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JP7534113B2 - 飲料用濃縮原液及び飲料の製造方法 - Google Patents

飲料用濃縮原液及び飲料の製造方法 Download PDF

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JP7534113B2 JP2020055681A JP2020055681A JP7534113B2 JP 7534113 B2 JP7534113 B2 JP 7534113B2 JP 2020055681 A JP2020055681 A JP 2020055681A JP 2020055681 A JP2020055681 A JP 2020055681A JP 7534113 B2 JP7534113 B2 JP 7534113B2
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Description

本発明は、水又は可食性水溶液で希釈することによって、容易にアルコール飲料を製造することができる飲料用濃縮原液、及び当該飲料用濃縮原液から飲料を製造する方法に関する。
近年、いわゆる「チューハイ」と呼称される、蒸留酒を、ジュースや炭酸水などのノンアルコール飲料で割ったアルコール飲料の人気が高まっている。それに伴い、業務用途を中心に、炭酸水等で希釈してこのようなアルコール飲料を調製するための飲料用濃縮原液のニーズも高まっている。飲料用濃縮原液は、既に飲用に適したエタノール濃度に調製されているアルコール飲料に比べて、任意にエタノール濃度を調節できる、保管場所を省スペース化できる等の利点がある。
一方で、食品から感じる香りは、食品の「おいしさ」に重要な役割を果たしている。特に、果汁(果実の搾汁、ジュース)や果実、果皮、果実風味のフレーバー等を添加して果実風味をつけた清涼飲料水やアルコール飲料では、果実の香りは嗜好性を左右する要素である。しかし、果実に由来する大部分の果実の香気成分は、揮発性が高く、飲料に添加しても時間経過と共に失われやすく、また、酸化等により劣化しやすい。このため、果実風味の飲料においては、喫飲時により強い果実の香りが感じられるよう、様々な改良が試みられている。
例えば、レモン風味アルコール飲料において、レモンの特徴的な香気成分であるシトラールの含有量を多くすることにより、レモン風味を強くすることができる。しかし、シトラールの含有量が多くなると劣化臭が生じやすいという問題がある。そこで、特許文献1には、レモン風味アルコール飲料を調製するための飲料用濃縮原液において、飲料中の甘味度、糖酸比、及びアルコール含有量を特定の範囲内に調整することによって、シトラール含有量が低いながらも、レモンらしい風味を強く感じられるアルコール飲料を製造可能な飲料用濃縮原液が得られることが記載されている。
特開2018-108097号公報
本発明は、水又は可食性水溶液で希釈することによって、疎水性香気成分による香りに優れたアルコール飲料を製造するための飲料用濃縮原液、及び当該飲料用濃縮原液から飲料を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、水又は可食性水溶液で希釈してアルコール飲料を製造するための飲料用濃縮原液において、濃縮原液では溶解状態であるが、水等で希釈して調製した飲料では不溶化するように疎水性香気成分を含有させることにより、疎水性香気成分による香りに優れたアルコール飲料を製造可能な飲料用濃縮原液が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明に係る飲料用濃縮原液及び飲料の製造方法は、下記[1]~[13]である。
[1] 水又は可食性水溶液で所望のエタノール濃度となるように希釈することによってアルコール飲料を製造するための飲料用濃縮原液であって、
前記飲料用濃縮原液は、エタノールと疎水性香気成分を含有しており、
前記疎水性香気成分の少なくとも一部は、前記飲料用濃縮原液に溶解しており、
25℃における720nmの吸光度が、水で6倍希釈した希釈液の5℃における720nmの吸光度よりも0.05以上小さく
前記飲料用濃縮原液を希釈して調製された飲料では、前記飲料用濃縮原液に溶解していた前記疎水性香気成分の少なくとも一部が不溶化し、かつ、液面に疎水性の液状物が浮いていることを特徴とする、飲料用濃縮原液。
[2] 前記疎水性香気成分は、前記飲料用濃縮原液中に均一に存在している、前記[1]の飲料用濃縮原液。
[3] エタノール濃度が20~60容量%である、前記[1]又は[2]の飲料用濃縮原液。
[4] 25℃において透明である、前記[1]~[3]のいずれかの飲料用濃縮原液。
[5] 前記飲料用濃縮原液に溶解している疎水性香気成分の濃度Pc(g/100g)が、Sb×Ac/Ab[Ac(容量%)は前記飲料用濃縮液のエタノール濃度であり、Tc(℃)は前記飲料用濃縮原液の液温であり、Ab(容量%)は前記飲料用濃縮液を希釈して調製される飲料のエタノール濃度であり、Tb(℃)は前記飲料の液温である]よりも大きい、前記[1]~[4]のいずれかの飲料用濃縮原液。
[6] 25℃における420nm、530nm、又は630nmの吸光度が、それぞれ、水で6倍希釈した希釈液の5℃における420nm、530nm、又は630nmの吸光度よりも小さい、前記[1]~[5]のいずれかの飲料用濃縮原液。
[7] 前記飲料用濃縮原液には、乳化状態の疎水性香気成分も含有されている、前記[1]~[6]のいずれかの飲料用濃縮原液。
[8] 前記疎水性香気成分が、果実の香気成分である、前記[1]~[7]のいずれかの飲料用濃縮原液。
[9] 前記果実が柑橘類である、前記[8]の飲料用濃縮原液。
[10] 前記疎水性香気成分が、シトラールを含む、前記[1]~[9]のいずれかの飲料用濃縮原液。
[11] 容器内に封入されている、前記[1]~[10]のいずれかの飲料用濃縮原液。
[12] 前記[1]~[11]のいずれかの飲料用濃縮原液を、水又は可食性水溶液で希釈する、飲料の製造方法。
[13] 前記飲料用濃縮原液を、2~15倍希釈する、前記[12]の飲料の製造方法。
本発明に係る飲料用濃縮原液及び当該飲料用濃縮原液から飲料を製造する方法によって、水又は可食性水溶液で所望のエタノール濃度となるように希釈するだけで、容易に、疎水性香気成分による香りに優れたアルコール飲料を製造できる。
本発明及び本願明細書において、飲料用濃縮原液とは、水又は可食性水溶液によって希釈することにより、飲料を製造するための可食性溶液を意味する。可食性水溶液は、水に、1種以上の可食性成分を溶解させた溶液である。可食性成分としては、特に限定されるものではなく、固体であってもよく、植物油等の液体であってもよく、炭酸ガスのような気体であってもよい。
本発明に係る飲料用濃縮原液は、エタノールと疎水性香気成分を含有しており、水又は可食性水溶液で所望のエタノール濃度となるように希釈することによってアルコール飲料を製造するための飲料用濃縮原液である。本発明に係る飲料用濃縮原液を希釈するために用いられる可食性水溶液としては、特に限定されるものではなく、ジュース、清涼飲料、茶、紅茶、ハーブティー、コーヒー等の非発泡性ノンアルコール飲料や、サイダー、ラムネ、コーラ、炭酸水等の発泡性ノンアルコール飲料など、カクテルの原料として使用される可食性水溶液の中から適宜選択して使用することができる。
一般的に、飲料用濃縮原液では、希釈により製造された飲料の品質の均質性を担保するため、水等で希釈された場合でも、各種成分が均一に溶解又は分散されている状態が維持されるように調製される。特に、水への溶解性が低い疎水性香気成分は、比較的エタノール濃度が高い飲料用濃縮原液では溶解していても、希釈してエタノール濃度が低下することによって不溶化して不均一になりやすい。このため、飲料用濃縮原液中の疎水性香気成分は、通常、液中で偏在しないように、乳化装置及び/又は乳化剤等を用いて、完全に乳化させており、希釈して調製された飲料においても、乳化状態が維持されるように設計されている。
これに対して、本発明に係る飲料用濃縮原液は、疎水性香気成分の少なくとも一部を、飲料用濃縮原液に溶解した状態で含有しており、水等で希釈することによって、溶解していた疎水性香気成分の少なくとも一部が不溶化するように設計されている。希釈によって不溶化した疎水性香気成分は、完全に乳化した状態ではないため、液面に浮きやすく、飲料に乳化している疎水性香気成分よりも香りとして感じられやすい。つまり、本発明に係る飲料用濃縮原液を希釈することにより、不溶化した疎水性香気成分を含有しており、当該疎水性香気成分による香りに優れたアルコール飲料を製造できる。
疎水性香気成分は、他の疎水性物質と同様に、水よりもエタノールに対する溶解性が高く、エタノール水に対する溶解度(飽和濃度)は、エタノール濃度に対して指数関数的に増加する。このエタノール濃度に対する溶解度の差を利用して、本発明に係る飲料用濃縮原液は、希釈して得られた飲料では、希釈前の濃縮原液では溶解していた疎水性香気成分の一部を不溶化させる。
本発明に係る飲料用濃縮液の液温は、希釈して得られた飲料の液温と同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、飲料用濃縮原液には、温度制御がされていない環境下(例えば、20~30℃の環境下)で保管され、希釈時に、10℃以下の水等で希釈したり、氷を入れることによって低温の飲料として調製されるものがある。疎水性香気成分の溶解度は、温度の低い方が小さくなる。液温が低い飲料を調製するための飲料用濃縮原液では、この温度差に対する溶解度の差も利用して、希釈により不溶化した疎水性香気成分を含有する飲料を調製可能なように設計できる。
例えば、飲料用濃縮液のエタノール濃度Ac(容量%)、当該飲料用濃縮原液の液温をTc(℃)、飲料用濃縮液を希釈して調製する飲料のエタノール濃度Ab(容量%)、当該飲料の液温をTb(℃)、エタノール濃度Ab、液温Tbにおける疎水性香気成分の溶解度Sb(g/100g)とした場合、本発明に係る飲料用濃縮原液の溶解している疎水性香気成分の濃度Pc(g/100g)を、Sb×Ac/Abよりも大きくなるように調整することによって、エタノール濃度Abに希釈した飲料に不溶化した疎水性香気成分を含有させることができる。
飲料の不溶化した疎水性香気成分の含有量が多い程、当該疎水性香気成分に由来する香りが強くなる。所望のエタノール濃度に希釈して得られる飲料により多量の不溶化した疎水性香気成分を含有させることができるため、本発明に係る飲料用濃縮液としては、できるだけ多くの疎水性香気成分を溶解させることが好ましく、溶解度又はその付近の濃度で疎水性香気成分を溶解させることがより好ましい。
本発明に係る飲料用濃縮原液を希釈して製造される飲料のエタノール濃度Abは、特に限定されるものではなく、嗜好に応じて決定すればよい。例えば、一般的なアルコール飲料と同程度である1~15容量%、好ましくは3~10容量%とすることができる。
本発明に係る飲料用濃縮原液のエタノール濃度Acは、製造する目的の飲料のエタノール濃度Abよりも高ければよく、特に限定されるものではない。溶解度差を利用した疎水性香気成分の不溶化が生じやすいことから、飲料のエタノール濃度Abは、飲料用濃縮原液のエタノール濃度Acの75%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましく、30%以下であることがよりさらに好ましい。
希釈により製造される目的の飲料のエタノール濃度と本発明に係る飲料用濃縮原液のエタノール濃度の差が大きいほど、溶解度差を利用してより多量の疎水性香気成分を不溶化させることができる。このため、本発明に係る飲料用濃縮原液のエタノール濃度は、20容量%以上が好ましく、30容量%以上がより好ましく、35容量%以上がさらに好ましく、40容量%以上がよりさらに好ましい。エタノール濃度が高すぎると取扱いが困難になるため、本発明に係る飲料用濃縮原液のエタノール濃度は、60容量%以下であることが好ましく、50容量%以下であることがより好ましい。
本発明に係る飲料用濃縮原液は、溶解している疎水性香気成分に加えて、乳化状態の疎水性香気成分も含有されていてもよい。乳化状態の疎水性香気成分は、希釈して得られた飲料でも安定して乳化している。例えば、疎水性香気成分を、当該飲料用濃縮原液の溶解度付近の濃度で溶解させて、一部を分散状態にすることができる。
本発明に係る飲料用濃縮原液は、希釈により均質な飲料を製造できるため、含有している各種成分は、均一に溶解又は分散されていることが好ましい。均質な飲料がより容易に製造できるため、本発明に係る飲料用濃縮原液は、懸濁液であってもよいが、透明又は半透明であることが好ましく、透明であることがより好ましい。特に、飲料用濃縮原液が一般的に保管される温度、例えば25℃、好ましくは20~30℃で透明であることが好ましい。
本発明に係る飲料用濃縮原液を希釈して得られた飲料は、希釈前の飲料用濃縮原液とは異なり、靄のような濁りを有することが好ましい。当該濁りは、主に、不溶化した疎水性香気成分による。不溶化した疎水性香気成分が多くなるほど、濁りが強くなる。
溶液の吸光度のうち、720nmの光に対する吸光度は、溶液の濁度が高いほど大きくなる。本発明に係る飲料用濃縮原液としては、水で希釈した場合に希釈前よりも720nmの吸光度が大きくなるものが好ましく、25℃における720nmの吸光度が、水で6倍希釈した希釈液の5℃における720nmの吸光度よりも小さいことが好ましい。中でも、飲料用濃縮原液の25℃における720nmの吸光度が、水で6倍希釈した希釈液の5℃における720nmの吸光度よりも、0.05以上小さいことが好ましく、0.1以上小さいことがより好ましい。
希釈により疎水性香気成分が不溶化しない従来の飲料用濃縮原液では、透明な水や炭酸水で希釈されると、それに伴って色も薄くなるため、通常、希釈後の溶液の吸光度は、希釈前の溶液の吸光度より小さくなる。本発明に係る飲料用濃縮原液が色を有する場合にも、当該飲料用濃縮原液を水で希釈した希釈液の色は、当該飲料用濃縮原液の色よりも薄くなるが、生じた濁りの影響を受ける。溶液の吸光度のうち、420nm、530nm、及び630nmは、それぞれ、溶液の黄色、赤色、及び青色の強度が低下すると小さくなるが、濁りが生じるとその影響で大きくなる傾向にある。本発明に係る飲料用濃縮原液としては、水で希釈した場合に希釈前よりも、420nm、530nm、及び/又は630nmの吸光度が大きくなるものが好ましく、25℃における420nm、530nm、及び/又は630nmの吸光度が、それぞれ、水で6倍希釈した希釈液の5℃における420nm、530nm、及び/又は630nmの吸光度よりも小さいことが好ましい。例えば、本発明に係る飲料用濃縮原液が黄色の強い液色の場合、25℃における420nmの吸光度が、水で6倍希釈した希釈液の5℃における420nmの吸光度よりも、0.05以上小さいことが好ましく、0.1以上小さいことがより好ましく、0.2以上小さいことがさらに好ましい。
本発明において用いられる疎水性香気成分は、ヒトに「におい」を感じさせる物質のうち、疎水性のものであれば、特に限定されるものではない。なお、疎水性の物質とは、25℃の水に滴下した場合に、少なくとも一部は相溶せずに界面を形成する物質である。すなわち、疎水性の物質は、水に完全に不溶であることまでは必要とせず、一部が水に溶解する物質も含まれる。本発明においては、一般的に飲食品に含まれる疎水性香気成分の中から、目的の香味特質を考慮して適宜選択して用いることができる。
本発明において用いられる疎水性香気成分としては、より香りとしてヒトが感じ取りやすいことから、常温常圧で揮発しやすい揮発性物質が好ましい。常温常圧で揮発しやすい疎水性香気成分としては、例えば、沸点が260℃以下の疎水性香気成分が挙げられる。
本発明において用いられる疎水性香気成分としては、目的とする飲料の風味に応じて適宜選択することができるが、飲料に広く使用されていることから、特定の植物の特徴的な香りを構成する成分(特徴香成分)であることが好ましく、果実やハーブ(香草)の特徴香成分であることがより好ましい。なお、「特定の植物の特徴香成分」は、当該植物の特徴的な香りとヒトが認識し得る香りを構成する成分であれば、当該植物に含有されている香気成分に限定されるものではなく、当該植物に含有されていない香気成分も含まれる。
本発明において用いられる疎水性香気成分としては、レモン、ライム、ユズ、シークヮーサー、スダチ、カボス、グレープフルーツ、オレンジ、伊予柑、温州みかん、夏みかん、八朔、日向夏等の柑橘類;イチゴ、モモ、メロン、ブドウ、リンゴ、洋ナシ、ナシ、サクランボ等のソフトフルーツ;バナナ、パイナップル、マンゴー、パッションフルーツ等のトロピカルフルーツ;ペパーミント、セージ、タイム、レモングラス、シナモン、ローズマリー、カモミール、ラベンダー、ローズヒップ、ペッパー、バニラ等のハーブ;などの特徴香成分が好ましい。
柑橘類のうち、レモンの特徴香成分は、シトラール、ネロール、ゲラニオール、酢酸ネリル、酢酸ゲラニル等が挙げられ、シトラールはレモン由来の精油に含まれる含酸素化合物の半分以上を占める。グレープフルーツの特徴香成分としては、オクタナール、デカナール、ヌートカトン等が挙げられ、ユズの特徴香成分としては、リナロール、チモール、ユズノン(登録商標)、N-メチルアントラニル酸メチル等が挙げられる。オレンジの特徴香成分としては、オクタナール、デカナール、リナロール、酢酸ゲラニル、シネンサール等が挙げられる。
柑橘類以外の果実やハーブとしては、例えば、モモの特徴香成分としては、γ-ウンデカラクトン等が挙げられる。ブドウの特徴香成分としては、メチルアンスラニレート等が挙げられる。ミントの特徴香成分としては、メントール等が挙げられる。バニラの特徴香成分としては、バニリン等が挙げられる。
本発明に係る飲料用濃縮原液は、エタノールを含有させ、かつ十分量の疎水性香気成分を溶解させる以外は、常法により製造できる。具体的には、例えば、原料水に、疎水性香気成分、酒類、及びその他の成分を混合することにより、本発明に係る飲料用濃縮原液を製造できる。
本発明において用いられる疎水性香気成分は、1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。また、化学合成品であってもよく、動植物等の天然物から抽出・精製されたものであってもよい。
疎水性香気成分は、疎水性香気成分以外の疎水性物質をも含有する疎水性液状組成物を原料としてもよい。当該疎水性物質としては、例えば、油脂や、天然物からの有機溶媒抽出物に疎水性香気成分と共に抽出された疎水性物質等が挙げられる。当該液状組成物全体に対する疎水性香気成分の含有量は、15質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がよりさらに好ましい。
当該疎水性液状組成物は、沸点が比較的高くて不揮発性の成分を含んでいてもよい。希釈して得られた飲料中で不溶化した疎水性香気成分が速やかに揮発して香りとして認識されやすくなることから、当該疎水性液状組成物は、構成成分のうち80質量%以上が、沸点が260℃以下の成分であることが好ましい。
例えば、植物に含有されている疎水性香気成分は、植物から抽出された精油に多く含まれている。このため、原料として用いられる疎水性液状組成物には、精油やその加工物を含有させてもよい。精油の加工物としては、精油の濃縮物や、精油から一部成分を除去したものが挙げられる。精油は、植物の花、蕾、果実(果皮、果肉)、枝葉、根茎、木皮、樹幹、樹脂等から、水蒸気蒸留法、熱水蒸留法(直接蒸留法)等の常法によって植物から留出することができる。精油の加工処理は、蒸留法、晶析法、化学処理法等の常法により行うことができる。
精油は、一般に水より軽く、テルペン類を主成分とする疎水性の液状組成物である。テルペン類は、テルペン炭化水素とテルペノイドとからなる。テルペノイドは、テルペン炭化水素から誘導されるアルコール、アルデヒド、ケトン、エステル等の含酸素誘導体である。
例えば、柑橘類の果実から抽出された精油を含む疎水性液状組成物を原料とすることにより、柑橘類の香りが良好な飲料を調製するための飲料用濃縮原液を製造できる。柑橘類の特徴香成分は、果実の中でも特に果皮に多く含まれているため、特に果皮から抽出された精油を用いることが好ましい。
柑橘類から得られる精油成分の90%以上は、テルペン炭化水素であり、その主な成分はD-リモネンであるが、香りに対する貢献度は低い。柑橘類の香りを特徴づける成分として重要なのは、精油中に数%存在するアルデヒド類、アルコール類、エステル類などの含酸素化合物(テルペノイド)である。そこで、飲食品に添加される香料としては、D-リモネンなどのテルペン炭化水素を除去し、シトラールなどの含酸素化合物(テルペノイド)の含有比を増大させたテルペンレスオイルやフォールディッドオイルなどが広く使用されている。本発明に係る飲料用濃縮原液においても、原料とする疎水性液状組成物に、テルペンレスオイルやフォールディッドオイル等を含有させることができる。
柑橘類の精油からテルペン炭化水素を除去し、テルペノイドの含有比を増大させると、香りは強くなるものの、香りの自然さは減弱されるおそれがある。より自然な柑橘類の香りの強い飲料を調製するための飲料用濃縮原液を製造できるため、原料として用いる疎水性香気成分を含有する疎水性液状組成物中のテルペン類全体に対するテルペノイドの含有比は、10~40質量%であることが好ましく、15~40質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることがさらに好ましく、20~30質量%であることがよりさらに好ましい。疎水性液状組成物中のテルペン類全体に対するテルペン炭化水素の含有比は、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。また、疎水性液状組成物中のテルペン類全体に対するD-リモネンの含有量は、40~60質量%とすることが好ましく、50~60質量%とすることがより好ましい。また、疎水性液状組成物中のテルペン炭化水素に対するD-リモネンの含有量は、50~80質量%とすることが好ましく、60~75質量%とすることがより好ましい。
原料とする疎水性液状組成物は、本発明の効果を損なわない限度において、疎水性香気成分以外のその他の成分を含有していてもよい。当該他の成分としては、油溶性溶剤、疎水性香気成分の劣化を抑制する物質等が挙げられる。例えば、疎水性液状組成物は、疎水性香気成分を液状油等の液状の疎水性溶媒に溶解させた油溶性香料を含有させることもできる。また、精油又はその加工物と油溶性香料を両方とも疎水性液状組成物に含有させてもよい。
本発明に係る飲料用濃縮原液を製造する際の原料とする酒類としては、原料用アルコール;ウォッカ、ウイスキー、ブランデー、焼酎、ラム酒、スピリッツ、及びジン等の蒸留酒;ワイン、シードル、ビール、日本酒等の醸造酒;リキュール、ベルモットなどの混成酒等が挙げられる。原料とする酒類は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。なお、本発明に係る飲料用濃縮原液を水等で希釈して製造される飲料は、日本国の酒税法(平成三十年四月一日施行)上、リキュール(エキス分が二度以上)又はスピリッツ(エキス分が二度未満)に分類される。
本発明に係る飲料用濃縮原液に含有させる疎水性香気成分と酒類以外のその他の成分としては、例えば、果実、野菜類、ハーブ、糖類、香味料、その他の食品素材、食品添加物などが挙げられ、これらを適宜選択して使用する。
本発明に係る飲料用濃縮原液に含有させる果実、野菜類、ハーブは、特に限定されるものではなく、飲料に一般的に使用される果実等を適宜選択して使用することができる。例えば、果実やハーブとしては、疎水性香気成分に由来する果実やハーブとして挙げられたものを用いることができる。また、野菜類としては、トマト、ニンジン、ホウレン草、キャベツ、メキャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、セロリ、レタス、パセリ、クレソン、ケール、大豆、ビート、赤ピーマン、カボチャ、小松菜等を用いることができる。飲料用濃縮原液に含有させる果実、野菜類、ハーブは、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
飲料用濃縮原液には、果実等の細断物をそのまま含有させてもよいが、果汁や野菜汁のような搾汁を原料として添加することが好ましい。なお、果汁は、日本国においては果実飲料の日本農林規格、国際的には果汁及びネクターに関するコーデックス規格(CODEX STAN 247‐2005)に定義されている。飲料用濃縮原液の調製に使用する原料としては、濃縮果汁や還元果汁等を使用してもよく、不溶性固形分の一部が除去されて清澄化された果汁を用いてもよい。
飲料用濃縮原液には、果実エキス、野菜エキスを原料として添加してもよい。特に、疎水性香気成分が、果実やハーブの特徴香成分である場合には、飲料用濃縮原液には、当該疎水性香気成分と同種の果実等の果汁やエキスを含有することが好ましい。
果実エキス、野菜エキスは、果実や野菜の細断物から水やアルコールを用いて果実や野菜に含まれる成分を抽出したものである。これらのエキスは、例えば、熱水抽出による方法や、液化ガスを用いて果実成分を溶出させた後、液化ガスを気化させ、果実成分を分離、回収する方法などによって製造される。
糖類は、単糖類・二糖類の総称であり、砂糖(ショ糖、スクロース)、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、異性化糖などがある。これらの糖類を飲料用濃縮原液に含有させることで、希釈して製造される飲料に甘味やボディ感等を付与することができる。飲料用濃縮原液に含有させる糖類は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
さらに、飲料用濃縮原液には、香味料やその他の食品素材を含有させることができる。その他の食品素材としては、例えば、食物繊維、酵母エキス、タンパク質若しくはその分解物等が挙げられる。中でも、水溶性食物繊維は、希釈して製造される飲料にボディ感やその他の機能性を付与するために広く使用されている。水溶性食物繊維とは、水に溶解し、かつヒトの消化酵素により消化されない又は消化され難い炭水化物を意味する。水溶性食物繊維としては、例えば、大豆食物繊維、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、ガラクトマンナン、イヌリン、グアーガム分解物、ペクチン、アラビアゴム等が挙げられる。これらの水溶性食物繊維は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
飲料用濃縮原液に含有させてもよい食品添加物は、国の法令に基づいて使用可能な物品を用いることができ、その範囲において特に制限されない。例えば、食品の品質を保つための保存料や酸化防止剤等、食品の嗜好性の向上を目的とした着色料、香料、甘味料、酸味料、乳化剤等、食品の製造または加工のために必要なpH調整剤、消泡剤、起泡剤等や、栄養成分の補充、強化に使われる栄養強化剤を、必要に応じて含有させることができる。
以下では、一部の食品添加物について簡単に説明する。
着色料は、食品の色調を改善する食品添加物であり、化学合成系着色料と天然系着色料に大別され、日本国の食品衛生法では、指定添加物、既存添加物、一般飲食物添加物に分類される。着色料としては、食品を褐色に着色するカラメル色素が多く使用されている。なお、カラメル色素の副次効果として、飲料にロースト感やコク等を付与することができる。
香料は、食品に香気を与える、又は増強するために用いられる。食品用香料には、天然物から抽出した天然香料と化学的に合成された合成香料がある。天然香料は、日本国の食品衛生法では、「動植物より得られる物又はその混合物で、食品の着香の目的で使用される添加物」と定義され、使用できる動植物名が例示として「天然香料基原物質リスト」に記載されている。また、合成香料のほとんどは食品に存在するものと同一成分を化学合成した化合物であり、「食品衛生法施行規則別表第1」のなかで指定されている。
食品用香料は、単品で使用されることは少なく、通常、多数の香料化合物を組み合わせた調合製品が用いられる。香料製品の形態としては、水溶性香料、油溶性香料、乳化香料、粉末香料などがある。水溶性香料は、香料ベースを水溶性溶剤である含水アルコール、プロピレングリコールなどで抽出・溶解したものである。油溶性香料は、香料ベースを植物油などで溶解したものである。乳化香料は、乳化剤や安定剤を使用し、香料ベースを水に乳化させ微粒子状態にしたものである。飲料ににごりを与えることもありクラウディーとも呼ばれる。粉末香料は、香料ベースをデキストリンや天然ガム質、糖、でんぷんなどの賦形剤とともに乳化させた後、噴霧乾燥させて粉末化したり乳糖などに香料ベースを付着させたりしたものである。飲料には、通常、水溶性香料と乳化香料が用いられる。
特に、飲料用濃縮原液に含まれる疎水性香気成分が、果実やハーブの特徴香成分である場合には、飲料用濃縮原液には、当該疎水性香気成分と同種の果実等の香料を含有することが好ましい。
甘味料は、食品に甘味をつける目的で使用されるものであるが、前述した糖類や一部の低甘味度物質(水あめ、エリスリトール、マルチトール、ラクチトールなど)は、食品に区分され、食品添加物には区分されない。食品添加物に区分される低甘味度物質としては、L-アラビノース、D-キシロース、トレハロース、D-ソルビトール、キシリトール、マンニトールなどがあり、高甘味度物質としてはアスパルテーム、ネオテーム、アセスルファムカリウム、サッカリン類、スクラロース、グリチルリチン酸二ナトリウム、ステビア抽出物、カンゾウ抽出物、タウマチンなどがある。なお、日本国の食品衛生法では、甘味料は、指定添加物、既存添加物、一般飲食物添加物に分類される。
飲料には、従来から飲料に用いられる糖類(砂糖、ブドウ糖、果糖)と甘味特性の近いアスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロースなどがよく用いられる。本発明における飲料用濃縮原液においても、これらの飲料に汎用されている甘味料の1種以上を使用することが好ましい。
酸味料は、食品に酸味を与えたり、酸味を増強したりするために用いられる。酸味料には、クエン酸や乳酸のような有機酸及びそれらの塩類と、リン酸、二酸化炭素のような無機酸がある。有機酸とその塩を併用すると、緩衝作用によって特定のpHを保持しやすくすることができる。
なお、日本国において酸味料として一括名表示ができる物質は、指定添加物では、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸、既存添加物では、イタコン酸、フィチン酸、α-ケトグルタル酸が挙げられる。
飲料用濃縮原液に用いる酸味料は、希釈により製造される飲料の風味(フレーバー)に応じて選択される。例えば、柑橘類風味の飲料を製造するための飲料用濃縮原液では柑橘類に多く含まれるクエン酸及びクエン酸塩、ブドウ風味の飲料を製造するための飲料用濃縮原液ではブドウに多く含まれる酒石酸及び酒石酸塩、リンゴ風味の飲料を製造するための飲料用濃縮原液ではリンゴに多く含まれるリンゴ酸及びリンゴ酸塩が選択される場合が多い。
また、飲料用濃縮原液のpHは、微生物制御、香気成分の劣化抑制などの目的に応じて調整されてもよい。一般に、飲料のpHが低いほど微生物が発育し難くなる。一方で、pHが低すぎると、酸味が強くなりすぎる。また、香気成分の中には、pHが低くなると劣化しやすいものもある。飲料として適した酸味の強さや香気成分の劣化抑制の点から、飲料用濃縮原液のpHは、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上である。また、微生物の生育抑制、殺菌条件の強度等を考慮し、飲料用濃縮原液のpHは、アルコールを含有していない場合は、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは4.0未満であり、アルコールを含有している場合は、好ましくは6.5以下、より好ましくは5.0以下である。
例えば、pHが低いほど劣化しやすくなる疎水性香気成分が含有されている場合は、飲料用濃縮原液のpHを比較的高くすることが好ましい。例えば、シトラールはpHが低いほど劣化しやすくなるため、本発明に係る飲料用濃縮原液が、シトラールを含むレモン風味の飲料を製造するための飲料用濃縮原液の場合、飲料用濃縮原液のpHを3.0以上にすることが好ましく、3.5以上にすることがより好ましく、微生物の発育を充分に抑制でき、かつレモン風味として好ましい酸味を達成しやすいため、pHを3.0~4.0にすることが好ましく、3.5~3.7にすることが特に好ましい。
乳化剤は、食品に乳化、分散、浸透、洗浄、起泡、消泡、離型などの目的で使用されるが、飲料では液中に油を分散(乳化)させる目的で使用される場合が多い。例えば、疎水性成分を水中に均一に分散させたり、原材料由来の油脂成分の分離を抑制したりするために用いられる。
上述した食品素材や食品添加物は一例であり、本発明に係る飲料用濃縮原液に含有させるものはこれらに限定されるものではない。使用する食品素材や食品添加物の種類や含有量は、目的に応じて適宜選択、調整すればよい。
飲料用濃縮原液は、全ての原料を均一に混合して調製する。疎水性香気成分以外の疎水性の成分については、適切な乳化剤等を使用して乳化処理して均一にする。また、飲料用濃縮原液に果実パルプ等の不溶性固形分が含まれている場合も、均一になるように充分に攪拌処理する。乳化処理や攪拌処理は、飲料の製造で汎用されているホモジナイザーや攪拌装置を使用して行うことができる。
飲料用濃縮原液が、疎水性香気成分以外の疎水性の成分や不溶性固形分を含有していない場合には、これらを含有する場合よりも、飲料用濃縮原液の均一性がより容易に安定して保持できる。
調製された飲料用濃縮原液に、不溶物が生じた場合には、当該飲料用濃縮原液に対して濾過等の不溶物を除去する処理を行うことが好ましい。不溶物除去処理は、特に限定されるものではなく、濾過法、遠心分離法等の当該技術分野で通常用いられている方法で行うことができる。本発明においては、不溶物は濾過除去することが好ましく、珪藻土濾過により除去することがより好ましい。
飲料用濃縮原液は、容器内に封入されていてもよい。使用できる容器に特に制限はなく、ツーピース飲料缶、スリーピース飲料缶、ボトル缶、可撓性容器、ガラス瓶などを用いることができる。可撓性容器としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の可撓性樹脂をボトル形状等に成形してなる容器が挙げられる。可撓性容器は、単層樹脂からなるものであってもよく、多層樹脂からなるものであってもよい。
また、疎水性香気成分の劣化を抑制するために、飲料用濃縮原液を封入した容器の空寸部に存在する酸素を減少させることが好ましく、当該空寸部には窒素、二酸化炭素等の不活性ガスを充填することが好ましい。
また、日本国においては、食品衛生法により、飲料や飲料用濃縮原液に植物又は動物の組織成分を含有する場合、殺菌又は除菌を要することが定められている。本発明に係る飲料用濃縮原液においても、容器に密封した後、必要に応じて加熱殺菌が行われる。加熱殺菌処理は、容器に充填前に行ってもよく、容器充填後に行ってもよい。殺菌方法としては、UHT(超高温)殺菌処理、パストライザー殺菌処理、レトルト殺菌処理等の常法により行うことができる。
なお、本発明に係る飲料用濃縮原液及びこれを希釈して調製される飲料の各種の香気成分の濃度は、例えば、GC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析)により定量することができる。
本発明に係る飲料用濃縮原液を、水又は可食性水溶液で希釈することにより、不溶化した疎水性香気成分を含有する飲料が製造できる。飲料用濃縮原液の希釈倍率は、特に限定されるものではなく、例えば、2~15倍とすることができる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
希釈により不溶化した疎水性香気成分を含有するアルコール飲料を製造可能な飲料用濃縮原液を調製し、希釈しても濁りのない清澄なアルコール飲料が製造される市販の飲料用濃縮原液について、希釈して調製されたアルコール飲料の外観等を調べた。市販品としては、エタノール濃度が40容量%である市販品Aと、エタノール濃度が18容量%である市販品Bの2種類を用いた。
まず、原料用アルコール(エタノール濃度:95.3容量%)171.45g、果糖ブドウ糖液糖(果糖ブドウ糖濃度:55.9容量%)100.00g、無水クエン酸11.00g、クエン酸ナトリウム6.25g、レモン香料2.85g、及び水を混合、撹拌して、500mLの飲料用濃縮原液(エタノール濃度:40.5容量%)を調製した。使用したレモン香料は、シトラールを始めとするレモンの特徴的な疎水性香気成分をエタノールに溶解させた疎水性液状組成物(エタノール濃度:74.0容量%)であった。
調製された飲料用濃縮原液(以下、試験区1)においては、レモン香料に含まれていた疎水性香気成分は、液中に均一に溶解及び/又は分散されており、25℃で72時間静置した後も、疎水性香気成分の偏在は観察されなかった。
また、試験区1の飲料用濃縮原液を水で希釈して、エタノール濃度が30.0容量%、20.0容量%、10.0容量%、又は5.0容量%の希釈液を調製した。この結果、エタノール濃度が20.0容量%の希釈液では、試験区1の飲料用濃縮原液を水と混合、撹拌しただけでは、レモン香料由来の疎水性香気成分を均一に溶解及び/又は分散させることはできず、一定時間静置すると疎水性香気成分の偏在が観察された。これらの結果から、試験区1の飲料用濃縮原液中に溶解しているレモン香料由来の疎水性香気成分の濃度は、エタノール濃度が20.0容量%以下であるエタノール水に対する25℃における溶解度以上であることがわかった。
25℃の試験区1の飲料用濃縮原液50mLを入れた容器に、25℃の炭酸水250mLを注ぎ6倍希釈して、エタノール濃度6.7容量%のアルコール飲料(A)を調製した。また、25℃の試験区1の飲料用濃縮原液50mLを入れた容器に、4℃の炭酸水250mLを注ぎ6倍希釈して、エタノール濃度6.7容量%、4℃のアルコール飲料(B)を調製した。比較対象として、市販品Aと市販品Bについても同様にして、25℃又は4℃の炭酸水で6倍希釈し、アルコール飲料を製造した。
製造された各アルコール飲料の外観を観察した。この結果、試験区1の飲料用濃縮原液から調製されたアルコール飲料は、25℃のアルコール飲料と4℃のアルコール飲料のいずれも、靄のような濁りが生じていることが観察され、この白色の濁りは、4℃のアルコール飲料のほうが濃かった。両アルコール飲料を30分間静置した後で観察したところ、液面に疎水性の液状物が浮いていることが確認された。一方で、市販品Aと市販品Bから調製されたアルコール飲料は、その温度にかかわらず、また希釈直後と希釈後30分間静置した後のいずれにおいても、濁りや疎水性液状物は観察されなかった。
希釈前の25℃の飲料用濃縮液とこれを6倍希釈した5℃のアルコール飲料について、420nm、530nm、630nm、及び720nmの吸光度を測定した。吸光度の測定は、紫外可視分光光度計UV-1700(株式会社島津製作所)を使用した。測定結果を表1に示す。
Figure 0007534113000001
この結果、市販品Aと市販品Bの飲料用濃縮液を希釈して得られた飲料(4℃)は、全ての波長において、飲料用濃縮原液(25℃)よりも吸光度は小さくなっており、炭酸水による希釈によって液色が薄くなったことが、吸光度でも確認された。一方で、試験区1の飲料用濃縮液では、希釈して得られた飲料(4℃)の吸光度は、全ての波長において、飲料用濃縮原液(25℃)よりも大きくなっていた。炭酸水による希釈によって液色は薄くなったにもかかわらず、吸光度が増大していたのは、希釈した飲料で生じていた濁りの影響と考えられた。
[実施例2]
実施例1で製造した試験区1の飲料用濃縮液を用いて、希釈して製造されたアルコール飲料の香味に対する、飲料用濃縮液中の疎水性香気成分の乳化状態の影響を調べた。
試験区1の飲料用濃縮原液にさらに乳化剤としてレシチンを添加し、レモン香料由来の疎水性香気成分を均一に分散させたレシチン含有飲料用濃縮原液を得た。25℃のレシチン含有飲料用濃縮原液50mLを入れた容器に、25℃の炭酸水250mLを注ぎ6倍希釈して、エタノール濃度6.7容量%のアルコール飲料(C)を調製した。調製したアルコール飲料(C)は、72時間静置しても疎水性香気成分の偏在は観察されなかった。
また、試験区1の飲料用濃縮原液を機械乳化装置を使用して乳化させて、レモン香料由来の疎水性香気成分を均一に分散させた乳化処理済飲料用濃縮原液を得た。25℃の乳化処理済飲料用濃縮原液50mLを入れた容器に、25℃の炭酸水250mLを注ぎ6倍希釈して、エタノール濃度6.7容量%のアルコール飲料(D)を調製した。調製したアルコール飲料(D)は、72時間静置しても疎水性香気成分の偏在は観察されなかった。
製造したアルコール飲料(C)及びアルコール飲料(D)と、実施例1で製造したアルコール飲料(A)を飲用して、「レモンの香りの強さ」について官能評価を行った。官能評価は、訓練されたパネリスト3名で行い、全パネリストの評価点の平均値を、評価対象の評価点とした。この結果、アルコール飲料(A)が最も香りの強度が高く、自然なレモン香気が感じられるとの評価を得た。
また、試験区1の飲料用濃縮原液、アルコール飲料(C)、及びアルコール飲料(D)を、それぞれ、4℃で24時間、45℃で120時間、又は60℃で72時間保存した。保存後、試験区1の飲料用濃縮原液を炭酸水で6倍希釈して、実施例1と同様にしてアルコール飲料(A)を調製した。保存後の試験区1の飲料用濃縮原液から調製したアルコール飲料(A)と、保存後のアルコール飲料(C)及びアルコール飲料(D)とを飲用して、それぞれの「レモンの香りの強さ」の劣化度合いについて、官能評価を行った。具体的には、訓練されたパネリスト3名が飲用し、45℃又は60℃で保存したアルコール飲料のレモンの香りの強さを、4℃で保存したアルコール飲料のレモンの香りの強さと比較して、劣化度合いを評価した。この結果、保存後の試験区1の飲料用濃縮原液から調製したアルコール飲料(A)が最も劣化度合いの少ないことがわかった。

Claims (13)

  1. 水又は可食性水溶液で所望のエタノール濃度となるように希釈することによってアルコール飲料を製造するための飲料用濃縮原液であって、
    前記飲料用濃縮原液は、エタノールと疎水性香気成分を含有しており、
    前記疎水性香気成分の少なくとも一部は、前記飲料用濃縮原液に溶解しており、
    25℃における720nmの吸光度が、水で6倍希釈した希釈液の5℃における720nmの吸光度よりも0.05以上小さく
    前記飲料用濃縮原液を希釈して調製された飲料では、前記飲料用濃縮原液に溶解していた前記疎水性香気成分の少なくとも一部が不溶化し、かつ、液面に疎水性の液状物が浮いていることを特徴とする、飲料用濃縮原液。
  2. 前記疎水性香気成分は、前記飲料用濃縮原液中に均一に存在している、請求項1に記載の飲料用濃縮原液。
  3. エタノール濃度が20~60容量%である、請求項1又は2に記載の飲料用濃縮原液。
  4. 25℃において透明である、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料用濃縮原液。
  5. 前記飲料用濃縮原液に溶解している疎水性香気成分の濃度Pc(g/100g)が、Sb×Ac/Ab[Ac(容量%)は前記飲料用濃縮液のエタノール濃度であり、Tc(℃)は前記飲料用濃縮原液の液温であり、Ab(容量%)は前記飲料用濃縮液を希釈して調製される飲料のエタノール濃度であり、Tb(℃)は前記飲料の液温である]よりも大きい、請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料用濃縮原液。
  6. 25℃における420nm、530nm、又は630nmの吸光度が、それぞれ、水で6倍希釈した希釈液の5℃における420nm、530nm、又は630nmの吸光度よりも小さい、請求項1~5のいずれか一項に記載の飲料用濃縮原液。
  7. 前記飲料用濃縮原液には、乳化状態の疎水性香気成分も含有されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の飲料用濃縮原液。
  8. 前記疎水性香気成分が、果実の香気成分である、請求項1~7のいずれか一項に記載の飲料用濃縮原液。
  9. 前記果実が柑橘類である、請求項8に記載の飲料用濃縮原液。
  10. 前記疎水性香気成分が、シトラールを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の飲料用濃縮原液。
  11. 容器内に封入されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の飲料用濃縮原液。
  12. 請求項1~11のいずれか一項に記載の飲料用濃縮原液を、水又は可食性水溶液で希釈する、飲料の製造方法。
  13. 前記飲料用濃縮原液を、2~15倍希釈する、請求項12に記載の飲料の製造方法。
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