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JP7530589B2 - 成形品の製造方法 - Google Patents

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Description

特許法第30条第2項適用 2019年(平成31年)2月27日発行 第10回日本複合材料会議(JCCM-10)講演論文集にて発表 2019年(平成31年)3月7日 第10回日本複合材料会議にて発表
本発明は、成形品の製造方法に関する。
従来、引抜成形法により繊維強化樹脂の成形品を製造する方法が開発されている。引抜成形法においては、引き抜く際の金型(ダイ)を、平板ではなく、様々な形状となるように変えて、所望の形状に賦形した成形体として得ることができる。例えば、特許文献1では、金型に導入された繊維シートおよび間隙材を、引抜方向に引き抜きながら、繊維シートおよび間隙材に含まれる熱硬化性樹脂を金型で加熱硬化させることで、T字状の引抜成形材料を成形する方法が例示されている。
国際公開第2018/037767号
一方、本発明者は、熱可塑性樹脂と連続強化繊維とからなるUD(Uni-directional)テープを用いて引抜成形をした。その結果、得られる成形品の角部や湾曲部においてボイドが発生する場合があることが分かった。本発明はかかる問題を解決することを目的とするものであって、熱可塑性樹脂と連続強化繊維から構成されるUD材料の引抜成形品において、その角部や湾曲部でのボイドの発生を抑制することを目的とする。
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、UD材料の引抜成形に際し、その表面に糸状の繊維強化樹脂材料を設けることにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>一方向に並列した連続強化繊維に熱可塑性樹脂が含浸しているUD材料の少なくとも一方の表面に、前記UD材料の連続強化繊維の並列方向に対し、20°以上の角度を持つように、熱可塑性樹脂繊維と強化繊維から構成される糸状の繊維強化樹脂材料を配置し、前記UD材料の連続強化繊維の並列方向に引抜成形することを含む、成形品の製造方法。
<2>前記UD材料に含まれる熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂を含む、<1>に記載の成形品の製造方法。
<3>前記UD材料に含まれる前記熱可塑性樹脂が、ジアミンに由来する構成単位およびジカルボン酸に由来する構成単位から構成され、ジアミンに由来する構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂を含む、<1>に記載の成形品の製造方法。
<4>前記UD材料に含まれる連続強化繊維が、ガラス繊維および炭素繊維から選ばれる少なくとも1種である、<1>~<3>のいずれか1項の成型品の製造方法。
<5>前記糸状の繊維強化樹脂材料が、混繊糸を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の成形品の製造方法。
<6>前記糸状の繊維強化樹脂材料が、前記混繊糸の組物である、<5>に記載の成形品の製造方法。
<7>前記糸状の繊維強化樹脂材料が、組物、織物および編物の少なくとも1種の形態で、UD材料の表面に配置されている、<1>~<6>のいずれか1つに記載の成形品の製造方法。
<8>前記糸状の繊維強化樹脂材料に含まれる連続熱可塑性樹脂繊維が、ポリアミド樹脂を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の成形品の製造方法。
<9>前記糸状の繊維強化樹脂材料に含まれる連続強化繊維が、ガラス繊維および炭素繊維から選ばれる少なくとも1種である、<1>~<8>のいずれか1項の成型品の製造方法。
本発明により、熱可塑性樹脂と連続強化繊維から構成されるUD材料の成形品において、その角部や湾曲部でのボイドの発生が抑制された成形品の製造方法を提供することが可能になった。
本発明の一実施形態に係る成形品の製造過程を模式的に示す断面図である。 図1のII-II線断面を模式的に示す拡大断面図である。 複合テープの一部の形態を模式的に示した拡大断面図である。 UD材料の連続強化繊維の並列方向と糸状繊維の並列方向との関係(角度)を模式的に示した平面図である。 UD材料の連続強化繊維の並列方向と糸状繊維の並列方向との関係(角度)を模式的に示した平面図である。 実施例1で製造した成形品の角部における断面の状態を拡大鏡で観察した写真である。 比較例1で製造した成形品の角部における断面の状態を拡大鏡で観察した写真である。 混繊糸の断面図を顕微鏡観察した画像である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本発明の成形品の製造方法は、一方向に並列した連続強化繊維に熱可塑性樹脂が含浸しているUD材料の少なくとも一方の表面に、前記UD材料の連続強化繊維の並列方向に対し、20°以上の角度を持つように、糸状の繊維強化樹脂材料を配置し、前記UD材料の連続強化繊維の並列方向に引抜成形することを含むことを特徴とする。かかる構成を採用することにより、UD材料の成形品において、その角部や湾曲部でのボイドの発生を抑えることができる。
UD材料の成形品において角部にボイドが発生した理由は、圧力が掛かりにくく、エアーが抜けないためと推察される。本発明においては、糸状の繊維強化樹脂材料を表面に設けたことにより、引き抜き成形の過程においてダイのなかで糸状の繊維強化樹脂材料により締め付けられることにより、この点が解消され、良好な成形品が得られたものと推測される。
また、本発明の製造方法で得られる成形品は、UD材料の表面に所定の方向に糸状の繊維強化樹脂材料を配置しているので、糸状の繊維強化樹脂材料を用いずにUD材料のみによるものに比し、延性破壊性に優れたものとすることができる。
本発明における引抜成形とは、一定の断面形状を有する成形品を連続して成形する方法であって、前記断面形状には、少なくとも1つの角部や湾曲部など平板状でない部分が含まれる方法をいう。
図1は、本発明の一実施形態に係る成形品の製造過程を模式的に示す断面図である。本実施形態の製造方法では、まず、UD材料31の上面と下面に糸状の繊維強化樹脂材料33、32が適用され、UD材料31が糸状の繊維強化樹脂材料32、33で挟持される形で成形品3が形成される。成形品の原料となる材料3は、例えば、図3に示す状態で予備加熱装置5に送られる。予備加熱装置5には、ヒーターP1、P2が内臓されている。次いで、予備加熱された材料30は金型(ダイ)4に送られる。金型4にもヒーターH1~H6が内蔵されており、所定の温度に加熱しながら、引き抜き方向1に引き抜き、所望の形状の成形品3に成形することができる。図2は図1のII-II線矢視の断面図であり、本実施形態においては、同図に示したとおりのL字型の成形品とする例を示している。成形品30の形状に特に制約はないが、例えば、T字型にしたり、V字型にしたり、U字型にしたり、コの字型にしたりしてもよい。また、O字型等の筒状であってもよい。
予備加熱装置および金型の加熱温度は適宜設定されればよいが、熱可塑性樹脂を賦形することを考慮し、金型の出口に向けて成形品の形態が定まり、その後の引抜ロールでの引き抜きを円滑に行えるようにすることが好ましい。一例を示すと、予備加熱装置においては、P1の加熱温度よりP2の加熱温度が高いことが好ましい。仕上げ加熱装置では、H1の加熱温度が最も高く、H6の加熱温度が最も低いことが好ましい。特にH1~H6における加熱温度は熱可塑性樹脂の融点やガラス転移温度との関係で設定することが好ましい。加熱温度としては、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合その融点(Tm)を基準にして定めることができる。例えば、P1はTm-200℃以上であることが好ましく、また、Tm-100℃以下であることがさらに好ましい。P2は、P1より50℃以上高いことが好ましく、また、P1+180℃以下であることがさらに好ましい。
H1~H6については、H1がTm-10℃以上であることが好ましく、また、Tm+50℃以下であることがさらに好ましい。H6は、H1より低いことが好ましく、また、H1+-10℃以下であることがさらに好ましい。
P1の加熱時間は、1~15分が好ましく、P2の加熱時間は、1~10分が好ましく、H1の加熱時間は、1~5分が好ましく、H6の加熱時間は、0.2~5分が好ましい。
図3は、図1のIII矢視の成形品の一部を模式的に示す拡大断面図である。図示したもののように、本実施形態では糸状の繊維強化樹脂材料32、33でUD材料31が挟持された形となっている。本発明がこれにより限定して解釈されるものではなく、UD材料31の一方の面のみに糸状の繊維強化樹脂材料が配置されていてもよい。UD材料31と糸状の繊維強化樹脂材料32、33の厚さは特に限定されないが、UD材料31の厚さt1が0.1mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、1.5mm以上であることがさらに好ましい。上限値としては、15mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、8mm以下であることがさらに好ましい。これに対し、糸状の繊維強化樹脂材料32、33は、通常、UD材料より薄いことが好ましい。厚さt2およびt3として具体的には、0.01mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましく、0.2mm以上であることがさらに好ましい。上限値としては、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましく、0.8mm以下であることがさらに好ましい。
図4は、UD材料の連続強化繊維の並列方向と糸状の繊維強化樹脂材料の並列方向との関係(角度)を模式的に示した平面図である。UD材料の連続強化繊維の並列方向、つまりMD(Machine Direction)を0°とし、これと直交する方向、つまりTD(Transverse Direction)を90°としている。糸状の繊維強化樹脂材料の角度はu1で規定されている。本発明においては、糸状の繊維強化樹脂材料の角度が20°以上であればよいが、この角度は、23°以上であることが好ましく、25°以上であることがより好ましく、27°以上であることがさらに好ましい。上限は特にないが、80°以下であることが実際的である。
また、本発明では、糸状の繊維強化樹脂材料は、UD材料の連続強化繊維の並列方向に対して、2方向以上の方向に対して、20°以上の角度を持って設けられていることが好ましい。2の方向に対して、20°以上の角度を持つとは、例えば、図5に示すように、UD材料の連続強化繊維の並列方向に対し、±20°以上の角度を持って設けられている場合が例示される。このような態様は、例えば、糸状の繊維強化樹脂材料の織物や編物、などをUD材料の表面に設けることによって、容易に達成される。また、糸状の繊維強化樹脂材料は、UD材料の連続強化繊維の並列方向に対して、1方向で、20°以上の角度を持って設けられ、すなわち、糸状の繊維強化樹脂材料は、通常、少なくとも1方向において、規則的に配列されている。本発明では、引抜成形時に用いる材料が、UD材料と糸状の繊維強化樹脂材料で材料の総量の95質量%以上を占め(好ましくは99質量%以上を占め)、かつ、UD材料の両面において、糸状の繊維強化樹脂材料が20°以上の角度を持って並列していることが好ましい。
また、本発明では、糸状の繊維強化樹脂材料の織物、編物や組物で、UDテープを包むように配置することが好ましい。
なお、本発明における並列方向や角度は、幾何的な意味で並列方向や角度の場合のほか、本発明の技術分野における通常の誤差は含まれる趣旨である。また、UD材料や糸状強化繊維材料の端部などにおいては、上記角度を満たさない場合があることは言うまでもない。例えば、UD材料の少なくとも片面の面積において、その80%以上において、糸状の繊維強化樹脂材料が20°以上の角度を持って並列している場合、本発明の要件を満たすものといえる。
20°以上の角度を持つように並列した糸状の繊維強化樹脂材料は、UD材料の100質量部に対し、片面に、3質量部以上設けられることが好ましく、5質量部以上設けられることがより好ましく、7質量部以上設けられることがさらに好ましい。上限値としては、25質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましく、15質量部以下であることが一層好ましい。本発明では、UD材料の両面に、それぞれ、上記量の糸状の繊維強化樹脂材料が20°以上の角度を持つように並列していることが好ましい。
<UD材料>
UD材料は、一方向に並列した連続強化繊維に熱可塑性樹脂が含浸しており、概ね、平板状の材料である。UD材料において、含浸率は100%であることが好ましいが、90%以上が含浸していればよい。含浸率とは、熱可塑性樹脂繊維が連続強化繊維に含浸している割合を意味し、UD材料の長手方向に垂直な断面の面積に対する含浸している熱可塑性樹脂の割合を基準として示される値である。
なお、本発明におけるUD材料は、UDシートやUDテープが例示される。
UD材料に含まれる熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂類、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂類、ポリカーボネート樹脂、ポリオキシメチレン樹脂(ポリアセタール樹脂)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン等のポリエーテルケトン樹脂類、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルサルファイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、熱可塑性ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリアミドイミド、全芳香族ポリイミド、半芳香族ポリイミド等の熱可塑性ポリイミド樹脂類等を用いることができ、ポリアミド樹脂を含むことが好ましい。
ポリアミド樹脂としては、ポリアミド4、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド4T、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド66/6T、ポリアミド6I/6T、ポリキシリレンアジパミド、ポリキシリレンセバカミド、ポリキシリレンドデカミド、ポリアミド9T、ポリアミド9MT、ポリアミド10T等が挙げられる。
上述のようなポリアミド樹脂の中でも、成形性、耐熱性の観点から、ジアミンに由来する構成単位およびジカルボン酸に由来する構成単位から構成され、ジアミンに由来する構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂(以下、「XD系ポリアミド」ということがある)を含むことが好ましい。
また、ポリアミド樹脂が混合物である場合は、ポリアミド樹脂中のXD系ポリアミドの比率が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、さらには90質量%以上、特には95質量%以上であってもよい。
XD系ポリアミドは、ジアミン由来の構成単位の、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、一層好ましくは95モル%以上が、キシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上が、炭素原子数が好ましくは4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
上記キシリレンジアミンは、少なくともメタキシリレンジアミンを含むことが好ましく、30~100モル%のメタキシリレンジアミンと、70~0モル%のパラキシリレンジアミンからなることがより好ましく、50~100モル%のメタキシリレンジアミンと、50~0モル%のパラキシリレンジアミンからなることがさらに好ましい。
XD系ポリアミドの原料ジアミン成分として用いることができるメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
ジアミン成分として、キシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、ジアミン由来の構成単位の50モル%未満であり、30モル%以下であることが好ましく、より好ましくは1~25モル%、特に好ましくは5~20モル%の割合で用いる。
ポリアミド樹脂の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素原子数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種または2種以上を混合して使用できるが、これらの中でもポリアミド樹脂の融点が成形加工するのに適切な範囲となることから、アジピン酸またはセバシン酸が好ましい。
上記炭素原子数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等のナフタレンジカルボン酸等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
ジカルボン酸成分として、炭素原子数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を用いる場合は、テレフタル酸、イソフタル酸を用いることが好ましい。テレフタル酸、イソフタル酸の割合は、好ましくはジカルボン酸由来の構成単位の30モル%以下であり、より好ましくは1~30モル%、特に好ましくは5~20モル%の範囲である。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位とから構成されるとは、これらの成分を主成分とするが、これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε-カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよいことは言うまでもない。本発明では、ポリアミド樹脂における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましい。
本発明で用いるポリアミド樹脂の第一の実施形態は、ジアミン由来の構成単位の80モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の80モル%以上がアジピン酸に由来する態様である。
本発明で用いるポリアミド樹脂の第二の実施形態は、ジアミン由来の構成単位の10~90モル%がメタキシリレンジアミンに由来し、90~10モル%がパラキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の80モル%以上がセバシン酸に由来する態様である。
本発明においては、UD材料に第一の実施形態のポリアミド樹脂を用いることがより好ましい。
本発明で用いるポリアミド樹脂は、数平均分子量(Mn)が6,000~30,000であることが好ましく、より好ましくは8,000~28,000であり、さらに好ましくは9,000~26,000であり、一層好ましくは10,000~24,000であり、より一層好ましくは11,000~22,000である。このような範囲であると、得られる成形品の耐熱性、弾性率、寸法安定性、成形加工性がより良好となる。
なお、ここでいう数平均分子量(Mn)とは、ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度[NH](μ当量/g)と末端カルボキシル基濃度[COOH](μ当量/g)から、次式で算出される。
数平均分子量(Mn)=2,000,000/([COOH]+[NH])
ポリアミド樹脂の製造方法は、特開2014-173196号公報の段落0052~0053の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
ポリアミド樹脂の融点は、150~310℃であることが好ましく、180~300℃であることがより好ましく、180~250℃であることがさらに好ましい。
また、ポリアミド樹脂のガラス転移点は、50~100℃が好ましく、55~100℃がより好ましく、特に好ましくは60~100℃である。この範囲であると、得られる成形品の耐熱性がより良好となる傾向にある。
ガラス転移点とは、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定されるガラス転移点をいう。測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、試料量は約1mgとし、雰囲気ガスとしては窒素を30mL/分で流し、昇温速度は10℃/分の条件で室温から予想される融点以上の温度まで加熱し溶融させた際に観測される吸熱ピークのピークトップの温度から融点を求めることができる。次いで、溶融したポリアミド樹脂を、ドライアイスで急冷し、10℃/分の速度で融点以上の温度まで再度昇温し、ガラス転移点、融点を求めることができる。
示差走査熱量計(DSC)は、例えば、島津製作所(SHIMADZU CORPORATION)製、DSC-60を用いることができる。
本発明の好ましい実施形態で用いる熱可塑性樹脂において、80質量%以上(好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上)が、ポリアミド樹脂である形態が例示される。
UD材料は、熱可塑性樹脂を20質量%以上含むことが好ましく、30質量%以上含むことがより好ましく、また、90質量%以下含むことが好ましく、80質量%以下含むことがより好ましい。
UD材料は、また、熱可塑性樹脂を20体積%以上含むことが好ましく、30体積%以上含むことがより好ましく、また、90体積%以下含むことが好ましく、80体積%以下含むことがより好ましい。
熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
熱可塑性樹脂には、各種の含有成分を含めてもよい。例えば、エラストマー、連続強化繊維以外のフィラー、酸化防止剤、熱安定剤等の安定剤、耐加水分解性改良剤、耐候安定剤、艶消剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤、滑剤等の添加剤等を加えることができる。これらの詳細は、特許第4894982号公報の段落番号0130~0155の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。なお、本発明で用いる熱可塑性樹脂は、上記フィラーを含んでいてもよいが、上記フィラーを含まないことが好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂組成物中の上記フィラーの含有量が、3質量%以下であることをいう。
UD材料は、連続強化繊維を含む。連続強化繊維とは、数平均繊維長が10mm以上の繊維をいい、数平均繊維長が1m以上であることが好ましい。特に、連続強化繊維の原料がロービング繊維である場合、数平均繊維長が比較的短い(例えば、10mm~10cm程度)のものを撚糸あるいは束状として用いてもよい。
本発明における連続強化繊維の断面は、円形であってもよいし、非円形であってもよい。
本発明で用いる連続強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、セラミック繊維、金属繊維(スチール繊維等)等の無機繊維、および、植物繊維(ケナフ(Kenaf)、竹繊維等を含む)、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等の有機繊維から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。なかでも、炭素繊維およびガラス繊維から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、炭素繊維であることがさらに好ましい。
連続強化繊維は、処理剤で処理されたものを用いることが好ましい。このような処理剤としては、集束剤や表面処理剤が例示され、特許第4894982号公報の段落番号0093および0094に記載のものが好ましく採用され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物からなるものが挙げられ、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等であり、シラン系カップリング剤が好ましい。
また、収束剤としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シラン系化合物、イソシアネート系化合物、チタネート系化合物、ポリアミド樹脂の少なくとも1種であることが好ましく、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シラン系カップリング剤、水不溶性ポリアミド樹脂および水溶性ポリアミド樹脂の少なくとも1種であることがより好ましく、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、水不溶性ポリアミド樹脂および水溶性ポリアミド樹脂の少なくとも1種であることがさらに好ましく、水溶性ポリアミド樹脂であることが一層好ましい。
前記処理剤の量は、連続強化繊維の0.001~1.5質量%であることが好ましく、0.1~1.2質量%であることがより好ましく、0.3~1.1質量%であることがさらに好ましい。
連続強化繊維の処理剤による処理方法は、公知の方法を採用できる。例えば、連続強化繊維を、処理剤を溶液に溶解させたものに浸漬し、連続強化繊維の表面に処理剤を付着させることが挙げられる。また、処理剤を連続強化繊維の表面にエアブローすることもできる。さらに、既に、表面処理剤や処理剤で処理されている連続強化繊維を用いてもよいし、市販品の表面処理剤や処理剤を洗い落してから、再度、所望の処理剤量となるように、表面処理しなおしてもよい。
UD材料は、連続強化繊維を10質量%以上含むことが好ましく、20質量%以上含むことがより好ましく、また、80質量%以下含むことが好ましく、70質量%以下含むことがより好ましい。
UD材料は、また、連続強化繊維を10体積%以上含むことが好ましく、20体積%以上含むことがより好ましく、また、80体積%以下含むことが好ましく、70体積%以下含むことがより好ましい。
連続強化繊維は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
UD材料の厚さは特に限定されないが、20μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることがさらに好ましい。上限値としては、4mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。
また、成形する成形品の形状に応じて、2枚以上のUD材料を重ねて成形してもよく、2~20枚重ねて成形することが好ましい。
UD材料の幅は、特に限定されないが、10mm以上であることが好ましく、30mm以上であることがより好ましく、50mm以上であることがさらに好ましい。上限値としては、1500mm以下であることが好ましく、1200mm以下であることがより好ましい。
また、成形する成形品の形状に応じて、2枚以上のUD材料を並列に並べて成形してもよい。
UD材料は1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
本発明で用いるUD材料は、熱可塑性樹脂と連続強化繊維の合計が、UD材料の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上占めることがより好ましい。
<糸状の繊維強化樹脂材料>
糸状の繊維強化樹脂材料は、強化繊維と熱可塑性樹脂から構成される糸状の材料であり、好ましくは連続強化繊維と熱可塑性樹脂から構成される糸状の材料であり、より好ましくは連続強化繊維と熱可塑性樹脂繊維から構成される糸状の材料であり、さらに好ましくは、連続強化繊維と、連続熱可塑性樹脂繊維から構成される糸状の材料である。
ここで、強化繊維と熱可塑性樹脂から構成されるとは、糸状の繊維強化樹脂材料を構成する成分の主要成分が強化繊維と熱可塑性樹脂であることをいい、好ましくは糸状の繊維強化樹脂材料の90質量%を強化繊維と熱可塑性樹脂とで占める態様である。
また、糸状とは、長手方向に対して、断面が十分に小さいこと、あるいは、厚さや幅が十分に細いことをいう。従って、本発明で用いる糸状の繊維強化樹脂材料は、テープ状であってもよく、テープ状が好ましい。本発明において、テープ状の糸状の繊維強化樹脂材料の幅は、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることがさらに好ましく、5mm以上であることが一層好ましく、7mm以上であることがより一層好ましい。上限としては、100mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることがさらに好ましい。また、テープ状の糸状の繊維強化樹脂材料の厚みは、0.05mm以上であることが好ましく、0.10mm以上であることがより好ましく、0.15mm以上であることがさらに好ましく、0.20mm以上であることが一層好ましく、0.25mm以上であることがより一層好ましい。上限としては、1.0mm以下であることが好ましく、0.9mm以下であることがより好ましく、0.8mm以下であることがさらに好ましい。一方、糸状の繊維強化樹脂材料の円相当直径(同じ面積の円の直径)は、5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることがさらに好ましく、30mm以上であることが一層好ましく、40mm以上であることがより一層好ましい。上限としては、1000mm以下であることが好ましく、900mm以下であることがより好ましく、800mm以下であることがさらに好ましい。
テープ状の糸状の繊維強化樹脂材料の幅、厚み、円相当直径は、混繊糸の組物を用いる場合、前記組物の幅等を意味する。
糸状の繊維強化樹脂材料において、熱可塑性樹脂の強化繊維への含浸率は低いことが好ましく、含浸率が50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。含浸率含とは、熱可塑性樹脂が強化繊維に含浸している割合を意味し、糸状の繊維強化樹脂材料の長手方向に垂直な断面の面積に対する含浸している熱可塑性樹脂の割合を基準として示される値である。含浸率は下記に記載の方法に従って測定される。
混繊糸当の材料を切り取り、エポキシ樹脂で包埋し、混繊糸の断面部にあたる面を研磨し、断面図を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を使用して撮影した。得られた断面写真に対し、連続強化繊維の熱可塑性樹脂が含浸した領域を画像解析ソフトImageJを用いて選択し、その面積を測定した。含浸率は、連続強化繊維の熱可塑性樹脂が含浸した領域/断面積(単位%)として示した。
超深度カラー3D形状測定顕微鏡は、VK-9500(コントローラー部)/VK-9510(測定部)(キーエンス製)を使用した。
本発明では、上記のように、熱可塑性樹脂が強化繊維に比較的含浸していない材料を用いることにより、成形品中のボイドをより効果的に減らすことができる。
糸状の繊維強化樹脂材料の実施形態の一例は、連続熱可塑性樹脂繊維と連続強化繊維から構成される混繊糸である。また、他の一例は、熱可塑性樹脂繊維に、連続強化繊維を巻きつけたカバリング糸である。さらに、他の一例は、連続強化繊維に、熱可塑性樹脂繊維を巻きつけたカバリング糸である。また、連続熱可塑性樹脂繊維と連続強化繊維の組物、より紐などがあげられる。さらに、前記混繊糸やカバリング糸、さらには、組物やより紐を、さらに、組物やより紐としてもよい。組物の形態としては、特に制限はなく、角打ち紐、平打紐、丸打紐等が例示される。
本発明では、混繊糸が好ましく、混繊糸の組物がより好ましい。
本発明における混繊糸は、分散度が40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。分散度は、以下に記載の方法に従って測定される。
<分散度の測定方法>
混繊糸の分散度は以下の通り測定した。
混繊糸をエポキシ樹脂で包埋し、混繊糸の長手方向に垂直な断面を研磨し、断面図を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を使用して撮影した。図9に示すように、撮影画像において、放射状に補助線を等間隔に6本ひき、各補助線上にある連続強化繊維領域の長さをa1, a2, a3・・・ai(i=n)と測量した。また、各補助線上にある連続熱可塑性樹脂繊維の領域の長さをb1, b2, b3・・・bi(i=m)と測量した。その結果に基づき、次式により分散度を算出した。
Figure 0007530589000001
超深度カラー3D形状測定顕微鏡は、VK-9500(コントローラー部)/VK-9510(測定部)(キーエンス製)を使用した。
本発明では、糸状の繊維強化樹脂材料は、そのままUD材料に配置してもよいし、織物、編物や組物として配置してもよい。本発明では、織物、編物または組物の形態でUD材料の表面に適用されることが好ましく、組物が好ましい。織物の形態としては、特に制限はなく、平織、八枚朱子織、四枚朱子織、綾織等のいずれでもよい。また、いわゆるバイヤス織でもよい。さらに、特開昭55-30974号公報に記載されているように実質的に屈曲を有しないいわゆるノンクリンプ織物であってもよい。編物の形態としては、特に制限はなく、たて編み、よこ編み、ラッセル編み等が例示される。
織物、編物または組物の場合、それらを構成する糸の少なくとも1種が混繊糸である態様が例示される。織物、編物または組物を構成する混繊糸以外の糸は、連続強化繊維や熱可塑性樹脂繊維であってもよいが、いずれも混繊糸であることがより好ましい。
糸状の繊維強化樹脂材料に含まれる熱可塑性樹脂繊維は、連続熱可塑性樹脂繊維であることが好ましい。連続熱可塑性樹脂繊維とは、数平均繊維長が10mm以上の繊維をいい、数平均繊維長が1m以上であることが好ましい。また、本発明では、数平均繊維長が比較的短い(例えば、10mm未満)のものを撚糸あるいは束状にすることによって、連続熱可塑性樹脂繊維として機能させることもできる。
熱可塑性樹脂繊維の数平均繊維系は、5μm~60μmであることが好ましい。
糸状の繊維強化樹脂材料に含まれる熱可塑性樹脂の種類や好ましい範囲、添加剤成分などは、UD材料のところで述べたものと同じである。ただし、本発明においては、熱可塑性樹脂繊維には、第二の実施形態のポリアミド樹脂を用いることがより好ましい。
糸状の繊維強化樹脂材料は、熱可塑性樹脂繊維を20質量%以上含むことが好ましく、30質量%以上含むことがより好ましく、また、90質量%以下含むことが好ましく、80質量%以下含むことがより好ましい。
糸状の繊維強化樹脂材料は、また、熱可塑性樹脂繊維を20体積%以上含むことが好ましく、30体積%以上含むことがより好ましく、また、90体積%以下含むことが好ましく、80体積%以下含むことがより好ましい。
熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
糸状の繊維強化樹脂材料に含まれる強化繊維は、連続強化繊維であることが好ましい。連続強化繊維とは、数平均繊維長が10mm以上の繊維をいい、数平均繊維長が1m以上であることが好ましい。また、本発明では、数平均繊維長が比較的短い(例えば、10mm未満)のものを撚糸あるいは束状にすることによって、連続強化繊維として機能させることもできる。
糸状の繊維強化樹脂材料に含まれる連続強化繊維の種類や好ましい範囲などは、UD材料のところで述べたものと同じである。
糸状の繊維強化樹脂材料は、強化繊維を10質量%以上含むことが好ましく、20質量%以上含むことがより好ましく、また、80質量%以下含むことが好ましく、70質量%以下含むことがより好ましい。
糸状の繊維強化樹脂材料は、また、強化繊維を10体積%以上含むことが好ましく、20体積%以上含むことがより好ましく、また、80体積%以下含むことが好ましく、70体積%以下含むことがより好ましい。
強化繊維は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
糸状の繊維強化樹脂材料は1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
本発明で用いる糸状の繊維強化樹脂材料は、熱可塑性樹脂と連続強化繊維の合計が、UD材料の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上占めることがより好ましい。
本発明で用いるUD材料と糸状の繊維強化樹脂材料では、熱可塑性樹脂および強化繊維として、同じ種類のものを用いてもよいし、異なる種類のものを用いてもよい。
本発明で用いるUD材料と糸状の繊維強化樹脂材料の組み合わせとしては、UD材料に用いる熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂の第一の実施形態のものであり、糸状の繊維強化樹脂材料に用いる熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂の第二の実施形態のものであることが例示される。このような構成とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
また、本発明で用いるUD材料と糸状の繊維強化樹脂材料の組み合わせとしては、UD材料に用いる連続強化繊維と、糸状の繊維強化樹脂材料に用いる強化繊維の80質量%以上が同じ強化繊維であることが例示される。
本発明の製造方法で得られる成形品の用途は特に限定されないが、パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話などの電気・電子機器、光学機器、精密機器、玩具、家庭・事務電気製品などの部品やハウジング、さらには自動車、航空機、船舶などの部品に好適に利用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
<MP10の合成例>
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロートおよび窒素導入管、ストランドダイを備えた反応容器に、セバシン酸(伊藤製油株式会社製TAグレード)10kg(49.4mol)および酢酸ナトリウム/次亜リン酸ナトリウム・一水和物(モル比=1/1.5)11.66gを仕込み、十分に窒素置換した後、さらに少量の窒素気流下で系内を撹搾しながら170℃まで加熱溶融した。
メタキシリレンジアミン(三菱ガス化学株式会社製)とパラキシリレンジアミン(三菱ガス化学株式会社製)のモル比が70/30である混合キシリレンジアミン6.647kg(メタキシリレンジアミン34.16mol、パラキシリレンジアミン14.64mol)を溶融したセバシン酸に撹拌下で滴下し、生成する縮合水を系外に排出しながら、内温を連続的に2.5時間かけて240℃まで昇温した。
滴下終了後、内温を上昇させ、250℃に達した時点で反応容器内を減圧にし、さらに内温を上昇させて255℃で20分間、溶融重縮合反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、得られた重合物をストランドダイから取り出して、これをペレット化することにより、ポリアミド樹脂MP10を得た。
得られたポリアミド樹脂の融点は、213℃、数平均分子量は、15400であった。
<連続熱可塑性樹脂繊維の製造>
上記合成例で得られたMP10ポリアミド樹脂を直径30mmのスクリューを有する単軸押出機にて溶融押出しし、60穴のダイからストランド状に押出し、ロールにて巻き取りながら延伸した。溶融温度は、連続熱可塑性樹脂(MP10)の融点+15℃とした。
ついで、油剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(花王製、エマノーン 1112))を深型のバットに満たし、表面をゴム処理したローラーをローラーの下部分が油剤に接するように設置してローラーを回転させることで、常に油剤がローラー表面に付着している状態にした。上記連続熱可塑性樹脂繊維をこのローラーに接触させることで連続熱可塑性樹脂繊維の表面に油剤を塗布した。
得られた連続熱可塑性樹脂の繊維束を芯材に800m巻き取って、回巻体を得た。
<混繊糸の製造方法>
上記連続熱可塑性樹脂繊維の回巻体、および、1m以上の長さを有する連続強化繊維(炭素繊維三菱ケミカル社製、パイロフィル、TR-50S)の回巻体からそれぞれの繊維を引き出し、複数のガイドを通しながらエアブローにより開繊を行った。連続強化繊維を開繊しながら、また、連続熱可塑性樹脂繊維を幅0.6mm、9本に分け、その隙間が0.6mmになるように、配置して、一束とし、さらに、複数のガイドを通しながらエアブローを与え、均一化を進め、混繊糸を得た。得られた混繊糸は、熱可塑性樹脂繊維の含浸率10%以下、分散度70%以上、連続強化繊維の体積比率50%であった。
<組物の製造>
上記で得られた混繊糸を用い丸打組物機械により、組糸48本、中央糸12本、組角度30°の組物を、一方向材料の上から1層巻き付けた。
<UDテープの製造>
ロービング状の炭素繊維(三菱ケミカル社製、パイロフィル TR-50S)22ロールを等間隔に並べ、スプレッダーを通過させ、160mm幅に広げた。広げた炭素繊維を上下2つの含浸ロール間に入れる際に、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)で溶融させたポリアミド樹脂MXD6(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、グレードS6002、融点243℃、数平均分子量16800)を供給し、含浸ロール中で、炭素繊維にポリアミド樹脂組成物を含浸させた。その後、冷却ロールで冷却しながら、引き取り、円柱状の芯材に巻き取り、テープを作製した。押出機の設定温度は280℃、回転数は350回転、引き取り速度は2mm/分とした。炭素繊維中への樹脂の含浸率90%以上、炭素繊維含有率50質量%40体積%)の幅160mm、厚さ0.15mmのテープが50m得られた。
<実施例1>
上記で得られたUDテープを15枚重ね、その表面に、上記編物1枚を巻きつけた。このとき、編物を構成する組物の方向がUDテープの連続強化繊維の並列方向に対し、30°となるように並列した。UDテープ100質量部に対し、編物の量は35質量部であった。
次いで、図1に示す引抜成形装置を用い、図1のP1、P2、H1、H2、H3、H4、H5、H6の順に、100℃、210℃、250℃、250℃、250℃、240℃、225℃、215℃となるように加熱した。加熱時間は、順に、9.5分、7分、3.3分、3.3分、3.3分、3.3分、1.3分、1.3分とし、断面がL字状の成形品を得た。成形品の寸法は、糸状の繊維強化樹脂材料由来の層/UDテープ由来の層/糸状の繊維強化樹脂材料由来の層が、0.4mm/2.2mm/0.4mm(図3のt2/t1/t3)であった。
得られた成形品を成形方向(UDテープの長手方向)に垂直な断面で切断し、その角部の断面を拡大鏡で拡大し観察した(図6)。得られた成形品の角部にはボイドが認められなかった。
<比較例1>
実施例1において、糸状繊維樹脂材料を用いず、UD材料を20枚重ね、他は実施例1と同様にして、成形品を得た。得られた成形品を成形方向に垂直な断面で切断し、その角部の断面を拡大鏡で拡大し観察した(図7)。得られた成形品の角部には複数のボイドが確認された。
1 引き抜き方向
21~26 引抜ロール
3 成形品
30 材料
31 UD材料
32 糸状の繊維強化樹脂材料
33 糸状の繊維強化樹脂材料
4 金型(ダイ)
H1~H6 ヒーター線
5 予備加熱装置
P1、P2 ヒーター線

Claims (9)

  1. 一方向に並列した連続強化繊維に熱可塑性樹脂が含浸しているUD材料の少なくとも一方の表面に、前記UD材料の連続強化繊維の並列方向に対し、20°以上の角度を持つように、熱可塑性樹脂繊維と強化繊維から構成される糸状の繊維強化樹脂材料を配置し、前記UD材料の連続強化繊維の並列方向に引抜成形することを含み、
    前記糸状の繊維強化樹脂材料が、熱可塑性樹脂の強化繊維への含浸率が50%以下であり、かつ、分散度が40%以上である混繊糸である、成形品の製造方法;
    前記含浸率は、混繊糸を切り取り、エポキシ樹脂で包埋し、混繊糸の断面部にあたる面を研磨し、断面図を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を使用して撮影し、得られた断面写真に対し、連続強化繊維の熱可塑性樹脂が含浸した領域を画像解析ソフトImageJを用いて選択し、その面積を測定し、連続強化繊維の熱可塑性樹脂が含浸した領域/断面積(単位%)として示す;
    前記分散度は、混繊糸をエポキシ樹脂で包埋し、混繊糸の長手方向に垂直な断面を研磨し、断面図を、超深度カラー3D形状測定顕微鏡を使用して撮影し、撮影画像において、放射状に補助線を等間隔に6本ひき、各補助線上にある連続強化繊維領域の長さをa1, a2, a3・・・ai(i=n)と測量し、各補助線上にある連続熱可塑性樹脂繊維の領域の長さをb1, b2, b3・・・bi(i=m)と測量し、その結果に基づき、次式により算出した値である。
    Figure 0007530589000002
  2. 前記UD材料に含まれる熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂を含む、請求項1に記載の成形品の製造方法。
  3. 前記UD材料に含まれる前記熱可塑性樹脂が、ジアミンに由来する構成単位およびジカルボン酸に由来する構成単位から構成され、ジアミンに由来する構成単位の50モル%以上がキシリレンジアミンに由来するポリアミド樹脂を含む、請求項1に記載の成形品の製造方法。
  4. 前記UD材料に含まれる連続強化繊維が、ガラス繊維および炭素繊維から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
  5. 前記糸状の繊維強化樹脂材料が、混繊糸を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
  6. 前記糸状の繊維強化樹脂材料が、前記混繊糸の組物である、請求項5に記載の成形品の製造方法。
  7. 前記糸状の繊維強化樹脂材料が、組物、織物および編物の少なくとも1種の形態で、UD材料の表面に配置されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
  8. 前記糸状の繊維強化樹脂材料に含まれる連続熱可塑性樹脂繊維が、ポリアミド樹脂を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
  9. 前記糸状の繊維強化樹脂材料に含まれる連続強化繊維が、ガラス繊維および炭素繊維から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~8のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
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