイヤー:YGW15とした。
溶接条件は、シールドガス:Ar80%−CO2 20%、溶接電
流: 190A、溶接電圧:22V、溶接速度:100cm/min 、
ワイヤー:YGW15とした。
【0033】溶接部疲労限(σw )は、シェンク式平面
曲げ片振り疲労試験法で測定した。
曲げ片振り疲労試験法で測定した。
【0034】図1に示すように、アーク溶接部疲労限
は、母材引張強さが440 N/mm2以下では大きな違いは見
られないが、540 N/mm2以上では本発明例鋼が優れてい
ることがわかる。
は、母材引張強さが440 N/mm2以下では大きな違いは見
られないが、540 N/mm2以上では本発明例鋼が優れてい
ることがわかる。
【0035】図2は、図1の本発明例鋼においてSi含有
量を変化させたときの、アーク溶接部の疲労限(σw )
と母材引張強さ(TS)の比に及ぼすSi含有量の影響を
示す図である。Si含有量を増加しただけでTSが上昇
し、TSが上昇するに従いσwも上昇するので、Si含有
量を変化させたときの効果が表せない。このため、σw
/TSを耐疲労特性を表す指標値とし、これに及ぼすSi
含有量の影響を、σw に及ぼすSi含有量の影響とみなし
た。
量を変化させたときの、アーク溶接部の疲労限(σw )
と母材引張強さ(TS)の比に及ぼすSi含有量の影響を
示す図である。Si含有量を増加しただけでTSが上昇
し、TSが上昇するに従いσwも上昇するので、Si含有
量を変化させたときの効果が表せない。このため、σw
/TSを耐疲労特性を表す指標値とし、これに及ぼすSi
含有量の影響を、σw に及ぼすSi含有量の影響とみなし
た。
【0036】図3は、溶接部の縦断面と本発明における
余盛り角度(θ)の定義を模式的に示す図である。符号
1が鋼板、2がビード、θが余盛り角度である。
余盛り角度(θ)の定義を模式的に示す図である。符号
1が鋼板、2がビード、θが余盛り角度である。
【0037】図4は、余盛り角度(θ)に及ぼすSi含有
量の影響を示す図である。
量の影響を示す図である。
【0038】図2に示すように、Si含有量が0.6 %以上
ではアーク溶接部の耐疲労特性が向上しているのがわか
る。これは、図4に示すように、Si含有量が増すにつれ
て余盛り角度θも大きくなり、0.6 %以上では余盛り角
度θが 135°以上となるからである。
ではアーク溶接部の耐疲労特性が向上しているのがわか
る。これは、図4に示すように、Si含有量が増すにつれ
て余盛り角度θも大きくなり、0.6 %以上では余盛り角
度θが 135°以上となるからである。
【0039】この理由は明確ではないが、適正なSi含有
量により、図3に示す下側の鋼板1とビード2を形成す
る溶融金属との親和性が向上し、余盛り角度θが大きく
なる、すなわち、なめらかになるものと考えられる。
量により、図3に示す下側の鋼板1とビード2を形成す
る溶融金属との親和性が向上し、余盛り角度θが大きく
なる、すなわち、なめらかになるものと考えられる。
【0040】図5は、図1の本発明例鋼においてCuとP
の含有量を変化させたときの、耐疲労特性指標値に及ぼ
すCu、Pの含有量および余盛り角度(θ)の影響を示す
図である。Cu、Pの含有量が多くなるに従い、同じ余盛
り角度θでも耐疲労特性が向上する。
の含有量を変化させたときの、耐疲労特性指標値に及ぼ
すCu、Pの含有量および余盛り角度(θ)の影響を示す
図である。Cu、Pの含有量が多くなるに従い、同じ余盛
り角度θでも耐疲労特性が向上する。
【0041】図6は、図1の本発明例鋼においてCr含有
量を変化させたときの、無塗装鋼板と電着塗装鋼板にお
ける最大孔あき深さに及ぼすCr含有量の影響を示す図で
ある。電着塗装クロスカット鋼板では、Crの含有量が増
加するに従って最大孔あき深さが大きくなり、塗装後の
耐食性は劣化する。
量を変化させたときの、無塗装鋼板と電着塗装鋼板にお
ける最大孔あき深さに及ぼすCr含有量の影響を示す図で
ある。電着塗装クロスカット鋼板では、Crの含有量が増
加するに従って最大孔あき深さが大きくなり、塗装後の
耐食性は劣化する。
【0042】
【実施例】表1に示す化学組成の鋼を常法により溶製し
た後、連続鋳造でスラブとし、次いで熱間圧延を行っ
た。熱間圧延の仕上温度は900 ℃とし、表1に示す巻取
り温度で厚さ2.6mm の熱延鋼板とした。
た後、連続鋳造でスラブとし、次いで熱間圧延を行っ
た。熱間圧延の仕上温度は900 ℃とし、表1に示す巻取
り温度で厚さ2.6mm の熱延鋼板とした。
【0043】
【表1】
【0044】これらの鋼板を用いて、母材の引張特性、
耐食性および耐2次加工性、アーク溶接部の耐疲労性な
らびに電着塗装後の密着性を調査した。
耐食性および耐2次加工性、アーク溶接部の耐疲労性な
らびに電着塗装後の密着性を調査した。
【0045】引張試験は、JIS5号試験片による0°
方向とした。耐食性試験では、酸洗肌のままの鋼板で、
6ヶ月間のボルボサイクル試験を実施し、最大腐食深さ
で評価した。耐2次加工脆性試験は、絞り比 1.8で縦割
れ遷移温度を測定する方法で実施した。
方向とした。耐食性試験では、酸洗肌のままの鋼板で、
6ヶ月間のボルボサイクル試験を実施し、最大腐食深さ
で評価した。耐2次加工脆性試験は、絞り比 1.8で縦割
れ遷移温度を測定する方法で実施した。
【0046】ボルボサイクル試験とは、屋外暴露試験法
の一つであり、試験片を水平から60度傾斜させて設置
し、一週間に一回の割合で5%食塩水を散布することに
より、腐食を促進させる腐食試験法である。
の一つであり、試験片を水平から60度傾斜させて設置
し、一週間に一回の割合で5%食塩水を散布することに
より、腐食を促進させる腐食試験法である。
【0047】アーク溶接部の耐疲労性試験は、2.6mm の
熱延鋼板を酸洗した後、機械加工により溶接用試験片を
切り出し、溶接を前記と同じ条件で行った溶接部を用い
て実施した。耐疲労性の評価は、前記と同じ母材引張強
さ(TS)に対する疲労限(σw )の比を用いた。
熱延鋼板を酸洗した後、機械加工により溶接用試験片を
切り出し、溶接を前記と同じ条件で行った溶接部を用い
て実施した。耐疲労性の評価は、前記と同じ母材引張強
さ(TS)に対する疲労限(σw )の比を用いた。
【0048】密着性の評価は、カッターナイフで電着塗
装面に線刻する方法で、縦横各2mm間隔の碁盤目状のも
のを100 個形成し、全ての刻線部に粘着テープを押圧し
た後、そのテープを引き剥がした際の塗膜の剥離の有無
で行った。塗膜剥離が全く発生しなかったもののみを密
着性良好、1個でも発生したものを密着性不良と判定し
た。
装面に線刻する方法で、縦横各2mm間隔の碁盤目状のも
のを100 個形成し、全ての刻線部に粘着テープを押圧し
た後、そのテープを引き剥がした際の塗膜の剥離の有無
で行った。塗膜剥離が全く発生しなかったもののみを密
着性良好、1個でも発生したものを密着性不良と判定し
た。
【0049】表2にこれらの一連の試験結果を示す。
【0050】
【表2】
【0051】表2から明らかなように、本発明の方法で
製造された鋼板では、最大腐食深さは0.6mm 以下と小さ
く、縦割れ遷移温度は−50℃以下と低く、アーク溶接部
の耐疲労性は60%以上と高い。電着塗装後の塗膜の密
着性にも優れている。一方、比較例では、上記の各特性
のうちの何れかが劣っている。
製造された鋼板では、最大腐食深さは0.6mm 以下と小さ
く、縦割れ遷移温度は−50℃以下と低く、アーク溶接部
の耐疲労性は60%以上と高い。電着塗装後の塗膜の密
着性にも優れている。一方、比較例では、上記の各特性
のうちの何れかが劣っている。
【0052】
【発明の効果】本発明の方法によれば、アーク溶接部の
耐疲労性に優れた耐食性鋼板を製造することができる。
この方法による鋼板は、Crを抑制した上でCu、Pを添加
して耐食性を向上させ、さらにSiを複合添加することに
よりアーク溶接部の耐疲労性とを向上させたものである
から、自動車の足廻り部品のようにアーク溶接部が存在
する部品用の素材として好適なものである。
耐疲労性に優れた耐食性鋼板を製造することができる。
この方法による鋼板は、Crを抑制した上でCu、Pを添加
して耐食性を向上させ、さらにSiを複合添加することに
よりアーク溶接部の耐疲労性とを向上させたものである
から、自動車の足廻り部品のようにアーク溶接部が存在
する部品用の素材として好適なものである。
【図1】アーク溶接部の疲労限(σw )に及ぼす母材引
張強さの影響を示す図である。
張強さの影響を示す図である。
【図2】アーク溶接部の疲労限(σw )と母材引張強さ
の比に及ぼすSi含有量の影響を示す図である。
の比に及ぼすSi含有量の影響を示す図である。
【図3】溶接部の縦断面と余盛り角度(θ)の定義とを
模式的に示す図である。
模式的に示す図である。
【図4】余盛り角度(θ)に及ぼすSi含有量の影響を示
す図である。
す図である。
【図5】アーク溶接部の疲労限(σw )と母材引張強さ
の比に及ぼすCu、Pの含有量と余盛り角度(θ)の影響
を示す図である。
の比に及ぼすCu、Pの含有量と余盛り角度(θ)の影響
を示す図である。
【図6】最大孔あき深さに及ぼすCr含有量の影響を示す
図である。
図である。
1:鋼板、2:ビード、θ:余盛り角度
Claims (1)
- 【請求項1】重量%で、C: 0.006〜0.08%、Si: 0.6
〜1.6 %、Mn:0.50〜1.5 %、P:0.03〜0.10%、S:
0.010 %以下、Cu: 0.2〜0.7 %、Ni:0.10〜0.40%お
よびCr:0.1 %以下を含有し、残部はFeおよび不可避不
純物からなる素材鋼スラブを加熱して熱間圧延し、Ar3
点以上の温度域で仕上圧延を完了し、500 ℃以下の温度
域で巻き取ることを特徴とするアーク溶接部の耐疲労性
に優れた耐食性鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP21934993A JPH0770637A (ja) | 1993-09-03 | 1993-09-03 | アーク溶接部の耐疲労性に優れた耐食性鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP21934993A JPH0770637A (ja) | 1993-09-03 | 1993-09-03 | アーク溶接部の耐疲労性に優れた耐食性鋼板の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0770637A true JPH0770637A (ja) | 1995-03-14 |
Family
ID=16734062
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP21934993A Pending JPH0770637A (ja) | 1993-09-03 | 1993-09-03 | アーク溶接部の耐疲労性に優れた耐食性鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0770637A (ja) |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH04141526A (ja) * | 1990-09-28 | 1992-05-15 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 耐食性の優れた熱延高張力鋼板の製造方法 |
JPH0551646A (ja) * | 1991-02-01 | 1993-03-02 | Kobe Steel Ltd | 疲労特性と加工性の優れたホイールデイスク用高強度熱延鋼板の製造方法 |
JPH05195144A (ja) * | 1992-01-21 | 1993-08-03 | Nisshin Steel Co Ltd | 耐孔あき腐食性および孔拡げ性に優れた高張力鋼板およびその製造方法 |
-
1993
- 1993-09-03 JP JP21934993A patent/JPH0770637A/ja active Pending
Patent Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH04141526A (ja) * | 1990-09-28 | 1992-05-15 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 耐食性の優れた熱延高張力鋼板の製造方法 |
JPH0551646A (ja) * | 1991-02-01 | 1993-03-02 | Kobe Steel Ltd | 疲労特性と加工性の優れたホイールデイスク用高強度熱延鋼板の製造方法 |
JPH05195144A (ja) * | 1992-01-21 | 1993-08-03 | Nisshin Steel Co Ltd | 耐孔あき腐食性および孔拡げ性に優れた高張力鋼板およびその製造方法 |
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