JPH0539833A - トロイダル無段変速機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 エンジン寄に配置した前後進切換装置および
それに隣接するトロイダル変速機構の下部スペースをコ
ントロールバルブの収容スペースに利用することによ
り、コントロールバルブの容積確保と油圧応答性向上と
の両立を図る。 【構成】 トロイダル無段変速機10において、インプッ
トシャフト14上の前後進切換装置36およびトルク伝達軸
16上のトロイダル変速機構18の下部にコントロールバル
ブ64を収容する。サーボピストンを具え径方向寸法の大
きいトロイダル変速機構18, 20に比べ前後進切換装置36
は径方向寸法が小さいため、その下部およびトロイダル
変速機構18の下部にコントロールバルブを収容したとき
十分な容量が確保でき、さらに制御圧を必要とする各機
器がコントロールバルブ36の近傍に配置されて油圧応答
性が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はトロイダル無段変速機に
関するものである。

【０００２】

【従来の技術】この種の従来のトロイダル無段変速機と
しては、例えば特開平１−206150号、特開平１−216158
号公報に開示されたものがある。これら従来例は、対向
面がトロイド曲面に形成される一対の入出力ディスクお
よびこれら入出力ディスク間に傾転可能に配置されるパ
ワーローラを具えるトロイダル変速機構をトルク伝達軸
上に通常２組具え、入力ディスクの回転力がパワーロー
ラを介して出力ディスクに伝達される際にパワーローラ
の傾転角を変化させることにより変速比を無段階に変化
させることができる。その際、上記パワーローラおよび
入出力ディスク間には、すべりを防止するため予圧手段
（通常皿ばね）による予圧によって押圧力が付加される
とともに、押圧手段（通常ローディングカム）により入
力トルクに比例した大きさの押圧力が付加される。な
お、上記従来例においてトロイダル変速機構を２組設け
たのは、各トロイダル変速機構の分担する入力トルクを
軽減してこれらを小径化し、ひいては無段変速機全体の
径方向のコンパクト化を図るための一般的手法である。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上記特開平１−216158
号公報記載の無段変速機においては、同公報の第１図に
示すように、エンジンからの回転力を伝達するインプッ
トシャフトに隣接してトロイダル変速機構を２組配置
し、これら変速機構のほぼ全長に亘って２分割型のコン
トロールバルブを配置していたため、前記特開平１−20
6150号公報の第３図の構成と同様に、前後進切換装置は
インプットシャフトの延長線上のエンジンから最も遠い
位置に配置せざるを得ない。この場合、前後進切換装置
とそれに隣接するトロイダル変速機構との間にはドライ
ブギヤ等も介在することから、コントロールバルブから
前後進切換装置のクラッチ、ブレーキに作動液圧（制御
圧）を供給する油路が長くなって油圧応答遅れが生じ易
くなり、低温時の作動不良を招く惧れがある。さらに、
前記特開平１−206150号公報の第３図の構成の無段変速
機においては、ほぼトロイダル変速機構１組分のスペー
スにコントロールバルブを収容しているため断面積が稼
げず、必要容積を確保するためにはコントロールバルブ
を上記第３図の紙面と直交する方向に延長せざるを得
ず、そのようにすると無段変速機の径方向寸法が増大し
て塔載性が悪くなってしまう。

【０００４】本発明はエンジン寄に配置した前後進切換
装置およびそれに隣接する１組のトロイダル変速機構の
下部のスペースをコントロールバルブの収容スペースに
利用することにより、上述した問題を解決することを目
的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】この目的のため、本発明
のトロイダル無段変速機は、エンジントルクを入力され
る第１軸と、該第１軸と平行をなす第２軸とを具え、前
記第１軸上に前後進切換装置および２組のトロイダル変
速機構を設けるとともに前記第１軸および第２軸間にト
ルク伝達機構を設けて成るトロイダル無段変速機におい
て、前記前後進切換装置を前記第１軸上に配置したトロ
イダル変速機構よりもエンジン寄に配置し、該前後進切
換装置とそれに隣接するトロイダル変速機構と前記トル
ク伝達機構とによって包囲される空間内にコントロール
バルブを配置して成ることを特徴とする。

【０００６】

【作用】本発明によれば、エンジントルクを入力される
第１軸上に、エンジン側より前後進切換装置、第１のト
ロイダル変速機構、第２のトロイダル変速機構をこの順
序で配列することにより、前後進切換装置、第１のトロ
イダル変速機構および、第１、第２トロイダル変速機構
間に配置したトルク伝達機構によって包囲されるスペー
スに、必要容積を確保したコントロールバルブを配置す
ることができる。したがって、例えば、変速機ケースの
形状を前後進切換装置収容部は円筒形状、トロイダル変
速機構収容部は軸直角断面を四角形状とし、前記コント
ロールバルブからの制御圧を前記前後進切換装置へは円
筒形状部の外部に設けた油路を経て供給し、前記トロイ
ダル変速機構へは四角形状部の内部に設けた油路を経て
供給するようにすることにより、このコントロールバル
ブから前後進切換装置およびトロイダル変速機構への制
御圧供給油路を最短化することができ、前後進切換装置
およびトロイダル変速機構に対する油圧制御の信頼性が
向上する。

【０００７】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に
説明する。図１は本発明のトロイダル無段変速機の第１
実施例の構成を示す縦断面図、図２は同例のスケルトン
図である。まず図２によって変速機全体について説明す
る。図中10はトロイダル無段変速機を示し、図示しない
エンジンからの回転力がトルクコンバータ12を介してト
ロイダル無段変速機10に入力される。トルクコンバータ
12は、ポンプインペラ12a , タービンランナー12b,ステ
ータ12c およびロックアップクラッチ12d 等を具えて成
る公知のものであり、その中心部をインプットシャフト
14が貫通している。インプットシャフト14上のトルクコ
ンバータ12の右方には、遊星歯車機構42、フォワードク
ラッチ44およびリバースブレーキ46を具えて成る前後進
切換装置36が配置されている（前後進切換装置36につい
ては、後に図１を用いて詳述する）。

【０００８】インプットシャフト14は、同軸上に配置さ
れるトルク伝達軸（第１軸）16にその右端部を支持され
る。トルク伝達軸16上には第１トロイダル変速機構18お
よび第２トロイダル変速機構20がタンデム配置されてい
る。トロイダル変速機構18は、対抗面がトロイダル曲面
に形成される一対の入力ディスク18a 、出力ディスク18
b と、これら入出力ディスクの対抗面間に摩擦接触され
るとともにトルク伝達軸16に関し対称配置される一対の
パワーローラ18c, 18dと、これらパワーローラを夫々傾
転可能に支持する図示しない支持機構と、ここでは図示
しない、油圧アクチュエータとしてのサーボピストンと
を具え、同様にトロイダル変速機構20は、対抗面がトロ
イド曲面に形成される一対の入力ディスク20a 、出力デ
ィスク20b と、これら入出力ディスクの対抗面間に摩擦
接触されるとともに軸16に関し対称配置される一対のパ
ワーローラ20c, 20dと、これらパワーローラを夫々傾転
可能に支持する図示しない支持機構と、ここでは図示し
ないサーボピストンとを具えている。トルク伝達軸16上
においてトロイダル変速機構18, 20は、出力ディスク18
b, 20bが対抗するよう互に逆向きに配置されており、ト
ロイダル変速機構18の入力ディスク18a は、トルクコン
バータ12を経た入力トルクに応じた押圧力を発生するロ
ーディングカム34によって軸方向右側に向って押圧さ
れ、トロイダル変速機構20の入力ディスク20a は皿ばね
40によって軸方向左側に向って押圧付勢されている。な
お、前記各パワーローラは、実開昭63−92859 号公報に
記載されているように、コントロールバルブ64からの制
御圧を受けて作動する、後述するサーボピストン18e, 1
8f, 20e, 20fによって、車両運転状態に応じた傾転角が
得られるよう夫々傾転され、これにより入力ディスク18
a, 20aの入力トルクを無段階（連続的）に変速して出力
ディスク18b, 20bに伝達する。

【０００９】上記出力ディスク18b および20b は、トル
ク伝達軸16に相対回転可能に嵌合された出力ギヤ28にス
プライン嵌合され、これら出力ディスク18b, 20bに伝達
されたトルクはこの出力ギヤ28を介して、第２軸として
の出力軸（カウンタシャフト）30に結合したギヤ30a に
伝達され、これらギヤ28および30はトルク伝達機構32を
構成する。なお出力軸30以後は、適用する駆動系に応じ
て構成するものとし、例えば四輪駆動方式の場合、出力
軸30上に設けたギヤ52と、出力軸50上に設けたギヤ54
と、これらギヤ52および54に夫々噛合するアイドラギヤ
56とより成るトルク伝達機構48を設け、出力軸50を第１
プロペラシャフト60に連結するとともにアイドラギヤ56
に分配ギヤ58を噛合させ、分配ギヤ58に第２プロペラシ
ャフト62を連結して構成する（なお、図２のスケルトン
図のトロイダル無段変速機の詳細については、これと類
似のトロイダル無段変速機を示す特開平２−163553号公
報を参照のこと）。

【００１０】次に図１を用いて本例の無段変速機の構成
を詳細に説明する。この図１は図２のインプットシャフ
ト14およびトルク伝達軸16の軸中心を通る縦断面（半断
面）を表わしており、トルクコンバータ12から左側（エ
ンジン側）の部分を省略してある。インプットシャフト
14上に配置される前後進切換装置36は、遊星歯車機構42
と、遊星歯車機構42のキャリア42a をインプットシャフ
ト14に締結可能なフォワードクラッチ44と、遊星歯車機
構42のリングギヤ42b を変速機ケース22に固定可能なリ
バースブレーキ46とから成り、遊星歯車機構42のサンギ
ヤ42c はインプットシャフト14にスプライン嵌合したク
ラッチドラム44a の外周にスプライン嵌合され、遊星歯
車機構42のプラネタリギヤ42d, 42eは互いに嵌合してダ
ブルプラネタリギヤを構成する。この前後進切換装置36
は、フォワードクラッチ44を締結するともにリバースブ
レーキ46を解放することによりエンジンと同一方向（以
下正転と称す）の回転力をトロイダル無段変速機10に入
力し、フォワードクラッチ44を解放するともにリバース
ブレーキ46を締結することによりエンジンと逆方向（以
下逆転と称す）の回転力をトロイダル無段変速機10に入
力する。

【００１１】インプットシャフト14の外周に配置される
オイルポンプカバー66はその図示しない左端部をトルク
コンバータ12にスプライン嵌合されるとともにその右端
部をブッシュ68を介してインプットシャフト14に支持さ
れる。オイルポンプカバー66にはオイルポンプ70が嵌合
され、その右方にはヒルホールド型のワンウェイクラッ
チ72のインナーレース72a がスプライン嵌合され、ワン
ウェイクラッチ72のローラ72b はオイルポンプカバー66
の内周右端部に嵌合される、クラッチドラム44a の内周
に当接する。このワンウェイクラッチ72は、インプット
シャフト14の回転方向を変速機ケース22に対し一方向の
みに固定するもので、正転時に逆転させようとしても逆
転することはなく、特開平１−112076号公報に記載され
た無段変速機( ベルト式) のように坂道で後退してしま
うことはない。このようなヒルホールド作用をなすワン
ウェイクラッチ72を、比較的径方向寸法に余裕のあるフ
ォワードクラッチ部のクラッチドラム44a の内周に、ピ
ストン44b と同心状に配置することにより、無段変速機
の軸方向寸法を増加させないコンパクトなレイアウトが
可能になる。

【００１２】トルク伝達軸16にはローディングカム装置
34のローディングカム34a が相対回転可能に嵌合され、
スラストベアリング38を介してトルク伝達軸16に支持さ
れている。このローディングカム34a が当接する入力デ
ィスク18a および、これと対抗する入力ディスク20a は
夫々、ボールスプライン24, 26を介してトルク伝達軸16
に回転可能かつ軸方向に滑らかに移動可能に支持され
る。したがってローディングカム装置34によって発生さ
れた軸方向の押圧力が入力ディスク18a に作用すると、
トルク伝達軸16上の皿ばね40を介して入力ディスク20a
には前記押圧力と逆方向の押圧力が作用し、また皿ばね
40によって発生される押圧力が入力ディスク20a に作用
すると、トルク伝達軸16上のローディングカム装置34を
介して入力ディスク18a には逆方向の押圧力が作用する
ことから、入力ディスク18a がトルク伝達軸16上を右行
すると入力ディスク20a はトルク伝達軸16上を同量だけ
左行する。

【００１３】上記前後進切換装置36のフォーワードクラ
ッチ44、リバースブレーキ46およびトロイダル無段変速
機10のパワーローラ18c, 18d, 20c, 20dに制御圧を供給
するコントロールバルブ64は、前後進切換装置36の外周
部に配置される。すなわち、変速機ケース22の前後進切
換装置収容部は図３に示すように円筒形状にしてあり、
その円筒形状の内部に前後進切換装置36を収容するとと
もにその円筒形状の外部（実際には下部）にコントロー
ルバルブ64を収容してある。ところで前記特開平１−21
6158号公報の無段変速機においては、トルクコンバータ
の直後にトロイダル無段変速機を配置しているため前後
進切換装置は必然的にトロイダル無段変速機よりも後に
配置されることになり、前後進切換装置の外周部をコン
トロールバルブ収容スペースに利用すると油路が長くな
って油圧応答遅れが生じるためコントロールバルブをト
ロイダル無段変速機の外周部に収容せざるを得ず、コン
トロールバルブの容積確保が難しかった（なお、トロイ
ダル無段変速機のトラニオンシャフトの下端にプリセス
カムがあるため、コントロールバルブは少なくとも片側
のトロイダル変速機構の下部に位置する必要がある）。
一方、本例の無段変速機は、前記特開平２−163553号公
報の無段変速機と同様に、トルクコンバータの直後に前
後進切換装置が位置するよう配置の入替えをしているた
め、前後進切換装置およびそれに隣接するトロイダル変
速機構の下部をコントロールバルブ収容スペースに利用
する、コンパクトな構成が可能になった。この結果、コ
ントロールバルブの必要容積を確保した上で、コントロ
ールバルブに油路を介して接続されるオイルポンプ70、
トルクコンバータ12、フォワードクラッチ44、リバース
ブレーキ46およびサーボピストン18e, 18f, 20e, 20fを
コントロールバルブ64の近傍にレイアウトして油路を最
短化することができ、上記各機器の油圧制御の信頼性が
向上する。

【００１４】なお、コントロールバルブ64からリバース
ブレーキ46への油路74は、例えば図３に示すように、変
速機ケース22の円筒形状断面の外部に設けるものとする
（フォワードクラッチ44への油路も図３と同様にして円
筒形状断面の外部に設ける)。また、コントロールバル
ブ64からトロイダル変速機構18のサーボピストン18e,18
f への油路76は、例えば図４に示すように、軸直角断面
を四角形状にした、変速機ケース22のトロイダル変速機
構収容部の、四角形状断面の内部に設けるものとし、制
御圧は油路76から積層構造のサーボピストンボディ80を
経てサーボピストン18e, 18fに導かれる（なおコントロ
ールバルブ64からトロイダル変速機構20のサーボピスト
ン20e, 20fへの油路は、変速機ケース22に軸と平行な油
路を設けることにより、図５と同様に上記四角形状断面
の内部に設ける) 。以上の油路構成によって前後進切換
装置36のフォワードクラッチ44、リバースブレーキ46お
よびトロイダル変速機構18, 20の各サーボピストンへの
油路の最短化が可能になり、油圧応答性の向上に寄与す
る。

【００１５】

【発明の効果】かくして本発明のトロイダル無段変速機
は上述の如く、エンジン寄に配置した前後進切換装置お
よびそれに隣接する１組のトロイダル変速機構の下部の
スペースをコントロールバルブの収容スペースに利用し
たから、このコントロールバルブから前後進切換装置お
よびトロイダル変速機構への制御圧供給油路を最短化す
ることができ、前後進切換装置およびトロイダル変速機
構に対する油圧制御の信頼性が向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のトロイダル無段変速機の第１実施例の
構成を示す縦断面図である。

【図２】同例のスケルトン図である。

【図３】同例の前後進切換装置への油路を示す断面図で
ある。

【図４】同例のトロイダル変速機構の各サーボピストン
への油路を示す断面図である。

【符号の説明】

10 トロイダル無段変速機 14 インプットシャフト 16 トルク伝達軸（第１軸） 18, 20 トロイダル変速機構 22 変速機ケース 30 出力軸（第２軸） 32 トルク伝達機構 36 前後進切換装置 64 コントロールバルブ 74, 76 油路

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 エンジントルクを入力される第１軸と、
   該第１軸と平行をなす第２軸とを具え、前記第１軸上に
   前後進切換装置および２組のトロイダル変速機構を設け
   るとともに前記第１軸および第２軸間にトルク伝達機構
   を設けて成るトロイダル無段変速機において、 前記前後進切換装置を前記第１軸上に配置したトロイダ
   ル変速機構よりもエンジン寄に配置し、該前後進切換装
   置とそれに隣接するトロイダル変速機構と前記トルク伝
   達機構とによって包囲される空間内にコントロールバル
   ブを配置して成ることを特徴とする、トロイダル無段変
   速機。
2. 【請求項２】 変速機ケースの形状を前後進切換装置収
   容部は円筒形状、トロイダル変速機構収容部は軸直角断
   面を四角形状とし、前記コントロールバルブからの制御
   圧を前記前後進切換装置へは円筒形状部の外部に設けた
   油路を経て供給し、前記トロイダル変速機構へは四角形
   状部の内部に設けた油路を経て供給するようにしたこと
   を特徴とする、請求項１記載のトロイダル無段変速機。