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JP7515284B2 - プロピレン系樹脂組成物および成形体 - Google Patents

プロピレン系樹脂組成物および成形体 Download PDF

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JP7515284B2 JP2020064750A JP2020064750A JP7515284B2 JP 7515284 B2 JP7515284 B2 JP 7515284B2 JP 2020064750 A JP2020064750 A JP 2020064750A JP 2020064750 A JP2020064750 A JP 2020064750A JP 7515284 B2 JP7515284 B2 JP 7515284B2
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Description

本発明は、プロピレン系樹脂組成物、および該組成物から形成される、容器に代表される成形体に関する。
ゼリー、プリン、コーヒー等の食品の包装容器(以下、食品包装容器とも記載する。)には剛性、耐熱性が求められており、特にインモールドカップ、マーガリン容器のような薄肉の容器でも同様の物性が求められていることから、原料としては、耐熱性、剛性および流動性に優れるプロピレン系樹脂組成物が用いられることが多い。また、食品はその保管・流通において、低温の環境で扱われることが多いため、食品包装容器には、常温における耐衝撃性だけではなく、低温時の耐衝撃性、すなわち低温耐衝撃性が求められる。
耐衝撃性に優れるプロピレン系樹脂組成物として、プロピレン-エチレンブロック共重合体、造核剤、および低密度ポリエチレン樹脂若しくは直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を含む組成物が知られており(例えば、特許文献1)、低温耐衝撃性に優れるプロピレン系樹脂組成物としては、プロピレンブロック共重合体とエチレン系樹脂とからなり、特定の物性を有する組成物が知られている(例えば、特許文献2、3)。
特許文献4には、特定の樹脂構造を有する結晶性プロピレン-エチレンブロック共重合体、結晶性ポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、および任意にエラストマーを含有するポリプロピレン系樹脂組成物が開示され、この組成物から難白化性、剛性、低温で耐衝撃性などのバランスに優れたシートやフィルムが得られること、およびこの組成物が食品容器等の用途に有用であることが記載されている。
さらに特許文献5には、特定のプロピレン系ランダムブロック共重合体を含むプロピレン系樹脂組成物が開示され、この組成物から耐衝撃性等に優れた射出成形体を得ることができ、これを食品容器等に使用できることが記載され、さらに耐衝撃性等の機能の付与のためにこの組成物にポリエチレン樹脂を添加してもよいことが記載されている。
また近年は、環境負荷、コスト等の低減の観点から、これらの容器には、薄肉化、軽量化が求められている。
これらの要求に応えるために、特許文献6では、特定のプロピレン系ブロック共重合体、シングルサイト触媒を用いて製造された特定のエチレン・α-オレフィン共重合体、および造核剤を含み、食品包装容器等の容器をはじめとする成形体を製造した際に、従来よりも薄肉化かつ軽量化した場合であっても、剛性、低温耐衝撃性および透明性に優れるプロピレン系樹脂組成物が提案されている。
特許文献7には、プロピレン・エチレンブロック共重合体、高密度ポリエチレンおよびメタロセン触媒を用いて製造されたエチレン・α-オレフィン共重合体からなる樹脂組成物が開示され、この組成物が射出成型用途に用いられる、この組成物から、剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、光沢等も良好な製品が得らえることが記載されている。
特開2001-26686号公報 特開2002-187996号公報 特開2002-187997号公報 特開2005-26981号公報 国際公開第2007/116709号 国際公開第2010/074001号 特開平10-330579号公報
しかしながら、従来のプロピレン系樹脂組成物から形成された食品包装容器には、更なる軽量化のために薄肉食品容器が求められており、薄肉容器では剛性、低温耐衝撃性の観点からさらなる改善の余地があった。
そこで本発明は、剛性および低温耐衝撃性(特に、低温での衝撃に対する割れ難さ(パンクチャー衝撃試験により評価される耐衝撃性))のバランスに優れる薄肉成形体、およびこのような成形体を製造することのできるプロピレン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
下記要件(a1)~(a5)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)を75~93質量%、
下記要件(b1)~(b2)を満たすエチレン・1-ブテン共重合体(B)を2~10質量%、および
下記要件(c1)~(c2)を満たすエチレン系重合体(C)を5~15質量%(但し、前記ブロック共重合体類(A)、前記共重合体(B)および前記重合体(C)の合計を100質量%とする。)を含み、
下記要件(d1)を満たすプロピレン系樹脂組成物。
(a1)MFR(230℃、2.16kg荷重)が、60~200g/10分である。
(a2)室温n-デカン不溶部量が82~96質量%であり、室温n-デカン可溶部量が4~18質量%である(前記不溶部量と前記可溶部量の合計を100質量%とする)。
(a3)室温n-デカン可溶部のエチレン含有量が20~40質量%である。
(a4)室温n-デカン可溶部の極限粘度[η]が2.0~5.0dl/gである。
(a5)融点が150℃以上である。
(b1)MFR(190℃、2.16kg荷重)が、0.5~5g/10分である。
(b2)密度が860~900kg/m3である。
(c1)MFR(190℃、2.16kg荷重)が、15~80g/10分である。
(c2)密度が960~980kg/m3である。
(d1)MFR(230℃、2.16kg荷重)が、50~200g/10分である。
[2]
前記エチレン・1-ブテン共重合体(B)の含有量がエチレン系重合体(C)の含有量以下である前記[1]のプロピレン系樹脂組成物。
[3]
造核剤(E)を、前記ブロック共重合体類(A)、前記共重合体(B)および前記重合体(C)の合計100質量部に対して0.05~0.6質量部含む前記[1]または[2]のプロピレン系樹脂組成物。
[4]
前記[1]~[3]のいずれかのプロピレン系樹脂組成物の射出成形体。
[5]
最も薄い部分の肉厚が0.3~2.0mmの範囲にある前記[4]の射出成型体。
本発明のプロピレン系樹脂組成物によれば、剛性及び低温耐衝撃性のバランスに優れる薄肉成形体を得ることができる。
また、本発明の薄肉成形体は、剛性及び低温耐衝撃性のバランスに優れている。
[プロピレン系樹脂組成物]
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、後述する要件(a1)~(a5)を満たすプロピレン・エチレンブロック重合体類(A)を75~93質量%、後述する要件((b1)~(b2)を満たすエチレン・1-ブテン共重合体(B)を2~10質量%、および後述する要件(c1)~(c2)満たすエチレン系重合体(C)を5~15質量%(但し、前記ブロック共重合体類(A)、前記共重合体(B)および前記重合体(C)の合計を100質量%とする。)含み、後述する要件(d1)を満たすことを特徴としている。
〔プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)〕
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、以下に説明する要件(a1)~(a5)を満たすプロピレン系重合体を含む。以下、「要件(a1)~(a5)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)」を単に「プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)」、「ブロック共重合体類(A)」または「成分(A)」とも記載する。
プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)は、好ましくは、主にプロピレン由来の構成単位からなる成分と、主にプロピレンおよびエチレン由来の構成単位からなる成分とを含む。
(要件(a1))
要件(a1)は、プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)の、ASTM D-1238に準拠して、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(以下「MFRA」とも記載する。)が60~200g/10分である、というものである。前記MFRAは、好ましくは80~180g/10分である。
MFRAが上記範囲を下回ると、プロピレン系樹脂組成物を薄肉の成形体を射出成形した際にショートショットが生じることがある。またMFRAが上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物からなる射出成形体の耐衝撃性が著しく低下する。これは分子の絡み合いが低下するためである。
(要件(a2))
要件(a2)は、プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)が、室温n-デカンに不溶な部分(以下「Dinsol」とも記載する。)を82~96質量%、および室温n-デカンに可溶な部分(以下「Dsol」とも記載する。)を4~18質量%含む、というものである。ただし、Dinsolの割合とDsolの割合との合計を100質量%とする。好ましくは、Dinsolが84~94質量%であり、Dsolが6~16質量%である。また、室温とは、具体的には25℃である。
プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)において、n-デカンに不溶な部分(Dinsol)とは、主として結晶性ポリプロピレン系樹脂からなり、高い剛性を示すと考えられる。n-デカンに可溶な部分(Dsol)とは、通常、主にプロピレンおよびエチレン由来の構成単位からなる成分である。Dsol成分は結晶性を示さないか、もしくは結晶性が低い成分であり、かつガラス転移温度が低いために衝撃エネルギー吸収材としての役割とプロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)に含まれる結晶性ポリプロピレン系樹脂とエチレン・1-ブテン共重合体(B)あるいはエチレン系重合体(C)との相溶性を発現する2つの役割があると考えられる。これはゴム成分と言われることもある。
solの割合が上記範囲を下回り、Dinsolの割合が上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られる成形体の耐衝撃性が低下する傾向にある。Dsolの割合が減ることにより衝撃エネルギー吸収材としての効果が低下するためと考えられる。
一方、Dinsolの割合が上記範囲を下回り、Dsolの割合が上記範囲を上回ると、射出成形において金型からの離型性が低下し、プロピレン系樹脂組成物の高速成形性が劣る場合があり、またプロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の剛性(座屈強度)が劣る場合がある。
前記Dinsolの割合および前記Dsolの割合は、後述する実施例で採用した方法により測定した場合のものである。
(要件(a3))
要件(a3)は、前記Dsolに占めるエチレン由来の構成単位の割合が20~40質量%である、というものである。なお、Dsolの量を100質量%とする。この割合は、好ましくは22~38質量%、より好ましくは24~36質量%である。
前記構成単位の割合が上記範囲を下回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の耐衝撃性が劣る傾向がある。Dsolのエチレンの割合が減ることによりガラス転移温度が低下し、結晶化度が高くなり、衝撃エネルギー吸収能が低下するためと考えられる。
一方、前記構成単位の割合が上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物の耐衝撃性が劣る傾向がある。Dsolのエチレンの割合が増えることによりプロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)に含まれる結晶性ポリプロピレン系樹脂とエチレン・1-ブテン共系重合体(B)あるいはエチレン系重合体(C)との相容性が低下するために、(B)及び(C)を含むゴム成分の粒径が粗大化し、その結果、ゴム粒子間の距離が大きくなるために、衝撃が与えられた際に粒子間に存在する結晶性ポリプロピレン系樹脂のクレーズが形成し難くなり、クレーズ形成による衝撃エネルギー吸収能が低下するためと考えられる。
前記構成単位の割合は、後述する実施例で採用した方法により測定した場合のものである。
(要件(a4))
要件(a4)は、前記Dsolの、135℃デカリン中における極限粘度(以下「極限粘度[ηsol]」とも記載する。)が2.0~5.0dl/gである、というものである。前記極限粘度[ηsol]は、好ましくは2.5~4.0dl/gである。
極限粘度[ηsol]が上記範囲を上回るかもしくは下回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の耐衝撃性が低下する場合がある。
前記極限粘度[ηsol]の値は、後述する実施例で採用した方法により測定した場合のものである。
(要件(a5))
プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)の、後述する実施例で採用した条件により測定される融点は、150℃以上であり、好ましくは150~170℃である。
融点がこの範囲にあると、本発明のプロピレン系樹脂組成物類(A)は、剛性、耐熱性に優れる。
前記プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)、その製造方法に特に限定はないが、通常は、メタロセン化合物含有触媒存在下、またはチーグラーナッタ触媒存在下で、プロピレンおよびエチレンを共重合することにより得られる。
なお、プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)は、チーグラーナッタ触媒存在下で、プロピレンおよびエチレンを共重合することにより得られることが好ましい。分子量分布が広く成形性が良好な樹脂が得られ易い為である。
(メタロセン化合物含有触媒)
前記メタロセン化合物含有触媒としては、メタロセン化合物、並びに、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物およびメタロセン化合物と反応してイオン対を形成することのできる化合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物、さらに必要に応じて粒子状担体とからなるメタロセン触媒を挙げることができ、好ましくはアイソタクチックまたはシンジオタクチック構造等の立体規則性重合をすることのできるメタロセン触媒を挙げることができる。前記メタロセン化合物の中では、国際公開第01/27124号に例示されている架橋性メタロセン化合物、国際公開第2010/74001号の[0068]~[0076]に記載のメタロセン化合物などが好ましい。また、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、および遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物、さらには必要に応じて用いられる粒子状担体としては、国際公開第01/27124号、特開平11-315109号公報等に開示された化合物を制限無く使用することができる。
(チーグラーナッタ触媒)
プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)は、高立体規則性チーグラーナッタ触媒を用いることにより製造することができる。前記高立体規則性チーグラーナッタ触媒としては、公知の種々の触媒が使用できる。たとえば、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を含有する固体状チタン触媒成分と、(b)有機金属化合物触媒成分と、(c)シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基およびこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する有機ケイ素化合物触媒成分とからなる触媒を用いることができ、この触媒成分は公知の方法、たとえば国際公開第2010/74001号の[0078]~[0094]に記載の方法で製造することができる。
上記のような固体状チタン触媒成分(a)、有機金属化合物触媒成分(b)、および有機ケイ素化合物触媒成分(c)からなる触媒を用いてプロピレンの重合を行うに際して、予め予備重合を行うこともできる。予備重合は、固体状チタン触媒成分(a)、有機金属化合物触媒成分(b)、および必要に応じて有機ケイ素化合物触媒成分(c)の存在下に、オレフィンを重合させる。
予備重合するオレフィンとしては、炭素数2~8のα-オレフィンを用いることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-オクテンなどの直鎖状のオレフィン;3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンなどの分岐構造を有するオレフィン等を用いることができる。これらは共重合させてもよい。
予備重合は、固体状チタン触媒成分(a)1g当り0.1~1000g程度、好ましくは0.3~500g程度の重合体が生成するように行うことが望ましい。予備重合量が多すぎると、本重合における(共)重合体の生成効率が低下することがある。予備重合では、本重合における系内の触媒濃度よりもかなり高い濃度で触媒を用いることができる。
本重合の際には、固体状チタン触媒成分(a)(または予備重合触媒)を重合容積1L当りチタン原子に換算して約0.0001~50ミリモル、好ましくは約0.001~10ミリモルの量で用いることが望ましい。有機金属化合物触媒成分(b)は、金属原子の量に換算して、重合系中のチタン原子1モルに対して約1~2000モル、好ましくは約2~500モル程度の量で用いることが望ましい。有機ケイ素化合物触媒成分(c)は、有機金属化合物触媒成分(b)の金属原子1モル当り約0.001~50モル、好ましくは約0.01~20モル程度の量で用いることが望ましい。
(プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)の製法)
前記プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)は、前述のメタロセン化合物含有触媒存在下、またはチーグラーナッタ触媒存在下でプロピレンおよびエチレンを共重合することにより得られる。
連続多段重合により前記プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)を製造する場合、各段においてはプロピレンを単独重合させるか、またはプロピレンとエチレンとを共重合させる。
重合は、気相重合法、バルク重合法あるいはスラリー重合法いずれで行ってもよく、各段を別々の方法で行ってもよい。また連続式、半連続式のいずれの方式で行ってもよく、各段を複数の重合器たとえば2~10器の重合器に分けて行ってもよい。工業的には連続式の方法で重合することが最も好ましく、この場合2段目以降の重合を2器以上の重合器に分けて行うことが好ましく、これによりゲルの発生を抑制することができる。
重合媒体として、不活性炭化水素類を用いてもよく、また液状のプロピレンを重合媒体としてもよい。また各段の重合条件は、重合温度が約-50~+200℃、好ましくは約20~100℃の範囲で、また重合圧力が常圧~10MPa(ゲージ圧)、好ましくは約0.2~5MPa(ゲージ圧)の範囲内で適宜選択される。
プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)は、たとえば、2つ以上の重合器を直列につなげた反応装置で、次の二つの工程([工程1]および[工程2])を連続的に実施することによって得られる。プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)の製造の際には、二つ以上の反応機を直列に連結した重合装置を用いそれぞれの重合装置で[工程1]を行ってもよく、また二つ以上の反応機を直列に連結した重合装置を用いそれぞれの重合装置で[工程2]を行ってもよい。
また、[工程1]と[工程2]とを別々に行い、それぞれで得られた重合体を単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを用いて溶融混練し、プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)を製造してもよい。
さらに、[工程1]および[工程2]を連続的に実施することによって得られる重合体(または、前記溶融混錬で得られた溶融混錬物)と、別途準備したプロピレン単独重合体および/またはプロピレン・エチレン共重合体とを、一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを用いて溶融混練し、プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)を製造してもよい。
[工程1]および[工程2]を連続的に実施することによって得られる重合体は、後述するように公知の触媒を適宜選択し、水素濃度、重合温度、重合時間等の重合条件を調整したり、この溶融混錬に使用する各重合体の物性、割合等を適宜調整することにより、上記要件(a1)~(a5)で表される諸物性を調整することができる。
[工程1]は、重合温度0~100℃、重合圧力常圧~5MPaゲージ圧で、プロピレンと任意にエチレンとを重合させる工程であって、エチレンを供給しないか、またはプロピレンのフィード量に比べて少量のエチレンを供給することによって、Dinsolの主成分となるプロピレン系重合体を製造する工程である。また、必要に応じて水素ガスに代表される連鎖移動剤も導入し、[工程1]で生成される重合体の極限粘度[η]を調整してもよい。
[工程2]は、重合温度0~100℃、重合圧力常圧~5MPaゲージ圧で、プロピレンとエチレンとを共重合させる工程であって、プロピレンのフィード量に対するエチレンのフィード量の割合を[工程1]のときよりも大きくすることによって、Dsolの主成分となるプロピレン-エチレン共重合ゴムを製造する工程である。必要に応じて水素ガスに代表される連鎖移動剤も導入し、[工程2]で生成される重合体の極限粘度[η]を調整してもよい。
要件(a1)におけるMFRAは、[工程1]または[工程2]を行う際のモノマー(すなわち、プロピレンの単独重合の場合にはプロピレン、共重合の場合にはプロピレンおよびエチレン)のフィード量に対する連鎖移動剤としての水素ガスのフィード量の割合を調整することにより調整できる。すなわち、この割合を大きくすることでMFRAを高くすることができ、この割合を小さくすることでMFRAを低くすることができる。
また、上記方法以外でも、重合で得られたプロピレン系重合体を有機過酸化物の存在下で溶融混練処理することによりMFRAを調整することができる。重合で得られたプロピレン系重合体を、有機過酸化物存在下での溶融混練処理を行うことによりMFRAは高くなり、有機過酸化物存在下での溶融混練処理を行う際の有機過酸化物の添加量を増やすことでMFRAはより高くなる。重合で得られたプロピレン系重合体を有機過酸化物存在下で溶融混練処理する場合、有機過酸化物は、プロピレン系重合体100質量部に対して0.005~0.05質量部使用することが望ましい。また、上記有機過酸化物存在下での溶融混練処理は、下記後処理工程後に行ってもよい。有機過酸化物としては、特に限定はなく、従来公知の有機過酸化物、たとえば2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、および1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン)が挙げられる。
要件(a2)における前記Dinsolの割合および前記Dsolの割合は、上記[工程1]および[工程2]の重合時間を調整することにより、調整することが出来る。つまり、全重合時間に占める[工程1]の重合時間の割合を高めることで、Dinsolの割合を大きく、Dsolの割合を小さくすることが出来る。また、全重合時間に占める[工程2]の重合時間の割合を高めることで、Dinsolの割合を小さく、Dsolの割合を大きくすることが出来る。
要件(a3)における前記Dsolに占めるエチレン由来の構成単位の割合は、[工程2]を行う際のプロピレンフィード量に対するエチレンフィード量の割合を調整することにより調整できる。つまり、このフィード量の割合を大きくすることにより、前記構成単位の割合を大きくすることができ、このフィード量の割合を小さくすることにより、前記構成単位の割合を小さくすることができる。
要件(a4)における極限粘度[ηsol]は、[工程2]を行う際の連鎖移動剤として用いる水素ガスのフィード量により調整できる。つまり、モノマー(すなわち、プロピレンおよびエチレン)のフィード量に対する水素ガスのフィード量の割合を大きくすることにより極限粘度[ηsol]を小さくすることができ、モノマーのフィード量に対する水素ガスのフィード量の割合を小さくすることにより極限粘度[ηsol]を大きくすることができる。
要件(a5)における融点は、前述した公知の触媒を適宜選択し、ポリプロピレン単独重合体の立体規則性を改良することにより調整できる。
重合終了後、必要に応じて公知の触媒失活処理工程、触媒残渣除去工程、乾燥工程等の後処理工程を行うことにより、プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)が得られる。
また、プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)として市販品を使用してもよい。
〔エチレン・1-ブテン共重合体(B)〕
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、以下に説明する要件(b1)~(b2)を満たすエチレン・1-ブテン共重合体(B)を含む。以下、「要件(b1)~(b2)を満たすエチレン・1-ブテン共重合体(B)」を単に「エチレン・1-ブテン共重合体(B)」、「共重合体(B)」または「成分(B)」とも記載する。
(要件(b1))
要件(b1)はエチレン・1-ブテン共重合体(B)の、ASTM D-1238に準拠して、測定温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(以下、単に「MFRB」とも記載する。)が0.5~5g/10分である、というものである。前記MFRBは、好ましくは0.6~4g/10分である。
MFRBが上記範囲を下回ると、成形体の中にフィッシュアイが生じることがあり、プロピレン系樹脂組成物から得られる成形体の耐衝撃性が劣る場合がある。またMFRBが上記範囲を上回ると、分子の絡み合いが少なくなり、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の耐衝撃性が劣る場合がある。
(要件(b2))
要件(b2)は、エチレン・1-ブテン共重合体(B)の密度が860~900kg/m3である、というものである。前記密度は、好ましくは860~890kg/m3である。
エチレン・1-ブテン共重合体(B)の密度が上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物の耐衝撃性が劣る場合がある。
なお、エチレン・1-ブテン共重合体(B)の密度の値は、エチレン・1-ブテン共重合体(B)のMFR測定時に得られるストランドを、120℃で1時間熱処理し、1時間かけて室温まで徐冷したものをサンプルとして用い、密度勾配管法によって測定した場合のものである。
エチレン・1-ブテン共重合体(B)は、従来公知の方法で製造することができる。
要件(b1)におけるMFRBは、エチレンを重合(またはエチレンおよびα-オレフィンを共重合)してエチレン・1-ブテン共重合体(B)を製造する際に、モノマー(すなわち、エチレンの単独重合の場合にはエチレン、共重合の場合にはエチレンおよびα-オレフィン)のフィード量に対する連鎖移動剤としての水素ガスのフィード量の割合を調整することにより調整できる。すなわち、この割合を大きくすることでMFRBを高くすることができ、この割合を小さくすることでMFRBを低くすることができる。
要件(b2)における密度は、エチレンを重合(またはエチレンおよびα-オレフィンを共重合)してエチレン・1-ブテン共重合体(B)を製造する際の、エチレンフィード量に対するα-オレフィンフィード量の割合を調整することにより調整できる。つまり、この割合を大きくすることにより、密度を低くすることができ、この割合を小さくすることにより、密度を高くすることができる。
また、エチレン・1-ブテン共重合体(B)として市販品を使用してもよい。市販品の例としては、タフマー(登録商標)A-1085S(MFR(190℃、2.16kg)=1.2g/10分、密度885kg/m3)、タフマーDF610(MFR(190℃、2.16kg)=1.2g/10分、密度862kg/m3)(以上、三井化学(株))が挙げられる。
〔エチレン系重合体(C)〕
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、以下に説明する要件(c1)~(c2)を満たすエチレン系重合体(C)を含む。以下、「要件(c1)~(c2)を満たすエチレン系重合体(B)」を単に「エチレン系重合体(C)」、「重合体(C)」または「成分(C)」とも記載する。
エチレン系重合体(C)としては、エチレン単独重合体、およびエチレン・α-オレフィン共重合体が挙げられる。
前記α-オレフィンとしては炭素数3~20のα-オレフィンが挙げられ、その例としてはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
(要件(c1))
要件(c1)は、エチレン系重合体(C)の、ASTM D-1238に準拠して、測定温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(以下、単に「MFRB」とも記載する。)が15~80g/10分である、というものである。前記MFRCは、好ましくは15~70g/10分であり、より好ましくは15~60g/10分である。
MFRCが上記範囲を下回ると、プロピレン系樹脂組成物の流動性が低下する。
(要件(c2))
要件(c2)は、エチレン系重合体(C)の密度が960~980kg/m3以上である、というものである。前記密度は、好ましくは962~980kg/m3である。
エチレン系重合体(C)の密度が上記範囲を下回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の剛性(座屈強度)が劣る場合がある。
なお、エチレン系重合体(C)の密度の値は、エチレン系重合体(C)のMFR測定時に得られるストランドを、120℃で1時間熱処理し、1時間かけて室温まで徐冷したものをサンプルとして用い、密度勾配管法によって測定した場合のものである。
エチレン系重合体(C)は、従来公知の方法で製造することができる。
要件(c1)におけるMFRCは、エチレンを重合(またはエチレンおよびα-オレフィンを共重合)してエチレン系重合体(C)を製造する際に、モノマー(すなわち、エチレンの単独重合の場合にはエチレン、共重合の場合にはエチレンおよびα-オレフィン)のフィード量に対する連鎖移動剤としての水素ガスのフィード量の割合を調整することにより調整できる。すなわち、この割合を大きくすることでMFRCを高くすることができ、この割合を小さくすることでMFRCを低くすることができる。
要件(c2)における密度は、エチレンを重合(またはエチレンおよびα-オレフィンを共重合)してエチレン系重合体(C)を製造する際の、エチレンフィード量に対するα-オレフィンフィード量の割合を調整することにより調整できる。つまり、この割合を大きくすることにより、密度を低くすることができ、この割合を小さくすることにより、密度を高くすることができる。
また、エチレン系重合体(C)として市販品を使用してもよい。市販品の例としては、ハイゼックス(登録商標)1700J(MFR=16g/10分、密度=967kg/m3)、ハイゼックス1820J(MFR=32g/10分、密度=963kg/m3)、(以上、(株)プライムポリマー製)などが挙げられる。
〔造核剤(E)〕
本発明のプロピレン系樹脂組成物は造核剤(E)を含んでいてもよい
本発明のプロピレン系樹脂組成物に含まれる造核剤としては、特に限定はないが、ソルビトール系造核剤、リン系造核剤、カルボン酸金属塩系造核剤、ポリマー造核剤、無機化合物等が挙げられる。造核剤としては、ソルビトール系造核剤、リン系造核剤、ポリマー造核剤が好ましい。
ソルビトール系造核剤の具体例としては、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-[(4-プロピルフェニル)メチレン]-ノニトール(該化合物を含む市販品として商品名「ミラッドNX8000」シリーズ、ミリケン社製(「NX8000」は、上記化学物質+蛍光増白剤+ブルーミング剤、「NX8000K」は「NX8000」の蛍光増白剤抜き、「NX8000J」は蛍光増白剤とブルーミング剤両方抜き)が挙げられる)、1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ-(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトールが挙げられる。
リン系造核剤の具体例としては、ナトリウム-ビス-(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カリウム-ビス-(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ〔d,g〕〔1,3,2〕ジオキサホスホシン-6-オキシドナトリウム塩(商品名「アデカスタブ(登録商標)NA-11」、(株)ADEKA製)、ビス(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ〔d,g〕〔1,3,2〕ジオキサホスホシン-6-オキシド)水酸化アルミニウム塩を主成分とする複合物(商品名「アデカスタブNA-21」、(株)ADEKA製)、リチウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートと12-ヒドロキシステアリン酸とを含み、かつリチウムを必須性分として含む複合物(商品名「アデカスタブNA-71」、(株)ADEKA製)が挙げられる。
カルボン酸金属塩造核剤の具体例としては、p-t-ブチル安息香酸アルミニウム塩、ヒドロキシ-ジ(p-t-ブチル安息香酸)アルミニウム(商品名「AL-PTBBA」、ジャパンケムテック製)、アジピン酸アルミニウム、安息香酸ナトリウムが挙げられる。
ポリマー造核剤としては分岐状α-オレフィン重合体が好適に用いられる。分岐状α-オレフィン重合体の例として、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンの単独重合体、あるいはそれら相互の共重合体、さらにはそれらと他のα-オレフィンとの共重合体を挙げることができる。低温耐衝撃性、剛性の特性が良好であること、および経済性の観点から、特に、3-メチル-1-ブテンの重合体が好ましい。
無機化合物の具体例としては、タルク、マイカ、炭酸カルシウムが挙げられる。
これらの造核剤の中でも、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ〔d,g〕〔1,3,2〕ジオキサホスホシン-6-オキシドナトリウム塩、1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-[(4-プロピフェニル)メチレン]-ノニトール、およびヒドロキシ-ジ(p-t-ブチル安息香酸)アルミニウムが好ましい。
これらの造核剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、造核剤(E)を含有することにより、好ましくは下記範囲の量で含有することにより、本発明の組成物から形成される容器等の成形体の剛性に優れる。これは結晶化度の向上による高剛性化によると推定される。
〔プロピレン系樹脂組成物〕
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、前述のプロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)を75~93質量%、エチレン・1-ブテン共重合体(B)を2~10質量%、およびエチレン系重合体(C)を5~15質量%(ただし、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計量を100質量%とする。)を含み、以下に説明する要件(d1)を満たす。
エチレン・1-ブテン共重合体(B)の配合割合が上記範囲を下回ると、プロピレン系樹脂組成物の耐衝撃性が劣り、上記範囲を上回ると剛性が劣る場合がある。エチレン系重合体(C)の配合割合が上記範囲を下回ると耐衝撃性が劣り、上回ると耐熱性が劣る場合がある。エチレン系重合体(C)の配合量は、エチレン・1-ブテン共重合体(B)の配合量と同じか、あるいはエチレン・1-ブテン共重合体(B)の配合量よりも大きい方が剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、好ましい。
(要件(d1))
要件(d1)は、本発明のプロピレン系樹脂組成物の、ASTM D-1238に準拠して、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(以下、単に「MFRD」とも記載する。)が、50~200g/10分である、というものである。前記範囲は、好ましくは60~140g/10分である。
MFRDが上記範囲を下回ると、プロピレン系樹脂組成物の流動性が劣り、薄肉の射出体を射出成型する際にショート・ショットが起きる場合がある。またMFRDが上記範囲を上回ると、プロピレン系樹脂組成物から得られた成形体の耐衝撃性が劣る場合がある。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、さらに造核剤(E)を0.05~0.6質量部、好ましくは0.06~0.4質量部(ただし、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計量を100質量部とする。)含んでいてもよい。
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、これら4成分以外にも、本発明の目的を損なわない範囲で適宜中和剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、気泡防止剤、分散剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、架橋剤、架橋助剤等の添加剤;染料、顔料等の着色剤で例示される成分(以下「他の成分」と記載する。)を含んでいてもよい。
本発明のプロピレン系樹脂組成物が、他の成分を含む場合には、他の成分の量は、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量部に対して、通常0.01~5質量部である。
本発明のプロピレン系樹脂組成物のMFRは、成分(A)、成分(B)および成分(C)のメルトフローレートを適宜選択することにより、あるいは成分(A)、成分(B)および成分(C)の配合割合を調製することにより調整できる。
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物のMFRは、各成分を混練機で溶融混練する際に、各成分に有機過酸化物を共存させることによっても、調整が可能である。すなわち、溶融混練を行う際に有機過酸化物を添加すること、あるいは溶融混練を行う際に、有機過酸化物の添加量を増やすことにより、プロピレン系樹脂組成物のMFRを高くすることができる。
前記有機過酸化物としては、特に限定はされないが、従来公知の有機過酸化物、たとえば2,5-ジ-メチル-2,5-ジ-(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンが挙げられる。有機過酸化物を使用する場合、有機過酸化物は、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量部に対して0.005~0.05質量部使用することが望ましい。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、主としてDinsolを連続相、すなわち海部とし、かつDsol、エチレン・1-ブテン共重合体(B)およびエチレン系重合体(C)を主に島部とした、いわゆる海島構造をとる。このため、本発明のプロピレン系樹脂組成物は高い剛性と高い低温耐衝撃性とを両立できる。
本発明のプロピレン系樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、該製造方法としては、例えば各成分を混練機で溶融混練して、プロピレン系樹脂組成物を製造する方法が挙げられる。混練機として、例えば単軸混練押出機、多軸混練押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。溶融混練条件は、混練時の剪断、加熱温度、剪断による発熱などによって溶融樹脂の劣化が起こらない限り、特に制限されない。溶融樹脂の劣化を防止する観点から、加熱温度を適正に設定したり、酸化防止剤や熱安定剤を添加したりすることは、効果的である。
[成形体]
本発明の成形体は、上述した本発明のプロピレン系樹脂組成物を含むことを特徴としている。その具体例としては、本発明のプロピレン系樹脂組成物を射出成形または射出ブロー成形したものが挙げられる。
本発明の成形体としては、容器、家電部品、日用品等が挙げられる。中でも流動性、耐衝撃性および剛性の観点から容器が好ましい。
前記容器としては、洗髪剤、調髪剤、化粧品、洗剤、殺菌剤などの液体日用品用の包装容器;清涼飲料水、水、調味料などの液体用の食品包装容器;ゼリー、プリン、ヨーグルトなどの固体用の食品包装容器(デザートカップ);その他の薬品用の包装容器;工業用の液体用の包装容器などが挙げられる。
本発明の成形体は剛性、低温耐衝撃性および特に流動性とのバランスに優れることから、これらの容器の中でも、好ましくは薄肉の容器、例えば食品包装容器(インモールドカップ、マーガリン容器など)として用いることができる。
インモールドカップ、マーガリン容器などの薄肉容器としては、容器胴体部(最も肉厚の薄い部分)の肉厚が0.3~2.0mmの範囲であることが好ましい。本発明の成形体は、このように薄肉くても低温耐衝撃性に優れ、その成形性にも優れている。
また、本発明の成形体の製造方法は、上述した本発明のプロピレン系樹脂組成物を成形する工程を含むことを特徴としている。成形方法としては、好ましくは射出成形および射出延伸ブロー成形が挙げられる。
射出成形の方法としては例えば射出成形機を用いて下記のような方法で成形を行うことができる。まず、射出機構のホッパー内にプロピレン系樹脂組成物を導入し、およそ200℃~250℃に加熱してあるシリンダーにプロピレン系樹脂組成物を送り込み、混練可塑化して溶融状態にする。これをノズルから高圧高速(最大圧力50~200MPa)で、冷却水あるいは温水等により5~50℃好ましくは10~40℃に温調された、型締め機構にて閉じられている金型内に射出する。金型からの冷却により射出されたプロピレン系樹脂組成物を冷却固化させ型締め機構にて金型を開き、成形体を得ることにより行うことができる。
また、射出延伸ブロー成形としては例えば、射出成形機のホッパー内にプロピレン系樹脂組成物を導入し、およそ200℃~250℃に加熱してあるシリンダーに樹脂を送り込み、混練可塑化して溶融状態にする。これをノズルから高圧高速(最大圧力50~200MPa)で、冷却水あるいは温水等により5~80℃好ましくは10~60℃に温調された、型締め機構にて閉じられている金型内に射出成形し、そこで1.0~3.0秒間冷却してプリフォームを形成し、その後直ちに型を開き延伸ロッドを用いて縦方向へと延伸配向し、さらにブロー成形によって横方向へと延伸配向させ成形品を得ることにより行うことができる。
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
1.測定方法
(1)曲げ弾性率
ISO178に準拠し、試験温度23℃、試験速度2.0mm/分で測定した(単位はMPa)。なお、試験片は、東芝機械社製EC40射出成形機を用い、成形温度200℃、金型温度40℃で平板(厚さ4mm 幅10mm 長さ80mm)を成形し使用した。
(2)シャルピー衝撃強度
JIS K7112に準拠し、試験温度23℃及び-10℃で測定した(単位はkJ/m2)。試験片は、東芝機械社製EC40射出成形機を用い、成形温度190℃、金型温度40℃で平板(厚さ4mm 幅10mm 長さ80mm)を成形して作製した。
(3)衝撃エネルギー
JIS K7211-2に準拠し、試験温度-10℃、試験速度3.0m/秒でパンクチャーエネルギー(以下「衝撃エネルギー」とも記載する。)(単位はJ)を測定した。試験片は、日精樹脂工業(株)製NEX110IV射出成形機を用い、成形温度190℃、金型温度40℃で平板(厚さ2mm 幅120mm 長さ130mm)を成形して作製した。
(4)メルトフローレート(MFR)
プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)及びプロピレン系樹脂組成物のMFRは、JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定した(単位はg/10分)。
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)及びエチレン系重合体(C)のMFRは、ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重で測定した(単位はg/10分)。
(5)室温n-デカン不溶部量と室温n-デカン可溶部量
室温n-デカン不溶部量と室温n-デカン可溶部量は以下の方法により求めた。
プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)5gにn-デカン200mlを加え、145℃、30分間加熱溶解を行い、次に約2時間かけて、溶液を室温25℃まで冷却を行い、25℃で30分間放置した。その溶液を目開き約15μmの濾布でろ別したものを乾燥させ、室温n-デカン不溶部を得た。この室温n-デカン不溶部の質量をプロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)5gで除したものを、n-デカン不溶部量とする。
また、室温n-デカン不溶部をろ別した後の溶液を、その溶液の約3倍量のアセトン中に入れ、n-デカン中に溶解していた成分を析出させ、室温n-デカン可溶部を得る。その後、室温n-デカン可溶部をガラスフィルター(G2、目開き約100~160μm)でろ別し、乾燥させた後、室温n-デカン可溶部の質量を測定する。このときの室温n-デカン可溶部の質量をプロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)5gで除したものをn-デカン可溶部量とする。なお、室温n-デカン可溶部をろ別したろ液側を濃縮乾固しても残渣は認められなかった。
(6)室温n-デカン可溶部の極限粘度[η]
室温n-デカン可溶部の極限粘度[η](単位はdl/g)は下記のようにして決定した。
室温n-デカン可溶部量約25mgをデカリン25mlに溶解し、ウベローデ型粘度計を用いて135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求め、デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]とした。
(7)室温n-デカン可溶部のエチレン含有量
室温n-デカン可溶部中のエチレン含有量は13C-NMRの測定に基づき下記のようにして測定・算出し決定した。サンプルは、前記のDinsolおよびDsolの割合を求めた際に得られた析出物(α)および(β)を用いた。
この析出物(α)および(β)を試料として、下記条件にてそれぞれ13C-NMRの測定を行った。
13C-NMR測定条件測定装置:日本電子製LA400型核磁気共鳴装置
測定モード:BCM(Bilevel Complete decoupling)
観測周波数:100.4MHz
観測範囲:17006.8Hz
パルス幅:C核45°(7.8μ秒)
パルス繰り返し時間:5秒
試料管:5mmφ
試料管回転数:12Hz
積算回数:20000回
測定温度:125℃
溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン:0.35ml/重ベンゼン:0.2ml
試料量:約40mg
測定で得られたスペクトルより、下記文献(1)に準じて、モノマー連鎖分布(トリアッド(3連子)分布)の比率を決定し、前記の室温n-デカン可溶部中のエチレンに由来する構成単位のモル分率(mol%)(以下E(mol%)と記す)およびプロピレンに由来する構成単位のモル分率(mol%)(以下P(mol%)と記す)を算出した。求められたE(mol%)およびP(mol%)から下記(式1)に従い質量%に換算しプロピレン系重合体の前記の室温n-デカン可溶部中のエチレン含有量(質量%)(以下E(質量%)と記す)を算出した。
文献(1):Kakugo,M.; Naito,Y.; Mizunuma,K.; Miyatake,T., Carbon-13 NMR determination of monomer sequence distribution in ethylene-propylenecopolymers prepared with delta-titanium trichloride-diethylaluminumchloride. Macromolecules 1982, 15, (4), 1150-1152
E(質量%)=E(mol%)×28×100/[P(mol%)×42+E(mol%)×28](式1)
(8)融点
示差操作熱量計(DSC、パーキンエルマー社製)を用いて融点(Tm)を測定した。サンプル5mg程度を炉に入れ、最初に500℃/分の速度で230℃まで昇温し、10分間保持し、次いで10℃/分の速度で降温して結晶化させた。次いで、10℃/分の速度で230℃まで昇温し、その際に吸熱ピークが得られた温度を融点(Tm)と定義した。吸熱ピークが複数個存在する場合には最も高温側のピークを融点として採用する。
(9)密度
エチレン・α-オレフィン共重合体(B)及びエチレン系重合体(C)の密度は、ASTM D1505によって決定することができる。
2.原材料
実施例、比較例において、原材料として、以下のものを使用した。
(A)プロピレンブロック共重合体類
以下のプライムポリマー製ポリプロピレン(a1)~(a3)の溶融混練によりプロピレンブロック共重合体類を作製した。
(a1)(株)プライムポリマー製、プライムポリプロ(登録商標)X860(2段重合で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体)
(a2)(株)プライムポリマー製、プライムポリプロJ13B(ホモPP)
(a3)(株)プライムポリマー製、プライムポリプロH-50000(ホモPP)
(B)エチレン・α-オレフィン共重合体
(B1)三井化学(株)製タフマーA-1085S(MFR(190℃、2.16kg)=1.2g/10分、密度885kg/m3)エチレン・1-ブテン共重合体
(B2)三井化学(株)製タフマーDF610(MFR(190℃、2.16kg)=1.2g/10分、密度862kg/m3)エチレン・1-ブテン共重合体
(B3)ダウ製ENGAGE(登録商標)8003(MFR(190℃、2.16kg)=1.0g/10分、密度885kg/m3)エチレン・1-オクテン共重合体
(B4)ダウ製ENGAGE8100(MFR(190℃、2.16kg)=1.0g/10分、密度870kg/m3)エチレン・1-オクテン共重合体
(C)エチレン系重合体
(C1)(株)プライムポリマー、ハイゼックス1700J(MFR(190℃、2.16kg)=17g/10分、密度968kg/m3
(C2)(株)プライムポリマー、ハイゼックス1820J(MFR(190℃、2.16kg)=32g/10分、密度963kg/m3
(C3)(株)プライムポリマー、ハイゼックス2200J(MFR(190℃、2.16kg)=5g/10分、密度964kg/m3
(E)造核剤
アデカスタブNA-11(商品名、CAS番号:85209-91-2、ADEKA製)
3.実施例及び比較例
[実施例1]
ポリプロピレン(a1)、(a2)および(a3)を、それぞれ46質量%、36質量%、18質量%の割合でドライブレンドし、さらに造核剤(E)を添加して、これらを同方向二軸混練機(品番NR2-36、ナカタニ機械(株)製、混練温度:190℃、スクリュー回転数200rpm)にて造粒し、プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A1)を得た。ここではプロピレン・エチレンブロック共重合体のn-デカン溶出成分量とMFRを調整するために(a2)、(a3)を配合した。造核剤(E)の添加量は、プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A1)と他の成分とを混合して得られるプロピレン系樹脂組成物中での造核剤(E)の割合が2000ppmとなるように調節した。プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A1)の物性を表1に示す。
プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A1)、エチレン・α-オレフィン共重合体(B1)およびエチレン系重合体(C1)を、それぞれ84質量%、4質量%、12質量%の割合でドライブレンドし、上記製造例と同様の条件にて上記二軸混練機により造粒した。得られた組成物の物性を表2に示す。
[実施例2および比較例1~8]
ポリプロピレン(a1)、(a2)および(a3)の種類および量を表1に記載のとおり変更し、プロピレン・エチレンブロック共重合体類の種類、および各重合体の割合を表2に記載のとおり変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、組成物を得た。その物性を表2に示す。
実施例の組成物は、諸物性のバランスに優れ、同等の剛性を示す比較例と比べて特に耐衝撃性に優れていた。
Figure 0007515284000001
[実施例3~5および比較例9~11]
ポリプロピレン(a1)、(a2)および(a3)の種類および量を表3に記載のとおり変更し、各重合体の種類を表4に記載のとおり変更したこと以外は実施例1との同様の方法により、組成物を得た。その物性を表4に示す。
Figure 0007515284000003
表4に示すように、MFRが所定の範囲にあるエチレン系重合体(C2)が用いられた実施例の組成物は、諸物性のバランスに優れており、MFRが低いエチレン系重合体(C3)が用いられた、同等の剛性を示す比較例の組成物と比べて、耐衝撃性に優れていた。
[実施例6および比較例12~13]
各重合体の種類を表5に記載のとおり変更したこと以外は実施例1との同様の方法により、組成物を得た。その物性を表5に示す。
表5に示すように、エチレン・1-ブテン共重合体が用いられた実施例6の組成物は、諸物性のバランスに優れており、エチレン・1-ブテン共重合体の代わりに同等のMFRおよび密度を有するエチレン・1-オクテン共重合体が用いられた、同等の剛性を示す比較例の組成物と比べて、耐衝撃性に優れていた。

Claims (7)

  1. 下記要件(a1)~(a5)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)を75~93質量%、
    下記要件(b1)~(b2)を満たすエチレン・1-ブテン共重合体(B)を2~10質量%、および
    下記要件(c1)~(c2)を満たすエチレン系重合体(C)を5~15質量%(但し、前記ブロック共重合体類(A)、前記共重合体(B)および前記重合体(C)の合計を100質量%とする。)を含み、
    下記要件(d1)を満たすプロピレン系樹脂組成物。
    (a1)MFR(230℃、2.16kg荷重)が、60~200g/10分である。
    (a2)室温n-デカン不溶部量が82~96質量%であり、室温n-デカン可溶部量が4~18質量%である(前記不溶部量と前記可溶部量の合計を100質量%とする)。
    (a3)室温n-デカン可溶部のエチレン含有量が20~40質量%である。
    (a4)室温n-デカン可溶部の極限粘度[η]が2.0~5.0dl/gである。
    (a5)融点が150℃以上である。
    (b1)MFR(190℃、2.16kg荷重)が、0.5~5g/10分である。
    (b2)密度が860~900kg/m3である。
    (c1)MFR(190℃、2.16kg荷重)が、15~80g/10分である。
    (c2)密度が960~980kg/m3である。
    (d1)MFR(230℃、2.16kg荷重)が、50~200g/10分である。
  2. 請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物(ただし、ビニル芳香族化合物の重合体を含む組成物を除く。)。
  3. 前記プロピレン・エチレンブロック共重合体類(A)、
    前記エチレン・1-ブテン共重合体(B)、
    前記エチレン系重合体(C)、
    任意に造核剤(E)、
    任意に中和剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、気泡防止剤、分散剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤、架橋剤および架橋助剤から選択される添加剤、および
    任意に染料および顔料から選択される着色剤
    のみを含む、請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  4. 前記エチレン・1-ブテン共重合体(B)の含有量がエチレン系重合体(C)の含有量以下である請求項1~3のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  5. 造核剤(E)を、前記ブロック共重合体類(A)、前記共重合体(B)および前記重合体(C)の合計100質量部に対して0.05~0.6質量部含む請求項1~4のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  6. 請求項1~のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物の射出成形体。
  7. 最も薄い部分の肉厚が0.3~2.0mmの範囲にある請求項に記載の射出成体。
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