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JP7583537B2 - 熱膨張性マイクロカプセル、成形用樹脂組成物及び発泡成形体 - Google Patents

熱膨張性マイクロカプセル、成形用樹脂組成物及び発泡成形体 Download PDF

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JP7583537B2 JP2020109798A JP2020109798A JP7583537B2 JP 7583537 B2 JP7583537 B2 JP 7583537B2 JP 2020109798 A JP2020109798 A JP 2020109798A JP 2020109798 A JP2020109798 A JP 2020109798A JP 7583537 B2 JP7583537 B2 JP 7583537B2
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本発明は、熱膨張性マイクロカプセル、該熱膨張性マイクロカプセルを用いた成形用樹脂組成物、及び、該成形用樹脂組成物を用いてなる発泡成形体に関する。
これまで、樹脂材料の軽量化や高機能化を目的として、発泡剤を用いて材料を発泡させることが行われており、このような発泡剤としては、熱膨張性マイクロカプセルや化学発泡剤が一般的に用いられている。
熱膨張性マイクロカプセルは、意匠性付与剤や軽量化剤として幅広い用途に使用されており、発泡インク、壁紙をはじめとした軽量化を目的とした塗料等にも利用されている。
このような熱膨張性マイクロカプセルとしては、熱可塑性シェルポリマーの中に、シェルポリマーの軟化点以下の温度でガス状になる揮発性膨張剤が内包されているものが広く知られている。例えば、特許文献1には、低沸点の脂肪族炭化水素等の揮発性膨張剤をモノマーと混合した油性混合液を、油溶性重合触媒とともに分散剤を含有する水系分散媒体中に攪拌しながら添加し懸濁重合を行うことにより、揮発性膨張剤を内包する熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法が開示されている。
しかしながら、この方法によって得られた熱膨張性マイクロカプセルは、80~130℃程度の比較的低温で熱膨張させることができるものの、高温又は長時間加熱すると、膨張したマイクロカプセルが破裂又は収縮してしまい発泡倍率が低下するため、耐熱性に優れた熱膨張性マイクロカプセルを得ることができないという欠点を有していた。
一方、特許文献2には、ニトリル系モノマー80~97重量%、非ニトリル系モノマー20~3重量%及び三官能性架橋剤0.1~1重量%を含有する重合成分から得られるポリマーをシェルとして用い、揮発性膨張剤を内包させた熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法が開示されている。
また、特許文献3には、ニトリル系モノマー80重量%以上、非ニトリル系モノマー20重量%以下及び架橋剤0.1~1重量%を含有する重合成分から得られるポリマーを用い、揮発性膨張剤を内包させた熱膨張性マイクロカプセルが記載されている。このような熱膨張性マイクロカプセルでは、非ニトリル系モノマーとして、メタクリル酸エステル類又はアクリル酸エステル類が用いられている。
これらの方法によって得られる熱膨張性マイクロカプセルは、従来のマイクロカプセルに比べ耐熱性に優れ、140℃以下では発泡しないとされている。しかしながら、実際には130~140℃で1分程度加熱を続けると一部のマイクロカプセルが熱膨張してしまうものであり、最大発泡温度が180℃以上の優れた耐熱性を有する熱膨張性マイクロカプセルを得ることは困難であった。
更に、特許文献4には、85重量%以上のニトリル基をもつエチレン性不飽和モノマーの単独重合体又は共重合体からなるシェルポリマーと50重量%以上のイソオクタンを有する発泡剤からなる熱膨張性マイクロカプセルが開示されている。このような熱膨張性マイクロカプセルでは、最大発泡温度を180℃以上とすることを目的としている。
しかしながら、実際には、最大発泡温度が非常に高い値となっているものの、成形時のせん断に弱く、その後の膨張した状態を維持することができず、高温領域における長時間の使用は困難であった。
加えて、特許文献5~9には、熱膨張性マイクロカプセルのシェルを構成するモノマーを規定することで、広範囲な発泡温度領域、特に高温領域(160℃以上)において良好な発泡性能を有し、耐熱性をより向上させた熱膨張性マイクロカプセルが開示されている。
特公昭42-26524号公報 特公平5-15499号公報 特許第2894990号 欧州特許出願第1149628号公報 国際公開2003/099955号 特開2009-113037号公報 特開2009-299071号公報 特開2013-32542号公報 特開2013-28818号公報
従来の熱膨張性マイクロカプセルは、最大発泡温度は高い値を示すものの、強い剪断力が加えられる混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等の成形加工での耐久性が問題となっている。特に射出成形に使用した場合、溶融混練工程において、熱膨張性マイクロカプセルの耐熱性や強度の問題から、いわゆる「へたり」と呼ばれる現象が生じたり、潰れてしまったりして、得られる成形体に黄変が生じる。
また、熱膨張性マイクロカプセルを発泡させる工程においては、発泡倍率が低く、発泡倍率にバラツキがあることによって、熱膨張性マイクロカプセルが充分に発泡せず、得られる成形体は、外観や、軽量性等の機能性の面で劣るものとなっている。
更に、熱膨張性マイクロカプセルの凝集に起因する白斑点が発泡成形体の表面に発生し、発泡成形体の外観を著しく損ねる。
このため、優れた耐熱性と発泡倍率を有し、黄変しにくく優れた外観を有する発泡成形体を作製することが可能な熱膨張性マイクロカプセルが必要とされている。
一方で、熱膨張性マイクロカプセルと化学発泡剤とを併用することで、成形品の外観不良を防止しつつ、発泡倍率の向上を実現させる試みが行われている。
しかしながら、このように併用した場合、発生したガスを系内に留めておくことができず、気泡が連続気泡となったり、ボイドやガス抜けが発生したりするといった問題がある。その結果、得られる発泡成形体の強度が低下するという問題が生じている。
本発明は、成形時の強いせん断に対して耐久性を発揮でき、耐熱性及び発泡倍率が高く、黄変しにくく優れた外観を有し、軽量かつ硬度が高く耐磨耗性に優れる成形体を製造することが可能な熱膨張性マイクロカプセルを提供することを目的とするものである。
また、本発明は、化学発泡剤を併用する場合におけるボイドやガス抜けの発生や、強度の低下という課題を克服した熱膨張性マイクロカプセルを提供することを目的とするものである。
更に、本発明は、多粒子の集合体とした際の流動性にも優れ、成形時にホッパー等から安定的に投入することが可能な熱膨張性マイクロカプセルを提供することを目的とするものである。
加えて、該熱膨張性マイクロカプセルを用いた成形用樹脂組成物及び発泡成形体を提供することを目的とするものである。
本発明は、シェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包されており、最大発泡温度が185℃以上の熱膨張性マイクロカプセルであり、前記シェルは、ニトリルポリマー単位35~45重量%と、α炭素が4級炭素となるカルボニル化合物のポリマー単位55~65重量%とを有する共重合体を含有する熱膨張性マイクロカプセルである。
以下、本発明を詳述する。
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを構成するシェルは、ニトリルポリマー単位と、α炭素が4級炭素となるカルボニル化合物のポリマー単位とを有する共重合体(以下、シェル構成共重合体ともいう)を含有する。
上記ニトリルポリマー単位を有することで、シェルのガスバリア性を向上させることができる。なお、ニトリルポリマー単位とは、ニトリル化合物による繰り返し単位を意味する。
また、上記α炭素が4級炭素となるカルボニル化合物のポリマー単位を有することで、シェルのガスバリア性を保持しつつ、耐熱性及び伸張粘度を上げ、発泡倍率向上させることができる。
上記シェル構成共重合体は、ニトリルポリマー単位を35~45重量%有する。上記範囲内とすることにより、強い剪断力が加えられる成形時のせん断に対して耐久性を保持することができる。
上記シェル構成共重合体におけるニトリルポリマー単位の含有量の好ましい下限は36重量%、好ましい上限は42重量%である。
上記ニトリル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の脂肪族不飽和ニトリルが挙げられる。なかでも、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましい。
上記シェル構成共重合体は、α炭素が4級炭素となるカルボニル化合物のポリマー単位55~65重量%有する。上記範囲内とすることにより、シェルのガスバリア性を保持しつつ、耐熱性及び伸張粘度を上げ、発泡倍率向上させることできる。また、化学発泡剤との相溶性も向上する。上記シェル構成共重合体におけるα炭素が4級炭素となるカルボニル化合物のポリマー単位の含有量の好ましい下限は58重量%、好ましい上限は63重量%である。
上記α炭素が4級炭素となるカルボニル化合物としては、上記炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸、炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸エステル、多官能性カルボン酸エステル等が挙げられる。なお、「α炭素が4級炭素となる」とは、重合後にα炭素が4級炭素となることを意味する。
上記炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸としては、例えば、カルボキシル基を分子当たり1個以上有するものを用いることができる。
なお、上記炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸には、その無水物も含まれる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸としては、メタクリル酸、エタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸が挙げられる。
これらのなかでは、特にメタクリル酸が好ましい。
上記α炭素が4級炭素となるカルボニル化合物が、炭素数3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸を含有する場合、上記シェル構成共重合体中における、上記炭素数3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸のポリマー単位含有量の好ましい下限は5重量%、好ましい上限は50重量%である。5重量%以上とすることで、最大発泡温度を高めることができ、50重量%以下とすることで、発泡倍率を向上させることが可能となる。好ましい下限は10重量%、好ましい上限は30重量%である。
上記炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸エステルが好ましい。特に、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル類、又は、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル等の脂環・芳香環・複素環含有メタクリル酸エステル類が好ましい。
上記多官能性カルボン酸エステルとは、ラジカル重合性二重結合を2つ以上有するカルボン酸エステルをいい、上記炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸エステルとは異なるものである。
上記多官能性カルボン酸エステルは、架橋剤としての役割を有する。上記多官能性カルボン酸エステルを含有することにより、シェルの強度を強化することができ、熱膨張時にセル壁が破泡し難くなる。
上記α炭素が4級炭素となるカルボニル化合物が、炭素数3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸エステルを含有する場合、上記シェル構成共重合体中における、上記炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸エステルのポリマー単位含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は25重量%である。上記炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸エステルのポリマー単位含有量を10重量%以上とすることで、熱膨張性マイクロカプセルを用いた組成物の分散性を向上させることができ、25重量%以下とすることで、セル壁のガスバリア性を向上させて、熱膨張性を改善することが可能となる。上記炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸エステルのポリマー単位含有量のより好ましい下限は15重量%、より好ましい上限は22重量%である。
上記多官能性カルボン酸エステルとしては、具体例には例えば、ジメタクリレート、3官能以上のメタクリレート等が挙げられる。
上記ジメタクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート等が挙げられる。また、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート等が挙げられる。更に、重量平均分子量が200~600であるポリエチレングリコールのジメタクリレートを用いてもよい。
上記3官能のメタクリレートとしては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリアリルホルマールトリメタクリレート等が挙げられる。また、上記4官能以上のメタクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。
これらのなかでは、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の3官能性のものや、ポリエチレングリコール等の2官能性のメタクリレートが、アクリロニトリルを主体としたシェルには比較的均一に架橋が施される。
上記α炭素が4級炭素となるカルボニル化合物が、多官能性カルボン酸エステルを含有する場合、上記シェル構成共重合体中における、上記多官能性カルボン酸エステルのポリマー単位含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は1.0重量%である。上記多官能性カルボン酸エステルのポリマー単位含有量を0.1重量%以上とすることで、架橋剤としての効果を充分に発揮することができ、上記多官能性カルボン酸エステルのポリマー単位含有量を1.0重量%以下とすることで、熱膨張性マイクロカプセルの発泡倍率を向上させることが可能となる。上記多官能性カルボン酸エステルのポリマー単位含有量のより好ましい下限は0.15重量%、より好ましい上限は0.9重量%である。
上記シェル構成共重合体において、ニトリルポリマー単位の含有量[I]と、α炭素が4級炭素となるカルボニル化合物のポリマー単位の含有量[II]との含有比([I]/[II])は、0.50~0.72であることが好ましい。上記範囲内とすることで、化学発泡剤由来のセルを均一化でき、発泡して比重が下がっても(軽量化しても)比較的高い硬度を保つことができる。上記含有比の好ましい下限は0.55、好ましい上限は0.70である。
上記シェル構成共重合体は、上記ニトリルポリマー単位、α炭素が4級炭素となるカルボニル化合物のポリマー単位以外に、その他のポリマー単位を含有していてもよい。
上記その他のポリマー単位としては、塩化ビニリデン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、スチレン系モノマー等のポリマー単位が挙げられる。
また、上記その他のポリマー単位としては、上記炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸、炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸エステル、多官能性カルボン酸エステルのうち、α炭素が4級炭素とはならないカルボニル化合物のポリマー単位を有していてもよい。
このようなα炭素が4級炭素とはならないカルボニル化合物としては、アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。
上記シェル構成共重合体の重量平均分子量は、好ましい下限は20万である。20万以上とすることで、シェルの強度を向上することが可能となる。本発明において、重量平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィにおいて、溶出液としてDMF、カラムとしてShodexLF-804二本連結を用いて、単分散ポリスチレン標準により測定することができる。なお、上記シェル構成共重合体が架橋している場合は、DMFを用いて可溶部を測定することで、重量平均分子量を求めることができる。
また、上記シェル構成共重合体は、重量平均分子量1000未満の重合体の濃度が、1重量%以下であることが好ましく、0.8重量%以下であることがより好ましい。上記重量平均分子量1000未満の重合体の濃度を1重量%以下とすることで、低分子量物質によるシェル強度の低下を防止することができる。重合平均分子量1000未満の濃度は、例えば0.1重量%以上である。なお、重量平均分子量1000未満の重合体は、例えば重量平均分子量が500以上である。また、重量平均分子量500未満の重合体の濃度は、0.5重量%以下であることが好ましい。
なお、上記シェル構成共重合体における重量平均分子量1000未満の重合体の濃度は、DMF可溶成分のポリスチレン基準の相対値によって算出することができる。
上記熱膨張性マイクロカプセルを構成するシェルは、ゲル化度が70%以上であることが好ましい。
上記ゲル化度が70%以上であることで、成形時のせん断に対して耐性を保持することができる。上記ゲル化度は72~90%であることがより好ましい。
なお、上記ゲル化度は、DMF膨潤法(溶媒としてN,N-ジメチルフォルムアミドを用いること以外はASTM D2765に準拠した方法)により測定することができる。
上記シェルは、更に必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シランカップリング剤、色剤等を含有していてもよい。
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、上記シェルにコア剤として揮発性膨張剤が内包されている。上記揮発性膨張剤は、シェルを構成するポリマーの軟化点以下の温度でガス状になる物質であり、低沸点有機溶剤が好適である。
上記コア剤としては、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n-ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n-へキサン、ヘプタン、石油エーテル、クロロフルオロカーボン、テトラアルキルシラン等が挙げられる。上記クロロフルオロカーボンとしては、CClF、CCl、CClF、CClF-CClF等が挙げられる。上記テトラアルキルシランとしては、テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル-n-プロピルシラン等が挙げられる。なかでも、イソブタン、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-へキサン、及び、これらの混合物が好ましい。これらの揮発性膨張剤は、2種以上を併用してもよい。
また、炭素数が8以上の炭化水素としては、イソオクタン、オクタン、デカン、イソドデカン、ドデカン、ヘキサンデカン等が挙げられる。
これらの揮発性膨張剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、揮発性膨張剤として、加熱により熱分解してガス状となる熱分解型化合物を用いてもよい。
また、上記熱膨張性マイクロカプセルにおいて、コア剤の含有量は15~30重量%であることが好ましい。上記範囲内とすることで、成形時のせん断への耐久性に優れるとともに、発泡倍率を向上させることができる。上記コア剤の含有量のより好ましい下限は18重量%、好ましいより上限は24重量%である。
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、最大発泡温度(Tmax)の下限が185℃である。185℃以上とすることで、耐熱性を高めることができ、高温領域や成形加工時において、熱膨張性マイクロカプセルが破裂、収縮することを防止できる。また、マスターバッチペレット製造時に剪断により発泡してしまうことがなく、未発泡のマスターバッチペレットを安定して製造することができる。好ましい下限は185℃、より好ましい下限は190℃、更に好ましい下限は195℃、好ましい上限は240℃、より好ましい上限は230℃、更に好ましい上限は225℃である。
なお、本明細書において、最大発泡温度は、熱膨張性マイクロカプセルを常温から加熱しながらその径を測定したときに、熱膨張性マイクロカプセルの径が最大となったとき(最大変位量)における温度を意味する。
なお、本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、最大変位量(Dmax)の好ましい下限が300μm、好ましい上限が1000μmである。上記範囲内であると、適度な発泡倍率となり、所望の発泡性能が得られる。
また、発泡開始温度(Ts)の好ましい上限は170℃である。170℃以下とすることで、射出成形の場合、特に金型に樹脂材料をフル充填した後に金型を発泡させたいところまで開くコアバック発泡成形において、コアバック発泡過程で樹脂温度が冷えてしまい発泡倍率が上がらなくなることを防止できる。好ましい下限は120℃、より好ましい上限は150℃である。
本発明の熱膨張性マイクロカプセルの体積平均粒子径の好ましい下限は5μm、好ましい上限は100μmである。5μm未満であると、得られる成形体の気泡が小さすぎるため、成形体の軽量化が不充分となることがあり、100μmを超えると、得られる成形体の気泡が大きくなりすぎるため、強度等の面で問題となることがある。より好ましい下限は10μm、より好ましい上限は45μmである。
また、本発明の熱膨張性マイクロカプセルの体積平均粒子径のCV値の好ましい下限は20%、好ましい上限は40%である。
なお、上記体積平均粒子径及びCV値は、粒度分布径測定器(LA-950、HORIBA社製)等を用いて測定することができる。
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法としては特に限定されない。例えば、水性媒体を調製する工程、ニトリル化合物と、α炭素が4級炭素となるカルボニル化合物と、それ以外のモノマーとを含有するモノマー組成物と、揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程、及び、上記モノマーを重合させる工程を行うことにより製造することができる。
本発明の熱膨張性マイクロカプセルを製造する場合、最初に水性媒体を調製する工程を行う。具体例には例えば、重合反応容器に、水と分散安定剤、必要に応じて補助安定剤を加えることにより、分散安定剤を含有する水性分散媒体を調製する。また、必要に応じて、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、重クロム酸カリウム等を添加してもよい。
上記分散安定剤としては、例えば、シリカ、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
上記分散安定剤の添加量は特に限定されず、分散安定剤の種類、マイクロカプセルの粒子径等により適宜決定されるが、モノマー100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が20重量部である。
上記補助安定剤としては、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物、尿素とホルムアルデヒドとの縮合生成物が挙げられる。また、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ジオクチルスルホサクシネート、ソルビタンエステル、各種乳化剤等が挙げられる。
また、上記分散安定剤と補助安定剤との組み合わせとしては特に限定されず、例えば、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせ、コロイダルシリカと水溶性窒素含有化合物との組み合わせ、水酸化マグネシウム又はリン酸カルシウムと乳化剤との組み合わせ等が挙げられる。これらの中では、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせが好ましい。
更に、上記縮合生成物としては、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物が好ましく、特にジエタノールアミンとアジピン酸との縮合物やジエタノールアミンとイタコン酸との縮合生成物が好ましい。
上記水溶性窒素含有化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートやポリジメチルアミノエチルアクリレートに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。まら、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミドやポリジメチルアミノプロピルメタクリルアミドに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリカチオン性アクリルアミド、ポリアミンサルフォン、ポリアリルアミン等が挙げられる。これらのなかでは、ポリビニルピロリドンが好適に用いられる。
上記コロイダルシリカの添加量は、熱膨張性マイクロカプセルの粒子径により適宜決定されるが、油相100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が10重量部である。更に好ましい下限は2重量部、更に好ましい上限は5重量部である。また、上記縮合生成物又は水溶性窒素含有化合物の量についても熱膨張性マイクロカプセルの粒子径により適宜決定されるが、油相100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が1重量部である。
上記分散安定剤及び補助安定剤に加えて、更に塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を添加してもよい。無機塩を添加することで、より均一な粒子形状を有する熱膨張性マイクロカプセルを得ることができる。上記無機塩の添加量は、通常、モノマー100重量部に対して0~100重量部が好ましい。
上記分散安定剤を含有する水性分散媒体は、分散安定剤や補助安定剤を脱イオン水に配合して調製され、この際の水相のpHは、使用する分散安定剤や補助安定剤の種類によって適宜決められる。例えば、分散安定剤としてコロイダルシリカ等のシリカを使用する場合は、酸性媒体で重合がおこなわれ、水性媒体を酸性にするには、必要に応じて塩酸等の酸を加えて系のpHが3~4に調製される。一方、水酸化マグネシウム又はリン酸カルシウムを使用する場合は、アルカリ性媒体の中で重合させる。
次いで、熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法では、ニトリル化合物と、α炭素が4級炭素となるカルボニル化合物と、それ以外のモノマーとを含有するモノマー組成物と、揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程を行う。この工程では、モノマー組成物及び揮発性膨張剤を別々に水性分散媒体に添加して、水性分散媒体中で油性混合液を調製してもよいが、通常は、予め両者を混合し油性混合液としてから、水性分散媒体に添加する。この際、油性混合液と水性分散媒体とを予め別々の容器で調製しておき、別の容器で攪拌しながら混合することにより油性混合液を水性分散媒体に分散させた後、重合反応容器に添加しても良い。
なお、上記モノマーを重合するために、重合開始剤が使用されるが、上記重合開始剤は、予め上記油性混合液に添加してもよく、水性分散媒体と油性混合液とを重合反応容器内で攪拌混合した後に添加してもよい。
上記モノマー組成物中には、上記モノマーを重合させるため、重合開始剤を含有させる。
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アゾ化合物等が好適に用いられる。具体例には、例えば、メチルエチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの過酸化ジアルキル;イソブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの過酸化ジアシル;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、(α、α-ビス-ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどのパーオキシエステル;ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピル-オキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルエチルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;2、2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)などのアゾ化合物等が挙げられる。
本発明では、アクリロニトリルを優先的に重合させるために、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシピバレートあるいは2、2’-アゾビスイソブチロニトリルを用いることが好ましい。これにより、ポリメタクリロニトリルと比較して、高い可塑剤耐性を有するポリアクリロニトリルの比率を高めることが可能となる。
上記油性混合液を水性分散媒体中に所定の粒子径で乳化分散させる方法としては、ホモミキサー(例えば、特殊機化工業社製)等により攪拌する方法や、ラインミキサーやエレメント式静止型分散器等の静止型分散装置を通過させる方法等が挙げられる。
なお、上記静止型分散装置には水系分散媒体と重合性混合物を別々に供給してもよいし、予め混合、攪拌した分散液を供給してもよい。
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、上述した工程を経て得られた分散液を、例えば、加熱することによりモノマーを重合させる工程を行うことにより、製造することができる。このような方法により製造された熱膨張性マイクロカプセルは、最大発泡温度が高く、耐熱性に優れ、高温領域や成形加工時においても破裂、収縮することがない。また、耐熱性が高いので、マスターバッチペレット製造時に剪断によって発泡することが無く、未発泡のマスターバッチペレットを安定して製造することができる。
なお、本発明で規定するニトリルポリマー単位及びα炭素が4級炭素となるカルボニル化合物のポリマー単位の含有量、最大発泡温度は、上記モノマーを重合する工程における重合温度、重合圧力を調整することで所定の範囲内とすることができる。
上記重合温度は、50~90℃とすることが好ましい。なお、上記重合温度は重合時に一定温度としてもよく、複数回に分けて段階的に上昇させてもよい。
また、上記重合圧力は、窒素で加圧して0.5~1.0MPaであることが好ましい。なお、上記重合圧力とする際は、その前に窒素置換もしくは真空操作を行うことが好ましい。
マトリクス樹脂、本発明の熱膨張性マイクロカプセル及び化学発泡剤を含有する成形用樹脂組成物もまた本発明の1つである。
このような成形用樹脂組成物は、成形時の強いせん断に対して耐久性があり、発泡倍率が高く、黄変しにくい優れた外観を有する発泡成形体を作製することが可能となる。
また、このような成形用樹脂組成物は、化学発泡剤を併用する場合におけるボイドやガス抜けの発生や、強度の低下という課題を克服することができる。
上記マトリクス樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂等が挙げられる。なかでも、塩化ビニル樹脂が好ましい。
上記塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニル単独重合体のほか、塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーと塩化ビニルモノマーとの共重合体、重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等を用いることができる。これら重合体は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
上記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、α-オレフィン類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族ビニル類、ハロゲン化ビニルビニル類、N-置換マレイミド類等が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上が使用される。
上記α-オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられ、上記ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられ、上記ビニルエーテル類としては、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等が挙げられる。
また、上記(メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、フェニルメタクリレート等が挙げられ、上記芳香族ビニル類としては、スチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
更に、上記ハロゲン化ビニルビニル類としては、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等が挙げられ、上記N-置換マレイミド類としては、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる
なかでも、エチレン、酢酸ビニルが好ましい。
上記塩化ビニルをグラフト共重合する重合体としては、塩化ビニルをグラフト重合させるものであれば特に限定されない。このような重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート-一酸化炭素共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられる。また、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられ、これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されても良い。
また、上記塩化ビニルをアクリル樹脂エマルジョンゴムとグラフト共重合させても良い。
上記PVCの重合方法は、特に限定されず、従来公知の水懸濁重合、塊状重合、溶液重合、乳化重合等を用いることができる。
上記塩化ビニル樹脂の重合度は600~1200であることが好ましい。上記範囲内とすることで、流動性と製品強度の両方を満足する製品とすることができる。上記塩化ビニル樹脂の重合度のより好ましい下限は800、より好ましい上限は1000である。
本発明の成形用樹脂組成物において、上記マトリクス樹脂の含有量は、成形用樹脂組成物100質量部に対して、好ましい下限が40質量部、好ましい上限が60質量部である。この範囲でマトリクス樹脂を添加することにより、物性を維持しながら成形体の良好な外観を維持することができる。
上記マトリクス樹脂の含有量の好ましい下限は45質量部、好ましい上限は55質量部である。
本発明の成形用樹脂組成物は、マトリクス樹脂100重量部に対して、熱膨張性マイクロカプセルを0.1~1.5重量部含有し、化学発泡剤を0.5~3.0重量部含有することが好ましい。
上記化学発泡剤としては、常温で粉末状のものであれば特に限定されず、従来から化学発泡剤として汎用されているものを使用することができる。
上記化学発泡剤は、有機系発泡剤と無機系発泡剤に分類され、それぞれ更に熱分解型と反応型に分類される。
有機系の熱分解型発泡剤としては、ADCA(アゾジカーボンアミド)、DPT(N,N’-ジニトロペンタメチレンテトラミン)、OBSH(4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド)等が良く用いられる。
無機系の熱分解型発泡剤としては、炭酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩と有機酸塩の組み合せなどがある。上記化学発泡剤としては、熱分解型化学発泡剤を使用することが好ましい。また、熱分解型化学発泡剤の性能を決定するのは、分解温度,ガス発生量,粒子径である。
上記化学発泡剤の分解温度は180~200℃であることが好ましい。
上記分解温度は、必要に応じて尿素系や亜鉛系の発泡助剤などを組み合わせて使用することにより調整することができる。
上記化学発泡剤のガス発生量は、220~240ml/gであることが好ましい。なお、上記ガス発生量とは、化学発泡剤が分解する際に発生するガスの体積である。このガスが気泡内のガスになるため、発泡倍率に影響する。
更に、上記化学発泡剤と、クエン酸塩や酸化亜鉛と併用することで気泡径を小さくすることが可能である。
上記化学発泡剤は通常は粉末であり、粒子径が小さいほど単位重量当たりの粒子数が多くなる。粒子数が多いほど発生気泡数が多くなる傾向にある。
上記化学発泡剤の平均粒子径(メジアン径)の好ましい下限は4μm、好ましい上限は20μmである。上記範囲内とすることで、得られる成形体の気泡が適度なものとなり、充分な発泡倍率が得られ、外観の面でも優れたものとすることができる。より好ましい下限は5μm、より好ましい上限は10μmである。
本発明の成形用樹脂組成物において、熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径と、化学発泡剤の平均粒子径との比(熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径/化学発泡剤の平均粒子径)は1.0~7.5であることが好ましい。上記範囲内とすることで、化学発泡剤由来の気泡が成長する際に、熱膨張性マイクロカプセルが核剤となりやすい。
本発明の成形用樹脂組成物における、化学発泡剤含有量と、熱膨張性マイクロカプセルを構成する共重合体のα炭素が4級炭素となるカルボニル化合物のポリマー単位含有量との比率(化学発泡剤含有量/α炭素が4級炭素となるカルボニル化合物のポリマー単位含有量)は、1.0~4.5であることが好ましい。上記範囲内とすることで、化学発泡剤由来の気泡が成長する際に、熱膨張性マイクロカプセルが核剤となりやすく大きなボイド発生の抑制と均一なセルが生じやすくすることができる。上記比率のより好ましい上限は4.0、更に好ましい上限は3.5であり、より好ましい下限は1.5、更に好ましい下限は2.0、更により好ましい下限は2.5である。
本発明の成形用樹脂組成物は、可塑剤を含有することが好ましい。
上記可塑剤としては、例えば、ポリプロピレングリコール、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル類、アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル等が挙げられる。また、ペンタエリスリトールエステル等のグリコールエステル類、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤、塩素化パラフィン等が挙げられる。これらの可塑剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
本発明の成形用樹脂組成物における上記可塑剤の含有量は特に限定されないが、上記塩化ビニル樹脂100重量部に対する下限が60重量部、好ましい上限が80重量部である。上記可塑剤の含有量がこの範囲内であると、賦形性を発揮することができ、発泡成形体から可塑剤がブリードアウトすることもない。上記可塑剤の含有量の好ましい下限は65重量部、好ましい上限は75重量部である。
本発明の成形用樹脂組成物は、必要に応じて、滑剤、加工助剤、耐熱向上剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、充填剤、熱可塑性エラストマー、顔料などの添加剤を混合してもよい。
また、本発明の成形用樹脂組成物は、マスターバッチペレットとして使用してもよい。
上記マスターバッチペレットを製造する方法としては、特に限定されず、例えば、塩化ビニル樹脂等のマトリックス樹脂、各種添加剤等の原材料を、同方向2軸押出機等を用いて予め混練する。次いで、所定温度まで加熱し、本発明の成形用樹脂組成物を、ペレタイザーにて所望の大きさに切断することによりペレット形状にしてマスターバッチペレットとする方法等が挙げられる。
また、本発明の成形用樹脂組成物を造粒機で造粒することによりペレット形状のマスターバッチペレットを製造してもよい。
上記混練機としては、熱膨張性マイクロカプセルを破壊することなく混練できるものであれば特に限定されず、例えば、加圧ニーダー、バンバリーミキサー等が挙げられる。
本発明の成形用樹脂組成物を、公知の成形方法を用いて成形し、成形時の加熱により、上記熱膨張性マイクロカプセルを発泡させることにより、発泡成形体を製造することができる。このような発泡成形体もまた本発明の1つである。
このような方法で得られる本発明の発泡成形体は、高外観品質が得られ、独立気泡が均一に形成されており、軽量性、断熱性、耐衝撃性、剛性等に優れるものとなり、住宅用建材、自動車用部材、靴底等の用途に好適に用いることができる。
本発明の発泡成形体の成形方法としては、特に限定されず、例えば、混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等が挙げられる。射出成形の場合、工法は特に限定されず、金型に樹脂材料を一部入れて発泡させるショートショート法や金型に樹脂材料をフル充填した後に金型を発泡させたいところまで開くコアバック法等が挙げられる。
本発明の発泡成形体を製造する際は、本発明の熱膨張性マイクロカプセルに、化学発泡剤及び熱可塑性樹脂等のマトリクス樹脂を加えた成形用樹脂組成物を添加し、射出成形等の成形方法を用いて成形することが好ましい。また、上記成形用樹脂組成物は、本発明の熱膨張性マイクロカプセル及び化学発泡剤と熱可塑性樹脂等のベースレジンとを混合したマスターバッチペレットに熱可塑性樹脂等のマトリクス樹脂を加えて作製してもよい。
本発明の熱膨張性マイクロカプセル、成形用樹脂組成物及び発泡成形体は、例えば上記形態において、ドアトリム、インストルメントパネル(インパネ)等の自動車内装材や、バンパー等の自動車外装材、木粉プラスチック等の建材用途、靴底、人工コルク等で有利に用いることができる。
本発明によれば、成形時の強いせん断に対して耐久性を発揮でき、耐熱性及び発泡倍率が高く、黄変しにくく優れた外観を有し、軽量かつ硬度が高く耐磨耗性に優れる成形体を製造することが可能な熱膨張性マイクロカプセルとすることができる。また、化学発泡剤を併用する場合におけるボイドやガス抜けの発生や、強度の低下という課題を克服した熱膨張性マイクロカプセルが得られる。更に、多粒子の集合体とした際の流動性にも優れ、成形時にホッパー等から安定的に投入することが可能な熱膨張性マイクロカプセルとすることができる。
加えて、該熱膨張性マイクロカプセルを用いることで、上記の優れた性能を有する成形用樹脂組成物及び発泡成形体を得ることができる。
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
(熱膨張性マイクロカプセルの作製)
固形分20重量%のコロイダルシリカ187g、ポリビニルピロリドン2.3g、塩化ナトリウム630gをイオン交換水2,000gに加え混合した後、pH3.5に調整し水系分散媒体を調製した。
アクリロニトリル405g(43.33重量部)、メタクリロニトリル88.4g(9.46重量部)、メタクリル酸232.7g(24.90重量部)、メタクリル酸メチル204.8g(21.912重量部)、トリメチロールプロパントリメタクリレート3.7g(0.398重量部)を混合して均一溶液のモノマー組成物とした。これに2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)7.5g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)7.5g、ノルマルペンタン224.3g(24重量部)を添加してオートクレーブ中に仕込み混合した。
その後、水系分散媒体をオートクレーブ中に仕込み、10分間1,000rpmで攪拌後、窒素置換し、反応温度60℃で10時間反応後、80℃で2時間反応させた。反応圧力は0.5MPa、攪拌は200rpmで行った。得られた重合スラリーを脱水装置(セントル)で予備脱水した後に乾燥させて、熱膨張性マイクロカプセルを得た。
(実施例2~7、比較例1~6)
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、イソペンタン、ノルマルペンタン、イソオクタン、コロイダルシリカを表1に示す組成で混合し、モノマー組成物とした以外は実施例1と同様にして熱膨張性マイクロカプセルを得た。重合条件も表1に示す条件で行った。
(実施例8)
(成形用樹脂組成物、発泡成形体の作製)
塩化ビニル樹脂100重量部に、熱安定剤として錫系安定剤(ONZ142AF、三共有機合成社製)2.0重量部を添加して混合した。100℃に加温した後、可塑剤としてフタル酸ジオクチル72重量部を添加して100℃を維持した状態で混合した。その後70℃まで冷却し、実施例1で得られた熱膨張性マイクロカプセル0.94重量部及び化学発泡剤(ADCA、平均粒子径6μm)1.32重量部、発泡助剤(亜鉛化合物)2.0重量部を添加することで成形用樹脂組成物を得た。
得られた成形用樹脂組成物を二本ロールに温度95~105℃、回転数10rpmで巻き付き後、3分、6分練り、それぞれロール品を得た。
続いてロール品を150mm四方、厚み2mmの型に入れ、圧力2MPa、温度100℃で予熱3分後、1分プレスし、その後2分冷却し、プレス品を得た。
そのプレス品(150mm四方)を16等分し、180℃に設定した熱風オーブンに入れ、4分、6分間加熱して発泡成形体を得た。
(実施例9~14、比較例7~13)
熱膨張性マイクロカプセル、化学発泡剤を表2に示す組成に変更して混合した以外は実施例8と同様にして成形用樹脂組成物、発泡成形体を得た。
(評価方法)
得られた熱膨張性マイクロカプセル及び発泡成形体の性能を以下の方法で評価した。結果を表1及び2に示した。
(1)熱膨張性マイクロカプセルの評価
(1-1)シェル組成分析
得られた熱膨張性マイクロカプセルについて、固体NMRを用い、下記の条件でシェル成分の組成比を測定した。
<DD/MAS測定条件>
装置 : ECZ-400R(JEOL社製)
温度 : 室温
観測核 : 13C
観測周波数 : 100.5253MHz
プローブ : 8mmCPMASプローブ
基準物質 : アダマンタン(内部基準:28.46ppm)
パルス幅 : 6.5μsec
取り込み時間 : 50.93msec
パルス繰り返し時間: 60sec
マジック角回転数 : 7kHz
積算回数 : 1024回
測定モード : シングルパルス(DD/MAS)法
試料量 : 350mg
<CP/MAS測定条件>
装置 : ECZ-400R(JEOL社製)
温度 : 室温
観測核 : 13C
観測周波数 : 100.5253MHz
プローブ : 4mmCPMASプローブ
基準物質 : アダマンタン(内部基準:28.46ppm)
パルス幅 : 6.5μsec
取り込み時間 : 50.93msec
パルス繰り返し時間: 5sec
マジック角回転数 : 12kHz
積算回数 : 2048回
測定モード : 交差分極(CP/MAS)法、Dipolar Dephasing法
コンタクトタイム : 3msec
delaytime: 1.667msec
試料量 : 120mg
(1-2)体積平均粒子径
粒度分布径測定器(LA-950、HORIBA社製)を用い、体積平均粒子径及びCV値を測定した。
(1-3)発泡開始温度、最大発泡温度及び最大変位量
熱機械分析装置(TMA)(TMA2940、TA instruments社製)を用い、発泡開始温度(Ts)、最大発泡温度(Tmax)及び最大変位量(Dmax)を測定した。具体的には、試料25μgを直径7mm、深さ1mmのアルミ製容器に入れ、上から0.1Nの力を加えた状態で、5℃/minの昇温速度で80℃から250℃まで加熱し、測定端子の垂直方向における変位を測定し、変位が上がり始める温度を発泡開始温度とした。また、発泡倍率を測定し、発泡倍率が最大となる温度を最大発泡温度とした。
(1-4)コア剤含有量
熱膨張性マイクロカプセル0.05gを秤量[重量A]した。次いで、210℃に設定したオーブンに20分間投入し、加熱後、10分間、常温で放置して天秤にて秤量[重量B]した。得られた[重量A]及び[重量B]から、以下計算式でコア剤含有量を算出した。
コア剤含有量(重量%)=(1-(B/A))×100
(1-5)ゲル化度
溶媒として、N,N-ジメチルフォルムアミドを用いること以外はASTM D2765に準拠した方法でゲル化度を測定した。
(1-6)ホッパー流動性
JIS K7370記載の嵩比重測定用の容器を使用し、得られた熱膨張性マイクロカプセルをホッパーの上部まで投入し、その後、自重落下させホッパーが空になるとき(熱膨張性マイクロカプセルが全て落ちたときの)の秒数を測定した。
(1-7)重量平均分子量1000未満の重合体濃度測定
試料約10mgに溶媒(0.05M臭化リチウム添加ジメチルホルムアミド)5mlを加え、室温で緩やかに攪拌した。目視で不要物を確認した後、0.45μmフィルターを用いてろ過を実施した。得られた測定溶液について、以下の測定条件で分子量分布測定を行い、重量平均分子量1000未満の重合体濃度を測定した。
なお、上記シェル構成共重合体における重量平均分子量1000未満の重合体の濃度は、DMF可溶成分のポリスチレン基準の相対値によって算出した。
(測定条件)
・装置:ゲル浸透クロマトグラフGPC(JASCO)
・検出器:示差屈折率検出器RI(JASCO製RI-4030)
・カラム:ShodexLF-804 2本連結
・流速:0.8mL/min
・カラム温度:40℃
・注入量:0.200ml
・標準試料:東ソー製 単分散ポリスチレン
(2)発泡成形体の評価
(2-1)密度の測定
得られた成形体の密度をJIS K-7112 A法(水中置換法)に準拠した方法により測定した。
(2-2)黄色度(b*)
カラーコンピューター(CM-3600d、コニカミノルタジャパン製)を用いて成形品表面の黄色度を測定し、YI値を得た。
(2-3)A硬度
得られた発泡成形体のA硬度を、JIS K 6253に準拠した方法で測定した。
(2-4)磨耗量
アクロン磨耗試験法(JIS K 6264)に準拠した方法で、荷重26.5Nにて、1000回転当たりの磨耗した体積を測定した。
Figure 0007583537000001
Figure 0007583537000002
本発明によれば、成形時の強いせん断に対して耐久性を発揮でき、耐熱性及び発泡倍率が高く、黄変しにくく優れた外観を有し、軽量かつ硬度が高く耐磨耗性に優れる成形体を製造することが可能な熱膨張性マイクロカプセルを提供することができる。また、化学発泡剤を併用する場合におけるボイドやガス抜けの発生や、強度の低下という課題を克服した熱膨張性マイクロカプセルを提供することができる。更に、多粒子の集合体とした際の流動性にも優れ、成形時にホッパー等から安定的に投入することが可能な熱膨張性マイクロカプセルを提供することができる。
加えて、該熱膨張性マイクロカプセルを用いることで、上記の優れた性能を有する成形用樹脂組成物及び発泡成形体を提供することができる。

Claims (9)

  1. シェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包されており、最大発泡温度が190℃以上の熱膨張性マイクロカプセルであり、
    前記シェルは、ニトリルポリマー単位35~45重量%と、α炭素が4級炭素となるカルボニル化合物のポリマー単位55~65重量%とを有する共重合体を含有し、
    前記α炭素が4級炭素となるカルボニル化合物は、炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸、炭素数が3~8のラジカル重合性不飽和カルボン酸エステル、及び、多官能性カルボン酸エステルである
    ことを特徴とする熱膨張性マイクロカプセル。
  2. コア剤を15~30重量%含有することを特徴とする請求項1記載の熱膨張性マイクロカプセル。
  3. ゲル化度が70%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱膨張性マイクロカプセル。
  4. シェルを構成する共重合体は、重量平均分子量1000未満の重合体の濃度が1重量%以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の熱膨張性マイクロカプセル。
  5. マトリクス樹脂、請求項1、2、3又は4記載の熱膨張性マイクロカプセル及び化学発泡剤を含有する成形用樹脂組成物。
  6. マトリクス樹脂が塩化ビニル樹脂であることを特徴とする請求項5記載の成形用樹脂組成物。
  7. マトリクス樹脂100重量部に対して、熱膨張性マイクロカプセルを0.1~1.5重量部、化学発泡剤を0.5~3.0重量部含有することを特徴とする請求項5又は6記載の成形用樹脂組成物。
  8. 成形用樹脂組成物における化学発泡剤含有量と、熱膨張性マイクロカプセルを構成する共重合体のα炭素が4級炭素となるカルボニル化合物のポリマー単位含有量との比率(化学発泡剤含有量/α炭素が4級炭素となるカルボニル化合物のポリマー単位含有量)が、1.0~4.5であることを特徴とする請求項5、6又は7記載の成形用樹脂組成物。
  9. 請求項5、6、7又は8記載の成形用樹脂組成物を用いてなることを特徴とする発泡成形体。
JP2020109798A 2019-06-27 2020-06-25 熱膨張性マイクロカプセル、成形用樹脂組成物及び発泡成形体 Active JP7583537B2 (ja)

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