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JP7500821B2 - 吸収性物品の表面材 - Google Patents

吸収性物品の表面材 Download PDF

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JP7500821B2 JP2023073923A JP2023073923A JP7500821B2 JP 7500821 B2 JP7500821 B2 JP 7500821B2 JP 2023073923 A JP2023073923 A JP 2023073923A JP 2023073923 A JP2023073923 A JP 2023073923A JP 7500821 B2 JP7500821 B2 JP 7500821B2
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Description

本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品の表面材に関する。
使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等の吸収性物品を着用すると、蒸れ等によって皮膚にかぶれが生じることがある。そのため、かぶれの発生を抑制するべく、吸収性物品に抗菌剤を用いた吸収性物品が提案されている。
例えば特許文献1及び2には、着用者の肌に接する表面材を構成する繊維中に抗菌剤が練り込まれた吸収性物品が記載されている。
特開2006-55187号公報 特開2021-52938号公報
抗菌剤を用いる吸収性物品において、抗菌剤が水に溶けにくいことで、抗菌性能を十分に発揮する前に尿等の排泄液が表面シート(表面材)を透過してしまい、効率的な抗菌性能が発現しにくいという課題があった。
本発明は、効率的な抗菌性能の発現が可能な吸収性物品の表面材に関する。
本発明の一形態に係る吸収性物品の表面材は、密領域と、粗領域と、を有する。
上記密領域は、繊維間距離が相対的に小さい領域である。
上記粗領域は、繊維間距離が上記密領域よりも大きい領域である。
上記密領域には前記粗領域よりも多くの金属酸化物抗菌剤が存在する。
上記密領域は、上記金属酸化物抗菌剤を含有する金属酸化物抗菌剤配合繊維を含む。
本発明の吸収性物品の表面材によれば、効率的な金属酸化物抗菌性能の発現が可能となる。
本発明の吸収性物品の一実施形態としての使い捨ておむつの一例を示す図であり、各部の弾性部材を伸張させて平面状に広げた状態を示す肌側(表面材側)の模式平面図である。 図1のII-II線で切断した吸収性物品の模式断面図である。 上記使い捨ておむつの一部を構成する、第1実施形態に係る表面材の一部を拡大して示す模式断面図である。 上記使い捨ておむつの一部を構成する、第2実施形態に係る表面材の一部を拡大して示す模式断面図である。 上記使い捨ておむつの一部を構成する、第3実施形態に係る表面材の一部を拡大して示す模式断面図である。 各実施形態の表面材に用いられる金属酸化物抗菌剤配合繊維の模式斜視図である。
以下、本発明の表面材を備える吸収性物品について、使い捨ておむつを例にあげ、図面を参照しながら説明する。
<使い捨ておむつの全体構成>
本実施形態の使い捨ておむつ1は、図1に示すように、いわゆる展開型の使い捨ておむつである。使い捨ておむつ1及び該使い捨ておむつ1を構成する各構成部材は、着用者の前後方向に対応する縦方向Xと、着用者の左右方向に対応し縦方向Xに直交する横方向Yとを有する。さらに、使い捨ておむつ1及び該使い捨ておむつ1を構成する各構成部材は、縦方向X及び横方向Yの双方に直交する厚み方向Zを有する。
本明細書において、各構成を厚み方向Zの方向からみる場合、平面視という。なお、本明細書では、各構成における肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側に位置する側を示す。各構成における非肌側とは、使い捨ておむつ着用時の着用者の肌側とは反対側に位置する側を示す。また、厚み方向Zに関しては、着用時に着用者の肌に近い側を上、着衣に近い側を下ということがある。
使い捨ておむつ1は、以下、おむつ1と称する。
また、本実施形態では、テープタイプの使い捨ておむつを例にあげるが、パンツタイプの使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッドにも適用することができる。
図1に示すように、おむつ1は、縦方向X腹側に位置する腹側領域Aと、縦方向X背側に位置する背側領域Bと、腹側領域Aと背側領域Bとの間に位置する股下領域Cと、に区分される。
背側領域Bは、股下領域Cから左右の横方向Y外方に突出した側部を含む。当該側部の横方向Yにおける側縁部には、ファスニングテープ9が設けられている。同様に、腹側領域Aは、股下領域Cから左右の横方向Y外方に突出した側部を含む。
腹側領域Aの非肌側面には、ファスニングテープ9を接着させるためのランディングテープ(図示せず)が設けられている。該ランディングテープは、機械的面ファスナーの雌部材からなる。ファスニングテープ9は、機械的面ファスナーの雄部材からなる止着部91を有する。
股下領域Cは、腹側領域A及び背側領域Bよりも幅狭となるように、横方向Y内方に括れた脚繰りが形成され、着用時に着用者の排尿部及び肛門等を含む股間部に配置される。
なお、ここでいう「着用時」は、通常想定される適正な着用位置が維持された状態をいう。
図1及び2に示すように、おむつ1は、表面材(トップシート)10(20、30)と、裏面材(バックシート)3と、吸収体4と、サイドシート5と、一対のファスニングテープ9と、中間シート7と、防漏シート8と、を有する。おむつ1は、裏面材3、防漏シート8、吸収体4、中間シート7及び表面材10(20、30)が厚み方向Zに積層された構成を有する。これらの構成は、例えば、ホットメルト接着剤等の公知の接合手段により互いに接合されている。
吸収体4は、縦方向Xに沿って延び、表面材10(20、30)と裏面材3との間に配置される。すなわち、吸収体4は、表面材10の非肌側に配される。吸収体4は、着用者の尿や便に含まれる水分等の液状排泄物(以下、単に「液」ということがある。)を表面材10(20、30)側の面から吸収し、内部で拡散させて当該液を保持する。
吸収体4は、吸収性コア40と、コアラップシート41と、を有する。
吸収性コア40は、液を保持することが可能な吸収性材料を主体として構成される。具体的に、吸収性コア40は、親水性繊維の積繊体、当該積繊体に吸収性ポリマーを担持させた構成、又は吸水性ポリマーのみからなる構成等を有する。
コアラップシート41は、吸収性コア40を被覆し、例えば吸収性コア40の形状を保持する機能等を有する。コアラップシート41は、例えばティッシュペーパー状の薄く柔らかい紙や液透過性の不織布等で形成される。
表面材10(20、30)は、おむつ1の着用時、着用者の肌に接するように配置される。表面材10(20、30)は、吸収体4の肌側面4a側(厚み方向Z上方側)に配置され、例えば、おむつ1の肌側面の横方向Y中央部を構成する。表面材10(20、30)は、液透過性のシート材として構成され、合成繊維又は天然繊維からなる不織布等で形成される。
表面材10(20、30)は、肌側面10a(20a、30a)と、非肌側面10b(20b、30b)と、を有する。
表面材10(20、30)の詳細については後述する。
表面材10(20、30)と吸収体4との間に、中間シート7が設けられていてもよい。中間シート7には、各種製法によって得られる不織布を用いることができる。中間シート7は、表面材10(20、30)から吸収体4への液の透過性の向上、吸収体4に吸収された液の表面材10(20、30)への液戻りの防止等の観点から配置される。
裏面材3は、吸収体4の非肌側(厚み方向Z下方)に配置され、例えば、おむつ1の非肌側面のほぼ全体を構成し、着用時のおむつ1の外装を構成する。裏面材3は、防漏性を有していることが好ましく、例えば、液難透過性、水蒸気透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で形成される。
一対のサイドシート5は、表面材10(20、30)の横方向Y側部に配置され、例えば、おむつ1の肌側面の横方向Y側部を構成する。サイドシート5は、防漏性を備えていることが望ましく、例えば、液難透過性、水蒸気透過性及び撥水性等の機能を有するシート材で形成される。一対のサイドシート5では、横方向Y中央部側が表面材10(20、30)に重なって配置され、横方向Y側部が表面材10(20、30)の外側まで延出し、裏面材3と接合される。
おむつ1では、サイドシート5は、糸状又は帯状の弾性部材50が配されることで、立体ギャザー形成用シートを構成している。
防漏シート8は、液不透過性又は液難透過性の樹脂フィルムからなり、裏面材3の肌側面を被覆する。
<表面材>
以下、上記おむつ1に適用され得る、第1実施形態の表面材10、第2実施形態の表面材20、及び第3実施形態の表面材30それぞれについて説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態における表面材10について説明する。
図3に示すように、表面材10は、第1層11と、第1層11上に形成された第2層12とが積層されて構成される。表面材10は、肌側面10a及び非肌側面10bが平坦なフラット表面材である。
尚、本明細書でいう「平坦」は、巨視的に凹凸が無く平坦であることを意味し、繊維で構成されているが故に生じ得る比較的小さな凹凸の存在は許容される。例えば、厚み方向における凸部の頂部と凹部の底部との差が0.3mm未満の凹凸は許容される。
第1層11は、第1繊維61を含む繊維集合体から構成されている。第1層11は、表面材10の非肌側面10bを構成する。
第2層12は、第2繊維62を含む繊維集合体から構成されている。第2層12は、表面材10の肌側面10aを構成する。
第1層11と第2層12とは、繊維間距離(繊維と繊維との隙間)が互いに異なっている。
第2層12は、表面材10において、表面材10を構成する構成繊維の繊維間距離が相対的に小さい密領域52を構成する。
第1層11は、密領域52(第2層12)よりも、構成繊維の繊維間距離が大きい粗領域51を構成する。
繊維間距離の測定方法については後述する。
このように、表面材10は、粗領域51(第1層11)と、該粗領域51よりも繊維間距離が小さい密領域52(第2層12)と、を有する。繊維間距離が小さい状態とは表面材10を形成する繊維が密集した状態である。繊維間距離が小さい方が、繊維間距離が大きい方よりも、毛管による液の引き込み力が大きくなる。従って、表面材10において、上層に位置する第2層12は、下層に位置する第1層11よりも、液の引き込み力が大きい。
第1層11及び第2層12はそれぞれ繊維材料のシート状物からなる。シート状物としては、例えばカード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布を用いることができる。
表面材10は、密領域52(第2層12)に粗領域51(第1層11)よりも多くの金属酸化物抗菌剤が存在するように構成される。
本明細書において「密領域に粗領域よりも多くの金属酸化物抗菌剤が存在」とは、密領域(本実施形態では、第2層12に対応する。)の単位質量あたりの金属酸化物抗菌剤の配合量が、粗領域(本実施形態では、第1層11に対応する。)の単位質量あたりの金属酸化物抗菌剤の配合量が多いことを示し、粗領域に金属酸化物抗菌剤が含まれない場合も含む。
本実施形態では、表面材10は、密領域52(第2層12)にのみ金属酸化物抗菌剤(後述する図6における符号6の構成)が配合されて構成される。尚、後述する第2及び第3実施形態においても、密領域のみに金属酸化物抗菌剤が含まれる例をあげるが、粗領域に密領域よりも少ない配合量で金属酸化物抗菌剤が含まれてもよい。
第2層を構成する第2繊維62は金属酸化物抗菌剤を含有する。より詳細には、第2繊維62は、金属酸化物抗菌剤が練り込まれて構成される金属酸化物抗菌剤配合繊維である。以下、「第2繊維62」を「金属酸化物抗菌剤配合繊維62」と置き換えて説明することがあり、後述する第2及び第3実施形態においても同様である。
金属酸化物抗菌剤配合繊維は、繊維に金属酸化物抗菌剤が練り込まれて構成されることで、噴霧、塗工する等して繊維に抗菌剤を付着させる場合と比較して、金属酸化物抗菌剤の繊維からの脱落が効果的に防止される。
一方、第1層11を構成する第1繊維61は、金属酸化物抗菌剤が配合されていない抗菌剤非配合繊維である。以下、「第1繊維61」を「金属酸化物抗菌剤非配合繊維61」と置き換えて説明することがあり、後述する第2及び第3実施形態においても同様である。
金属酸化物抗菌剤配合繊維62の構造については後述する。
このように、繊維間距離が互いに異なる第1層11と第2層12を含んだ積層構造で表面材を構成することで、表面材に繊維の粗密の度合いが異なる領域(密領域及び粗領域)を容易に形成することができるとともに、密領域にのみ金属酸化物抗菌剤が位置するように構成することができる。
ここで、表面材10は、第1層11と第2層12が積層されたシートに対して、エンボス加工等の圧搾加工や賦形加工等の二次加工が施されて、厚み方向に重なる粗領域と密領域とが部分的に厚み方向に圧密化された部位を有してもよい。当該圧密化された部位は、表面材の全面に一様に設けられてもよいし、表面材の一部の領域に設けられてもよい。例えば、表面材は、表面材30のように全面に一様に配される、圧密化された部位である凹部と、当該凹部以外の領域に位置する複数の凸部を有してもよい。また、表面材は、一部の領域(例えば股下領域の縦方向中央部分)に厚み方向に圧密化された縦方向に延びる左右一対の防漏溝を有してもよい。また、防漏溝を有する表面材30としてもよい。上記圧密化された部位は、繊維密度が高い領域である。表面材に上記二次加工が施されている場合、当該二次加工による加圧がなされていない部位(例えばエンボス加工が施されていない部位)を用いて、表面材が、厚み方向に密領域(本実施形態では第2層12)と粗領域(本実施形態では第1層11)とが積層された構造であることを確認することができる。後述する第2実施形態及び第3実施形態についても同様である。
図3、後述する図4及び図5において、密領域52を構成する金属酸化物抗菌剤配合繊維62を、内部が白い輪郭線だけの線状で示している。粗領域51を構成する金属酸化物抗菌剤非配合繊維61を、内部が塗りつぶされた線状で示している。また、図3~図5において、内部が白い輪郭線だけの小円、内部が黒い小円は、いずれも繊維同士の溶融部を模式的に示したものである。
金属酸化物抗菌剤としては、酸化亜鉛、酸化銀、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化銅等を用いることができる。これらの金属酸化物抗菌剤は1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも抗菌性、安全性、価格面より酸化亜鉛を含むことが好ましい。
以下、金属酸化物抗菌剤として、酸化亜鉛を用いる例をあげる。後述する第2及び第3実施形態の表面材20及び30においても、金属酸化物抗菌剤として酸化亜鉛を用いる例をあげるが、表面材20及び30に用いる金属酸化物抗菌剤として、上記金属酸化物抗菌剤を用いることができる。
上述したように、表面材10において、粗領域51(第1層11)における金属酸化物抗菌剤非配合繊維61の繊維間距離は、密領域52(第2層12)における金属酸化物抗菌剤配合繊維62の繊維間距離よりも大きくなっている。
このため、表面材10において、着用者からの液状排泄物は、第1層11へ移行する前に、一旦、第2層12に留まりやすくなる。
また、表面材10では、水難溶性の酸化亜鉛を金属酸化物抗菌剤として用いている。酸化亜鉛は、水難溶性であることで表面材10を厚み方向Zに移動する液状排泄物とともに移動し難いため、第2層12に残留しやすい。加えて、金属酸化物抗菌剤配合繊維62は酸化亜鉛が練り込まれて構成されているため、酸化亜鉛は第2層12により残留しやすくなっている。このように、表面材10において、金属酸化物抗菌剤は第2層12に留まりやすい構成で配合されている。
ここで、おむつは漏れを防ぐ構造となっていることで、おむつ内は、汗や尿等の水分により高温多湿の環境となっている。このように、おむつ内は、皮膚が蒸れて浸軟(ふやけ)して肌のバリア機能が低下しやすい環境にあり、また、排尿後や排便後のおむつ内は細菌が増えやすい環境となっている。
また、便にはタンパク質分解酵素や脂肪分解酵素などの酵素、大腸菌や黄色ブドウ球菌などの腸内細菌が含まれ、皮膚には常在細菌として黄色ブドウ球菌が存在する。黄色ブドウ球菌は、皮膚に対して悪影響を及ぼす悪玉菌である。おむつ内は、排尿により、尿に含まれる尿素が黄色ブドウ球菌によって分解されてアンモニアに変化してアルカリ環境になりやすい。おむつ内がアルカリ環境になると、黄色ブドウ球菌の働きが活発になり、黄色ブドウ球菌は毒素を作り出し、炎症、湿疹や肌かぶれ等の皮膚トラブルを引き起こす。また、おむつ内に便がある場合、おむつ内がアルカリ環境となることで、便中の酵素の作用が活性化され、浸軟して肌のバリア機能が低下している皮膚を刺激して、皮膚トラブルを引き起こしやすい。
これに対し、本実施形態の表面材10を用いたおむつ1では、着用者の肌に接する表面材10に金属酸化物抗菌剤配合繊維62が含まれることで、排尿や排便の初期から抗菌性能が発現され得る。
その上、表面材10では、上述のように、着用者からの液状排泄物が一旦留まりやすく構成されている密領域52(第2層12)に、金属酸化物抗菌剤が留まりやすい構成で配されていることで、金属酸化物抗菌剤と液状排泄物とが高い頻度で効率的に接触し得る。これにより、少ない添加量の金属酸化物抗菌剤で、効率的かつ効果的に抗菌性能が発現され得、排尿や排便の初期から着用者からの排泄物に起因する細菌の繁殖が抑制され、皮膚トラブルが抑制される。
このように、表面材10を用いたおむつ1では、少ない添加量の金属酸化物抗菌剤で、優れた抗菌性能が長時間にわたって安定的に発現され得る。
また、表面材10では、金属酸化物抗菌剤を表面材全体に配することなく効率的な抗菌性能の発現が可能であるので、金属酸化物抗菌剤の添加量を低く抑えることができ、コストを削減することができる。水分等によって浸軟した肌は、少しの擦れでも皮膚損傷が起こりやすく、皮膚トラブルの原因となりやすいが、金属酸化物抗菌剤の添加量を低く抑えることで、肌の浸軟、ひいては肌のバリア機能低下が抑制され、皮膚トラブルがより効果的に抑制される。
また、表面材10の全体に金属酸化物抗菌剤を配さない態様とすることで、金属酸化物抗菌剤が、肌かぶれの原因となる排泄物由来の菌だけでなく、肌のバリア機能を助ける常在菌にも作用して、肌の常在菌のバランスがくずれ肌かぶれしやすくなることを防ぐことができる。
更に、本実施形態の多層構造の表面材10において、金属酸化物抗菌剤配合繊維62が含まれる第2層12(密領域52)が直接肌に接するように位置することで、便に起因する皮膚トラブルを効果的に抑制することができる。
ここで、新生児から離乳食が始まる前の生後5、6か月程度までの低月齢の乳児の便は、水分が多く、肌につきやすい形状であることが多い。このため、低月齢の乳児には便によるかぶれが多い傾向にある。本実施形態の金属酸化物抗菌剤配合繊維62により構成される第2層12が肌側面10aに位置する表面材10は、このような便によるかぶれが多い低月齢の乳児用のおむつにより好適に用いることができる。
尚、酸化亜鉛の抗菌メカニズムには諸説ある。例えば、亜鉛イオンが細菌の細胞膜を不安定化し、細胞死を誘導させる説、酸化亜鉛が水と反応し、発生する過酸化水素が菌の作用を抑制させる説等がある。
[第2実施形態]
第2実施形態における表面材20について説明する。第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する場合がある。
第1実施形態の表面材10では、金属酸化物抗菌剤配合繊維62から構成される密領域52(第2層12)が、表面材10の肌側面10aに位置する例をあげた。これに対し、第2実施形態の表面材20では、金属酸化物抗菌剤配合繊維62が含まれる密領域52(第2層22)が、表面材20の非肌側面20bに位置する。
図4に示すように、表面材20は、第2層22と、第2層22上に形成された第1層21とが積層されて構成される。表面材20は、表面材10と同様に、肌側面20a及び非肌側面20bが平坦なフラット表面材である。
第1層21は、第1繊維61を含む繊維集合体から構成されている。第1層21は、表面材20の肌側面20aを構成する。
第2層22は、第2繊維62を含む繊維集合体から構成されている。第2層22は、表面材20の非肌側面20bを構成する。
第1層21と第2層22とは、繊維間距離(繊維と繊維との隙間)が互いに異なっている。
第2層22は、表面材20において、表面材20を構成する繊維の繊維間距離が相対的に小さい密領域52を構成する。
第1層21は、密領域52(第2層22)よりも繊維間距離が大きい粗領域51を構成する。
このように、表面材20は、粗領域51(第1層21)と、該粗領域51よりも繊維間距離が小さい密領域52(第2層22)と、を有する。表面材20において、下層に位置する第2層22は、上層に位置する第1層21よりも、液の引き込み力が大きい。
第1層21及び第2層22はそれぞれ繊維材料のシート状物からなる。シート状物としては、例えばカード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布を用いることができる。
表面材20は、密領域52(第2層22)にのみ金属酸化物抗菌剤(後述する図6における符号6の構成)が配合されて構成される。
より詳細には、第2層22を構成する第2繊維62は、金属酸化物抗菌剤が練り込まれて構成される金属酸化物抗菌剤配合繊維である。繊維に金属酸化物抗菌剤が練り込まれて構成されることで、噴霧、塗工する等して繊維に抗菌剤を付着させる場合と比較して、金属酸化物抗菌剤の繊維からの脱落を効果的に防止することができる。
ここでは、金属酸化物抗菌剤として、酸化亜鉛を用いる例をあげる。
一方、第1層21を構成する第1繊維61は、金属酸化物抗菌剤が配合されていない金属酸化物抗菌剤非配合繊維である。
このように、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、繊維間距離が互いに異なる第1層21と第2層22を含んだ積層構造で表面材を構成することで、表面材に繊維の粗密の度合いが異なる領域(密領域及び粗領域)を容易に形成することができるとともに、密領域にのみ金属酸化物抗菌剤が位置するように構成することができる。
上述したように、表面材20において、下層に位置する第2層22は、上層に位置する第1層21よりも、液の引き込み力が大きくなっている。
このため、表面材20に供給される着用者からの液状排泄物は、第1層21を通過した後、第2層22に引き込まれ易く、液が一旦留まりやすい構成となっている。
一方、非肌側面20bに位置する第2層22に液が引き込まれ易くなっていることで、肌側面20aを構成する第1層21では液残りが少なくなる。
また、表面材20では、水難溶性の酸化亜鉛を金属酸化物抗菌剤として用いている。酸化亜鉛は、水難溶性であることで表面材20を厚み方向Zに移動する液状排泄物とともに移動し難いため、第2層22に残留しやすい。加えて、金属酸化物抗菌剤配合繊維62は酸化亜鉛が練り込まれて構成されているため、酸化亜鉛は第2層22により残留しやすくなっている。このように、表面材20において、金属酸化物抗菌剤は第2層22に留まりやすい形態で配合される。
本実施形態の表面材20を用いたおむつ1では、着用者の肌に接する表面材20に金属酸化物抗菌剤配合繊維62が含まれることで、排尿や排便の初期から抗菌性能が発現され得る。
その上、表面材20では、上述のように、着用者からの液状排泄物が一旦留まりやすくなっている密領域52(第2層22)に、金属酸化物抗菌剤が留まりやすい形態で配合されていることで、金属酸化物抗菌剤と液状排泄物とが効率的に高い頻度で接触し得る。これにより、少ない添加量の金属酸化物抗菌剤で、効率的かつ効果的に抗菌性能が発現され得、排尿や排便の初期から着用者からの排泄物に起因する細菌の繁殖が抑制され、炎症、湿疹や肌かぶれ等の皮膚トラブルが抑制される。
このように、表面材20を用いたおむつ1では、少ない添加量の金属酸化物抗菌剤で、優れた抗菌性能が長時間にわたって安定的に発現され得る。
また、表面材20では、金属酸化物抗菌剤を表面材全体に配することなく効率的な抗菌性能の発現が可能であるので、金属酸化物抗菌剤の添加量を低く抑えることができ、コストを削減することができる。
更に、本実施形態の多層構造の表面材20において、金属酸化物抗菌剤配合繊維62が含まれる第2層12(密領域52)が非肌側に位置することで、表面材20の肌側面20aの液残りが少なくなるように保ちながら、金属酸化物抗菌剤の皮膚トラブル防止効果が有効に働く。
すなわち、水分等によって浸軟した肌は、少しの擦れでも皮膚損傷が起こりやすく、皮膚トラブルの原因となりやすい。これに対し、本実施形態の表面材20においては、下層に位置する第2層22は、上層に位置する第1層21よりも、液の引き込み力が大きくなっており、着用者の肌に直接接する部位である肌側面20aを構成する第1層21における液残りを少なくすることができる。着用者の肌に接する肌側面20aに位置する第1層21における液残りが少なくなることで、肌の浸軟が抑制され、皮膚トラブルが効果的に抑制される。
ここで、離乳食が始まる生後5、6か月程度以降の高月齢の乳児や幼児の便は、典型的には、離乳食が始まる前の頃の便よりも水分が少ない。このため、高月齢の乳児や幼児には、尿によるかぶれが多い傾向にある。本実施形態の金属酸化物抗菌剤配合繊維62により構成される第2層22が非肌側面20bに位置する表面材20は、このような尿によるかぶれが多い高月齢の乳児や幼児用のおむつに好適に用いることができる。
[第3実施形態]
第3実施形態における表面材30について説明する。上述の実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、説明を省略する場合がある。
第1及び第2実施形態の表面材10及び20は、肌側面及び非肌側面の双方が平坦なフラット表面材であったが、これに限定されず、凹凸面を有する凹凸表面材であってもよい。以下、説明する。
図5に示すように、表面材30は、第2層32と、第2層32上に形成された第1層31とが積層されて構成される。表面材30は、凹凸面を有する凹凸表面材である。
第1層31は、第1繊維61を含む繊維集合体から構成されている。第1層31は、表面材30の肌側面30aを構成する。肌側面30aは、複数の凸部33及び複数の凹部34が設けられた凹凸面となっている。
第2層32は、第2繊維62を含む繊維集合体から構成されている。第2層32は、表面材30の非肌側面30bを構成する。非肌側面30bは、平坦面となっている。
第1層31と第2層32とは、繊維間距離(繊維と繊維との隙間)が互いに異なっている。
第2層32は、表面材30において、表面材30を構成する繊維の繊維間距離が相対的に小さい密領域52を構成する。
第1層31は、密領域52(第2層32)よりも繊維間距離が大きい粗領域51を構成する。
このように、表面材30は、粗領域51(第1層31)と、該粗領域51よりも繊維間距離が小さい密領域52(第2層32)と、を有する。表面材30において、下層に位置する第2層32は、上層に位置する第1層31よりも、液の引き込み力が大きくなっている。
第1層31及び第2層32はそれぞれ繊維材料のシート状物からなる。シート状物としては、例えばカード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布及びニードルパンチ不織布等の種々の不織布を用いることができる。
表面材30を備えたおむつ1では、着用者の肌に接する表面材30の肌側面30aが凹凸面であることで、着用時、表面材30が部分的に、より詳細には、凸部33の頂部及びその近傍の領域が、肌に接しやすくなっており、表面材30の肌側面30aが肌に全面的に接触することに起因するべたつき感やムレ、擦れに起因する刺激感が低減される。
表面材30は、密領域52(第2層32)にのみ金属酸化物抗菌剤(後述する図6における符号6の構成)が配合されて構成される。
より詳細には、第2層32を構成する第2繊維62は、金属酸化物抗菌剤が練り込まれて構成される金属酸化物抗菌剤配合繊維である。繊維に金属酸化物抗菌剤が練り込まれて構成されることで、噴霧、塗工する等して繊維に抗菌剤を付着させる場合と比較して、金属酸化物抗菌剤の繊維からの脱落を効果的に防止することができる。
ここでは、金属酸化物抗菌剤として、酸化亜鉛を用いる例をあげる。
一方、第1層31を構成する第1繊維61は、金属酸化物抗菌剤が配合されていない金属酸化物抗菌剤非配合繊維である。
このように、本実施形態においても、第1及び第2実施形態と同様に、繊維間距離が互いに異なる第1層31と第2層32を含んだ積層構造で表面材を構成することで、表面材に繊維の粗密の度合いが異なる領域(密領域及び粗領域)を容易に形成することができるとともに、密領域にのみ金属酸化物抗菌剤が位置するように構成することができる。
図5に示すように、表面材30は、その肌側面30aの全面に一様に、複数の凹部34と複数の凸部33とを有する。凸部33は、凹部34以外の領域に位置し、肌側面30aの一面に複数形成される。凸部33どうしの間には、非肌側面30b側に向かって凹陥した凹部34が形成されている。
複数の凸部33は、これらが例えば千鳥格子状に形成されている。複数の凹部34も、同様に千鳥格子状に形成されている。尚、凸部33及び凹部34それぞれの形状及び配置は特に限定されない。例えば、複数の凸部が島状に構成され、各凸部が凹部に囲まれた形状であってもよい。
凹部34は、第1層31と第2層32とが部分的に圧搾加工によって繊維が圧密化されて接合された部位である。凹部34における圧密化は、表面材30を構成する繊維材料の溶融を伴う方法を利用してもよいし、繊維材料の溶融が伴わない方法を利用してもよい。繊維材料の溶融を伴う圧搾加工として、具体的には、熱を伴うエンボス加工、超音波エンボス等の公知のエンボス加工が挙げられ、凹部34はエンボス部ともいう。
第1層31及び第2層32それぞれにおいて、凹部34及びその近傍は、繊維どうしの融着又は圧着により繊維密度が高い部分である。凹部34及びその近傍は、これらの周辺(圧搾加工されていない凸部33にほぼ対応する部分)よりも繊維間距離が小さく、繊維密度が高くなっている。これにより、凹部34及びその近傍は、これらの周辺との繊維密度差により、着用者からの液を引き込みやすくなっている。
尚、繊維材料の溶融を伴う圧搾加工によって形成された凹部34では、表面材が本来有していた繊維形態が失われてフィルム化している場合がある。このような形態であっても、凹部34の近傍は、第1層31と第2層32との部分的な圧搾加工によって、繊維が高密度化した状態となっている。
図5に示すように、凸部33は複数の凹部34間に位置する。凸部33は、平坦な第2層32の部分と、おむつ1としたときに着用者の肌に向かってドーム状に突出した第1層31の部分と、を有する。本実施形態の表面材30において、凸部33の内部は空洞であり、中空の凸部33となっている。
図5に示すように、表面材30において、密領域52(第2層32)は、凹部34及びその近傍に対応する第1領域52aと、それ以外の領域であって凸部33にほぼ対応する第2領域52bと、を有する。
第1領域52aは、第2領域52bよりも、圧搾加工によって相対的に繊維間距離が小さい領域であり、繊維がより密な状態となっている。すなわち、第1領域52aは、表面材30において、最も繊維が密に存在する高密領域となっている。
このように、表面材30では、密領域52(第2層32)は、面内で、粗密が異なる領域を有している。
上述したように、表面材30において、下層に位置する第2層32は、上層に位置する第1層31よりも、液の引き込み力が大きくなっている。
このため、表面材30に供給される着用者からの液状排泄物は、第1層31を通過した後、第2層32に引き込まれ易くなっている。
更に、密領域52(第2層32)において、凹部34及びその近傍に対応する第1領域52aは、より液を引き込みやすく、より液が留まりやすくなっている。
一方、非肌側面20bに位置する第2層22に液が引き込まれ易くなっていることで、肌側面20aを構成する第1層21では、液残りが少なくなる。
また、表面材30では、水難溶性の酸化亜鉛を金属酸化物抗菌剤として用いている。酸化亜鉛は、水難溶性であることで表面材30を厚み方向Zに移動する液状排泄物とともに移動し難いため、第2層32に残留しやすい。加えて、金属酸化物抗菌剤配合繊維62は酸化亜鉛が練り込まれて構成されているため、酸化亜鉛は第2層32により残留しやすくなっている。このように、表面材30において、金属酸化物抗菌剤は第2層32に留まりやすい形態で配合される。
本実施形態の表面材30を用いたおむつ1では、着用者の肌に接する表面材30に金属酸化物抗菌剤配合繊維62が含まれることで、排尿や排便の初期から抗菌性能が発現され得る。
その上、表面材30では、上述のように、液が一旦留まりやすくなっている密領域52(第2層32)に、金属酸化物抗菌剤が留まりやすい形態で配合されていることで、金属酸化物抗菌剤と液状排泄物とが効率的に高い頻度で接触し得る。これにより、少ない添加量の金属酸化物抗菌剤で、効率的かつ効果的に抗菌性能が発現され得、排尿や排便の初期から着用者からの排泄物に起因する細菌の繁殖が抑制され、炎症、湿疹や肌かぶれ等の皮膚トラブルが抑制される。
このように、表面材30を用いたおむつ1では、少ない添加量の金属酸化物抗菌剤で、優れた抗菌性能が長時間にわたって安定的に発現され得る。
また、表面材30では、金属酸化物抗菌剤を表面材全体に配することなく効率的な抗菌性能の発現が可能であるので、金属酸化物抗菌剤の添加量を低く抑えることができ、コストを削減することができる。
更に、本実施形態の表面材30では、凹部34及びその近傍は、圧密化され高密領域となって液の引き込み力がより大きくなっているので、金属酸化物抗菌剤と液状排泄物とがより効率的に高い頻度で接触し得、液状排泄物に起因する菌の繁殖がより効率的かつ効果的に抑制され、皮膚トラブルが抑制される。
このように圧密化した凹部34を形成することで、表面材30を透過する液状排泄物の透過速度を調節することができ、表面材をより抗菌性能が発揮される構成とすることができる。
加えて、表面材30において、第1領域25aに対応する凹部34及びその近傍は、凹陥して窪む形状であることで、尿や便等の排泄物が溜まりやすくなっている。このため、密領域52の第1領域52aでは、より効率的に、金属酸化物抗菌剤と液状排泄物とが接触しやすくなり、液状排泄物に起因する菌の繁殖がより効率的かつ効果的に抑制される。
更に、本実施形態の多層構造の表面材30において、金属酸化物抗菌剤配合繊維62が含まれる第2層32(密領域52)が非肌側に位置することで、表面材30の肌側面30aの液残りが少なくなるように保ちながら、金属酸化物抗菌剤による皮膚トラブル防止効果が有効に働く。
すなわち、水分等によって浸軟した肌は、少しの擦れでも皮膚損傷が起こりやすく、皮膚トラブルの原因となりやすい。これに対し、本実施形態の表面材30においては、下層に位置する第2層32は、上層に位置する第1層31よりも、液の引き込み力が大きくなっており、肌側面30aに位置する第1層31における液残りを少なくすることができる。着用者の肌に接する肌側面30aを構成する第1層31における液残りが少なくなることで、肌の浸軟が抑制され、皮膚トラブルが効果的に抑制される。
加えて、肌側面30aが凹凸面であることで、着用時、表面材30の肌側面30aが部分的に肌に接することで、べたつき感やムレ、擦れに起因する刺激感が低減され、より一層皮膚トラブルが抑制される。また、肌側面30aが凹凸面であることで、凹陥して窪む形状となっている凹部34及びその近傍は排泄物が溜まりやすくなっているが、肌に接しやすくなっている凸部33の頂部及びその近傍は排泄物が残りにくく、より一層皮膚トラブルが抑制される。
<金属酸化物抗菌剤配合繊維例>
上述の第1~第3実施形態の表面材10、20及び30において、いずれも、金属酸化物抗菌剤配合繊維62は、密領域52を構成する第2層のみに用いられている。
金属酸化物抗菌剤配合繊維62は、例えば、予め金属酸化物抗菌剤が練り込まれた合成樹脂を紡糸する工程を経て得ることができる。
金属酸化物抗菌剤配合繊維62は、例えば、1種類の合成樹脂(熱可塑性樹脂)又は2種類以上の合成樹脂を混合したブレンドポリマーからなる単一繊維でもよく、あるいは複合繊維でもよい。ここでいう複合繊維は、成分の異なる2種類以上の合成樹脂を紡糸口金で複合し、同時に紡糸して得られる合成繊維(熱可塑性繊維)で、複数の成分がそれぞれ繊維の長さ方向に連続した構造で、単繊維内で相互接着しているものをいう。複合繊維の形態には、芯鞘型、サイドバイサイド型等がある。
抗菌性能の効果的な発現の観点から、金属酸化物抗菌剤配合繊維62の表面に金属酸化物抗菌剤が露出していることが好ましい。
金属酸化物抗菌剤を繊維表面に効率的に露出させる観点から、金属酸化物抗菌剤配合繊維62は、芯鞘型繊維であることが特に好ましい。
図6に示すように、密領域52を構成する金属酸化物抗菌剤6が練り込まれた金属酸化物抗菌剤配合繊維62は、芯部62Cと鞘部62Sを有する。金属酸化物抗菌剤6は、鞘部62Sにのみ配合されて構成されることが好ましい。このように、鞘部62Sにのみ金属酸化物抗菌剤6が配合されることにより、少ない配合量の金属酸化物抗菌剤で、繊維表面に金属酸化物抗菌剤6を露出させやすくすることができる。
原料繊維となる芯鞘型の金属酸化物抗菌剤配合繊維62は、例えば、芯部62CがPET(ポリエチレンテレフタレート)やPP(ポリプロピレン)、鞘部62Sは金属酸化物抗菌剤(酸化亜鉛)が練り込まれたPE(ポリエチレン)からなり、芯鞘比が質量比で20/80~80/20のものを用いることができる。なお、芯鞘比は芯と鞘各々を構成する樹脂の質量比(芯/鞘)を示す。
金属酸化物抗菌剤6の粒径は、該金属酸化物抗菌剤が配合される繊維(金属酸化物抗菌剤配合繊維62)の太さや、該繊維への金属酸化物抗菌剤の練り込みやすさの観点から適宜設定される。一般に、金属酸化物抗菌剤の平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50で表して1.0μm以上7μm以下である。
金属酸化物抗菌剤6による皮膚トラブル防止効果が効率的かつ効果的に発揮される観点から、芯鞘型の金属酸化物抗菌剤配合繊維62に占める金属酸化物抗菌剤6の割合は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下であり、好ましくは0.05質量%以上2.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上2.0質量%以下である。
金属酸化物抗菌剤配合繊維に占める金属酸化物抗菌剤の割合の算出方法については後述する。
また、芯鞘型の金属酸化物抗菌剤配合繊維62において、金属酸化物抗菌剤6による皮膚トラブル防止効果がより効率的かつ効果的に発揮される観点から、鞘部のみに金属酸化物抗菌剤が含まれることが好ましい。芯鞘型の金属酸化物抗菌剤配合繊維62において、上記観点から、鞘部62Sを構成する樹脂に占める金属酸化物抗菌剤6の割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上5.0質量%以下、より好ましくは0.2質量%以上4.0質量%以下である。
上述したように、金属酸化物抗菌剤6が液状排泄物によって他の層へ移動し難くして、第2層において金属酸化物抗菌剤6と液状排泄物との効率的な接触を実現する観点から、金属酸化物抗菌剤6は水難溶性若しくは水不溶性であることが好ましい。言い換えると、金属酸化物抗菌剤6の水に対する溶解性(抗菌剤の溶解度)が小さいことが好ましい。
具体的には、金属酸化物抗菌剤の水100mlに対する溶解度は、後述する金属酸化物抗菌剤の溶解度の測定方法で、好ましくは0.01g以上0.5g以下、より好ましくは0.03g以上0.3g以下、更に好ましくは0.05g以上0.2g以下である。
<金属酸化物抗菌剤非配合繊維例>
上述の第1~第3実施形態の表面材10、20及び30において、いずれも、粗領域51である第1層は、金属酸化物抗菌剤が配合されていない金属酸化物抗菌剤非配合繊維61から構成される。
金属酸化物抗菌剤非配合繊維61は、例えば、1種類の合成樹脂(熱可塑性樹脂)又は2種類以上の合成樹脂を混合したブレンドポリマーからなる単一繊維でもよく、あるいは複合繊維でもよい。
金属酸化物抗菌剤非配合繊維61は、例えば、芯部はPET(ポリエチレンテレフタレート)やPP(ポリプロピレン)、鞘部はPE(ポリエチレン)からなり、芯鞘比が質量比で20/80~80/20の芯鞘型複合繊維である。
<繊維間距離の一例>
以下、粗領域51及び密領域52における繊維間距離の具体的な数値をあげるが、これらは一例であり、これらに限定されない。
上述の各実施形態の表面材において、効率よく密領域52に液が引き込まれるようにする観点から、粗領域51における繊維間距離と密領域52における繊維間距離との差分は、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上である。
粗領域51における繊維間距離は、好ましくは80μm以上、より好ましくは100μm以上であり、好ましくは190μm以下、より好ましくは170μm以下であり、好ましくは80μm以上190μm以下、より好ましくは100μm以上170μm以下である。
密領域52における繊維間距離の値は、好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上であり、好ましくは90μm以下、より好ましくは70μm以下であり、好ましくは30μm以上90μm以下、より好ましくは50μm以上70μm以下である。
<表面材全体に占める金属酸化物抗菌剤配合繊維の割合>
上述の各実施形態において、金属酸化物抗菌剤6による皮膚トラブル防止効果が効率的かつ効果的に発揮される観点から、表面材全体に占める金属酸化物抗菌剤配合繊維の割合は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下であり、好ましくは30質量%以上80質量%以下、より好ましくは35質量%以上75質量%以下である。
<表面材全体に占める金属酸化物抗菌剤の割合>
上述の各実施形態において、金属酸化物抗菌剤6による皮膚トラブル防止効果が効率的かつ効果的に発揮される観点から、表面材全体に占める金属酸化物抗菌剤の割合は、好ましくは0.015質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上であり、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.6質量%以下であり、好ましくは0.015質量%以上2.0質量%以下、より好ましくは0.03質量%以上1.6質量%以下である。
表面材全体に占める金属酸化物抗菌剤の割合の算出方法については後述する。
<繊維径>
上述の各実施形態において、密領域を構成する金属酸化物抗菌剤配合繊維の径及び粗領域を構成する金属酸化物抗菌剤非配合繊維の径は、同じであってもよいし、異なってもよい。
繊維径がより細い繊維を用いることにより、繊維間距離をより小さくし密領域とすることができる。例えば、第2層を構成する金属酸化物抗菌剤配合繊維62の繊維径を、第1層を構成する金属酸化物抗菌剤非配合繊維61の繊維径よりも小さくすることで、第1層と第2層それぞれの繊維間距離を調整することができ、第1層を粗領域51、第2層を密領域52とすることができる。
このように、各層に用いる繊維径を異ならせることによって、表面材における繊維の粗密関係を調整することができる。
一例として、粗領域51を構成する金属酸化物抗菌剤非配合繊維61の繊維径を25μmとし、密領域52を構成する金属酸化物抗菌剤配合繊維62の繊維径を15μmとすることができる。
<表面材の製造方法例>
以下、上記各実施形態の表面材の製造方法例をあげるが、これに限定されない。
[表面材10及び20の製造方法]
肌側面及び非肌側面のいずれもが平坦面の、第1実施形態の表面材10及び第2実施形態の表面材20は、例えば次のように製造することができる。
カード法などの公知の方法により製造した、金属酸化物抗菌剤非配合繊維(第1繊維61)からなる繊維ウエブと、金属酸化物抗菌剤配合繊維(第2繊維62)からなる繊維ウエブとを積層し、この積層体を例えば公知のエアスルー加工等を利用して加熱処理する。斯かる加熱処理により、各繊維ウエブに含まれる繊維と繊維との交点が溶融、融着することで繊維間が結合され、不織布(表面材10及び20)が製造される。
[表面材30の製造方法]
肌側面が凹凸面、非肌側面が平坦面の、第3実施形態の表面材30は、金属酸化物抗菌剤非配合繊維61からなる不織布と、金属酸化物抗菌剤配合繊維62からなる不織布を重ね合わせ、これら不織布を部分的に接合することによって製造することができる。
製造方法の一例として、特開2004-174234号公報に記載される製造方法を用いることができる。
すなわち、相互に噛み合う2つの、周面に凹凸形状を有するギアロール間に、第1層31となる不織布のシート状物を噛みこませることによって、当該シート状物が間欠的に延伸され、凹凸賦形加工がなされる。このように凹凸加工されたシート状物において、延伸された部分は凸部33を構成する。一方、延伸されない部分が、表面材30としたときに、凹部34の一部を構成する。このように複数の凸部33が形成された第1層31となるシート状物を、第2層32となるシート状物に重ね合わせ、その重ね合わせたものを、少なくとも一方が所定温度に加熱された2つのロール間で狭圧し、部分的に接合する。これにより、第1層31と第2層32とは、圧密化して凹部34で熱融着によって部分的に接合され、全面に一様に凹凸構造を有する表面材30が製造される。該表面材30における第1層31側の面(肌側面30a)は凹凸を有し、表面材10の第2層32側の面(非肌側面30b)はほぼ平坦である。
<補足説明>
[繊維間距離の測定方法]
繊維集合体である不織布の繊維間距離は、Wrotonowskiの仮定に基づく下記式(1)により求められる。下記式(1)は、一般に、繊維集合体の繊維間距離を求める際に用いられる。Wrontnowskiの仮定の下では、繊維は円柱状であり、それぞれの繊維は交わることなく規則正しく並んでいる。
測定対象の表面材は、粗領域を構成する第1層と、密領域を構成する第2層と、を含む多層構造である。粗領域及び密領域それぞれにおける繊維間距離を、下記式(1)により算出する。表面材に圧搾加工や賦形加工等の二次加工が施されている場合、測定対象として、上記二次加工によって加圧されていない部位を用いる。
算出の際、下記式(1)で用いる厚みt、坪量W、繊維の樹脂密度ρ及び繊維径Dは、それぞれ、測定対象の粗領域(第1層)及び密領域(第2層)それぞれについてのものを用いる。厚みt、坪量W及び繊維径Dは、それぞれ、複数の測定点における測定値の平均値である。
厚みt(mm)は以下の方法にて測定する。まず、測定対象の表面材をX方向50mm×Y方向50mmに切断し該表面材の切断片を作製する。次に、この切断片を平板上に載せ、その上に平板上のガラス板を載せ、ガラス板を含めた荷重が49Paになるようにガラス板上に重りを均等に載せた上で、該切断片の厚みを測定する。測定環境は温度20±2℃、相対湿度65±5%、測定機器にはマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX-1000)を用いる。切断片の厚みの測定は、まず、該切断片の切断面の拡大写真を得る。この拡大写真には、既知の寸法のものを同時に写し込む。次に、前記切断片の切断面の拡大写真にスケールを合わせ、該切断片における粗領域及び密領域の各厚みを測定する。以上の操作を3回行い、3回の平均値を、測定対象の層の厚みtとする。
上記切断片の切断面において、粗領域と密領域とは以下の方法により区別される。粗領域は、密領域よりも構成繊維の密度が低い(繊維間距離が大きい)ので、上記切断片の切断面において、繊維間距離が相対的に大きい領域が粗領域であり、相対的に小さい領域が密領域である。これら2領域は、肉眼でも識別可能である。
坪量W(g/m)は、測定対象の表面材における粗領域及び密領域それぞれを所定の大きさ(例えば12cm×6cmなど)にカットし、質量測定後に、その質量測定値を、該所定の大きさから求まる面積で除することで求められる(「坪量W(g/m)=質量÷所定の大きさから求められる面積」)。この測定を4回繰り返し、その平均値を坪量とする。
繊維の樹脂密度ρ(g/cm)は、密度勾配管を使用して、JIS L1015化学繊維ステープル試験方法に記載の密度勾配菅法の測定方法に準じて測定する(URLはhttp://kikakurui.com/l/L1015-2010-01.html、書籍ならJISハンドブック繊維―2000、(日本規格協会)のp.764~p.765に記載)。
繊維径D(μm)は、日立製作所株式会社製S-4000型電界放射型走査電子顕微鏡を用いて、粗領域及び密領域それぞれから採取した繊維の繊維断面を10本測定し、その平均値を繊維径D(μm)とする。繊維径Dの測定方法は後述する[繊維径の測定方法]に従う。
Figure 0007500821000001
[繊維径の測定方法]
測定対象の表面材を剃刀(例えばフェザー安全剃刀株式会社製片刃)で切断し、平面視四角形形状(8mm×4mm)の測定片を得る。この測定対象の切断の際には、その切断によって形成される測定片の切断面の構造が、切断時の圧力などによって破壊されないように注意する。好ましい測定対象の切断方法として、測定対象の切断に先立って、測定対象を液体窒素中に入れて十分に凍結させ、しかる後切断する方法が挙げられる。
紙両面テープ(ニチバン株式会社製内スタックNW-15)を用いて、測定片を試料台に貼り付ける。次いで測定片を白金コーティングする。コーティングには日立那珂精器株式会社製イオンスパッタ装置E-1030型(商品名)を用い、スパッタ時間は30秒とする。
測定片の切断面を、日立製作所株式会社製S-4000型電界放射型操作電子顕微鏡を用いて倍率1000倍で観察する。
表面材は、粗領域と密領域を有するので、電子顕微鏡像より、繊維どうしの繊維間距離の違いから粗領域及び密領域の境界を判別し、各層(粗領域又は密領域)に存する繊維それぞれについて、繊維の長手方向に対する幅方向の長さを10本測定し、その平均値を繊維径とする。
尚、第3実施形態の表面材30のように、凹部34を備える場合は、凹部34を除く領域を用いて任意の繊維の径を計測する。
表面材の切断面観測から、繊維の断面輪郭の他、例えば芯鞘型繊維であるか、単繊維構造であるかといった繊維構造を把握することができる。
更に、芯鞘型繊維である場合、切断面観測により、芯部及び鞘部それぞれの面積比率を算出することができる。また、切断面観測により、繊維中の金属酸化物抗菌剤の存在を確認することができ、更に鞘部にのみ金属酸化物抗菌剤が配されていることを確認することができる。
また、表面材の切断面観測から相対的に繊維間距離が大きいか小さいかを把握することができ、表面材における粗密状態を把握することができる。従って、表面材の切断面観測から密領域のみに金属酸化物抗菌剤が存在することを確認できる。
また、繊維断面をSEM-EDX分析することで、鞘部に含まれる剤が酸化亜鉛(金属酸化物抗菌剤)であることを確認することができる。
[金属酸化物抗菌剤配合繊維に占める金属酸化物抗菌剤の割合の算出方法]
密領域(第2層)が金属酸化物抗菌剤配合繊維のみから構成される場合、金属酸化物抗菌剤配合繊維に占める金属酸化物抗菌剤の割合は、次のように算出することができる。
表面材の第2層(密領域)を1gはかり取る。なお、1gを切り取ることが難しい場合は、任意の大きさに切り取ってその質量を測定し、以下、試薬等を当該質量に応じた量に変更して行う。
切断片をできるだけ小さく切り刻んで300mlビーカーに入れ、更に該ビーカーにイオン交換水200mlを入れてマグネティックスターラーで攪拌し、繊維が完全に水と触れるようにする。液を撹拌しながら濃塩酸(約10M)3mlを少しずつ加え、更に1時間撹拌し、第2層を構成する繊維の表面に存在する金属酸化物抗菌剤を溶出させる。次いで、5.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を6ml加えて液を中和させた後、pH10.7の緩衝液(28質量%・NH水溶液54.7mlと0.535gのNHClとを含み、イオン交換水で溶解させたもの)10mlを加えてpHの微調整を行う。
続いて、エリオクロムブラックT試薬(エリオクロムブラックT粉末0.125gと塩酸ヒドロキシルアミン1.125gを無水エタノール25mlに溶解させたもの)を指示薬として加え、液を淡いピンク色とする。0.0002MのEDTA・2Naを滴定液として用いて滴定を行い液がピンク色から淡い青~緑に変色したときの該滴定液の添加量(ml)を滴定値Aとする。そして、以下の式により金属酸化物抗菌剤の質量を算出する。下記式中の「5000000」は、1mоl当たりの滴定液の体積(ml)を意味する。
金属酸化物抗菌剤の質量(g)=滴定値A×金属酸化物抗菌剤1mоl当たりの質量/5000000
以上のようにして算出された金属酸化物抗菌剤の質量は、1gの第2層(密領域)、すなわち1gの金属酸化物抗菌剤配合繊維に含まれる金属酸化物抗菌剤の配合量(単位質量当たりの配合量)となる。したがって、算出された金属酸化物抗菌剤の質量を100倍した値が金属酸化物抗菌剤配合繊維に占める金属酸化物抗菌剤の割合となる。
尚、後述するように、密領域52を構成する第2層は、少なくとも金属酸化物抗菌剤配合繊維を含んでいればよく、金属酸化物抗菌剤が配合されていない金属酸化物抗菌剤非配合繊維が含まれていてもよい。
[表面材全体に占める金属酸化物抗菌剤の割合の算出方法]
表面材全体に占める金属酸化物抗菌剤の割合は、試料の切り出し方以外は、上述した金属酸化物抗菌剤配合繊維に占める金属酸化物抗菌剤の割合の算出方法と同様の手法で測定することができる。
試料として表面材から1gの切片を切り出す。切片は、第1層(粗領域)及び第2層(密領域)の両方が含まれるように切り出す。
次に、前記試料において、上述した金属酸化物抗菌剤配合繊維に占める金属酸化物抗菌剤の割合の算出方法と同様の手法で金属酸化物抗菌剤の質量を測定する。このようにして算出された金属酸化物抗菌剤の質量は、1gの表面材に含まれる金属酸化物抗菌剤の質量である。したがって、算出された金属酸化物抗菌剤の質量を100倍した値が、表面材全体に占める金属酸化物抗菌剤の割合となる。
[金属酸化物抗菌剤の溶解度の測定方法]
金属酸化物抗菌剤5gを100mlの水に加えて、室温(25℃)にて300rpmで30分間攪拌する。これとは別に、ろ紙の質量を測定し、測定された質量をろ紙の初期質量とする。
質量測定したろ紙を用いて、攪拌後の溶液をろ過し、該ろ紙を乾燥機にて40℃、2時間乾燥させる。乾燥後のろ紙の質量を測定し、測定された質量をろ紙の乾燥後質量とする。そして、下記式により溶解度を算出する。
溶解度(g)=5(g)―{(ろ紙の乾燥後質量)(g)-(ろ紙の初期質量)(g)}
このようにして算出した溶解度が大きいほど、水に対する溶解性が大きいことを表し、該溶解度が小さいほど、水に対する溶解性が小さいことを表す。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、以上の実施形態では、吸収性物品として使い捨ておむつの例を示したが、これに限定されない。本発明の吸収性物品は、例えば、尿取りパットやおりものシート、生理用ナプキン等であってもよく、これら吸収性物品の表面材として本発明の表面材を用いることができる。吸収性物品は、一般に、液透過性の表面材、液不透過性の裏面材、及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を有して構成される。
また、例えば、上述の第1実施形態の表面材10(第2実施形態の表面材20)は、繊維間距離密度が互いに異なる第1層11(21)と第2層12(22)とが積層された平坦なシート材である例をあげたが、積層された第1層と第2層の双方が凹凸賦形加工されて、肌側面及び非肌側面の両面が凹凸形状を有する表面材であってもよい。このような表面材では、非肌側面は肌側面と相補形状になる。具体的には、肌側面において凸部が設けられている位置に対応する非肌側面の位置には、肌側面に向かって凹陥した凹部が設けられる。肌側面において凹部が設けられている位置に対応する非肌側面の位置には、肌側面側に向かって突出した凸部が設けられる。
また、例えば、上述の各実施形態において、密領域52を構成する第2層が金属酸化物抗菌剤配合繊維のみから構成される例をあげたが、これに限定されない。密領域52を構成する第2層は、少なくとも金属酸化物抗菌剤配合繊維を含んでいればよく、金属酸化物抗菌剤が配合されていない金属酸化物抗菌剤非配合繊維を含んでいてもよい。
また、例えば芯鞘型からなる金属酸化物抗菌剤配合繊維において、鞘部に金属酸化物抗菌剤が練り込まれるのに加え、例えば芯部に酸化チタン等の光散乱物質が練り込まれていてもよい。これにより、吸収後の液状排泄物(尿、軟便、血液等)による汚れが肌側表面から見えにくい(隠蔽性が高い)表面材とすることができる。
また、各実施形態において粗領域と密領域について説明したが、表面材は、繊維間距離が互いに異なる領域が三つ以上存在してもよい。
例えば、繊維間距離が相対的に小さい第1層と、繊維間距離が相対的に大きい第3層と、繊維間距離が第1層よりも大きいが第3層よりは小さい第2層とが、第1層、第2層、第3層の順に積層されて表面材が構成されていてもよい。第1層は最も繊維が密であり、第3層が最も繊維が粗であり、第2層は第1層と第3層の中間である。例えば、表面材が、非肌側から肌側に向かって第1層、第2層、第3層が順に積層された構成を有してもよいし、第3層、第2層、第1層が順に積層された構成を有してもよく、厚み方向に繊維間距離の大小にグラデーションがあるような構成としてもよい。
このような厚み方向に繊維間距離の大小にグラデーションがある場合、第1層を密領域とし、それ以外の第2層及び第3層を粗領域として、密領域が粗領域よりも多くの金属酸化物抗菌剤が存在するように構成してもよい。
例えば、繊維間距離が小さいほど、金属酸化物抗菌剤の配合量が多くなるようにしてもよい。つまり、第1層は第2層及び第3層よりも多く金属酸化物抗菌剤を含み、第2層は第3層よりも多く金属酸化物抗菌剤を含んでもよい。
或いは、第1層及び第2層のみが金属酸化物抗菌剤を含み、第3層は金属酸化物抗菌剤を含まず、第1層が第2層よりも多く金属酸化物抗菌剤を含んでいてもよい。
或いは、第1層のみが金属酸化物抗菌剤を含み、第2層及び第3層は金属酸化物抗菌剤を含まなくてもよい。
また、上述の各実施形態において、金属酸化物抗菌剤配合繊維に金属酸化物抗菌剤以外の界面活性剤・有機化合物などの抗菌剤が含まれていてもよい。
また、金属酸化物抗菌剤配合繊維にスキンケア剤が含まれていてもよい。
スキンケア剤としては、疎水性スキンケア剤、親水性スキンケア剤等を用いることができる。
疎水性スキンケア剤とは、水溶性及び水分散性を有さないか、また極めて溶解性が低い疎水性成分のことであり、且つ着用者の肌に対して保護、治癒等の効能を有する組成物又は化合物のことである。より具体的には、疎水性成分とは、成分の剤10gをイオン交換水1L中で混合した後に24時間静置したときの溶解量が1g未満のものを言い、好ましくは、0.1g以下の溶解量のものであり、特に好ましくは完全に溶解しないものである。
疎水性スキンケア剤としては、炭素鎖長12~28の脂肪酸又は該脂肪酸とグリセリンのエステル化合物や、ワックス、ワセリン等が挙げられ、特に、炭素差長12~28の不飽和脂肪酸又は該不飽和脂肪酸のグリセリンエステル化合物を含むことが好ましい。当該グリセリンエステルは、グリセリンと前述の不飽和脂肪酸のモノエステル、ジエステル又はトリエステルであるが、特に、トリエステルであることが好ましい。脂肪酸又は脂肪酸化合物を含む剤としては、アルガンオイル、シアバター等の天然物抽出成分が好ましく使用できる。特に、不飽和脂肪酸を含む疎水性の植物油であるアルガンオイルは、肌の水分と油分のバランスを保ち乾燥を防ぎ、スキンケア剤として機能する。また、アルガンオイルは、オレイン酸、リノール酸といった不飽和脂肪酸を多くふくみ、活性酸素除去力が強く、例えば日焼けによる肌のダメージを軽減させることができる。
一方、親水性スキンケア剤とは、水溶性又は水分散性を有する親水性成分のことであり、かぶれや炎症の発生を抑制し、かぶれや炎症が生じた場合には、当該かぶれや炎症の進行を抑制するか、又は当該かぶれや炎症を緩和させることができるものであることが好ましい。より具体的には、親水性成分とは、成分の剤10gをイオン交換水1L中で混合した後に24時間静置したときの溶解量又は分散量が1g以上のものを言い、好ましくは、5g以上の溶解量又は分散量のものであり、より好ましくは、1g以上溶解するもの、一層好ましくは5g以上溶解するもので、最も好ましいのは、完全に溶解するものである。
親水性スキンケア剤としては、桃の葉エキス、ハマメリスエキス等の天然物抽出成分や炭鎖数が2~4の多価アルコール、ポリエチレングリコール、スキンケア等の機能を有する親水性化合物等を用いることができる。
これらの中でも、植物抽出エキスである桃の葉エキス(親水性エキス)は、抗菌作用、抗炎症作用を有することから好ましい。表面材に供給された液に親水性成分である桃の葉エキスがとけ、肌に移行することによりスキンケア効果が生じる。
炭鎖数が2~4の多価アルコールは、親水性成分であり、典型的には、1,3-ブチレングリコールである。1,3-ブチレングリコールを用いることにより、保湿効果と潤滑性が向上する。潤滑性が向上することにより、肌と不織布との摩擦を低減することができ、肌へのダメージが抑制される。1,3-ブチレングリコールは、保湿性のある液状の水溶性基剤成分で、さらっとした使用感でべたつきが少なく、肌の潤いを保つ。1,3-ブチレングリコールは、保湿剤として用いられる他、溶剤としても用いられる。例えば、桃の葉エキスをスキンケア剤として用いる場合、桃の葉エキスの溶剤として1,3-ブチレングリコールを用いることができる。尚、ここでは、1,3-ブチレングリコールを例にあげたが、炭鎖数が2~4の多価アルコールであれば同様の効果を示し、例えばプロピレングリコールを用いてもよい。プロピレングリコールも桃の葉エキス(親水性エキス)の抽出溶媒として用いることができる。
また、例えば、上述の第3の実施形態の表面材30においては、凸部33が中空構造である例をあげたが、中実構造であってもよい。
本発明は以下の構成をとることもできる。
<1>
吸収性物品の表面材であって、
繊維間距離が相対的に小さい密領域と、繊維間距離が前記密領域よりも大きい粗領域と、を有し、
前記密領域には前記粗領域よりも多くの金属酸化物抗菌剤が存在し、
前記密領域は、前記金属酸化物抗菌剤を含有する金属酸化物抗菌剤配合繊維を含む
吸収性物品の表面材。
<2>
前記金属酸化物抗菌剤繊維は、前記金属酸化物抗菌剤が繊維に練りこまれたものである、
前記<1>に記載の吸収性物品の表面材。
<3>
前記粗領域における繊維間距離と前記密領域における繊維間距離の差分が、20μm以上、好ましくは30μm以上である
前記<1>又は<2>に記載の吸収性物品の表面材。
<4>
前記粗領域における繊維間距離が80μm以上190μm以下、好ましくは100μm以上170μm以下である
前記<1>から<3>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<5>
前記密領域における繊維間距離が30μm以上90μm以下、好ましくは50μm以上70μm以下である
前記<1>から<4>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<6>
前記金属酸化物抗菌剤配合繊維は、芯部と鞘部とを有する芯鞘型繊維であり、前記鞘部にのみ前記金属酸化物抗菌剤が配合され、前記金属酸化物抗菌剤配合繊維維の表面に前記金属酸化物抗菌剤が露出している
前記<1>に記載の吸収性物品の表面材。
<7>
前記芯鞘型繊維に占める前記金属酸化物抗菌剤の割合は、0.05質量%以上2.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以上2.0質量%以下である
前記<6>に記載の吸収性物品の表面材。
<8>
前記鞘部を構成する樹脂に占める金属酸化物抗菌剤の割合は、0.1質量%以上5.0質量%以下、好ましくは0.2質量%以上4.0質量%以下である
前記<6>又は<7>に記載の吸収性物品の表面材。
<9>
前記金属酸化物抗菌剤は酸化亜鉛である
前記<1>から<8>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<10>
前記金属酸化物抗菌剤の水100mlに対する溶解度は、0.01g以上0.5g以下、好ましくは0.03g以上0.3g以下、より好ましくは0.05g以上0.2g以下である
前記<1>から<9>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<11>
前記表面材全体に占める前記金属酸化物抗菌剤配合繊維の割合は、30質量%以上80質量%以下である。
前記<1>から<10>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<12>
前記表面材全体に占める前記金属酸化物抗菌剤の割合は、0.015質量%以上2.0質量%以下、好ましくは0.03質量%以上1.6質量%以下である
前記<1>から<11>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<13>
前記密領域を構成する繊維は、前記粗領域を構成する繊維よりも、繊維径が小さい
前記<1>から<12>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<14>
肌側面と非肌側面を有し、
前記肌側面は前記密領域により構成される
前記<1>から<13>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<15>
肌側面と非肌側面とを有し、
前記非肌側面は前記密領域により構成される
前記<1>から<13>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<16>
前記粗領域を構成する第1層と、前記密領域を構成する第2層と、を含む
前記<1>から<15>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<17>
肌側面と非肌側面とを有し、
前記肌側面を構成する前記粗領域を構成する第1層と、前記第1層よりも非肌側に位置する前記密領域を構成する第2層と、を含み、
前記第1層と前記第2層とが部分的に圧密化されて構成された複数の凹部と、複数の前記凹部間に位置し前記第1層が突出した部分を有する複数の凸部と、を有する
前記<1>から<13>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<18>
厚み方向で重なる前記密領域と前記粗領域とが厚み方向で圧密化された部位を部分的に含む
前記<1>から<17>のいずれか1に記載の吸収性物品の表面材。
<19>
吸収体と、
前記吸収体の肌側面側に位置する、前記<1>から<18>のいずれか1に記載の表面材と
を備える吸収性物品。
1…使い捨ておむつ(吸収性物品)
6…金属酸化物抗菌剤
10、20、30…表面材(吸収性物品の表面材)
51…粗領域
52…密領域
62…第2繊維、金属酸化物抗菌剤配合繊維

Claims (11)

  1. 肌側面と非肌側面を有する、吸収性物品の表面材であって、
    繊維間距離が相対的に小さい密領域と、繊維間距離が前記密領域よりも大きい粗領域と、を有し、
    前記密領域には前記粗領域よりも多くの金属酸化物抗菌剤が存在し、
    前記密領域は、前記金属酸化物抗菌剤を含有する繊維である金属酸化物抗菌剤配合繊維を含み、
    前記肌側面は前記密領域により構成され、
    前記金属酸化物抗菌剤は酸化亜鉛である
    吸収性物品の表面材。
  2. 前記金属酸化物抗菌剤配合繊維は、前記金属酸化物抗菌剤が繊維に練りこまれたものである
    請求項1に記載の吸収性物品の表面材。
  3. 前記金属酸化物抗菌剤配合繊維は、芯部と鞘部とを有する芯鞘型繊維であり、前記鞘部にのみ前記金属酸化物抗菌剤が配合され、前記金属酸化物抗菌剤配合繊維の表面に前記金属酸化物抗菌剤が露出している
    請求項1又は2に記載の吸収性物品の表面材。
  4. 前記芯鞘型繊維に占める前記金属酸化物抗菌剤の割合は、0.05質量%以上2.5質量%以下である
    請求項3に記載の吸収性物品の表面材。
  5. 前記表面材全体に占める前記金属酸化物抗菌剤配合繊維の割合は、30質量%以上80質量%以下である
    請求項1又は2に記載の吸収性物品の表面材。
  6. 前記表面材全体に占める前記金属酸化物抗菌剤の割合は、0.015質量%以上2.0質量%以下である
    請求項1又は2に記載の吸収性物品の表面材。
  7. 前記密領域を構成する繊維は、前記粗領域を構成する繊維よりも、繊維径が小さい
    請求項1又は2に記載の吸収性物品の表面材。
  8. 前記粗領域を構成する第1層と、前記密領域を構成する第2層と、を含む
    請求項1又は2に記載の吸収性物品の表面材。
  9. 前記第1層には前記金属酸化物抗菌剤が含まれない
    請求項8に記載の吸収性物品の表面材。
  10. 厚み方向で重なる前記密領域と前記粗領域とが厚み方向で圧密化された部位を部分的に含む
    請求項1又は2のいずれか1項に記載の吸収性物品の表面材。
  11. 吸収体と、
    前記吸収体の肌側面側に位置する、請求項1又は2に記載の表面材と
    を備える吸収性物品。
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