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JPH06280044A - 放電加工による表面処理方法及び装置 - Google Patents

放電加工による表面処理方法及び装置

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Publication number
JPH06280044A
JPH06280044A JP8934093A JP8934093A JPH06280044A JP H06280044 A JPH06280044 A JP H06280044A JP 8934093 A JP8934093 A JP 8934093A JP 8934093 A JP8934093 A JP 8934093A JP H06280044 A JPH06280044 A JP H06280044A
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JP
Japan
Prior art keywords
electric discharge
machining
discharge machining
discharge
surface treatment
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Application number
JP8934093A
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English (en)
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Inventor
Nagao Saito
齋藤長男
Naotake Mori
毛利尚武
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Japan Science and Technology Agency
Original Assignee
Research Development Corp of Japan
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Publication date
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Priority to JP05089340A priority Critical patent/JP3098654B2/ja
Publication of JPH06280044A publication Critical patent/JPH06280044A/ja
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Publication of JP3098654B2 publication Critical patent/JP3098654B2/ja
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 50μm以下の如く薄い表面被覆層であって
も、平滑にして均一な被覆層を形成し得る放電加工によ
る表面処理技術を提供する。 【構成】 導電性又は非導電性材料を被表面処理材料の
表面にパルス放電加工により堆積させる表面処理に際し
て、放電によって有毒ガスを生成しない気体を加工液
と共に加工極間に供給することにより、或いは放電電
流の立上りを抑制し得る電流を流して放電痕電流密度を
小さくすることにより、放電による爆発圧力によって起
こる堆積層の飛散を抑制して平滑な且つ均一の表面被覆
層を得ることを特徴としている。放電によって有毒ガス
を生成しない気体として、加工液が石油などを含む場合
にはアルゴン、ヘリウム、炭酸ガス又は窒素ガスを用
い、加工液が水を主成分とする場合には空気を用いる。
この放電加工を一次加工として実施しても、或いは一次
加工として非導電性又は導電性材料を被処理材料の表面
に被覆した後、二次加工として実施してもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、放電加工による表面処
理技術に関し、より詳しくは、放電による爆発圧力によ
って起こる堆積層の飛散を抑制して、平滑にして均一な
被覆層を形成する表面処理方法及び装置に関し、一次表
面処理として、或いは適当な一次表面処理後の二次表面
処理として、導電性材料(例、金属)等からなる被処理材
料の上に、耐摩耗性、耐食性或いは低い摩擦係数を与え
るための表面処理として適している。
【0002】
【従来の技術】従来より、金属表面に耐摩耗性、耐食性
などを与えるための手段として、CVD(化学蒸着)、P
VD(真空蒸着)、電着、窒化、電気化学的めっき、無電
解めっき等が知られている。
【0003】しかし、CVD、PVDはいずれも、母材
の温度を360℃以上、1100℃程度まで上昇してコ
ーティングするため、母材が寸法変化又は硬度低下を生
じるという欠点があることは、広く知られている。硬化
層も数μmと薄い。また、窒化も、鋼材を500℃程度
にまで加熱して処理するという難点がある。
【0004】電着による表面は、母材に析出金属が単に
堆積若しくは析出するだけであり、拡散していないた
め、剥離し易いことは良く知られており、また水素脆性
を生ずるなどの欠点がある。電気化学的めっき、無電解
めっきの場合も同様である。
【0005】溶射により母材表面に堆積させたものは、
多孔質で且つ剥離し易いことは既に知られている。ま
た、これをレーザー光で再溶融させようとしても、入熱
がスポットの位置により不均一となり、またビーム進行
の境界に条痕を発生するため、美麗な表面を得ることが
できない。また、レーザー光等では、三次元の加工形状
には、構造上、適用困難である。
【0006】また、従来の表面処理法では、母材への拡
散が殆ど生じないので、ファインセラミックスなどの拡
散しにくい材料を充分な厚さ(例、数10μm〜100μ
m)でコーティングすることは困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】一方、本発明者は、こ
れらの表面処理法とは異なり、母材の金属材料全体を高
温に保つことにより生ずる寸法変化、母材の硬度(強度)
の低下、皮膜剥離等の欠点がなく、しかも充分な厚みで
耐食性、耐熱性等々の所望の表面特性を有する強固な被
覆層を形成し得る表面処理方法を先に提案した(特願平
3−329499号)。これは、まず、金属母材表面に
放電析出、蒸着、溶射等の方法により金属、セラミック
ス等の被覆を形成(一次加工)した後、被覆しようとする
材料(例、WC、TiC、TiB2、TiN、VCなどの硬
質材料及びW、Ti、V、Moなどの金属)を圧粉体とし
て電極形状に成形したものを電極として、被表面処理材
料(例、炭素鋼など)の上にパルス放電加工(二次加工)に
よって移転堆積せしめる方法である。
【0008】上記提案の方法によれば、放電析出、蒸
着、溶射等によって母材表面をコーティング(一次加工)
した場合は、付着力が弱く、組成も緻密でないが、液中
又は気体中でパルス放電(二次加工)を行うことにより、
微視的に放電点に発生する高温高圧力によって放電点を
再溶融及び母材に対して拡散させるので、全体の平均温
度を母材の寸法変化や硬度変化を生じる温度まで高める
ことなく、強固な表面被覆を形成することができる。
【0009】しかし、この方法は、数回の加工操作を繰
り返す必要があり、特に厚い表面被覆層を形成する際に
は極めて有効であるが、20〜50μm程度の厚みでよ
い場合には、1回の一次加工、二次加工のプロセスで表
面層の形成を完了するのが好ましい。このようなプロセ
スに対して、上記方法では、一次加工で堆積したものが
二次加工で飛散するため、加工層が一様な厚みに堆積し
ない場合がある。
【0010】本発明は、先の提案に係る表面処理技術を
改善して、50μm以下の如く薄い表面被覆層であって
も、平滑にして均一な被覆層を形成し得る放電加工によ
る表面処理技術を提供することを目的とするものであ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は、先の提案に
係る表面処理技術において一次加工で堆積したものが二
次加工で飛散する原因について検討した結果、二次加工
における放電発生直後の放電圧力が高すぎるために、飛
散力を大きくしていることが判明し、そして、放電圧力
を緩和し得る効果的な方法を見出し、ここに本発明を完
成したものである。
【0012】すなわち、本発明は、導電性又は非導電性
材料を被表面処理材料の表面にパルス放電加工により堆
積させる表面処理に際して、放電によって有毒ガスを生
成しない気体を加工液と共に加工極間に供給することに
より、放電による爆発圧力によって起こる堆積層の飛散
を抑制して平滑な且つ均一の表面被覆層を得ることを特
徴とする放電加工による表面処理方法を要旨としてい
る。
【0013】他の本発明は、導電性又は非導電性材料を
被表面処理材料の表面にパルス放電加工により堆積させ
る表面処理に際して、放電電流の立上りを抑制し得る電
流を流して放電痕の電流密度を小さくすることにより、
放電による爆発圧力によって起こる堆積層の飛散を抑制
して平滑な且つ均一の表面被覆層を得ることを特徴とす
る放電加工による表面処理方法を要旨としている。
【0014】更に、他の本発明は、導電性又は非導電性
材料を被表面処理材料の表面にパルス放電加工により堆
積させる表面処理装置において、放電によって有毒ガス
を生成しない気体を加工液と共に加工極間に供給する手
段を有していることを特徴とする放電加工による表面処
理装置を要旨としている。
【0015】更に、他の本発明は、導電性又は非導電性
材料を被表面処理材料の表面にパルス放電加工により堆
積させる表面処理装置において、放電電流の立上りを抑
制し得る電流を流して放電爆発圧力を小さくする放電加
工回路を有することを特徴とする放電加工による表面処
理装置を要旨としている。
【0016】
【作用】以下に本発明について更に詳細に説明する。
【0017】前述の如く、本発明の骨子は、要するに、
パルス放電加工に際し、放電極間に気体を混入するこ
とによって、放電圧力を緩和して飛散圧力を減少せしめ
る、或いは、放電回路に流れる絶縁破壊直後の電流の
立ち上がりを抑えて、電流が徐々に増加するように制御
することによって、飛散力を減少せしめる、というもの
である。勿論、とを併用できる。
【0018】(1)放電極間への気体の混入 図1は放電極間に気体を混入する装置を備えたパルス放
電加工装置の一例を示している。図中、1は一次加工後
の堆積層(例、60〜80μm)、2は被表面処理材料、
3は放電加工用電極(例、銅)、4は放電加工パルス電
源、5は加工液、6は気体(例、Arガス)投入ボンベ、
7は減圧バルブ、8は気体拡散用ノズル、9はサーボ機
構を表わしている。
【0019】適当な方法による一次加工によって形成し
た堆積層に対し、この放電加工装置を用い、アルゴンガ
スを加工液中に噴射して二次加工を行う。すなわち、ア
ルゴンガスが封入されたボンベ6より減圧バルブ7を通
してアルゴンガス拡散用ノズル8により、極間近くに供
給する。電極3は通常、サーボ機構により上下動しなが
ら(加工対向時は数秒〜10秒、各上下動時間:数秒)加
工をしているため、アルゴンガスは極間に拡散され、次
の放電は気泡を含んだ液中での加工となる。放電加工液
中に気体が混入され極間に供給されるが、これを効果的
ならしめるためには、電極を加工方向に近接及び離間さ
せて加工を行う場合に、極間が離れている時間内に加工
液が供給されるのが好ましい。
【0020】極間における気体混入加工液の作用は次の
とおりである。
【0021】極間が近接すれば放電加工が始まるが、混
入気体が存在しているところは、絶縁耐力が液中より大
きいので、放電は起こらず、液体だけが存在している個
所で放電が発生する。その場合に3つの現象が生じる。
【0022】(イ)液体だけが存在している個所で起こっ
た放電は、周囲が気体で囲まれているため、気体のない
時に比べて緩和されて小さい圧力で行われる。そのた
め、加工速度は減少するが、被加工材料表面に堆積した
材料の飛散量は著しく小さくなる。 (ロ)極間の気体は移動するため、次に発生する放電点
は、別の箇所に発生し、結局、放電が局所に集中せず分
散するため、いわゆるアーク放電の発生がなくなる。す
なわち、平滑な加工面となる。 (ハ)この場合に、もしも、油性の放電加工液を用いて気
体を混入する場合、油の高温分解によって生じる活性の
高い炭素を生じる。そのため、混入する気体として酸
素、空気を使用すれば一酸化炭素(CO)を生じ、水素ガ
スを使用すれば炭水化物(CnHm)を生じる。したがっ
て、気体としては、Ar、He等の化学的に安定なガスを
使用するのが好ましい。勿論、窒素ガスや炭酸ガスも安
定に有効に使用できる。
【0023】(2)放電電力の立上りの抑制 放電電力の立上りを抑制する方法としては特に制限され
ないが、例えば、インダクタンスを放電回路に直列に挿
入する方法、及びトランジスタを複数個スイッチング素
子として使用する方法などが挙げられる。
【0024】インダクタンスを放電回路に直列に挿入す
る方法を図2に示す。図3に示すように、インダクタン
スを挿入しない場合の電流波形はのように矩形状とな
るが、インダクタンスを挿入すればのように放電の発
生した時点の放電電流は抑えられて小さくなる。
【0025】放電電流の発生時点で電流が大きいと、図
4に示すように放電痕の電流密度が高くなり(すなわ
ち、放電痕の直径は、放電初期は小さく、放電時間の経
過と共に大きくなるから、立上りの早い電流では電流密
度が高くなる)、そのため、放電による爆発圧力が高く
なるので、表面の堆積層を吹き飛ばすことになる。した
がって、インダクタンス挿入による放電電流の発生時点
の放電電流が抑えられると、放電による爆発圧力が減少
するので、表面の堆積層を吹き飛ばすようなことが少な
くなる。
【0026】インダクタンスを直列に挿入する代わり
に、図5に示す如くトランジスタを複数個スイッチング
素子として使用する方法も可能である。スイッチングト
ランジスタを、放電時間の経過と共に順次導通して、図
6の(a)のような三角波、或いは(b)のような鋸歯波と
するスロープコントロールを行ってもよい。このような
スロープコントロールによっても、インダクタンスを放
電回路に直列に挿入する方法と同様の効果が得られ、放
電による爆発圧力が減少して、表面の堆積層を吹き飛ば
すようなことが少なくなる。
【0027】以上のような条件で、パルス放電を放電加
工の手法により液中で加えるが、他の放電加工条件は特
に制限されない。例えば、以下の要領で行う。
【0028】パルス放電加工に際しては、消耗しにくい
電極(銅)を使用するのが好ましい。なお、二次加工とし
ての放電析出法の場合の電極としては、堆積物に近い組
成の電極を使用するのが良く、導電性の粉体(例、W
C、TiC、TiB2、TiN、VC、或いはW、Ti、V
等の金属等の1種又は2種以上及び結合剤としてのC
o、Ni等の1種又は2種以上)を圧縮成形又は低温焼結
してなる電極の一次加工に対して、二次加工では、例え
ば、金属材料表面にWCを主体として堆積させた場合、
WC−Coを焼結した材料(例、バイトのチップ材料)を
電極に用いる。
【0029】放電は、1秒間に数百回から数万回程度で
発生させる。加工面は小さい微視的な放電痕の累積した
表面である。放電痕電流密度は、微小な面積であるが、
数万A/cm2と高く、高温高圧を数10μs〜1000μ
s程度の短時間で生ずる。放電点の表面温度は、その材
料の沸点程度となり、その点の圧力は数1000kgf/c
m2となり、溶解した部分は再溶融し、母材に拡散する。
放電時間が短時間のため、放電点が直ちに冷却され、母
材の平均温度は上昇することがない。
【0030】パルス放電加工の好ましい条件は、電源電
圧:60〜100V、パルス放電電流値(Ip):1〜1
00A、パルス幅(τp):5〜2000μs、休止時間
(τr):5〜2000μsである。一般的に、パルス放電
電流値Ipが小さい時、例えば、Ip=3Aなどではτp
=16μs、Ipが大きい時、例えばIp=50Aなどで
はτp=2000τsのように、Ipの小さい時はτpも短
かく、Ipの大きい時はτpを長くとる。
【0031】なお、本発明によるパルス放電加工は、そ
れ自身で被表面処理材料の表面を被覆してもよいが、予
め、一次加工として、非導電性又は導電性材料を被処理
材料の表面に被覆した後、二次加工として行うのが望ま
しい。
【0032】パルス放電加工を二次加工として行う場
合、一次加工法としては適当な方法が可能であり、例え
ば、溶射、電着、放電析出法、スラリー塗布などが挙げ
られる。なお、放電析出法とは、本発明者らが先に提案
した表面処理法であり(「1991年度精密工学会春季
大会学術講演会講演論文集」(1991年3月26日)
p.463)、析出すべき導電性材料を圧粉体として成形
し、放電加工の電極として用いて加工することにより、
相手側金属に圧粉体材料を析出させる方法である。もっ
とも、これらの堆積物は、母材中に拡散しないため、付
着強度が弱い。これらの方法のいずれも可能であるが、
後工程として行うパルス放電加工との関係からすれば、
放電析出法が好ましい。
【0033】また、被覆材料としては、様々な金属材料
又は非金属材料が可能であり、例えば、金属又は合金、
非金属元素、セラミックス、炭化物、窒化物、硼化物な
どである。具体的には、硬質材料として、WC、Ti
C、TaC、ZrC、SiCなどの炭化物、TiB2、ZrB
2などの硼化物、TiN、ZrNなどの窒化物など(ファイ
ンセラミックス)を単体で若しくは焼結助剤を加えた状
態で被覆できる。また、W、Moなどの金属材料やAl、
Ti、Ni、Cr、Coなどの耐食性材料も利用できる。更
に、ダイヤモンド、Al23、Si34の如く、導電性は
なくとも、鉄粉、コバルト粉、ニツケル粉、クロム粉、
銅粉などの導電性材料と混合して被覆しても良い。要す
るに、付与させる表面特性の関係で材料を選択すれば良
い。
【0034】本発明の表面処理方法によれば、低廉な炭
素鋼などの鉄鋼材料等の金属材料の表面に、耐熱性、耐
食性、耐摩耗性、硬度など所望の特性を有する緻密な層
を形成することができる。ファインセラミックスのよう
に鋼材の中に拡散しにくい材料であっても、再溶融によ
って母材に対する拡散と密着性を強固にすることができ
る。また、Al、Ti、Ni、Cr、Coのように鉄鋼材料
に固溶し易い材料でも、パルス放電処理すれば、なお一
層強固な表面処理が可能となる。すなわち、放電析出の
速度を速くするために大電流を用いて高速放電析出を行
う場合、Al、Ti、Ni、Cr、Coのように鉄鋼材料に
固溶し易い材料であっても、母材への拡散が不十分であ
り、また析出状態も凹凸が激しくなるが、パルス放電処
理によれば再溶融による拡散が促進される。また、電着
や電気めっき法により大電流密度でめっき速度を上げる
と、荒く密着力の小さいめっき層しか得られないが、パ
ルス放電加工を行うと、密着力の大きい表面層を形成す
ることができる。ダイヤモンド、Al23、Si34など
の非導電性の硬質材料に鉄粉、コバルト粉、ニツケル
粉、クロム粉、銅粉等の導電性金属を混入してコーティ
ングしたものに、パルス放電処理を行うと、導電性金属
が再溶融して非導電性硬質材料が強固に母材表面に固着
される。
【0035】また、傾斜性を持つ材料を製作することも
できる。傾斜性材料とは、例えば、母材を金属材料と
し、母材側から次第にファインセラミックスの含有割合
が多くなり、材料表面をファインセラミックスの含有割
合を著しく高めたような材料である。このような傾斜性
材料は、単に金属材料とファインセラミックスとを接合
若しくはコーティングした材料に比べ、温度上昇があっ
ても膨張係数の著しい差異による接合面の剪断応力の発
生や曲げ応力の発生が少ないため、高温度で使用中の破
断等が生じにくい。これは、温度上昇による熱膨張が発
生しても、応力としては緩和されるためである。
【0036】次に本発明の実施例を示す。
【0037】
【実施例1】
【0038】本例は、気体を混入するパルス放電加工を
二次加工法として行った例である。一次加工法並びに二
次加工法は以下の条件で行った。なお、母材は炭素鋼
(S55C)であり、図1の装置を使用した。
【0039】一次加工(放電析出)条件: 電極:圧粉体電極(WC:Co=8:2)、パルス放電電
流値(Ip):25A(電極マイナス)、パルス幅(τp):1
6μs、休止時間(τr):512μs、加工時間:15
分。
【0040】二次加工(パルス放電加工)条件: 電極:銅電極(16mmφ)、パルス放電電流値(Ip):1
5A(電極マイナス)、パルス幅(τp):1024μs、休
止時間(τr):1024μs、加工時間:15分、気体の
種類:アルゴンガス、気体噴射圧力:0.1kg/cm2
【0041】その結果、二次加工を一度行うだけで、加
工後の表面硬化層の断面厚さが約50μmとなり、マイ
クロビッカース硬度も1800程度と充分な硬度を示し
た。一次加工で60〜80μm程度の厚みであったもの
が50μm程度の均一な表面硬化層となっていること
は、二次加工による飛散がアルゴンガスの混入によって
減少されていると考えられる。同一箇所の加工断面の電
子顕微鏡写真を図7〜9に示す。図7は倍率50倍の場
合、図8は倍率200倍の場合、図9は倍率300倍の
場合を示す。表面硬化層が厚くても平滑で均一であるこ
とがわかる。
【0042】
【実施例2】
【0043】本例は、放電電力の立上りを抑えるパルス
放電加工を二次加工法として行った例である。一次加工
法並びに二次加工法は以下の条件で行った。なお、母材
は炭素鋼(S55C)であり、図2に示す回路を使用し
た。
【0044】一次加工(放電析出)条件: 電極:圧粉体電極(WC:Co=8:2)、パルス放電電
流値(Ip):25A(電極マイナス)、パルス幅(τp):1
6μs、休止時間(τr):512μs、加工時間:15
分。
【0045】二次加工(パルス放電加工)条件: 電極:銅電極(16mmφ)、パルス放電電流値(Ip):1
0A(電極プラス)、パルス幅(τp):1024μs、休止
時間(τr):1024μs、加工時間:4.5分、放電回
路の構成:図2(コイル直径36mm、22ターン、イン
ダクタンスL≒12μH)。
【0046】加工断面の顕微鏡写真を図10に示す。1
回の加工(二次加工)で厚さ30μm程度の緻密な加工層
(WC−Co)が得られていることがわかる。図11は倍
率を1100倍にて観察した表面層を示す写真であり、
加工層中に硬質粒子が一様に分散していることがわか
る。図12は加工層のマイクロビッカース硬度(荷重1
0g)の分布状態を示す図で、表面から約25μmがmHv
1710とWC−Co焼結体として充分な硬度を示して
いる。図13は加工表面のX線回折結果を示し、WCが
強く析出していることがわかる。挿入インダクタンスの
大きさは4〜200μH程度で良好な結果が得られる。
【0047】なお、多数のスイッチング素子を使用して
電流波形制御を行う場合も、上記実施例2(インダクタ
ンス挿入)とほぼ同じ結果が得られることを確認した。
しかも、スイッチング素子による方法は、電流の立上り
傾斜の度合を任意に容易に変えられるので(インダクタ
ンス挿入の場合は異なるインダクタンスを結線し直す必
要がある)、工業的に有利である。
【0048】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
放電圧力を緩和する条件でパルス放電加工を行うので、
被覆層の飛散力が減少でき、したがって、50μm以下
の如く薄い表面被覆層であっても、平滑にして均一な被
覆層を形成することが可能となる。特に適当な一次加工
後に二次加工として行う場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】気体混入によるパルス放電加工装置の一例を示
す図である。
【図2】インダクタンス挿入によるパルス放電加工装置
の一例を示す図である。
【図3】図2の回路で得られる電流波形を示す図であ
る。
【図4】1発の放電痕の面積の増大と放電痕電流密度の
変化を示す図である。
【図5】スイッチング素子挿入によるパルス放電加工制
御回路の一例を示す図である。
【図6】(a)、(b)は図5の回路で得られる電流波形を
示す図である。
【図7】実施例1で得られた加工層の加工断面(金属組
織)の電子顕微鏡写真(倍率50)である。
【図8】実施例1で得られた加工層の加工断面(金属組
織)の電子顕微鏡写真(倍率200)である。
【図9】実施例1で得られた加工層の加工断面(金属組
織)の電子顕微鏡写真(倍率300)である。
【図10】実施例2で得られた加工層の加工断面(金属
組織)の写真である。
【図11】実施例2で得られた加工層の加工断面(金属
組織)の写真(×1100)である。
【図12】実施例2で得られた加工層の加工断面の硬度
分布を示す図である。
【図13】実施例2で得られた加工層の加工表面のX線
回折図である。
【符号の説明】
1 一次加工後の堆積層 2 被表面処理材料 3 放電加工用電極 4 放電加工パルス電源 5 加工液 6 気体投入ボンベ 7 減圧バルブ 8 気体拡散用ノズル 9 サーボ機構

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性又は非導電性材料を被表面処理材
    料の表面にパルス放電加工により堆積させる表面処理に
    際して、放電によって有毒ガスを生成しない気体を加工
    液と共に加工極間に供給することにより、放電による爆
    発圧力によって起こる堆積層の飛散を抑制して平滑な且
    つ均一の表面被覆層を得ることを特徴とする放電加工に
    よる表面処理方法。
  2. 【請求項2】 放電によって有毒ガスを生成しない気体
    として、加工液が石油などを含む場合にはアルゴン、ヘ
    リウム、炭酸ガス又は窒素ガスを用い、加工液が水を主
    成分とする場合には空気を用いる請求項1に記載の方
    法。
  3. 【請求項3】 導電性又は非導電性材料を被表面処理材
    料の表面にパルス放電加工により堆積させる表面処理に
    際して、放電電流の立上りを抑制し得る電流を流して放
    電痕の電流密度を小さくすることにより、放電による爆
    発圧力によって起こる堆積層の飛散を抑制して平滑な且
    つ均一の表面被覆層を得ることを特徴とする放電加工に
    よる表面処理方法。
  4. 【請求項4】 一次加工として、非導電性又は導電性材
    料を被処理材料の表面に被覆した後、二次加工として、
    請求項1又は3に記載の条件でパルス放電加工を行うこ
    とを特徴とする表面処理方法。
  5. 【請求項5】 一次加工として、請求項1又は3に記載
    の条件で放電加工を行う請求項4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 一次加工として、放電析出、溶射又はス
    ラリー塗布により表面被覆を行う請求項3に記載の方
    法。
  7. 【請求項7】 導電性又は非導電性材料を被表面処理材
    料の表面にパルス放電加工により堆積させる表面処理装
    置において、放電によって有毒ガスを生成しない気体を
    加工液と共に加工極間に供給する手段を有していること
    を特徴とする放電加工による表面処理装置。
  8. 【請求項8】 導電性又は非導電性材料を被表面処理材
    料の表面にパルス放電加工により堆積させる表面処理装
    置において、放電電流の立上りを抑制し得る電流を流し
    て放電爆発圧力を小さくする放電加工回路を有すること
    を特徴とする放電加工による表面処理装置。
  9. 【請求項9】 放電加工回路が、直列にインダクタンス
    が挿入されている回路である請求項8に記載の装置。
  10. 【請求項10】 放電加工回路が、トランジスタ等のス
    イッチング素子の複数個が接続されている回路である請
    求項8に記載の装置。
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