JPH06248337A - 溶接性の優れた低降伏比780N/mm2級高張力鋼の製造法 - Google Patents
溶接性の優れた低降伏比780N/mm2級高張力鋼の製造法Info
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- JPH06248337A JPH06248337A JP3674093A JP3674093A JPH06248337A JP H06248337 A JPH06248337 A JP H06248337A JP 3674093 A JP3674093 A JP 3674093A JP 3674093 A JP3674093 A JP 3674093A JP H06248337 A JPH06248337 A JP H06248337A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 本発明は、厚み70mm以下の溶接性に優れた
低降伏比HT80の製造法を提供する。 【構成】 重量比でC:0.05〜0.11%、Si:
0.5%以下、Mn:0.6〜1.6%、P:0.03
%以下、S:0.005%以下、Cr:0.10〜0.
70%、Mo:0.10〜0.60%、V:0.15〜
0.65%、Ti:0.005〜0.025%、Al:
0.06%以下、N:0.012%以下を含有し実質的
にBを含有しない鋼片を1000〜1250℃の温度範
囲に加熱し、1000℃以下の累積圧下量が30%以上
になるように圧延を行った後、720℃以上の温度から
直ちに常温まで焼入し、ついで750〜870℃に再び
加熱後、焼入し、引き続きAc1 変態点以下の温度範囲
で焼戻処理することにより、厚み70mm以下の溶接性の
優れた低降伏比HT80が製造できる。
低降伏比HT80の製造法を提供する。 【構成】 重量比でC:0.05〜0.11%、Si:
0.5%以下、Mn:0.6〜1.6%、P:0.03
%以下、S:0.005%以下、Cr:0.10〜0.
70%、Mo:0.10〜0.60%、V:0.15〜
0.65%、Ti:0.005〜0.025%、Al:
0.06%以下、N:0.012%以下を含有し実質的
にBを含有しない鋼片を1000〜1250℃の温度範
囲に加熱し、1000℃以下の累積圧下量が30%以上
になるように圧延を行った後、720℃以上の温度から
直ちに常温まで焼入し、ついで750〜870℃に再び
加熱後、焼入し、引き続きAc1 変態点以下の温度範囲
で焼戻処理することにより、厚み70mm以下の溶接性の
優れた低降伏比HT80が製造できる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は溶接性の優れた低降伏比
780N/mm2 級高張力鋼の製造法に関するものであ
る。
780N/mm2 級高張力鋼の製造法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、780N/mm2 級高張力鋼(以下
HT80と言う)はB添加鋼を焼入焼戻処理することに
よって製造していた。しかし、B添加HT80は溶接性
の指標であるPcm=C+Si/30+Mn/20+Cu
/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/1
0+5Bが低く抑えられているにもかかわらず、その溶
接性はHT60に比較して著しく劣っていた。このため
現場溶接施工時には溶接割れ防止、溶接部の硬さ低減の
観点から、200℃以上の予熱が必要とされ、施工能率
の著しい低下を招いていた。これはHT80がB添加に
よる焼入性増大効果に大きく依存し、焼入焼戻組織(焼
戻マルテンサイトあるいは下部ベイナイト)によって優
れた強度、靭性を達成しているため、溶接時(特に小入
熱溶接時)に溶接熱影響部(HAZ)の硬化が著しいこ
とによる。また高層建築用鋼では地震時にそのエネルギ
ーを吸収し建物の倒壊を防ぐため、降伏比(YR)の低
い鋼(YR≦85%)が要求されるが、焼入焼戻組織の
HT80は降伏比が高く、耐震性が劣っていた。
HT80と言う)はB添加鋼を焼入焼戻処理することに
よって製造していた。しかし、B添加HT80は溶接性
の指標であるPcm=C+Si/30+Mn/20+Cu
/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/1
0+5Bが低く抑えられているにもかかわらず、その溶
接性はHT60に比較して著しく劣っていた。このため
現場溶接施工時には溶接割れ防止、溶接部の硬さ低減の
観点から、200℃以上の予熱が必要とされ、施工能率
の著しい低下を招いていた。これはHT80がB添加に
よる焼入性増大効果に大きく依存し、焼入焼戻組織(焼
戻マルテンサイトあるいは下部ベイナイト)によって優
れた強度、靭性を達成しているため、溶接時(特に小入
熱溶接時)に溶接熱影響部(HAZ)の硬化が著しいこ
とによる。また高層建築用鋼では地震時にそのエネルギ
ーを吸収し建物の倒壊を防ぐため、降伏比(YR)の低
い鋼(YR≦85%)が要求されるが、焼入焼戻組織の
HT80は降伏比が高く、耐震性が劣っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は建築用HT8
0の安価な製造技術を提供するものである。本発明法に
基づいて製造したHT80は、小入熱溶接や拘束溶接
においても溶接割れが発生しにくく、溶接施工において
予熱を軽減あるいは省略することが可能であること、
本HT80を用いた建築物は地震のエネルギーを吸収し
優れた耐震性を有すること、などの特徴を持つ。
0の安価な製造技術を提供するものである。本発明法に
基づいて製造したHT80は、小入熱溶接や拘束溶接
においても溶接割れが発生しにくく、溶接施工において
予熱を軽減あるいは省略することが可能であること、
本HT80を用いた建築物は地震のエネルギーを吸収し
優れた耐震性を有すること、などの特徴を持つ。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の具体的手段を下
記(1),(2)に示す。 (1)重量比でC:0.05〜0.11%、Si:0.
5%以下、Mn:0.6〜1.6%、P:0.03%以
下、S:0.005%以下、Mo:0.10〜0.60
%、V:0.15〜0.65%、Ti:0.005〜
0.025%、Al:0.06%以下、N:0.012
%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からな
る実質的にBを含有しない鋼を1000〜1250℃の
温度範囲に加熱し、1000℃以下の累積圧下量が30
%以上になるように圧延を行った後、720℃以上の温
度から直ちに常温まで焼入し、ついで750〜870℃
に再び加熱後、焼入、引き続きAc1 変態点以下の温度
範囲で焼戻処理することを特徴とする厚み70mm以下の
溶接性の優れた低降伏比780N/mm2 級高張力鋼の製
造法。
記(1),(2)に示す。 (1)重量比でC:0.05〜0.11%、Si:0.
5%以下、Mn:0.6〜1.6%、P:0.03%以
下、S:0.005%以下、Mo:0.10〜0.60
%、V:0.15〜0.65%、Ti:0.005〜
0.025%、Al:0.06%以下、N:0.012
%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からな
る実質的にBを含有しない鋼を1000〜1250℃の
温度範囲に加熱し、1000℃以下の累積圧下量が30
%以上になるように圧延を行った後、720℃以上の温
度から直ちに常温まで焼入し、ついで750〜870℃
に再び加熱後、焼入、引き続きAc1 変態点以下の温度
範囲で焼戻処理することを特徴とする厚み70mm以下の
溶接性の優れた低降伏比780N/mm2 級高張力鋼の製
造法。
【0005】(2)重量比でC:0.05〜0.11
%、Si:0.5%以下、Mn:0.6〜1.6%、
P:0.03%以下、S:0.005%以下、Mo:
0.10〜0.60%、V:0.15〜0.65%、T
i:0.005〜0.025%、Al:0.06%以
下、N:0.012%以下さらにNb:0.005〜
0.05%、Cr:0.05〜0.70%、Cu:0.
05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%、Ca:
0.001〜0.006%の1種または2種以上を含有
し、残部が鉄および不可避的不純物からなる実質的にB
を含有しない鋼を1000〜1250℃の温度範囲に加
熱し、1000℃以下の累積圧下量が30%以上になる
ように圧延を行った後、720℃以上の温度から直ちに
常温まで焼入し、ついで750〜870℃に再び加熱
後、焼入、引き続きAc1 変態点以下の温度範囲で焼戻
処理することを特徴とする厚み70mm以下の溶接性の優
れた低降伏比780N/mm2 級高張力鋼の製造法。
%、Si:0.5%以下、Mn:0.6〜1.6%、
P:0.03%以下、S:0.005%以下、Mo:
0.10〜0.60%、V:0.15〜0.65%、T
i:0.005〜0.025%、Al:0.06%以
下、N:0.012%以下さらにNb:0.005〜
0.05%、Cr:0.05〜0.70%、Cu:0.
05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%、Ca:
0.001〜0.006%の1種または2種以上を含有
し、残部が鉄および不可避的不純物からなる実質的にB
を含有しない鋼を1000〜1250℃の温度範囲に加
熱し、1000℃以下の累積圧下量が30%以上になる
ように圧延を行った後、720℃以上の温度から直ちに
常温まで焼入し、ついで750〜870℃に再び加熱
後、焼入、引き続きAc1 変態点以下の温度範囲で焼戻
処理することを特徴とする厚み70mm以下の溶接性の優
れた低降伏比780N/mm2 級高張力鋼の製造法。
【0006】
【作用】以下、本発明について説明する。発明者らの研
究によれば、HT80の溶接性や低降伏比を画期的に改
善するには、B無添加が必須である。B無添加による焼
入性の低下に伴う強度確保のため焼入、焼戻によるVの
析出硬化を利用した。また微量Ti添加、熱処理条件の
最適化により結晶粒を微細化した鋼では、Vによる析出
硬化を行っても、極めて優れた低温靭性を示すことがわ
かった。
究によれば、HT80の溶接性や低降伏比を画期的に改
善するには、B無添加が必須である。B無添加による焼
入性の低下に伴う強度確保のため焼入、焼戻によるVの
析出硬化を利用した。また微量Ti添加、熱処理条件の
最適化により結晶粒を微細化した鋼では、Vによる析出
硬化を行っても、極めて優れた低温靭性を示すことがわ
かった。
【0007】HT80としての特性を得るために必要な
最低のV量は0.15%である。しかし、0.65%を
超えるVの添加では全量が固溶せず、析出硬化に寄与し
ないため、その上限を0.65%とした。次に前述のよ
うなVの効果を十分に発揮させて高強度化し、且つ低降
伏比と適当な延靭性を得るには、製造法が適切でなけれ
ばならない。このため鋼(スラブ)の再加熱、圧延、冷
却条件とそれに続く熱処理条件を限定する必要がある。
最低のV量は0.15%である。しかし、0.65%を
超えるVの添加では全量が固溶せず、析出硬化に寄与し
ないため、その上限を0.65%とした。次に前述のよ
うなVの効果を十分に発揮させて高強度化し、且つ低降
伏比と適当な延靭性を得るには、製造法が適切でなけれ
ばならない。このため鋼(スラブ)の再加熱、圧延、冷
却条件とそれに続く熱処理条件を限定する必要がある。
【0008】まず再加熱温度を1000〜1250℃の
範囲に限定する。再加熱温度はNb,Vなどの析出物を
固溶させ、且つ圧延終了温度を確保するために1000
℃以上としなければならない(望ましくは1050℃以
上)。しかし再加熱温度が1250℃超では、オーステ
ナイト粒(γ粒)が著しく粗大化し、圧延によっても十
分に微細化できないため、優れた靭性が得られない。し
たがって再加熱温度は1250℃以下とする必要があ
る。
範囲に限定する。再加熱温度はNb,Vなどの析出物を
固溶させ、且つ圧延終了温度を確保するために1000
℃以上としなければならない(望ましくは1050℃以
上)。しかし再加熱温度が1250℃超では、オーステ
ナイト粒(γ粒)が著しく粗大化し、圧延によっても十
分に微細化できないため、優れた靭性が得られない。し
たがって再加熱温度は1250℃以下とする必要があ
る。
【0009】続く圧延では、1000℃以下の累積圧下
量を30%以上としなければならない。これは再加熱時
に大きくなったγ粒を微細化して靭性を改善するためで
ある。さらにはHT80の強度の強度達成するために
は、720℃以上の温度から直ちに常温まで焼入を行わ
なければならない。焼入開始温度が720℃未満になる
とフェライトが生成し焼入組織が得られず、強度が不足
するからである。
量を30%以上としなければならない。これは再加熱時
に大きくなったγ粒を微細化して靭性を改善するためで
ある。さらにはHT80の強度の強度達成するために
は、720℃以上の温度から直ちに常温まで焼入を行わ
なければならない。焼入開始温度が720℃未満になる
とフェライトが生成し焼入組織が得られず、強度が不足
するからである。
【0010】続いて750〜870℃に再加熱後、再び
焼入し、Ac1 以下の温度に再加熱して焼戻処理する。
750〜870℃の再加熱・焼入する理由は、降伏比の
低減のためである。一般にVで析出強化した鋼はYRが
著しく高い。そこで750〜870℃の(γ+α)2相
域に再加熱・焼入を行う。
焼入し、Ac1 以下の温度に再加熱して焼戻処理する。
750〜870℃の再加熱・焼入する理由は、降伏比の
低減のためである。一般にVで析出強化した鋼はYRが
著しく高い。そこで750〜870℃の(γ+α)2相
域に再加熱・焼入を行う。
【0011】部分的にγ変態させることによって未変態
の領域は軟化、γ変態領域は硬化してミクロ組織が2相
化(軟らかい相と硬い相)し、降伏比の低減が可能とな
る。再加熱温度が750℃以下では、γに変態する領域
が小さいために、前述の効果が得られない。しかし、8
70℃を超えると完全にγ変態し、目的とする2相組織
が得られず、低YR化や優れた靭性が達成できない。
の領域は軟化、γ変態領域は硬化してミクロ組織が2相
化(軟らかい相と硬い相)し、降伏比の低減が可能とな
る。再加熱温度が750℃以下では、γに変態する領域
が小さいために、前述の効果が得られない。しかし、8
70℃を超えると完全にγ変態し、目的とする2相組織
が得られず、低YR化や優れた靭性が達成できない。
【0012】焼戻処理はVの析出効果を発揮させるため
に必須である。しかし、その温度がAc1 点を超えると
強度が著しく低下するので、Ac1 点以下としなければ
ならない(望ましい焼戻温度は450〜650℃であ
る)。しかし、Vの添加量や製造法が適切であっても、
基本成分が適当でないとHT80としての優れた特性が
得られない。
に必須である。しかし、その温度がAc1 点を超えると
強度が著しく低下するので、Ac1 点以下としなければ
ならない(望ましい焼戻温度は450〜650℃であ
る)。しかし、Vの添加量や製造法が適切であっても、
基本成分が適当でないとHT80としての優れた特性が
得られない。
【0013】以下、この点について説明する。Cの下限
0.05%は、母材および溶接部の強度確保ならびにN
b,Vなどの添加時に、これらの効果を発揮させるため
の最小量である。しかしC量が多すぎると溶接性の著し
い劣化を招くので、上限を0.11%とした。Siは多
く添加すると溶接性、HAZ靭性を劣化させるため、上
限を0.5%とした。鋼の脱酸はAl,Tiのみでも十
分であり、Siは必ずしも添加する必要はない。
0.05%は、母材および溶接部の強度確保ならびにN
b,Vなどの添加時に、これらの効果を発揮させるため
の最小量である。しかしC量が多すぎると溶接性の著し
い劣化を招くので、上限を0.11%とした。Siは多
く添加すると溶接性、HAZ靭性を劣化させるため、上
限を0.5%とした。鋼の脱酸はAl,Tiのみでも十
分であり、Siは必ずしも添加する必要はない。
【0014】Mnは強度、靭性を確保する上で不可欠な
元素であり、その下限は0.6%である。しかしMn量
が多すぎると焼入性が増加して溶接性、HAZ靭性を劣
化させるだけでなく、連続鋳造スラブの中心偏析を助長
するので上限を1.6%とした。本発明鋼において不純
物であるP,Sをそれぞれ0.03%、0.005%以
下とした理由は、母材、溶接部の低温靭性をより一層向
上させるためである。Pの低減は粒界破壊を防止し、S
量の低減はMnSによる靭性の劣化を防止する。好まし
いP,S量はそれぞれ0.01%,0.002%以下で
ある。
元素であり、その下限は0.6%である。しかしMn量
が多すぎると焼入性が増加して溶接性、HAZ靭性を劣
化させるだけでなく、連続鋳造スラブの中心偏析を助長
するので上限を1.6%とした。本発明鋼において不純
物であるP,Sをそれぞれ0.03%、0.005%以
下とした理由は、母材、溶接部の低温靭性をより一層向
上させるためである。Pの低減は粒界破壊を防止し、S
量の低減はMnSによる靭性の劣化を防止する。好まし
いP,S量はそれぞれ0.01%,0.002%以下で
ある。
【0015】Moは強度、靭性を共に向上させる元素
で、HT80には0.10%以上が必須である。しかし
多すぎると溶接性、HAZ靭性上好ましくなく、その上
限は0.60%である。Tiは炭窒化物を形成してHA
Z靭性を向上させる。Al量が少ない場合、Tiの酸化
物を形成しHAZ靭性を向上させるが、0.005%未
満では効果がなく、0.025%を超えるとHAZ靭性
に好ましくない影響があるため、0.005〜0.02
5%に限定する。
で、HT80には0.10%以上が必須である。しかし
多すぎると溶接性、HAZ靭性上好ましくなく、その上
限は0.60%である。Tiは炭窒化物を形成してHA
Z靭性を向上させる。Al量が少ない場合、Tiの酸化
物を形成しHAZ靭性を向上させるが、0.005%未
満では効果がなく、0.025%を超えるとHAZ靭性
に好ましくない影響があるため、0.005〜0.02
5%に限定する。
【0016】Alは一般に脱酸上鋼に含まれる元素であ
るが、SiおよびTiによっても脱酸は行われるので本
発明鋼については下限は限定しない。しかしAl量が多
くなると鋼の清浄度が悪くなり、溶接部の靭性が劣化す
るので上限を0.06%とした。Nは一般的に不可避的
不純物として鋼中に含まれるものであるが、Vと結合し
て炭窒化物を形成して強度を増加させ、またTiNを形
成して前述のようにHT80の性質を高める。このため
N量として最低0.001%が必要である。しかしなが
らN量が多くなるとHAZ靭性の劣化や連続鋳造スラブ
の表面キズの発生などを助長するので、その上限を0.
012%とした。
るが、SiおよびTiによっても脱酸は行われるので本
発明鋼については下限は限定しない。しかしAl量が多
くなると鋼の清浄度が悪くなり、溶接部の靭性が劣化す
るので上限を0.06%とした。Nは一般的に不可避的
不純物として鋼中に含まれるものであるが、Vと結合し
て炭窒化物を形成して強度を増加させ、またTiNを形
成して前述のようにHT80の性質を高める。このため
N量として最低0.001%が必要である。しかしなが
らN量が多くなるとHAZ靭性の劣化や連続鋳造スラブ
の表面キズの発生などを助長するので、その上限を0.
012%とした。
【0017】本発明鋼の基本成分は以上のとおりであ
り、十分に目的を達成できるが、さらに目的に対し特性
を高めるため、以下に述べる元素即ちNb,Ni,C
u,Cr,Caを選択的に添加すると強度、靭性の向上
について、さらに好ましい結果が得られる。次に、前記
添加元素とその添加量について説明する。NbはVとほ
ぼ同じ効果をもつ元素である。0.005%以下では効
果が少なく、0.05%を超えるとHAZ靭性に好まし
くない影響がある。
り、十分に目的を達成できるが、さらに目的に対し特性
を高めるため、以下に述べる元素即ちNb,Ni,C
u,Cr,Caを選択的に添加すると強度、靭性の向上
について、さらに好ましい結果が得られる。次に、前記
添加元素とその添加量について説明する。NbはVとほ
ぼ同じ効果をもつ元素である。0.005%以下では効
果が少なく、0.05%を超えるとHAZ靭性に好まし
くない影響がある。
【0018】Niは溶接性、HAZ靭性に悪影響を及ぼ
すことなく、母材の強度、靭性を向上させるが、0.0
5%以下では効果が薄く、1.0%以上では極めて高価
になるため経済性を失うので、上限は1.0%とした。
CuはNiとほぼ同様な効果を持つほか、Cu析出物に
よる強度の増加や耐食性や耐候性の向上にも効果を有す
る。この場合Cu量が0.5%以上で、その効果が著し
い。しかし、Cu量が1.0%を超えると熱間圧延時に
Cu割れが発生し製造が困難になり、また0.05%以
下では効果がないのでCu量は0.05〜1.0%に限
定する。
すことなく、母材の強度、靭性を向上させるが、0.0
5%以下では効果が薄く、1.0%以上では極めて高価
になるため経済性を失うので、上限は1.0%とした。
CuはNiとほぼ同様な効果を持つほか、Cu析出物に
よる強度の増加や耐食性や耐候性の向上にも効果を有す
る。この場合Cu量が0.5%以上で、その効果が著し
い。しかし、Cu量が1.0%を超えると熱間圧延時に
Cu割れが発生し製造が困難になり、また0.05%以
下では効果がないのでCu量は0.05〜1.0%に限
定する。
【0019】Crは母材、溶接部の強度を高める元素
で、その下限を0.05%とした。しかし、多すぎると
溶接性やHAZ靭性を著しく劣化させるので、その上限
を0.7%とした。Caは硫化物(MnS)の形態を制
御し、シャルピー吸収エネルギーを増加させ低温靭性を
向上させる効果がある。しかしCa量は0.001%未
満では実用上効果がなく、0.006%を超えるとCa
O,CaSが多量に生成して大型介在物となり、鋼の靭
性のみならず清浄度も害し溶接性、耐ラメラテア性にも
悪影響を与えるので、Ca添加量の範囲を0.001〜
0.006%とする。本発明は厚板ミルに適用すること
がもっとも好ましいが、ホットコイル、形鋼などにも適
用できる。
で、その下限を0.05%とした。しかし、多すぎると
溶接性やHAZ靭性を著しく劣化させるので、その上限
を0.7%とした。Caは硫化物(MnS)の形態を制
御し、シャルピー吸収エネルギーを増加させ低温靭性を
向上させる効果がある。しかしCa量は0.001%未
満では実用上効果がなく、0.006%を超えるとCa
O,CaSが多量に生成して大型介在物となり、鋼の靭
性のみならず清浄度も害し溶接性、耐ラメラテア性にも
悪影響を与えるので、Ca添加量の範囲を0.001〜
0.006%とする。本発明は厚板ミルに適用すること
がもっとも好ましいが、ホットコイル、形鋼などにも適
用できる。
【0020】
【実施例】周知の転炉、連続鋳造、厚板工程により鋼板
を製造し、その強度、靭性、溶接性(yスリット割れ
性、硬さ)などを調査した。表1の1〜9に本発明鋼、
10〜20に比較鋼の化学成分を示す。表2に本発明鋼
と比較鋼の鋼板製造条件とその機械的性質、溶接性を示
す。
を製造し、その強度、靭性、溶接性(yスリット割れ
性、硬さ)などを調査した。表1の1〜9に本発明鋼、
10〜20に比較鋼の化学成分を示す。表2に本発明鋼
と比較鋼の鋼板製造条件とその機械的性質、溶接性を示
す。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】表2の本発明鋼1〜9は、母材の強度、靭
性ならびに溶接性がバランスよく達成できている。これ
に対し比較鋼10ではV量が不足しているため、強度不
足となっている。比較鋼11はC量が低く、強度不足と
なっている。比較鋼12ではBが添加されているため、
HAZ硬さが極めて高く、またyスリット割れ停止温度
も非常に高くなっている。比較鋼13ではMo量が低
く、強度不足となっている。また比較鋼14ではスラブ
の再加熱温度が960℃と低く、Vの固溶が不十分でさ
らに圧延直後の焼入温度が低くなり、強度が不足してい
る。
性ならびに溶接性がバランスよく達成できている。これ
に対し比較鋼10ではV量が不足しているため、強度不
足となっている。比較鋼11はC量が低く、強度不足と
なっている。比較鋼12ではBが添加されているため、
HAZ硬さが極めて高く、またyスリット割れ停止温度
も非常に高くなっている。比較鋼13ではMo量が低
く、強度不足となっている。また比較鋼14ではスラブ
の再加熱温度が960℃と低く、Vの固溶が不十分でさ
らに圧延直後の焼入温度が低くなり、強度が不足してい
る。
【0025】比較鋼15は逆にスラブの再加熱温度が1
280℃と高く、圧延での結晶粒の微細化が十分に行え
ず、母材靭性が不良である。比較鋼16では1000℃
以下の累積圧下量が20%と少なく、結晶粒の微細化が
不十分で母材靭性が不良となっている。比較鋼17では
圧延直後の焼入温度が680℃と低く、強度が不足して
いる。比較鋼18では再加熱焼入温度が870℃と高
く、ほとんどがγ化され2相組織にならないため降伏比
が高くなっている。比較鋼19では再加熱焼入温度が7
20℃と低いため、γ化が不十分で強度不足である。比
較鋼20では焼戻温度が700℃と高く軟化が著しく、
強度不足となっている。
280℃と高く、圧延での結晶粒の微細化が十分に行え
ず、母材靭性が不良である。比較鋼16では1000℃
以下の累積圧下量が20%と少なく、結晶粒の微細化が
不十分で母材靭性が不良となっている。比較鋼17では
圧延直後の焼入温度が680℃と低く、強度が不足して
いる。比較鋼18では再加熱焼入温度が870℃と高
く、ほとんどがγ化され2相組織にならないため降伏比
が高くなっている。比較鋼19では再加熱焼入温度が7
20℃と低いため、γ化が不十分で強度不足である。比
較鋼20では焼戻温度が700℃と高く軟化が著しく、
強度不足となっている。
【0026】
【発明の効果】本発明の化学成分および製造法で製造し
た厚鋼板、形鋼、ホットコイルなどの鋼材は、溶接性に
優れた低降伏比HT80である。その結果、現場での溶
接施工能率や安全性が著しく向上し建築物などの安全性
を大きく高めることができる。
た厚鋼板、形鋼、ホットコイルなどの鋼材は、溶接性に
優れた低降伏比HT80である。その結果、現場での溶
接施工能率や安全性が著しく向上し建築物などの安全性
を大きく高めることができる。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量比で C :0.05〜0.11%、 Si:0.5%以
下、 Mn:0.6〜1.6%、 P :0.03%
以下、 S :0.005%以下、 Mo:0.10〜
0.60%、 V :0.15〜0.65%、 Ti:0.005
〜0.025%、 Al:0.06%以下、 N :0.012
%以下 残部が鉄および不可避的不純物からなる実質的にBを含
有しない鋼を1000〜1250℃の温度範囲に加熱
し、1000℃以下の累積圧下量が30%以上になるよ
うに圧延を行った後、720℃以上の温度から直ちに常
温まで焼入し、ついで750〜870℃に再び加熱後、
焼入、引き続きAc1 変態点以下の温度範囲で焼戻処理
することを特徴とする溶接性の優れた低降伏比780N
/mm2 級高張力鋼の製造法。 - 【請求項2】 重量比で Nb:0.005〜0.05%、 Cr:0.05〜
0.70%、 Cu:0.05〜1.0%、 Ni:0.05〜
1.0%、 Ca:0.001〜0.006% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求
項1記載の溶接性の優れた低降伏比780N/mm2 級高
張力鋼の製造法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3674093A JPH06248337A (ja) | 1993-02-25 | 1993-02-25 | 溶接性の優れた低降伏比780N/mm2級高張力鋼の製造法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3674093A JPH06248337A (ja) | 1993-02-25 | 1993-02-25 | 溶接性の優れた低降伏比780N/mm2級高張力鋼の製造法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06248337A true JPH06248337A (ja) | 1994-09-06 |
Family
ID=12478131
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP3674093A Withdrawn JPH06248337A (ja) | 1993-02-25 | 1993-02-25 | 溶接性の優れた低降伏比780N/mm2級高張力鋼の製造法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH06248337A (ja) |
-
1993
- 1993-02-25 JP JP3674093A patent/JPH06248337A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20000509 |